画像形成装置
【課題】定着ユニットの被駆動伝達部の支軸の亀裂や折損を防止することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】
定着ユニット18が画像形成部14のケーシング20内に挿入されて装着位置に配置されると、定着ユニット18の支軸41の孔43に突出部62が挿入される。これにより、支軸41の基部44がサイドフレーム35によって支持される。また、支軸41の先端部45が支軸75の突出部62によって支持される。これにより、定着ユニット18の支軸41が基部44および先端部45の両方で支持されることになり、定着ローラ38に過大な回転負荷がかかったとしても、支軸41の亀裂や折損が防止される。
【解決手段】
定着ユニット18が画像形成部14のケーシング20内に挿入されて装着位置に配置されると、定着ユニット18の支軸41の孔43に突出部62が挿入される。これにより、支軸41の基部44がサイドフレーム35によって支持される。また、支軸41の先端部45が支軸75の突出部62によって支持される。これにより、定着ユニット18の支軸41が基部44および先端部45の両方で支持されることになり、定着ローラ38に過大な回転負荷がかかったとしても、支軸41の亀裂や折損が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラを有する定着ユニットが装置本体に対して着脱可能に設けられた画像形成装置に関し、特に、装置本体からの駆動力が定着ローラに伝達可能な第1位置と定着ローラへの前記駆動力の伝達が遮断される第2位置との間で前記定着ユニットが挿抜可能に設けられた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの各機能が搭載された複合機などの画像形成装置には定着ユニットが設けられている。前記定着ユニットは、ヒータが内蔵された定着ローラと、この定着ローラに圧接された加圧ローラとを備えている。前記定着ローラは前記定着ユニットによって回転可能に支持されており、画像形成装置の装置本体に装着された状態で該装置本体から駆動力が伝達される。これにより、前記定着ローラが一方向へ回転する。前記定着ローラと前記加圧ローラとの間に転写紙が通過すると、ヒータによって高温に加熱された前記定着ローラによって転写紙上のトナーが溶融し、転写紙にトナーが定着する。
【0003】
この種の画像形成装置は、図11の模式図に示されるように、定着ユニットの定着ローラ120に駆動力を伝達する駆動伝達機構100が設けられている。駆動伝達機構100は、前記定着ユニットが前記装置本体に装着された状態で、前記定着ユニットに設けられた被駆動伝達部101と装置本体に設けられた駆動伝達部111とが連結し、前記駆動伝達部111から前記被駆動伝達部101へ駆動力が伝達されるように構成されている。具体的には、被駆動伝達部101のフレーム102に設けられた支軸103に駆動ジョイント105が回転可能に設けられており、駆動伝達部111のフレーム112に設けられた支軸113に駆動ジョイント115が回転可能に設けられており、駆動ジョイント115と一体の伝達ギヤ114に駆動力が入力されると、駆動ジョイント115、駆動ジョイント105、中間ギヤ104、駆動ギヤ119を介して定着ローラ120に駆動力が伝達される。なお、前記定着ローラを駆動させる伝達機構ではないが、特許文献1乃至5には、各回転体に対して駆動力を伝達する種々の伝達機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−72158号公報
【特許文献2】特開2006−171631号公報
【特許文献3】特開平10−69157号公報
【特許文献4】特開2003−28241号公報
【特許文献5】特開2002−82506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図11に示される従来の駆動伝達機構100では、前記定着ユニットでジャムが発生した場合に前記定着ローラ120が急停止すると、前記中間ギヤ104に過大な負荷がかかり、この負荷によって前記中間ギヤ104及び前記駆動ジョイント105の支軸103の基部106に応力が集中し、支軸103の基部106に亀裂が生じたり、場合によっては支軸103が折損するおそれがある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、定着ユニットの被駆動伝達部の支軸の亀裂や折損を防止することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転可能に支持された定着ローラを有し、装置本体からの駆動力が前記定着ローラに伝達可能な第1位置と前記定着ローラへの前記駆動力の伝達が遮断される第2位置との間で挿抜可能に前記装置本体に設けられた定着ユニットと、前記定着ユニットの挿入方向の奥部に設けられ、前記第1位置において前記装置本体から伝達された駆動力を前記定着ローラに伝達する被駆動伝達部と、前記装置本体において前記定着ユニットの奥部と対向するように設けられ、前記駆動力を前記被駆動伝達部に伝達する駆動伝達部と、を備えた画像形成装置として構成されている。前記駆動伝達部は、前記定着ユニットの脱抜方向へ延びる第1支軸と、前記第1支軸に回転可能に設けられた第1駆動ジョイントと、前記第1支軸の先端から前記脱抜方向へ突出した突出部と、を有している。前記被駆動伝達部は、前記定着ユニットの奥部から前記挿入方向へ延びる第2支軸と、前記第2支軸に回転可能に設けられ、前記第1駆動ジョイントと軸方向に連結することによって軸回転方向の駆動力を前記第1駆動ジョイントから受ける第2駆動ジョイントと、前記第2支軸の先端に設けられ、前記定着ユニットが前記第1位置に挿入されたときに前記突出部が挿入可能な挿入孔と、を有している。
【0008】
このように構成されているため、前記定着ユニットが前記装置本体の第1位置まで挿入されると、前記第2支軸の挿入孔に前記第1支軸の前記突出部が挿入される。これにより、前記第2支軸の基部側が前記定着ユニットによって支持される一方で、前記第2支軸の先端側が前記第1支軸の突出部によって支持される。これにより、前記定着ユニットの第2支軸の亀裂や折損が防止される。また、前記駆動伝達部の第1駆動ジョイントと前記被駆動伝達部の第2駆動ジョイントとの連結部における軸心ズレも防止される。
【0009】
本発明の画像形成装置は、前記定着ユニットの奥部に設けられたガイドリブを更に備える。このガイドリブは、前記第2支軸を中心とする円弧状形状に形成されている。
【0010】
これにより、前記第2駆動ジョイントの外周面が前記ガイドリブによって補強されるので、前記第2支軸の基部の亀裂や折損が防止される。
【0011】
