説明

画像表示シート及び画像表示製品

【課題】ホログラム等の微細構造により表示される画像とともに、観察角度に依存しない高画質な画像が表示される画像表示シートを提供する。
【解決手段】画像表示シート10は、基材20上に、画像を構成する複数の網点を有する表示パターン領域30Aと、該各網点以外の部分に凹凸構造を有する背景パターン領域30Bとが形成されたパターン形成層30を備える。また、各網点の径の最大値と最小値との差は200μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム等の微細構造により表示される画像とともに、観察角度に依存しない高画質な画像が表示される画像表示シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホログラム等の微細構造を有する製品がセキュリティ分野からデザイン分野に至るまで広く用いられている。
【0003】
このような印刷方法以外の微細構造によるパターン表示技術は、多様な視覚効果を有する意匠性の高い製品やセキュリティ関連の製品に使用されることが多い。
【0004】
微細構造を用いたパターン表示技術の例として、金属薄膜で覆われている微細構造を有するシートの被膜一部を非金属化(ディメタライズド処理)するものや、微細構造を含むシート上に印刷層を組み合わせるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−38973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の微細構造による画像の多くは、一般的な印刷物の画像と比較して画質が悪く、観察者によっては認識し難い場合がある。例えば、ホログラム構造等においては、観察角度によって画像が認識できたり、認識できなかったりする場合がある。また、微細構造のパターンやサイズによっては、画像にザラツキが生じたり、光学的現象により製作者が意図していないムラや色味変化が生じたりすることもある。
【0006】
このような事情に鑑みて、セキュリティ分野の用途などにおいては、ホログラム構造等の微細構造を有する製品に、ホログラム画像等以外にも観察角度に依存しない画像が要求されることがある。
【0007】
本発明の目的は、ホログラム等の微細構造により表示される画像とともに、観察角度に依存しない高画質な画像が表示される画像表示シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために以下の手段を講じる。
【0009】
請求項1に対応する発明は、基材と、前記基材上に、画像を構成する複数の網点を有する表示パターン領域と、該各網点以外の部分に凹凸構造を有する背景パターン領域とが形成されたパターン形成層と、を備えた画像表示シートであって、前記各網点の径の最大値と最小値との差が200μm以下である画像表示シートである。
【0010】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する画像表示シートにおいて、前記各網点の径の最大値と最小値との差が73μm以上である画像表示シートである。
【0011】
請求項3に対応する発明は、請求項1または請求項2に対応する画像表示シートにおいて、前記表示パターン領域の網点は、前記パターン形成層の凸部により構成される画像表示シートである。
【0012】
請求項4に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に対応する画像表示シートにおいて、前記表示パターン領域の網点は、前記パターン形成層の凹部により構成される画像表示シートである。
【0013】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に対応する画像表示シートにおいて、前記網点が周期的に配置されており、周期的に配置されている前記網点の配列ピッチをAとし、前記網点の基準サイズを√2×Aとし、実際の網点サイズを√2×A×X(0≦X≦1.0)としたとき、前記網点サイズの分布が、基準サイズから{(1−X)×100}%以下である画像表示シートである。但し、X=1−{73/(√2×A)}、かつA≧100μmである。
【0014】
請求項6に対応する発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に対応する画像表示シートにおいて、前記各網点は、一定の配列ピッチで周期的に配置されており、一の網点と、該網点の周囲の全ての網点との隙間長が73μm以下である画像表示シートである。
【0015】
請求項7に対応する発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する画像表示シートにおいて、前記パターン形成層上に形成された反射層をさらに備えた画像表示シートである。
【0016】
