説明

画像形成部材に機能性材料を運ぶための装置で使用する組成物

【課題】高湿度環境における感光体のオーバーコート層の耐摩耗性、低摩擦を付与する機能性部材を運搬する運搬部材の提供。
【解決手段】画像化部材(感光体)の表面またはバイアス帯電ローラーの表面のいずれかと接する運搬部材38を備え、運搬部材38が、機能性材料48を含浸したポリマーマトリックス50として製造され、その結果、機能性材料48が運搬部材38から画像化部材またはバイアス帯電ローラーに移される。また、画像化部材表面に非常に薄い外側層を備え、外側層が、水分および/または表面汚染物質に対して潤滑剤および/または障壁として作用する機能性材料48(例えば、パラフィン)を含み、電子写真用画像化部材を改良する。改良された電子写真用画像化部材は、高湿度条件でのトルクの低下、摩擦の低下、欠損の低下のような改良されたゼログラフィー性能を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されている実施形態は、一般的に、電子写真装置(デジタル印刷装置を含む)で使用するための画像化装置の部材および要素に有用な層に関する。より特定的には、本発明の実施形態は、高トルクおよびAゾーンでの欠損に対処するために画像化部材表面に非常に薄い外側層を備え、外側層が、水分および/または表面汚染物質に対して潤滑剤または障壁として作用する機能性材料を含む、改良された電子写真用画像化部材に関する。画像化部材に、ナノスケールまたは分子レベルで非常に薄い外側層を塗布する。改良された画像化部材は、改良されたゼログラフィー性能を示し、例えば、高湿度状態でブレードクリーナーとの相互作用が改良され、画像の欠損が少ない。また、本発明の実施形態は、画像化部材表面に上の材料を運ぶための方法およびシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
感光体は、多くの形態で提供することができる。例えば、感光体は、単一材料(例えば、ガラス状セレン)の均一層であってもよく、または、光伝導層と別の材料とを含有するコンポジット層であってもよい。それに加え、感光体を層状にしてもよい。多層感光体または多層画像化部材には、少なくとも層が2つあり、基材と、導電層と、場合によりアンダーコート層(時に、「電荷遮断層」または「正孔遮断層」と呼ばれる)と、場合により接着層と、光発生層(時に、「電荷発生層」、「電荷を発生する層」または「電荷発生剤の層」と呼ばれる)と、電荷輸送層と、場合によりオーバーコーティング層とを、可とう性ベルト形態または硬いドラム構造のいずれかで備えていてもよい。この多層構造では、感光体の活性層は、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)である。これらの層間の電荷輸送を高めると、感光体の性能が高まる。多層可とう性感光体部材は、感光体を望ましい平坦な状態にするために、基材の裏側かつ電気的に活性な層とは反対側にアンチカール層を備えていてもよい。
【0003】
また、感光体の耐用年数をさらに高めるために、感光体を保護し、性能(例えば、耐摩耗性)を高めるためにオーバーコート層を使用してもよい。しかし、これらの低摩耗性オーバーコートは、摩耗速度が特定の速度まで低下してしまうような湿度環境では、Aゾーンでの欠損によって画質も悪化してしまう。それに加え、Aゾーンでは、低摩耗性オーバーコートによって高トルクがかかり、BCR帯電システムに伴う重大な問題(例えば、モーターの故障およびブレードの損傷)が生じてしまう。その結果、BCR帯電システムとともに低摩耗性オーバーコートを使用することは未だ大きな課題であり、このシステムでオーバーコート技術を用いた場合の寿命目標を達成する方式を発見する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に示した局面によれば、支持部材と、支持部材の上に配置されたエラストマーマトリックスとを備え、エラストマーマトリックスが、マトリクス内に分散した1つ以上の機能性材料を含む、画像形成装置で使用する運搬部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかるドラム形状の画像化部材の断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかるベルト形状の画像化部材の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかるお客様による交換可能部品(CRU)において、運搬部材を実装したシステムの断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかるお客様による交換可能部品(CRU)において、運搬部材を実装したシステムの代替例の断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態にかかる画像化部材の外側層を製造するための運搬部材の側面断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態にかかる試験画像形成装置を示す。
【図7】図7は、図3のシステムを用いて作成された印刷物のAゾーンでの欠損結果を、コントロール例のシステム(機能性材料を有する運搬部材を使用していない)を用いて作成された印刷物の欠損結果と比較して示す印刷試験である。
【図8】図8は、図4のシステムを用いて作成された印刷物のAゾーンでの欠損結果を、コントロール例のシステム(機能性材料を有する運搬部材を使用していない)を用いて作成された印刷物の欠損結果と比較して示す印刷試験である。
【図9】図9は、本発明の実施形態によって製造された印刷システムと、コントロール例によって製造された印刷システムとで、Aゾーンでのトルクを比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
