説明

画像形成装置

【課題】シートを搬送する搬送ベルトを備えシートの両面に画像形成が可能な画像形成装置において、迂回経路を含む反転経路のR形状箇所の形状・構成を最適化することにより、シート送り精度や画像への影響を抑制する。
【解決手段】用紙9を搬送する搬送ベルト10を備え用紙9の両面に画像形成が可能なインクジェットプリンタ100において、反転経路としての迂回路6は、該迂回路6に案内される用紙9の移動軌跡が湾曲したR形状になる箇所(R部)を少なくとも2箇所備え、迂回路6におけるシート搬送方向Xaの最も下流側のR2部のR2形状は、シート搬送方向Xaの上流側のR1部のR1形状よりも大きく構成され(R1<R2)、かつ、シート搬送方向Xaの最も上流側のR1部のガイド面は、片面印刷済みの用紙の画像形成面側を内側に湾曲させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体(以下、「シート」という)の両面に画像形成が可能な画像形成装置に関し、さらに詳しくは、シートに画像形成を行う画像形成手段に対向して配置され、シートを搬送する搬送ベルトを備えシートの両面に画像形成が可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送する搬送ベルトを備えシートの両面に画像形成が可能な画像形成装置において、装置の大型化やコストアップを抑える目的で、両面記録(両面画像形成)時の記録材(シート)の戻し搬送経路の一部に、搬送ベルトの記録材の通常搬送方向と逆方向に移動する戻し部分が配置され、この部分で記録材を戻し搬送する構成の画像形成装置は既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の発明によれば、戻し搬送経路を他に設ける必要がなくなり、戻し搬送経路を他に設ける場合の設置スペースやその部分の記録材搬送に要する搬送部材を不要にでき、装置の大型化やコストアップを抑えることが可能になるというものである。
【0003】
また、特許文献1には、戻し部分は略直線状に設けられると共に、記録材は、戻し部分の移動方向出口から搬送ベルトとは異なる迂回経路を通って循環移動する構成が開示されている。特許文献1記載の前記構成によれば、迂回経路を設けることで、曲率の小さい迂回経路が可能になり、戻し搬送される記録材へのしわ等の発生を抑えることが可能になるというものである。
【0004】
シートを搬送する搬送ベルトを備えシートの両面に画像形成が可能な画像形成装置において、第1面が印字(画像形成)された用紙の第2面を印字するための用紙を反転させる両面ユニットと、電荷により用紙を吸着して搬送する吸着ベルト(搬送ベルト)を備えた搬送装置と、該搬送装置に電荷を帯電させる帯電装置とを具備し、両面ユニットに対する帯電装置の配置に合わせて、両面ユニットから搬送される用紙の搬送タイミングを調整する構成の画像形成装置も既に知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2記載の発明によれば、搬送装置に電荷を帯電させる帯電開始位置と、第2面を印字するために両面ユニットから搬送されてくる用紙が搬送装置と接触する位置とを合わせ、確実な用紙の搬送を行うことができる画像形成装置を提供することができるとともに、帯電開始位置と、第2面を印字するために両面ユニットから搬送されてくる用紙が搬送装置と接触する位置とを合わせる簡単な構成の機構を提供することができるというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および2記載の画像形成装置を含め、今までの搬送ベルトの一部に戻し搬送経路を採用し、搬送ベルトとは異なる迂回経路(反転経路)を通って循環移動する両面搬送の装置構成においては、迂回経路の形状・構成までは考慮されていない。特に、迂回経路は、用紙の移動軌跡が湾曲したR形状となる箇所・部位を少なくとも2箇所備えていて、かつ、搬送手段(例えば搬送ローラ対等の搬送手段や補助的搬送手段を含む)を備えていない迂回経路の場合、迂回経路におけるR形状の箇所・部位およびR形状の相対的な大きさの違い(以下、「R形状・構成」ともいう)によって、以下の問題が生じることから、迂回経路のR形状・構成を十分に考慮する必要がある。
【0006】
すなわち、迂回経路のR形状・構成によっては、
(1)迂回経路での用紙の負荷変動が生じ、用紙送り精度や画像に悪影響を及ぼす。
(2)迂回経路での用紙の負荷変動が大きくても、迂回経路直後に、迂回経路の負荷以上の迂回経路における負荷変動の影響を打ち消すことが可能な搬送力を備えた搬送手段を設けることによって迂回経路での負荷の影響を打ち消せるが、それでは用紙後端が迂回経路直後における負荷を抜けた際の影響がその用紙の送り精度や画像に悪さをしてしまう。
【0007】
上記(1)の問題は、説明の簡単化のために、迂回経路における用紙搬送方向の最も下流側の湾曲したR形状(シート移動軌跡)箇所をR2形状とし、用紙搬送方向上流側の他のR形状箇所をR1形状とした場合であって、R2形状がR1形状よりも小さいとき(R2<R1)、次のように説明できる。すなわち、片面画像形成済みの用紙が画像形成手段と対向した位置で保持される(特にはインクジェット方式の記録ヘッドと対向し搬送ベルトによって吸着保持される)際、迂回経路における用紙搬送方向の最も下流側のR2形状が用紙搬送方向上流側のR1形状よりも小さいとき、その用紙が相対的に負荷小のR1形状箇所から負荷大のR2形状箇所へと移動するため、用紙後端部分が負荷大のR2形状箇所を抜ける際に、その負荷変動(R2形状箇所の負荷変動)の影響を打ち消す負荷がなく、直に画像形成手段と対向した位置における用紙に負荷変動の影響を及ぼすため、(画像形成手段と対向し保持される箇所を設定されている)当初の搬送距離よりも過分送り(送り過ぎ)となることによって、用紙送り精度不良が発生する。これにより、画像形成手段での画像形成位置のずれ(インクジェット方式の場合では記録ヘッドでのインク着弾位置ずれ)となり、画像位置精度が悪化してしまう。なお、上記(1)、(2)の詳細は、後述する実施形態中の比較例でさらに具体的に説明する。
以上のことより、今までのように単純な迂回経路の形状・構成(マシン側面より見た際に左右対称となる形状・構成)を設けるだけでは、用紙送り精度や画像への影響を抑制できていない、という問題がある。
【0008】
また、特許文献2記載の画像形成装置においては、第2経路B(反転経路)の中で湾曲したR形状になる箇所・部位のうちで最も上流側にある箇所では、片面画像形成済みの用紙における画像形成面側が常に外側を向くように構成されているため、用紙の画像形成面が反転経路のR形状箇所のガイド面に擦れてしまう不具合が発生する。つまり、特許文献2記載の画像形成装置では、用紙の汚れや反転経路のR形状箇所の摩耗などの不具合をも発生させてしまう問題がある。
