説明

画像読取装置

【課題】キャリッジの固定や解除を行うときの操作を簡単に行うことができ、しかも、不用意に操作レバーを動かしてしまうことがない画像読取装置を提供する。
【解決手段】画像読み取りのため原稿載置面に沿って移動可能なキャリッジ3a,3eと、キャリッジ3a,3eの移動をロックするためのロック部材7と、キャリッジ3a,3eが内部に収容されるフレーム部材101,102と、を備え、ロック部材7は、フレーム部材101の外側に位置する操作部70と、フレーム部材101の内側に位置すると共に、キャリッジ3a,3eに設けられた切欠部300a,310aに対して係合可能なロック部71と、ロック部71を切欠部300a,310aに対するロック位置とロック解除位置との間で回転して移動できるように支持するための回転軸72と、を有し、回転軸72が水平方向に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読み取りのため原稿載置面に沿って移動可能なキャリッジと、キャリッジの移動をロックするためのロック部材と、前記キャリッジが内部に収容されるフレーム部材と、を備えた画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ装置等の画像形成装置(デジタル複合機)と組み合わせて設けられる画像読取装置においては、原稿をセットするプラテン(原稿載置面)の下面に沿ってスキャナー装置が配置される。このスキャナー装置は、光源としてのランプ、複数のミラー、結像レンズ、CCD等の読み取りセンサー等により構成されている。読み取りの副走査方向に沿って移動可能なキャリッジを備えており、前記ランプ、複数のミラー等が搭載される。キャリッジを副走査方向に沿って移動させることで、プラテンに載置された原稿の画像を読み取ることができる。
【0003】
かかるキャリッジは、画像形成装置を輸送するときに、不用意に動いてしまわないように固定しておく必要がある。そのための固定機構について、例えば、下記特許文献1,2に開示されたものが公知である。
【0004】
特許文献1は、スキャナーの保持構造に関し、スキャナー装置を底部フレームに対して固定するロック装置を開示する。具体的には、スキャナー装置の下面に係合爪部材を突出させて設けると共に、底部フレームにロック部材を設ける。係合爪部材は垂直部分と水平部分とからなり、ロック部材に設けられた溝に上記垂直部分が係合される。この状態でロック部材を底部フレームに止めネジで固定する。
【0005】
特許文献2は、キャリッジの固定装置に関し、キャリッジに係合溝が設けられ、操作レバーを回転すれば、操作レバーの係合突起が上記係合溝に嵌まり込むことで固定する。操作レバーは、スキャナケースの上面の正面側に設けられており、その回転軸は垂直に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−228561号公報
【特許文献2】特開2007−79375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公知技術には次のような課題がある。特許文献1は、ロック部材を止めネジで固定する構成であるから、固定するときと解除時のいずれにおいても煩雑な作業が必要である。一方、特許文献2は、操作レバーを回転する操作によるものであるから、固定や解除は簡単に行うことができる。しかし、操作レバーは上面の正面側にあり、不用意に操作レバーを動かしてしまう可能性がある。特に、回転軸が垂直に設定されており、操作レバーの状態が固定状態か解除状態であるかを一見して識別しにくいという問題がある。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、キャリッジの固定や解除を行うときの操作を簡単に行うことができ、しかも、不用意に操作レバーを動かしてしまうことがない画像読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る画像読取装置は、
画像読み取りのため原稿載置面に沿って移動可能なキャリッジと、キャリッジの移動をロックするためのロック部材と、前記キャリッジが内部に収容されるフレーム部材と、を備えた画像読取装置であって、