開示されている実施形態は、一般的に、画像化部材表面に非常に薄い外側層を備え、この外側層には水分および/または表面汚染物質に対して潤滑剤および/または障壁として作用する機能性材料が備わった、改良された電子写真用画像化部材に関する。この外側層は、このような外側層を組み込んだ画像化部材に対し、改良されたゼログラフィー性能(例えば、高湿度条件での改良された耐摩耗性、低い摩擦、欠損に起因する画像の欠陥が少ない)を付与する。
【0007】
また、本発明の実施形態は、画像化表面の外側層に対し、機能性材料を運ぶための運搬材料を用いる、改良された電子写真用画像化部材を製造する方法にも関する。本明細書で使用する場合、「機能性材料」は、望ましい感光体の機能を維持させる材料である。例えば、機能性材料は、直接的な接触転写によって感光体表面に連続的に塗布され、連続して潤滑性および表面保護性を与えることによって感光体の望ましい機能を維持することができる材料であってもよい。感光体表面の潤滑性は、ゼログラフィーシステムの他の要素との相互作用、例えば、ブレードクリーナーとの相互作用を向上させ、トルクを下げ、ブレードの損傷を減らす。感光体の上に表面材料の薄い層を維持することによって、機能性材料は、表面保護性も付与し、例えば、Aゾーンのような湿度の高い環境での画像の欠損を防ぐ。
【0008】
本発明の実施形態では、運搬部材は、画像形成装置に実装されたロール、例えば、ゼログラフィー印刷システムのお客様による交換可能部品(CRU)であり、この運搬ロールは、機能性材料を外側層(例えば、画像化部材または感光体のオーバーコート層)に運ぶ。本開示の例示的な実施形態を、図面を参照しつつ以下に記載する。明確にするために以下の記載で専門用語を使用し、図面を説明するために専門用語を選択するが、本開示の範囲を定義したり、限定したりするものではない。他の意味であると明記されていない限り、異なる図面で同じ構造を特定するために同じ参照符号を使用する。図中の構造は、相対比率にしたがって描かれてはおらず、図は、開示されている大きさ、相対的な大きさ、または位置のみに限定されると解釈されるべきではない。それに加え、この考察は、負に帯電した系に向けられたものであるが、本開示の画像化部材を正に帯電した系に用いてもよい。
【0009】
図1は、ドラム形状を有する多層電子写真用画像化部材または感光体の例示的な実施形態である。さらに、基材は、円筒形構造であってもよい。図からわかるであろうが、例示的な画像化部材は、硬い支持基材10と、導電性接地面12と、アンダーコート層14と、電荷発生層18と、電荷輸送層20とを備えている。場合により、電荷輸送層の上に配置されたオーバーコート層32が含まれていてもよい。硬い基材は、金属、金属アロイ、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料で構成されていてもよい。また、基材は、金属、ポリマー、ガラス、セラミック、および木材からなる群から選択される材料を含んでいてもよい。
【0010】
電荷発生層18と電荷輸送層20とが合わさって、本明細書に記載の画像化層を2個の別個の相として形成する。この図に示されているものの代わりに、電荷発生層が電荷輸送層の上部に配置されていてもよい。これらの層の機能的要素を1個の層でまとめて代用してもよいことが理解されるだろう。
【0011】
図2は、本発明の実施形態にかかる、ベルト形状を有する画像化部材または感光体を示す。示されているように、このベルト形状は、アンチカール裏側コーティング1と、支持基材10と、導電性接地面12と、アンダーコート層14と、接着層16と、電荷発生層18と電荷輸送層20とで提供されている。場合により、オーバーコート層32および接地片19も含まれていてもよい。
【0012】
上述のように、電子写真用画像化部材は、一般的に、少なくとも基材層と、基材の上に配置された画像化層と、場合により、画像化層の上に配置されたオーバーコート層とを備えている。さらなる実施形態では、画像化層は、基材の上に配置された電荷発生層と、電荷発生層の上に配置された電荷輸送層とを備えている。他の実施形態では、アンダーコート層が含まれていてもよく、アンダーコート層は、一般的に、基材と画像化層の間に置かれるが、これらの層の間にさらなる層が存在し、置かれていてもよい。画像化部材は、特定の実施形態では、アンチカール裏側コーティング層も含んでいてもよい。電子写真式画像化プロセスでこの画像化部材を使用することができ、まず、導電層の上に光伝導性絶縁層を含む電子写真用平板、ドラム、ベルトなど(画像化部材または感光体)の表面を均一に静電的に帯電させる。次いで、画像化部材に所定のパターンの活性化電磁放射線(例えば、光)をあてる。この放射線は、この放射線があたらなかった静電潜像の部分は残しつつ、光伝導性絶縁層のうち、照射された領域にある電荷を選択的に消失させる。次いで、この静電潜像を現像し、光伝導性絶縁層の表面に、極性が同じまたは反対の帯電粒子を堆積させることによって可視化画像を作成してもよい。次いで、得られた可視化画像を画像化部材から直接的または間接的に(例えば、転写部材または他の部材によって)印刷基材(例えば、透明物または紙)に転写してもよい。再利用可能な画像化部材を用い、画像化プロセスを数回繰り返してもよい。
【0013】
