説明

画像記録装置

【課題】フラッシュランプを用いた装置であって、画像全体における濃淡の不均一性を解消できる画像記録装置を、提供すること。
【解決手段】感熱媒体へ非接触で画像を書き込む機能を有する、画像記録装置10であって、フラッシュ発光を行って光を放射する、フラッシュランプ1と、フラッシュランプ1から放射された光を収束する、光学系2と、光学系2で収束された光の内の少なくとも近赤外線を通す、フィルタ3と、入力されている画像データを、フィルタ3を通った近赤外線を用いて、画像として投影する、画像投影装置4と、画像投影装置4から投影された画像を、感熱媒体20へ投射する、投射レンズ5と、を備えており、画像投影装置4が、画像の全領域内において蓄熱が相対的に大きく生じる特定領域、を投影するのに用いる近赤外線の光量、を減少させるよう制御する、光量制御手段を、有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱媒体に非接触で画像を書き込むことができる画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、接触式の画像記録装置、すなわち、サーマルヘッドなどを接触させることによって感熱媒体に対して画像の書き換えを行う装置が、示されている。
【0003】
しかしながら、接触式の装置には、種々の欠点があるため、非接触式の画像記録装置が開発されてきている。例えば、特許文献2には、感熱媒体に対して、COレーザーやYAGレーザーを照射して熱を加えることによって画像の書き換えを行う装置が、示されている。しかしながら、そのような装置では、画像が1次元的に描画されるので、書き込みに長時間を要し、また、使用するCOレーザーやYAGレーザーが高出力であるので、危険であり、更に、そのようなレーザーが高価であるので、作業コストが高い、という不具合があった。
【0004】
そこで、上記不具合を解消できる装置が、近年、開発されてきている。例えば、特許文献3、4には、フラッシュランプを用いて瞬時に2次元的な画像を描画することができる装置が、示されている。
【特許文献1】特開平5−41781号公報
【特許文献2】特開平7−186445号公報
【特許文献3】特開2000−19477号公報
【特許文献4】特開2000−141892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フラッシュランプを用いた装置では、次のような不具合があった。すなわち、感熱媒体に画像が定着するためには、描画された画像が、比較的大きな冷却速度で、すなわち、速やかに、冷却される必要がある。しかるに、ベタ塗りの画像を描画した際には、画像の中央領域における蓄熱が周辺領域における蓄熱よりも多い状態となるために、画像の中央領域が冷えにくくなり、すなわち、画像の中央領域の冷却速度が小さくなり、それ故に、画像の中央領域が十分に定着せず、したがって、画像全体における濃淡が不均一となっていた。
【0006】
本発明は、フラッシュランプを用いた装置であって、画像全体における濃淡の不均一性を解消できる画像記録装置を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、感熱媒体へ非接触で画像を書き込む機能を有する、画像記録装置であって、
フラッシュ発光を行って光を放射する、フラッシュランプと、
フラッシュランプから放射された光を収束する、光学系と、
光学系で収束された光の内の少なくとも近赤外線を通す、フィルタと、
入力されている画像データを、フィルタを通った近赤外線を用いて、画像として投影する、画像投影装置と、
画像投影装置から投影された画像を、感熱媒体へ投射する、投射レンズと、を備えており、
画像投影装置が、画像の全領域内において蓄熱が相対的に大きく生じる特定領域、を投影するのに用いる近赤外線の光量、を減少させるよう制御する、光量制御手段を、有することを特徴としている。
【0008】
なお、本発明は、更に、次のような構成を採用するのが好ましい。
【0009】
(a)光量制御手段が、上記特定領域を投影するのに用いる近赤外線の少なくとも一部の、投影時間を、他の領域に比して短くするよう、制御する。
【0010】
(b)光量制御手段が、上記特定領域を投影するのに用いる近赤外線の一部を、投影に用いないよう、制御する。
【0011】
(c)上記(a)において、
