説明

画像形成装置

【課題】表示画面を見ながらの障害の復旧作業を容易に行うことが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】操作部108は、画像形成装置100の手前上部に横方向に長く設けられたレールユニット61により移動自在に支持されており、操作部108をレールユニット61に沿って横方向に移動させ、操作部108を複数位置のいずれかで停止させることが可能である。障害が発生したときには、障害発生箇所の近傍まで操作部108を移動させ、この障害の発生箇所や復旧作業手順等を操作部108の表示画面に表示させているので、表示画面を見ながら、障害の確認や復旧作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様な機能を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では、多様な機能を有するが故に、様々な障害を発生する可能性があり、その都度、装置の動作を停止させたり、障害の発生箇所等を表示したりしている。例えば、記録用紙の搬送中に、記録用紙が搬送経路で詰まるというジャムが発生したり、更にジャムが原因となって、印字不良が発生したり、搬送駆動系の負荷が過大となって、トルクリミッターが動作したりする。あるいは、印字済み記録用紙の編集中に、ステープル針が詰まったり、ステープル針の補給等が必要になる。そして、このような障害が発生する度に、装置の動作を停止させて、障害の発生を表示している。ユーザーは、障害の発生箇所等の表示を見ながら、障害の復旧解消を図ることになる。
【0003】
また、特許文献1では、操作部を印字処理部から退避させ、印字処理部のドアの開閉動作を容易にして、障害の解消を速やかに行えるようにしている。
【特許文献1】特開2006−10867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の画像形成装置が益々多機能化されて来ているため、画像形成装置の様々な箇所に障害が発生し、従来通りの障害箇所の表示だけでは、使い勝手が悪くなって来ている。
【0005】
例えば、障害箇所を表示している表示画面近くで障害が発生した場合は、この表示画面を見ながら、実際の障害箇所を特定して、障害の復旧作業を行うことができ、何等の問題がない。ところが、表示画面から遠く離れた箇所で障害が発生した場合は、表示画面と実際の障害箇所を行ったり来たりしながら、障害の復旧を図ることになり、表示画面を見ながら、実際の障害箇所を特定したり、障害の復旧作業を行うことが困難になる。
【0006】
より具体的には、表示画面は、画像形成装置の前側中央上部に配置することが多い。このため、画像形成装置の中央付近に配置された原稿搬送部や印字処理部等の障害の復旧を図るときには、表示画面を見ながらの復旧作業が可能である。これに対して印字済みの記録用紙の編集機能を有する排紙部は、画像形成装置の左右いずれかの側端に配置されており、表示画面から離れている。このため、排紙部の障害の復旧作業を行うときには、表示画面と実際の障害箇所を行ったり来たりしながら、障害の復旧を図ることになり、使い勝手が悪い。
【0007】
また、特許文献1の技術は、印字処理部の障害の解消だけが容易であって、他の部位の障害の解消を容易にするものではなく、多様な機能の障害の解消を容易にするものでもない。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、表示画面を見ながらの障害の復旧作業を容易に行うことが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、複数の機能を有しており、機能の障害発生時に、機能の障害発生箇所を検出して表示部に表示する画像形成装置において、前記表示部を移動経路に沿って移動させる移動手段と、機能の障害発生時に、前記移動手段を制御して、前記表示部を前記移動経路に沿って該機能の近傍位置まで移動させ、この機能の障害発生を前記表示部に表示させる制御手段とを備えている。
【0010】
また、前記移動経路における前記表示部のホームポジションは、画像形成装置本体の前側上部にある。
【0011】
更に、前記移動手段は、前記表示部の移動経路となるレールと、このレール上の規定位置で表示部を停止させる停止部材とを備えている。
【0012】
また、前記制御手段は、機能の障害発生箇所を特定して、この機能の近傍位置を求め、前記表示部を該機能の近傍位置まで移動させている。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明によれば、表示部を移動経路に沿って障害発生が発生した機能の近傍位置まで移動させ、この機能の障害発生を表示部に表示させている。このため、いずれの機能に障害が生じても、表示部が障害発生箇所の近傍に配置されることになり、表示画面を見ながらの障害の復旧作業が容易なる。また、利用者は、表示部の前に移動すると同時に障害の発生箇所に近づくことになり、実際の障害の発生箇所を特定し易くなる。
