説明

画像形成装置

【目的】 画像担持体2に対する作像プロセス機器のうち少なくとも2以上の機器1・6Aにそれぞれ所定の振動電圧を印加する画像形成装置において、各印加振動電圧の交番成分(交流成分)相互の干渉に起因する画像ムラの発生をなくすること。
【構成】 各振動電圧印加機器1・6Aに対する各印加振動電圧の交番成分を同一の発振子31より生じる交番成分から生成させたこと、また2以上の振動電圧印加機器のうちの少なくとも1つの機器に対する印加振動電圧の交番成分を前記同一の発振子31より生じる交番成分の周波数を分周して得るようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真複写機・同プリンタ等の画像形成装置に関する。
【0002】より詳しくは、電子写真感光体・静電記録誘電体等の画像担持体に対して電子写真方式・静電記録方式等の適宜の作像プロセス機器にて所望の画像を形成担持させる、間接(転写)方式或は直接方式の画像形成装置であって、画像担持体に対する作像プロセス機器のうち少なくとも2以上の機器にそれぞれ所定の振動電圧を印加する画像形成装置の改善に関する。
【0003】
【従来の技術】図4にこの種の画像形成装置の一例の概略構成を示した。本例の画像形成装置は転写式電子写真プロセス利用の複写機又はプリンタである。
【0004】2は画像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、矢示の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0005】1はこの感光ドラム1の帯電プロセス手段であり、本例は帯電ローラを用いた接触帯電手段である。
【0006】帯電ローラ(導電性部材)1は芯金1aと導電性ゴムローラ部1bからなり、不図示の軸受に回転自由に保持させ、加圧バネ5により感光ドラム2面に所定の押圧力をもって圧接させてあり、感光ドラム2の回転に伴い従動回転する。そしてこの帯電ローラ1に対して帯電バイアス印加電源3から接点バネ4・芯金1aを介して所定の帯電バイアスが印加されることで回転感光ドラム1の周面が所定の極性・電位に接触方式で帯電処理される。
【0007】帯電ローラ1で帯電処理された回転感光ドラム2面は次いで不図示の露光手段により目的の画像情報の露光L(原稿画像のスリット結像露光、レーザービーム走査露光等のアナログ露光又はデジタル露光)を受け、感光ドラム周面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成されていく。
【0008】その形成潜像は現像装置6により正規現像又は反転現像されてトナー画像Tとして可視像化される。そのトナー画像Tが、感光ドラム2と転写手段としての転写ローラ7との圧接ニップ部(転写部)に不図示の給紙部から所定のタイミングで給送された記録材Pに順次に転写され、トナー像転写を受けた記録材Pが不図示の定着装置へ導入されて像定着を受け、画像形成物(コピー、プリント)として出力される。7Aは転写バイアス印加電源を示す。
【0009】記録材Pに対するトナー画像転写後の感光ドラム1面は、クリーニング装置8により転写残りトナー等の付着残留物の除去を受けて清浄面化され、またイレーサーランプ9で全面一様露光を受けて電気的メモリーの除去を受け、繰り返して作像に供される。
【0010】本出願人は接触帯電手段に関して均一な帯電処理性を得る手法として、帯電ローラ・帯電ブレード・帯電ロッド等の帯電部材に、帯電バイアスとして、該帯電部材に直流電圧を印加したときの感光ドラム等の被帯電体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧VPPを有する交流電圧(交番成分)Vacと、直流電圧(直流成分)Vdcを重畳した振動電圧(Vac+Vdc)を印加して被帯電体の帯電処理を実行することを提案している(特開昭63−149669号公報)。
【0011】現像装置6は図示例のものは所謂ジャンピング現像方式のものであり、現像剤担持部材としての現像スリーブ6A上に現像剤塗布手段としてのブレード6Bでトナー層を均一な薄層状に形成担持させて感光ドラム2の潜像面に接触対面させ、現像スリーブ6Aと感光ドラム2間に直流電圧(直流成分)と交流電圧(交番成分)を重畳した振動電圧を現像バイアスを印加することで現像スリーブ6A側の担持トナーを感光ドラム1面の潜像面に選択的に転位させて潜像の現像を行うものである。6Cは現像バイアス印加電源である。
