説明

画像編集装置

【発明の詳細な説明】
「産業上の利用分野」
本発明は画像を電子的に読み取ってこれを編集する画像編集装置に係わり、詳細にはイメージの切り出しやマスク処理を行う際にこれらの位置の調整を行うことのできる画像編集装置に関する。
「従来の技術」
市町村役場では住民票の原本を保管しており、住民票の写しをこの原本から作成している。この際、原本はそのままその全部がコピーされたりプリントアウトされるのではなく、不適切あるいは不必要な部分の情報が除かれた形でコピー等が行われる。これは、例えば続柄が安易に第3者に知られることによるプライバシーの侵害や各種不都合を防止するための措置である。
不適切あるいは不必要な部分の情報の除去作業は、例えば複写機のプラテンガラス上にオーバーレイを置いて、更にその上に原本(原稿)を重ねることによって行うことができる。すなわち、オーバーレイの透明な部分では原稿が透けて見えるのでそのまま画像が再現され、オーバーレイの不透明な部分では原稿が見えないので不適切あるいは不要な画像を再現しないようにすることができる。
「発明が解決しようとする問題点」
ところで最近では前述した個人のプライバシーの保護等の要請によって、続柄や本籍の箇所等を小まめに住民票の原本から削除してコピーするようになってきている。このため、オーバーレイによる原画情報の削除のためのパターンはますます複雑化しており、複写機上におけるオーバーレイの位置合わせ作業がますます困難なものとなってきている。
そこで最近では原本上の画情報を電子的に読み取って、自動的にマスク処理を行う装置の開発も行われている。しかしながら、このような装置では画像の読取部に原稿を正確にセットしないと、原稿とマスクのためのパターンが食い違い、領域以外の画情報を削除したり削除すべき画情報が削除されないといった不都合が生じた。
以上、住民票を例にして説明したが、一般の帳票類から画情報の抽出、マスク処理あるいは画像の合成を行うような装置についても、領域処理に当たって同様な問題が生じていた。
そこで本発明の目的は、イメージの処理領域が多少狂ってもこれを画面上で調整することのできる画像編集装置を提供することにある。
「問題点を解決するための手段」
本発明の画像編集装置は、第1図に示すように例えば処理しようとする画像のピットマップデータにマスクパターンを重ね合わせて表示するための表示手段1や、ビットマップデータとマスクパターンの相対的な移動を行う際に使用する手段としてのカーソルをこの表示手段1上に表示するカーソル表示手段2や、ビットマップデータやマスクパターンの表わされる領域を相対的に移動させる領域移動制御手段3を備えた装置として構成される。
このような本発明の画像編集装置は、(イ)処理しようとする画像を読み取ってビットマップデータとして入力する画像入力手段と、(ロ)この画像入力手段によって入力されたビットマップデータを格納するビットマップメモリと、(ハ)このビットマップメモリの指定された位置のデータをマスクするためのマスクパターンを発生させるマスクパターン発生手段と、(ニ)ビットマップメモリに格納されたビットマップデータをマスクパターン発生手段の発生させたマスクパターンによってマスクした状態で表示する表示手段と、(ホ)ビットマップメモリに格納されたビットマップデータに対するマスクパターンの相対的な位置を調整するための移動方向と移動量を入力する移動情報入力手段と、(ヘ)この移動情報入力手段の入力に応じて表示手段に表示されたビットマップデータのマスクされる位置を相対的に移動させる表示内容編集手段と、(ト)編集の終了を指示する編集終了指示手段と、(チ)この編集終了指示手段が編集の終了を指示したときの表示手段の表示内容でマスクパターンによってマスクされたビットマップデータを記録する記録手段を有している。
そして、画像入力手段から入力された画像のビットマップデータをビットマップメモリに表示および記録のために格納し、このビットマップメモリ内のデータに対して位置決めした形でマスクパターンを発生させてビットマップデータをマスクした状態で表示手段で表示する。画像入力手段から入力された画像が画像の読取位置の狂い等でビットマップメモリ内の正規の位置からずれた形でビットマップメモリに格納されたような場合には、マスクパターンの本来マスクすべき画像の位置がずれてしまうことになる。このような場合には、カーソル等を使用して移動情報入力手段でビットマップメモに格納されたビットマップデータに対するマスクパターンの相対的な位置を調整するための移動方向と移動量を入力することになる。調整が終了した状態で記録手段が記録を行うことで、ビットマップデータに対するマスク位置の狂いのない画像をプリントアウトすることができる。
「実施例」
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
第2図は本発明の一実施例における画像編集装置の回路構成を表わしたものである。この画像編集装置11は、磁気記憶媒体としてのハードディスク12と、作業用のメモリとしてのRAM(ランダム・アクセス・メモリ)13を備えている。そして、ハードディスク12内に格納された画像編集用等のプログラムをRAM13上に転送し、CPU(中央処理装置)14の制御のもとで、あるいは2つのDMA(Direct Memory Access)15、16の処理によって画像の読み取りや編集作業を行うようになっている。キーボード17はオペレータの操作用の設けられている。また、マウス18はCRT19上に表示されるメニューの選択を行ったり、アイコンの指定を行う等の入力作業に用いられる。