前記ロック部材は、前記フレーム部材の外側に位置する操作部と、前記フレーム部材の内側に位置すると共に、前記キャリッジに設けられた被係合部に対して係合可能なロック部と、前記ロック部を前記被係合部に対するロック位置とロック解除位置との間で回転して移動できるように支持するための回転軸と、を有し、前記回転軸が水平方向に設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成による画像読取装置の作用および効果を説明する。画像読取装置を輸送する場合には、キャリッジをロック部材によりロックする。ロック部材は、操作部とロック部を備えており、操作部を回転することで、ロック部をロック位置とロック解除位置とに切り換えることができる。このように、操作部を回転するだけであるから、ロック操作と解除操作を容易に行うことができる。また、ロック部材を回転させるための回転軸が水平方向に設定されている。これにより、ロック位置とロック解除位置とで、操作部が表面から突出した状態と収容された状態とに切り換えることも容易になる。したがって、一見してキャリッジを固定した状態であるか否かを容易に確認することができる。その結果、キャリッジの固定や解除を行うときの操作を簡単に行うことができ、不用意に操作レバーを動かしてしまうこともなくすことができる。
【0011】
本発明において、前記ロック部が前記ロック解除位置にあるとき、前記操作部は、前記フレーム部材に形成された凹部内の空間に収容された状態になることが好ましい。
【0012】
画像読取装置が所定の場所に設置されたときは、ロック部をロック解除位置に切り換える。これにより、キャリッジが移動可能になり、画像の読み取りが可能になる。ロック解除位置にあるとき、操作部はフレーム部材に形成された凹部内の空間に収容された状態であるから、不用意に操作部に触れてしまうことがない。これにより、不用意に操作レバーを動かしてしまうことがなくなる。
【0013】
本発明において、前記フレーム部材は、前記キャリッジの下面側に設けられており、さらに、前記フレーム部材の下部に、読み取られた原稿画像が印刷された用紙が排出される排出部が配置され、前記操作部は、前記排出部に面していることが好ましい。
【0014】
この構成によると、操作部は、キャリッジの下側に配置されるので、外観的に目立たない位置に配置される。したがって、不用意に操作レバーを動かすことを確実になくすことができる。また、操作部は、用紙が排出される排出部に面しているので、ロック操作や解除操作を行うための空間部を確保することができ、操作を容易に行うことができる。このように、操作性の改善と、不用意な操作の抑制という相反する要求を簡単な構成により実現することができる。
【0015】
本発明において、前記ロック部材は、複数設けられることが好ましい。ロック部材を複数設けることで、より確実にキャリッジを固定することができる。
【0016】
本発明において、前記ロック部材は、少なくとも前記操作部と前記ロック部が樹脂で一体成型されていることが好ましい。一体成型で形成することで、部品点数を削減し構成も簡素化することができる。
【0017】
本発明において、前記ロック部が前記ロック位置にあるとき、前記操作部は前記凹部から突出した状態になることが好ましい。
【0018】
凹部から突出させた状態にすることで、キャリッジがロックされていることを視覚的に容易に確認することができる。
【0019】
本発明において、前記ロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置に夫々保持するためのクリック機構が設けられていることが好ましい。
【0020】
これにより、ロック位置とロック解除位置の夫々の位置でロック部材をその位置に確実に保持することができる。また、輸送中に不用意にロック状態が解除されてしまう不具合を防止することができる。
【0021】
本発明において、前記クリック機構は、前記回転軸に対して半径方向に延びる腕部に形成されたクリック突起と、クリック突起が挿脱可能な穴部により構成されることが好ましい。
【0022】
かかる腕部を形成することで、ロック部材に腕部を一体形成することが可能になる。また、腕部の撓み変形を利用して適度なクリック感触を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構成を示した概略断面図である。
【図2】画像読取部の内部構成を示す模式図
【図3A】ロック機構の構成を示す側断面図(ロック解除状態)
【図3B】ロック機構の構成を示す側断面図(ロック状態)
【図4A】ロック機構の構成を示す斜視図(ロック解除状態)
【図4B】ロック機構の構成を示す斜視図(ロック状態)
【図5A】ロック機構を内部からみた斜視図(ロック解除状態)
【図5B】ロック機構を内部からみた斜視図(ロック状態)
【図6】ロック機構の操作部を下方から見た外観斜視図
【図7】ロック部材の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る画像読取装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像読取装置1を備えた画像形成装置の内部構成を示した概略断面図である。この画像形成装置は、原稿供給装置(ADF)2、原稿読取部3、画像形成部4及び給紙部5を備えた複写機(デジタル複合機)である。
【0025】
