説明

畜房用の間仕切り及び畜舎

【課題】 各畜房に収容する家畜の成育状況に応じて適切な環境に維持しつつ、当該家畜の糞尿を効率良く回収して排出する。
【解決手段】 畜舎10は、簀の子状の床面を有する複数の畜房12と、この簀の子状の床面の下方において複数の畜房12間を連通するように設けられ簀の子状の床面から落下した家畜の糞尿を排出する排出ピット14とを備えている。排出ピット14内には、排出ピット14を畜房12間で遮蔽する間仕切り20が設置されている。この間仕切り20は、上下動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に豚等の家畜を養育する畜舎及びその畜舎内に設置される複数の畜房の改良に関し、特に、各畜房に収容する家畜の成育状況に応じて適切な環境に維持しつつ、当該家畜の糞尿を適切に回収して排出することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
豚等の家畜を養育する豚舎その他の畜舎においては、畜舎内を複数の畜房に区切り、各畜房毎に、養育する豚等の生後日数等の成育状況に応じた適切な温度や湿度等に設定することが行われる。
【0003】
このような畜房を備えた畜舎においては、家畜が排出する糞尿を容易に回収して、各畜房内の衛生状態を保持するために、落下孔又は落下溝等の糞尿の落下のための開口を有する簀の子状の床面を設置し、この床面の下方に、落下した糞尿を排出するための排出ピットが設置される。
【0004】
この排出ピットは、通常、その床面が、中央に向けて下方に傾斜する斜面に形成され、その最深部に糞尿を排出するための溝やパイプその他の回収路が形成されている。簀の子状の床面から落下した家畜の糞尿は、この溝やパイプ等の回収路を通って回収される。
【0005】
この場合、この排出ピットは、複数の畜房から落下した糞尿を効率的に回収するため、複数の畜房に跨って、これらの複数の畜房の下方で連通して形成されている。更に、場合によっては、これらの複数の畜房の下方を横切るように排出ピットの一端から他端へ向けて排出ピットの壁面や底面に沿って糞尿スクレーパーを移動させて、排出ピットの斜面状の床面や側面、また、溝やパイプ等の回収路内に残存した糞尿を掻き集めて適切に回収することが行われる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
しかし、このように、糞尿の排出のための排出ピットが、複数の畜房の下方で連通していると、床上において各畜房を区切って各畜房毎に家畜の成育状況に応じた適切な温度環境等に設定しても、この下方の排出ピットを介して各畜房間で空気が流通するため、上記のように、各畜房に収容される豚等の家畜の成育状況に応じて設定した温度等の環境雰囲気が変化してしまい、家畜の成育に影響を与えるおそれがある。
【0007】
一方、この排出ピットを介しての空気の流通を遮断するために、各畜房毎に、排出ピットを設置することも考えられるが、これでは、糞尿の回収のために多大な手間と時間を要する問題が生じる。
【特許文献1】特開平11−89467号公報
【特許文献2】特開2007−289048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、各畜房に収容する家畜の成育状況に応じて適切な環境に維持しつつ、当該家畜の糞尿を効率良く回収して排出することができる畜房用の間仕切り及び畜舎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1.畜房用の間仕切り)
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、複数の畜房の簀の子状の床面の下方においてこれらの複数の畜房間を連通するように設けられ簀の子状の床面から落下した家畜の糞尿を排出する排出ピット内に設けられ、排出ピットを畜房間で遮蔽する畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、最下部に位置したときに排出ピットの底面に形成された糞尿排出用の溝又はパイプその他の回収路を除いた部分を遮蔽することを特徴とする畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、上下動することを特徴とする畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