この画像編集装置で、画像入力部20は例えばCCD(Charge Coupled Devices)からなる1次元イメージセンサを備えており、図示しないプラテン上に載置される住民票の原本等から画情報の読み取りを行うようになっている。読み取られた画情報はバス21に転送され、DMA15によってイメージメモリ22に書き込まれる。イメージメモリ15には必要により複数ページの画情報を書き込むことができる。表示を行うための1ページ分の画情報は、ピットマップメモリ23に書き込まれ、表示制御部24の制御のもとにCRT19上に表示される。画情報の編集結果は画像出力部25に出力される。オペレータは必要な場合、この出力される内容をCRT19に表示させることも可能である。
第3図はこの画像編集装置に画像入力される住民票の原本の様式の一部を表わしたものである。住民票の原本31には、複数の欄が配置されている。この図では7欄32−7と8欄32−8が表わされている。これらの欄32−7、32−8の左端に示されている数字が欄の番号を示している。この図で示していない0欄には、世帯主の氏名と住所が記されている。1欄以降はこの第3図に示す7欄32−7および8欄32−8と同じであるが、1欄には世帯主に関する情報が記されている。これら1欄以降の欄には、7欄32−7にも示されているように世帯の構成員の氏名33、生年月日34、男女の別35、続柄36、住民となった年月日37、本籍38、筆頭者39、元の住所41、移動先42、職権で記載した場合の事実43およびその他の情報44が記されている。ここでその他の情報44とは、国民健康保険や年金に関する情報や、選挙権の有無等の他の個人的な情報をいう。
それでは、第4図と共にこの画像編集装置による住民票の写しの作成の手順を説明する。この写し作成作業では、0〜2欄のみを抽出し、この中の続柄と本籍に関する情報を削除するような編集を行った後、必要であれば抽出した領域の位置の調整を行って写しのプリントアウトを行うものとする。
まず、オペレータは該当する住民票の原本を第2図に示す画像入力部20にセットする。キーボード17から画像の読み取りの開始が指示される(ステップ■;Y)。これにより、CPU14は画像入力部20を制御して住民票の画像データの読み取りを制御する(ステップ■)。画像入力部20には1次元イメージセンサが配置されており、これが該当する住民票を平面走査することになる。DMA15は画像入力部20から読み取られる2値の画像データをイメージメモリ22に書き込む(ステップ■)。イメージメモリ22に格納された画像データは、CRT19に表示するためにビットマップメモリ23へ転送される(ステップ■)。表示制御部24は、ビットマップメモリ23に書き込まれたデータをCRT19上に表示する(ステップ■)。ここでビットマップメモリ23には1次元イメージセンサによって読み取られた画像データだけでなく、次に説明する各種の付帯情報も書き込まれており、表示制御部24はこれらを合成した形で表示させることになる。
第5図には、その一部の領域にハッチングが施されているが、これらハッチングを除去した状態がステップ■で表示されたCRT19の画面と一致する。ここには、0〜5欄32−0〜32−5を表わした1ページ分の住民票のイメージ51と、コマンド類52が表示されると共に、画面53の右端近傍には編集のための各種指示欄54〜57が表示されるようになっている。
ここで指示欄54は住民票に認証文を付加するときこれを指示する欄である。指示欄55は住民票の様式(フォーマット)を指示する欄である。指示欄56は前記した欄32を選択するための欄である。指示欄57はプリントアウトの省略を行う箇所を指示する欄である。
住民票のイメージ51がCRT19に表示されたら、オペレータはこの住民票に適したマスクを行うための“様式i"を選択する(ステップ■)。この選択操作は本実施例の場合、マウス18を用いて行う。すなわち、マウス18を机上で操作してカーソルを該当する様式の箇所(図では示していないが指示欄55には各様式の種類が表示されている。)に移動させ、付属のボタンを押下する。“様式2"の箇所でマウス18のボタンが押下されると、第5図に示したようにその部分の輝度が反転して(この第5図ではハッチングを入れて反転領域を表示している。)“様式2"が選択されたことが表示される。
“様式i"として、“様式2"が選択されたら(ステップ■;Y)、この様式でプリントアウトを行わせるための切り出しデータ(マスクパターン)についての位置データPiをハードディスク12から読み出し、これをRAM13に書き込む(ステップ■)。
オペレータは、“様式i"を選択した後、指示欄55で欄32の選択を行い、他の指示欄57で省略する箇所の指示を行う(ステップ■)。これらの選択操作もマウス13を用いて行われる。
この場合、指示欄55における0欄32−0に対応する箇所の指定がまず行われる(ステップ■;Y)。これによりCPU14はその欄32−0に対応する切り出し位置P(pi)を前記したRAM13から読み出す(ステップ■)。そして、ビットマップメモリ23の該当する領域を反転表示する(ステップ■)。ここで該当する領域とは、0欄32−0と指示欄56の“0欄”である。
オペレータは、この後1欄32−1および2欄32−2の指定も行う(ステップ■〜■)。これにより、第5図で破線で囲んだ非反転領域51もハッチングが行われたような反転表示が行われる。
次にオペレータは指示欄57の操作に移る。前述したようにこの実施例では“続柄”と“本籍”の部分をプリントアウトしないようにする。そこでオペレータはマウス18を使用してこれらの指示を順次行う(ステップ■〜■)。これにより、第5図でハッチング部分が反転表示される。これらの部分が画情報としてプリントアウトされる部分である。
以上の操作後にオペレータが次の指示としてコマンド類52のいずれかを指定すると、CPU14は指示欄56の指定が終了したと判別する(ステップ■;Y)。オペレータはこの状態で画面53の確認を行うことができる(ステップ■)。
