説明

画像表示媒体の製造方法

【課題】 画像表示媒体に適切な数の着色粒子を正確かつ比較的容易に充填することができる画像表示媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】 画像表示媒体100表面上でワイパーブレード201を表面に平行に移動させて、画像表示媒体100の全てのセル102内に粒子103A、103Bを擦り入れる。次に、画像表示媒体100表面上でドクターブレード202を表面に平行に移動させて、画像表示媒体100の区画部材101の高さよりも高い位置に堆積している粒子103A、103Bを擦り切って除去する。次に、粒子除去手段210を用いて、吸口部211の開口面211aから負圧により粒子103A、103Bを吸引して除去し、セル102内の粒子103A、103Bの数を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に粒子を用いる画像表示媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明表示基板と背面基板の間に着色粒子を封入し、画像に応じた電圧を基板間に印加して着色粒子を移動させることにより画像を表示する画像表示媒体が提案されている。このような画像表示媒体は、区画部材により区画された複数のセルを基板間に有し、着色粒子がこれら各セル内に適切な量で均一に充填されていることが重要である。
【0003】
着色粒子を各セルに充填する方法はいくつか報告されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、所定パターンの凹部が形成された定量基板上に着色粒子を充填し、この定量基板を上下反転させて画像表示媒体に重ね、画像表示媒体のセル内に着色粒子を転写するという従来からある技術を改良し、より正確に粒子を転写できるようにしたものである。
【0005】
一方、特許文献2に記載の技術は、画像表示媒体の透明表示基板と背面基板の両方に区画部材を設け、片側の基板のセルに粒子を充填した後に両基板を貼り合わせることで適切な数の着色粒子をセル内に充填する方法で、着色粒子を充填する方の基板の区画部材の高さを変化させることにより、着色粒子の数を調整することができる。
【特許文献1】特開2005−10647号公報
【特許文献2】特開2004−361696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の従来の粒子充填方法によると、定量基板の全ての凹部から着色粒子を完全に転写することは容易ではなく、また、画像表示媒体の一部のセルに着色粒子が適切に転写されなかった場合は、その一部分だけ着色粒子を充填し直すことは難しく、全てのセルに対して充填し直さなければならないために歩留まりが低下するという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の従来の粒子充填方法によると、透明表示基板と背面基板の両方に区画部材を設けるためにコストが高くなり、また、両基板の区画部材同士の位置合わせに高い精度が要求されるため、製造難度が上がってしまうという問題点があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、画像表示媒体に適切な数の着色粒子を正確かつ比較的容易に充填することができる画像表示媒体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、区画部材を有する第1の基板を準備する第1の工程と、前記第1の基板上において区画部材によって区画されて形成された複数のセルに複数の粒子を充填する第2の工程と、前記複数のセルからそれぞれ所定数の粒子を除去する第3の工程と、第2の基板を前記第1の基板に対向するように前記区画部材に接合する第4の工程と、を含む画像表示媒体の製造方法を提供する。
【0010】
前記本発明の他の一態様によれば、一度セルに充填した粒子を所定量除去することでその数を調整し、画像表示媒体に適切な数の粒子を正確かつ比較的容易に充填することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像表示媒体に適切な数の着色粒子を正確かつ比較的容易に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(全体の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像表示媒体の断面図である。この画像表示媒体100は、第2の基板としての透光性を有する表面基板110と、第1の基板としての背面基板120と、表面基板110と背面基板120とを対向させて保持するとともに、基板110、120間の空間を区画して複数のセル102を形成する熱硬化性樹脂等の絶縁性材料からなる区画部材101と、セル102に封入された色および帯電特性が異なる白色粒子103Aおよび黒色粒子103Bからなる2つの粒子群とを有して構成されている。
【0013】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る画像表示媒体の区画部材の形状を示した上面図である。区画部材101に区画されることにより、レンガ状に配列したセル102が画像表示媒体100に形成されている。ここで、区画部材101の厚さは0.01〜0.20mmで高さが0.03〜0.20mmであることが好ましい。また、セル102の面積は、0.5mm×0.5mm〜5.0mm×50.0mmであることが好ましい。