請求項8に対応する発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に対応する画像表示シートにおいて、前記表示パターン領域の各網点は、散乱構造、マット構造、ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成される画像表示シートである。
【0017】
請求項9に対応する発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に対応する画像表示シートにおいて、前記背景パターン領域の凹凸構造は、散乱構造、マット構造、ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成される画像表示シートである。
【0018】
請求項10に対応する発明は、請求項1乃至請求項9に対応する画像表示シートが用いられる画像表示製品である。
【0019】
<作用>
従って、本発明は以上のような手段を講じたことにより、以下の作用を有する。
【0020】
請求項1に対応する発明は、基材上に、画像を構成する複数の網点を有する表示パターン領域と、該各網点以外の部分に凹凸構造を有する背景パターン領域とが形成されたパターン形成層を備えており、各網点の径の最大値と最小値との差が200μm以下であるので、ホログラム等の微細構造により背景パターン領域に表示される画像とともに、観察角度に依存しない高画質な画像が表示される画像表示シートを提供することができる。
【0021】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する作用に加え、各網点の径の最大値と最小値との差が73μm以上であるので、モアレ等が生じず、人間の目に違和感を生じさせない高画質な画像を表示できる。
【0022】
請求項3に対応する発明は、請求項1・2に対応する作用に加え、表示パターン領域の網点は、パターン形成層の凸部により構成されるので、表示パターン領域の網点と背景パターンの微細構造とを単一の金型で形成することができる。
【0023】
請求項4に対応する発明は、請求項〜3に対応する作用に加え、表示パターン領域の網点は、パターン形成層の凹部により構成されるので、表示パターン領域の網点と背景パターンの微細構造とを単一の金型で形成することができる。
【0024】
請求項5・6に対応する発明は、請求項1〜4に対応する作用に加え、各網点が、一定の配列ピッチで周期的に配置されており、一の網点と、該網点の周囲の全ての網点との隙間長が73μm以下であるので、見た目に違和感がない画像が表示される画像表示シートを提供できる。
【0025】
請求項7に対応する発明は、請求項1〜6に対応する作用に加え、パターン形成層上に形成された反射層をさらに備えているので、膜材料や膜厚に応じて外観の色などを調整できる。
【0026】
請求項8に対応する発明は、請求項1〜7に対応する作用に加え、表示パターン領域の各網点が、散乱構造、マット構造、ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成されるので、多様な視覚効果を生じさせることができる。
【0027】
請求項9に対応する発明は、請求項1〜8に対応する作用に加え、背景パターン領域の凹凸構造が、散乱構造、マット構造、ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成されるので、様々な視覚効果を生じさせることができる。
【0028】
請求項10に対応する発明は、請求項1〜9に対応する画像表示シートが用いられる画像表示製品であるので、ホログラム等の微細構造により背景パターン領域に表示される画像とともに、観察角度に依存しない高画質な画像が表示される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ホログラム等の微細構造により表示される画像とともに、観察角度に依存しない高画質な画像が表示される画像表示シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
(画像表示シートの構成)
図1は本発明の第1の実施形態に係る画像表示シート10の断面構成を示す模式図である。
【0032】
画像表示シート10は、基材20・パターン形成層30・反射層40・粘着層50・フィルム層60を備えている。本実施形態では、図2に示すように、観察者Hは、基材20側から画像表示シート10を観察する。なお、図2(B)は図2(A)における画像表示シート10のI−I’断面の構成を示す図である。
【0033】
基材20は、画像表示シート10の土台となるものであり、必要に応じて、反射防止処理(AR処理)、低反射防止処理(LR処理)、ハードコート処理、帯電防止処理、防汚処理などが施される。基材20は、光透過性の高いものが好ましく、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)やポリカーボネート(PC)により形成される。また、これら以外のプラスチック素材などにより形成されてもよい。