画像投影装置が、2次元マイクロ偏向ミラーアレイを備えており、各マイクロ偏向ミラーが、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かう「投影状態」と、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いるマイクロ偏向ミラーの少なくとも一部を、フラッシュランプの発光時間の一部において「非投影状態」に切り替えるよう、制御する。
【0012】
(d)上記(b)において、
画像投影装置が、2次元マイクロ偏向ミラーアレイを備えており、各マイクロ偏向ミラーが、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かう「投影状態」と、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いるマイクロ偏向ミラーの内の一部のマイクロ偏向ミラーを、当初から「非投影状態」に設定するよう、制御する。
【0013】
(e)上記(b)において、
画像投影装置が、多数の透過型液晶素子を備えており、各液晶素子が、近赤外線が透過して投射レンズに向かう「投影状態」と、近赤外線が透過せず且つ投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いる液晶素子の内の一部の液晶素子を、当初から「非投影状態」に設定するよう、制御する。
【0014】
(f)上記(b)において、
画像投影装置が、多数の反射型液晶素子を備えており、各液晶素子が、近赤外線が反射して投射レンズに向かう「投影状態」と、近赤外線が反射せず且つ投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いる液晶素子の内の一部の液晶素子を、当初から「非投影状態」に設定するよう、制御する。
【0015】
(g)フラッシュランプが、キセノンフラッシュランプである。
【0016】
(h)上記(g)において、
フラッシュ発光時間が、50ミリ秒以下である。
【0017】
(i)感熱媒体へ書き込まれた画像を非接触で消去する機能を、更に有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像の全領域内において蓄熱が相対的に大きく生じる特定領域、を投影するのに用いる近赤外線の光量が、減少するので、当該特定領域の蓄熱を低減できる。したがって、画像の全領域を、比較的大きな冷却速度で、すなわち、速やかに、冷却することができ、これにより、画像全体を定着させて、画像全体における濃淡を均一にできる。
【0019】
上記構成(a)又は(b)によれば、上記特定領域を投影するのに用いる近赤外線の光量を減少させることができる。
【0020】
上記構成(c)又は(d)によれば、2次元マイクロ偏向ミラーアレイを備えた画像投影装置を用いて、上記本発明を具体的に実行できる。
【0021】
上記構成(e)によれば、透過型液晶素子を備えた画像投影装置を用いて、上記本発明を具体的に実行できる。
【0022】
上記構成(f)によれば、反射型液晶素子を備えた画像投影装置を用いて、上記本発明を具体的に実行できる。
【0023】
上記構成(g)によれば、キセノンフラッシュランプが近赤外線成分を多く含んでいるので、フラッシュ発光を効率良く活用することができる。したがって、フラッシュ発光の発光時間をより短くでき、その結果、画像書き込み時間をより短くできる。
【0024】
上記構成(h)によれば、フラッシュ発光の発光時間が短いので、感熱媒体への蓄熱を抑制できる。
【0025】
上記構成(i)によれば、感熱媒体への画像の書き換えを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の画像記録装置の概略図である。この画像記録装置10は、感熱媒体20に対して非接触で画像を書き込む機能を有している。感熱媒体20は、例えば、非接触リライタブルペーパーである。画像記録装置10は、フラッシュランプ1と、光学系2と、フィルタ3と、画像投影装置4と、投射レンズ5と、を備えている。
【0027】
フラッシュランプ1は、具体的にはキセノンフラッシュランプであり、フラッシュ発光を行って光を光学系2に向けて放射するよう、設けられている。フラッシュ発光の光エネルギーは、発光電圧や発光時間を制御することによって、調節可能である。
【0028】
光学系2は、フラッシュランプ1から放射された光を、収束して、フィルタ3に送るよう、設けられている。
【0029】
フィルタ3は、光学系2で収束された光の内の、可視光線及び紫外線をカットして、少なくとも近赤外線を、通して、画像投影装置4へ送るよう、設けられている。
【0030】