【0014】
また、移動経路における表示部のホームポジションは、画像形成装置本体の前側上部にある。このため、通常の操作を行うときには、この表示部を画像形成装置の操作ガイダンスを表示するためにも用いることができる。
【0015】
例えば、表示部の移動経路となるレールと、このレール上の規定位置で表示部を停止させる停止部材とを設けて、表示部をレール上で移動させ、表示部を停止部材の箇所で停止させる。
【0016】
また、制御手段は、機能の障害発生箇所を特定して、この機能の近傍位置を求め、表示部を該機能の近傍位置まで移動させている。このような処理手順により、表示部を障害が発生した機能の近傍まで確実に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す断面図である。画像形成装置100は、複写機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能を有する複合機であり、その構成を大別すると、原稿搬送部(ADF)101、原稿読取り部102、印字処理部103、記録用紙搬送部104、給紙部105、後処理部106、排紙部107、及び操作部108からなる。
【0019】
原稿搬送部101では、少なくとも1枚の原稿が原稿セットトレイ11にセットされると、原稿を1枚ずつ原稿セットトレイ11から引き出して搬送し、この原稿を原稿読取り部102の原稿読取り窓102aに導いて通過させ、この原稿を排紙トレイ12に排出する。
【0020】
原稿読取り窓102aの上方には、CIS(Contact Image Sensor)13を配設している。このCIS13は、原稿が原稿読取り窓102aを通過する際に、原稿裏面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿裏面の画像を示す画像データを出力する。
【0021】
また、原稿読取り部102は、原稿が原稿読取り窓102aを通過する際に、第1走査ユニット15のランプによって原稿表面を露光し、第1及び第2走査ユニット15、16のミラーによって原稿表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿表面の画像をCCD(Charge Coupled Device)18上に結像する。CCD18は、原稿表面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿表面の画像を示す画像データを出力する。
【0022】
更に、原稿が原稿読取り部102上面のプラテンガラス上に置かれた場合は、第1及び第2走査ユニット15、16を相互に所定の速度関係を維持しつつ移動させ、第1走査ユニット15によってプラテンガラス上の原稿表面を露光し、第1及び第2走査ユニット15、16によって原稿表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿表面の画像をCCD18上に結像する。
【0023】
CIS13もしくはCCD18から出力された画像データは、マイクロコンピュータ等の制御回路により各種の画像処理を施されてから、印字処理部103に出力される。
【0024】
印字処理部103は、画像データによって示される原稿を記録用紙に記録するものであって、感光体ドラム21、帯電器22、光書込みユニット23、現像器24、転写ユニット25、クリーニングユニット26、及び定着装置27等を備えている。
【0025】
感光体ドラム21は、表層が有機光導電性材料からなる有機感光体であり、一方向に回転して、その表面をクリーニングユニット26によりクリーニングされてから、その表面を帯電器22により均一に帯電される。帯電器22は、チャージャー型のものであっても、感光体ドラム21に接触するローラ型やブラシ型のものであっても良い。
【0026】
光書込みユニット23は、2つのレーザ照射部28a、28b、及び2つのミラー群29a、29bを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)である。この光書込みユニット23では、画像データを入力して、この画像データに応じたレーザ光を各レーザ照射部28a、28bからそれぞれ出射し、これらのレーザ光を各ミラー群29a、29b介して感光体ドラム21に照射して、均一に帯電された感光体ドラム21表面を露光し、感光体ドラム21表面に静電潜像を形成する。
【0027】
この光書込みユニット23は、高速印字処理に対応するために2つのレーザ照射部28a、28bを備えた2ビーム方式を採用して、照射タイミングの高速化に伴う負担を軽減している。