前記第2駆動ジョイントは、前記第2支軸を中心とする外周面に前記中間ギヤが形成されている。また、前記中間ギヤは、前記定着ローラに設けられた駆動ギヤの上部に噛合されている。この場合、前記ガイドリブは、前記中間ギヤと前記駆動ギヤとの噛合点から前記中間ギヤの回転方向の上流側に配置されていることが好ましい。
【0012】
このように前記駆動ギヤの上部に前記中間ギヤが配置されている構成では、ジャムなどによって前記定着ローラが急停止すると、前記中間ギヤが前記駆動ギヤの外周に沿って移動しようとする。つまり、前記中間ギヤと前記駆動ギヤとの噛合点から前記第2支軸の回転方向の上流側へ前記中間ギヤが向かおうとする。このため、前記第2支軸は前記中間ギヤから前記上流側へ倒される荷重を受ける。この荷重が前記第2支軸にかかるのを抑制するために、前記ガイドリブが前記噛合点から前記第2支軸の回転方向の上流側に配置されている。これにより、前記中間ギヤによる荷重がガイドリブにかかり、その結果、前記第2支軸の亀裂や折損が防止される。
【0013】
本発明の画像形成装置は、前記定着ユニットの奥部に設けられた複数の補強リブを更に備える。前記補強リブは、前記ガイドリブの外周面から法線方向外側へ放射状に設けられている。
【0014】
これにより、前記ガイドリブが補強されるため、前記ガイドリブは、前記中間ギヤによるより大きな荷重を受け止めることができる。
【0015】
前記挿入孔の周縁部がテーパー形状に形成されていることが好ましい。
【0016】
これにより、前記第1支軸の突出部が前記挿入孔に容易に案内されるため、前記駆動伝達部と前記被駆動伝達部とが容易に連結される。
【0017】
前記定着ユニットは、合成樹脂材料を射出成形することにより形成された均一厚さのフレームを有する。また、前記第2支軸は、前記フレームと一体に形成され、前記均一厚さよりも大きい外径に形成されている。この場合、前記第2支軸の前記挿入孔は、前記第2支軸を前記均一厚さとなるように肉盗みすることにより形成されていることが好ましい。このような構成に本発明は好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像形成装置によれば、前記定着ユニットの前記被駆動伝達部の支軸の亀裂や折損を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置10の外観構成を示す斜視図。
【図2】定着ユニット18の外観構成を示す斜視図。
【図3】定着ユニット18の被駆動伝達部40を示す分解斜視図。
【図4】定着ユニット18の後方部分を示す拡大斜視図。
【図5】駆動ギヤ48及び中間ギヤ49の周辺機構を示す模式図。
【図6】駆動ユニット60の構成を示す部分斜視図。
【図7】駆動ユニット60のジョイント69の構成を示す部分拡大斜視図。
【図8】図6における切断面VIII−VIIIの断面構造を示す部分断面図。
【図9】本発明の変形例1の構成を示す部分拡大斜視図。
【図10】本発明の変形例2の構成を示す部分拡大斜視図。
【図11】従来の駆動伝達機構の構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態に係る複写機10(本発明の画像形成装置の一例)について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態は適宜変更できる。また、以下の説明においては、複写機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、操作表示部17が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複写機10を手前側(正面側)から見て左右方向9を定義する。
【0021】
まず、図1を参照して複写機10の概略構成について説明する。図1に示されるように、複写機10は、読み取られた原稿の画像を記録用紙に転写するものであり、上部に原稿の画像を読み取るスキャナ12が設けられ、下部に電子写真方式の画像形成部14(本発明の装置本体に相当)が設けられている。なお、図1では、スキャナ12の原稿カバーの図示が省略されている。
【0022】
画像形成部14は、スキャナ12で読み取られた画像データに基づいて記録用紙にモノクロ画像又はカラー画像を形成するものであり、主として、記録用紙を保持可能な給紙トレイ16と、給紙トレイ16から給送された記録用紙にトナー像を転写する転写装置(不図示)と、記録用紙に転写されたトナー像を記録用紙に定着させる定着ユニット18(本発明の定着ユニットの一例)と、操作表示部17と、駆動ユニット60(本発明の駆動伝達部の一例、図6参照)とを備えている。これらの構成要素は、画像形成部14の筐体を構成するケーシング20の内部に配置されている。ケーシング20の上部とスキャナ12との間には、前方が開放された排紙スペース21が区画されている。その排紙スペース21の下面を排紙トレイ23が区画している。給紙トレイ16から給送された記録用紙は、ケーシング20内の左側に区画された搬送路(不図示)を上方へ移動され、その移動過程において記録用紙にトナー像が転写される。記録用紙に転写されたトナー像は、定着ユニット18を通過する際に加熱溶融されることによって記録用紙に定着する。定着ユニット18を通過した記録用紙は、排紙スペース21に排出されて、排紙トレイ23に保持される。
【0023】
定着ユニット14は、図1に示されるように、ケーシング20の上部の左側に設けられている。定着ユニット14は、ケーシング20に対して挿抜可能なように前後方向8へスライド可能に支持されている。詳細には、定着ユニット14は、ケーシング20の後方奥部に装着された装着位置(本発明の第1位置に相当)と、図1に示されるようにケーシング20から前方へ引き出された脱抜位置(本発明の第2位置に相当)との間でスライド可能に支持されている。本実施形態では、定着ユニット14が前記装着位置に配置されたときに画像形成部14内の駆動ユニット60(図6参照)から定着ユニット14に駆動力が伝達可能となる。また、定着ユニット14が前記装着位置から前方へ引き出されて非装着状態にされると、駆動ユニット60からの駆動力の伝達が遮断される。
【0024】
以下、図2乃至図5を参照して、定着ユニット14及び駆動ユニット60の構成について詳細に説明する。なお、各図では、ケーシング20に装着されているときの定着ユニット14の姿勢が表されており、説明の便宜上、装着姿勢のときの鉛直方向を上下方向7とし、ケーシング20に対する挿抜方向を前後方向8とし、水平方向を左右方向9としている。また、図5は、駆動ギヤ48及び中間ギヤ49の周辺機構を後方から見たときの模式図である。
【0025】