【0009】
本発明は、上述した問題・事情に鑑みてなされたものであり、シートを搬送する搬送ベルトを備えシートの両面に画像形成が可能な画像形成装置において、迂回経路を含む反転経路のR形状箇所の形状・構成を最適化することにより、シート送り精度や画像への影響を抑制することのできる画像形成装置を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、少なくとも2つの回転部材間に掛け回されて周回移動され、シートを搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトと対向して配置され、該搬送ベルトにより搬送されてくるシートに画像を形成する画像形成手段と、前記搬送ベルトを通過した片面画像形成済みのシートをスイッチバックさせて、再度、前記画像形成手段側へ再給送する再給送手段と、前記再給送手段により給送されてきた片面画像形成済みのシートの表裏を反転して、再度、前記画像形成手段と対向する対向側の前記搬送ベルト面へ案内する反転経路とを有する画像形成装置において、前記反転経路は、該反転経路に案内されるシートの移動軌跡が湾曲したR形状になる箇所を少なくとも2箇所備え、前記反転経路におけるシート搬送方向の最も下流側の前記R形状は、該シート搬送方向の上流側の他のR形状よりも大きく構成され、かつ、前記シート搬送方向の最も上流側のR形状箇所のガイド面は、片面画像形成済みのシートの画像形成面側を内側に湾曲させるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記再給送手段は、片面画像形成済みのシートを前記画像形成手段と対向しない反対向側の前記搬送ベルト面に再給送し案内するよう構成されており、前記反転経路は、片面画像形成済みのシートが前記反対向側の前記搬送ベルト面を通過した後、前記搬送ベルトの移動方向における前記画像形成手段との対向部よりも上流側の前記回転部材に掛け回されている前記搬送ベルトの外側周囲を迂回して前記対向側の前記搬送ベルト面に案内する迂回経路であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、前記反転経路の距離は、前記画像形成装置で使用可能な最小シートサイズにおける前記シート搬送方向のシート長以下に設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載の画像形成装置において、前記反転経路は、搬送手段を備えていないことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の画像形成装置において、画像形成装置本体に対して挿脱可能であり、シートを収容するシート収容手段を有し、前記反転経路は、前記シート収容手段の挿脱領域から退避した位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記課題を解決して新規な画像形成装置を実現し提供することができる。請求項ごとの効果を挙げれば、次のとおりである。
請求項1記載の発明によれば、前記構成により、両面画像形成時におけるシート送り精度および画像への影響を抑制することができるとともに、反転経路におけるシート搬送方向の最も上流側の相対的に小さいR形状箇所のガイド面に対する画像擦れも抑制することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、前記構成により、装置の大型化およびコストアップを抑えることが可能になる。
請求項3記載の発明によれば、前記構成により、装置サイズ(マシンサイズ)を必要最低限小さくすることができ、かつ、反転経路(迂回経路を含む)におけるシートを搬送させるためのローラなどの搬送手段も除去でき、コストアップを抑えることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、前記構成により、シートの線速差による印字ズレ(特に小サイズシートの場合)やシート後端抜けの影響をなくすことができる。
請求項5記載の発明によれば、前記構成により、さらなる装置サイズのダウン効果(小型化)を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すインクジェットプリンタ全体の簡略的な正面図である。
【図2】(A)、(B)、(C)は、各種迂回路の構成と負荷変動との関係について説明する図である。
【図3】図2(B)の本発明の迂回路における負荷と用紙送り精度、および画像への影響について説明する図である。
【図4】図2(C)の比較例2の迂回路における負荷と用紙送り精度、および画像への影響について説明する図である。
【図5】図2(B)の本発明の迂回路における負荷と用紙送り精度、および画像への影響について説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示すインクジェットプリンタ全体の簡略的な正面図である。
【図7】(A)、(B)は、第1ないし第2の実施形態の変形例1を説明する説明図である。
【図8】変形例1とは別の迂回路の構成・形状の一例を示す図である。
【図9】変形例2のインクジェットプリンタの要部構成を示す簡略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を詳細に説明する。各実施形態および各変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品等)については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0020】
(第1の実施形態)
図1〜図5を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態を示すインクジェットプリンタ全体の簡略的な正面図である。
【0021】
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置であるインクジェットプリンタ全体の構成を説明する。同図に示すインクジェットプリンタ100は、インクジェット方式で画像形成を行うシリアル型のインクジェットプリンタである。
インクジェットプリンタ100は、インクジェット方式で画像形成を行う画像形成手段としての記録ヘッド3等を備えた画像形成部50と、シートの一例としての用紙9を搬送する搬送ベルト10等を備えた搬送部51と、用紙9を給送・給紙する給紙部52と、画像形成(以下、「印刷」ともいう)された用紙を排出・排紙する排紙部および片面印刷済みの用紙をスイッチバックし反転すべく再給送する排紙反転部53とを有する。
【0022】