第3の解決手段において、排出ピット内を移動する糞尿スクレーパーの移動の障害とならないように上下動することを特徴とする畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第3又は第4のいずれかの解決手段において、ガイドに沿って上下動することを特徴とする畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第5の解決手段において、排出ピットを遮蔽するために最下部に移動した場合にも、上端側の一部が排出ピットの上縁よりも上方に又はガイド内に位置することを特徴とする畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第3乃至第6のいずれかの解決手段において、リミットスイッチにより上下動の範囲が設定されていることを特徴とする畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第3乃至第7のいずれかの解決手段において、糞尿スクレーパーの移動に連動して上下動することを特徴とする畜房用の間仕切りを提供するものである。
【0017】
(2.畜舎)
本発明は、上記の課題を解決するための第9の手段として、簀の子状の床面を有する複数の畜房と、この簀の子状の床面の下方において複数の畜房間を連通するように設けられ簀の子状の床面から落下した家畜の糞尿を排出する排出ピットとを備えた畜舎であって、排出ピット内に設けられ、排出ピットを畜房間で遮蔽する間仕切りを備えたことを特徴とする畜舎を提供するものである。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するための第10の手段として、上記第9の解決手段において、間仕切りは、最下部に位置したときに排出ピットの底面に形成された糞尿排出用の溝又はパイプその他の回収路を除いた部分を遮蔽することを特徴とする畜舎を提供するものである。
【0019】
本発明は、上記の課題を解決するための第11の手段として、上記第9又は第10のいずれかの解決手段において、間仕切りは、上下動することを特徴とする畜舎を提供するものである。
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するための第12の手段として、上記第11の解決手段において、排出ピット内を移動して糞尿を回収する糞尿スクレーパーを更に備え、間仕切りは、この糞尿スクレーパーの移動の障害とならないように上下動することを特徴とする畜舎を提供するものである。
【0021】
本発明は、上記の課題を解決するための第13の手段として、上記第11又は第12のいずれかの解決手段において、間仕切りは、ガイドに沿って上下動することを特徴とする畜舎を提供するものである。
【0022】
本発明は、上記の課題を解決するための第14の手段として、上記第13の解決手段において、間仕切りは、排出ピットを遮蔽するために最下部に移動した場合にも、上端側の一部が畜舎の床面よりも上方に又はガイド内に止まることを特徴とする畜舎を提供するものである。
【0023】
本発明は、上記の課題を解決するための第15の手段として、上記第11乃至第14のいずれかの解決手段において、間仕切りは、リミットスイッチにより上下動の範囲が設定されていることを特徴とする畜舎を提供するものである。
【0024】
本発明は、上記の課題を解決するための第16の手段として、上記第11乃至第15のいずれかの解決手段において、間仕切りは、糞尿スクレーパーの移動に連動して上下動することを特徴とする畜房を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記のように、排出ピットを各畜房間で遮蔽する間仕切りを備えているため、排出ピットを介して効率の良い糞尿回収を達成しつつ、とある畜房の空気が他の畜房に流入することがなく、各畜房毎に収容する家畜に適した環境雰囲気に維持することができる実益がある。
【0026】
この場合、本発明によれば、上記のように、間仕切りは、糞尿を回収する回収路を除いた部分を遮蔽するため、回収路を介した糞尿の回収を阻害することなく、各畜房毎に収容する家畜に適した環境雰囲気に維持することができる実益がある。
【0027】