一般的な印刷品質の問題は、これらの感光体層の品質および相互作用に強く依存する。例えば、感光体を接触帯電器および化学重合によって得られるトナー(重合トナー)と組み合わせて用いる場合、画質は、接触帯電によって生じる放電生成物または転写工程後に残った重合トナーによって感光体表面が汚染されることによって悪化するだろう。さらに、繰り返し何度も使用することによって、感光体の最外層が、各サイクル中の画像化のために感光体を洗浄および/または調製するために用いられる他の機械のサブシステム要素との間に高い摩擦を生じる。機械のサブシステム要素に対し、繰り返し周期的な機械同士の相互作用が生じると、感光体ベルトは、最外側の有機感光体層表面が摩擦によってひどく摩耗し、感光体の有用寿命がかなり短くなってしまうことがある。最終的に、生じた摩耗が感光体の性能を悪化させ、それにより画質も悪化する。別の種類の一般的な画像の欠陥は、感光体のどこかに電荷が蓄積することによって生じると考えられる。結果的に、連続的な画像が印刷されると、その蓄積された電荷が、その時点の印刷画像の画像密度を変えてしまい、すでに印刷された画像があらわれてしまう。ゼログラフィープロセスでは、転写ステーションから空間的にさまざまな量の正電荷が、感光体表面にある正電荷を見つける。この変動量が十分に大きい場合、この変動量がその次のゼログラフィーサイクルで画像電位の変動量としてあらわれてしまい、欠陥として出力されるだろう。
【0014】
感光体の寿命を延ばすための従来からあるアプローチは、耐摩耗性のオーバーコート層を塗布することである。バイアス帯電ローラー(BCR)による帯電システムの場合、オーバーコート層は、Aゾーンでの欠損(すなわち、Aゾーン:28℃、85%RHで生じる画像の欠陥)と感光体の摩耗速度とが二律背反の関係にある。例えば、ほとんどの有機光伝導体(OPC)材料の設定は、Aゾーンでの欠損を抑制するために、ある程度の摩耗速度を必要とする。結果として、感光体の寿命は、BCR帯電システムの摩耗速度によって短くなる。しかし、本発明の実施形態は、摩耗速度と欠損を両方とも低下させることを示した。本発明の実施形態は、スコロトロン帯電システムおよびBCR帯電システムの両方にとって、顕著に寿命の長い感光体技術を提供する。
【0015】
本発明の実施形態は、水分および/または表面汚染物質に対して潤滑剤または障壁として作用し、高湿度条件(例えば、Aゾーン環境(28℃、85%RH))でゼログラフィー性能を向上させるような機能性材料の極めて薄い層を感光体表面に運ぶ。この極めて薄い層は、ナノスケールまたは分子レベルで提供されてもよい。
【0016】
ある実施形態では、機能性材料を連続的に運び、水分および表面汚染物質に対して極めて薄い障壁層を提供することによって、感光体表面に機能性材料を制御しつつ運び、高湿度条件(Aゾーン)でのゼログラフィー性能を向上させるための方法が提供される。従来の機械試験から、Aゾーンでの欠損は、感光体表面に親水性化学種(例えば、−OH、−COOH)を生じる高エネルギー帯電、湿度の高い環境下で親水性感光体表面に物理的に吸収される水、吸収された水の層およびトナー汚染物質による感光体表面の導電性増加のような多くの出来事によって生じることが示されている。したがって、これらの問題に対処するために、本発明の実施形態は、機能性材料(例えば、疎水性材料)の極めて薄い層を制御しつつ運び、感光体表面に連続して直接的に塗布することができ、低摩耗性感光体のAゾーンでの欠損を防ぐことができることを開示している。
【0017】
ある実施形態では、機能性材料は、感光体の上に連続的に運ばれ、潤滑剤の極めて薄い層を形成し、機械のサブシステム要素を保護するが、クリーニングブレードと感光体表面、または感光体表面と他の関連する要素との接触界面の摩擦を減らす。この潤滑剤は、生じるトルクおよび振動をさらに減らし、その結果、アクチュエーターおよび関与する伝送機構によって、感光体または他の関連する要素をなめらかな様式で移動させることができる。したがって、潤滑剤は、上述の理由で悪くなりかねない印刷の画質を高め、さらに、これらの要素を保護し、耐用年数を伸ばす。
【0018】
図3〜5は、本発明の実施形態にかかる運搬部材を示す。図3には、BCR帯電システムの中の画像形成装置が示されている。示されているように、画像形成装置は、感光体34と、BCR36と、運搬部材38とを備えている。運搬部材38は、感光体34と接しており、感光体34の表面に機能性材料の極めて薄い層を運ぶ。その後、電子写真の複写プロセスを始めるため、感光体34は、BCR36によって実質的に均一に帯電する。次いで、帯電した感光体を光像にさらし、光受容性部材(示していない)の上に静電潜像が作られる。次に、この潜像をトナー現像器40によって可視化画像へと現像する。その後、現像したトナー画像を、感光体部材から記録媒体を介して複写紙またはある種の他の画像支持基材に転写し、元々の書類(示していない)の複製を製造するために、画像が永久的に固定されてもよい。次いで、連続的な画像化サイクルの準備段階として、感光体表面は、一般的に、クリーナー42で洗浄され、残った現像材料が取り除かれる。
【0019】
代替的な構造では、図4に示すように、運搬部材38は、BCR36と接しており、BCR36の表面に機能性材料の極めて薄い層を運ぶ。次いで、BCR36が、感光体34の表面に機能性材料を転写する。運搬部材は、種々の構造および位置でゼログラフィー印刷システムに組み込まれていてもよい。ここからわかるだろうが、オーバーコーティングされた感光体ドラム34が回転するにつれて、機能性材料が浸みこんだ運搬部材38が、接触拡散によって、オーバーコーティングされた感光体34の表面に機能性材料を運ぶ(図3)か、または、BCR表面に運ぶ(図4)。例えば、内部に分散した機能性材料は、運搬部材38の表面に拡散することができる。従来の実施形態を用いる場合、感光体34は、BCR36によって実質的に均一に帯電し、電子写真式複写プロセスが始まる。次いで、帯電した感光体が光像にさらされ、光受容性部材(示していない)の上に静電潜像が作られる。次に、この潜像をトナー現像器40によって可視化画像へと現像する。その後、現像したトナー画像を、感光体部材から記録媒体を介して複写紙またはある種の他の画像支持基材に転写し、元々の書類(示していない)の複製を製造するために、画像が永久的に固定されてもよい。次いで、連続的な画像化サイクルの準備段階として、感光体表面は、一般的に、クリーナー42で洗浄され、残った現像材料が取り除かれる。
【0020】