定着ユニット14は、図2に示されるように、前後方向8に長い形状を有しており、前後方向8に延びるフレーム34と、フレーム34の長手方向の両端のサイドフレーム35,36それぞれに支持された定着ローラ38(図3参照)と、加圧ローラ(不図示)とを備えている。定着ローラ38は、各サイドフレーム35,36に回転可能なように支持されている。フレーム34は、溶融した合成樹脂を金型に流し込み、射出成形(インジェクション成形)することによって形成される合成樹脂製品である。一般に、溶解した合成樹脂は冷えて固められると収縮する。そのため、収縮によってフレーム34に所謂「ヒケ」が生じないように、フレーム34は、いずれの部位も均等な厚さに形成されている。なお、「ヒケ」とは、合成樹脂製品において肉厚不均等により生じる収縮差を原因とする凹みや窪み、歪みなどの不良のことをいう。
【0026】
なお、定着ユニット18では、トナーを溶融するために定着ローラ38の表面温度がおよそ250℃になるように加熱される。そのため、本実施形態では、定着ユニット18のフレーム34の材料として、熱可塑性の合成樹脂の中でも耐熱性及び強度に優れたPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート)又はPET樹脂を主成分とする合成樹脂が用いられている。もちろん、定着ユニット18の高温環境に耐えうるのであればPET樹脂以外の合成樹脂でフレーム34を形成してもかまわない。
【0027】
図2に示されるように、定着ユニット14の後方側の奥部、具体的には、フレーム34の後方側のサイドフレーム35には、画像形成部14の駆動ユニット60と連結される被駆動伝達部40(本発明の被駆動伝達部の一例)が設けられている。被駆動伝達部40は、駆動ユニット60からの駆動力を定着ローラ38に伝達するものである。
【0028】
図3に示されるように、被駆動伝達部40は、サイドフレーム35から突出して後方へ延びる支軸41(本発明の第2支軸の一例)と、支軸41に回転可能に設けられるジョイント42(本発明の第2駆動ジョイントの一例)とを有する。支軸41の基部44とサイドフレーム35との接続部分には、基部44の外周面に沿うように複数の補強リブ51(図4参照)が設けられている。支軸41は、フレーム34と一体に構成されたものであり、射出成形によってフレーム34と一体に形成される。したがって、支軸34は、フレーム34と同じ材料、つまりPET樹脂で形成されている。
【0029】
ジョイント42は、駆動ユニット60からの駆動力を受ける部分であり、そのためにジョイント42には強い回転負荷がかけられる。したがって、支軸41の外径は、前記回転負荷に耐えうることができる程度に十分に大きなサイズに設計されており、少なくとも、フレーム34の肉厚よりも大きい。一方、支軸41はフレーム34と一体構成であるため、支軸41の外径がフレーム34の肉厚よりも大きい場合は、支軸41に「ヒケ」が生じやすい。そのため、支軸41には所謂肉盗みが施されている。詳細には、支軸41の先端部(後方側の端部)45の中心から軸方向に沿って支軸41の芯部分が深く掘り下げられている。これによって、支軸41の軸芯部には、先端部45から支軸41に沿って延びる円筒状の孔43(本発明の挿入孔の一例)が形成される。孔43は、支軸41の先端部45からサイドフレーム35側に位置する支軸41の基部44の付近まで達している。支軸41に上述の肉盗みが施されることによって、孔43と支軸41の外周壁との厚み(支軸41の肉厚)が、フレーム34の肉厚と同じサイズになっている。この肉盗みによって、フレーム34において、射出成形後に他の部分よりも厚い部分が冷え固まったときに生じる「ヒケ」が防止される。
【0030】
孔43は、被駆動伝達部40と駆動ユニット60とが連結する際に、駆動ユニット60の突出部62(図7参照)が挿入される。このときに突出部62が円滑に挿入されるように、孔43の後方側の開口の周縁部にはテーパー形状に形成されたテーパー部55(図4参照)が設けられている。このテーパー部55は、支軸41の先端部45から前方へ向けて孔43の周縁部を先細り形状に形成されたものである。これにより、突出部62がテーパー部分に案内されるようにして孔43に円滑に挿入される。
【0031】
ジョイント42は、後述の駆動ユニット60(図6参照)に連結される被連結部46と、定着ローラ38と同軸上に設けられた駆動ギヤ48に噛合される中間ギヤ49とを有する。中間ギヤ49は、ジョイント42の軸心を中心とする外周面に一体に形成された複数の歯で構成されている。ジョイント42の中心部には支軸41に挿通可能な軸孔47が形成されている。ジョイント42が図3の矢印方向へ装着されて、軸孔47に支軸41が通されることにより、ジョイント42が支軸41に回転可能に支持される。ジョイント42が支軸41に支持された状態で、中間ギヤ49が駆動ギヤ48に噛合される。
【0032】
中間ギヤ49は、定着ローラ38の駆動ギヤ48よりも上方に配置される。つまり、ジョイント42が支軸41に装着された状態で、中間ギヤ49が駆動ギヤ48の上方に配置されて、中間ギヤ49の下部と駆動ギヤ48の上部とが噛合する。本実施形態では、画像形成部14において記録用紙を上方へ搬送させつつトナーを定着させるために、定着ローラ38は、図4に示す矢印26の方向(後方から見て反時計回転方向)へ回転される。そのため、ジョイント42には、矢印26とは反対の矢印27の方向(後方から見て時計回転方向)へジョイント42を回転させる駆動力が伝達される。
【0033】
図4に示されるように、サイドフレーム35の後方側の面にガイドリブ53が形成されている。ガイドリブ53は、サイドフレーム35と一体に形成されたものである。このガイドリブ53は、サイドフレーム35から後方へ突出している。ガイドリブ53は、支軸41の軸心を中心とする円弧形状に形成されている。具体的には、支軸41にジョイント42が装着されたときに、ジョイント42の中間ギヤ49の外周面と干渉せず、しかもその外周面に沿うように、中間ギヤ49の外周面と同じ曲率の円弧形状に形成されている。
【0034】
図5に示されるように、ガイドリブ53は、中間ギヤ49と駆動ギヤ48との噛合点57からジョイント42の回転方向26の上流側に配置されている。言い換えると、ガイドリブ53は、支軸41と噛合点57とを結ぶ線分よりも、噛合点57から見て回転方向26の上流側に配置されている。したがって、仮に、記録用紙が定着ユニット18で詰まってしまい、定着ローラ38に過大な負荷がかかって定着ローラ38が停止したときに、中間ギヤ49が噛合点57から駆動ギヤ48の周囲をその回転方向27の上流側へ移動しようとしても、ガイドリブ53によってその移動が阻止される。これにより、中間ギヤ49の無理な移動によって支軸41が傾倒して折損することが防止される。なお、サイドフレーム35には、ガイドリブ53の外周面から法線方向の外側へ放射状に設けられた複数の補強リブ54が設けられている。これにより、中間ギヤ49がガイドリブ53に強く押し当たっても、中間ギヤ49の移動を確実に阻止することができる。
【0035】