【0028】
尚、光書込ユニット23として、レーザスキャニングユニットの代わりに、発光素子をアレイ状に並べたEL書き込みヘッドやLED書き込みヘッドを用いることもできる。
【0029】
現像器24は、トナーを感光体ドラム21表面に供給して、静電潜像を現像し、トナー像(可視像とも称する)を感光体ドラム21表面に形成する。転写ユニット25は、感光体ドラム21表面のトナー像を記録用紙搬送部104により搬送されてきた記録用紙に転写する。定着装置27は、記録用紙を加熱及び加圧して、記録用紙上のトナー像を定着させる。この後、記録用紙は、記録用紙搬送部104により後処理部106へと更に搬送される。また、クリーニングユニット26は、現像、転写後に感光体ドラム21の表面に残留したトナーを除去して回収する。
【0030】
ここで、転写ユニット25は、転写ベルト31、駆動ローラ32、従動ローラ33、及び弾性導電性ローラ34等を備えており、転写ベルト31を該各ローラ32〜34と他のローラに張架して回転させている。転写ベルト31は、所定の抵抗値(例えば、1×109〜1×1013Ω/cm)を有しており、その表面に載せられた記録用紙を搬送する。弾性導電性ローラ34は、転写ベルト31を介して感光体ドラム21表面に押し付けられており、転写ベルト31上の記録用紙を感光体ドラム21表面に押し付ける。この弾性導電性ローラ34には、感光体ドラム21表面のトナー像の電荷とは逆極性の転写電界が印加されており、この逆極性の転写電界により感光体ドラム21表面のトナー像が転写ベルト31上の記録用紙に転写される。例えば、トナー像が(−)極性の電荷を有している場合は、弾性導電性ローラ34に印加されている転写電界の極性が(+)極性にされる。
【0031】
定着装置27は、加熱ローラ35及び加圧ローラ36を備えている。加熱ローラ35と加圧ローラ36間の圧接域(ニップ域と称される)に記録用紙が搬送されて来ると、各ローラ35、36により記録用紙が搬送されつつ、記録用紙上の未定着トナー像が加熱溶融され加圧されて、トナー像が記録用紙上に定着される。
【0032】
記録用紙搬送部104は、記録用紙を搬送するための複数対の搬送ローラ41、一対のレジストローラ42、記録用紙搬送路43、反転搬送路44a、44b、複数の分岐爪45、及び一対の排紙ローラ46等を備えている。
【0033】
記録用紙搬送路43では、記録用紙を給紙部105から受け取り、記録用紙の先端がレジストローラ42に達するまで記録用紙を搬送する。このときレジストローラ42を一時的に停止させるので、記録用紙の先端がレジストローラ42に達して当接し、記録用紙が撓む。この撓んだ記録用紙の弾性力により該記録用紙の先端をレジストローラ42に押し付けて該ローラ42と平行に揃える。この後、レジストローラ42の回転を開始して、レジストローラ42により記録用紙を印字処理部103の転写ユニット25へと搬送し、更に排紙ローラ46により記録用紙を後処理部106へと搬送する。
【0034】
レジストローラ42の停止及び回転は、レジストローラ42と駆動軸間のクラッチをオンオフに切り替えたり、レジストローラ42の駆動源であるモータをオンオフに切り替えてなされる。
【0035】
また、記録用紙の裏面にも画像を記録する場合は、各分岐爪45を選択的に切り替え、記録用紙を記録用紙搬送路43から反転搬送路44bへと導き入れて、記録用紙の搬送を一旦停止させ、更に各分岐爪45を選択的に再度切り替え、記録用紙を反転搬送路44bから反転搬送路44aへと導き入れて、記録用紙の表裏を反転させてから、記録用紙を反転搬送路44aを通じて記録用紙搬送路43のレジストローラ42へと戻す。
【0036】
この様な記録用紙の搬送をスイッチバック搬送と称し、このスイッチバック搬送により記録用紙の表裏が反転され、同時に記録用紙の先端及び後端も入れ替わる。従って、記録用紙が反転されて戻されると、記録用紙の後端がレジストローラ42に当接して、記録用紙の後端がレジストローラ42と平行に揃えられ、レジストローラ42により記録用紙がその後端から印字処理部103の転写ユニット25へと搬送されて、記録用紙の裏面に印字がなされ、定着装置27の各ローラ35、36間のニップ域により記録用紙裏面の未定着トナー像が加熱溶融されて加圧され、トナー像が記録用紙の裏面に定着され、この後に排紙ローラ46により記録用紙が後処理部106へと搬送される。
【0037】
記録用紙搬送路43及び反転搬送路44a、44bにおいては、記録用紙の位置等を検出するセンサーを各所に配置し、各センサーにより検出された記録用紙の位置に基づいて搬送ローラやレジストローラを駆動制御して、記録用紙の搬送及び位置決めを行っている。
【0038】
