説明

画像表示装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばカラーディスプレイ装置等の薄型の画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、薄型のディスプレイ装置として、例えばジャパン・ディスプレイ(JAPAN DISPLAY ’86 P512〜515)に微小冷陰極をエミッション源として用いたマイクロチップ型のディスプレイ装置が提案されている。このディスプレイ装置は、図6に示すように、半導体製造プロセスにより基板51上に形成した直径1.0ミクロン以下のモリブデン等よりなる円錐状の陰極52をエミッション源とし、この陰極52の下に設けられる電極53と上記陰極52の周囲を取り囲むようにして設けられる絶縁性層54上に形成されるゲート電極55とをX−Yマトリックスとなして、いわゆるX−Y駆動するように構成されたものである。
【0003】このディスプレイ装置では、円錐状の陰極52とゲート電極55との間に106 V/cm以上の電界をかけると電界放出が起こり、上記陰極52の先端部より電子ビームが引き出される。そして、この電子ビームをX−Y駆動により選択的にガラスパネル56の内面に形成された蛍光スクリーン57に照射させることによって、画像表示をするようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、輝点の形成される蛍光スクリーン57上の点においては、電子ビーム入射による局所的温度上昇により、蛍光体からガスGが発生する。発生したガスGは、陰極52の表面に吸着し、仕事関数の増大により電子ビームの不安定化を招くばかりか、真空パネル内の真空度の低下をきたし、画質の低下を誘発する。
【0005】このため、高排気量の真空ポンプを利用して強制的にガスGを排気することが行われるが、ガスGの発生地点より排気口58までは距離があるため、確実に排気することができない。したがって、排気量を大きくすることも考えられるが、排気量は、ガスGの発生地点から排気口58に至るまでの排気コンダクタンスによって律速されており、蛍光スクリーン57と陰極52間の狭い空間を一定値以上の高真空に保つことは自ずと限界がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、上述の従来の実情に鑑みて提案されたものであって、蛍光体から発生するガスの陰極への吸着を防止し、輝度の安定化を図り高画質化を可能となす画像表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明は、蛍光体が形成されてなる前面パネルと、この前面パネルの対向面に電子ビームを発する微小冷陰極が配列されてなる陰極パネルとからなる画像表示装置において、上記前面パネルの蛍光体上には、脱ガス防止用のSiN薄膜とチャージアップ防止用の導電膜とが積層形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】本発明では、蛍光体より発生するガスが陰極パネル側に移行しないように脱ガス防止用の薄膜が前面パネルの蛍光体上に形成されているので、上記蛍光体より発生したガスはこの薄膜によって上記陰極パネル側へ移行するのが妨げられる。したがって、陰極へのガスの吸着がなくなり、電子ビームの安定化が図れ、輝度が向上する。
【0009】
【実施例】以下、本発明を適用した実施例について図面を参照しながら説明する。本実施例の画像表示装置は、図1に示すように、内壁面に蛍光体ストライプが形成された前面パネル1と、エミッション源となる陰極パネル2とを有して構成されている。上記前面パネル1は、エミッション源と対向するガラスプレート3の内壁面3aにITO(酸化インジウム錫)等の透明アノード電極(図示は省略する。)を有し、この透明アノード電極上に赤色(R),緑色(G),黒色(BK)の蛍光体ストライプ4を所定パターンに形成して蛍光画面を構成している。
【0010】そしてさらに、上記蛍光体ストライプ4上には、蛍光体より発生したガスを陰極パネル2側へ移行させないように防止する脱ガス防止用の薄膜5が全面に亘って形成されている。上記薄膜5は、例えばSiN等よりなり、反応性スパッタやプラズマCVD等の手法によって被着形成され、その膜厚は例えば0.5〜3.0μm程度に選ばれる。膜厚が0.5μm未満であると、陰極パネル2側へのガスの移行を防止できなくなり、逆に3.0μmを越えると電子ビームが蛍光体ストライプ4に届かなくなる。なお、上記薄膜5は、後述の数個〜数十個の集合よりなる陰極に対向しない領域、つまり電子ビームが照射されない領域には、形成しなくても大きな支障はない。
【0011】一方、陰極パネル2は、微小冷陰極からな複数の画素がマトリックス配置されることにより構成されている。微小冷陰極は、図2に示すように、エミッション源となる陰極6と、この陰極6より電子ビームを引き出すためのゲート電極7と、上記陰極6に電位を与える制御線8と、この制御線8とゲート電極7とを絶縁する絶縁層9とを有してなり、これらが半導体製造プロセスによりガラスよりなるベースプレート10上に形成されてなっている。