【0034】
パターン形成層30は、透明材料により基材20上に形成され、ホログラム等の微細構造を形成するものである。パターン形成層30を形成する透明材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料、あるいは珪酸塩を成分に含む無機系材料を使用することができる。ただし、いずれの材料を用いた場合であっても、光透過性が高いことが必須要件とされる。これらの透明材料は、基材20との相性や構造の形状・サイズに応じて使い分けされる。
【0035】
パターン形成層30には、基材20上に、画像を構成する複数の網点を有する表示パターン領域30Aと、該各網点以外の部分に凹凸構造を有する背景パターン領域30Bとが形成される。ここで、「網点」とは、一般的な印刷物に用いられる網点とは異なり、凹形状もしくは凸形状の構造物として形成されるものである。この網点により、画像が表現される。なお、図2にはパターン形成層30の凸部31により網点が形成される例を示している。
【0036】
網点による表示パターンの形成方法については、一般的な印刷技術が用いられる。例えば、円形・楕円形・四角形などの形状の網点構造が、面積階調法・濃度階調法・ディザ法などにより生成される。そして、これらの網点構造により、濃淡のある画像が生成される。例えば、図3に示すように、網点の大きさに応じて濃淡が変化することになる。図3(B)は図3(A)の拡大図であり、図4は図3(B)のII−II’断面の構成を示す模式図である。また、表示パターン領域30Aの網点間の隙間は、背景パターン領域30Bの構造で埋められる。
【0037】
表示パターン領域30Aでは、光の反射・吸収などの光学的性質を利用して画像が表示される。そのため、一般的な印刷方法により網点を生成するのとは異なる条件が必要となる。具体的には、表示パターン領域30Aにおいて、各網点の径の最大値と最小値との差が73μm以上であり、かつ200μm以下となるように、網点構造が形成される。
【0038】
まず、上限である200μmについて説明する。一般に、人間の目は、200μm以上の差を見分けることができる。それゆえ、同階調における網点の大きさの最大値と最小値との差が200μmを超えると、表示パターン領域30Aの画像を観察した際に観察者がザラツキを感じることになる。また、網点の抜けなどが発生し、表示パターンの画質が低下する。そこで、各網点の大きさの最大値と最小値との差が200μm以下となるようにする。また、対象とする網点の直径の大きさは5μm〜250μmの範囲内にあるものが望ましい。
【0039】
次に、下限である73μmについて説明する。本発明者らの検討によれば、視力1.0の人が250mmの観察距離から識別できる最小値は、およそ73μmの大きさである。つまり、最大形状と最小形状との差が73μmよりも小さくになると、人間の目は同じものとして認識する傾向にある。このように、網点のサイズやピッチがマイクロオーダー程度にまで小さくなると、網点構造自体で干渉やモアレを起こし易くなる。それゆえ、高画質を実現するためには、ある程度のばらつきを網点に持たせておくことが望ましい。そこで、網点の最大値と最小値との差の下限を73μmとする。
【0040】
背景パターン領域30Bは、網点により生成された表示パターン領域30Aの周辺部の領域であり、散乱構造・マット構造・ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成される。背景パターン領域30Bがホログラム構造等により形成されることにより、様々な視覚効果が生じることになる。
【0041】
反射層40は、パターン形成層30の上に形成されるものである。反射層40は、高反射率で光吸収の少ない金属により形成されることが好ましい。ここでは、反射層40として、反射率が高くて扱い易いアルミニウムが使用される。ただし、要求される外観を実現できるものであれば、金属にこだわる必要はなく、プラスチック材料や顔料などで反射層40を形成してもよい。なお、プラスチック材料が用いられる場合には、パターン形成層30の透明材料との屈折率差が大きいものが用いられる。また、反射層40は、パターン形成層30の全面に形成されても良いし、一部にのみ形成されてもよい。また、反射層40を多層膜として、膜材料やその膜厚に応じて外観の色などを調整することも可能である。さらに、ディメタライズド処理によって、反射層40の一部を非金属化あるいは透過部などを含む構成とすることもできる。これにより、画像表示シート10のデザインをさらに多様化でき、デザインの細かい要求にも対応できる。
【0042】
粘着層50は、画像表示シート10を他の製品に貼り付けるためのものである。例えば、この粘着層50を介して、画像表示シート10が名紙等に貼り付けられる。なお、粘着層50の粘着材は、一般的な粘着材を用いることができ、特に制限されるものではない。
【0043】
フィルム層60は状況に応じて使用されるものであり、常に具備されている必要はない。また、フィルム層60は、粘着層50のセパレートフィルムとしても使用できる。特異な視覚効果を生じさせる場合にはカラーフィルムなどを使用することもできる。
