説明

画像装置の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光プリンタヘッド等の画像形成装置やイメージセンサ等の画像読み取り装置等に使用される画像装置の製造方法に関し、より詳細にはハウジングへの画像素子アレイを搭載した長尺状基板の固定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の画像装置、例えば光プリンタヘッド等の画像形成装置に使用される画像装置は、電気絶縁性基板上に複数個の発光ダイオードから成る発光ダイオードアレイを直線状に複数個、配列搭載した長尺状の発光素子搭載基板と、枠状ケーシングに棒状のセルフフォーカシングレンズを2列に直線状に多数個配置したレンズアレイと、ポリカーボネート樹脂等から成るハウジングとから構成されており、ハウジング内に発光素子搭載基板とレンズアレイを両者間に所定距離をあけて、且つレンズアレイの各セルフフォーカシングレンズの光軸上に発光ダイオードアレイの各発光ダイオードが位置するようにエポキシ樹脂から成る接着材を介し接着固定することによって製作されている。
【0003】尚、かかる画像装置は発光ダイオードアレイの各発光ダイオードに外部電気信号に対応させて個々に選択的に発光させ、該各発光ダイオードが発光した光をレンズアレイを介して外部の感光体面に結像させ、感光体に潜像を形成させることによって画像形成装置として機能する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来の画像装置においては、複数個の発光ダイオードアレイを直線状に配列搭載して成る長尺状発光素子搭載基板のハウジングへの固定が基板の底面全面をハウジングにエポキシ樹脂から成る接着材で接着することによって行われており、該エポキシ樹脂から成る接着材はその硬化速度がハウジングを構成する樹脂の熱変形を考慮し、高い温度の熱を印加することができないため極めて遅い。そのため長尺状の発光素子搭載基板をハウジングに固定する際、発光素子搭載基板の固定位置に狂いが生じ易く、発光素子搭載基板の固定位置に狂いが生じると基板の上面に搭載した発光ダイオードとレンズアレイを構成する各セルフフォーカシングレンズの光軸とがズレ、発光ダイオードの発する光をセルフフォーカシングレンズを介して感光体に良好に照射せるのが不可となって感光体に鮮明で、正確な潜像を形成することができないという欠点を有していた。
【0005】また前記長尺状発光素子搭載基板のハウジングへの固定は基板の底面全面をハウジングに接着材を介し接着することによって行われていること、及び長尺状の発光素子搭載基板は通常、ガラスやアルミナセラミックス等で、またハウジングは平坦度、強度、価格等を考慮してポリカーボネート樹脂で形成されており、両者の熱膨張係数がそれぞれ0.6 〜0.8 ×10-5/℃、1.9 ×10-5/℃と大きく相違していること等からこの画像装置を画像形成装置に組み込んで使用した場合、ハウジング及び発光素子搭載基板に外部から熱が印加されると両者の接着部に大きな熱応力が発生して発光素子搭載基板を 250μm 程度湾曲させてしまい、その結果、各発光ダイオードとセルフフォーカシングレンズの光軸との間にズレが生じ、発光ダイオードの発する光をセルフフォーカシングレンズを介して感光体に良好に照射せるのが不可となって感光体に鮮明で、正確な潜像を形成することができないという欠点も有していた。
【0006】尚、上記従来例においては光プリンタヘッド等の画像形成装置に使用される画像装置を例に採って説明したが、固体撮像素子アレイを用いたイメージセンサ等の画像読み取り装置等に使用される画像装置においても同様の原因によって量産性、作業性が悪く、且つ固体撮像素子アレイへの外部画像情報の結像が不均一となり、固体撮像素子アレイに画像情報に対応した正確な電気信号を発生させるのが不可となる欠点を有していた。
【0007】
【発明の目的】本発明は上記欠点に鑑み案出されたものでその目的は発光ダイオードが発する光をレンズアレイを介して感光体に正確に照射し、感光体に画像品質が高い画像を形成することができる、或いは外部画像情報をレンズアレイを介して固体撮像素子アレイに正確に結像させ、固体撮像素子アレイに外部画像情報に対応する正確な電気信号を発生させることができる画像装置の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はハウジング内に画像素子アレイを搭載した長尺状の基板とレンズアレイとを所定間隔をあけて固定してなる画像装置であって、前記画像素子アレイを搭載した長尺状基板のハウジングへの固定が下記(1)乃至(3)の工程から成ることを特徴とするものである。