以下、図6乃至図8を参照して、画像形成部14に設けられた駆動ユニット60の構成について詳細に説明する。駆動ユニット60は、定着ユニット18のサイドフレーム35に対向するようにケーシング20の後方奥部に設けられている。図6に示されるように、駆動ユニット60は、前方側に配置された前方支持プレート63と、後方側に配置された後方支持プレート64と、定着ローラ38の駆動源であるモータ66と、複数のギヤからなるギヤ列67と、ギヤ列67に連結されたジョイント69(本発明の第1駆動ジョイントの一例)と、ジョイント69を支持する支軸75(本発明の第1支軸の一例)とを備えている。モータ66は、後方支持プレート64に取り付けられている。モータ66の出力ギヤ(不図示)は、前方支持レート63と後方支持プレート64との間に回転可能に支持された複数のギヤからなるギヤ列67に噛合されている。
【0036】
図8に示されるように、前方支持プレート63及び後方支持プレート64に支軸75が固定されている。支軸75は、ケーシング20から定着ユニット18が脱抜される方向へ延出されている。詳細には、支軸75は、その軸方向が前後方向8と一致するように、且つ、定着ユニット18の支軸41と同軸となるように、前方支持プレート63及び後方支持プレート64それぞれに橋架されるように取り付けられている。この支軸75にジョイント69が回転可能に支持されている。
【0037】
図7に示されるように、ジョイント69は、被駆動伝達部40のジョイント42に連結される連結部71と、ギヤ列67に噛合される中間ギヤ73とを有する。中間ギヤ73は、ジョイント69の軸心を中心とする外周面に一体に形成された複数の歯で構成されている。ジョイント69の中心部には支軸75に挿通可能な軸孔77が形成されている。ジョイント69の軸孔77に支軸75が通されることにより、ジョイント69が支軸75に回転可能に支持される。ジョイント69が支軸75に支持された状態で、中間ギヤ73がギヤ列67に噛合される。これにより、モータ66が駆動されると、モータ66の駆動力が、ギヤ列67,中間ギヤ73、連結部71を介して定着ユニット18のジョイント42に伝達される。
【0038】
支軸75の先端部(後方側の端部)79には、先端部79の中心から後方へ突出したピン状の突出部62(本発明の突出部の一例)が形成されている。突出部62は、胴部が円柱形状に形成されており、先端部が先細り形状に形成されている。突出部62は、定着ユニット18側の孔43に挿入可能なサイズに形成されている。本実施形態では、孔43と突出部62とが隙間嵌めとなるようなサイズに形成されている。
【0039】
このように本実施形態の複写機10が構成されているため、定着ユニット18が画像形成部14のケーシング20内に挿入されて装着位置に配置されると、定着ユニット18の支軸41の孔43に突出部62が挿入される。これにより、支軸41の基部44がサイドフレーム35によって支持される一方で、支軸41の先端部45が支軸75の突出部62によって支持される。これにより、定着ユニット18の支軸41が基部44および先端部45の両方で支持されることになり、定着ローラ38に過大な回転負荷がかかったとしても、支軸41の亀裂や折損が防止される。
【0040】
なお、上述の実施形態では、支軸41の孔43が円筒状に形成され、支軸75の突出部62が円柱状に形成された場合を例示したが、例えば、図9に示されるように、支軸41に三角形の筒状に形成された孔43A(図9(A)参照)を形成し、支軸75に三角柱状の突出部62A(図9(B)参照)を設け、孔43Aに突出部62Aを挿入可能な構成を採用することも可能である。また、図10に示されるように、支軸41に四角形の筒状に形成された孔43B(図10(A)参照)を形成し、支軸75に四角柱状の突出部62B(図10(B)参照)を設け、孔43Bに突出部62Bを挿入可能な構成を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、定着ローラを有する定着ユニットが装置本体に対して着脱可能に設けられた画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10:複写機
12:スキャナ
14:画像形成部
18:定着ユニット
20:ケーシング
34:フレーム
35:サイドフレーム
38:定着ローラ
40:被駆動伝達部
41:支軸
42:ジョイント
43:孔
48:駆動ギヤ
49:中間ギヤ
51:補強リブ
55:テーパー部
57:噛合点
60:駆動ユニット
62:突出部
66:モータ
67:ギヤ列
69:ジョイント
70:連結部
73:中間ギヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラを有する定着ユニットが装置本体に対して着脱可能に設けられた画像形成装置に関し、特に、装置本体からの駆動力が定着ローラに伝達可能な第1位置と定着ローラへの前記駆動力の伝達が遮断される第2位置との間で前記定着ユニットが挿抜可能に設けられた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの各機能が搭載された複合機などの画像形成装置には定着ユニットが設けられている。前記定着ユニットは、ヒータが内蔵された定着ローラと、この定着ローラに圧接された加圧ローラとを備えている。前記定着ローラは前記定着ユニットによって回転可能に支持されており、画像形成装置の装置本体に装着された状態で該装置本体から駆動力が伝達される。これにより、前記定着ローラが一方向へ回転する。前記定着ローラと前記加圧ローラとの間に転写紙が通過すると、ヒータによって高温に加熱された前記定着ローラによって転写紙上のトナーが溶融し、転写紙にトナーが定着する。
【0003】
この種の画像形成装置は、図11の模式図に示されるように、定着ユニットの定着ローラ120に駆動力を伝達する駆動伝達機構100が設けられている。駆動伝達機構100は、前記定着ユニットが前記装置本体に装着された状態で、前記定着ユニットに設けられた被駆動伝達部101と装置本体に設けられた駆動伝達部111とが連結し、前記駆動伝達部111から前記被駆動伝達部101へ駆動力が伝達されるように構成されている。具体的には、被駆動伝達部101のフレーム102に設けられた支軸103に駆動ジョイント105が回転可能に設けられており、駆動伝達部111のフレーム112に設けられた支軸113に駆動ジョイント115が回転可能に設けられており、駆動ジョイント115と一体の伝達ギヤ114に駆動力が入力されると、駆動ジョイント115、駆動ジョイント105、中間ギヤ104、駆動ギヤ119を介して定着ローラ120に駆動力が伝達される。なお、前記定着ローラを駆動させる伝達機構ではないが、特許文献1乃至5には、各回転体に対して駆動力を伝達する種々の伝達機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−72158号公報
【特許文献2】特開2006−171631号公報