【0014】
区画部材101の厚みが薄いほど区画部材101が視認されにくくなり、画像表示媒体100の表示画質が向上するが、区画部材101が薄くなると区画部材101の強度が弱くなるため、所定の厚みが必要である。区画部材101の高さが低いと、列電極112と行電極122の距離が近くなり、小さな電圧で大きな電界を得ることが出来るため粒子103A、103Bを駆動させるために必要な電圧が小さくなり、電源および周辺回路のコストが低下する。しかし、セル102の容積が小さくなるため、粒子103A、103Bの移動可能空間が小さくなり粒子103A、103Bの移動が良好に行われなくなるので所定の高さが必要である。セル102の面積が大きい程、区画部材101が減るために画像表示媒体100の表示画質が向上するが、セル102が大きくなるとセル102内の粒子103A、103Bをセル102内で均一に配置することが困難になるために、セル102の大きさは大きすぎてはならない。
【0015】
なお、区画部材101に区画されるセル102の形状、大きさ、数、および配列はこれに限られない。例えば、セル102が正方形の正方格子構造の区画部材101や、セル102が多角形のハニカム構造の区画部材101であってもよい。
【0016】
(各部の構成)
表面基板110は、透明ガラス基板等からなる表面基板部材111と、表面基板部材111上に形成されたインジウム錫酸化物(ITO)等からなる透明な複数の帯状の列電極112と、列電極112を保護するとともに粒子103A、103Bの帯電特性を安定化させるポリカーボネート等からなる誘電体膜113とを積層して構成されている。
【0017】
表面基板部材111には、上記透明ガラス基板の他に、透光性を有する透明プラスチック基板、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0018】
列電極112には、上記ITOの他に、透光性を有する、インジリウム、錫、カドミニウム、アンチモン等の酸化物およびこれらの複合酸化物、金、銀、銅、炭素、ニッケル等の単層膜、混合膜、または複合膜を蒸着法またはスパッタリング法で100〜2000オングストロームの厚さとしたもの、またはポリピロール、ポリチオフェン等の有機導電性材料等を用いることができる。
【0019】
誘電体膜113には、セル102に封入する粒子103A、103Bの帯電特性に応じて、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、エポキシ、ポリイソシアネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、PMMA、共重合ナイロン、紫外硬化アクリル樹脂、非晶質テフロン(登録商標)等を用いることができる。また、誘電体膜113を構成する絶縁性材料中に電荷輸送物質を含有させたものも用いることができる。電荷輸送物質を含有させることにより、粒子103A、103Bへの電荷注入による粒子帯電性の向上や、粒子103A、103Bの帯電量が極度に大きくなった場合に粒子103A、103Bの電荷を漏洩させ、粒子103A、103Bの帯電量を安定させるなどの効果を得ることができる。
【0020】
背面基板120は、エポキシ樹脂等からなる背面基板部材121と、背面基板部材121上に形成された銅等からなる複数の帯状の行電極122と、行電極122を保護するとともに粒子103A、103Bの帯電特性を安定化させるポリカーボネート等からなる誘電体膜123とを積層して構成されている。なお、背面基板部材121として、表面基板110の表面基板部材111と同様の基板を用いてもよい。誘電体膜123には、表面基板110の誘電体膜113と同様に、セル102に封入する粒子103A、103Bの帯電特性に応じた材料を用いることができる。
【0021】
区画部材101には、上記熱硬化性樹脂の他に、熱可塑性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化性樹脂、ゴム等の絶縁性材料を用いることができる。
【0022】
白色粒子103Aと黒色粒子103Bは、例えば、相互の摩擦による摩擦帯電により、互いに異なる極性に帯電する。例えば、白色粒子103Aは負に帯電しており、黒色粒子103Bは正に帯電しているとして、誘電体膜がポリカーボネート樹脂である場合、白色粒子103Aの平均帯電量は−16fC、黒色粒子103Bの平均帯電量は+16fCである。
【0023】
(画像表示媒体の製造方法)
次に、図3のフローチャートを用いて、この第1の実施の形態に係る画像表示媒体の製造方法の一例について説明する。
【0024】
まず初めに、画像表示媒体100の各部を作製する(図3ステップS1)。表面基板110は、例えば、1.1mm厚さの透明ガラスからなる表面基板部材111上にITO膜をスパッタリングし、これを所定のパターンにエッチングして複数の列電極112を形成し、これらの列電極112上にトルエン97重量部に対してポリカーボネート樹脂3重量部を溶解させた溶液をディップコートし、乾燥して2μm厚さのポリカーボネート膜からなる誘電体膜113を形成することにより作製する。
【0025】
背面基板120は、例えば、0.6mm厚さのエポキシ基板からなる背面基板部材121上に銅膜を貼り合せ、これを所定のパターンにエッチングして複数の行電極122を形成し、これらの行電極122上にトルエン97重量部に対してポリカーボネート樹脂3重量部を溶解させた溶液をディップコートし、乾燥して2μm厚さのポリカーボネート膜からなる誘電体膜123を形成することにより作製する。