【0009】(1)ハウジングの長尺状基板が固定される領域で、基板の長さ方向の中央部が固定される位置に接着材注入孔を、他の位置に仮接着材注入孔を形成する工程、(2)前記接着材注入孔及び仮接着材注入孔を形成したハウジングに長尺状基板を当接し、ハウジングの仮接着材注入孔より速乾性の接着材を注入してハウジングに長尺状基板を仮止めする工程、(3)前記長尺状基板が仮止めされたハウジングの接着材注入孔より接着材を注入し、長尺状基板をハウジングに固定する工程
【0010】
【作用】本発明の画像装置によれば、ハウジングに画像素子アレイを搭載した長尺状の基板を速乾性の接着材で仮止めすることからハウジングの所定位置に正確に画像素子アレイを搭載した長尺状の基板を固定することができ、また画像素子アレイを搭載した長尺状基板のハウジングへの固定を基板の長さ方向の中央部で行うことからハウジングと長尺状基板に外部から熱が印加されたとしても両者間に大きな熱応力が発生することはなく、その結果、画像素子アレイを搭載した長尺状の基板が湾曲することもない。従って、この画像装置を光プリンタヘッド等の画像形成装置に使用した場合、発光ダイオードの位置を常にレンズアレイの各セルフフォーカシングレンズの光軸の位置となすことができ、発光ダイオードの発する光を感光体に良好に照射させることが可能となって感光体に鮮明で、正確な潜像を形成することができる。
【0011】またこの画像装置をイメージセンサ等の画像読み取り装置等に使用した場合、レンズアレイに湾曲がないことから外部画像情報をレンズアレイを介して固体撮像素子アレイに正確に結像させることが可能となり、固体撮像素子アレイに外部画像情報に対応した正確な電気信号を発生させることもできる。
【0012】
【実施例】次に本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1及び図2は本発明の画像装置を画像形成装置としての光プリンタヘッドに採用した場合の一実施例を示し、1は長尺状の基板、2は発光ダイオードアレイ、3はレンズアレイ、4はハウジングである。
【0013】前記基板1はセラミック、ガラス、ガラスエポキシ等の電気絶縁材料から成り、その上面に複数個の発光ダイオードアレイ2が直線状に配列搭載されている。
【0014】前記基板1は発光ダイオードアレイ2を支持する支持部材としての作用を為し、例えば、酸化アルミニウム質焼結体のセラミックから成る場合には、アルミナ(Al2O3) 、シリカ(SiO2)、カルシア(CaO) 、マグネシア(MgO) 等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状となすとともこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート( セラミック生シート) を得、しかる後、前記セラミックグリーンシートを所定形状に打ち抜き加工するとともに高温( 約1600℃) で焼成することによって製作される。
【0015】また前記基板1 上に搭載されている発光ダイオードアレイ2 は複数個の発光ダイオード2aから成り、該発光ダイオード2aは外部電気信号に対応して個々に選択的に発光し、発光した光を感光体5 表面に照射することによって感光体5 に画像を形成するための潜像を形成する。
【0016】尚、前記発光ダイオード2aはGaAsP 系、GaP 系の発光ダイオードが使用され、例えば、GaAsP 系の発光ダイオードの場合には、まずGaAsの基板を炉中にて高温に加熱するとともにAsH3( アルシン) とPH3(ホスヒン) とGa( ガリウム) を適量に含むガスを接触させて基板表面にn 型半導体のGaAsP(ガリウムー砒素ーリン)の単結晶を成長させ、次にGaAsP 単結晶表面にSi3N4(窒化シリコン) の窓付膜を被着させるとともに該窓部にZn( 亜鉛) のガスをさらし、n 型半導体のGaAsP 単結晶の一部にZnを拡散させてp 型半導体を形成し、pn接合をもたすことによって形成される。
【0017】また前記発光ダイオード2aはB4の光プリンタヘッドの場合、2048個(1mm当たり8 個) が直線状に配列されており、具体的には64個の発光ダイオードを一単位とした発光ダイオードアレイ2 を32個、直線状に配列することによって2048個の発光ダイード2aが長尺状の基板1 上に配列されている。