給紙部105は、複数の給紙カセット51を備えている。各給紙カセット51は、各種サイズの記録用紙を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置100の下方に設けられている。また、各給紙カセット51は、記録用紙を一枚ずつ引き出すためのピックアップローラ等を備えており、引き出した記録用紙を記録用紙搬送部104の記録用紙搬送路43へと送り出す。
【0039】
画像形成装置100は、高速印字処理を目的としているため、各給紙カセット51には、定型サイズの記録用紙を500〜1500枚収納可能な容積を確保している。
【0040】
また、画像形成装置100の側面には、複数種の記録用紙を多量に収納可能な大容量給紙カセット(LCC)52、及び主として不定型サイズの記録用紙を供給するための手差しトレイ53を設けている。
【0041】
後処理部106及び排紙部107は、図面上左側の側面に配置されている。後処理部106では、記録用紙のステープル処理やパンチ処理等の後処理を行い、また排紙部107では、記録用紙を複数段の排紙トレイ107aに振り分けて排出する等の処理を行う。
【0042】
この様な画像形成装置100においては、印字処理速度を高速化して、使い勝手を向上させている。例えば、A4サイズの記録用紙を用いる場合は、記録用紙の搬送速度を100枚/分(プロセス速度450〜600mm/sec)に設定している。
【0043】
ところで、画像形成装置100では、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能の選択設定や、記録用紙のサイズ、印字枚数、印字倍率、記録用紙の後処理等の選択設定が可能であり、多機能であるが故に、様々な障害を発生する可能性があり、その都度、装置の動作を停止させたり、操作部108の表示画面に障害の発生箇所や復旧作業手順等を表示している。
【0044】
しかしながら、仮に、従来のように操作部108の表示画面が画像形成装置100の手前上部中央で位置決めされたままで、その位置が変わらないならば、後処理部106、排紙部107、及び大容量給紙カセット52等の各機能、つまり画像形成装置100両側の機能に障害が発生したときに、操作部108の表示画面が障害の発生箇所から遠く離れることになるので、表示画面と実際の障害箇所を行ったり来たりしながら、障害の復旧を図ることになり、使い勝手が悪い。
【0045】
そこで、本実施形態では、操作部108を障害発生が発生した機能の近傍位置まで移動させ、この機能の障害発生等を操作部108の表示画面に表示させて、表示画面を見ながらの障害の復旧作業を容易にしている。
【0046】
次に、本実施形態の操作部108について詳しく説明する。
【0047】
操作部108は、図1に示すように画像形成装置100の手前上部に横方向に長く設けられたレールユニット61により移動自在に支持されており、操作部108をレールユニット61に沿って横方向に移動させ、操作部108を複数位置のいずれかで停止させることが可能である。
【0048】
通常、操作部108は、画像形成装置100の手前上部中央(ホームポジション)に位置決めされており、この状態で、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能を選択して設定したり、記録用紙のサイズ、印字枚数、印字倍率、記録用紙の後処理等を選択設定するために操作される。
【0049】
また、後処理部106、排紙部107、及び大容量給紙カセット52等の各機能に障害が発生したときには、障害が発生した機能近傍まで、操作部108が横方向に移動されて停止され、操作部108の表示画面に障害発生が表示される。
【0050】
この操作部108は、図2に示すようにその上面に左右に細長い操作パネル63を有している。操作パネル63では、その中央に液晶タッチパネル64が配置され、この液晶パネル64の周囲に各種の操作キー65が配置されている。
【0051】
液晶タッチパネル64は、矩形状の液晶表示装置の表示画面に同矩形状の透明なタッチパネルを重ね合わせたものである。液晶表示装置の表示画面には、各種のイラスト、メッセージ、表示ボタン等が表示される。表示画面上で、利用者の指が表示ボタンに触れると、タッチパネルにより画面上の接触位置が検出され、この接触位置の表示ボタンが操作されたとみなされる。
【0052】
液晶タッチパネル64には、表示制御部(図示せず)が接続されており、この表示制御部により液晶タッチパネル64の表示制御が行われる。この表示制御部は、画像形成装置100全体を統括的に制御する制御部14からの指示等に応じて、イラスト、メッセージ、表示ボタン等を液晶タッチパネル64の画面に表示する。
【0053】