【0044】
なお、各部材の大きさは、基材20の厚さが50〜75μm、パターン形成層30の厚さが10〜100μm、粘着層50が20μm以上、フィルム層60の厚さが12〜75μm程度であるのが好ましい。
【0045】
(画像表示シートの製造方法)
画像表示シート10におけるパターン形成層30は、プレス法・キャスティング法・射出成形法などにより製造できる。その他、画像表示シート10は、平面スタンパやロールスタンパの凹凸形成面に紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)や電子線硬化型樹脂等の電離放射線樹脂を塗布または注入し、その上に基材20を配置し、硬化処理後スタンパから離型する、という方法によっても製造することができる。
【0046】
ここで、パターン形成層30は、表示パターン領域30Aを構成する網点構造と背景パターン領域30Bの凹凸構造とが組み合わさったものである。それゆえ、パターン形成層30を製造する際には、表示パターン領域30Aと背景パターン領域30Bとの構造が同一面上に形成された金型を用いることが可能である。この金型は、機械切削により作製される。その他、パターン形成層30を製造するために、レジストなどの感光性材料を用いてレーザ露光、現像によりマスクを作製しエッチングするなどして作成された版を用いることも可能である。
【0047】
(画像表示シートの作用)
以上説明したように、本実施形態に係る画像表示シート10は、基材20上に、画像を構成する複数の網点を有する表示パターン領域30Aと、該各網点以外の部分に凹凸構造を有する背景パターン領域30Bとが形成されたパターン形成層30を備えており、各網点の径の最大値と最小値との差が73μm以上、200μm以下であるので、ホログラム等の微細構造により背景パターン領域30Bに表示される画像とともに、観察角度に依存しない高画質な画像が表示パターン領域30Aに表示される。補足すると、画像表示シート10は、各網点の径の最大値と最小値との差が73μm以上、200μm以下であるので、人間の目に違和感を生じさせない高画質な画像が表示される。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る画像表示シート10によれば、網点形状のばらつきを制限し、網点の配置や形状をランダムにすることにより、より滑らかな濃淡を実現できる。一方、網点構造ピッチ及び形状サイズがミクロンオーダーまで小さくなると、高解像度の表示パターンを生成した場合に、網点の形状と配置の状態によっては光の干渉やモアレなど光学的性質により色味変化やムラが発生することになる。この点、本実施形態に係る画像表示シート10によれば、このような色味変化やムラを防止することもできる。
【0049】
また、本実施形態に係る画像表示シート10において、背景パターン領域30Bが虹色の外観を呈すようなホログラムであった場合、色味変化が生じると、シャープさに欠け、作製者の意図に沿わないものになる恐れがある。この点、本実施形態に係る画像表示シート10であれば、表示パターン領域30Aに、画質のクリアさを保持でき、認識もしやすい画像が表示される。このように、画像表示シート10は、広い範囲の表示パターンサイズや解像度において、高画質が維持されるものである。
【0050】
また、本実施形態に係る画像表示シート10は、一般的な印刷ではなく凹凸構造により網点が構成されているので、光学的性質を利用した視覚効果がある他の微細構造の成型に用いるのと同じ金型を使用し、同じ製造方法で成形することが可能である。すなわち、製造に際し、印刷工程を挟むことがないので、コスト面でのメリットがある。また、印刷ではなく凹凸構造により網点を構成することにより、画像にかすれやにじみが発生しないというメリットもある。ただし、画像表示シート10の上から印刷でパターンを加えてもよいことは言うまでもない。たとえば、意匠性を高めるために、最も観察者に近い基材10の表面上にインクジェット方式による画像を印刷してもよい。
【0051】
また、画像表示シート10は、パターン形成層30上に形成された反射層40をさらに備えているので、膜材料や膜厚に応じて外観の色などを調整できる。
【0052】
また、画像表示シート10は、背景パターン領域30Bの凹凸構造が、散乱構造・マット構造・ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成されるので、様々な視覚効果を生じさせることができる。
【0053】
要するに、本実施形態に係る画像表示シート10では、網点構造の反射を利用して、観察角度によらず認識し易い画像を表示する。たとえばホログラムだけでは角度によってはパターンが見えづらい場合もあるが、網点構造を組み合わせることにより、観察角度を変えたり入射光の角度が変わったりしても、一様な反射状態となるので画像の認識が容易である。
【0054】