【0012】なお、上記の帯電バイアス・現像バイアスにおいて、交流電圧は、時間とともに電圧値が周期的に変化する電圧であり、その波形としては正弦波、矩形波、三角波等適宜である。直流電源を周期的にオン・オフすることによって形成された矩形波電圧も含む。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明者の研究実験の結果、上記例の画像形成装置のように画像担持体としての感光ドラム2に対する作像プロセス機器のうち少なくとも2以上の機器、本例では帯電ローラ1と現像装置6の現像スリーブ6Aがそれぞれ上述のように振動電圧が印加されるものである場合、次のような問題点が発生した。
【0014】すなわち、帯電バイアス電圧の交流周波数が現像バイアス電圧の交流周波数と、その整数倍または整数分の1のいずれかの周波数に近い周波数の場合、周期的な現像ムラが発生したのである。この周期的な現像ムラが発生するするメカニズムは完全には解明されていないが以下のように推測される。
【0015】画像担持体である感光ドラム2に当接させた帯電ローラ1に直流電圧と交流電圧を重畳した帯電バイアス電圧を印加して感光ドラム2を帯電させると、感光ドラム1の概略の表面電位は直流電圧に対応してほぼ均一になる。しかし、感光ドラム表面は帯電ローラ1に対して移動するので微視的には、交流電圧の影響で、交流電圧の周波数に対応した表面電位の周期的な変化、即ちピッチむらを生じている。
【0016】感光ドラム1の周速度をp(mm/sec)、帯電バイアス電圧の交流電圧の周波数をfp (Hz )とすると、感光ドラム表面上での表面電位の周期的な変化がp/fp (mm)ピッチで繰り返されている。
【0017】一方、現像スリーブ6Aに印加する現像バイアス電圧にも交流電圧が重畳されているので、移動する感光ドラム表面に対し、微視的には、現像特性が周期的に変化していると考えられる。
【0018】現像バイアス電圧の交流電圧の周波数をfd (Hz )とすると、感光ドラム表面上での現像特性の周期的な変化はp/fd (mm)ピッチで繰り返される。
【0019】上記のp/fp (mm)ピッチ、p/fd (mm)ピッチは各々単独では、通常画像上では識別できない間隔の周期的変化であるが、p/fp (mm)ピッチで周期的に変化する表面電位をp/fd (mm)ピッチで周期的に変化する現像特性によって現像するので干渉して両者より大きな周期での、画像上識別できる現像ムラが生じてしまうことがあった。
【0020】例えば音波の場合、わずかに周波数の異なる2つの波の干渉によってうなりが生じ、それぞれの周波数をf1 、f2 とすれば、うなりの周波数は|f1 −f2 |になる。
【0021】同様に本発明者が行った研究実験によって、帯電バイアス電圧の交流周波数が現像バイアス電圧の交流周波数に近い周波数の場合だけでなく、整数倍又は整数分の1の周波数に近い周波数の場合にも干渉による現像ムラが生じるのは、帯電バイアス電圧の交流周波数が現像バイアス電圧の交流周波数と、その整数倍あるいはその整数分の1の周波数の前後数パーセント以内の時であり、その範囲でなければ目立たなくなり画像への影響はなかった。
【0022】また正確に整数倍または整数分の1の場合にも現像ムラは発生しなかった。しかし交流周波数に多少のブレがあるため正確に一致させるのは非常に難しい。
【0023】又、帯電バイアス電圧を帯電ローラ1に供給する導電路の近傍に現像バイアス電圧を現像スリーブ6Aに供給する導電路がある場合に、現像バイアス電圧の交流成分と帯電バイアス電圧の交流成分の関係が上述の現像ムラを生じさせる条件にある時に、両者が浮遊容量を介して相互に干渉しあって各々のバイアス電圧にうなり成分を発生させ、このときにも上述した画像ムラと同様の異常画像が発生することがわかった。こうした画像ムラは文字などの画像では目立たないがハーフトンやベタ画像で顕著に認められる。
【0024】転写ローラ7やクリーニングローラ8Aも振動電圧が印加される場合には上述と同様の問題がある。
【0025】そこで本発明はこのように画像担持体に対する作像プロセス機器のうち少なくとも2以上の機器にそれぞれ所定の振動電圧を印加する画像形成装置における、各振動電圧の交番成分(交流成分)相互の干渉に起因する画像ムラの発生をなくすることを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明は下記の構成を特徴とする画像形成装置である。
【0027】(1)画像担持体に対する作像プロセス機器のうち少なくとも2以上の機器にそれぞれ所定の振動電圧を印加するものである画像形成装置において、それ等の振動電圧印加機器に対する各印加振動電圧の交番成分を同一の発振子より生じる交番成分から生成させたことを特徴とする画像形成装置。
【0028】(2)前記2以上の振動電圧印加機器のうちの少なくとも1つの機器に対する印加振動電圧の交番成分を前記同一の発振子より生じる交番成分の周波数を分周して得るようにしたことを特徴とする(1)記載の画像形成装置。
【0029】(3)前記振動電圧は直流電圧と交流電圧との重畳電圧であることを特徴とする(1)記載の画像形成装置。
【0030】(4)画像担持体に対する作像プロセス機器のうち1つは接触帯電装置であり、該装置の接触帯電部材に対す印加電圧が、該接触帯電部材に直流電圧を印加したときの画像担持体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有する交流電圧と、直流電圧とを重畳した振動電圧であることを特徴とする(1)又は(2)記載の画像形成装置。
【0031】
【作用】各振動電圧印加機器に対する印加振動電圧の交番成分を、同一の発振子より生じる交番成分から生成させたものとする或は該同一の発振子より生じる交番成分の周波数を分周して得るようにすることで、各機器に対する印加振動電圧の交番成分の周波数の比は常に同一の値となるので該交番成分間の周波数の相互ズレにもとづくうなり成分が生じることがなく、或は該交流成分間の周波数の比を正確に整数倍又は整数分の1とするようにできうなり成分は発生しないので、うなり成分に起因する画像ムラの発生が防止される。
【0032】
【実施例】
〈実施例1〉(図1)
図1は第1実施例の画像形成装置の要部回路図である。画像形成装置の作像プロセス機器は前述の図4と同じであり、図1には感光ドラム2と、帯電ローラ1と、現像スリーブ6Aのみを示した。
【0033】発振器31は、1000Hz の交流周波数を発生し、帯電ローラ1用の電源34の1次側及び現像スリーブ6A用の電源35の1次側に結線されている。電源34と同35の2次側にはそれそれ直流電圧を供給する重畳部36・37があり、これに増幅された交流電圧が重ねられて、帯電ローラ1と現像スリーブ6Aにそれぞれ帯電バイアス、現像バイアスとしての所定の振動電圧が印加される。
【0034】本実施例では、帯電ローラ1には直流電源36より−700Vを重畳した周波数1000Hz kの交流電圧(ピーク間)2000Vが印加されている。現像スリーブ6Aは感光ドラム2と300μの間隔をもつて対向保持されており、直流電源37より−500Vを重畳した周波数1000Hz の交流電圧(ピーク間)1600Vが印加されている。
【0035】以上の構成にて、感光ドラム2を周速30mm/secで駆動して画像形成を実行した。実施例では帯電バイアスと現像バイアスはそれぞれ同一の発振器31からの信号にもとづき交流成分が形成されるため、両バイアスの周波数は発振器31の誤差によって1000Hz からのズレが生じることはあっても常に同一の値であるので、両バイアスの周波数の僅かな差によってうなりが生じることはなく、画像上のムラは発生しない。
【0036】〈実施例2〉(図2)
図2は第2実施例の画像形成装置の要部回路図である。
【0037】発振器31と帯電バイアス用の電源34との間に分周器32を介入させた点で前述の図1の回路と異なっている。発振器31の出力交流周波数を該分周器32で整数分の1倍に下げて電源34に入力している。
【0038】本実施例においては、帯電バイアスは直流電源−600vに1000Hz の交流電圧(ピーク間)1900Vを重畳したものである。現像バイアスは直流電圧−500Vに2000Hz の交流電圧(ピーク間)1500Vを重畳したものである。本実施例では感光ドラム2の周速度を90mm/secとした。
【0039】このように単一の発振器31の出力をそれぞれ帯電バイアスと現像バイアスに用いるので、帯電バイアスの交流成分の周波数と現像バイアスの交流成分の周波数の比が正確に整数分の1倍となるように出来、うなり成分は発生しないので、画像ムラも発生しない。
【0040】〈実施例3〉(図3)