画像投影装置4は、2次元マイクロ偏向ミラーアレイを備えており、フィルタ3を通過した近赤外線をマイクロ偏向ミラーで反射できるよう、設けられている。具体的には、画像投影装置4では、各マイクロ偏向ミラーが、−12度の角度と+12度の角度とに切り替えられることによって、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズ5に向かう「投影状態」と、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズ5に向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっている。よって、画像投影装置4は、入力されている画像データを、「投影状態」に設定されたマイクロ偏向ミラーで近赤外線を反射させることによって、画像として投射レンズ5に投影するようになっている。
【0031】
投射レンズ5は、画像投影装置4から投影された画像すなわち近赤外線の束を、感熱媒体20に投射するよう、設けられている。
【0032】
したがって、上記構成の画像記録装置10によれば、感熱媒体20に、画像が投射され、すなわち、画像を描画するための近赤外線が照射される。
【0033】
そして、本実施形態では、画像投影装置4が光量制御手段を有している。光量制御手段は、感熱媒体20に投射される画像の全領域において蓄熱が相対的に大きく生じる領域(以下、領域Sと称する)、を投影するのに用いる近赤外線の光量を、減少させるよう制御する。本実施形態の光量制御手段は、具体的には、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の投影時間を他の領域に比して短くする、という制御方法を採用している。
【0034】
次に、上記構成の画像記録装置の作動について説明する。
【0035】
装置を作動させると、フラッシュランプ1及び画像投影装置4が作動する。
【0036】
フラッシュランプ1が作動すると、フラッシュ発光が行われ、光が放射される。発光時間は、好ましくは50ミリ秒以下に制御される。フラッシュランプ1から放射された光は、光学系2によって収束され、フィルタ3に送られる。フィルタ3では、光学系2で収束された光から可視光線及び紫外線がカットされ、少なくとも近赤外線が、通されて、画像投影装置4へ送られる。
【0037】
一方、画像投影装置4が作動すると、入力されている画像データが、「投影状態」に設定されたマイクロ偏向ミラーで近赤外線を反射させることによって、画像として投射レンズ5に投影される。
【0038】
そして、画像投影装置4から投影された画像は、投射レンズ5によって、感熱媒体20に投射される。すなわち、感熱媒体20には、画像を描画するための近赤外線が照射される。この時の投射時間は、フラッシュランプ1の発光時間である。
【0039】
しかるに、画像投影装置4では、光量制御手段も作動している。そのため、領域Sを投影するのに用いるマイクロ偏向ミラーの内の少なくとも一部が、上記投影時間の一部において「非投影状態」に切り替えられる。マイクロ偏向ミラーが「非投影状態」になると、当該マイクロ偏向ミラーでは、近赤外線は感熱媒体20へ照射されない。このため、領域Sへ照射される近赤外線の光量が減少する。したがって、領域Sの蓄熱が、小さくなり、画像の他の領域の蓄熱と略同等となる。
【0040】
よって、画像の全領域が、比較的大きな冷却速度で、すなわち、速やかに、冷却されることとなり、これにより、画像全体が定着して、画像全体における濃淡が均一となる。
【0041】
しかも、キセノンフラッシュランプを用いており、キセノンフラッシュランプが近赤外線成分を多く含んでいるので、フラッシュ発光を効率良く活用することができる。したがって、フラッシュ発光の発光時間をより短くでき、その結果、画像書き込み時間をより短くできる。
【0042】
更に、フラッシュ発光の発光時間が短いので、感熱媒体20への蓄熱を抑制できる。
【0043】
(具体例)
次に、光量制御手段の作動を、図2及び図3を参照しながら、具体例を挙げて、以下に説明する。なお、図2は、光量制御手段を有していない場合の具体例(比較例と称する)を示し、図3は、光量制御手段が作動した場合の具体例(実施例1と称する)を示している。
【0044】
