説明

画像読取装置

【課題】見開き原稿を読み取る際に,読取部を効率的に移動させる画像読取装置を提供すること。
【解決手段】MFP100は,書籍等の見開き状態の原稿を読み取ると,原稿の左側ページと右側ページとの出力順を決定する(S101)。そして,その原稿を読み取る際,左側ページを先に出力する右開きであれば,イメージセンサ15の読取方向を左側ページから右側ページに向かう方向とする。一方,右側ページを先に出力する左開きであれば,イメージセンサ15の読取方向を右側ページから左側ページに向かう方向とする。そして,その読取方向にイメージセンサ15を移動させながら,両ページを順に読み取る(S103,S123)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿を読み取る画像読取装置に関する。さらに詳細には,本などの綴じられた原稿を見開きの状態で読み取り,読み取った原稿の画像データを分割して出力する機能を有する画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,本などの綴じられた原稿を見開きの状態で読み取る画像読取装置が実用化されている。画像読取装置は,読み取った原稿の画像データを分割し,分割後の画像データをページ単位で処理する。
【0003】
見開き状態の原稿(見開き原稿)を読み取る画像読取装置としては,例えば特許文献1に開示されている画像読取装置がある。特許文献1の画像読取装置では,見開き原稿が右開きか左開きかを判断し,先に読み取るページを右側ページにしたり,左側ページにしたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−18396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の画像読取装置には,次のような問題があった。すなわち,特許文献1にもあるように見開き原稿が右開きか左開きかに応じて読み取り順序を変更する場合,原稿を読み取る読取部の移動が複雑になることが懸念される。例えば,読取部の位置から遠いページを先に読み取り近いページを後に読み取る場合,読取部の移動制御には改善の余地がある。
【0006】
本発明は,前記した従来の画像読取装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,見開き原稿を読み取る際に,読取部を効率的に移動させる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像読取装置は,原稿を読み取る読取部と,前記読取部で読み取った前記原稿の画像データをページ単位に分割して出力する出力部と,前記原稿の一方のページと他方のページとの出力順を決定する決定部と,前記読取部が前記原稿を読み取る読取方向を,前記決定部にて先に出力すると決定されたページである先ページから,後に出力すると決定されたページである後ページに向かう方向に変更し,前記読取部を,前記読取方向に移動させながら,前記先ページと前記後ページとを順に読み取る読取処理を実行する実行部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像読取装置は,原稿を読み取った際,その原稿の画像データをページ単位に分割して出力する機能を有している。出力方法としては,例えば,用紙への印刷,電子ファイルとして保存,他の情報処理装置への送信が該当する。本発明の画像読取装置は,原稿の画像データをページ単位に分割して出力する場合,原稿の一方のページと他方のページとの出力順を決定する。そして,本発明の画像読取装置は,その原稿を読み取る際には,読取部の読取方向を,先ページから後ページに向かう方向とし,その方向に読取部を移動させながら,先ページと後ページとを順に読み取る。
【0009】
すなわち,本発明の画像読取装置は,原稿の画像データを分割して出力する際,読取部の読取方向を,各ページの出力順によって変更可能にする。これにより,どちらのページが先になったとしても,両ページの読み取りが完了する前に読取部が先ページの読取開始位置に戻ることなく,両ページの読み取りを完了することができる。そのため,制御がシンプルになる。
【0010】