第6図に一例として示したように続柄36と本籍38を削除するための領域が右側およびわずか下側にずれていたとする。この場合、オペレータは写し作成のための切り出し位置が正しくないと判別する(ステップ■;N)。そこでオペレータはマウス18を操作して移動方向と移動量を表わすデータDを入力する。
この例の場合、ハッチングで示した削除すべき領域は全体に左上方向に移動すればよい。そこでオペレータはマウス18を用いてカーソルを第5図に示したハッチング領域の外にもっていき、ここでそのボタンを押下する。そして、移動方向に移動すべき量だけカーソルを移動させて再びマウス18のボタンを押下する。このような操作を行うと、CPU14はマウス18によって入力されたデータDをRAM13に記憶する(ステップ■)。そしてこのデータDをX、Y両方向すなわち住民票の原本における横方向と縦方向の移動量D(x,y)に換算し、ハッチングで示された切り出し位置P(pi)に加算する(ステップ■)。このようにして求められた新しい切り出し位置について表示制御部24は反転位置の変更表示を行う(ステップ■)。すなわち、この場合には、ハッチングの施された領域も続柄36と本籍38の表わされる非ハッチング領域も共に指定された方向および量だけ移動することになる。
もし、ハッチングで示された領域そのものは移動せずに続柄36と本籍38の削除部分のみについて領域の位置調整を行う必要がある場合には、オペレータはカーソルをハッチング領域内にまで移動させた状態でマウス18のボタンを押下して、この後、移動方向と移動量を入力するようにすればよい。このような移動対象とカーソルの初期位置との約束は、これ以外のものであってもよい。CPU14はカーソルの初期位置の座標を判別し、予め定められた約束に従って移動すべき領域を決定することになる。
さて、ステップ■による反転表示の結果として続柄36と本籍38の削除部分が原本のその領域と一致していない場合や画像の抽出を行う領域の外枠が一致していないような場合には、これらが満足できるような状態になるまで以上説明したような作業が繰り返されることになる(ステップ■〜■)。
これに対して第7図に示すように削除部分が原本のイメージと一致していたとき、オペレータは次の作業としてコマンド類52における印刷コマンド61の指定を行うことになる。
印刷を行うためのコマンドとしての印刷コマンド61が選択された場合には(ステップ■;Y)、イメージメモリ22の対応する位置すなわち第5図にハッチングで示した部分の切り出しが行われる(ステップ■)。認証文を付けるような場合には、この認証文についてのイメージの読み出しも行われる。
次にCPU14はハードディスク12から出力位置データQの読み出しを行う(ステップ■)。ここで出力位置データとは、切り出された欄32−0〜32−2等をプリントアウトする際の位置を決めるデータである。例えば0欄32−0、1欄32−1と3欄32−3の3つの欄が出力される場合には、これらの間で欠番となった欄32−2を詰めたような形でプリントアウトが行われるので、指定された欄等との関係で最適な出力位置データQが読み出されることになる。
出力位置データQが読み出されたら、これを基にして画像の組み立てが行われる(ステップ■)。そして、この組み立てられた画像について画像出力部25でプリントアウトが行われることになる(ステップ■)。画像出力部25はレーザプリンタその他のプリンタによって構成されている。
なお、この図では示していないが、印刷の開始前にオペレータがその内容を確認したい場合にはコマンド類52における確認コマンド62を選択すればよい。この場合には、組み立てられた画像そのものがCRT19に表示される。この結果として画像の再読み取りが必要であれば再読み取りコマンド63の選択が行われる。次ページコマンド64は複数のページが存在するときに表示あるいはプリントアウトするページを選択する際に用いられる。また、印刷部数コマンド65は複数枚の印刷を行うときに選択するコマンドで、マウス18によりこれが選択されたらキーボード17から枚数を数値で入力することができるようになっている。
なお、以上説明した実施例ではハッチングを施した領域とその内部に白抜きで示した領域との2つの領域の移動について説明したが、領域が何重になっていてもそれらの領域の移動の制御に本発明を適用することができることはもちろんである。
「発明の効果」
以上説明したように本発明によれば、処理しようとする画像を読み取ってビットマップデータとしてビットマップメモリに格納したとき、ビットマップデータの格納位置がマスクパターンの位置とずれるようなことがあっても、表示手段で両者を重ね合わせて表示することにしたので、記録を行う前にそのずれを容易に確認することができ、むだな記録を避けることができる。また、表示手段でマスクする位置のずれを確認した場合には、移動情報入力手段を用いてビットマップメモリに格納されたビットマップデータに対するマスクパターンの相対的な位置を調整し、この調整状態を表示手段で確認できるようにしたので、装置に熟達していない者であっても調整を迅速かつ正確に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の原理的構成を示すブロック図、第2図〜第7図は本発明の一実施例を説明するためのもので、このうち第2図は画像編集装置の回路構成を示すブロック図、第3図は住民票の原本の一部を示す平面図、第4図R>図は画像編集の作業を示す流れ図、第5図はCRTの表示状態の一例を示す平面図、第6図は切り出し領域が過って設定された場合の一例を示す平面図、第7図は切り出し領域が補正された状態を示す平面図である。
1……表示手段、2……カーソル表示手段、
3……領域移動制御手段、14……CPU、
17……キーボード、18……マウス、
19……CRT、20……画像入力部、
22……イメージメモリ、
23……ビットマップメモリ。