図2及び図3において、(a)は、フラッシュランプ1から放射された光の光量変化を示している。(a)の横軸は、時間経過を示している。時間は、T1〜T6で表示されている。(b)は、投射される画像の形態を、T1〜T6毎に示している。(c)は、感熱媒体20に定着していく画像の形態を、T1〜T6毎に示している。(d)は、感熱媒体20における画像の熱分布を、T1〜T6毎に示している。(d)においては、温度の高低が、右下に示されている表示パターンに従って、示されている。(e)は、(d)における熱分布のe−e断面を、T1〜T6毎に示している。なお、図2及び図3において示される画像は、「旗」の形態を有している。
【0045】
比較例においては、光量制御手段が作動しないので、図2の(b)のT2、T3で示すように、フラッシュランプ1の発光時間だけ、画像の全領域が近赤外線を用いて投影されている。すなわち、画像の全領域に対して近赤外線が照射されている。このため、(e)のT3で示すように、画像のベタ塗り部分Xの中央領域S1における蓄熱が、画像の他の領域に比して、大きくなっている。そのため、(d)のT3、T4、T5で示すように、中央領域S1は、他の領域に比して、熱が長く残っている。すなわち、中央領域S1は、速やかに冷却されない。それ故、(c)のT5、T6で示すように、中央領域S1の大部分は、画像として定着しない。したがって、比較例においては、(c)のT6に示すように、感熱媒体20に、中央領域S1の大部分が白抜きとなった画像が定着されることとなり、結果として、画像全体における濃淡が不均一となる。
【0046】
これに対して、実施例1においては、光量制御手段が作動しているので、図3の(b)のT2で示すように、フラッシュランプ1の発光時間の前半では、画像の全領域が近赤外線を用いて投影され、すなわち、画像の全領域に対して近赤外線が照射され、図3の(b)のT3で示すように、フラッシュランプ1の発光時間の後半では、画像の中央領域S1以外の領域が近赤外線を用いて投影され、すなわち、画像のベタ塗り部分Xの中央領域S1には近赤外線が照射されていない。このため、中央領域S1へ照射された近赤外線の光量が、比較例に比して、少なくなっている。このため、(e)のT3で示すように、画像の中央領域S1における蓄熱が、比較例の場合に比して小さくなっており、画像の他の領域と殆ど同等である。そのため、(d)のT3、T4で示すように、中央領域S1は、他の領域と共に、比較的速やかに冷却されていく。それ故、(c)のT4、T5、T6で示すように、中央領域S1も、画像として定着する。したがって、実施例1においては、(c)のT6に示すように、感熱媒体20に、画像全体が定着されることとなり、結果として、画像全体における濃淡が均一となる。
【0047】
[第2実施形態]
本実施形態は、第1実施形態に比して、画像投影装置4の光量制御手段による具体的な制御方法が異なるだけである。すなわち、本実施形態の光量制御手段は、具体的には、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の一部を、投影に用いない、という制御方法を採用している。
【0048】
次に、本実施形態の画像記録装置の作動について説明する。
【0049】
装置を作動させると、フラッシュランプ1及び画像投影装置4が作動する。
【0050】
フラッシュランプ1、光学系2、及びフィルタ3の作動は、第1実施形態と同じである。
【0051】
一方、画像投影装置4が作動すると、入力されている画像データが、「投影状態」に設定されたマイクロ偏向ミラーで近赤外線を反射させることによって、画像として投射レンズ5に投影されるが、光量制御手段も作動するので、領域Sを投影するのに用いるマイクロ偏向ミラーの内の少なくとも一部が、「非投影状態」に設定される。なお、「非投影状態」に設定されるマイクロ偏向ミラーは、領域Sにおける画像に欠損を生じさせないよう、分散された配置関係を有している。
【0052】
そして、画像投影装置4から投影された画像が、投射レンズ5によって、感熱媒体20に投射される。すなわち、感熱媒体20には、画像を描画するための近赤外線が照射される。
【0053】
したがって、本実施形態の画像投影装置4では、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の一部が、投影に用いられない。すなわち、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の一部が、感熱媒体20に照射されない。このため、領域Sへ照射される近赤外線の光量が減少する。したがって、領域Sの蓄熱が、小さくなり、画像の他の領域の蓄熱と略同等となる。
【0054】
よって、画像の全領域が、比較的大きな冷却速度で、すなわち、速やかに、冷却されることとなり、これにより、画像全体が定着して、画像全体における濃淡が均一となる。
【0055】