図5は、本発明の実施形態にかかる運搬部材38と、その断面を示す。運搬部材38は、支持部材46の周りに配置されたエラストマーマトリックス44を備えている。ある実施形態では、支持部材46は、ステンレス製の棒である。支持部材は、さらに、金属、金属アロイ、プラスチック、セラミック、ガラス、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料を含んでいてもよい。支持部材の直径およびエラストマーマトリックスの厚みは、用途に応じた必要性によって変わってもよい。特定の実施形態では、支持部材は、直径が約3mm〜約10mmである。特定の実施形態では、エラストマーマトリックスは、厚みが約20μm〜約100mmである。ある実施形態では、エラストマーマトリックス44は、機能性材料を保持しやすくするようにマトリックスを形成するポリマーマトリックス50(例えば、架橋シリコーン)に保持された機能性材料48を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の実施形態では、機能性材料を、運搬部材38の組成物に組み込み、それによって、システム内に材料を別個に供給したり、材料を運搬部材に継続的に再び塗布したりする必要がなくなる。したがって、運搬部材36は、機能性部材の容器と分配器の2つの目的を担っている。それに加え、本発明の実施形態によって製造された運搬部材は、感光体の寿命を延ばすために、BCR/感光体の表面に機能性材料の極めて薄い層を連続的に供給するのに十分な量の機能性材料を含むことが示されている。
【0022】
ある実施形態では、機能性材料は、有機化合物または無機化合物、モノマーまたはポリマー、またはこれらの混合物であってもよい。また、機能性材料は、潤滑性材料、疎水性材料、撥油性材料、両親媒性材料、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。機能性材料は、液体、ワックスまたはゲル、およびこれらの混合物の形態であってもよい。ある実施形態では、機能性材料は、パラフィン、例えば、比粘度が110〜230mPa・sのパラフィンである。また、機能性材料は、アルカン、フルオロアルカン、アルキルシラン、フルオロアルキルシランアルコキシ−シラン、鉱物油、合成油、天然油、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。機能性材料の具体例としては、例えば、炭化水素化合物またはポリマーのような疎水性材料が挙げられる。機能性材料は、さらに、感光体表面への機能性材料の吸着を促進する官能基と、場合により、感光体表面を化学的に改質し得る反応性基とを含んでいてもよい。例えば、機能性材料は、パラフィン系化合物、アルキルアルコキシ−シラン、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0023】
ある実施形態では、ポリマーマトリックスは、ポリシロキサン、シリコーン、ポリウレタン、ポリエステル、フルオロ−シリコーン、ポリオレフィン、フルオロエラストマー、合成ゴム、天然ゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーで構成されていてもよい。
【0024】
特定の実施形態では、エラストマーマトリックス44は、支持部材46の周囲に成型されたパラフィン含浸シリコーンで構成されている。パラフィン含浸シリコーンは、架橋可能なポリジメチルシロキサン(PDMS)にパラフィンを混合し、次いで、この混合物を、型を用いて支持部材46の上に成型することによって調製される。その後、エラストマーマトリックス44を硬化させる。硬化後、PDMSでコーティングされた棒を型から取り出し、さらにパラフィンのような機能性材料に浸すことによって含浸させてもよい。ある実施形態では、液体の架橋可能なPDMSを2成分系(すなわち、基剤および硬化剤)から調製する。さらなる実施形態では、基剤と硬化剤は、約50:1〜2:1、または約20:1〜約5:1の重量比で存在する。ある実施形態では、機能性材料を、約1:1、または約1:10〜約1:2の重量比でポリマーマトリックスに組み込んでもよい。
【0025】
運搬部材は、ロール中に存在していてもよく、ウェブのような他の構造を有していてもよい。弾性材料の厚みはさまざまであってよく、例えば、約50μm〜約100mm、または約100μm〜約10mmであってもよい。運搬部材は、球、半球、棒状、多角形、およびこれらの混合物からなる群から選択される三次元形状を有する凹凸を含む表面パターンを有していてもよい。
【0026】
さらなる実施形態では、ここに開示されている方法によって製造される感光体が提供される。例えば、基材と、基材の上に配置される画像化層と、画像化層の上に配置されるオーバーコート層と、オーバーコート層の上に配置される外側層とを備え、外側層が、オーバーコート層の表面に機能性材料を運ぶことによって形成され、さらに、外側層のない感光体と比較して、摩耗速度の低下、摩擦の低下、最低限の欠損を示す感光体が提供される。ある実施形態では、機能性材料の外側層は、厚みが約0.1nm〜約1um、または約25nm〜約500nmである。
【0027】
上述のように、機能性材料は、機能性材料を含浸させたエラストマーローラーをオーバーコート層の表面に接触させることによって、オーバーコート表面に運ばれる。運搬部材のエラストマー組成物のマトリックス中に機能性材料を拡散させると、機能性材料の送達速度を制御するのに役立つ。結果として、運ばれた機能性材料は、厚みがナノスケールまたは分子レベルの外側層を形成し、両方とも経済的な方法を提供し、感光体および帯電部材の上に過剰な機能性材料があることによる汚染が避けられる。ある実施形態では、外側層をオーバーコート層の代わりに画像化層に直接塗布してもよく、またはBCRに塗布し、次いで、機能性材料を感光体の外側層に転写してもよい。
【0028】