各種の操作キー65は、液晶タッチパネル64の画面に表示された表示ボタンと共に操作される。これらの操作キー65及び液晶タッチパネル64画面上の表示ボタンが操作されて、ファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能の選択設定や、記録用紙のサイズ、印字枚数、印字倍率、記録用紙の後処理等の選択設定が行われる。
【0054】
レールユニット61は、例えば図3及び図4(a)、(b)に示すようにレール71と、レール71の内側で移動自在に支持されたリティナー72とを備え、リティナー72に操作部108を固定支持して、リティナー72と共に操作部108を移動自在に支持している。レール71は、その両側を内向きに折り曲げてなる折り曲げ縁71aを有している。また、リティナー72は、その両側に複数個の鋼球72aを回転自在に保持している。リティナー72両側の各鋼球72aをレール71両側の折り曲げ縁71aの内側に嵌め入れて、リティナー72をレール71に沿って移動自在に支持している。また、リティナー72の中央板72bにレール71の外側に突出するステー72cを固定し、このステー72cにより操作部108を固定支持している。更に、レール71の前端及び後端には、リティナー72がレール71から外れることを防止するためのストッパー73a、73bを設けている。
【0055】
また、レール71の複数箇所には、リティナー72の中央板72b裏面に接触する駆動ローラ74を設け、各駆動ローラ74を正転又は逆転駆動して、リティナー72をレール71に沿って移動させ、リティナー72と共に操作部108も移動させる。各駆動ローラ74の配置間隔をリティナー72の長さよりも短くしている。これにより、常に、少なくとも1つの駆動ローラ74がリティナー72裏面に接触して、駆動ローラ74によるリティナー72の移動が可能にされている。
【0056】
また、レール71の2箇所にそれぞれの小孔71bを形成し、各小孔71bを通じて、2個の固定用プランジャー75をレール71表面側突出させている。各固定用プランジャー75は、レール71裏面側で、それぞれの電磁ソレノイド76に通されている。また、各固定用プランジャー75の鍔75aと各電磁ソレノイド76間にそれぞれのバネ77を挿入配置し、各バネ77により各固定用プランジャー75を各小孔71bから突出するように付勢している。電磁ソレノイド76が付勢されると、固定用プランジャー75がバネの弾勢力77に抗して電磁ソレノイド76内側に引き込まれ、固定用プランジャー75がレール71裏面側に引っ込む。
【0057】
各固定用プランジャー75をそれぞれのバネ77によりレール71表面側に突出させた状態で、各固定用プランジャー75間にリティナー72を挟み込んで、操作部108を画像形成装置100の手前上部中央(印字処理部103の上側)に位置決めする。これにより、操作部108が原稿読取り部102、印字処理部103、記録用紙搬送部104、及び給紙部105の近傍に配置される。
【0058】
また、各固定用プランジャー75のうちのレール71の前端側71cに近い方のソレノイド76を付勢して、その固定用プランジャー75をレール71裏面側引っ込め、この状態で、リティナー72をレール71に沿って前端側71cに移動させて、リティナー72の前端をレール71前端のストッパー73aに当接させ、操作部108をレール71の前側に停止させて位置決めする。これにより、操作部108が大容量給紙カセット52及び手差しトレイ53の近傍に位置決めされる。
【0059】
あるいは、各固定用プランジャー75のうちのレール71の後端側71dに近い方のソレノイド76を付勢して、そのプランジャー75をレール71裏面側引っ込め、この状態で、リティナー72をレール71に沿って後端側71dに移動させて、リティナー72の後端をレール71後端のストッパー73bに当接させ、操作部108をレール71の後側に停止させて位置決めする。これにより、操作部108が後処理部106及び排紙部107の近傍に位置決めされる。
【0060】
更に、操作部108を画像形成装置100の手前上部中央に戻すときには、操作部108からより離れた一方のプランジャー75のソレノイド76を消勢して、この一方のプランジャー75をレール71表面側に突出させ、かつ操作部108近くの他方のプランジャー75のソレノイド76を付勢して、他方のプランジャー75をレール71裏面側引っ込め、この状態で、リティナー72並びに操作部108をレール71に沿って移動させて、リティナー72の前端又は後端を一方のプランジャー75に当接させ、操作部108を中央まで移動させて停止させる。この後、他方のプランジャー75のソレノイドを消勢して、各プランジャー75をレール71表面側に突出させ、各プランジャー75間にリティナー72を挟み込んで、操作部108を画像形成装置100の手前上部中央に位置決めする。
【0061】
このような操作部108の移動及び位置決め制御は、画像形成装置100全体を統括的に制御する制御部14(図2に示す)により行われる。制御部14は、各駆動ローラ74及び各電磁ソレノイド76を所定の手順で駆動制御することにより操作部108を移動させて位置決めすることができる。
【0062】
また、操作部108がレール71に沿って移動されるが、移動中であっても、レール71上で停止していても、操作部108と制御部14間でのデータの入出力が可能である。例えば、操作部108と制御部14間で近接無線通信を行ったり、光通信を行って、データを送受する。更に、操作部108への電力供給は、レール71に沿って伸縮するコードリールのコードを通じて行ったり、伸縮自在のコイルコードを通じて行うか、あるいは操作部108内蔵の電池から行う。これにより、制御部14からの指示等に応じた液晶タッチパネル64の表示や制御部14への入力データの通信が可能となる。
【0063】
尚、近接無線通信、光通信、コードリール、コイルコード、内蔵の電池等は、周知技術の適用である。
【0064】
図5(a)、(b)、及び(c)は、画像形成装置100における大容量給紙カセット52、手差しトレイ53、原稿読取り部102、印字処理部103、給紙部105、後処理部106、排紙部107、及び操作部108の配置を模式的に表している。
【0065】
図5(a)の状態では、操作部108が、画像形成装置100の手前上部中央(ホームポジション)で停止されて、原稿読取り部102、印字処理部103、及び給紙部105の近傍に位置決めされている。このため、操作部108の表示画面を見ながら、原稿読取り部102、印字処理部103、及び給紙部105の障害を確認したり、これらの障害の復旧作業が容易である。
【0066】
また、図5(b)の状態では、操作部108が、レール71の前側で停止されて、大容量給紙カセット52及び手差しトレイ53の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、大容量給紙カセット52及び手差しトレイ53の障害を確認したり、これらの障害の復旧作業が容易である。
【0067】
更に、図5(c)の状態では、操作部108が、レール71の後側で停止されて、後処理部106及び排紙部107の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、後処理部106及び排紙部107の障害を確認したり、これらの障害の復旧作業が容易である。
【0068】
次に、障害が発生したときの操作部108の移動及び表示に係る制御を図6乃至図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0069】
ここでは、図6のフローチャートに示すような通常の印字制御を行っている途中で障害が発生すると、図7及び図8のフローチャートに示すような操作部108の移動及び表示に係る制御を割り込ませて実行している。
【0070】
また、通常の印字制御及び障害発生時の割り込み制御のいずれも、制御部14により行われる。
【0071】
まず、図6のフローチャートに示すように操作部108での入力操作により印字要求がなされ(ステップS201)、記録用紙のサイズ、印字枚数、印字倍率、記録用紙の後処理等の印字条件が入力されると(ステップS202で「Yes」)、これに応答して制御部14は、原稿搬送部101、原稿読取り部102、印字処理部103、記録用紙搬送部104、給紙部105、後処理部106、及び排紙部107等を制御して、印字処理を行う(ステップS203)。そして、全ての印字処理が終了しなければ(ステップS204で「No」)、ステップS203を繰り返し、また全ての印字処理が終了すると(ステップS204で「Yes」)、次の印字要求を待機する。
【0072】
このような図6の通常の印字制御に際し、制御部14は、画像形成装置100内の各種のセンサーの検出出力に基づいて、原稿の搬送位置や読取り状態、記録用紙の搬送位置や記録状態、あるいは定着装置27の定着温度等を監視し、異常の発生、その種類、及びその発生箇所を検出している。そして、制御部14は、いずれかの箇所に何等かの障害が発生したならば、図7及び図8のフローチャートに示すように画像形成装置100の印字動作を直ちに中断して(ステップS301)、障害の発生を判定し(ステップS302)、その発生箇所を特定する(ステップS303で「Yes」)。
【0073】
そして、例えば、障害の発生箇所が印字処理部103にあれば(ステップS304で「Yes」)、制御部14は、レール71の各駆動ローラ74の駆動制御及び各固定用プランジャー75の電磁ソレノイド76の駆動制御を適宜に行って、図5(a)に示すように操作部108を画像形成装置100の手前上部中央(ホームポジション)まで移動させて停止させ(ステップS305)、障害の発生箇所を操作部108の表示画面に表示する(ステップS306)。また、制御部14は、種々の障害と復旧作業手を対応付けて記憶した対応テーブル(メモリ(図示せず)内に予め設定されたもの)を参照し、表示した障害に対応する復旧作業手順を検索し、この復旧作業手順も表示画面に表示する(ステップS306)。