更に、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0056】
(具体例)
次に、光量制御手段の作動を、図2及び図4を参照しながら、具体例を挙げて、以下に説明する。なお、図2は第1実施形態で説明したとおりである。図4は、光量制御手段が作動した場合の具体例(実施例2と称する)を示している。
【0057】
図2及び図4において、(a)は、フラッシュランプ1から放射された光の光量変化を示している。(a)の横軸は、時間経過を示している。時間は、T1〜T6で表示されている。(b)は、投射される画像の形態を、T1〜T6毎に示している。(c)は、感熱媒体20に定着していく画像の形態を、T1〜T6毎に示している。(d)は、感熱媒体20における画像の熱分布を、T1〜T6毎に示している。(d)においては、温度の高低が、右下に示されている表示パターンに従って、示されている。(e)は、(d)における熱分布のe−e断面を、T1〜T6毎に示している。なお、図2及び図4において示される画像は、「旗」の形態を有している。
【0058】
比較例における作動は、第1実施形態で説明したとおりである。
【0059】
これに対して、実施例2においては、光量制御手段が作動しているので、図4の(b)のT2、T3に示すように、画像のベタ塗り部分Xの中央領域S1を投影するのに用いる近赤外線が、分散された配置関係で、間引かれている。すなわち、中央領域S1を投影するのに用いる近赤外線は、その一部が投影に用いられておらず、用いられていない近赤外線は、中央領域S1を投影するのに用いる近赤外線の束の中において、分散された配置関係を有している。このため、中央領域S1へ照射される近赤外線の光量が、比較例に比して、少なくなっている。このため、(e)のT3で示すように、画像の中央領域S1における蓄熱が、小さくなっており、画像の他の領域と殆ど同等である。そのため、(d)のT3、T4で示すように、中央領域S1は、他の領域と共に、比較的速やかに冷却されていく。それ故、(c)のT4、T5、T6で示すように、中央領域S1も、画像として定着する。したがって、実施例2においては、(c)のT6に示すように、感熱媒体20に、画像全体が定着されることとなり、結果として、画像全体における濃淡が均一となる。
【0060】
更に、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0061】
[第3実施形態]
図5は、本実施形態の画像記録装置の概略図である。本実施形態の画像記録装置10は、多数の透過型液晶素子を備えた画像投影装置4を用いた点のみが第1実施形態と異なっている。画像投影装置4において、各液晶素子は、近赤外線が透過して投射レンズ5に向かう「投影状態」と、近赤外線が透過せず且つ投射レンズ5に向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっている。この切り替えは、液晶素子の透過率を変えることによって行われる。したがって、本実施形態では、投射レンズ5は、画像投影装置4を透過して来た近赤外線の束を、感熱媒体20に投射するよう、設けられている。
【0062】
そして、本実施形態の画像投影装置4も、光量制御手段を有している。この光量制御手段も、感熱媒体20に投射される画像の全領域において蓄熱が相対的に大きく生じる領域(領域S)、を投影するのに用いる近赤外線の光量を、減少させるよう制御する。
【0063】
本実施形態の光量制御手段は、具体的には、画像の領域Sを投影するのに用いる液晶素子の内の一部の液晶素子を、当初から「非投影状態」に設定する、という制御方法を採用している。
【0064】
次に、本実施形態の画像記録装置10の作動について説明する。
【0065】
装置を作動させると、フラッシュランプ1及び画像投影装置4が作動する。
【0066】
フラッシュランプ1、光学系2、及びフィルタ3の作動は、第1実施形態と同じである。
【0067】
一方、画像投影装置4が作動すると、入力されている画像データが、「投影状態」に設定された液晶素子を透過する近赤外線によって、画像として投射レンズ5に投影されるが、光量制御手段も作動するので、領域Sを投影するのに用いる液晶素子の内の少なくとも一部が、「非投影状態」に設定される。なお、「非投影状態」に設定される液晶素子は、領域Sにおける画像に欠損を生じさせないよう、分散された配置関係を有している。
【0068】
そして、画像投影装置4から投影された画像が、投射レンズ5によって、感熱媒体20に投射される。すなわち、感熱媒体20には、画像を描画するための近赤外線が照射される。