用紙の搬送経路としては、給紙部52から給紙された用紙9を搬送部51に搬送する経路である給紙搬送路55と、給紙搬送路55に接続・連通され、表面(第1の面)に画像形成された片面印刷済みの用紙、および片面印刷済みの用紙がスイッチバック・反転されて残りの裏面(第2の面)に画像形成された両面印刷済みの用紙を画像形成部50の下流側に搬送する経路である共通搬送路56と、共通搬送路56に接続・連通され、再給送手段を構成する後述する排紙ローラ対11,12によりスイッチバックされ再給送されてきた片面印刷済みの用紙を画像形成部50の記録ヘッド3と対向しない反対向側の搬送ベルト10面(以下、「反対向面10a」という)に案内する再給送経路としての再給紙路57と、片面印刷済みの用紙が搬送ベルト10の反対向面10aを通過した後、搬送ベルト10の移動方向における記録ヘッド3との対向部よりも上流側の搬送ローラ1に掛け回されている搬送ベルト10の外側周囲を迂回して反転された片面印刷済みの用紙を、再度、記録ヘッド3と対向する対向側の搬送ベルト10の面(以下、「対向面10a」という)に案内する反転経路としての迂回路6とを有する。この反転経路でもある迂回路6については、本発明の特徴的な構成を含むため後で詳述する。
【0023】
給紙搬送路55は、ガイド部材55aと迂回路6の外側のガイド部材6aとで形成されている。共通搬送路56は、一対のガイド部材56a,56b等で形成されている。再給紙路57は、一対のガイド部材57a,57b等で形成されている。迂回路6は、外側のガイド部材6aと内側のガイド部材6bとで形成されている。
【0024】
画像形成部50は、走査・移動可能なキャリッジ3A(図中破線で示す)を備えている。キャリッジ3Aは、装置本体に横架して固設されたガイド部材である主従のガイドロッド(図示せず)により、主走査方向(図中紙面に対して直交する紙面手前側および紙面奥側の方向)に摺動自在に保持されている。キャリッジ3Aは、図示しないタイミングベルトを介して主走査モータ(図示せず)に連結されており、同主走査モータによって主走査方向に往復移動・走査される。なお、キャリッジ3Aの図示および説明は、本実施形態でのみ行うこととし、後述の実施形態等では図および説明の簡明化のために省略する。
【0025】
キャリッジ3Aには、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド3が搭載されている。記録ヘッド3は、搬送ベルト10と対向して配置され、搬送ベルト10により搬送されてくる用紙9に画像を形成する画像形成手段ないし記録手段として機能する。記録ヘッド3は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向Xa(シート搬送方向Xaでもある)に配列し、ノズルのインク滴吐出方向を鉛直方向に向けて装着している。
記録ヘッド3は、例えば、4つのノズル列を有し、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の液滴をそれぞれ吐出する。
【0026】
また、キャリッジ3Aは、記録ヘッド3のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク(図示せず)を搭載している。このヘッドタンクには、図示しないカートリッジ装填部に着脱自在に装着される各色の記録液カートリッジから、供給ポンプユニット(図示せず)によって各色の供給チューブを介して、各色の記録液が補充供給されるようになっている。
【0027】
給紙部52は、複数枚の用紙9を積載する給紙トレイ8と、給紙トレイ8上の用紙9を給送する給紙ローラ17と、給紙ローラ17との協働作用により用紙9を1枚ずつ分離給送する分離パッド18等とを備えている。
給紙トレイ8上に積載された複数枚の用紙9を1枚ずつ分離給送する給紙ローラ17に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド18を備え、この分離パッド18は給紙ローラ17側に付勢されている。給紙トレイ8と、給紙ローラ17と、分離パッド18とは、給紙ユニットを構成している。
【0028】
片面印刷時に給紙部52から給紙された用紙9および両面印刷時に反転された片面印刷済みの用紙9を画像形成部50の記録ヘッド3に対向する位置に送り込むために、搬送部51が配置されている。搬送部51は、搬送ベルト10と、搬送ローラ1と、テンションローラ2と、先端コロ4と、帯電ローラ7と、搬送ガイド板20と、分離爪13等とを備えている。
【0029】
搬送ベルト10は、給送されてきた用紙9を静電吸着して記録ヘッド3に対向する位置に搬送するためのものであり、用紙9をシート搬送方向Xaに間欠的に搬送する搬送手段として機能する。搬送ベルト10は、無端状ベルトであり、駆動・回転部材としての搬送ローラ1と従動・回転部材としてのテンションローラ2との間に掛け回され・巻き掛けられて、ベルト移動方向Xa(シート搬送方向Xa、副走査方向Xaでもある)に周回移動するように構成されている。
【0030】
搬送ローラ1は、駆動力伝達手段としての図示しないタイミングベルトを介して、図示しない副走査モータ等の駆動手段によって構成される駆動系によって回転駆動される。搬送ベルト10は、上記図示しない副走査モータにより搬送ローラ1が回転駆動されることによって矢印で示すベルト移動方向Xaに周回移動する。
本実施形態の搬送ベルト10は、無端ベルトであるが、成型上において無端のベルトでも、両端をつなぐことで無端状としたベルトでもよい。
【0031】
搬送ベルト10は、1層または複層構造であり、少なくとも用紙や後述する帯電ローラ7と接触する側(表層)は、例えばPET、PEI、PVDF、PC、ETFE、PTFEなどの樹脂、またはエラストマーであって導電制御材を含まない材料などで形成される絶縁層を有していて、電荷を保持するようになっている。なお、2層以上の構造とする場合には帯電ローラ7と接触しない側に上記樹脂やエラストマーにカーボンを含有させた導電層を有する構成とできる。
【0032】
先端コロ4は、搬送ベルト10を表面側(搬送面側)から押圧する押圧部材として機能する。先端コロ4は、搬送ベルト10のベルト移動方向Xaにおける記録ヘッド3の上流近傍に、搬送ベルト10を介して搬送ローラ1に押圧するように配設されていて、用紙9を搬送ベルト10に密着させる。
搬送ガイド板20は、搬送ローラ1とテンションローラ2との間であって、搬送ベルト10の内側における記録ヘッド3に対向する位置に配設され、搬送ベルト10を内側からガイドするベルトガイド部材として機能する。
分離爪13は、ベルト移動方向Xaにおける記録ヘッド3の下流側において、搬送ベルト10を介してテンションローラ2に押圧するように配設され、搬送ベルト10から用紙9を分離する分離部材として機能する。
【0033】