【特許文献3】特開平10−69157号公報
【特許文献4】特開2003−28241号公報
【特許文献5】特開2002−82506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図11に示される従来の駆動伝達機構100では、前記定着ユニットでジャムが発生した場合に前記定着ローラ120が急停止すると、前記中間ギヤ104に過大な負荷がかかり、この負荷によって前記中間ギヤ104及び前記駆動ジョイント105の支軸103の基部106に応力が集中し、支軸103の基部106に亀裂が生じたり、場合によっては支軸103が折損するおそれがある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、定着ユニットの被駆動伝達部の支軸の亀裂や折損を防止することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転可能に支持された定着ローラを有し、装置本体からの駆動力が前記定着ローラに伝達可能な第1位置と前記定着ローラへの前記駆動力の伝達が遮断される第2位置との間で挿抜可能に前記装置本体に設けられた定着ユニットと、前記定着ユニットの挿入方向の奥部に設けられ、前記第1位置において前記装置本体から伝達された駆動力を前記定着ローラに伝達する被駆動伝達部と、前記装置本体において前記定着ユニットの奥部と対向するように設けられ、前記駆動力を前記被駆動伝達部に伝達する駆動伝達部と、を備えた画像形成装置として構成されている。前記駆動伝達部は、前記定着ユニットの脱抜方向へ延びる第1支軸と、前記第1支軸に回転可能に設けられた第1駆動ジョイントと、前記第1支軸の先端から前記脱抜方向へ突出した突出部と、を有している。前記被駆動伝達部は、前記定着ユニットの奥部から前記挿入方向へ延びる第2支軸と、前記第2支軸に回転可能に設けられ、前記第1駆動ジョイントと軸方向に連結することによって軸回転方向の駆動力を前記第1駆動ジョイントから受ける第2駆動ジョイントと、前記第2支軸の先端に設けられ、前記定着ユニットが前記第1位置に挿入されたときに前記突出部が挿入可能な挿入孔と、を有している。
【0008】
このように構成されているため、前記定着ユニットが前記装置本体の第1位置まで挿入されると、前記第2支軸の挿入孔に前記第1支軸の前記突出部が挿入される。これにより、前記第2支軸の基部側が前記定着ユニットによって支持される一方で、前記第2支軸の先端側が前記第1支軸の突出部によって支持される。これにより、前記定着ユニットの第2支軸の亀裂や折損が防止される。また、前記駆動伝達部の第1駆動ジョイントと前記被駆動伝達部の第2駆動ジョイントとの連結部における軸心ズレも防止される。
【0009】
本発明の画像形成装置は、前記定着ユニットの奥部に設けられたガイドリブを更に備える。このガイドリブは、前記第2支軸を中心とする円弧状形状に形成されている。
【0010】
これにより、前記第2駆動ジョイントの外周面が前記ガイドリブによって補強されるので、前記第2支軸の基部の亀裂や折損が防止される。
【0011】
前記第2駆動ジョイントは、前記第2支軸を中心とする外周面に前記中間ギヤが形成されている。また、前記中間ギヤは、前記定着ローラに設けられた駆動ギヤの上部に噛合されている。この場合、前記ガイドリブは、前記中間ギヤと前記駆動ギヤとの噛合点から前記中間ギヤの回転方向の上流側に配置されていることが好ましい。
【0012】
このように前記駆動ギヤの上部に前記中間ギヤが配置されている構成では、ジャムなどによって前記定着ローラが急停止すると、前記中間ギヤが前記駆動ギヤの外周に沿って移動しようとする。つまり、前記中間ギヤと前記駆動ギヤとの噛合点から前記第2支軸の回転方向の上流側へ前記中間ギヤが向かおうとする。このため、前記第2支軸は前記中間ギヤから前記上流側へ倒される荷重を受ける。この荷重が前記第2支軸にかかるのを抑制するために、前記ガイドリブが前記噛合点から前記第2支軸の回転方向の上流側に配置されている。これにより、前記中間ギヤによる荷重がガイドリブにかかり、その結果、前記第2支軸の亀裂や折損が防止される。
【0013】
本発明の画像形成装置は、前記定着ユニットの奥部に設けられた複数の補強リブを更に備える。前記補強リブは、前記ガイドリブの外周面から法線方向外側へ放射状に設けられている。
【0014】
これにより、前記ガイドリブが補強されるため、前記ガイドリブは、前記中間ギヤによるより大きな荷重を受け止めることができる。
【0015】
前記挿入孔の周縁部がテーパー形状に形成されていることが好ましい。
【0016】
これにより、前記第1支軸の突出部が前記挿入孔に容易に案内されるため、前記駆動伝達部と前記被駆動伝達部とが容易に連結される。
【0017】
前記定着ユニットは、合成樹脂材料を射出成形することにより形成された均一厚さのフレームを有する。また、前記第2支軸は、前記フレームと一体に形成され、前記均一厚さよりも大きい外径に形成されている。この場合、前記第2支軸の前記挿入孔は、前記第2支軸を前記均一厚さとなるように肉盗みすることにより形成されていることが好ましい。このような構成に本発明は好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像形成装置によれば、前記定着ユニットの前記被駆動伝達部の支軸の亀裂や折損を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置10の外観構成を示す斜視図。
【図2】定着ユニット18の外観構成を示す斜視図。
【図3】定着ユニット18の被駆動伝達部40を示す分解斜視図。
【図4】定着ユニット18の後方部分を示す拡大斜視図。
【図5】駆動ギヤ48及び中間ギヤ49の周辺機構を示す模式図。
【図6】駆動ユニット60の構成を示す部分斜視図。
【図7】駆動ユニット60のジョイント69の構成を示す部分拡大斜視図。
【図8】図6における切断面VIII−VIIIの断面構造を示す部分断面図。
【図9】本発明の変形例1の構成を示す部分拡大斜視図。
【図10】本発明の変形例2の構成を示す部分拡大斜視図。
【図11】従来の駆動伝達機構の構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態に係る複写機10(本発明の画像形成装置の一例)について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態は適宜変更できる。また、以下の説明においては、複写機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、操作表示部17が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複写機10を手前側(正面側)から見て左右方向9を定義する。
【0021】
まず、図1を参照して複写機10の概略構成について説明する。図1に示されるように、複写機10は、読み取られた原稿の画像を記録用紙に転写するものであり、上部に原稿の画像を読み取るスキャナ12が設けられ、下部に電子写真方式の画像形成部14(本発明の装置本体に相当)が設けられている。なお、図1では、スキャナ12の原稿カバーの図示が省略されている。
【0022】
画像形成部14は、スキャナ12で読み取られた画像データに基づいて記録用紙にモノクロ画像又はカラー画像を形成するものであり、主として、記録用紙を保持可能な給紙トレイ16と、給紙トレイ16から給送された記録用紙にトナー像を転写する転写装置(不図示)と、記録用紙に転写されたトナー像を記録用紙に定着させる定着ユニット18(本発明の定着ユニットの一例)と、操作表示部17と、駆動ユニット60(本発明の駆動伝達部の一例、図6参照)とを備えている。これらの構成要素は、画像形成部14の筐体を構成するケーシング20の内部に配置されている。ケーシング20の上部とスキャナ12との間には、前方が開放された排紙スペース21が区画されている。その排紙スペース21の下面を排紙トレイ23が区画している。給紙トレイ16から給送された記録用紙は、ケーシング20内の左側に区画された搬送路(不図示)を上方へ移動され、その移動過程において記録用紙にトナー像が転写される。記録用紙に転写されたトナー像は、定着ユニット18を通過する際に加熱溶融されることによって記録用紙に定着する。定着ユニット18を通過した記録用紙は、排紙スペース21に排出されて、排紙トレイ23に保持される。
【0023】
定着ユニット14は、図1に示されるように、ケーシング20の上部の左側に設けられている。定着ユニット14は、ケーシング20に対して挿抜可能なように前後方向8へスライド可能に支持されている。詳細には、定着ユニット14は、ケーシング20の後方奥部に装着された装着位置(本発明の第1位置に相当)と、図1に示されるようにケーシング20から前方へ引き出された脱抜位置(本発明の第2位置に相当)との間でスライド可能に支持されている。本実施形態では、定着ユニット14が前記装着位置に配置されたときに画像形成部14内の駆動ユニット60(図6参照)から定着ユニット14に駆動力が伝達可能となる。また、定着ユニット14が前記装着位置から前方へ引き出されて非装着状態にされると、駆動ユニット60からの駆動力の伝達が遮断される。
【0024】
以下、図2乃至図5を参照して、定着ユニット14及び駆動ユニット60の構成について詳細に説明する。なお、各図では、ケーシング20に装着されているときの定着ユニット14の姿勢が表されており、説明の便宜上、装着姿勢のときの鉛直方向を上下方向7とし、ケーシング20に対する挿抜方向を前後方向8とし、水平方向を左右方向9としている。また、図5は、駆動ギヤ48及び中間ギヤ49の周辺機構を後方から見たときの模式図である。
【0025】
定着ユニット14は、図2に示されるように、前後方向8に長い形状を有しており、前後方向8に延びるフレーム34と、フレーム34の長手方向の両端のサイドフレーム35,36それぞれに支持された定着ローラ38(図3参照)と、加圧ローラ(不図示)とを備えている。定着ローラ38は、各サイドフレーム35,36に回転可能なように支持されている。フレーム34は、溶融した合成樹脂を金型に流し込み、射出成形(インジェクション成形)することによって形成される合成樹脂製品である。一般に、溶解した合成樹脂は冷えて固められると収縮する。そのため、収縮によってフレーム34に所謂「ヒケ」が生じないように、フレーム34は、いずれの部位も均等な厚さに形成されている。なお、「ヒケ」とは、合成樹脂製品において肉厚不均等により生じる収縮差を原因とする凹みや窪み、歪みなどの不良のことをいう。
【0026】
なお、定着ユニット18では、トナーを溶融するために定着ローラ38の表面温度がおよそ250℃になるように加熱される。そのため、本実施形態では、定着ユニット18のフレーム34の材料として、熱可塑性の合成樹脂の中でも耐熱性及び強度に優れたPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート)又はPET樹脂を主成分とする合成樹脂が用いられている。もちろん、定着ユニット18の高温環境に耐えうるのであればPET樹脂以外の合成樹脂でフレーム34を形成してもかまわない。
【0027】
図2に示されるように、定着ユニット14の後方側の奥部、具体的には、フレーム34の後方側のサイドフレーム35には、画像形成部14の駆動ユニット60と連結される被駆動伝達部40(本発明の被駆動伝達部の一例)が設けられている。被駆動伝達部40は、駆動ユニット60からの駆動力を定着ローラ38に伝達するものである。
【0028】
図3に示されるように、被駆動伝達部40は、サイドフレーム35から突出して後方へ延びる支軸41(本発明の第2支軸の一例)と、支軸41に回転可能に設けられるジョイント42(本発明の第2駆動ジョイントの一例)とを有する。支軸41の基部44とサイドフレーム35との接続部分には、基部44の外周面に沿うように複数の補強リブ51(図4参照)が設けられている。支軸41は、フレーム34と一体に構成されたものであり、射出成形によってフレーム34と一体に形成される。したがって、支軸34は、フレーム34と同じ材料、つまりPET樹脂で形成されている。
【0029】
ジョイント42は、駆動ユニット60からの駆動力を受ける部分であり、そのためにジョイント42には強い回転負荷がかけられる。したがって、支軸41の外径は、前記回転負荷に耐えうることができる程度に十分に大きなサイズに設計されており、少なくとも、フレーム34の肉厚よりも大きい。一方、支軸41はフレーム34と一体構成であるため、支軸41の外径がフレーム34の肉厚よりも大きい場合は、支軸41に「ヒケ」が生じやすい。そのため、支軸41には所謂肉盗みが施されている。詳細には、支軸41の先端部(後方側の端部)45の中心から軸方向に沿って支軸41の芯部分が深く掘り下げられている。これによって、支軸41の軸芯部には、先端部45から支軸41に沿って延びる円筒状の孔43(本発明の挿入孔の一例)が形成される。孔43は、支軸41の先端部45からサイドフレーム35側に位置する支軸41の基部44の付近まで達している。支軸41に上述の肉盗みが施されることによって、孔43と支軸41の外周壁との厚み(支軸41の肉厚)が、フレーム34の肉厚と同じサイズになっている。この肉盗みによって、フレーム34において、射出成形後に他の部分よりも厚い部分が冷え固まったときに生じる「ヒケ」が防止される。
【0030】