<画像形成装置の内部構成>
ADF2は、原稿トレイ2aを備えており、当該原稿トレイ2a上に1枚の原稿を置き、又は、2枚以上の原稿を積層した状態で置くことができるようになっている。ADF2は、ピックアップローラ2b及び分離部(分離ローラとリタードローラの対)2cにより、原稿トレイ2a上に置かれた原稿を1枚ずつ送り出す。ADF2により送り出された原稿は、複数の搬送ローラ2d、2e、2fにより搬送路2gを搬送され、当該搬送路2gの途中で画像が読み取られた後、排出ローラ2hにより原稿排出トレイ2i上に順次排出される。
【0026】
原稿読取部3(フラットベッドスキャナー)は、原稿の画像を読み取るための第1キャリッジ(走査部)3aと第2キャリッジ(ミラーユニット)3eを備えている。ADF2により原稿読取部3に供給される原稿を読み取る際には、第1キャリッジ3aと第2キャリッジ3eが静止読取領域3bにおいて静止した状態で、搬送路2gの途中に位置する読取ポイントにおいて原稿の画像を読み取る。この画像読取装置1では、原稿読取部3の上方に設けられたガラス板(原稿載置面に相当)3d上に原稿を載置することにより、第1キャリッジ3aと第2キャリッジ3eを移動読取領域3cで移動させながら原稿の画像を読み取ることもできる。なお、原稿の画像面は、原稿トレイ2a上で上側の面、又は、ガラス板3d上で下側の面を向くように載置する。
【0027】
上記の第1キャリッジ3aと第2キャリッジ3eは、それぞれ不図示のモーター-により駆動されるベルトに連結されており、モーターの回転に伴い、水平方向に移動する。
【0028】
画像形成部4は、感光体ドラム4a、帯電器4b、光書込みユニット4c、現像器4d、転写器4e及び定着器4fを備え、電子写真方式により記録紙Pに画像を形成する。感光体ドラム4aの表面には感光体が形成されており、画像形成時には、回転駆動される感光体ドラム4aの表面が帯電器4bにより一様に帯電される。光書込みユニット4cは、走査部3aで読み取った原稿の画像情報などに基づいて、LED(Light-Emitting Diode)又はレーザ光源から光を出力する。帯電器4bにより一様に帯電された感光体ドラム4aの表面には、光書込みユニット4cから出力される光で露光されることにより、静電潜像が形成される。
【0029】
静電潜像が形成された感光体ドラム4aの表面には、現像器4dから供給されるトナーが付着することによりトナー像が形成され、このトナー像が転写器4eを用いて記録紙Pに転写される。トナー像が転写された記録紙Pは、定着器4fにより加熱処理及び加圧処理が施された後、排出ローラ4gから排出トレイ4h(排出部に相当)上に排出される。排出トレイ4hの上部は、用紙排出空間部Sとして機能し、排出された記録紙Pを取り出しやすくするための空間を形成している。
【0030】
給紙部5は、記録紙Pを収容するための記録紙カセット6を備えており、この記録紙カセット6内に設けられた支持板9上に、記録紙Pを積層した状態で収容することができるようになっている。支持板9は、その一端部に設けられた支軸9aを中心に回転可能となっており、支軸9a側とは反対側の端部が圧縮ばね9bによって上方へ付勢されることにより、最上部の記録紙Pが給紙ローラ9cに対して押圧される。この状態で給紙ローラ9cが回転駆動されることにより、記録紙カセット6内に収容されている記録紙Pが、給紙ローラ9cと分離パッド(図示せず)によりそれぞれ分離されて搬送路12に1枚ずつ送り出される。
【0031】
搬送路12には、1つ又は複数の搬送ローラ13が設けられている。記録紙カセット6から1枚ずつ送り出される記録紙Pは、搬送ローラ13により搬送路12内を搬送され、画像形成部4へと送られる。そして、レジストローラ14により記録紙Pは感光体ドラム4aの直前で一旦停止され、感光体ドラム4aに形成されるトナー像を転写させるタイミングに合わせて送り出される。
【0032】
上記のような原稿読取部3、画像形成部4及び給紙部5は、筺体1a内に収容されており、当該筺体1aの上面に上記ガラス板3dが形成されている。ADF2は、筺体1aの上面に対して上下に開閉可能に取り付けられている。したがって、ガラス板3d上に置かれた原稿を走査部3aで読み取る場合には、ADF2を閉じることにより、当該ADF2とガラス板3dとの間に原稿を挟むことができるようになっている。
【0033】
<画像読取部の構成>
図2により原稿の画像情報を読み取るための機構を説明する。ケース本体100の上部には、ガラス板3dが左右方向にわたって設けられ、原稿120がセットされる。ガラス板3dの左側は、絶縁板31で遮蔽されている。
【0034】
第1キャリッジ3aは、光源32と反射ミラー33aを備えており、副走査方向(図面の左右方向)に沿って定速で移動可能に構成されている。光源32からの照射光は、原稿面に導かれる。原稿面からの反射光は、反射ミラー33aを介して、第2キャリッジ3eへと導かれる。