ある実施形態では、感光体表面に運ばれる疎水性機能性材料の量は、感光体の性能特性を保持するのに十分な量でなければならない。機能性材料は、感光体表面に種々の量で存在してもよく、例えば、分子レベルで、または約0.1ナノグラム/cm〜約1000ナノグラム/cm、または約5ナノグラム/cm〜約100ナノグラム/cmの量で存在してもよい。機能性材料は、BCR表面に種々の量で存在してもよく、例えば、約0.1ナノグラム/cm〜約1000ナノグラム/cm、または約5ナノグラム/cm〜約100ナノグラム/cmの量で存在してもよい。機能性材料は、画像化部材に約0.1mg/キロサイクル〜約10mg/キロサイクルの速度で運ばれてもよい。代替例では、機能性材料は、BCRに約0.1mg/キロサイクル〜約10mg/キロサイクルの速度で運ばれてもよい。本発明の実施形態は、外側層を含まない感光体と比較して、トルクの低減、摩耗速度の低下、Aゾーンでの欠損の減少を示す感光体を提供する。
【0029】
例えば、場合により、オーバーコート層32の上に画像化部材の他の層が含まれていてもよい。任意要素のオーバーコート層32は、所望な場合、画像化部材表面を保護し、耐引っかき性を高めるために電荷輸送層20の上に配置されてもよい。ある実施形態では、オーバーコート層32は、厚みが、約0.1マイクロメートル〜約25マイクロメートル、または約1マイクロメートル〜約10マイクロメートル、特定の実施形態では、約3マイクロメートル〜約10マイクロメートルの範囲であってもよい。これらのオーバーコート層は、典型的には、電荷輸送成分と、場合により、有機ポリマーまたは無機ポリマーとを含む。これらのオーバーコート層は、熱可塑性有機ポリマーまたは架橋ポリマー、例えば、熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂または電子線硬化樹脂などを含んでいてもよい。オーバーコート層は、酸化アルミニウムおよびシリカを含む金属酸化物、または低表面エネルギーポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびこれらの組み合わせを含む粒子状添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0030】
任意の既知のオーバーコート材料または新規オーバーコート材料が、本発明の実施形態に含まれていてもよい。ある実施形態では、オーバーコート層は、電荷輸送要素または架橋した電荷輸送要素を含んでいてもよい。特定の実施形態では、例えば、オーバーコート層は、自己架橋するか、またはポリマー樹脂と反応し、硬化組成物を形成することができる置換基を含む三級アリールアミンで構成される電荷輸送要素を含む。オーバーコート層に適した電荷輸送要素の特定の例は、以下の一般式を有する三級アリールアミンを含み、
【化1】

式中、Ar、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立して、炭素原子が約6〜約30個のアリール基をあらわし、Arは、炭素原子が約6〜約30個の芳香族炭化水素基をあらわし、kは0または1をあらわし、Ar、Ar、Ar、ArおよびArのうち、少なくとも1つは、ヒドロキシル(−OH)、ヒドロキシメチル(−CHOH)、アルコキシメチル(−CHOR、Rは、炭素が1〜約10個のアルキルである)、炭素が1〜約10個のヒドロキシルアルキル、およびこれらの混合物からなる群から選択される置換基を含む。他の実施形態では、Ar、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立して、フェニル基または置換フェニル基をあらわし、Arは、ビフェニル基またはターフェニル基をあらわす。
【0031】
三級アリールアミンを含む電荷輸送要素のさらなる例としては、以下のもの
【化2】

などが挙げられ、式中、Rは、水素原子、炭素が1〜約6個のアルキルからなる群から選択される置換基であり、mおよびnは、それぞれ独立して0または1をあらわし、m+n>1である。特定の実施形態では、オーバーコート層は、硬化し、架橋したオーバーコート組成物を形成するさらなる硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の具体例は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、イソシアネートまたは保護されているイソシアネート化合物、アクリレート樹脂、ポリオール樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。ある実施形態では、架橋したオーバーコート組成物は、例えば、Hysitron Inc.(ミネアポリス、MN)製ナノメカニカル試験装置を用いたナノインデンテーション方法によって測定した場合、平均弾性率が約3GPa〜約5GPaの範囲である。
【0032】
感光体支持基材10は、不透明であってもよく、または実質的に透明であってもよく、必須の機械特性を有する任意の適切な有機材料または無機材料を含んでいてもよい。基材全体が導電性表面と同じ材料を含んでいてもよく、または、導電性表面は、単に基材のコーティングであってもよい。任意の適切な導電性材料、例えば、金属または金属アロイを使用してもよい。
【0033】
基材10は、例えば、平板、円筒形、ドラム、巻物、終端のない可とう性ベルトなどの多くの異なる構造を有していてもよい。基材がベルトの形態である場合、図2に示されるように、ベルトは、つなぎ目があってもよく、つなぎ目がなくてもよい。ある実施形態では、本明細書の感光体は、ドラム形状である。
【0034】
基材10の厚みは、可とう性、機械性能、経済的な考慮事項を含む多くの因子に依存して変わる。本発明の実施形態の支持基材10の厚みは、少なくとも約500マイクロメートル、または約3,000マイクロメートル以下、または少なくとも約750マイクロメートル、または約2500マイクロメートル以下であってもよい。
【0035】