帯電ローラ7は、搬送ローラ1におけるベルト移動方向Xaの上流側に配置され、搬送ベルト10の表面を帯電させるための帯電手段として機能する。帯電ローラ7は、搬送ベルト10の表層(絶縁層)に接触し、搬送ベルト10の周回移動に従動して回転するように配置されている。
【0034】
帯電ローラ7に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が図示しない電圧印加手段により印加され、搬送ベルト10が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向Xaに、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト10上に用紙9が給送されると、用紙9が搬送ベルト10に静電的に吸着され、搬送ベルト10の周回移動によって用紙9が副走査方向Xaに搬送される。
【0035】
そこで、キャリッジ3Aを移動させながら画像信号に応じて、図示しない制御手段の制御の下に記録ヘッド3を駆動することにより、停止している用紙9にインク滴を吐出して1行分を記録し、搬送ベルト10により用紙9を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙9の後端が記録ヘッド3の記録領域である印字領域10を抜け出た信号を、図示しない制御手段が受けることにより、記録動作を終了する。
【0036】
さらに、記録ヘッド3で画像形成・記録された用紙9を排紙するための排紙部として、分離爪13によって搬送ベルト10から分離された用紙9を、排紙反転部53に送り込む排出手段および再給送手段の機能を持つ排紙ローラ対を備えている。この排紙ローラ対は、断面星型の拍車ローラ12と、この拍車ローラ12に対向当接した排紙ローラ11とからなる。この排紙ローラ対11,12のシート搬送方向下流には、排紙ローラ対11,12によって送られてきた用紙9を案内する図示しない排紙ガイド部材と、用紙9を積載する図示しない排紙トレイとが配設されている。
【0037】
拍車ローラ12は、記録ヘッド3の下流側において、記録ヘッド3に対向する用紙9の面に係合するものであるが、用紙9が通常の普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ、封筒等の厚紙に記録を行う場合においては、用紙9の送りを単に補助するものであり、排紙ローラ11と拍車ローラ12との間に用紙9が噛んでいること、すなわち拍車ローラ12が用紙9に係合していることによって用紙9表面と記録ヘッド3とのギャップを定めるものではない。
【0038】
次に両面印刷に係る構成について説明する。
排紙ローラ11および拍車ローラ12は、片面印刷済みの用紙9の先端および後端を反転させるスイッチバック動作可能に、共に時計回り、反時計回りの両方向に回転可能に図示しない駆動手段によって駆動されるように構成されている。すなわち、排紙ローラ11および拍車ローラ12は、搬送ベルト10の対向面10aを通過した片面印刷済みの用紙9をスイッチバックさせて、再度、画像形成部50の記録ヘッド3側へ給送する再給送手段として機能する。
【0039】
排紙反転部53の共通搬送路56と再給紙路57との分岐部には、スイッチバック用の、支軸を中心として揺動可能な分岐部材としての分岐爪16が配設されている。上記したとおり、再給送手段は、排紙ローラ対11,12、再給紙路57および分岐爪16から主に構成されている。
記録ヘッド3と対向・対峙しない反対向側の搬送ベルト10面面側には、片面印刷済みの用紙9を搬送ベルト10面にガイドするガイド部材58が配設されている。
ガイド部材58の図において左端側および迂回路6の入口近傍には、搬送ベルト10を介して搬送ローラ1に押圧するように配設された押圧部材としての両面加圧コロ5と、搬送ベルト10を介して搬送ローラ1に押圧するように配設された分離部材としての分離爪14とが配置されている。
【0040】
図1に基づいて、本実施形態のインクジェットプリンタ100の動作を説明する。先ず、片面(例えば用紙9の第1の面である用紙表面)印刷時の動作を説明する。図示しない電源スイッチがオン・投入され、使用者による操作部(図示せず)の各種キー操作(印刷枚数や拡大・縮小等のキー操作)が終了すると、インクジェットプリンタ100の動作を制御する図示しない制御手段からの制御指令により、給紙部52が画像形成部50および搬送部51と同期して起動可能状態になる。すなわち、給紙ローラ17および分離パッド18の協働作用により、給紙トレイ8上の用紙9が1枚に分離されて給送され、ガイド部材55a,6aにより案内されつつ搬送部51の先端コロ4と搬送ベルト10との間に送り込まれる。
【0041】
この時、上記図示しない副走査モータにより搬送ローラ1が回転駆動されることによって、搬送ベルト10は副走査方向(ベルト移動方向)Xaに周回移動している。この際、帯電ローラ7は、搬送ベルト10の表層に接触し、搬送ベルト10の回動に従動して回転しており、図示しない電圧印加手段による帯電ローラ7への交番する電圧印加を介して、帯電ローラ7がプラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電される。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト10上に用紙9が給送され、用紙9が搬送ベルト10に静電的に吸着され、搬送ベルト10の周回移動によって用紙9が副走査方向Xaに搬送される。この際、用紙9の搬送は記録ヘッド3における印字位置で一旦停止する。
【0042】
次いで、キャリッジ3Aが主走査方向(図1中紙面に直交する紙面手前および奥側)に移動するように駆動されるとともに、画像信号に応じて記録ヘッド3が駆動されることにより、停止している用紙9にインク滴を吐出して1行分を印字記録し、搬送ベルト10上に保持された用紙9の所定量搬送後、次の行の印字記録が行われる。
そして、再びの搬送ローラ1の回転駆動を介して搬送ベルト10によって用紙9が搬送され、この際、分離爪13を介して搬送ベルト10から分離された片面印刷済みの用紙9(以下、単に「用紙9」ともいう)は排紙ローラ11に従動する拍車ローラ12により排紙反転部53に送り込まれ、図示しない排紙ガイド部材によって案内されつつ、さらにシート搬送方向Xaの下流側に搬送される。
【0043】
搬送される用紙9は、排紙ローラ対11,12の回転駆動によってシート排出方向Xbの下流側に搬送される。記録終了信号または用紙9の後端が記録ヘッド3の記録領域である印字領域10を抜け出た信号を、上記図示しない制御手段が受けることにより、記録動作を終了して、用紙9は上記図示しない排紙トレイに排紙・積載される。
【0044】
次に両面印刷時の動作について説明する。