【0026】
次に、背面基板120上に区画部材101を形成する(図3ステップS2)。区画部材101は、例えば、背面基板120の誘電体膜123上に熱硬化性樹脂からなるインクをパターン印刷し、オーブン中で110℃に加熱して焼成を行う処理を、区画部材101が所望の高さになるまで複数回繰り返すことにより背面基板120上に作製し、背面基板120上に粒子103A、103Bが収容される凹部、すなわちセル102を形成する。
【0027】
次に、画像表示媒体100に粒子103A、103Bを充填する(図3ステップS3)。この工程については、ステップS3をさらに細かく分けたステップ(ステップS3−1〜S3−3)を用いて詳細に説明する。図4(a)〜(c)は、粒子充填の各工程における画像表示媒体の断面図である。
【0028】
まず、図4(a)に示すように、画像表示媒体100表面上でワイパーブレード201を表面に平行に移動させて、画像表示媒体100の全てのセル102内に粒子103A、103Bを擦り入れる(図3ステップS3−1)。これにより粒子103A、103Bがセル102の体積よりも多めに充填され、区画部材101の高さよりも若干高い位置まで粒子103A、103Bが堆積する。このときワイパーブレード201を移動させる方向は、長方形のセルの短手方向が好ましい。セルの形状が正方形等のように長手短手が無い場合はどの方向でもよい。
【0029】
次に、図4(b)に示すように、画像表示媒体100表面上でドクターブレード202を表面に平行に移動させて、画像表示媒体100の区画部材101の高さよりも高い位置に堆積している粒子103A、103Bを擦り切って除去する(図3ステップS3−2)。これにより粒子103A、103Bがセル102内に過不足無く収まる。このときドクターブレード202を移動させる方向は、長方形のセルの長手方向または区画部材101のパターンのラインと平行にならない方向(例えば長手方向から45°傾いた方向)が好ましい。
【0030】
ワイパーブレード201およびドクターブレード202は、ゴム、金属、合金、プラスチック、セラミック、紙からなるものを用いることができる。
【0031】
次に、図4(c)に示すように、粒子除去手段210を用いて、吸口部211の開口面211aから負圧により粒子103A、103Bを吸引して除去する(図3ステップS3−3)。粒子除去手段210は画像表示媒体100表面上を表面に平行に移動し、除去したい領域に在る粒子103A、103Bの上部で停止した後、画像表示媒体100に垂直に下降しながら粒子103A、103Bを吸引し、吸口部211の開口面211aがセル102の底と所定間隔を保つ位置まで下降したのちに停止し、開口面211a下および周辺の所定の範囲の粒子103A、103Bを除去した後に、画像表示媒体100に垂直に上昇し、再び画像表示媒体100表面上を除去したい領域に在る粒子103A、103Bの上部まで表面に平行に移動する。なお、除去したい粒子103A、103Bが同セル102内に残っている場合は、粒子除去手段210を上昇させずに、平行移動させながら粒子103A、103Bを除去してもよい。以上の工程を繰り返すことにより全てのセル102内の粒子103A、103Bの数を調整する。
【0032】
なお、セル102の底と所定間隔を保つ位置とは、セル102の内部のみならず、セル102の外部(区画部材101の高さよりも高い位置)も含む。
【0033】
吸口部211がセル102の内部まで下降すると、隣接するセル102の粒子103A、103Bを吸い取る事が無く安定した結果を得ることができる。なお、このときに吸引力および吸引時間を制御することができる。
【0034】
一方、吸口部211がセル102の内部まで下降しない場合は、吸口部211の移動量が減るために作業時間が短縮される。この場合には、吸口部径、吸引力、および吸引時間を制御することで、隣接するセル102の粒子103A、103Bを吸い取らないようにする。また、吸引時間を制御することで、垂直方向の移動をせず、表面に平行に移動するだけで工程を終えることが出来、作業時間を短縮することができる。
【0035】
図5は、セル102内への粒子103A、103Bの充填が完了した画像表示媒体100の上面図である。なお、図3ステップS3−3を経て各セル102内に残った粒子103A、103Bの数は、図3ステップS3−2を経て各セル102に充填された粒子103A、103Bの20〜25%であることが好ましい。また、図3ステップS3−3において、図5に示すように、残留させる粒子103A、103Bの集合が区画部材101に3辺で接する各セルの端部に残るように粒子103A、103Bを除去することが好ましい。除去の際に粒子103A、103Bの集合が崩れることを極力抑えるためである。
【0036】
白色粒子103Aは、例えば、体積平均粒径20μmの酸化チタン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状微粒子100重量部にイソプロピルトリメトキシシラン処理したチタニアの微粉末0.40重量部を外添して得る。シラン処理されたチタニアの微粉末は、粒子の帯電性を適性レベルに抑制し、粒子の流動性を高いレベルに保つ作用がある。シラン処理されたチタニアの微粉末の添加量は、白色粒子103Aの径と微粉末の径とにより適宜調整される。添加量が多過ぎると白色粒子103Aの表面から遊離する微粉末が発生し、これらが黒色粒子103Bの表面に付着すると、黒色粒子103Bの帯電極性が白色粒子103Aの帯電極性と同様となり、黒色粒子103Bが白色粒子103Aと同方向へ移動するので好ましくない。粒子100重量部に対するチタニアの量は、好ましくは0.05〜1.00重量部、より好ましくは0.10〜0.50重量部である。