導電性接地面12は、例えば、真空蒸着技術のような任意の適切なコーティング技術によって基材10の上に形成されてもよい導電性金属層であってもよい。金属としては、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、および他の導電性基質、およびこれらの混合物が挙げられる。導電層は、厚みが、電子写真用導電性部材にとって望ましい光学的透明性および可とう性に依存して、実質的に広い範囲にわたって変わってもよい。したがって、可とう性光応答性画像化デバイスの場合、導電層の厚みは、導電性、可とう性、光透過性の最適な組み合わせのために、少なくとも約20オングストローム、または約750オングストローム以下、または少なくとも約50オングストローム、または約200オングストローム以下であってもよい。
【0036】
導電性接地面層を堆積させた後、正孔遮断層14をその上に塗布してもよい。正に帯電した感光体のための電子遮蔽層によって、正孔が感光体の画像化表面から導電層の方に移動することができる。負に帯電した感光体の場合、導電層から反対側の光伝導層に正孔が注入されるのを防ぐための障壁を作成することができる任意の適切な正孔遮断層を利用してもよい。
【0037】
アンダーコート層の一般的な実施形態は、金属酸化物と樹脂バインダーとを含んでいてもよい。
【0038】
正孔遮断層は、連続的でなければならず、厚みは、約0.5マイクロメートル未満でなければならない。これより厚いと、望ましくない高さの残留電圧が生じる可能性があるからである。約0.005マイクロメートル〜約0.3マイクロメートルの正孔遮断層を使用する。露光工程の後の電荷中和が容易であり、最適な電気性能が達成されるからである。最適な電気的挙動の性孔遮断層には、約0.03マイクロメートル〜約0.06マイクロメートルの厚みを使用する。金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、または酸化スズ)を含有する正孔遮断層は、もっと厚くてもよく、例えば、約25マイクロメートルまでの厚みを有していてもよい。
【0039】
その後、電荷発生層18をアンダーコート層14に塗布してもよい。電荷を発生する/光伝導性材料を含む任意の適切な電荷発生バインダー(粒子の形態であり、膜形成バインダー中に分散していてもよい、例えば、不活性樹脂)を利用してもよい。
【0040】
例えば、米国特許第3,121,006号(全体的な開示内容が本明細書に参考として組み込まれる)に記載されるものを含め、電荷発生層18のバインダーとして任意の適切な不活性樹脂材料を使用してもよい。
【0041】
電荷を発生する材料は、樹脂バインダー組成物中に種々の量で存在していてもよい。
【0042】
特定の実施形態では、電荷発生層18は、厚みが少なくとも約0.1μm、または約2μm以下、または少なくとも約0.2μm、または約1μm以下であってもよい。これらの実施形態は、クロロガリウムフタロシアニンまたはヒドロキシガリウムフタロシアニンまたはこれらの混合物で構成されていてもよい。電荷を発生する材料と樹脂バインダー材料とを含有する電荷発生層18は、一般的に、乾燥時の厚みが少なくとも約0.1μm、または約5μm以下、例えば、約0.2μm〜約3μmの範囲である。電荷発生層の厚みは、一般的に、バインダーの含有量と関係がある。バインダー含有量が大きい組成物ほど、一般的に、電荷発生のために使用する厚みも大きくなる
【0043】
ドラム感光体では、電荷輸送層は、同じ組成物の単一層を含む。この場合、電荷輸送層について、単一層20の観点で特定的に述べているが、この詳細を二重の電荷輸送層を有する実施形態に適用することも可能であろう。その後、電荷輸送層20を電荷発生層18の上に塗布し、電荷発生層18から光によって発生した正孔または電子の注入を助けることが可能で、電荷輸送層を介し、この正孔/電子を輸送し、画像化部材表面の表面電荷を選択的に放電させることが可能な任意の適切な透明有機ポリマーまたは非ポリマー材料を含んでいてもよい。一実施形態では、電荷輸送層20は、正孔を輸送するのに役立つだけではなく、電荷発生層18を引っかき傷または化学物質による攻撃から守るのにも役立ち、したがって、画像化部材の耐用年数を延ばすだろう。電荷輸送層20は、実質的に光伝導性材料であってもよいが、電荷発生層18から光によって発生した正孔を注入するのにも役立つ材料であってもよい。
【0044】
電荷輸送層20は、電気的に不活性なポリマー材料(例えば、ポリカーボネートバインダー)中に溶解または分子単位で分散する添加剤として有用な任意の適切な電荷輸送要素または活性化化合物を含み、固溶体を形成していてもよく、それによって、この材料を電気的に活性にしてもよい。「溶解する」とは、例えば、低分子がポリマーに溶解し、均一相を形成し、溶液を形成することを指し、分子単位で分散するとは、ある実施形態では、例えば、電荷輸送分子がポリマーに分散し、この低分子が分子単位でポリマーに分散することを指す。
【0045】
電荷輸送層のために選択されるバインダー材料の例としては、例えば、米国特許第3,121,006号(開示内容は、全体的に本明細書に参考として組み込まれる)に記載されるような要素が挙げられる。
【0046】
それに加え、ベルト構造を用いる本発明の実施形態では、電荷輸送層は、1回通過型電荷輸送層または同じまたは異なる輸送分子比をもつ2回通過型電荷輸送層(または二重層電荷輸送層)で構成されていてもよい。これらの実施形態では、二重層電荷輸送層は、厚みの合計が約10μm〜約40μmである。他の実施形態では、二重層電荷輸送層のそれぞれの層は、個々の厚みが約2μm〜約20μmであってもよい。さらに、電荷輸送層は、感光体の上部層として使用し、電荷輸送層とオーバーコート層の界面での結晶化を阻害するような構成になっていてもよい。別の実施形態では、電荷輸送層は、第1の通過層と第2の通過層との界面に生じる微細結晶化を阻害するために、第1の通過電荷輸送層として使用するような構成であってもよい。
【0047】