なお、本実施形態に係る画像表示シート10では、各網点を、一定の配列ピッチで周期的に配置し、一の網点と、該網点の周囲の全ての網点との隙間長が73μm以下となるようにしてもよい。これにより、見た目に違和感がない画像が表示される画像表示シートを提供できる。
【0055】
補足すると、図6に示すように、配列ピッチA μmに対し、網点面積率100%のベタの網点の直径(以下、基準サイズという)は、√2×A μmとなる。それゆえ、ベタ以外の網点の直径は、(√2×A)×X μm(0≦X≦1.0)となる。ここで、図7に示すように、隣り合う4つの網点の形成領域について考えると、対角線上の網点PAと網点PCとの隙間長は、√2×A−(√2×A)×X=√2×A×(1−X) μmとなる。これが想定される隙間長の最小値であるので、この隙間長が73μm以下であれば、見た目に違和感がない画像が表示されることになる。
【0056】
それゆえ、√2×A(1−X)≦73の条件を成立させるには、X≧1−73/(√2×A)とする必要がある。
【0057】
ここで、基準サイズからのバラツキの最大許容範囲α(単位は%)は、α=1−(Xの最大値)で表わされる。それゆえ、網点サイズの分布は、基準サイズから{(1−X)×100}%以下となる。但し、X=1−{73/(√2×A)}、かつA≧100μmである。
【0058】
なお、隙間長を73μmとしているので、√2×Aは、146μm以上(=73×2)が想定される。つまり、A≧146/√2 ≒ 103[μm]である。
【0059】
具体例を挙げると、配列ピッチAが100μmとする場合、X≧48.38%となるので、バラツキの許容範囲は51.62%以下となる。また、配列ピッチAが200μmとすると、X≧74.19%となるので、バラツキの許容範囲は25.8%以下となる。
【0060】
(変形例)
なお、本実施形態における画像表示シート10の表示パターン領域30Aの網点は、図2に示すようにパターン形成層30の凸部31により構成されるものだけではなく、図8に示すようにパターン形成層30の凹部32により構成されるものであってもよい。
【0061】
また、画像表示シート10は、基材20側から観察されるものに限らず、図9及び図10に示すように、フィルム層60側から観察されるものであってもよい。なお、図9(B)は図9(A)のIII−III’断面の構成を示す模式図であり、図10(B)は図10(A)のIV−IV’断面の構成を示す模式図である。また、フィルム層60側から観察される構成の場合、フィルム層60には、必要に応じて、反射防止処理(AR処理)、低反射防止処理(LR処理)、ハードコート処理、帯電防止処理、防汚処理などが施される。また、粘着層50には、透明もしくは光透過率の高い紫外線硬化材料などが粘着材として用いられる。
【0062】
また、本実施形態に係る画像表示シート10は、粘着層50を介して、他の製品に貼り付けることが可能である。例えば、図11に示すように、画像表示シート10が名紙5などに貼り付けられる。また、粘着層50を用いずに、容器等の紙に刷り込んでもよい。これらの製品は、セキュリティ、販売促進、ブランドプロテクションなどの用途に使用される。
【0063】
また、表示パターン領域30Aの網点は、ホログラム構造・散乱構造・マット構造であってもよい。すなわち、網点構造の表面は滑らかである必要はない。これにより、多様な視覚効果を生じさせることができる。ホログラム構造とは、表面で反射光を生じさせたり、透過時に回折光を生じさせたりする構造全般を指している。ホログラム構造の例としては、ブレーズド格子構造などがある。散乱構造・マット構造は、表面で反射光を生じさせたり、透過時に散乱光を生じさせたりする構造全般を指している。例えば網点が散乱構造である場合、表示パターン領域30Aに入射した光は正反射成分と乱反射成分とに分かれ、より広い範囲に光が分散する。そのため、画像が見やすくなる効果や、ある程度ランダムに光が反射することにより表示パターン全体を均一な状態にできる効果などがある
また、基材20やパターン形成層30に顔料・インクを混入させてもよい。これにより、画像表示シート10のデザインを多様化することができる。
【0064】
なお、網点の形状のばらつきは、最大値と最小値との差が15%未満では同じものとして認識されるので、本実施形態に係るパターン形成層30の作成に際し、網点の形状のばらつきが15%未満のレベルまでは制御しなくともよいという利点がある。
【0065】
また、本実施形態に係る画像表示シート10は、表示パターン領域30Aに網点を用いた構造において、表示パターンの濃淡を、網点のサイズあるいはピッチを変調させることで表しており、前記網点は断面において凹形状または凸形状をもち、網点の凹凸形状は背景パターン領域30Bと同一面に形成され、網点の形状は前記網点を真上から観察したとき、以下に示す条件(A1)〜(A4)のいずれかを満たすものを含んでいる。これらの条件のものでも、網点の直径の大きさが250μmであれば、網点のバラツキが73μm〜200μの範囲内となるので、一般的に違和感を生じさせない画像が表示される。