【特許請求の範囲】
1.処理しようとする画像を読み取ってビットマップデータとして入力する画像入力手段と、この画像入力手段によって入力されたビットマップデータを格納するビットマップメモリと、このビットマップメモリの指定された位置のデータをマスクするためのマスクパターンを発生させるマスクパターン発生手段と、前記ビットマップメモリに格納されたビットマップデータをマスクパターン発生手段の発生させたマスクパターンによってマスクした状態で表示する表示手段と、前記ビットマップメモリに格納されたビットマップデータに対するマスクパターンの相対的な位置を調整するための移動方向と移動量を入力する移動情報入力手段と、この移動情報入力手段の入力に応じて前記表示手段に表示された前記ビットマップデータのマスクされる位置を相対的に移動させる表示内容編集手段と、編集の終了を指示する編集終了指示手段と、この編集終了指示手段が編集の終了を指示したときの前記表示手段の表示内容で前記マスクパターンによってマスクされたビットマップデータを記録する記録手段とを具備することを特徴とする画像編集装置。

【第1図】
image rotate


【第3図】
image rotate


【第2図】
image rotate


【第4図】
image rotate


【第5図】
image rotate


【第6図】
image rotate


【第7図】
image rotate


【特許番号】第2661031号
【登録日】平成9年(1997)6月13日
【発行日】平成9年(1997)10月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−75999
【出願日】昭和62年(1987)3月31日
【公開番号】特開昭63−244272
【公開日】昭和63年(1988)10月11日
【出願人】(999999999)富士ゼロックス株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭61−284794(JP,A)