【0035】
第2キャリッジ3eも副走査方向に沿って定速で移動可能に構成されており、2つの反射ミラー34a,34bを備えている。反射光は、CCDラインセンサー35(画像読取センサーに相当)へと導かれる。CCDラインセンサー35は、主走査方向(画像形成装置の前後方向)に沿って多数のセンサーアレイを備えている。なお、画像読取センサーは、CCDでなくてもよく、例えば、CMOSであってもよい。
【0036】
光源32の光が原稿面を照射し、その反射光が反射ミラー33aで反射して、さらに、2つの反射ミラー34a,34bを経由して、CCDラインセンサー35に到達する。これにより、原稿120の主走査方向における画像情報(1ライン分)を読み取ることができる。なお、第1キャリッジ3aは第2キャリッジ3eの2倍の速度で2倍の距離を副走査方向に移動する。これにより、原稿からCCDラインセンサー35までの光路長を一定に保持する。
【0037】
第1キャリッジ3aと第2キャリッジ3eは、それぞれ不図示のモーターにより駆動されるベルトに連結されている。モーターを回転させることで、それぞれのキャリッジ3a,3eを副走査方向に移動させることができる。
【0038】
キャリッジ3a,3eは、ケース本体100の内部に収容されている。ケース本体100は、少なくとも、キャリッジ3a,3eの下側に位置する水平姿勢の第1フレーム部材101と、キャリッジ3a,3eの左側方に位置する垂直姿勢の第2フレーム部材102を備えている。第1フレーム部材101と第2フレーム部材102は、別部材で構成してもよいし、一体の部材で構成してもよい。第1フレーム部材101と第2フレーム部材102は、金属製のプレートで作成してもよいし、樹脂成形で作成してもよい。第1フレーム部材101の下側には排出トレイ4hが位置し、両者の間の空間が用紙排出空間部Sに相当する。
【0039】
キャリッジ3a,3eは、画像情報の読み取りのために副走査方向に移動させる必要があるが、画像形成装置を輸送するときには、動かないように固定させる必要がある。輸送で移動するときに、キャリッジ3a,3eに衝撃等が加わり、キャリッジ3a,3e内の部品が破損する可能性があるからである。また、衝撃等が加わることで、キャリッジ3a,3eの図略の駆動ベルトとの固定位置がずれ、読み取りの光路がずれてしまう可能性もあるからである。そこで、輸送中はキャリッジ3a,3eが移動しないように固定するためのロック部材が設けられている。
【0040】
<キャリッジのロック機構の構成>
次に、キャリッジ3a,3eを固定するためのロック機構について説明する。図2に示すように、本体ケース100の内部の左端にロック機構を構成するロック部材7が配置される。ロック部材7は、水平方向に設定された回転軸芯7a周りに回転可能に支持されている。ロック部材7の操作部70は、第1フレーム部材101の外側に位置する。ロック部材7のロック部71は第1フレーム部材101の内側に位置する。
【0041】
図3は、図2のD−D断面図であり、左の側面側から見たロック機構の構成を示す図である。図3Aはロック解除状態を示し、図3Bはロック状態を示す。図4は、左の側面側から見たロック機構の構成を示す斜視図である。図4Aはロック解除状態を示し、図4Bはロック状態を示す。図5は、本体フレーム100の内部から見たロック機構の構成を示し、図5Aはロック解除状態を示し、図5Bはロック状態を示す。図6は、ロック部材7の操作部70を下側から見た図である。図7は、ロック部材の形状を示す斜視図である。
【0042】
図7に示すように、ロック部材7は、全体が樹脂(他に、金属でもよい)により一体成型され、一つの部品により構成される。ロック部材7は、操作部70とロック部71を備えている。操作部70は、組み立てられたとき、第1フレーム部材101の下側(外側)に位置する。ロック部71は、組み立てられたとき、第1フレーム部材101の内側(内部)に位置する。
【0043】
ロック部71は、最も先端に第1ロック爪71aを有し、その内側に第2ロック爪71bを有する。第2ロック爪71bの中央部には、リブ71cが形成されている。リブ71cは、第1ロック爪71aに面した位置に形成される。ロック本体部71dは、所定の強度を有するように形成され、その先端部に、第1ロック爪71aと第2ロック爪71bが一体的に成型される。
【0044】
前述のように、ロック部材7は、水平方向に設定される回転軸芯7aの周りに回転可能に組み立てられる。この回転軸芯7aに対応して回転軸72が設けられ、この回転軸72に対して操作部70とロック部71が一体的に形成される。
【0045】
回転軸72の端部には、半径方向に延びる腕部73が一体成型される。腕部73の先端には、クリック機構を構成するクリック突起73aが形成される。クリック突起73aは、ほぼ円錐台状の突起として形成される。円錐台の先端は、ドーム状に形成される。回転軸72の両端部には、嵌合部72a,72bが設けられる。