図3は第3実施例の画像形成装置の要部回路図である。
【0041】第2実施例を発展させて現像バイアス電源35の入力部にも分周器33を配設したものである。このようにすることで、帯電バイアスの交流周波数と現像バイアスの交流周波数の比が整数又は整数分の1以外の組み合わせが実現出来、画像形成プロセスの選択の幅が広がる。
【0042】本実施例では発振器31は3600Hz の交流電圧を出力し、帯電バイアス用電源34には分周器32によりそれを9分周した400Hzの交流電圧が入力され、その出力として直流電圧−700Vに400Hz の交流電圧(ピーク間)2000Vが得られ、帯電ローラ1に印加される。
【0043】現像バイアス用電源35には分周器33で2分周した1800Hz の交流電圧が入力され、その出力として直流電圧−600Vに1800Hz の交流電圧(ピーク間)1600Vが得られ、現像スリーブ6Aに印加される。
【0044】感光ドラム2を周速度50mm/secで駆動して画像形成を実行した処、得られた画像にはうなり起因のムラは全くなかった。
【0045】尚、上述の各実施例は帯電バイアスと現像バイアスの関係についてのものであるが、感光ドラム2の周囲に配置されたプロセス要素(機器)の少なくとも2つに交番電圧バイアスが印加される場合、すなわち帯電ローラバイアスと転写ローラバイアス、現像バイアスと転写ローラバイアス、帯電ローラバイアスとクリーニングローラバイアス等にも本発明の主旨が適用できるのは言う迄もない。
【0046】又、交番電圧の波形についても上記実施例では矩形の場合を示したが、正弦波や三角波なども使用可能である。
【0047】直流電圧発生部36・37は同極性に限らず、異極性とすることも当然可能である。
【0048】
【発明の効果】以上のように本発明に依れば、画像担持体に対する作像プロセス機器のうち少なくとも2以上の機器にそれぞれ所定の振動電圧を印加する画像形成装置における、各印加振動電圧の交番成分相互の干渉に起因する画像ムラの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例装置の要部回路図
【図2】 第2実施例装置の要部回路図
【図3】 第3実施例装置の要部回路図
【図4】 画像形成装置例の概略構成図
【符号の説明】
1 帯電ローラ
2 感光ドラム
3 帯電バイアス印加電源
6 現像装置
6A 現像スリーブ
7 転写ローラ
8 クリーニング装置
9 イレーサーランプ
31 発振器
32・33 分周器
34 帯電バイアス用電源
35 転写バイアス用電源
36・37 重畳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像担持体に対する作像プロセス機器のうち少なくとも2以上の機器にそれぞれ所定の振動電圧を印加する画像形成装置において、それ等の振動電圧印加機器に対する各印加振動電圧の交番成分を同一の発振子より生じる交番成分から生成させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 前記2以上の振動電圧印加機器のうちの少なくとも1つの機器に対する印加振動電圧の交番成分を前記同一の発振子より生じる交番成分の周波数を分周して得るようにしたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】 前記振動電圧は直流電圧と交流電圧との重畳電圧であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】 画像担持体に対する作像プロセス機器のうち1つは接触帯電装置であり、該装置の接触帯電部材に対す印加電圧が、該接触帯電部材に直流電圧を印加したときの画像担持体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有する交流電圧と、直流電圧とを重畳した振動電圧であることを特徴とする請求項1又は同2記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−127454
【公開日】平成5年(1993)5月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−318323
【出願日】平成3年(1991)11月6日
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)