また,本発明の画像読取装置は,前記読取部で読み取った前記原稿の画像データを記憶する記憶部と,前記記憶部に,所定量以上の空きがあるか否かを判断する判断部とを備え,前記実行部は,前記判断部が前記記憶部に所定量以上の空きがないと判断したことを条件として,前記読取方向の変更を行うとよい。読取方向を変更してから読み取りを開始する場合,読取部を反対側に移動させてから読み取りを開始する必要があることから,読み取った画像データの入手が遅くなる。そこで,記憶部の空き容量が多い場合には,2ページ分の画像データを記憶できる可能性が高いことから,読取方向の変更を行わず,出力順に関係なく近い方から読み取って画像データの入手の遅れを回避する。また,読取方向を変更せず後ページから読み取ったとしても,読取部の移動制御には変更ないことから,読取部の移動制御はシンプルである。一方,記憶部の空き容量が少ない場合には,2ページ分の画像データを記憶できる可能性が低く後ページから読み取ることが困難なことから,読取方向の変更を行って制御の複雑化を回避する。
【0011】
また,前記実行部は,読取ジョブを処理する途中で前記読取方向を変更した場合,その読取ジョブの終了命令があるまで前記読取方向を変更しないとよい。同一ジョブ内は同じ見開き方向であることが多い。そのため,読取方向の変更にかかる無駄な動作は避ける方が望ましい。
【0012】
また,前記実行部は,前記読取部がカラー読み取りを行うことを条件として,前記読取方向の変更を行うとよい。カラー読み取り以外(例えばモノクロ読み取り)の場合は,カラー読み取りと比較して読み取った後の画像データのサイズが小さい。そのため,2ページ分の画像データをメモリに記憶できる可能性が高い。よって,読取方向の変更を行わず,出力順に関係なく読取部に近い方から読み取る方が好ましい。
【0013】
また,前記実行部は,前記読取部が規定値以上の解像度での読み取りであることを条件として,前記読取方向の変更を行うとよい。低解像度の場合は,高解像度の場合と比較して読み取った後の画像データのサイズが小さい。そのため,2ページ分の画像データをメモリに記憶できる可能性が高い。よって,読取方向の変更を行わず,出力順に関係なく読取部に近い方から読み取る方が好ましい。
【0014】
また,本発明の画像読取装置は,前記原稿が右開きか左開きかの開き方向を判別する判別部を備え,前記決定部は,前記判別部が判別した開き方向に応じて,前記出力順を決定するとよい。また,上記画像形成装置の実行部は,前記判別部が前記開き方向の判別を完了した後,前記読取処理を実行するとよい。原稿の開き方向を自動決定することでユーザの手間を省くことができる。なお,自動判別方法としては,例えば,ページ番号解析,縦書き横書き解析,文字解析がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,見開き原稿を読み取る際に,読取部を効率的に移動させる画像読取装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態にかかるMFPの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したMFPのADFを開放した状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示したMFPの画像読取部の内部構成(図1のA−A断面)を示す断面図である。
【図4】図1に示したMFPの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】MFPのブックスキャン処理(第1の形態)の手順を示すフローチャートである。
【図6】左右読み取りの概要を示す図である。
【図7】右左読み取りの概要を示す図である。
【図8】読取方向を変更せずに右左読み取りを行う場合の概要を示す図である。
【図9】MFPのブックスキャン処理(第2の形態)の手順を示すフローチャートである。
【図10】MFPのブックスキャン処理(第3の形態)の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明にかかる画像読取装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像読取機能および画像形成機能を備えた複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0018】
[MFPの構成]
本形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部1と,原稿の画像を読み取る画像読取部2とを備えている。画像形成部1の画像形成方式は,電子写真方式であっても,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0019】