【0074】
尚、通常は、操作部108が画像形成装置100の手前上部中央で停止されているので、操作部108を移動させる処理(ステップS305)を必要としない。
【0075】
図5(a)の状態では、操作部108が印字処理部103の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、印字処理部103の障害の確認や、この障害の復旧作業が容易となる。
【0076】
この後、印字処理部103の障害が解消されたならば(ステップS307)、制御部14は、印字処理を再開して継続することが可能であるか否かを判定する(図8のステップS308)。そして、制御部14は、印字処理の再開継続が可能であると判定したならば(ステップS308で「Yes」)、この旨を操作部108の表示画面に表示し、スタートを指示するための操作キー65が操作されると(ステップS309)、これに応答して図6の通常の印字制御を再開する。また、制御部14は、印字処理の再開継続が不可能であると判定したならば(ステップS308で「No」)、待機状態に戻る。
【0077】
また、障害の発生箇所が給紙部105にあるときにも(ステップS310で「Yes」)、制御部14は、図5(a)に示すように操作部108を画像形成装置100の手前上部中央(ホームポジション)に位置決めし(ステップS311)、障害の発生箇所を操作部108の表示画面に表示する(ステップS312)。また、制御部14は、障害と復旧作業手の対応テーブルを参照し、表示した障害に対応する復旧作業手順を検索し、この復旧作業手順も表示画面に表示する(ステップS312)。
【0078】
図5(a)の状態では、操作部108が給紙部105の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、給紙部105の障害の確認や、この障害の復旧作業が容易である。
【0079】
この後、給紙部105の障害が解消されたならば(ステップS313)、先と同様に図8のステップS308以降の処理に移る。
【0080】
また、障害の発生箇所が大容量給紙カセット52にあれば(ステップS314で「Yes」)、制御部14は、レール71の各駆動ローラ74の駆動制御及び各固定用プランジャー75の電磁ソレノイド76の駆動制御を適宜に行って、図5(b)に示すように操作部108をレール71の前端側71cまで移動させて位置決めし(ステップS315)、障害の発生箇所を操作部108の表示画面に表示すると共に、この障害に対応する復旧作業手順を表示画面に表示する(ステップS316)。
【0081】
図5(b)の状態では、操作部108が大容量給紙カセット52の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、大容量給紙カセット52の障害の確認や、この障害の復旧作業が容易となる。
【0082】
この後、大容量給紙カセット52の障害が解消されたならば(ステップS317)、先と同様にステップS308以降の処理に移る。
【0083】
また、障害の発生箇所が後処理部106にあれば(ステップS318「Yes」)、制御部14は、レール71の各駆動ローラ74の駆動制御及び各固定用プランジャー75の電磁ソレノイド76の駆動制御を適宜に行って、図5(c)に示すように操作部108をレール71の後端側71dまで移動させて位置決めし(ステップS319)、障害の発生箇所を操作部108の表示画面に表示すると共に、この障害に対応する復旧作業手順を表示画面に表示する(ステップS320)。
【0084】
図5(c)の状態では、操作部108が後処理部106の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、後処理部106の障害の確認や、この障害の復旧作業が容易となる。
【0085】
この後、後処理部106の障害が解消されたならば(ステップS321)、先と同様にステップS308以降の処理に移る。
【0086】
また、障害の発生箇所が排紙部107にあるときにも(ステップS322「Yes」)、制御部14は、図5(c)に示すように操作部108をレール71の後端側71dまで移動させて位置決めし(ステップS323)、障害の発生箇所を操作部108の表示画面に表示すると共に、この障害に対応する復旧作業手順を表示画面に表示する(ステップS324)。
【0087】
図5(c)の状態では、操作部108が排紙部107の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、排紙部107の障害の確認や、この障害の復旧作業が容易である。