孔43は、被駆動伝達部40と駆動ユニット60とが連結する際に、駆動ユニット60の突出部62(図7参照)が挿入される。このときに突出部62が円滑に挿入されるように、孔43の後方側の開口の周縁部にはテーパー形状に形成されたテーパー部55(図4参照)が設けられている。このテーパー部55は、支軸41の先端部45から前方へ向けて孔43の周縁部を先細り形状に形成されたものである。これにより、突出部62がテーパー部分に案内されるようにして孔43に円滑に挿入される。
【0031】
ジョイント42は、後述の駆動ユニット60(図6参照)に連結される被連結部46と、定着ローラ38と同軸上に設けられた駆動ギヤ48に噛合される中間ギヤ49とを有する。中間ギヤ49は、ジョイント42の軸心を中心とする外周面に一体に形成された複数の歯で構成されている。ジョイント42の中心部には支軸41に挿通可能な軸孔47が形成されている。ジョイント42が図3の矢印方向へ装着されて、軸孔47に支軸41が通されることにより、ジョイント42が支軸41に回転可能に支持される。ジョイント42が支軸41に支持された状態で、中間ギヤ49が駆動ギヤ48に噛合される。
【0032】
中間ギヤ49は、定着ローラ38の駆動ギヤ48よりも上方に配置される。つまり、ジョイント42が支軸41に装着された状態で、中間ギヤ49が駆動ギヤ48の上方に配置されて、中間ギヤ49の下部と駆動ギヤ48の上部とが噛合する。本実施形態では、画像形成部14において記録用紙を上方へ搬送させつつトナーを定着させるために、定着ローラ38は、図4に示す矢印26の方向(後方から見て反時計回転方向)へ回転される。そのため、ジョイント42には、矢印26とは反対の矢印27の方向(後方から見て時計回転方向)へジョイント42を回転させる駆動力が伝達される。
【0033】
図4に示されるように、サイドフレーム35の後方側の面にガイドリブ53が形成されている。ガイドリブ53は、サイドフレーム35と一体に形成されたものである。このガイドリブ53は、サイドフレーム35から後方へ突出している。ガイドリブ53は、支軸41の軸心を中心とする円弧形状に形成されている。具体的には、支軸41にジョイント42が装着されたときに、ジョイント42の中間ギヤ49の外周面と干渉せず、しかもその外周面に沿うように、中間ギヤ49の外周面と同じ曲率の円弧形状に形成されている。
【0034】
図5に示されるように、ガイドリブ53は、中間ギヤ49と駆動ギヤ48との噛合点57からジョイント42の回転方向26の上流側に配置されている。言い換えると、ガイドリブ53は、支軸41と噛合点57とを結ぶ線分よりも、噛合点57から見て回転方向26の上流側に配置されている。したがって、仮に、記録用紙が定着ユニット18で詰まってしまい、定着ローラ38に過大な負荷がかかって定着ローラ38が停止したときに、中間ギヤ49が噛合点57から駆動ギヤ48の周囲をその回転方向27の上流側へ移動しようとしても、ガイドリブ53によってその移動が阻止される。これにより、中間ギヤ49の無理な移動によって支軸41が傾倒して折損することが防止される。なお、サイドフレーム35には、ガイドリブ53の外周面から法線方向の外側へ放射状に設けられた複数の補強リブ54が設けられている。これにより、中間ギヤ49がガイドリブ53に強く押し当たっても、中間ギヤ49の移動を確実に阻止することができる。
【0035】
以下、図6乃至図8を参照して、画像形成部14に設けられた駆動ユニット60の構成について詳細に説明する。駆動ユニット60は、定着ユニット18のサイドフレーム35に対向するようにケーシング20の後方奥部に設けられている。図6に示されるように、駆動ユニット60は、前方側に配置された前方支持プレート63と、後方側に配置された後方支持プレート64と、定着ローラ38の駆動源であるモータ66と、複数のギヤからなるギヤ列67と、ギヤ列67に連結されたジョイント69(本発明の第1駆動ジョイントの一例)と、ジョイント69を支持する支軸75(本発明の第1支軸の一例)とを備えている。モータ66は、後方支持プレート64に取り付けられている。モータ66の出力ギヤ(不図示)は、前方支持レート63と後方支持プレート64との間に回転可能に支持された複数のギヤからなるギヤ列67に噛合されている。
【0036】
図8に示されるように、前方支持プレート63及び後方支持プレート64に支軸75が固定されている。支軸75は、ケーシング20から定着ユニット18が脱抜される方向へ延出されている。詳細には、支軸75は、その軸方向が前後方向8と一致するように、且つ、定着ユニット18の支軸41と同軸となるように、前方支持プレート63及び後方支持プレート64それぞれに橋架されるように取り付けられている。この支軸75にジョイント69が回転可能に支持されている。
【0037】
図7に示されるように、ジョイント69は、被駆動伝達部40のジョイント42に連結される連結部71と、ギヤ列67に噛合される中間ギヤ73とを有する。中間ギヤ73は、ジョイント69の軸心を中心とする外周面に一体に形成された複数の歯で構成されている。ジョイント69の中心部には支軸75に挿通可能な軸孔77が形成されている。ジョイント69の軸孔77に支軸75が通されることにより、ジョイント69が支軸75に回転可能に支持される。ジョイント69が支軸75に支持された状態で、中間ギヤ73がギヤ列67に噛合される。これにより、モータ66が駆動されると、モータ66の駆動力が、ギヤ列67,中間ギヤ73、連結部71を介して定着ユニット18のジョイント42に伝達される。
【0038】
支軸75の先端部(後方側の端部)79には、先端部79の中心から後方へ突出したピン状の突出部62(本発明の突出部の一例)が形成されている。突出部62は、胴部が円柱形状に形成されており、先端部が先細り形状に形成されている。突出部62は、定着ユニット18側の孔43に挿入可能なサイズに形成されている。本実施形態では、孔43と突出部62とが隙間嵌めとなるようなサイズに形成されている。
【0039】
このように本実施形態の複写機10が構成されているため、定着ユニット18が画像形成部14のケーシング20内に挿入されて装着位置に配置されると、定着ユニット18の支軸41の孔43に突出部62が挿入される。これにより、支軸41の基部44がサイドフレーム35によって支持される一方で、支軸41の先端部45が支軸75の突出部62によって支持される。これにより、定着ユニット18の支軸41が基部44および先端部45の両方で支持されることになり、定着ローラ38に過大な回転負荷がかかったとしても、支軸41の亀裂や折損が防止される。
【0040】
なお、上述の実施形態では、支軸41の孔43が円筒状に形成され、支軸75の突出部62が円柱状に形成された場合を例示したが、例えば、図9に示されるように、支軸41に三角形の筒状に形成された孔43A(図9(A)参照)を形成し、支軸75に三角柱状の突出部62A(図9(B)参照)を設け、孔43Aに突出部62Aを挿入可能な構成を採用することも可能である。また、図10に示されるように、支軸41に四角形の筒状に形成された孔43B(図10(A)参照)を形成し、支軸75に四角柱状の突出部62B(図10(B)参照)を設け、孔43Bに突出部62Bを挿入可能な構成を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、定着ローラを有する定着ユニットが装置本体に対して着脱可能に設けられた画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10:複写機