画像読取部2は,画像の読み取りを行う本体部10と,原稿の自動搬送を行う自動原稿供給装置(ADF:Auto Document Feeder)20とを備えている。ADF20は,本体部10の上方に位置するとともに一辺が本体部10と接続し,本体部10に対して回動自在に設けられている。そのため,画像読取部2は,ADF20によって本体部10の上面を開閉することができる。つまり,ADF20は,本体部10の上面を覆うカバーを兼ねる。なお,図2は,ADF20を開いた状態を示している。
【0020】
また,MFP100は,その前面側に,各種のボタン(例えば,スタートキー,ストップキー,テンキーの各ボタン)によって構成されるボタン群41,液晶ディスプレイからなる表示部42を備えた操作パネル40を備えている。このボタン群41や表示部42により,動作状況の表示やユーザによる操作の入力が可能になっている。
【0021】
[画像読取部の内部構成]
続いて,画像読取部2の内部構成について,図1,図2および図3を参照しつつ説明する。なお,図3は,ADF20を閉じた状態での,画像読取部2の断面構成を示しており,本体部10上にADF20が載置された状態になっている。
【0022】
本体部10は,その上面に,コンタクトガラス11,12を備えている。さらに,本体部10の内部であってコンタクトガラス11,12の下方には,原稿の画像を読み取るイメージセンサ15(読取部の一例)が設けられている。イメージセンサ15は,主走査方向(図3の奥行き方向)に光学素子が一列に並んで配置されており,原稿に向けて光を照射し,その原稿からの反射光を電気信号に変換して出力する。イメージセンサ15としては,例えば,CIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Device)が適用可能である。
【0023】
イメージセンサ15は,スライド軸13に対してスライド自在に支持されている。このスライド軸13は,副走査方向(図3中の左右方向)に延び,両端部が本体部10の筐体に固定されている。そのため,イメージセンサ15は,図3中の左右方向に移動可能に設けられている。
【0024】
ADF20は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ21と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ22とを備えている。具体的に,原稿トレイ21は,排出トレイ22の上方に配設されている。また,ADF20の内部には,原稿が搬送される経路として,原稿トレイ21と排出トレイ22とを連結する略U字状の搬送路25が設けられている。また,ADF20は,その下面に開口部23が設けられ,その開口部23から原稿押さえ板24が露出するように配置されている。この原稿押さえ板24は,ADF20を閉じた状態でコンタクトガラス12と対向している。
【0025】
ADF20は,原稿トレイ21に載置された原稿を1枚ずつ取り出し,その原稿を本体部10のコンタクトガラス12(以下,「ADFガラス12」とする)に対向する位置に搬送する。具体的には,原稿を原稿押さえ板24とコンタクトガラス12との間を通過させる。その後,その原稿を排出トレイ22上に排出する。
【0026】
また,イメージセンサ15を利用した原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿をコンタクトガラス11(以下,「FBガラス11」とする)上に載置する。その状態で,イメージセンサ15が副走査方向に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,複数の原稿を纏めて原稿トレイ21に載置する。そして,イメージセンサ15がADFガラス12に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,ADF20によって原稿が原稿押さえ板24の下側であってADFガラス12に対向する位置に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0027】
また,書籍等の綴じられた原稿を読み取る際には,図2に示したようにADF20を開放し,原稿を見開きの状態とし,読取面を下向きとしてFBガラス11上にセットする。そして,ADF20を開放したまま,ユーザが原稿を押さえた状態で,イメージセンサ15が副走査方向に移動することで,原稿を読み取る。
【0028】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34とを備えた制御部30を有している。制御部30は,画像形成部1と,画像読取部2と,操作パネル40とに,電気的に接続している。
【0029】
ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや画像処理プログラム,各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33(記憶部の一例)は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像読取部2で読み取った原稿の画像データやネットワークインターフェース37を介して送られてくる画像データを一時的に記憶する記憶領域として,利用される。NVRAM34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定や画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0030】
CPU31(出力部,決定部,実行部,判別部,判断部の一例)は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能,さらにはファイル作成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素を制御する。また,CPU31は,例えば,ROM32から読み出したプログラムに従って,画像読取部2にて読み取った原稿の画像データに加工処理を施す。
【0031】
ネットワークインターフェース37は,ネットワークに接続され,このネットワークインターフェース37を介して他の情報処理装置(不図示)とのデータ通信が可能になっている。また,USBインターフェース38は,USB接続が可能な周辺機器(不図示)に接続され,このUSBインターフェース38を介して外部の周辺機器等とデータ通信が可能になっている。
【0032】
[ブックスキャンモード]
続いて,MFP100のブックスキャンモードについて説明する。ブックスキャンモードは,本などの綴じられた原稿を,見開きの状態で読み取り,さらに読み取った原稿の画像データを記憶する電子ファイルを作成するモードである。
【0033】
ブックスキャンモードでは,フラットベッド方式によって,見開き状態の原稿(見開き原稿)を読み取る。具体的に,MFP100は,FBガラス11上に見開き原稿がセットされ,ブックスキャンモードの選択を受け付けると,画像読取部2によって見開き原稿を読み取る。
【0034】
MFP100は,見開き原稿の読み取り後,読み取りを継続するか否かをユーザに問い合わせる。読み取りの継続が選択された場合には,ユーザが次のページの見開き原稿をFBガラス11上にセットし,読み取り開始指示を入力するのを待つ。MFP100は,読み取り開始指示の入力を受け付けると,新たにセットされた見開き原稿を読み取る。読み取った画像データは,画像データを記憶できるファイル(例えばPDFファイル)形式に変換され,NVRAM34等の記憶手段に記憶される。なお,変換後の画像データを,所定の外部装置に送信するように構成してもよい。
【0035】
また,MFP100は,見開き原稿を左側ページと右側ページとに区別して読み取る。そして,2ページ分の画像データとしてページ順にファイルに記憶する。見開き原稿を読み取る際の,イメージセンサ15の制御については後述する。
【0036】
一方,読み取りの継続が所定期間以上選択されない,あるいはボタン群41中のストップキーが押下された場合には,ジョブの終了指示が入力されたと判断してブックスキャンモードを終了する。
【0037】
[ブックスキャン処理]
[第1の形態]
以下,上述のブックスキャンモードでの動作を実現するブックスキャン処理(出力部,決定部,実行部の一例)の手順について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。このブックスキャン処理は,ブックスキャンモードが選択されたことを契機にCPU31によって実行される。
【0038】
第1の形態のブックスキャン処理では,先ず,見開き原稿が右開きか左開きかの開き方向を取得する(S101,決定部の一例)。開き方向は,例えば,ユーザ入力によって取得する。この他,プレスキャンを行い,そのプレスキャンによって得られた画像データを解析することで開き方向を自動判別してもよい。なお,画像データに基づく開き方向の解析方法としては,ページ番号の抽出,縦書き横書きの判別,文字タイプ(アルファベットの場合は横書きで記載される傾向にあり,さらに横書きの書籍は左開きの傾向にある。一方,漢字の場合は縦書きで記載されることもあり,文字の並び(文字列の向き)から縦書きか横書きかを判別する。書籍は縦書きであれば右開き,横書きであれば左開きの傾向があることから判別可能となる)等の公知技術を利用すればよい。
【0039】