片面印刷が上述した通りの動作で行われた後、片面印刷済みの用紙9の先端が排紙ローラ対11,12のニップ部へ導かれて、片面印刷済みの用紙9の後端が排紙反転部53の分岐を通過すると、これが図示しないセンサにより検知されることで、排紙ローラ11と拍車ローラ12とが反転開始し、片面印刷済みの用紙9の先端と後端とが逆になるスイッチバック動作が行われる。この際、図1に示す位置を占めた分岐爪16により、片面印刷済みの用紙9の搬送経路は再給紙路57側に切り換えられている。
次いで、スイッチバック動作を検知する図示しないセンサにより、スイッチバックされた片面印刷済みの用紙9の先端(スイッチバック前は用紙9の後端)が検知されると、片面印刷済みの用紙9の先端が再給紙路57の図において左方に搬送される。
【0045】
次いで、片面印刷済みの用紙9は再給紙路57を経由して、搬送ベルト10における記録ヘッド3と対向しない反対向面10bに吸着させながら搬送される。搬送ベルト10の反対向面10bに吸着されながら搬送されてきた片面印刷済みの用紙9は、両面加圧コロ5によって搬送ベルト10を介して搬送ローラ1に押圧されつつ搬送され、分離爪14によって搬送ベルト10から分離される。分離された片面印刷済みの用紙9は、さらに迂回路6に案内されつつ先端コロ4を通って搬送ベルト10によって記録ヘッド3との対向部に再度搬送される。この際、上述したと同様にして搬送ベルト10の対向面10aに吸着されて記録ヘッド3の印字領域に吸着搬送される。
ここで、帯電ローラ7は、反転時、迂回路9の内側に設置されているため、片面印刷済みの用紙9は常に新規に帯電された状態の搬送ベルト10上に吸着されることとなる。以降の動作は片面印刷時の動作より当業者であれば容易に理解し実施できるため、これ以上の詳細な動作説明を省略する。
【0046】
本実施形態によれば、両面印刷可能な画像形成装置であるインクジェットプリンタ100において、片面印刷済みの用紙を再給送・反転する際に、記録ヘッド3と対向しない搬送ベルト10の反対向面10bに再給送し案内するように再給送手段(排紙ローラ対11,12、再給紙路57、分岐爪16)を構成しているので、特許文献1記載等の従来同タイプの画像形成装置と同様に装置の小型化を図れるとともにコストアップを抑えることができる。
【0047】
次に、迂回路6の特有の構成について詳述する(請求項1〜4)。
迂回路6は、この迂回路6に案内される用紙(シート)の移動軌跡が湾曲したR形状になる箇所を少なくとも2つ有しており、迂回路6におけるシート搬送方向Xaの下流側のR形状が最も大きくなる構成となっている。これは、用紙に与える負荷変動(以下、単に「負荷変動」という)が大きくなる箇所をシート搬送方向Xaの上流側にもってくる構成を採ることによって、上述した課題を解決すべく、用紙送り精度や画像への影響を抑制するためである。以下、R形状になる箇所を「R形状部」ないし「R部」ともいう。
【0048】
図1では、用紙の移動軌跡がR形状になるような箇所を2つ有している。迂回路6におけるシート搬送方向Xa上流側のR部の曲率半径の大きさをR1、シート搬送方向Xa下流側のR部の曲率半径の大きさをR2としている。迂回路6におけるR1とR2との関係は、R1<R2となるように構成している。
【0049】
図2〜図5を参照して、本発明の効果が生じる理由の詳細を説明する。図2は、各種迂回路(従来の比較例1,2および本発明)の構成と負荷変動との関係について説明する図である。
図2は、上段の図が各種迂回路の構成を示し、下段の図が各種迂回路における負荷変動を示すグラフとなっている。図2(A)は、迂回路6XのR部構成が上下(または左右)対称の比較例1を示し、図2(B)は、迂回路6のR部構成がシート搬送方向Xa下流側のR形状(R2)が最も大きくなる本発明の構成例を示す。図2(C)は、迂回路6YのR部構成がシート搬送方向Xa上流側のR形状(R1)が最も大きくなる比較例2の構成例を示す。図2の下段の図の横軸は、迂回路の入口からの距離(迂回路での位置)を、縦軸はその距離・位置における負荷の大きさを示している。迂回路の入口部分の距離XをX=0とし、出口部分をX=X1としている。搬送ローラ1内の矢印は、搬送ローラ1の回転方向を示している。
【0050】
図2(A)の比較例1では、迂回路6XのR部構成が上下(または左右)対称であり、R部の大きさ(曲率半径)が一定であることから、用紙が迂回路6Xを搬送された際の負荷は一定となる。
図2(B)の本発明(本実施形態)では、用紙が迂回路6におけるシート搬送方向Xa下流側に搬送されるにつれてR形状が大きくなる(R1<R2である)ことから、その際の負荷は上流側では大きく、下流側では小さくなる。
図2(C)の比較例2では、用紙が迂回路6Yにおけるシート搬送方向Xa下流側に搬送されるにつれてR形状が小さくなる(R1>R2である)ことから、その際の負荷は上流側では小さく、下流側では大きくなる。
【0051】
図3は、図2(B)の本発明の迂回路6における負荷と用紙送り精度、および画像への影響(その1)を説明する図である。同図では、図2(B)の本発明の迂回路構成を例として迂回路6における負荷がシート搬送方向Xa上流側にある際の迂回路6における負荷と用紙送り精度、および画像への影響(その1)を説明する図となっている。
図3において、ハッチを施して示す(a)は、用紙が迂回路6におけるシート搬送方向Xa上流側のR部であるR1部に搬送された際の負荷を示している。(a)の領域において大きな負荷が発生しても、シート搬送方向Xa下流側のR部である梨地模様で示すR2には(a)の領域よりも大きい領域の(b)の負荷を持ち合わせていることから、(a)の負荷は(b)の負荷に打ち消され、用紙送り精度や画像への影響はなくなる。
【0052】
図4は、図2(C)の比較例2の迂回路6Yにおける負荷と用紙送り精度、および画像への影響(その2)について説明する図である。同図では、図2(C)の比較例2の迂回路構成を例として、迂回路6Yにおける負荷がシート搬送方向Xa下流側にある際の迂回路の負荷と用紙送り精度、および画像への影響(その2)を説明する図となっている。
図4において、(a)は用紙後端部分が迂回路6Y下流側のR部であるR2に搬送された際の負荷を示している。上述した図3では、シート搬送方向Xa上流側で大きな負荷が発生してもシート搬送方向Xa下流側にそれよりも大きな負荷領域を持ち合わせていたことから用紙送り精度や画像への影響は発生しなかったが、図4では(a)の部分の負荷を打ち消すものがないため、(a)の負荷分だけ用紙送り精度や画像へ影響を与えてしまう。
【0053】
図4の比較例2において、図1に示した先端コロ4での負荷(搬送力)を(a)の負荷以上に大きくなるような構成にすると、図3での説明と同様に(a)の負荷を打ち消すことができるが、今度は用紙後端が先端コロ4を抜けた際にその負荷を打ち消すことができず、用紙送り精度や画像への影響がより一層大きくなってしまう。