【0046】
図7に示すロック部材7は、操作部70を手で操作することで、キャリッジ3a,3eを固定するロック位置と、キャリッジ3a,3eの固定を解除するロック解除位置の間を切り換え可能にする。画像形成装置を輸送するときは、ロック部材7をロック位置にしてキャリッジ3a,3eが不用意に動かないように固定する。画像形成装置を所定の場所に設置して使用するときは、キャリッジ3a,3eが移動できるようにロック部材7をロック解除位置にする。
【0047】
図3A,図4Aに示すように、ロック解除位置において、ロック部材7は全体的に水平姿勢となっている。このとき、操作部70は、第1フレーム部材101に形成された凹部101aに収容された状態になっている。収容された状態では、操作部70は、第1フレーム部材101の表面から突出しない。したがって、画像形成装置を使用するユーザーが不用意に操作部70に触れてしまうことがない。特に、図示するようにカバーシート8をかぶせることで、より確実に操作部70にユーザーが触れることを防止することができる。ロック部材7は、画像形成装置を使用している時は、操作する必要がないので、カバーシート8をかぶせておいても問題はない。カバーシート8は、両面テープや粘着剤等により第1フレーム部材101の表面に貼り付けることができる。
【0048】
図3B,図4Bは、ロック部材7をロック位置にした状態である。図4に示すように、キャリッジ3a,3eを構成する部材として、第1支持プレート300と第2支持プレート310が設けられている。第1支持プレート300は、第1キャリッジ3aに設けられており、第2支持プレート310は、第2キャリッジ3eに設けられている。
【0049】
第1支持プレート300には、被係合部として機能する切欠部300aが2か所設けられている。同様に、第2支持プレート310にも、被係合部として機能する切欠部310aが2か所設けられている。2箇所の被係合部に対応してロック部材7も2つ設けられている。ロック部材7は、画像形成装置の前後方向に2か所並べて配置されている。ロック部材7の配置個数は、2つに限定されるものではなく、1つでもよいし、3つ以上配置してもよい。ロック部材7を複数設けることで、より確実にキャリッジ3a,3eを固定させることができる。
【0050】
図示するように、ロック部材7の第1ロック爪71aは、上側の第1支持プレート300に係合し、第2ロック爪71bは、下側の第2支持プレート310に係合する。各切欠部300a、310aの大きさは、ロック部材7のロック部71の移動軌跡に干渉しない程度の大きさに設定すればよい。
【0051】
図3Bに示すように、ロック位置において、ロック部材7は垂直姿勢になり、操作部70は、凹部101aから突出した状態になる。すなわち、操作部70は、第1フレーム部材101の表面から突出した状態になる。このように、ロック位置とロック解除位置で操作部70の突出量が異なるように設定されるので、ロック状態か否かを容易に視認することができる。
【0052】
図6は、第1フレーム部材101の下側から、ロック部材7を見た斜視図である。第1フレーム部材101の下側は、画像形成装置を使用するときは、見えにくい位置にあるので、ユーザーが不用意にロック部材7を操作してしまうことはない。前述のようにカバーシート8を設けることで、より確実にユーザーによる誤操作を防止することができる。ただし、操作部71が突出しているか否かの確認は容易に行うことができる。また、操作部71は、前述のように、排出トレイ4hの上部、すなわち、用紙排出空間部Sに面しているので、ロック部材7を操作するときは、簡単な操作で行うことができる。
【0053】
図5により、ロック部材7を保持するためのクリック機構について説明する。ロック部材7の回転軸72の一端部にある嵌合部72bは、第1フレーム部材101に一体形成された軸受穴101bに嵌合される。第1フレーム部材101の凹部101aを形成するために、立壁101cが形成され、この立壁101cに軸受穴101bが形成される。また、回転軸72の他端部にある嵌合部72aも第2フレーム部材102に形成された軸受穴(不図示)に嵌合される。これにより、ロック部材7は回転軸72の両端部が確実に支持され、操作性を確保している。
【0054】
ロック部材7の腕部73に形成されたクリック突起73a(図7参照)が嵌合するクリック穴102a,102bが第2フレーム部材102に形成されている。ロック部材7をロック位置で保持するためのクリック穴102bと、ロック解除位置で保持するためのクリック穴102aが形成される。クリック突起73aの形状に対応して、クリック穴102a,102bにも円錐台状のテーパが形成され、無理な力を要することなくクリック穴102a,102bからの脱出を可能にしている。腕部73は片持ち梁として形成されるので、弾性変形しやすく、ロック部材7の操作の感触を向上させている。