任意の適切かつ従来の技術を利用し、電荷輸送層混合物を作成した後、この混合物を支持基材層に塗布してもよい。電荷輸送層は、1回のコーティング工程で作成されてもよく、複数回のコーティング工程で作成されてもよい。浸漬コーティング、リングコーティング、噴霧、グラビアまたは任意の他のドラムコーティング法を使用してもよい。
【0048】
特定の構造(例えば、可とう性ウェブ構造)で、任意の別個の接着性界面層を与えてもよい。図1に示す実施形態では、界面層は、遮蔽層14と電荷発生層18との間に位置しているだろう。界面層は、コポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
【0049】
任意の適切な溶媒または溶媒混合物を使用し、接着界面層のためのポリエステルコーティング溶液を作成してもよい。溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、モノクロロベンゼン、塩化メチレン、シクロヘキサノンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。任意の他の適切かつ従来の技術を用いて混合し、その後、接着層コーティング混合物を正孔遮断層に塗布してもよい。
【0050】
接着界面層は、乾燥後の厚みが少なくとも約0.01マイクロメートル、または約900マイクロメートル以下であってもよい。ある実施形態では、乾燥した厚みは、約0.03マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0051】
接地片は、膜形成ポリマーバインダーと、導電性粒子とを含んでいていてもよい。導電性接地片層19に任意の適切な導電性粒子を使用してもよい。
【0052】
接地片層は、厚みが少なくとも約7マイクロメートル、または約42マイクロメートル以下、または少なくとも約14マイクロメートル、または約27マイクロメートル以下であってもよい。
【0053】
アンチカール裏側コーティング1は、絶縁性またはわずかに半導体性の有機ポリマーまたは無機ポリマーを含んでいてもよい。アンチカール裏側コーティングは、平坦さおよび/または耐引っかき性を付与する。
【0054】
アンチカール裏側コーティング1は、基材2の裏側かつ画像化層の反対側に作られていてもよい。アンチカール裏側コーティングは、膜形成樹脂バインダーと接着促進添加剤とを含んでいてもよい。樹脂バインダーは、上述の電荷輸送層の樹脂バインダーと同じ樹脂であってもよい。
【0055】
[発明を実施するための形態]
(実施例1)
(運搬部材の製造)
架橋可能なポリジメチルシロキサン(PDMS)基剤と硬化剤(Sylgard 184、Dow Corning)を重量比10:1で一緒に混合した。これらの要素を一緒に撹拌した。この混合物に、PDMS対パラフィン油の比率が2:1になるようにパラフィン油を加えた。粘性混合物が得られるまで、混合物を一緒に撹拌した。この混合物を円筒形の型に注入し、1時間脱気した。残りの型を並べ、PDMS:パラフィン混合物を実験室用強制換気オーブン中、60℃で3時間硬化させた。運搬ローラーを型から取り出し、印刷試験のためにCRUに組み込んだ。
【0056】
(実施例2)
(画像形成装置の製造)
実施例1にしたがって製造した運搬部材を、クリーニングブレードとBCR帯電ローラーとの間に空間をあけた状態でXerox DC250プリンタのCRUに組み込んだ。運搬ローラーは、感光体と直接接触していた。改変されたCRUは、低摩耗性オーバーコーティングされた感光体を含んでいた。
【0057】
感光体を以下の様式で製造した。100部のジルコニウム化合物(商品名:Orgatics ZC540)、10部のシラン化合物(商品名:A110、日本ユニカー株式会社製)、400部のイソプロパノール溶液、200部のブタノールを含む、アンダーコート層用コーティング溶液を調製した。コーティング溶液を、浸漬コーティングによってハニカム処置を行った30mmの円筒形アルミニウム(Al)基材に塗布し、150℃で10分間加熱することによって乾燥させ、膜厚が0.1マイクロメートルのアンダーコート層を作成した。
【0058】
厚みが0.5ミクロンの電荷を発生する層を、その後、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(12部)、アルキルヒドロキシガリウムフタロシアニン(3部)、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、Dow Chemicalから入手可能なVMCH(Mn=27,000、塩化ビニル約86重量%、酢酸ビニル約13重量%、マレイン酸約1重量%)(10部)を475部の酢酸 n−ブチルに分散させた分散物から、アンダーコート層の上部に浸漬コーティングした。
【0059】
その後、厚み20μmの電荷輸送層(CTL)を、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(82.3部)、2.1部のAldrich製2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、ポリカーボネート、三菱ガス化学株式会社製PCZ−400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン)、M=40,000](123.5部)を、546部のテトラヒドロフラン(THF)と234部のモノクロロベンゼンの混合物に溶かした溶液から、電荷を発生する層の上部に浸漬コーティングした。CTLを115℃で60分乾燥させた。
【0060】
アルコール溶媒中、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(3.3部)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(DHTBD)(6.0部)、酸触媒(0.1部)からオーバーコートコーティング溶液を調製した。0.45μmのPTFEフィルターで濾過した後、この溶液を、カップコーティング技術を用いて感光体表面(より特定的には、電荷輸送層)に塗布した後、150℃で40分間熱硬化させ、膜厚が5μmのオーバーコート層を作成した。