【0012】上記陰極6は、例えばモリブデンやタングステンあるいはランタンヘキサボライド(LaB6 )等によって直径1.0ミクロン以下の微小な円錐状の突起として形成され、その突起の先端部より電界の印加によって電子ビームが放出されるようになっている。これら陰極6は、数個〜数十個よりなる集合体として1画素を構成し、上記蛍光体の各ドットにそれぞれ対応してマトリックス状に設けられている。一方、ゲート電極7は、陰極6を中心としてその周囲を円弧状に取り囲むようにして形成された絶縁層9上に形成され、それぞれの陰極6に対応した位置には各陰極6の先端より電子ビームを上記蛍光体ストライプ4へ向かって放出させるための円弧状の電子ビーム放出用孔7aが形成されている。上記ゲート電極7は、上記制御線8とによってマトリックス構造をなすように配置され、その交点に上記数個〜数十個よりなる集合体の陰極6を対向させるようになっている。
【0013】上記のようにして構成された画像表示装置においては、制御線8に電位信号を供給すると、ゲート電極7と陰極6間に106 V/cm以上の電界がかかり、当該陰極6の先端部より電子ビームが引き出される。そして、引き出された電子ビームは、蛍光体ストライプ4に入射され、蛍光体ドットを発光させる。このとき、輝点の形成される蛍光体ストライプ4上の点においては、電子ビーム入射による局所的温度上昇によって蛍光体よりガスGが発生する。しかしながら、蛍光体ストライプ4上にはこの蛍光体ストライプ4を覆って脱ガス防止用の薄膜5が形成されているので、発生したガスGはこの薄膜5によって陰極パネル2側へ移行することなく、上記蛍光体ストライプ4を通して排気口(図示は省略する。)へと排気される。したがって、上記蛍光体より発生したガスGの陰極6への吸着が無くなり、電子ビームの安定化により高輝度が望める。
【0014】本発明を適用した画像表示装置においては、脱ガス防止用の薄膜5を設けることによる電子ビームの蛍光体ストライプ4への入射のしずらさを解消するため、蛍光体ストライプ4に電子ビームが容易に届くようにチャージアップ防止用の薄い導電膜を前面パネル1に設ける。かかる導電膜には、例えばAu等よりなる数十〜数百オングストローム程度の薄膜を用いる。上記導電膜11は、例えば図3に示すように脱ガス防止の薄膜5上に形成してもよいし、あるいは図4に示すようにガラスプレート3と蛍光体ストライプ4間に形成してもよい。なお、ガラスプレート3と蛍光体ストライプ4間に導電膜11を形成する場合には、当該導電膜11には透明な材料を使用する。さらには、上記導電膜11は、図5R>5に示すように、蛍光体ストライプ4と脱ガス防止用の薄膜5との間に設けるようにしてもよい。
【0015】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発明の画像表示装置においては、蛍光体より発生するガスが陰極パネル側へ移行しないように前面パネルの蛍光体上に脱ガス防止用の薄膜を設けているので、発生したガスの陰極への吸着が防止でき、安定した電子ビームを常に蛍光体ストライプに照射することができる。したがって、輝度の安定化を図ることができると同時に、真空パネル内の真空度を維持することができ、高画質化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像表示装置の基本構成を示す概略的な断面図である。
【図2】微小冷陰極を一部破断して示す要部拡大斜視図である。
【図3】本発明を適用した画像表示装置の一例を示す概略的な断面図である。
【図4】本発明を適用した画像表示装置の他の例を示す概略的な断面図である。
【図5】本発明を適用した画像表示装置のさらに他の例を示す概略的な断面図である。
【図6】従来の画像表示装置の一例を示す概略的な断面図である。
【符号の説明】
1・・・前面パネル
2・・・陰極パネル
4・・・蛍光体ストライプ
5・・・脱ガス防止用の薄膜
6・・・陰極
7・・・ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 蛍光体が形成されてなる前面パネルと、この前面パネルの対向面に電子ビームを発する微小冷陰極が配列されてなる陰極パネルとからなる画像表示装置において、上記前面パネルの蛍光体上には、脱ガス防止用のSiN薄膜とチャージアップ防止用の導電膜とが積層形成されていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3060614号(P3060614)
【登録日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【発行日】平成12年7月10日(2000.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−173327
【出願日】平成3年6月19日(1991.6.19)
【公開番号】特開平4−370634
【公開日】平成4年12月24日(1992.12.24)
【審査請求日】平成10年6月4日(1998.6.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 平1−213600(JP,A)
【文献】特開 平2−299143(JP,A)
【文献】実開 昭60−69465(JP,U)