【0069】
したがって、本実施形態の画像投影装置4では、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の一部が、投影に用いられない。すなわち、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の一部が、感熱媒体20に照射されない。このため、領域Sへ照射される近赤外線の光量が減少する。したがって、領域Sの蓄熱が、小さくなり、画像の他の領域の蓄熱と略同等となる。
【0070】
よって、画像の全領域が、比較的大きな冷却速度で、すなわち、速やかに、冷却されることとなり、これにより、画像全体が定着して、画像全体における濃淡が均一となる。
【0071】
更に、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0072】
[第4実施形態]
本実施形態の画像記録装置の概略図は、図1と同じである。本実施形態の画像記録装置10は、多くの反射型液晶素子を備えた画像投影装置4を用いた点のみが第1実施形態と異なっている。画像投影装置4において、各液晶素子は、近赤外線が反射されて投射レンズ5に向かう「投影状態」と、近赤外線が反射されず且つ投射レンズ5に向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっている。この切り替えは、液晶素子の反射率を変えることによって行われる。したがって、本実施形態では、投射レンズ5は、画像投影装置4で反射されて来た近赤外線の束を、感熱媒体20に投射するよう、設けられている。
【0073】
そして、本実施形態の画像投影装置4も、光量制御手段を有している。この光量制御手段も、感熱媒体20に投射される画像の全領域において蓄熱が相対的に大きく生じる領域(領域S)、を投影するのに用いる近赤外線の光量を、減少させるよう制御する。
【0074】
本実施形態の光量制御手段は、具体的には、画像の領域Sを投影するのに用いる液晶素子の内の一部の液晶素子を、当初から「非投影状態」に設定する、という制御方法を採用している。
【0075】
次に、本実施形態の画像記録装置10の作動について説明する。
【0076】
装置を作動させると、フラッシュランプ1及び画像投影装置4が作動する。
【0077】
フラッシュランプ1、光学系2、及びフィルタ3の作動は、第1実施形態と同じである。
【0078】
一方、画像投影装置4が作動すると、入力されている画像データが、「投影状態」に設定された液晶素子で反射される近赤外線によって、画像として投射レンズ5に投影されるが、光量制御手段も作動するので、領域Sを投影するのに用いる液晶素子の内の少なくとも一部が、「非投影状態」に設定される。なお、「非投影状態」に設定される液晶素子は、領域Sにおける画像に欠損を生じさせないよう、分散された配置関係を有している。
【0079】
そして、画像投影装置4から投影された画像が、投射レンズ5によって、感熱媒体20に投射される。すなわち、感熱媒体20には、画像を描画するための近赤外線が照射される。
【0080】
したがって、本実施形態の画像投影装置4では、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の一部が、投影に用いられない。すなわち、領域Sを投影するのに用いる近赤外線の一部が、感熱媒体20に照射されない。このため、領域Sへ照射される近赤外線の光量が減少する。したがって、領域Sの蓄熱が、小さくなり、画像の他の領域の蓄熱と略同等となる。
【0081】
よって、画像の全領域が、比較的大きな冷却速度で、すなわち、速やかに、冷却されることとなり、これにより、画像全体が定着して、画像全体における濃淡が均一となる。
【0082】
更に、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0083】
[別の実施形態]
第1〜第4実施形態の画像記録装置は、感熱媒体20へ書き込まれた画像を非接触で消去する機能を、更に有するのが、好ましい。この消去機能は、書き込まれた画像の上に、蓄熱が多い画像を重ねるように投射することによって、実行される。なお、重ねられる画像の蓄熱は、画像の全領域の冷却速度が画像が定着しないほどに小さくなるような、大きさである。この実施形態によれば、感熱媒体20への画像の書き換えを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、フラッシュランプを用いた画像記録装置において、画像全体における濃淡の不均一性を解消できるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1実施形態の画像記録装置の概略図である。