次に,開き方向が右開きか否かを判断する(S102)。右開きの場合には(S102:YES),原稿をFB面に載置した状態で原稿の背表紙から見て左側にあたるページである左側ページ,右側のページである右側ページの順に読み取る左右読み取りを行う(S103,実行部,出力部の一例)。左右読み取りでは,図6に示すように,先に出力される左側ページ9Lが,後に出力される右側ページ9Rよりも,イメージセンサ15の移動基準位置(ホームポジション)である位置Aに近い配置となる。
【0040】
具体的に,左右読み取りでは,先ず,イメージセンサ15が位置Aから,原稿90を挟んで位置Aの反対側に位置する位置Bに向けて移動を開始し,左側ページ9Lを読み取る(図6中の*1)。読み取った左側ページ9Lの画像データは,横向きの状態で読み取られたデータであることから,縦向きの画像データにするために回転処理が施され,所定のファイル形式に変換される。左側ページ9Lを読み取った後は,引き続き原稿90の中央から右側ページ9Rを読み取る(図6中の*2)。読み取った右側ページ9Rの画像データは,左側ページ9Lと同様に回転処理が施され,所定のファイル形式に変換される。右側ページ9Rを読み取った後は,イメージセンサ15を位置Aに戻す(図6中の*3)。この左右読み取りでは,図6に示したように,イメージセンサ15が位置Aから位置Bに向けて移動する間に原稿90が読み取られる。
【0041】
なお,左側ページ9Lと右側ページ9Rとに分割するには,両ページの境界を求める必要がある。この左側ページ9Lと右側ページ9Rとの境界は,例えば,S103やS123での本スキャンを行う前に,S101にて原稿を読み取るものの画像データを作成しないスキャンであるプレスキャンを行うことによって取得できる。この場合,そのプレスキャン時に,原稿90の副走査方向のサイズを取得する。そして,そのサイズから中間となる位置を境界として算出する。この他,境界を取得する方法としては,例えば,見開き原稿を読み取った場合,境界となる綴じ部は黒色領域となる。そのため,この黒色領域を抽出し,抽出された位置を境界としてもよい。また,S101でユーザ入力を行う場合には,原稿90のサイズも合わせて入力してもらい,そのサイズから境界を判断する。
【0042】
S103によって見開き原稿をページ順に読み取り,ページ順にファイルに出力した後,ジョブの終了指示を受け付けたか否かを判断する(S104)。ジョブの終了指示を受け付けた場合には(S104:YES),ブックスキャン処理を終了する。一方,読み取りの継続指示を受け付けた場合には(S104:NO),S103に戻って次の見開き原稿の読み取りを行う。
【0043】
一方,左開きの場合には(S102:NO),イメージセンサ15を位置Bに移動させる(S122)。そして,右側ページ,左側ページの順に読み取る右左読み取りを行う(S123,実行部,出力部の一例)。左開きでは,図7に示すように,先に出力される右側ページ9Rが,ホームポジションである位置Aから遠い配置となる。そこで,右左読み取りを行う前に,あらかじめイメージセンサ15を原稿90を挟んで位置Aの反対側に位置する位置Bに移動させておく(図7中の*1)。
【0044】
具体的に,右左読み取りでは,先ず,イメージセンサ15が位置Bから位置Aに向けて移動を開始し,右側ページ9Rを読み取る(図7中の*2)。読み取った右側ページ9Rの画像データは,横向きの状態で読み取られたデータであることから,縦向きの画像データにするための回転処理が施され,所定のファイル形式に変換される。右側ページ9Rを読み取った後は,引き続き原稿90の中央から左側ページ9Lを読み取る(図7中の*3)。読み取った左側ページ9Lの画像データは,右側ページ9Rと同様に回転処理が施
され,所定のファイル形式に変換される。左側ページ9Lを読み取った後は,イメージセンサ15を位置Bに戻す(図7中の*4)。この右左読み取りでは,図7に示したように,イメージセンサ15が位置Bから位置Aに向けて移動する間に原稿が読み取られる。
【0045】
S123によって見開き原稿をページ順に読み取り,ページ順にファイルに出力した後,ジョブの終了指示を受け付けたか否かを判断する(S124)。読み取りの継続指示を受け付けた場合には(S124:NO),S123に戻って次の見開き原稿の読み取りを行う。つまり,イメージセンサ15は,図7中の*2,*3,*4の移動を繰り返す。一方,ジョブの終了指示を受け付けた場合には(S124:YES),イメージセンサ15をホームポジションである位置Aに戻し(S125,図7中の*5),その後にブックスキャン処理を終了する。
【0046】