【0037】
黒色粒子103Bは、例えば、体積平均粒径20μmのカーボン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状微粒子を用いる。
【0038】
粒子103A、103Bの粒径は、20μm以下であることが好ましい。粒子103A、103Bの凝集により、図3ステップS3−3における粒子103A、103B除去の際に粒子103A、103Bの集合が崩れ難くなるためである。
【0039】
図6は、この第1の実施の形態に係る粒子除去手段の概略構成図である。粒子除去手段210は、粒子103A、103Bの吸い込み口としての吸口部211がホース212を通して、負圧を生じさせて粒子103A、103Bを吸い込むバキュームポンプ213と接続されている。更に、ホース212の中途に空気を通して粒子103A、103Bを通さない密度を有するフィルター214が設置されており、フィルター214により捕集された粒子103A、103Bを回収する粒子回収部215と接続されている。粒子回収部215に回収された粒子103A、103Bは再利用することができる。
【0040】
次に、区画部材101上に表面基板110を設置する(図3ステップS4)。区画部材101の上面、あるいは区画部材101の上面に接する表面基板110の面に、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる接着剤を塗布して接着する。接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のUV硬化型樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、アクリロニトリル成分重合体、ビニルアルコール成分重合体等の耐透気性樹脂などを用いることができる。このようにして、画像表示媒体100が製造される。
【0041】
(画像表示媒体の動作例)
この画像表示媒体100は、単純マトリックス駆動によって画像表示されるものであり、表面基板110の列電極112に正の電位がかかるように列電極112と行電極122の間に直流電圧を印加(例えば、列電極112の電位が200V、行電極122の電位が0V)すると、負に帯電している粒子(例えば白色粒子103A)は、セル102内の表面基板110側に移動し、正に帯電している粒子(例えば黒色粒子103B)は、セル102内の背面基板120側に移動する。
【0042】
次に、列電極112に負の電位がかかるように列電極112と行電極122の間に直流電圧を印加(例えば、列電極112の電位が−200V、行電極122の電位が0V)すると、負に帯電している粒子(例えば白色粒子103A)は、セル102内の背面基板120側に移動し、正に帯電している粒子(例えば黒色粒子103B)は、セル102内の表面基板110側に移動する。
【0043】
列電極112と行電極122の間への電圧の印加を停止した後も、誘電体膜113、123との間に静電付着力が維持されるため、白色粒子103Aは背面基板120側に保持され、黒色粒子103Bは表面基板110側に保持される。
【0044】
(第1の実施の形態の効果)
この第1の実施の形態によれば、一度セル102に充填した粒子103A、103Bを所定量除去することでその数を調整し、画像表示媒体に適切な数の粒子103A、103Bを正確かつ比較的容易に充填することが可能となる。
【0045】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態に係る画像表示媒体の製造方法について説明する。この第2の実施の形態における第1の実施の形態との相違点は、画像表示媒体の製造工程内の粒子を除去する工程(図3ステップS3−3)にある。その他の工程、および画像表示媒体の構成については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0046】
図7は、この第2の実施の形態に係る粒子を除去する工程を示す画像表示媒体の上面図である。セル102の配列周期に合わせて粒子除去手段210を複数設置し、これらを平行移動させながら同時に複数列のセルの粒子103A、103Bを除去していく。
【0047】
粒子除去手段210の数や配置はこれに限られない。また、全てのセルの粒子103A、103Bを除去する領域全てに対応する粒子除去手段210を設置し、粒子除去手段210を平行方向には移動させずに垂直方向の動作だけでセルの粒子103A、103Bを除去してもよい。
【0048】
(第2の実施の形態の効果)
この第2の実施の形態によれば、複数のセル102に充填した粒子103A、103Bを同時に除去することにより、画像表示媒体100の製造を簡略化、迅速化することが可能となる。
【0049】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態に係る画像表示媒体の製造方法について説明する。この第3の実施の形態における第1の実施の形態との相違点は、第2の実施の形態と同様に、画像表示媒体の製造工程内の粒子を除去する工程(図3ステップS3−3)にある。その他の工程、および画像表示媒体の構成については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0050】
図8、9は、この第3の実施の形態に係る粒子を除去する工程を示す画像表示媒体の上面図、および断面図である。まず、図8に示すように、図3に示すフローチャートのステップS3−2を経て粒子を充填した画像表示媒体100の上面に、所定の開口パターンを有するマスク203を設置する。
【0051】
次に、図9に示すように、最も面積の広いセル102よりも開口面221aの面積の広い吸口部221を有する粒子除去手段220を画像表示媒体100の表面上方にマスク203を介して配置し、負圧をかけて吸引し、マスク203の開口部の下方に位置する粒子103A、103Bを除去する。ここで、粒子除去手段220の開口面221aの面積は、画像表示媒体100の面積と同じであることが好ましい。
【0052】
なお、マスク203は、画像表示媒体100の区画部材101上に設置する代わりに、粒子除去手段220の開口面221aに設置されていてもよい。
【0053】
また、図8に示すように粒子を充填した画像表示媒体100の上面に所定の開口パターンを有するマスク203を設置した後、画像表示媒体100の上面と下面を反転させ、マスク203の開口部から粒子103A、103Bを落下させることにより粒子103A、103Bを除去してもよい。
【0054】
(第3の実施の形態の効果)
この第3の実施の形態によれば、複数のセル102に充填した粒子103A、103Bを同時に除去することにより、画像表示媒体100の製造を簡略化、迅速化することが可能となる。
【0055】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。例えば、上記各実施の形態においては、請求項1において定義されている第1の基板が背面基板120、第2の基板が表面基板110であるとして説明したが、第1の基板が表面基板110、第2の基板が背面基板120であってもよい。また、粒子103A、103Bを除去する手段は上記各実施の形態に限られるものではなく、例えばさじ等を用いて掻き出すものや、粘着性を有する物質に付着させて行うものであってもよい。また、本発明は、磁性粒子を用いて磁気により画像を形成する磁気表示装置の製造にも適用することができる。
【0056】
また、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0058】
次に、本発明の実施例1について説明する。この実施例1は、第1の実施の形態に係る製造工程における粒子の充填工程(図3ステップS3)を以下の条件の下で行ったものである。
【0059】
区画部材101の形状は第1の実施の形態に係る区画部材101と同じレンガ状であり、厚さが0.1mmで高さが0.1mmであった。大と小の2種類のセルの面積は、大が0.9×5.9mmで、小が0.9×3.9mmであった。
【0060】
粒子除去手段210は、風速10〜15m/sで空気を吸引する内径8mmのチューブの先端に、バレルを介して内径0.52mmの針を取り付けて吸口部211とした。白色粒子103Aおよび黒色粒子103Bの粒径は、約0.01mmであった。
【0061】
図3ステップS3−3を経て各セル102内に残った粒子103A、103Bの数は、図2ステップS3−2を経て各セル102に充填された粒子103A、103Bの20〜25%であることが好ましいが、この範囲から±6%の範囲のずれならば画像表示媒体100の画質に悪影響を与えず、この実施例1における粒子の充填では、この画質に悪影響を与えない範囲に粒子の数を調整することができた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像表示媒体の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る画像表示媒体の区画部材の形状を示した上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る画像表示媒体の製造フローチャートである。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る粒子充填の各工程における画像表示媒体の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る粒子の充填が完了した画像表示媒体の上面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る粒子除去手段の概略構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る粒子を除去する工程を示す画像表示媒体の上面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る粒子を除去する工程を示す画像表示媒体の上面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る粒子を除去する工程を示す画像表示媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
100 画像表示媒体
101 区画部材
102 セル
103A 白色粒子
103B 黒色粒子
110 表面基板
111 表面基板部材
112 列電極
113 誘電体膜
120 背面基板
121 背面基板部材
122 行電極
123 誘電体膜
201 ワイパーブレード
202 ドクターブレード
203 マスク
210、220 粒子除去手段
211、221 吸口部
211a、221a 開口面
212 ホース
213 バキュームポンプ
214 フィルター
215 粒子回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画部材を有する第1の基板を準備する第1の工程と、
前記第1の基板上において区画部材によって区画されて形成された複数のセルに複数の粒子を充填する第2の工程と、
前記複数のセルからそれぞれ所定数の粒子を除去する第3の工程と、
第2の基板を前記第1の基板に対向するように前記区画部材に接合する第4の工程と、
を含むことを特徴とする画像表示媒体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程により前記セルに充填した前記複数の粒子の集合の高さをh、水平方向の面積をSとしたとき、
前記第3の工程における前記所定数の粒子の除去は、前記hを変化させずに、前記Sを変化させるように行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項3】
前記複数の粒子は、帯電特性および色が異なる複数種の粒子からなることを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程は、粒子を吸引する粒子除去手段により行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項5】
前記粒子除去手段の吸口部の開口面の面積が、前記セルの面積よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項6】
前記粒子除去手段は、前記複数のセルに対して垂直に移動し、前記吸口部を前記複数のセルの底と所定間隔を保つ位置に位置させて粒子を吸引することを特徴とする請求項5に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項7】
前記粒子除去手段は、前記吸口部の開口面を前記複数のセルの底と所定間隔を保つ高さに位置させ、水平方向に移動しながら粒子を吸引することを特徴とする請求項6に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項8】
前記粒子除去手段は、1つの前記セルに同時に配置された複数の吸口部を有することを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項9】
前記粒子除去手段は、所定の数の前記セルに同時に配置された前記所定の数の前記吸口部を有することを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項10】
前記第3の工程は、前記粒子の充填された前記画像表示媒体の上面に、所定の開口パターンを有するマスクを設置し、前記マスクの開口部の下方に位置する粒子を除去することを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項11】
前記第3の工程は、吸口部の開口面に、所定数のセルの位置に対応して形成された前記所定数の開口からなる所定の開口パターンが形成された前記粒子除去手段を用いて、前記マスクの開口部の下方に位置する粒子を除去することを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項12】
前記第3の工程は、吸引力および吸引時間を制御する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項13】
前記第2の工程は、ブレードを用いて実施されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項14】
前記第2の工程は、ワイパーブレードを用いて粒子を充填する工程と、
ドクターブレードを用いて前記区画部材の高さよりも高い位置に堆積している粒子を擦り切って除去する工程とからなることを特徴とする請求項13に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項15】
前記第3の工程は、前記第2の工程において充填された粒子を半分以上除去することを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項16】
前記粒子の直径が20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項17】
前記第3の工程は、残留させる前記粒子の集合が前記区画部材に3辺で接する前記複数のセルの端部に残るように前記粒子を除去することを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体の製造方法。
【請求項18】
除去した前記粒子を回収する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−57825(P2007−57825A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243168(P2005−243168)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)