【0061】
(評価および試験結果)
印刷試験:機械を試験する前に、感光体をAゾーン(28℃、85% RH)で平衡状態にしておいた。Xerox DC250プリンタを用い、Aゾーンで印刷試験を行ない、画質、特定的には、ハーフトーンと欠損を評価した。比較のために、図6からわかるように、感光体34の3分の2の部分54には、パラフィンのみを塗布し、塗布していない表面52をコントロールとして使用した。このことは、運搬部材56を感光体の幅の3分の2のみになるように製造し、CRUの内側に設置することによって達成した。運搬部材56は、感光体34と直接接触していた。印刷試験を125キロサイクル続け、2千枚印刷するごとに診断用印刷物を印刷した。良好な画質が示された。
【0062】
32500回印刷した後、印刷試験機から得られた印刷結果を図7に示し(図3のシステムを用いた)、また、図8に示し(図4のシステムを用いた)(50000回印刷(125キロサイクル)を完結させた)、これらの図は、コントロール区画と比較した場合、パラフィンを塗布した感光体表面領域から現像した画質が顕著に向上していることを示している(欠損はみられなかった)。パラフィンコーティングされた感光体から現像した区画は、画像に欠陥がないことを示しており、一方、パラフィンを塗布していない区画は、Aゾーンでの欠損と印刷縞の両方を示している。パラフィン区画に欠陥がないことは、感光体の電気特性に悪い影響がなかったことを示していた。観察結果から、感光体の制御部分52と接するクリーニングブレード部分(パラフィンを塗布していない)は、前縁に部分的な損傷が示された。比較として、(パラフィンを塗布した)感光体54の試験部分は、損傷がかなり少ないことが示された。
【0063】
トルクの測定:Fuji Xerox「DocuCentre」プリンタのBCR帯電を用いたゼログラフィープロセスを模倣するように設定した社内備品を用い、Fuji Xeroxドラム/トナーカートリッジ「F469」でゼログラフィー用カートリッジのトルクを測定した。非常にストレスのかかる湿度の高い環境(温度28℃、湿度85%)で、測定を行った。オーバーコートを有さない感光体は、平均約0.78N・mの安定なトルクを示した。実施例2に記載のオーバーコート層でコーティングされた感光体を用いて測定したトルクは、1.0N・mを超えていた。オーバーコート層ドラムを備えたブレードの欠陥は、5000サイクルより前に起こった。図9は、100キロサイクル(400キロサイクルをこの実験で完結させた)について、2:1のPDMS:パラフィンローラーと組み合わせた、オーバーコーティングされた感光体から得られるトルクを示している。トルクは約0.65N・mであると測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
支持部材の上に配置されたエラストマーマトリックスとを備え、エラストマーマトリックスが、マトリックス内に分散した1つ以上の機能性材料を含む、画像形成装置で使用するための運搬部材。
【請求項2】
エラストマーマトリックスが、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリフルオロシロキサン、ポリオレフィン、フルオロエラストマー、合成ゴム、天然ゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項3】
エラストマーマトリックスが、架橋ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項4】
ポリマーマトリックスに対する前記機能性材料の重量比が1:1までである、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項5】
前記機能性材料が、有機化合物または無機化合物、モノマーまたはポリマー、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項6】
前記機能性材料が、潤滑性材料、疎水性材料、撥油性材料、両親媒性材料、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項7】
前記機能性材料が、液体、ワックスまたはゲル、およびこれらの混合物の形態である、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項8】
前記機能性材料を前記運搬部材の表面に拡散させることができる、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項9】
前記運搬部材がなめらかな表面または模様のついた表面を有する、請求項1に記載の運搬部材。
【請求項10】
(a)その上で静電潜像を現像するための電荷保持表面を有し、
基材と、
基材の上に配置された光伝導性部材とを備える画像化部材と;
(b)画像化部材の上にある静電電荷に所定の電位を加えるための帯電ユニットと;
(c)前記画像化部材の表面または前記帯電ユニットの表面と接するように配置され、
(i)支持部材と、
(ii)支持部材の上に配置されたエラストマーマトリックスとを備え、エラストマーマトリックスが、マトリックス内に分散した1つ以上の機能性材料を含むような運搬部材とを備える、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−29833(P2013−29833A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154604(P2012−154604)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】