第1の形態では,見開き原稿の開き方向によって,イメージセンサ15が原稿を読み取る方向(読取方向)を変更している。例えば,イメージセンサ15から見て,先に出力するページ(先ページ)が後に出力するページ(後ページ)よりも遠い位置にある場合(本形態では左開きの場合),イメージセンサ15の読取方向を変更しないと,図8に示すように,先ず,先ページである右側ページ9Rの読み取り開始位置である位置Cまで移動し(図8中の*1),右側ページ9Rを読み取る(図8中の*2)。その後,後ページである左側ページ9Lを跨いでホームポジションである位置Aまで戻り(図8中の*3),その後に左側ページ9Lの読み取りを開始し(図8中の*4),また位置Aまで戻る(図8中の*5)といった煩雑な制御が必要となり,移動の無駄が多くなる。
【0047】
一方,第1の形態のように,読取方向を,原稿のページの出力順によって変更可能にすることで,左右のどちらのページが先になったとしても,両ページの読み取りが完了する前にイメージセンサ15を先ページの読取開始位置に戻すことなく両ページの読み取りを完了することができる(図6,図7参照)。そのため,制御がシンプルになる。
【0048】
なお,第1の形態のS103ないしS123では,イメージセンサ15を読取方向に移動させながら見開き原稿を読み取る際,イメージセンサ15の移動方向を変更することなく2ページ分を連続して読み取っているが,イメージセンサ15の移動動作はこれに限るものではない。例えば,先ページを読み終えた後,後ページの読取開始位置の調整のため,読取方向とは逆方向に僅かに移動する構成であってもよい。この構成であっても,先ページを読み終えた後,イメージセンサ15を先ページの読取開始位置に戻すことはない。つまり,この構成であっても,両ページの読み取りが完了する前にイメージセンサ15を先ページの読取開始位置に戻すことなく両ページの読み取りを完了することができる。
【0049】
[第2の形態]
続いて,第2の形態のブックスキャン処理(出力部,決定部,実行部,判断部の一例)の手順について,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。第2の形態のブックスキャン処理は,2ページ分の画像データが記憶できるか否かによって読取方向を変更するか否かを決定する。この点,左開きであれば読取方向を変更する第1の形態とは異なる。
【0050】
第2の形態のブックスキャン処理は,読み取り対象の見開き原稿が右開きの場合については第1のブックスキャン処理と同じである。そのため,S102にて左開きと判断された場合以降の処理について説明する。なお,第1の形態と同じ処理については,同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
第2の形態のブックスキャン処理では,左開きと判断された場合(S102:NO),左右2ページ分の画像データをRAM33に記憶できるか否かを判断する(S202,判断部の一例)。
【0052】
S202での判断方法としては,例えば,RAM33の空き容量が所定値よりも少ない場合には,2ページ分の画像データを記憶できないと判断できる。この他,カラー読み取りが設定されている場合には,読み取った後の画像データがモノクロ読み取りと比較して大きくなることが予想されることから,2ページ分の画像データを記憶できないと判断してもよい。この他,読み取りを行う際の解像度の設定が規定値以上の高解像度である場合にも,読み取った後の画像データが低解像度と比較して大きくなることが予想されることから,2ページ分の画像データを記憶できないと判断してもよい。なお,S202の判断では,これらの判断条件のうち1つのみを行ってもよいし,複数行ってもよい。複数行う場合には,1つでも2ページ分の画像データを記憶できないと判断した場合には,2ページ分の画像データを記憶できないと判断するとよい。
【0053】
2ページ分の画像データをRAM33に記憶できる場合には(S202:YES),左右読み取りを行う(S203)。すなわち,第1の形態のように読取方向を変更するのではなく,位置Aから位置Bに向かって,左側ページ,右側ページの順に,つまり出力順とは逆順に読み取る。先に読み取った左側ページ(出力順は右側ページよりも後のページ)の画像データは,回転処理等の画像処理が施された後,後に読み取る右側ページの読取が完了するまで出力処理することなくRAM33に保持される。
【0054】
右側ページの読み取りが完了した後は,後に読み取った右側ページを先に読み取った左側ページよりも先に出力する(S204)。これにより,出力順は,読取順とは逆順になる。
【0055】
S204によって出力順に画像データを出力した後,ジョブの終了指示を受け付けたか否かを判断する(S205)。ジョブの終了指示を受け付けた場合には(S205:YES),ブックスキャン処理を終了する。一方,読み取りの継続指示を受け付けた場合には(S205:NO),S202に戻って左右2ページ分の画像データをRAM33に記憶できるか否かを再判断する。S202の判断を再度行うことで,ジョブの処理中に他のジョブによってRAM33が使用され,メモリ不足に陥った場合であっても,ジョブの途中から読取方向を切り替えることができる。
【0056】
一方,2ページ分の画像データをRAM33に記憶できない場合には(S202:NO),S203の左右読み取りを行うことができない。そのため,第1の形態と同様に,S122に移行して,読取方向を変更して見開き原稿の読み取りを開始する。
【0057】
第2の形態では,左開きの際,左右2ページ分の画像データをRAM33に記憶できる場合には,読取方向を変更せず,出力順とは逆順に読み取った後,出力順に出力している。読取方向を変更してから読み取りを開始すると,イメージセンサ15を位置Bまで移動させてから読み取りを開始することになり,読み取った画像データの入手が遅くなる。そのため,左右2ページ分の画像データをRAM33に記憶できる場合には,読取方向の変更を行わず,出力順に関係なく近い方から読み取って画像データの入手の遅れを回避する。また,このような制御を行っても,イメージセンサ15の移動制御は,図6に示した右開きの制御と同じであり,シンプルである。
【0058】
一方,左右2ページ分の画像データをRAM33に記憶できない場合には,後に出力される左側ページ9Lから読み取ることが困難なことから,読取方向の変更を行って制御の複雑化を回避する。
【0059】
[第3の形態]
続いて,第3の形態のブックスキャン処理(出力部,決定部,実行部,判定部の一例)の手順について,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。第3の形態のブックスキャン処理は,原稿の読み取りを開始した後に開き方向を自動決定し,必要に応じて読取方向を変更する。この点,読み取りを開始する前に開き方向を決定する第1および第2の形態とは異なる。なお,第1ないし第2の形態と同じ処理については,同じ符号を付して説明を省略する。
【0060】
第3の形態のブックスキャン処理では,見開き原稿が,イメージセンサ15のホームポジションに近いページから遠いページの順にFBガラス11上に載置される開き方向(本形態では右開き)であると仮定して,左右読み取りを開始する(S103)。
【0061】
S103の後,処理中のジョブについて,開き方向の判定が済んでいるか否かを判断する(S301)。開き方向の判定が済んでいない場合には(S301:NO),S103で読み取った画像データを解析し,開き方向を自動判別する(S321)。画像データに基づく開き方向の解析方法としては,ページ番号の抽出,縦書き横書きの判別,文字タイプ(例えばアルファベット,漢字)等の公知技術を利用すればよい。なお,開き方向を判定できなかった場合(信頼性が高い結論が得られなかった場合を含む)は,結論を出さず,未判定のままの状態としてS102に移行する。
【0062】
S321の後,あるいは開き方向の判定が済んでいる場合には(S301:YES),S102に移行して右開きか否かを判断する。右開きの場合には(S102:YES),既に正しい順序で見開き原稿を読み取っているため,あらためて読み取りを行うことなく,ジョブの終了指示を受け付けたか否かを判断する(S104)。
【0063】
ジョブの終了指示を受け付けた場合には(S104:YES),ブックスキャン処理を終了する。一方,読み取りの継続指示を受け付けた場合には(S104:NO),S103に戻って次の見開き原稿の読み取りを行う。そして,開き方向の判定が完了していなければ(S301:NO),再度開き方向を判断する(S321)。
【0064】
一方,左開きの場合には(S102:NO),現在のジョブをキャンセルするか否かを問い合わせる(S322)。例えば,読み取った後の画像データにページ番号を付して出力している場合や,これまで読み取った画像データをNVRAM34に保存し,最終的に1つのファイルとして出力する場合には,これまで左右逆順で読み取りを行ったデータを利用するか否かが問題となる。そのため,ジョブをキャンセルするのか否かをユーザに問い合わせる。
【0065】
ジョブをキャンセルにする場合には(S322:YES),ブックスキャン処理を終了する。ブックスキャン処理を終了する際には,今まで読み取った画像データの情報がRAM33から消去される。ジョブをキャンセルしない場合には(S322:NO),今まで読み取った画像データの情報を消去することなく,継続してS122以降の処理を行う。S122以降の処理については,第1の形態における左開きであった場合(S102:NO)のS122以降の処理と同じである。
【0066】
第3の形態では,読み取った画像データに基づいて開き方向を確実に自動判別している。すなわち,第1の形態のように本スキャンの前に開き方向を自動判別する場合には,プレスキャン動作が必要となる。そして,そのプレスキャンのみで判別しなければならないため,画像内容によっては判別の精度を欠く。一方,第3の形態では,1回の読み取りで十分な判別ができなければ,次の読み取りで再度判別を行い,十分な判別ができるまで繰り返す。これにより,高精度の自動判別が期待できる。
【0067】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,MFPに限らず,複写機,スキャナ,FAX等,画像読み取り機能を備えるものであれば適用可能である。
【0068】
また,実施の形態では,ページ順を決定した画像データをファイルに登録しているが,ページ順を決定した画像データの出力先はファイルに限るものではない。例えば,画像形成部1に出力し,適正なページ順に印刷を行ってもよい。
【0069】
また,実施の形態では,ホームポジションが左側(図6中の位置A)にあるため,読取方向の初期値が左から右に向かう方向であり,左開きの場合,すなわち右側ページを先に出力する場合に,読取方向を変更しているが,ホームポジションは右側(図6中の位置B)にあってもよい。この場合,読取方向の初期値が右から左に向かう方向であり,右開きの場合,すなわち左側ページを先に出力する場合に,読取方向を変更する。
【符号の説明】
【0070】
2 画像読取部
11 FBガラス
15 イメージセンサ
20 ADF
30 制御部
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取る読取部と,
前記読取部で読み取った前記原稿の画像データをページ単位に分割して出力する出力部と,
前記原稿の一方のページと他方のページとの出力順を決定する決定部と,
前記読取部が前記原稿を読み取る読取方向を,前記決定部にて先に出力すると決定されたページである先ページから,後に出力すると決定されたページである後ページに向かう方向に変更し,前記読取部を,前記読取方向に移動させながら,前記先ページと前記後ページとを順に読み取る読取処理を実行する実行部と,
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像読取装置において,
前記読取部で読み取った前記原稿の画像データを記憶する記憶部と,
前記記憶部に,所定量以上の空きがあるか否かを判断する判断部と,
を備え,
前記実行部は,前記判断部が前記記憶部に所定量以上の空きがないと判断したことを条件として,前記読取方向の変更を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像読取装置において,
前記実行部は,読取ジョブを処理する途中で前記読取方向を変更した場合,その読取ジョブの終了命令があるまで前記読取方向を変更しないことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像読取装置において,
前記実行部は,前記読取部がカラー読み取りを行うことを条件として,前記読取方向の変更を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像読取装置において,
前記実行部は,前記読取部が規定値以上の解像度での読み取りであることを条件として,前記読取方向の変更を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する画像読取装置において,
前記原稿が右開きか左開きかの開き方向を判別する判別部を備え,
前記決定部は,前記判別部が判別した開き方向に応じて,前記出力順を決定することを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項6に記載する画像読取装置において,
前記実行部は,前記判別部が前記開き方向の判別を完了した後,前記読取処理を実行することを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249210(P2012−249210A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121194(P2011−121194)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】