【0066】
(A1)基準となる網点輪郭形状の真円度からのずれが15%以上40%以下であるランダムな輪郭形状であるもの。ここで「真円度」とは、図12に示すように、測定対象となる網点の輪郭形状において、輪郭形状の内接円c1の径と同心円の外接円c2の径との差dを、同階調の基準となる網点の径で割った値である。
【0067】
(A2)基準となる網点輪郭形状のフェレ径からのずれが15%以上40%以下であるランダムな輪郭形状であるもの。また、「フェレ径」とは、図13に示すように、水平フェレ径と垂直フェレ径とがあり、網点の輪郭形状に外接する四角形の辺の長さを示している。X方向の辺を水平フェレ径といい、Y方向の辺を垂直フェレ径という。基準網点の輪郭形状および平均網点輪郭形状のフェレ径において水平フェレ径、垂直フェレ径の両方が、基準の各フェレ径からのずれが40%以下のランダムな輪郭形状をもつことを条件としている。
【0068】
(A3)表示パターン領域30Aに構成される網点の網点面積のずれが、同階調における基準となる網点面積から15%以上40%以下であるランダムな形状であるもの。
【0069】
(A4)表示パターン領域30Aに構成される網点の網点面積のずれが、同階調における平均網点面積から15%以上40%以下であるランダムな形状であるもの。
【0070】
なお、網点サイズが変化する場合、比較対象である基準となる網点輪郭形状もしくは平均網点輪郭形状は、階調ごとにその形状を定めることし、同階調内において比較を行うものとする。例えば、異なる階調の形状で大きさが異なる、階調1と階調2の2つ形状が相似関係にある場合、その2つの形状は同一形状といえる。全階調で基準(平均)輪郭形状は同形状としてもよいし、階調ごとに異なる形状としてもよい。また、表示パターンが複数ある場合、各表示パターンにおいて、独立した基準もしくは平均を定めてもよいこととしている。
【0071】
また、基準となる網点形状は、作製者が任意に決めた形状でよく、特別な制限は設けていない。また、表示パターンを形成する網点の平均輪郭形状は、基本的に1つの表示パターンの生成に用いられた網点の輪郭形状の真円度もしくはフェレ径を平均したものを指し、これを基準として形状のばらつきを与えるものである。また、サイズ変化によっても表示パターンの濃淡をつける場合があるため、サイズの異なる網点も同表示パターン中に存在することになる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る画像表示シート10は、上記条件(A1)〜(A4)に加え、以下に示す条件(B1)・(B2)のいずれかを満たすものであってもよい。
【0073】
(B1)前記網点を1つ以上含むマトリクスのピッチのずれが、基準となるマトリクスのピッチから15%以上40%以下であるランダムピッチであるもの。
【0074】
(B2)前記網点を1つ以上含むマトリクスのピッチのずれが、マトリクスの平均ピッチから15%以上40%以下であるランダムピッチであるもの。
【0075】
なお、マトリクスは、網点を1つ以上含む構成で、含まれる網点は上記(A1)〜(A4)のいずれかの条件を満たしている。マトリクスのピッチを、ばらつきを設けランダムピッチにすることにより、より滑らかな階調性を実現することができる。
【0076】
<実施例>
平均網点輪郭形状からのずれ幅が、水平フェレ径のばらつき2.81%、垂直フェレ径のばらつき9.78%の、固定ピッチ100μmの網点構造を用いて、図2の構成の画像表示シート10を作成した。基材20として50μm厚のPETフィルム、パターン形成層30の透明材料として紫外線硬化型のアクリル系樹脂を用い、平版金型上に樹脂を注入し、その上にPETフィルムを配し、ラミネート後に硬化処理を施して金型から剥離した。この微細構造面に反射層40としてアルミニウム薄膜を真空蒸着法により成形し、ノンキャリアの粘着シートを介してガラス板に貼合しサンプルを作製した。網点の凸面には特別な構造は設けてはいない。これにより、また、ザラツキ感が少ない画像を表示する画像表示シート10を作製することができた。なお、出来上がった画像表示シート10は、光源からの反射方向が異なるので観察方向によりネガポジのような外観を呈した。
【0077】
<比較例>
平均網点輪郭形状からのずれ幅が、水平フェレ径、垂直フェレ径のばらつきがともに50%の、固定ピッチ100μmの網点構造を用いて図2の構成の画像表示シート10を作成した。基材20として50μm厚のPETフィルム、パターン形成層30の透明材料として紫外線硬化型のアクリル系樹脂を用い、平版金型上に樹脂を注入し、その上にPETフィルムを配し、ラミネート後に硬化処理を施して金型から樹脂を剥離した。この微細構造面に反射層40としてアルミニウム薄膜を真空蒸着法により成形し、ノンキャリアの粘着シートを介してガラス板に貼合しサンプルを作製した。網点の凸面には特別に構造は設けていない。出来上がった表示パターンは観察方向により光源からの反射方向が異なるのでネガポジのような外観を呈した。ばらつき度が50%と高いため、表示パターンエッジ部の滑らかさに違和感があり、全体的にざらついたサンプルとなった。なお、低ヘイズの入った拡散シートを重ねることでザラツキ感を抑えることは可能であるが、ぼやけた印象になり、シャープさに欠けた画像になる。
【0078】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像表示シート10の断面構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係る画像表示シート10を基材20側から観察した様子を示す模式図である。
【図3】同実施形態に係る画像表示シート10の網点の大きさと画像の濃淡の変化とを説明するための図である。
【図4】同実施形態に係る画像表示シート10の網点の大きさと画像の濃淡の変化とを説明するための図である。
【図5】同実施形態に係る配列ピッチと網点の大きさとの関係を説明するための図である。
【図6】同実施形態に係る網点間の隙間長を説明するための図である。
【図7】同実施形態に係る画像表示シートの変形例を示す図である。
【図8】同実施形態に係る画像表示シートの変形例を示す図である。
【図9】同実施形態に係る画像表示シートの変形例を示す図である。
【図10】同実施形態に係る画像表示シートが貼り付けられた名紙の模式図である。
【図11】真円度を説明するための図である。
【図12】フェレ径を説明するための図である。
【符号の説明】
【0080】
10・・・画像表示シート、20・・・基材、30・・・パターン形成層、40・・・反射層、50・・・粘着層、60・・・フィルム層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に、画像を構成する複数の網点を有する表示パターン領域と、該各網点以外の部分に凹凸構造を有する背景パターン領域とが形成されたパターン形成層と、
を備えた画像表示シートであって、
前記各網点の径の最大値と最小値との差が200μm以下である
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示シートにおいて、
前記各網点の径の最大値と最小値との差が73μm以上である
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像表示シートにおいて、
前記表示パターン領域の網点は、前記パターン形成層の凸部により構成される
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像表示シートにおいて、
前記表示パターン領域の網点は、前記パターン形成層の凹部により構成される
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像表示シートにおいて、
前記網点が周期的に配置されており、周期的に配置されている前記網点の配列ピッチをAとし、前記網点の基準サイズを√2×Aとし、実際の網点サイズを√2×A×X(0≦X≦1.0)としたとき、
前記網点サイズの分布が、基準サイズから{(1−X)×100}%以下である(X=1−{73/(√2×A)}、かつA≧100μmである)
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像表示シートにおいて、
前記各網点は、一定の配列ピッチで周期的に配置されており、一の網点と、該網点の周囲の全ての網点との隙間長が73μm以下である
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像表示シートにおいて、
前記パターン形成層上に形成された反射層をさらに備えたことを特徴とする画像表示シート。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像表示シートにおいて、
前記表示パターン領域の各網点は、散乱構造、マット構造、ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成される
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の画像表示シートにおいて、
前記背景パターン領域の凹凸構造は、散乱構造、マット構造、ホログラム構造のいずれか1つ以上の構造で形成される
ことを特徴とする画像表示シート。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9に記載の画像表示シートが用いられる画像表示製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−58795(P2009−58795A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226384(P2007−226384)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】