【0088】
この後、排紙部107の障害が解消されたならば(ステップS325)、先と同様にステップS308以降の処理に移る。
【0089】
また、障害の発生箇所が原稿読取り部102にあれば(ステップS326「Yes」)、制御部14は、レール71の各駆動ローラ74の駆動制御及び各固定用プランジャー75の電磁ソレノイド76の駆動制御を適宜に行って、図5(a)に示すように操作部108をホームポジションまで移動させて位置決めし(ステップS327)、障害の発生箇所を操作部108の表示画面に表示すると共に、この障害に対応する復旧作業手順を表示画面に表示する(ステップS328)。
【0090】
図5(a)の状態では、操作部108が原稿読取り部102の近傍に位置決めされているので、操作部108の表示画面を見ながら、原稿読取り部102の障害の確認や、この障害の復旧作業が容易となる。
【0091】
この後、原稿読取り部102の障害が解消されたならば(ステップS329)、先と同様にステップS308以降の処理に移る。
【0092】
このように本実施形態では、障害が発生したときには、障害発生箇所の近傍まで操作部108を移動させ、この障害の発生箇所や復旧作業手順等を操作部108の表示画面に表示させているので、表示画面を見ながら、障害の確認や復旧作業を容易に行うことができる。
【0093】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、多様に変形することができる。例えば、操作部108を移動させるために、複数の駆動ローラ74を設けているが、この代わりに、無端状ベルトをレール71に沿って設けて、無端状ベルトにリティナー72を接続し、無端状ベルトを正方向又は逆方向に回転移動させて、リティナー72を往復移動させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の画像形成装置における操作部の操作パネルを示す平面図である。
【図3】図1の画像形成装置における操作部を移動自在に支持するためのレールユニットを示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)は、図3のレールユニットを示す断面図である。
【図5】(a)、(b)、及び(c)は、図1の画像形成装置における操作部の配置を模式的に表す図である。
【図6】図1の画像形成装置における通常の印字制御を示すフローチャートである。
【図7】図1の画像形成装置における操作部の移動及び表示に係る制御を示すフローチャートである。
【図8】図7に引き続く制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
61 レールユニット
63 操作パネル
64 液晶タッチパネル
65 操作キー
71 レール
72 リティナー
73a、73b ストッパー
74 駆動ローラ
75 プランジャー
76 電磁ソレノイド
77 バネ
100 画像形成装置
101 原稿搬送部(ADF)
102 原稿読取り部
103 印字処理部
104 記録用紙搬送部
105 給紙部
106 後処理部
107 排紙部
108 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能を有しており、機能の障害発生時に、機能の障害発生箇所を検出して表示部に表示する画像形成装置において、
前記表示部を移動経路に沿って移動させる移動手段と、
機能の障害発生時に、前記移動手段を制御して、前記表示部を前記移動経路に沿って該機能の近傍位置まで移動させ、この機能の障害発生を前記表示部に表示させる制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記移動経路における前記表示部のホームポジションは、画像形成装置本体の前側上部にあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記表示部の移動経路となるレールと、このレール上の規定位置で表示部を停止させる停止部材とを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、機能の障害発生箇所を特定して、この機能の近傍位置を求め、前記表示部を該機能の近傍位置まで移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−233797(P2008−233797A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77085(P2007−77085)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】