12:スキャナ
14:画像形成部
18:定着ユニット
20:ケーシング
34:フレーム
35:サイドフレーム
38:定着ローラ
40:被駆動伝達部
41:支軸
42:ジョイント
43:孔
48:駆動ギヤ
49:中間ギヤ
51:補強リブ
55:テーパー部
57:噛合点
60:駆動ユニット
62:突出部
66:モータ
67:ギヤ列
69:ジョイント
70:連結部
73:中間ギヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持された定着ローラを有し、装置本体からの駆動力が前記定着ローラに伝達可能な第1位置と前記定着ローラへの前記駆動力の伝達が遮断される第2位置との間で挿抜可能に前記装置本体に設けられた定着ユニットと、
前記定着ユニットの挿入方向の奥部に設けられ、前記第1位置において前記装置本体から伝達された駆動力を前記定着ローラに伝達する被駆動伝達部と、
前記装置本体において前記定着ユニットの奥部と対向するように設けられ、前記駆動力を前記被駆動伝達部に伝達する駆動伝達部と、を備え、
前記駆動伝達部は、
前記定着ユニットの脱抜方向へ延びる第1支軸と、
前記第1支軸に回転可能に設けられた第1駆動ジョイントと、
前記第1支軸の先端から前記脱抜方向へ突出した突出部と、を有し、
前記被駆動伝達部は、
前記定着ユニットの奥部から前記挿入方向へ延びる第2支軸と、
前記第2支軸に回転可能に設けられ、前記第1駆動ジョイントと軸方向に連結することによって軸回転方向の駆動力を前記第1駆動ジョイントから受ける第2駆動ジョイントと、
前記第2支軸の先端に設けられ、前記定着ユニットが前記第1位置に挿入されたときに前記突出部が挿入可能な挿入孔と、を有してなる画像形成装置。
【請求項2】
前記定着ユニットの奥部に設けられ、前記第2支軸を中心とする円弧状のガイドリブを更に備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2駆動ジョイントは、前記第2支軸を中心とする外周面に中間ギヤが形成されており、
前記中間ギヤは、前記定着ローラに設けられた駆動ギヤの上部に噛合されており、
前記ガイドリブは、前記中間ギヤと前記駆動ギヤとの噛合点から前記中間ギヤの回転方向の上流側に配置されている請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着ユニットの奥部に設けられ、前記ガイドリブの外周面から法線方向外側へ放射状に設けられた複数の補強リブを更に備える請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記挿入孔の周縁部がテーパー形状に形成されている請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着ユニットは、合成樹脂材料を射出成形することにより形成された均一厚さのフレームを有し、
前記第2支軸は、前記フレームと一体に形成され、前記均一厚さよりも大きい外径に形成されており、
前記第2支軸の前記挿入孔は、前記第2支軸を前記均一厚さとなるように肉盗みすることにより形成されている請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項1】
回転可能に支持された定着ローラを有し、装置本体からの駆動力が前記定着ローラに伝達可能な第1位置と前記定着ローラへの前記駆動力の伝達が遮断される第2位置との間で挿抜可能に前記装置本体に設けられた定着ユニットと、
前記定着ユニットの挿入方向の奥部に設けられ、前記第1位置において前記装置本体から伝達された駆動力を前記定着ローラに伝達する被駆動伝達部と、
前記装置本体において前記定着ユニットの奥部と対向するように設けられ、前記駆動力を前記被駆動伝達部に伝達する駆動伝達部と、を備え、
前記駆動伝達部は、
前記定着ユニットの脱抜方向へ延びる第1支軸と、
前記第1支軸に回転可能に設けられた第1駆動ジョイントと、
前記第1支軸の先端から前記脱抜方向へ突出した突出部と、を有し、
前記被駆動伝達部は、
前記定着ユニットの奥部から前記挿入方向へ延びる第2支軸と、
前記第2支軸に回転可能に設けられ、前記第1駆動ジョイントと軸方向に連結することによって軸回転方向の駆動力を前記第1駆動ジョイントから受ける第2駆動ジョイントと、
前記第2支軸の先端に設けられ、前記定着ユニットが前記第1位置に挿入されたときに前記突出部が挿入可能な挿入孔と、を有してなる画像形成装置。
【請求項2】
前記定着ユニットの奥部に設けられ、前記第2支軸を中心とする円弧状のガイドリブを更に備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2駆動ジョイントは、前記第2支軸を中心とする外周面に中間ギヤが形成されており、
前記中間ギヤは、前記定着ローラに設けられた駆動ギヤの上部に噛合されており、
前記ガイドリブは、前記中間ギヤと前記駆動ギヤとの噛合点から前記中間ギヤの回転方向の上流側に配置されている請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着ユニットの奥部に設けられ、前記ガイドリブの外周面から法線方向外側へ放射状に設けられた複数の補強リブを更に備える請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記挿入孔の周縁部がテーパー形状に形成されている請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着ユニットは、合成樹脂材料を射出成形することにより形成された均一厚さのフレームを有し、
前記第2支軸は、前記フレームと一体に形成され、前記均一厚さよりも大きい外径に形成されており、
前記第2支軸の前記挿入孔は、前記第2支軸を前記均一厚さとなるように肉盗みすることにより形成されている請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88452(P2013−88452A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225646(P2011−225646)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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