【0018】更に前記発光ダイオード2aはその上部に所定間隔を隔てて長尺状のレンズアレイ3 が配されており、該レンズアレイ3 は各発光ダイオード2aが発する光を感光体5 表面に照射する作用を為す。
【0019】前記長尺状レンズアレイ3 は枠状ケーシング7 内にガラス、合成樹脂等から成る棒状のセルフフォーカシングレンズ8 を2列に直線状に多数個配置した構造を有しており、成形用型内にABS 樹脂やFRP の板で棒状のセルフフォーカシングレンズ8 を挟み込み2列に配列収容するとともにシリコン樹脂を滴下し、該樹脂を硬化させ、セルフフォーカシングレンズ8 の各々をシリコン樹脂で接着させるとともに枠状ケーシング7 を形成することによって製作される。
【0020】前記発光ダイオードアレイ2 が搭載された長尺状の基板1 及びレンズアレイ3はまた両者間に所定の間隔をもって、且つレンズアレイ3 の各セルフフォーカシングレンズ8 の光軸が発光ダイオードアレイ2 の各発光ダイオード2a上となるようにしてポリカーボネート樹脂から成るハウジング4 に固定されている。
【0021】前記ハウジング4 への基板1 及びレンズアレイ3 の固定はハウジング4 の下部内側に発光ダイオードアレイ2 が搭載された長尺状の基板1 を、また上部にレンズアレイ3 をそれぞれエポキシ系の接着材5a、5bを介し接着することによって行われる。
【0022】また前記ハウジング4への長尺状基板1の接着剤5aを介しての接着固定は具体的には、まずハウジング4 の長尺状基板1 が固定される領域で、基板1 の長さ方向の中央部が固定される位置に接着材注入孔a を、他の位置に仮接着材注入孔bを形成する。この接着材注入孔a 及び仮接着材注入孔b はハウジング4 に従来周知の孔明け加工法を採用することによってハウジング4 の所定位置に形成される。
【0023】次に前記接着材注入孔a 及び仮接着材注入孔b を形成したハウジング4 に長尺状基板1 の底面を当接させ、ハウジング4 に設けた仮接着材注入孔b より速乾性の接着材5cを注入してハウジング4 に長尺状基板1 を仮止めする。
【0024】前記速乾性の接着材5cは、例えばシアノアクリレート系接着材から成り、該接着材5cは3〜6秒程度の短時間で硬化することから長尺状基板1 をハウジング4の所定位置に正確に仮止めすることができ、これによって後述するハウジング4に長尺状基板1を硬化に時間がかかるエポキシ樹脂から成る接着材5aで固定したとしても長尺状基板1 はハウジング4 の所定位置に固定され、ズレを発生することはない。
【0025】そして次に前記長尺状基板1 が仮止めされたハウジング4 はその接着材注入孔a よりエポキシ樹脂等から成る接着材5aが注入され、該接着材5aを硬化させることによって長尺状基板1 とハウジング4 との接着固定が完了する。
【0026】尚、前記ハウジング4 に設けた接着材注入孔a は長尺状基板1 の長さ方向の中央部に位置する部位に形成されていることから長尺状基板1 のハウジング4 への接着固定は長尺状基板1 の長さ方向中央部において行われ、両端はフリーとなっている。そのためハウジング4 と長尺状基板1 に外部より熱が印加され、両者間に両者の熱膨張係数の相違に起因する熱応力が発生したとしても該熱応力は長尺状基板1 のハウジング4 への接着が長尺状基板1 の中央部の狭い面積であることから極めて小さなものとなり、その結果、前記応力によって長尺状基板1 に大きな湾曲を発生することは皆無となる。従って、ハウジング3 に固定された長尺状基板1 の上面に搭載されている発光ダイオード2aはその位置が常にレンズアレイ3 の各セルフフォーカシングレンズ8 の光軸上となり、発光ダイオード2aの発する光をレンズアレイ3 を介して感光体5 に正確、鮮明に照射することが可能となる。
【0027】かくして本発明の製造方法によって製作される画像装置は基板1上に直線状に配列された複数個の発光ダイード2aを外部電気信号に対応させて個々に選択的に発光させ、該発光した光をレンズアレイ3 を介し感光体5 に照射させることによって画像形成装置として機能する。
【0028】尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば前記長尺状基板1 はその長さ方向の中央部のみをハウジング4 に接着材5aを介して接着し固定したが、更に長尺状基板1 の両端部を弾性率が35Kgf/cm2 以上の軟質な接着材でハウジング4 に固定すれば、長尺状基板1 とハウジング4 の間に発生する熱応力を小さいものに維持したまま長尺状基板1 をハウジング4 に強固に固定することができる。従って、長尺状基板1 をハウジング4 に固定する際には長尺状基板1 の中央部をエポキシ系もしくはアクリル系の接着材5aで、両端を弾性率が35Kgf/cm2 以上の軟質な接着材、具体的にはシリコンゴムもしくはエポキシにゴムを混入したものから成る接着材で固定しておくことが好ましい。