また、本発明によれば、上記のように、間仕切りは、糞尿スクレーパーの移動の障害ととならないように上下動するため、通常は、各畜房間の排出ピットを介しての空気の流通を遮断しつつ、糞尿スクレーパーの通過時のみ上方に待機して糞尿の回収作業を適切に行うことができる実益がある。
【0028】
更に、この場合、本発明によれば、上記のように、間仕切りは、排出ピットを遮蔽するために最下部に移動した場合にも、上端側の一部がガイド内に止まるため、上方への移動の際に確実にガイドに案内されて上方へ変位することができ、円滑に上下動するので、糞尿スクレーパーの移動による糞尿の回収を適切に達成することができる実益がある。
【0029】
加えて、この場合、本発明によれば、上記のように、間仕切りは、糞尿スクレーパーの移動に連動して上下動するため、糞尿スクレーパーの通過時においてのみ上方へ退避して糞尿スクレーパーの円滑な移動を確保しつつ、それ以外は確実に各畜房間の空気の流通を遮断すると共に、手間を要することなく、間仕切りを移動させることができる実益がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1乃至図3は、本発明の畜舎10を示し、この畜舎10は、畜舎10内を区切って形成された複数の畜房12と、これらの複数の畜房12の床面12Aの下方に設けられて家畜の糞尿を排出する排出ピット14とを備えている。
【0031】
<1.畜房>
複数の畜房12は、図示の実施の形態では、図1に示すように、中央の通路16Aを境に左右に2列形成され、各列ごとに更に畜舎10の長手方向に区分けすることにより分割して形成されている。これらの畜房12は、床面12Aよりも上方において、少なくとも温度等の環境雰囲気を異なる設定する必要がある畜房12間では、壁面により相互に空気の流通が遮断されている。
【0032】
また、これらの各畜房12の床面12Aは、養育する豚等の家畜が排泄した糞尿が落下することができる図示しない落下孔又は落下溝を備えた簀の子状に形成されている。従って、家畜が畜房12内において排泄した糞尿は、この簀の子状の床面12Aから、下方の排出ピット14に落下して畜房12外へ排出される。このため、清掃等の場合を除き排泄の度に養育者自らが畜房12内から糞尿を除去する作業をする必要がない。なお、これらの複数の畜房12の個数は、特に限定はなく、必要に応じて設定することができる。また、図1において、符号16(16A乃至16C)は、養育者が各畜房12に行き来するための通路を、同じく図1及び図2において、符号15は、この通路16を各畜房12毎に区切る扉を示す。
【0033】
<2.排出ピット>
一方、排出ピット14は、これらの複数の畜房12の簀の子状の床面12Aから落下した家畜の糞尿を排出するものであり、複数の畜房12の床面12A下において上記各列毎に形成された複数の畜房12間を連通するように形成されている。即ち、糞尿は、いずれの畜房12から排出された糞尿であるかを問わず、全て、この各列毎に形成された同じ排出ピット14へ回収される。このため、養育者は、畜房12毎に糞尿を回収する必要がなく、この排出ピット14へ落下した糞尿を回収すれば足りる。従って、この排出ピット14は、図2及び図3に示すように、少なくとも畜房12の各列毎に対応して形成される。
【0034】
これらの各排出ピット14は、図2及び図3に示すように、その底面14Aが、左右の端部から下方に向けて傾斜した斜面状に形成されている。このため、床面12Aから落下した糞尿は、自重により、その斜面を落下して傾斜の最深部(図示の実施の形態では底面14Aの中央部)に収集される。このため、養育者が排出ピット14内に落下した糞尿を集める作業をすることなく、糞尿を容易に1箇所に集中させることができる。
【0035】
なお、図示の実施の形態では、この排出ピット14の底面14Aの勾配角度として、ある程度糞尿が充分に落下することができる急な角度を確保するため、図2及び図3に示すように、複数の畜房12の各列の下方において、更に、2列に分割して排出ピット14を形成し、各列毎に2つの排出ピット14、畜舎10全体では、計4列の排出ピット14を形成している。但し、排出ピット14の設置個数に特に限定はなく、必要に応じて設定することができる。
【0036】