【0055】
画像形成装置を輸送するときは、キャリッジ3a,3eが不用意に動くことを防止するために、ロック部材7をロック位置にセットする(図3B,図4B,図5B)。画像形成装置を所定の場所に設置した後、ロック部材7をロック解除位置に移動させる(図3A,図4A,図5A)。これにより、キャリッジ3a,3eが移動可能な状態になる。ロック部材7をロック解除位置に移動させた後、第1フレーム部材101の凹部101aにカバーシート8を貼り付ける。これにより、外観側からロック部材7の操作部70が見えなくなり、操作部70を誤操作することを防止することができる。
【0056】
<別実施形態>
本実施形態において、ロック部材7の回転方向は、図3に示す側面から見れば時計方向であるが、これを反時計方向になるように構成してもよい。
【0057】
本実施形態において、2キャリッジ方式の原稿読取部3を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、CCD(Charge Coupled Devices)またはCIS(Contact Image Sensor)を1つのキャリッジに搭載して構成した原稿読取部の場合にも、本発明に係るロック機構を鄭要することができる。
【符号の説明】
【0058】
3a 第1キャリッジ
3e 第2キャリッジ
7 ロック部材
7a 回転軸芯
8 カバーシート
70 操作部
71 ロック部(係合部)
72 回転軸
73 腕部
73a クリック突起
101 第1フレーム部材
101a 凹部
102 第2フレーム部材
102a,102b クリック穴
300 第1支持プレート
300a 切欠部(被係合部)
310 第2支持プレート
310a 切欠部(被係合部)
S 用紙排出空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読み取りのため原稿載置面に沿って移動可能なキャリッジと、キャリッジの移動をロックするためのロック部材と、前記キャリッジが内部に収容されるフレーム部材と、を備えた画像読取装置であって、
前記ロック部材は、
前記フレーム部材の外側に位置する操作部と、
前記フレーム部材の内側に位置すると共に、前記キャリッジに設けられた被係合部に対して係合可能なロック部と、
前記ロック部を前記被係合部に対するロック位置とロック解除位置との間で回転して移動できるように支持するための回転軸と、を有し、前記回転軸が水平方向に設定されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記ロック部が前記ロック解除位置にあるとき、前記操作部は、前記フレーム部材に形成された凹部内の空間に収容された状態になることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記フレーム部材は、前記キャリッジの下面側に設けられており、さらに、前記フレーム部材の下部に、読み取られた原稿画像が印刷された用紙が排出される排出部が配置され、前記操作部は、前記排出部に面していることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ロック部材は、複数設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記ロック部材は、少なくとも前記操作部と前記ロック部が樹脂で一体成型されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記ロック部が前記ロック位置にあるとき、前記操作部は前記凹部から突出した状態になることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記ロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置に夫々保持するためのクリック機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記クリック機構は、前記回転軸に対して半径方向に延びる腕部に形成されたクリック突起と、クリック突起が挿脱可能な穴部により構成されることを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−70113(P2011−70113A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223100(P2009−223100)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】