【0029】また上述の実施例では光プリンタヘッド等の画像形成装置に使用する場合を例に採って説明したが、発光ダイオードアレイを固体撮像素子アレイに変えてイメージセンサ等の画像読み取り装置にも使用可能である。
【0030】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、ハウジングに画像素子アレイを搭載した長尺状の基板を予め速乾性の接着材で仮止めすることから長尺状基板をハウジングの所定位置に正確に接着固定することができ、また長尺状基板のハウジングへの固定を長尺状基板の長さ方向の中央部で行うことからハウジングと長尺状基板に外部から熱が印加されたとしても両者間に大きな熱応力が発生することはなく、長尺状基板に湾曲を生じさせることもない。従って、この製造方法によって製作された画像装置を光プリンタヘッド等の画像形成装置に使用した場合、基板の上面に搭載された発光ダイオードの位置を常にレンズアレイの各セルフフォーカシングレンズの光軸上に位置させることができ、発光ダイオードの発する光を感光体に良好に照射させることが可能となって感光体に鮮明で、正確な潜像を形成することができる。
【0031】またこの画像装置をイメージセンサ等の画像読み取り装置等に使用した場合、外部画像情報をレンズアレイを介して固体撮像素子アレイに正確に結像させることが可能となり、固体撮像素子アレイに外部画像情報に対応した正確な電気信号を発生させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像装置を画像形成装置としての光プリンタヘッドに採用した場合の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の発光ダイオードを搭載した基板とハウジングの接着固定を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・基板
2・・・・・・・発光ダイオードアレイ
2a・・・・・・発光ダイオード
3・・・・・・・レンズアレイ
4・・・・・・・ハウジング
5a、5b・・・接着材
5c・・・・・・・速乾性接着材
a ・・・・・・・接着材注入孔
b ・・・・・・・仮接着材注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】ハウジング内に画像素子アレイを搭載した長尺状の基板とレンズアレイとを所定間隔をあけて固定してなる画像装置であって、前記画像素子アレイを搭載した長尺状基板のハウジングへの固定が下記(1)乃至(3)の工程から成ることを特徴とする画像装置の製造方法。
(1)ハウジングの長尺状基板が固定される領域で、基板の長さ方向の中央部が固定される位置に接着材注入孔を、他の位置に仮接着材注入孔を形成する工程、(2)前記接着材注入孔及び仮接着材注入孔を形成したハウジングに長尺状基板を当接し、ハウジングの仮接着材注入孔より速乾性の接着材を注入してハウジングに長尺状基板を仮止めする工程、(3)前記長尺状基板が仮止めされたハウジングの接着材注入孔より接着材を注入し、長尺状基板をハウジングに固定する工程

【図2】
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【図1】
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【特許番号】第2766111号
【登録日】平成10年(1998)4月3日
【発行日】平成10年(1998)6月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−28628
【出願日】平成4年(1992)2月15日
【公開番号】特開平5−221016
【公開日】平成5年(1993)8月31日
【審査請求日】平成8年(1996)4月23日
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【参考文献】
【文献】特開 昭64−42247(JP,A)
【文献】特開 平3−118169(JP,A)
【文献】特開 昭62−211972(JP,A)
【文献】特開 平3−118169(JP,A)
【文献】特開 昭59−225970(JP,A)