【図2】光量制御手段を有していない場合の具体例すなわち比較例を説明するための図である。
【図3】第1実施形態の光量制御手段が作動した場合の具体例すなわち実施例1を説明するための図である。
【図4】第2実施形態の光量制御手段が作動した場合の具体例すなわち実施例2を説明するための図である。
【図5】第3実施形態の画像記録装置の概略図である。
【符号の説明】
【0086】
1 フラッシュランプ 2 光学系 3 フィルタ 4 画像投影装置 5 投射レンズ 10 画像記録装置 20 感熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱媒体へ非接触で画像を書き込む機能を有する、画像記録装置であって、
フラッシュ発光を行って光を放射する、フラッシュランプと、
フラッシュランプから放射された光を収束する、光学系と、
光学系で収束された光の内の少なくとも近赤外線を通す、フィルタと、
入力されている画像データを、フィルタを通った近赤外線を用いて、画像として投影する、画像投影装置と、
画像投影装置から投影された画像を、感熱媒体へ投射する、投射レンズと、を備えており、
画像投影装置が、画像の全領域内において蓄熱が相対的に大きく生じる特定領域、を投影するのに用いる近赤外線の光量、を減少させるよう制御する、光量制御手段を、有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
光量制御手段が、上記特定領域を投影するのに用いる近赤外線の少なくとも一部の、投影時間を、他の領域に比して短くするよう、制御する、請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
光量制御手段が、上記特定領域を投影するのに用いる近赤外線の一部を、投影に用いないよう、制御する、請求項1記載の画像記録装置。
【請求項4】
画像投影装置が、2次元マイクロ偏向ミラーアレイを備えており、各マイクロ偏向ミラーが、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かう「投影状態」と、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いるマイクロ偏向ミラーの少なくとも一部を、フラッシュランプの発光時間の一部において「非投影状態」に切り替えるよう、制御する、請求項2記載の画像記録装置。
【請求項5】
画像投影装置が、2次元マイクロ偏向ミラーアレイを備えており、各マイクロ偏向ミラーが、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かう「投影状態」と、マイクロ偏向ミラーで反射された近赤外線が投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いるマイクロ偏向ミラーの内の一部のマイクロ偏向ミラーを、当初から「非投影状態」に設定するよう、制御する、請求項3記載の画像記録装置。
【請求項6】
画像投影装置が、多数の透過型液晶素子を備えており、各液晶素子が、近赤外線が透過して投射レンズに向かう「投影状態」と、近赤外線が透過せず且つ投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いる液晶素子の内の一部の液晶素子を、当初から「非投影状態」に設定するよう、制御する、請求項3記載の画像記録装置。
【請求項7】
画像投影装置が、多数の反射型液晶素子を備えており、各液晶素子が、近赤外線が反射して投射レンズに向かう「投影状態」と、近赤外線が反射せず且つ投射レンズに向かわない「非投影状態」と、に切り替えられるようになっており、
光量制御手段が、画像の上記特定領域を投影するのに用いる液晶素子の内の一部の液晶素子を、当初から「非投影状態」に設定するよう、制御する、請求項3記載の画像記録装置。
【請求項8】
フラッシュランプが、キセノンフラッシュランプである、請求項1記載の画像記録装置。
【請求項9】
フラッシュ発光時間が、50ミリ秒以下である、請求項8記載の画像記録装置。
【請求項10】
感熱媒体へ書き込まれた画像を非接触で消去する機能を、更に有している、請求項1記載の画像記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate