画像表示用パネルの製造方法および製造装置
【課題】セルを画成している隔壁頂上部に画像表示媒体を載せることなく、セル内にのみ画像表示媒体を確実に、かつ、均一に充填して、その結果、画像表示ムラのない画像表示用パネルとすることのできる画像表示用パネルの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板1、2間に形成された、隔壁4により画成されたセル11内に画像表示媒体3を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板1、2を重ね合わせる前に、基板上に形成されたセル11の形状および配置位置に対応した電極12を利用して、電極12に、散布された画像表示媒体3の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体3を散布充填する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板1、2間に形成された、隔壁4により画成されたセル11内に画像表示媒体3を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板1、2を重ね合わせる前に、基板上に形成されたセル11の形状および配置位置に対応した電極12を利用して、電極12に、散布された画像表示媒体3の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体3を散布充填する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板を重ね合わせる前に、少なくとも隔壁が設けられた方の基板上に形成されたセル内に画像表示媒体を散布充填した後、2枚の基板を重ね合わせ、その間に画像表示媒体を封止する構造の画像表示用パネルの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な画像表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用画像表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上分散状態の安定性維持が難しいという欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、安定性に欠けるという問題もある。
【0006】
上述した種々の問題を解決するための一方法として、前面基板及び背面基板の間に、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体)を封入し、画像表示媒体に電界を与え、クーロン力等により画像表示媒体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルを備える画像表示装置が知られている。
【非特許文献1】趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”論文集、p.249-252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した画像表示装置では、通常、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間にセルを画成する隔壁を形成し、セル内に画像表示媒体を封止する構造の画像表示用パネルを用いる。この画像表示用パネルにおいては、隔壁で画成されたセル内に画像表示媒体を充填する工程が重要になる。従来、この画像表示媒体の充填工程には、乾式のLCD散布用装置と同様の装置を用いていた。
【0008】
この場合、画像表示媒体を充填配置したいセル内だけでなくセルを画成している隔壁頂上部にも画像表示媒体が載ってしまい、後からもう一方の基板を重ね合わせる際に、基板と隔壁頂上との接合面に画像表示媒体が挟まって、基板の接合状態に支障をきたすだけでなく均一にしたい基板間距離においても不均一となり、画像表示用パネルの表示においてムラを生じる問題となっていた。
【0009】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、セルを画成している隔壁頂上部に画像表示媒体を載せることなく、セル内にのみ画像表示媒体を確実に、かつ、均一に充填して、その結果、画像表示ムラのない画像表示用パネルとすることのできる画像表示用パネルの製造方法および製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示用パネルの製造方法は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板を重ね合わせる前に、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した電極を利用して、該電極に、散布された画像表示媒体の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体を散布充填することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の画像表示用パネルの製造方法の好適例としては、前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、散布用ステージ上に設けられた画像表示媒体誘導用電極を用い、画像表示媒体誘導用電極が設けられた散布用ステージに少なくとも隔壁が設けられた方の基板を載せた状態で、画像表示媒体誘導用電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うこと、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極が分割電極であること、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極の表面形状が基板上に画成されたセルの形状と同じで、大きさにおいては基板上に画成されたセルの面積以下であること、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が対称配置された2分割電極であること、及び、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が同心配置された内外2分割電極であること、がある。さらに、前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、前記セル内において基板上に設けられた基板上電極を用い、基板上電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うことがある。さらにまた、前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることがある。
【0012】
本発明の画像表示用パネルの製造装置は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造装置において、2枚の基板を重ね合わせる前に、画像表示媒体を散布充填する方の基板を載せる散布ステージに、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した画像表示媒体誘導用電極が設けられていることを特徴とするものである。また、本発明の画像表示用パネルの製造装置の好適例としては、前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像表示用パネルの製造方法によれば、2枚の基板を重ね合わせる前に、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した電極を利用して、該電極に、散布された画像表示媒体の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体を散布充填することで、前記基板上に形成されたセル内以外には画像表示媒体が配置されることがないので、画像表示媒体をセル内に均一に充填することができる。その結果、画像表示用パネルにおいて画像表示ムラをなくすことができる。
【0014】
また、本発明の画像表示用パネルの製造装置によれば、画像表示媒体を散布充填する方の基板を載せる散布ステージに、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した画像表示媒体誘導用電極が設けられている画像表示媒体を散布充填装置を用いるので、前記基板上に形成されたセル内以外には画像表示媒体が配置されることがなく、画像表示媒体をセル内に均一に充填することができる。その結果、画像表示用パネルにおいて画像表示ムラをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の対象となる画像表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明で用いる画像表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した画像表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、高電位側に向かっては低電位に帯電した画像表示媒体がクーロン力などによって引き寄せられ、また、低電位側に向かっては高電位に帯電した画像表示媒体がクーロン力などによって引き寄せられ、それら画像表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって往復運動することにより、画像表示がなされる。従って、画像表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、画像表示用パネルを設計する必要がある。ここで、画像表示媒体として用いる粒子または粉流体にかかる力は、粒子同士または粉流体同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0016】
本発明の画像表示用パネルの例を、図1(a)、(b)〜図3(a)、(b)に基づき説明する。
図1(a)、(b)に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図1(b)に示す例では、図1(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図2(a)、(b)に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図3(a)、(b)に示す例では、1種の色の画像表示媒体3(ここでは白色粒子3W)を、基板1上に設けた電極5と電極6との間に電圧を印加させることにより発生する電界に応じて、基板1、2と平行方向に移動させ、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色表示を行うか、あるいは、電極6または基板1の色を観察者に視認させて電極6または基板1の色の表示を行っている。なお、図3(b)に示す例では、図3(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図4は、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セル11を複数画成してそれぞれのセル11内に封入した画像表示媒体3にて白色表示、黒色表示を行っている。
以上の説明は、白色粒子3Wを白色粉流体に、黒色粒子3Bを黒色粉流体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
【0017】
以下、本発明の特徴となる画像表示用パネルの製造方法の一例について、図5、図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)に基づき詳細に説明する。
【0018】
図5には、画像表示媒体散布装置槽内の画像表示媒体誘導用電極12が設置されたステージの上に、セル11を画成する隔壁4が形成された基板を載せた状態を上から見た様子を示している。画像表示媒体誘導用電極12は、セル11内に収まるように形状、大きさ、配置位置が定められて配置されている。
【0019】
図6(a)、(b)には、画像表示媒体散布装置槽内の画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)が設置されたステージの上に、セル11を画成する隔壁4が形成された基板を載せた状態を上から見た様子を示している。画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)は、セル11内に収まるように形状、大きさ、配置位置が定められて配置されている。図6(a)の画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)は対称2分割電極であり、図6(b)の画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)は同心2分割電極である。
【0020】
図7(a)、(b)は、画像表示媒体誘導用電極12が配置された画像表示媒体散布ステージ13に隔壁4付の基板1を載せて、画像表示媒体3を散布充填している様子を示している。画像表示媒体散布ステージ13の分割電極12−1、12−2は、基板1上に形成された隔壁4で画成されるセル11の形状および配置位置に対応して設けられている。また、画像表示媒体散布ステージ13上は、散布ノズル14を有する散布槽15で覆われている。
【0021】
上述した装置を用いて、画像表示媒体3の散布充填は以下の通り行うことができる。なお、本例では、2種類の色及び帯電特性の異なる画像表示媒体3(白色画像表示媒体3Wと黒色画像表示媒体3B)を利用した例について説明する。まず、図7(a)に示すように、白色の画像表示媒体3Wを散布する。このとき画像表示媒体誘導用電極12には、白色画像表示媒体3Wが帯電している極性とは逆の極性電位を与えている。次に、図7(b)に示すように、黒色の画像表示媒体3Bを散布する。このとき画像表示媒体誘導用電極12には、黒色画像表示媒体3Bが帯電している極性とは逆の極性電位を与えている。
【0022】
ここでは、画像表示媒体誘導用電極12が分割電極12−1、12−2でない場合について説明したが、画像表示媒体誘導用電極12が分割電極12−1、12−2の場合にも同様にして画像表示媒体3を散布充填することができる。画像表示媒体誘導用電極12が分割電極12−1、12−2の場合には、分割電極12−1、12−2でない場合のような電極に与える極性電位を切り換える必要がなく、初めからそれぞれの分割電極に逆極性電位を与えておけばよい。さらには、散布ノズル14を2個準備すれば、帯電特性の異なる2種類の画像表示媒体を同時に散布充填することもできる。
【0023】
散布用ステージ13に設置する画像表示媒体誘導用電極12の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極12の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。なお、電極厚みに制約はないが、散布用ステージ13の上面が平滑になるようにステージ13上に設置することが好ましい。したがって、散布用ステージ13への設置方法を容易にするためには薄い方が好ましく、3〜1000nm、さらには3〜400nmの範囲の厚さで形成すれば、電極周辺のステージとの段差があっても画像表示媒体3の散布状態に影響しないので好ましい。
【0024】
次に、本発明の特徴となる画像表示用パネルの製造方法の他の例について、図8(a)〜(d)、図9(a)、(b)及び図10(a)、(b)に基づき説明する。なお、本例では、上述した画像表示媒体の散布充填装置を利用して、上述した例と同様に2種類の色と帯電特性の異なる画像表示媒体3(白色画像表示媒体3Wと黒色画像表示媒体3B)を利用した例について説明する。以下の説明において上述した例と異なる点は、上述した例のように散布ステージ13を使用せず、基板1上に設けられている電極5を利用した点であるが、散布ステージ13を使用した例においても以下に説明する例を適用することができる。
【0025】
まず、図8(a)に示すように、最初に充填する白色の画像表示媒体3Wをセル11内に散布充填するときには、基板1上の電極5に、その白色画像表示媒体3Wの持つ帯電極性とは逆極性の電位を印加した状態で散布を行い、図8(b)に示すように、白色画像表示媒体3Wの散布充填を終了する。次に、図8(c)に示すように、2番目に充填する黒色の画像表示媒体3Bをセル11内に散布充填するときには、基板1上の電極5には電位を印加しない状態で散布を行い、図8(d)に示すように、黒色画像表示媒体3Bの散布充填を終了する。なお、図9(a)、(b)及び図10(a)、(b)に、図8(a)、(c)の各々の状態に対応した電位の関係を示す。いずれの場合も、白色画像表示媒体3Wは正に帯電しており、黒色画像表示媒体3Bは負に帯電している。そして、図9(a)、(b)は、最初に白色画像表示媒体3Wを散布充填し、次に黒色画像表示媒体3Bを散布絨毯する例を示し、図10(a)、(b)は、最初に黒色画像表示媒体3Bを散布充填し、次に白色画像表示媒体3Wを散布充填する例を示す。
【0026】
本発明を適用する画像表示用パネルには、基板1、2の上下面に対向するセル11毎に対応する個別電極対5、6または基板1、2の上下面にマトリックス電極となるくし型電極5、6が設けられている。帯電性のある画像表示媒体3をセル11内に散布充填するとき、その散布された画像表示媒体3の持つ帯電極性とは逆極性の電位を電極5に印加すると、散布された画像表示媒体3は、その電極5上(すなわちセル11内)に引っ張られるようにしてセル11内に散布充填される。次の画像表示媒体3を散布充填するときには、電極5への電位の印加を行わなくても(OFF)、すでに充填された第1の画像表示媒体3が、これから散布される第2の画像表示媒体3が散布された時に有する帯電極性とは逆極性の帯電特性を持った状態でセル11内に存在するため、散布された第2の画像表示媒体3は、セル11内に充填済みの第1の画像表示媒体3の帯電極性に引かれてセル11内に充填される。
【0027】
2種類の帯電特性の異なる画像表示媒体3をセル11内に充填する場合、基板1上の電極5に2番目に充填する画像表示媒体3の有する帯電極性とは逆極性の電位を与えると、すでにセル11内に充填された画像表示媒体3の有する帯電極性と同極性の電位を与えることとなるため、セル11内に最初に充填した画像表示媒体3がセル11から抜け出してしまう場合がある。これは、隔壁高さが低い場合に起こりやすく、本例では、このような問題点を解消することができる。
【0028】
以下、本発明の対象となる画像表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0029】
基板については、少なくとも一方の基板は装置外側から画像表示媒体の色が確認できる透明な前面基板2であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。背面基板1は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜2000μmが好ましく、さらに5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、画像表示媒体散布装置における散布ステージに設けた画像表示媒体誘導用電極が画像表示媒体を誘導する効果が働かなくなるという不都合がある。
【0030】
必要に応じて基板に設ける電極5、6の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面基板1側に設ける電極5の材質や厚みなどは上述した電極6と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0031】
隔壁4については、その形状は表示にかかわる画像表示媒体の種類により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0032】
これらのリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図11に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。ここで、隔壁の形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。このうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法が好適に用いられる。
【0033】
次に、本発明の対象となる画像表示媒体として用いる粉流体について説明する。
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0034】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0035】
本発明の対象となる画像表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、画像表示媒体として、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0036】
次に、本発明の対象となる画像表示媒体として用いる粒子について説明する。粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0037】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0038】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0039】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0040】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、フ
ァーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0041】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0042】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0043】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0044】
また、本発明で用いる粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
【0045】
更に本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0046】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0047】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本とした
ソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0048】
粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、画像表示用パネルにおける粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0049】
本発明者らは鋭意検討の結果、ブローオフ法において同一のキャリア粒子を用いて、それぞれの粒子の帯電量測定を行うことにより、用いる粒子の適正な帯電特性値の範囲を評価できることを見出した。
【0050】
更に、本発明においては基板間の画像表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1〜図3において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体)3の占有部分、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体)が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、画像表示媒体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0051】
本発明の画像表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、画像表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における画像表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には画像表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【実施例】
【0052】
以下、実際の例について説明する。
【0053】
(実施例1〜3、11〜13及び比較例1、2、11、12:画像表示媒体誘導用電極を設けた散布ステージを用いた場合)
<粒子群について>
実験には散布前にブローオフ法にて求めておいた表面電荷密度で示される帯電量において−30μC/m2の白色粒子群および+20μC/m2の黒色粒子群を用いた。結果を以下の表1に示す。なお、表1中、粒子群充填の均一性は、◎は均一性が非常に良好な状態を示し、○は均一性が良好な状態を示し、×は均一性が不良な状態であることを示す。さらに、後工程の不具合は、充填工程後の全ての製造工程において、不具合がないものを○、不具合があるものを×とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から、本発明の画像表示媒体誘導用電極を用いて画像表示媒体として粒子群を、基板上に形成した隔壁で画成されたセル内に均一に散布充填できることが分かる。
【0056】
<粉流体について>
実験には散布前にブローオフ法にて求めておいた表面電荷密度で示される帯電量において−20μC/m2の白色粉流体および+15μC/m2の黒色粉流体を用いた。結果を以下の表2に示す。なお、表2中、粉流体充填の均一性は、◎は均一性が非常に良好な状態を示し、○は均一性が良好な状態を示し、×は均一性が不良な状態であることを示す。さらに、後工程の不具合は、充填工程後の全ての製造工程において、不具合がないものを○、不具合があるものを×とした。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果から、本発明の画像表示媒体誘導用電極を用いて画像表示媒体として粉流体を、基板上に形成した隔壁で画成されたセル内に均一に散布充填できることが分かる。
【0059】
(実施例21、22及び比較例21〜23:基板上電極を用い、最初の散布充填のみ電極に散布すべき画像表示媒体の帯電極性と逆極性の電位を印加した場合)
セルを画成する隔壁高さが50μmの四角形状の格子状配置された隔壁およびセル内位置に電極が形成された基板に対して、以下に記載する帯電特性の異なる白黒2色の粒子群(粒子群A、粒子群B)を画像表示媒体として用いて散布充填を行い、散布後の充填状態について観察評価を行った。
【0060】
粒子群Aは、アクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)にカーボンブラック(MA100:三菱化学(株))4phr、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製)2phrを添加し、混練り後、ジェットミルにて粉砕し、さらにハイブリダイザー装置(奈良機械製作所(株)製)を用いて機械的衝撃力を加えて略球状としてから分級して作製した。作製された粒子群Aは、平均粒子径が9.1μm、略球状で負帯電性の黒色粒子群であった。
【0061】
粒子群Bは、ターシャリーブチルメタクリレートモノマー80重量部とメタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチルモノマー20重量部に0.5重量部のAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶解し、カップリング剤処理して親油性とした酸化チタン20重量部を分散させて得られた液を、10倍量の0.5%界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液に懸濁、重合させ、濾過、乾燥させた後、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業)を用いて作製した。作製された粒子群Bは、平均粒子径が8.5μmで正帯電性の球状白色粒子であり、これを粒子群Bとした。
【0062】
<実施例21>
基板上の電極にプラス電位を印加しながら負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した後、電極への電位印加を止め、続いて正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
【0063】
<実施例22>
基板上の電極にマイナス電位を印加しながら正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した後、電極への電位印加を止め、続いて負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
【0064】
<比較例21>
基板上の電極にプラス電位を印加しながら負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した後、基板上の電極への電位印加をマイナス電位に切り換えて、続いて正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
粒子群B散布時に基板上電極電位を粒子群Aの帯電極性と同じ極性にしたため、一旦セル内に充填された粒子群Aがセル内からはみ出し隔壁頂上部に付着することが分かった。
【0065】
<比較例22>
基板上の電極にマイナス電位を印加しながら正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した後、基板上の電極への電位印加をプラス電位に切り換えて、続いて負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
粒子群A散布時に基板上電極電位を粒子群Bの帯電極性と同じ極性にしたため、一旦セル内に充填された粒子群Bがセル内からはみ出し隔壁頂上部に付着することが分かった。
【0066】
<比較例23>
基板上の電極に電位を印加しないで正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した後、続いて負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
隔壁頂上部には、粒子群Aおよび粒子群Bの双方が付着し、かなり堆積することが分かった。
【0067】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の製造方法に従って製造した画像表示用パネルは画像ムラがなく、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP、電子値札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図4】本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図5】本発明の画像表示用パネルの製造方法の一例を説明するための図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法の他の例を説明するための図である。
【図7】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法において散布ステージに設けた電極を利用した方法の一例を説明するための図である。
【図8】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法において基板上に設けた電極を利用した方法の一例を説明するための図である。
【図9】(a)、(b)はそれぞれ図8(a)、(c)の状態における電位の関係の一例を示す図である。
【図10】(a)、(b)はそれぞれ図8(a)、(c)の状態における電位の関係の他の例を示す図である。
【図11】本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1、2 基板
3 画像表示媒体(粒子群または粉流体)
3W 白色粒子(白色粉流体)
3B 黒色粒子(黒色粉流体)
4 隔壁
5,6 電極
11 セル
12 画像表示媒体誘導用電極
12−1、12−2 分割電極
13 画像表示媒体散布ステージ
14 散布ノズル
15 散布槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板を重ね合わせる前に、少なくとも隔壁が設けられた方の基板上に形成されたセル内に画像表示媒体を散布充填した後、2枚の基板を重ね合わせ、その間に画像表示媒体を封止する構造の画像表示用パネルの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な画像表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用画像表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上分散状態の安定性維持が難しいという欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、安定性に欠けるという問題もある。
【0006】
上述した種々の問題を解決するための一方法として、前面基板及び背面基板の間に、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体)を封入し、画像表示媒体に電界を与え、クーロン力等により画像表示媒体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルを備える画像表示装置が知られている。
【非特許文献1】趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”論文集、p.249-252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した画像表示装置では、通常、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間にセルを画成する隔壁を形成し、セル内に画像表示媒体を封止する構造の画像表示用パネルを用いる。この画像表示用パネルにおいては、隔壁で画成されたセル内に画像表示媒体を充填する工程が重要になる。従来、この画像表示媒体の充填工程には、乾式のLCD散布用装置と同様の装置を用いていた。
【0008】
この場合、画像表示媒体を充填配置したいセル内だけでなくセルを画成している隔壁頂上部にも画像表示媒体が載ってしまい、後からもう一方の基板を重ね合わせる際に、基板と隔壁頂上との接合面に画像表示媒体が挟まって、基板の接合状態に支障をきたすだけでなく均一にしたい基板間距離においても不均一となり、画像表示用パネルの表示においてムラを生じる問題となっていた。
【0009】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、セルを画成している隔壁頂上部に画像表示媒体を載せることなく、セル内にのみ画像表示媒体を確実に、かつ、均一に充填して、その結果、画像表示ムラのない画像表示用パネルとすることのできる画像表示用パネルの製造方法および製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示用パネルの製造方法は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板を重ね合わせる前に、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した電極を利用して、該電極に、散布された画像表示媒体の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体を散布充填することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の画像表示用パネルの製造方法の好適例としては、前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、散布用ステージ上に設けられた画像表示媒体誘導用電極を用い、画像表示媒体誘導用電極が設けられた散布用ステージに少なくとも隔壁が設けられた方の基板を載せた状態で、画像表示媒体誘導用電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うこと、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極が分割電極であること、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極の表面形状が基板上に画成されたセルの形状と同じで、大きさにおいては基板上に画成されたセルの面積以下であること、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が対称配置された2分割電極であること、及び、前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が同心配置された内外2分割電極であること、がある。さらに、前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、前記セル内において基板上に設けられた基板上電極を用い、基板上電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うことがある。さらにまた、前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることがある。
【0012】
本発明の画像表示用パネルの製造装置は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造装置において、2枚の基板を重ね合わせる前に、画像表示媒体を散布充填する方の基板を載せる散布ステージに、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した画像表示媒体誘導用電極が設けられていることを特徴とするものである。また、本発明の画像表示用パネルの製造装置の好適例としては、前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像表示用パネルの製造方法によれば、2枚の基板を重ね合わせる前に、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した電極を利用して、該電極に、散布された画像表示媒体の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体を散布充填することで、前記基板上に形成されたセル内以外には画像表示媒体が配置されることがないので、画像表示媒体をセル内に均一に充填することができる。その結果、画像表示用パネルにおいて画像表示ムラをなくすことができる。
【0014】
また、本発明の画像表示用パネルの製造装置によれば、画像表示媒体を散布充填する方の基板を載せる散布ステージに、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した画像表示媒体誘導用電極が設けられている画像表示媒体を散布充填装置を用いるので、前記基板上に形成されたセル内以外には画像表示媒体が配置されることがなく、画像表示媒体をセル内に均一に充填することができる。その結果、画像表示用パネルにおいて画像表示ムラをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の対象となる画像表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明で用いる画像表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した画像表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、高電位側に向かっては低電位に帯電した画像表示媒体がクーロン力などによって引き寄せられ、また、低電位側に向かっては高電位に帯電した画像表示媒体がクーロン力などによって引き寄せられ、それら画像表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって往復運動することにより、画像表示がなされる。従って、画像表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、画像表示用パネルを設計する必要がある。ここで、画像表示媒体として用いる粒子または粉流体にかかる力は、粒子同士または粉流体同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0016】
本発明の画像表示用パネルの例を、図1(a)、(b)〜図3(a)、(b)に基づき説明する。
図1(a)、(b)に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図1(b)に示す例では、図1(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図2(a)、(b)に示す例では、2種以上の色の異なる画像表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図3(a)、(b)に示す例では、1種の色の画像表示媒体3(ここでは白色粒子3W)を、基板1上に設けた電極5と電極6との間に電圧を印加させることにより発生する電界に応じて、基板1、2と平行方向に移動させ、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色表示を行うか、あるいは、電極6または基板1の色を観察者に視認させて電極6または基板1の色の表示を行っている。なお、図3(b)に示す例では、図3(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図4は、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セル11を複数画成してそれぞれのセル11内に封入した画像表示媒体3にて白色表示、黒色表示を行っている。
以上の説明は、白色粒子3Wを白色粉流体に、黒色粒子3Bを黒色粉流体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
【0017】
以下、本発明の特徴となる画像表示用パネルの製造方法の一例について、図5、図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)に基づき詳細に説明する。
【0018】
図5には、画像表示媒体散布装置槽内の画像表示媒体誘導用電極12が設置されたステージの上に、セル11を画成する隔壁4が形成された基板を載せた状態を上から見た様子を示している。画像表示媒体誘導用電極12は、セル11内に収まるように形状、大きさ、配置位置が定められて配置されている。
【0019】
図6(a)、(b)には、画像表示媒体散布装置槽内の画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)が設置されたステージの上に、セル11を画成する隔壁4が形成された基板を載せた状態を上から見た様子を示している。画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)は、セル11内に収まるように形状、大きさ、配置位置が定められて配置されている。図6(a)の画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)は対称2分割電極であり、図6(b)の画像表示媒体誘導用電極12(分割電極12−1、12−2)は同心2分割電極である。
【0020】
図7(a)、(b)は、画像表示媒体誘導用電極12が配置された画像表示媒体散布ステージ13に隔壁4付の基板1を載せて、画像表示媒体3を散布充填している様子を示している。画像表示媒体散布ステージ13の分割電極12−1、12−2は、基板1上に形成された隔壁4で画成されるセル11の形状および配置位置に対応して設けられている。また、画像表示媒体散布ステージ13上は、散布ノズル14を有する散布槽15で覆われている。
【0021】
上述した装置を用いて、画像表示媒体3の散布充填は以下の通り行うことができる。なお、本例では、2種類の色及び帯電特性の異なる画像表示媒体3(白色画像表示媒体3Wと黒色画像表示媒体3B)を利用した例について説明する。まず、図7(a)に示すように、白色の画像表示媒体3Wを散布する。このとき画像表示媒体誘導用電極12には、白色画像表示媒体3Wが帯電している極性とは逆の極性電位を与えている。次に、図7(b)に示すように、黒色の画像表示媒体3Bを散布する。このとき画像表示媒体誘導用電極12には、黒色画像表示媒体3Bが帯電している極性とは逆の極性電位を与えている。
【0022】
ここでは、画像表示媒体誘導用電極12が分割電極12−1、12−2でない場合について説明したが、画像表示媒体誘導用電極12が分割電極12−1、12−2の場合にも同様にして画像表示媒体3を散布充填することができる。画像表示媒体誘導用電極12が分割電極12−1、12−2の場合には、分割電極12−1、12−2でない場合のような電極に与える極性電位を切り換える必要がなく、初めからそれぞれの分割電極に逆極性電位を与えておけばよい。さらには、散布ノズル14を2個準備すれば、帯電特性の異なる2種類の画像表示媒体を同時に散布充填することもできる。
【0023】
散布用ステージ13に設置する画像表示媒体誘導用電極12の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極12の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。なお、電極厚みに制約はないが、散布用ステージ13の上面が平滑になるようにステージ13上に設置することが好ましい。したがって、散布用ステージ13への設置方法を容易にするためには薄い方が好ましく、3〜1000nm、さらには3〜400nmの範囲の厚さで形成すれば、電極周辺のステージとの段差があっても画像表示媒体3の散布状態に影響しないので好ましい。
【0024】
次に、本発明の特徴となる画像表示用パネルの製造方法の他の例について、図8(a)〜(d)、図9(a)、(b)及び図10(a)、(b)に基づき説明する。なお、本例では、上述した画像表示媒体の散布充填装置を利用して、上述した例と同様に2種類の色と帯電特性の異なる画像表示媒体3(白色画像表示媒体3Wと黒色画像表示媒体3B)を利用した例について説明する。以下の説明において上述した例と異なる点は、上述した例のように散布ステージ13を使用せず、基板1上に設けられている電極5を利用した点であるが、散布ステージ13を使用した例においても以下に説明する例を適用することができる。
【0025】
まず、図8(a)に示すように、最初に充填する白色の画像表示媒体3Wをセル11内に散布充填するときには、基板1上の電極5に、その白色画像表示媒体3Wの持つ帯電極性とは逆極性の電位を印加した状態で散布を行い、図8(b)に示すように、白色画像表示媒体3Wの散布充填を終了する。次に、図8(c)に示すように、2番目に充填する黒色の画像表示媒体3Bをセル11内に散布充填するときには、基板1上の電極5には電位を印加しない状態で散布を行い、図8(d)に示すように、黒色画像表示媒体3Bの散布充填を終了する。なお、図9(a)、(b)及び図10(a)、(b)に、図8(a)、(c)の各々の状態に対応した電位の関係を示す。いずれの場合も、白色画像表示媒体3Wは正に帯電しており、黒色画像表示媒体3Bは負に帯電している。そして、図9(a)、(b)は、最初に白色画像表示媒体3Wを散布充填し、次に黒色画像表示媒体3Bを散布絨毯する例を示し、図10(a)、(b)は、最初に黒色画像表示媒体3Bを散布充填し、次に白色画像表示媒体3Wを散布充填する例を示す。
【0026】
本発明を適用する画像表示用パネルには、基板1、2の上下面に対向するセル11毎に対応する個別電極対5、6または基板1、2の上下面にマトリックス電極となるくし型電極5、6が設けられている。帯電性のある画像表示媒体3をセル11内に散布充填するとき、その散布された画像表示媒体3の持つ帯電極性とは逆極性の電位を電極5に印加すると、散布された画像表示媒体3は、その電極5上(すなわちセル11内)に引っ張られるようにしてセル11内に散布充填される。次の画像表示媒体3を散布充填するときには、電極5への電位の印加を行わなくても(OFF)、すでに充填された第1の画像表示媒体3が、これから散布される第2の画像表示媒体3が散布された時に有する帯電極性とは逆極性の帯電特性を持った状態でセル11内に存在するため、散布された第2の画像表示媒体3は、セル11内に充填済みの第1の画像表示媒体3の帯電極性に引かれてセル11内に充填される。
【0027】
2種類の帯電特性の異なる画像表示媒体3をセル11内に充填する場合、基板1上の電極5に2番目に充填する画像表示媒体3の有する帯電極性とは逆極性の電位を与えると、すでにセル11内に充填された画像表示媒体3の有する帯電極性と同極性の電位を与えることとなるため、セル11内に最初に充填した画像表示媒体3がセル11から抜け出してしまう場合がある。これは、隔壁高さが低い場合に起こりやすく、本例では、このような問題点を解消することができる。
【0028】
以下、本発明の対象となる画像表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0029】
基板については、少なくとも一方の基板は装置外側から画像表示媒体の色が確認できる透明な前面基板2であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。背面基板1は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜2000μmが好ましく、さらに5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、画像表示媒体散布装置における散布ステージに設けた画像表示媒体誘導用電極が画像表示媒体を誘導する効果が働かなくなるという不都合がある。
【0030】
必要に応じて基板に設ける電極5、6の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面基板1側に設ける電極5の材質や厚みなどは上述した電極6と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0031】
隔壁4については、その形状は表示にかかわる画像表示媒体の種類により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0032】
これらのリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図11に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。ここで、隔壁の形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。このうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法が好適に用いられる。
【0033】
次に、本発明の対象となる画像表示媒体として用いる粉流体について説明する。
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0034】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0035】
本発明の対象となる画像表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、画像表示媒体として、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0036】
次に、本発明の対象となる画像表示媒体として用いる粒子について説明する。粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0037】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0038】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0039】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0040】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、フ
ァーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0041】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0042】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0043】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0044】
また、本発明で用いる粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
【0045】
更に本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0046】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0047】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本とした
ソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0048】
粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、画像表示用パネルにおける粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0049】
本発明者らは鋭意検討の結果、ブローオフ法において同一のキャリア粒子を用いて、それぞれの粒子の帯電量測定を行うことにより、用いる粒子の適正な帯電特性値の範囲を評価できることを見出した。
【0050】
更に、本発明においては基板間の画像表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1〜図3において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体)3の占有部分、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体)が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、画像表示媒体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0051】
本発明の画像表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、画像表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における画像表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には画像表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【実施例】
【0052】
以下、実際の例について説明する。
【0053】
(実施例1〜3、11〜13及び比較例1、2、11、12:画像表示媒体誘導用電極を設けた散布ステージを用いた場合)
<粒子群について>
実験には散布前にブローオフ法にて求めておいた表面電荷密度で示される帯電量において−30μC/m2の白色粒子群および+20μC/m2の黒色粒子群を用いた。結果を以下の表1に示す。なお、表1中、粒子群充填の均一性は、◎は均一性が非常に良好な状態を示し、○は均一性が良好な状態を示し、×は均一性が不良な状態であることを示す。さらに、後工程の不具合は、充填工程後の全ての製造工程において、不具合がないものを○、不具合があるものを×とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から、本発明の画像表示媒体誘導用電極を用いて画像表示媒体として粒子群を、基板上に形成した隔壁で画成されたセル内に均一に散布充填できることが分かる。
【0056】
<粉流体について>
実験には散布前にブローオフ法にて求めておいた表面電荷密度で示される帯電量において−20μC/m2の白色粉流体および+15μC/m2の黒色粉流体を用いた。結果を以下の表2に示す。なお、表2中、粉流体充填の均一性は、◎は均一性が非常に良好な状態を示し、○は均一性が良好な状態を示し、×は均一性が不良な状態であることを示す。さらに、後工程の不具合は、充填工程後の全ての製造工程において、不具合がないものを○、不具合があるものを×とした。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果から、本発明の画像表示媒体誘導用電極を用いて画像表示媒体として粉流体を、基板上に形成した隔壁で画成されたセル内に均一に散布充填できることが分かる。
【0059】
(実施例21、22及び比較例21〜23:基板上電極を用い、最初の散布充填のみ電極に散布すべき画像表示媒体の帯電極性と逆極性の電位を印加した場合)
セルを画成する隔壁高さが50μmの四角形状の格子状配置された隔壁およびセル内位置に電極が形成された基板に対して、以下に記載する帯電特性の異なる白黒2色の粒子群(粒子群A、粒子群B)を画像表示媒体として用いて散布充填を行い、散布後の充填状態について観察評価を行った。
【0060】
粒子群Aは、アクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)にカーボンブラック(MA100:三菱化学(株))4phr、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製)2phrを添加し、混練り後、ジェットミルにて粉砕し、さらにハイブリダイザー装置(奈良機械製作所(株)製)を用いて機械的衝撃力を加えて略球状としてから分級して作製した。作製された粒子群Aは、平均粒子径が9.1μm、略球状で負帯電性の黒色粒子群であった。
【0061】
粒子群Bは、ターシャリーブチルメタクリレートモノマー80重量部とメタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチルモノマー20重量部に0.5重量部のAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶解し、カップリング剤処理して親油性とした酸化チタン20重量部を分散させて得られた液を、10倍量の0.5%界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液に懸濁、重合させ、濾過、乾燥させた後、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業)を用いて作製した。作製された粒子群Bは、平均粒子径が8.5μmで正帯電性の球状白色粒子であり、これを粒子群Bとした。
【0062】
<実施例21>
基板上の電極にプラス電位を印加しながら負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した後、電極への電位印加を止め、続いて正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
【0063】
<実施例22>
基板上の電極にマイナス電位を印加しながら正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した後、電極への電位印加を止め、続いて負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
【0064】
<比較例21>
基板上の電極にプラス電位を印加しながら負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した後、基板上の電極への電位印加をマイナス電位に切り換えて、続いて正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
粒子群B散布時に基板上電極電位を粒子群Aの帯電極性と同じ極性にしたため、一旦セル内に充填された粒子群Aがセル内からはみ出し隔壁頂上部に付着することが分かった。
【0065】
<比較例22>
基板上の電極にマイナス電位を印加しながら正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した後、基板上の電極への電位印加をプラス電位に切り換えて、続いて負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
粒子群A散布時に基板上電極電位を粒子群Bの帯電極性と同じ極性にしたため、一旦セル内に充填された粒子群Bがセル内からはみ出し隔壁頂上部に付着することが分かった。
【0066】
<比較例23>
基板上の電極に電位を印加しないで正帯電性の白色粒子群(粒子群B)を所定量散布充填した後、続いて負帯電性の黒色粒子群(粒子群A)を所定量散布充填した。散布後の充填状態について観察評価を行った結果を表3に示す。
隔壁頂上部には、粒子群Aおよび粒子群Bの双方が付着し、かなり堆積することが分かった。
【0067】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の製造方法に従って製造した画像表示用パネルは画像ムラがなく、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP、電子値札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図4】本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図5】本発明の画像表示用パネルの製造方法の一例を説明するための図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法の他の例を説明するための図である。
【図7】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法において散布ステージに設けた電極を利用した方法の一例を説明するための図である。
【図8】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの製造方法において基板上に設けた電極を利用した方法の一例を説明するための図である。
【図9】(a)、(b)はそれぞれ図8(a)、(c)の状態における電位の関係の一例を示す図である。
【図10】(a)、(b)はそれぞれ図8(a)、(c)の状態における電位の関係の他の例を示す図である。
【図11】本発明の製造方法の対象となる画像表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1、2 基板
3 画像表示媒体(粒子群または粉流体)
3W 白色粒子(白色粉流体)
3B 黒色粒子(黒色粉流体)
4 隔壁
5,6 電極
11 セル
12 画像表示媒体誘導用電極
12−1、12−2 分割電極
13 画像表示媒体散布ステージ
14 散布ノズル
15 散布槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板を重ね合わせる前に、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した電極を利用して、該電極に、散布された画像表示媒体の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体を散布充填することを特徴とする画像表示用パネルの製造方法。
【請求項2】
前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、散布用ステージ上に設けられた画像表示媒体誘導用電極を用い、画像表示媒体誘導用電極が設けられた散布用ステージに少なくとも隔壁が設けられた方の基板を載せた状態で、画像表示媒体誘導用電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項3】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極が分割電極であることを特徴とする請求項2に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項4】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極の表面形状が基板上に画成されたセルの形状と同じで、大きさにおいては基板上に画成されたセルの面積以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項5】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が対称配置された2分割電極であることを特徴とする請求項3に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項6】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が同心配置された内外2分割電極であることを特徴とする請求項3に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項7】
前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、前記セル内において基板上に設けられた基板上電極を用い、基板上電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項8】
前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項9】
少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造装置において、2枚の基板を重ね合わせる前に、画像表示媒体を散布充填する方の基板を載せる散布ステージに、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した画像表示媒体誘導用電極が設けられていることを特徴とする画像表示用パネルの製造装置。
【請求項10】
前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることを特徴とする請求項9に記載の画像表示用パネルの製造装置。
【請求項1】
少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造方法において、2枚の基板を重ね合わせる前に、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した電極を利用して、該電極に、散布された画像表示媒体の有する帯電極性とは逆の極性の電位を印加した状態で画像表示媒体を散布充填することを特徴とする画像表示用パネルの製造方法。
【請求項2】
前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、散布用ステージ上に設けられた画像表示媒体誘導用電極を用い、画像表示媒体誘導用電極が設けられた散布用ステージに少なくとも隔壁が設けられた方の基板を載せた状態で、画像表示媒体誘導用電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項3】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極が分割電極であることを特徴とする請求項2に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項4】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用電極の表面形状が基板上に画成されたセルの形状と同じで、大きさにおいては基板上に画成されたセルの面積以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項5】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が対称配置された2分割電極であることを特徴とする請求項3に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項6】
前記散布用ステージに設けられた画像表示媒体誘導用の分割電極が同心配置された内外2分割電極であることを特徴とする請求項3に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項7】
前記セルの形状及び配置位置に対応した電極として、前記セル内において基板上に設けられた基板上電極を用い、基板上電極に所定の極性の電位を印加した状態で、画像表示媒体の散布充填を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項8】
前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像表示用パネルの製造方法。
【請求項9】
少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に形成された、隔壁により画成されたセル内に画像表示媒体を封入した構造の画像表示用パネルの製造装置において、2枚の基板を重ね合わせる前に、画像表示媒体を散布充填する方の基板を載せる散布ステージに、前記基板上に形成されたセルの形状および配置位置に対応した画像表示媒体誘導用電極が設けられていることを特徴とする画像表示用パネルの製造装置。
【請求項10】
前記画像表示媒体が、粒子群または粉流体であることを特徴とする請求項9に記載の画像表示用パネルの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−39497(P2006−39497A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239681(P2004−239681)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
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