そこで、本発明では図2(B)のようにシート搬送方向Xa下流側のR形状(用紙の移動軌跡のR形状)であるR2が最も大きくなる構成にすることによって、用紙送り精度や画像への影響を抑制している。
【0054】
図5は、本発明の迂回路構成である図2(B)の迂回路6における負荷と用紙送り精度、および画像への影響(その3)について説明する図である。
本発明の迂回路構成では、シート搬送方向Xa下流側のR形状であるR2が最も大きくなる構成であることから、用紙後端が迂回路6を抜ける際の負荷を図5の(D)のように最低限小さくすることができ、用紙送り精度や画像への影響を抑制できる。加えて、(a)の負荷が小さいことから、図1の先端コロ4での負荷とともに、(a)の負荷も小さくすることができ、用紙送り精度や画像への影響を抑制することができる。
【0055】
一方、図5の(E)は、図2の(A)の比較例1の迂回路構成の場合を示す。R部の(曲率半径の)大きさを大きくすることによって、図5の(E)の(a)の部分の負荷を小さくすることはできるが、それでは、マシンサイズも大きくなりコストアップの要因にもなる。
【0056】
本実施形態において、迂回路6の距離は、インクジェットプリンタ100で使用可能な最小用紙(シート)サイズにおけるシート搬送方向Xaの用紙(シート)長以下に設定している(請求項3)。ここで、迂回路6の距離とは、図1の両面加圧コロ5のニップ部中心から先端コロ4のニップ部中心までの距離(用紙の移動距離)を意味する。なお、用紙も種類によって長さが異なってくるが、本実施形態では、「はがき」の長手方向の長さ以下としている。
上記のように、迂回路の距離を用紙長(用紙の長手方向の長さ)以下にすることによって、負荷を最低限まで小さくすることができ、かつ、用紙送り精度を向上させることができる。
【0057】
これは、迂回路の距離を用紙長以上にすると、迂回路上にコロやローラを配置することになり、新たな負荷が発生して印字ズレが生じる可能性があるためである。また、その分のスペースや部材配置によるコストも生じてくることになる。
さらに、迂回路の距離を逆に短くしすぎると、負荷が全体的に大きくなり、用紙を離間させる直前の両面加圧コロ(例えば、図1に示した両面加圧コロ5)の圧を上げる必要がでてくるので、迂回路の距離は短すぎても問題が発生することとなる。
【0058】
本実施形態において、迂回路6における用紙の移動軌跡がR形状になる箇所のガイド部材6a,6bのガイド面形状は、シート搬送方向Xaの最も上流側のR形状箇所R1部を含め、片面印刷済みの用紙の画像面を内側に湾曲させる構成となっている(請求項1)。
上記のように、片面印刷済みの用紙の画像面をガイド部材6a,6bの内側のガイド部材6bの内壁面側に向くように湾曲させる迂回路6の構成にすることにより、紙種(シートの種類)によらず、画像面の擦れを最低限に抑えることができ、用紙の第1面(片面印刷済みの用紙の画像面)における画像劣化を抑制することができる。
【0059】
本実施形態において、迂回路6上では用紙を搬送させるための搬送ローラ対等の搬送手段や、用紙の搬送を補助するための搬送補助手段であるローラやコロなどは備えていない構成を採っている(請求項4)。
上記のような構成にすることによって、シート搬送方向Xa下流側のローラ対との線速差による印字ズレ(用紙送り精度の悪化や画像への影響)を防ぐことができ、またローラやコロなどによる用紙後端のニップ抜け時の負荷変動の影響をなくすことができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図6を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。図6は、本発明の第2の実施形態を示すインクジェットプリンタ全体の簡略的な正面図である。図1に示した第1の実施形態では、用紙搬送パスが水平搬送パスの場合のインクジェットプリンタ100について説明したが、図6に示す第2の実施形態のインクジェットプリンタ100Aのような垂直搬送パスの場合でも本発明を適用できる。
【0061】
第2の実施形態のインクジェットプリンタ100Aは、第1の実施形態のインクジェットプリンタ100と比較して、水平搬送パスに代えて、用紙搬送パスが鉛直方向の上下である垂直搬送パスとした点、および迂回路6の下側に給紙カセット19を設けている点である。
給紙カセット19は、用紙9を複数枚積載する給紙トレイ8が画像形成装置本体としてのインクジェットプリンタ本体に対して挿脱(引出し)可能なシート収容手段としての機能を有する。同図において、符号21で示す破線は、給紙カセット19のインクジェットプリンタ本体に対する挿脱領域を表わしている。
【0062】
迂回路6を大きくすると、用紙9に対する迂回路全体の負荷が小さくなるので、用紙送り精度や画像への影響を抑制することができる。しかしながら、それでは給紙カセット19の挿脱領域21を下方向に超えるため、給紙カセット19と干渉してしまう。迂回路6を図6に示すよりも大きくして給紙カセット19の挿脱領域21をインクジェットプリンタ本体であるマシン下側に下げることはできるが、それではマシンサイズが大きくなってしまう。
本実施形態によれば、迂回路6を、給紙カセット19の挿脱領域21より下側にならないように設けることによってマシンサイズを最低限小さくすることができる。
【0063】
(変形例1)
図7を参照して、第1ないし第2の実施形態の変形例1を説明する。変形例1では、迂回路の構成・形状は、搬送ベルト10の通常搬送面でもある対向面10a(記録ヘッド3と対向した面)と、搬送ベルト10の戻し側ないし再給送側の面でもある反対向面10b(記録ヘッド3と対向していない反対側の面)との角度θが360度以下でも適用できることを説明する。
【0064】
角度θが360度以下の一例を図7(A)、図7(B)に示す。図7(A)、図7(B)において、太矢印で示す符号Xa1が搬送ベルト10の対向面10aにおける搬送方向を、太矢印で示す符号Xa2が搬送ベルト10の反対向面10bにおける搬送方向をそれぞれ示している。また、図7(B)において、符号15は、搬送ベルト10の搬送力に従動回転する従動ローラである。図7(A)、図7(B)では、搬送方向Xa1上流側に駆動・回転部材である搬送ローラ1を配置しているが、これに限らず、搬送方向Xa1下流側に配置してもよい。
角度θは、搬送ベルト10の対向面10aと、搬送ベルト10の反対向面10bとの角度を表している。図7(A)、図7(B)は、何れも360度の際の一例であり、この角度以下でも本発明の迂回路の構成・形状を適用できる。
【0065】
図8に、図7(A)、図7(B)の変形例1とは別の、角度θが360度以下の場合の迂回路6の構成・形状の一例を示す。図8に示す迂回路6Aは、用紙の移動軌跡がR形状になる箇所(R部)を3箇所(R1,R2,R3)有し、迂回路6Aの最下流側のR3が用紙の移動軌跡が最も大きくなるような構成となっている。
角度θが360度以下であっても、図8のように迂回路6Aの最下流側のR3が最も大きくなる構成にすることによって、用紙後端部分が迂回路6Aの最下流側に搬送された際の負荷を最低限に小さくすることができ、用紙送り精度や画像への影響を抑制できる。
【0066】
(変形例2)
図9を参照して、変形例2を説明する。変形例2は、本発明を、例えば特許文献2の図1に開示されているインクジェット方式の画像形成装置に適用した一例である(請求項1)。
図9において、第1の実施形態として図1に示したインクジェットプリンタ100を構成する構成要素(部材や構成部品等)と、多少の形状および配置の違いがあっても、基本的に同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付すものとする。
【0067】
図9は、変形例2のインクジェットプリンタの要部構成を示す簡略的な正面図である。同図に示す変形例2のインクジェットプリンタ100Bは、図1のインクジェットプリンタ100と比較して、搬送部1に代えて、搬送装置24を用いる点、図1の共通搬送路56、再給紙路57、ガイド部材58および排紙反転部53を除去した点、給紙部52に代えた給紙部52Aを用いる点、迂回路6に代えて、反転経路としての反転路25を用いる点が主に相違する。
【0068】
搬送装置24は、図1の搬送部1と比較して、搬送ローラ1に代えて、両矢印で示す時計回り、反時計回りに回転駆動に構成された搬送ローラ1Aを用いる点、および図1の先端コロ4に代えて、時計回り、反時計回りに従動回転可能に構成された先端コロ4Aを用いる点が主に相違する。搬送装置24は、搬送ローラ1Aとテンションローラ2との間に巻き掛け・張設された搬送ベルト10からなる。
【0069】
反転路25には、片面印刷済みの用紙9を搬送する搬送手段としての搬送ローラ対27が配置されている。搬送ローラ対27は、図1等の迂回路6と比べて総距離が長いことに伴う搬送負荷を補うために配設している。反転路25における搬送ローラ対27の配置部よりもシート搬送方向X2下流側には、用紙の移動軌跡がR形状になる箇所を2つ有している。反転路25におけるシート搬送方向X2上流側のR部の曲率半径の大きさをR1、シート搬送方向X2下流側のR部の曲率半径の大きさをR2としている。反転路25におけるR1とR2との関係は、R1<R2となるように構成している。なお、反転路25を構成するガイド部材の図示は、図の簡明化のため省略している。
【0070】
給紙部52Aは、図1の給紙部52と比較して、レジスト手段としてのレジストローラ26を新たに用いる点、および図1の給紙搬送路55に代えた給紙搬送路55Aを用いる点が主に相違する。
給紙搬送路55Aには、未印刷の用紙9先端を一旦停止して斜行等の用紙姿勢を矯正し画像形成部50との画像形成タイミングに合わせて給送するレジストローラ26が配置されている。なお、給紙搬送路55Aを構成するガイド部材の図示は、図の簡明化のため省略している。
【0071】
インクジェットプリンタ100Bの動作を説明する。インクジェットプリンタ100Bを用いて、用紙9の第1の面(表面)および第2の面(裏面)に印刷を行う両面印刷を自動にて行う場合の動作を説明する。用紙9の第1の面を印刷する際には、図1のインクジェットプリンタ100の給紙動作と同様にして1枚に分離搬送された用紙9はレジストローラ26に搬送され、ここで用紙9先端は停止しているレジストローラ26に一旦突き当てられることで斜行等の用紙姿勢が矯正された後、画像形成タイミングに合わせて給紙搬送路55Aを通って矢印で示すシート搬送方向X1に搬送される。
【0072】
次いで、先端コロ4Aを介して搬送ベルト10に押し付けられると同時に搬送ベルト10に吸着されて搬送装置24によってさらに矢印で示すシート搬送方向X1に搬送ベルト10の対向面10aにて搬送され、画像形成部50の記録ヘッド3によって印刷が行われる。ここで、搬送ベルト10は帯電ローラ7によって電荷を帯電させられた状態にあるので、用紙9は搬送ベルト10に静電的に吸着されて記録ヘッド3の下方に至り、画像情報に基づいて記録ヘッド3が駆動され、第1の面(表面)に印刷が行われ所定の画像が形成される。
この画像形成装置の記録方式としては、インクジェット方式、ワイヤドット方式、サーマル方式、レーザービーム方式等あらゆる種類の方式を採用することができる(上記した第1、第2の実施形態等でも同様)。
【0073】
第1の面に印刷が行われた(片面印刷済みの)用紙は、先端が記録ヘッド3の位置から前方へ突出した状態でインクの乾燥を待った後、搬送装置24の駆動方向が切り換えられることで、用紙をスイッチバックさせ、再び搬送ベルト10の対向面10aにて図9の左方に搬送し、分岐爪28の位置を切り換えて、用紙を反転路25方向に案内し送り込む。反転路25において、用紙は搬送ローラ27付近を走行する間に、片面印刷済みの第1の面が下面(画像面側を黒三角形の下側とする)となるように反転させられた後、用紙の先端が先端コロ4Aとの合流地点直前に設けられた用紙センサ29の位置に達する。
【0074】
第1の面、第2の面が反転させられた用紙先端が用紙センサ29に達すると、用紙センサ29がオンし、搬送装置24の駆動が停止し、用紙もその位置に停止する。その後、分岐爪28の位置が再び切り換わると同時に搬送装置24の駆動方向が再び切り換わる。
次いで、帯電ローラ7によって電荷が帯電された搬送ベルト10の部分が先端コロ4Aの直前位置に来るタイミングで、搬送ローラ27が回転駆動され、用紙は先端コロ4Aを介して搬送ベルト10に押し付けられると同時に搬送ベルト10の対向面10aに吸着されて図において右方に搬送される。搬送ベルト10に吸着された用紙が記録ヘッド3の下方へ至ると、その位置で画像情報に基づいて記録ヘッド3が駆動され、用紙の第2の面に所定の画像が形成され、両面印刷された用紙が図示しない排紙トレイに排出される。
【0075】
本変形例では、反転路25において、以下のような特有の動作が行われる。片面印刷済みの用紙は搬送ローラ27の回転駆動によりシート搬送方向X2の下流側に搬送されるとき、上述したように片面印刷済みの用紙の第1の面が下面(画像面側を黒三角形の下側とする)となるように反転させられて搬送されるが、片面印刷済みの用紙の画像面がR1部およびR2部では内側を向くことになる。例えば、図9において、用紙後端が負荷により戻ろうとする戻り方向を白抜き矢印で示すとき、シート搬送方向X2の上流側のR1部では、画像面とは反対の未画像面が外側ガイド部材のガイド面に対向すると同時に、画像面側が内側ガイド部材のガイド面に対向するので、曲率半径の小さい上流側のR1部であっても片面印刷済みの用紙の画像面を擦るようなことがなくなる。上記した点は、第1および第2の実施形態の迂回路6でも同様である。
ちなみに、図9でR2部でも画像面が外側になっているが、湾曲・ターンの度合いがR1部に比べてきつくないので、R1部に比べて用紙に対する負荷が小さく擦る力が弱いと考えられるので、R1部に比べて画像面が擦れてしまう問題発生は少なくなる。
【0076】
上述した変形例2に対し、従来の特許文献2等の反転経路では、全て片面印刷済みの画像面が反転経路を構成するガイド部材の外側のガイド面(内壁)を向いているので、用紙後端が抜けようとしたときの負荷によって、外側のガイド面に用紙の画像面が擦れてしまう不具合発生の虞がある。
【0077】
上記全ての実施形態および変形例では、シートへの画像形成後にスイッチバックしてから用紙を反転する構成であるが、これに限られない。例えば、画像形成後のシートの表裏を反転して搬送ベルトの裏面または搬送路を経由してから、スイッチバックして搬送ベルト上のニップ部(レジスト)に用紙先端を案内するスイッチバック路を有する構成にしてもよい。その場合、スイッチバック路に上記実施形態や変形例のようなR形状を設ければ、同じ効果を奏することは無論である。
【0078】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態や変形例等について説明したが、本発明が開示する技術は、上述した実施例を含む実施形態や変形例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【0079】
本発明に係る画像形成装置は、上記実施形態におけるインクジェット方式のインクジェットプリンタ100に限らず、例えば、プリンタ、プロッタ、ワープロ、ファクシミリ、複写機等またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等においてインクジェット記録装置を含む画像形成装置にも適用可能である。また、本発明に係る画像形成装置は、上記実施形態におけるシリアル型のインクジェットプリンタ100に限らず、例えばライン型のインクジェット記録装置で、シートを吸着搬送する搬送ベルトを用いる画像形成装置等にも準用可能である。
また、シートとしては、用紙9に限らず、上記したように使用可能な薄紙から厚紙、はがき、封筒、あるいはOHPシート等まで、インクジェット方式で画像形成可能な全てのシートを含むものである。
【符号の説明】
【0080】
1,1A 搬送ローラ(駆動・回転部材)
2 テンションローラ(従動・回転部材)
3 記録ヘッド(画像形成手段)
4 先端コロ(搬送手段、搬送補助手段)
5 両面加圧コロ(搬送手段、搬送補助手段)
6,6A 迂回路(迂回経路)
7 帯電ローラ(帯電手段)
8 給紙トレイ
9 用紙(シート、被記録媒体)
10 搬送ベルト(搬送手段)
10a 搬送ベルトの対向面
10b 搬送ベルトの反対向面
11 排紙ローラ(再給送手段、排出手段)
12 拍車ローラ(再給送手段、排出手段)
16 分岐爪(分岐手段、再給送手段)
19 給紙カセット(シート収容手段)
21 挿脱領域
24 搬送装置
25 反転路(反転経路)
27 搬送ローラ対(搬送手段)
50 画像形成部
51 搬送部
52 給紙部
53 排紙反転部
55 給紙搬送路
56 共通搬送路
57 再給紙路(再給送経路、再給送手段)
100,100A,100B インクジェットプリンタ(画像形成装置)
Xa 副走査方向(シート搬送方向)
Xb シート排出方向
X1,X2 シート搬送方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2006−232440号公報(特許請求の範囲、段落「0008」、「0010」、「0012」、図1等)
【特許文献2】特開2005−148365号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの回転部材間に掛け回されて周回移動され、シートを搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトと対向して配置され、該搬送ベルトにより搬送されてくるシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記搬送ベルトを通過した片面画像形成済みのシートをスイッチバックさせて、再度、前記画像形成手段側へ再給送する再給送手段と、
前記再給送手段により給送されてきた片面画像形成済みのシートの表裏を反転して、再度、前記画像形成手段と対向する対向側の前記搬送ベルト面へ案内する反転経路と、
を有する画像形成装置において、
前記反転経路は、該反転経路に案内されるシートの移動軌跡が湾曲したR形状になる箇所を少なくとも2箇所備え、
前記反転経路におけるシート搬送方向の最も下流側の前記R形状は、該シート搬送方向の上流側の他のR形状よりも大きく構成され、かつ、前記シート搬送方向の最も上流側のR形状箇所のガイド面は、片面画像形成済みのシートの画像形成面側を内側に湾曲させるように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記再給送手段は、片面画像形成済みのシートを前記画像形成手段と対向しない反対向側の前記搬送ベルト面に再給送し案内するよう構成されており、
前記反転経路は、片面画像形成済みのシートが前記反対向側の前記搬送ベルト面を通過した後、前記搬送ベルトの移動方向における前記画像形成手段との対向部よりも上流側の前記回転部材に掛け回されている前記搬送ベルトの外側周囲を迂回して前記対向側の前記搬送ベルト面に案内する迂回経路であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記反転経路の距離は、前記画像形成装置で使用可能な最小シートサイズにおける前記シート搬送方向のシート長以下に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記反転経路は、搬送手段を備えていないことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置本体に対して挿脱可能であり、シートを収容するシート収容手段を有し、
前記反転経路は、前記シート収容手段の挿脱領域から退避した位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−101906(P2012−101906A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252277(P2010−252277)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】