また、これらの各排出ピット14の斜面状の底面14Aの最深部には、図2及び図3に示すように、糞尿排出用の回収路18が形成されている。従って、斜面状の底面14Aを落下した糞尿は、この回収路18に回収される。この糞尿の回収路18としては、例えば、塩化ビニルから形成され、底面14Aに臨む部分が開口したパイプ等を使用することができる。但し、回収路18の形成には、特に限定はなく、パイプの他、底面14Aに形成された溝をもって、回収路18とすることもできる。
【0037】
<3.糞尿スクレーパー>
この回収路18に回収された糞尿は、回収路18から排出ピット14の外へ回収することができるが、この場合、排出ピット14内を移動して糞尿を回収する図示しない糞尿スクレーパーにより、糞尿を回収することができる。この糞尿スクレーパーは、例えば、図示しないレール等の軌道上を、図1の矢印Aに示すように、4列の各排出ピット14の一端から他端に向けて、各列毎に連続して配置された複数の畜房12を横切るようにして移動する。この場合、上記のように、各排出ピット14は複数の畜房12間で連通しているため、各排出ピット14の一端から他端へ向けての1回の移動で、当該列の複数の畜房12から排出された糞尿を一度に回収することができる。
【0038】
なお、この糞尿スクレーパーは、少なくとも、回収路に18収集された糞尿を一方向へ向けて掻き出して回収することができれば、同時に、例えば、排出ピット14の底面14Aに沿った形状として、この底面14に残存した糞尿を掻き出して回収することもできる。更に、必要に応じて、排出ピット14の側面14Bに残存した糞尿を掻き出すように設定することもできる。いずれにせよ、この糞尿スクレーパーは、複数の畜房12を横切るようにして各排出ピット14の一端から他端へ移動して、排出ピット14内の糞尿を回収することができれば、その移動方式や形状等に特に限定はなく、必要に応じて、適宜設定することができる。
【0039】
<4.間仕切り>
一方、本発明の畜舎10においては、上記のように、各排出ピット14が複数の畜房12間の下方で連通するように形成されているため、この排出ピット14を介して各畜房12の空気その他の環境雰囲気が相互に流通するおそれがある。このため、本発明においては、図1乃至図3に示すように、この排出ピット14内に間仕切り20が設けられている。
【0040】
この間仕切り20は、図1に示すように、畜房12間に設置されて、排出ピット14を、これらの複数の畜房12間で遮蔽する役割を有する。従って、排出ピット14を介して効率の良い糞尿回収を達成しつつ、とある畜房12の空気の他の畜房12への流入が遮断され、各畜房12毎に収容する家畜に適した環境雰囲気に維持することができる。なお、このため、この間仕切り20は、異なる温度等の環境雰囲気に設定する必要がある畜房12a間に設置すれば足り、必ずしも、全ての畜房12間に設置することを必須とするものではない。また、このことから、本発明の間仕切り20による遮蔽とは、完全な気密状態までを意味するものではなく、各畜房12の温度等の環境雰囲気に重大な影響を与えない程度に空気の流通を遮断することができれば充分であり、間隙等を介しての若干の空気の流通まで不可避であることを要求するものではない。
【0041】
また、この間仕切り20は、図2及び図3に示すように、排出ピット14の底面14A及び側面14Bに沿った形状に形成された遮蔽板から形成することができる。これにより、間仕切り20は、図2及び図3における各右側の間仕切り20の位置において示すように、排出ピット14を遮蔽するよう最下部に位置したときでも、排出ピット14の底面14Aに形成された糞尿排出用の回収路18を除いた部分を遮蔽する。従って、間仕切り20は、回収路18を介した糞尿の回収は確保しつつ、複数の畜房12間の排出ピット14を介した空気の流通を遮断して、各畜房12の環境雰囲気を維持することができる。
【0042】
この場合、この間仕切り20は、本発明においては、図2及び図3に示すように、上下動するように設定されている。これにより、排出ピット14内の清掃等の作業を行う必要がある場合には、当該作業を容易に行うことができると共に、特に、上述した糞尿スクレーパーによる糞尿の回収作業を妨げることなく、各畜房12を設定した温度等の適切な環境雰囲気に維持することができる。
【0043】
従って、この間仕切り20の上下動は、特に、糞尿スクレーパーを設置する場合には、この糞尿スクレーパーの移動の障害とならないように設定する。即ち、少なくとも、糞尿スクレーパーが、間仕切り20を通過しようとする場合には、間仕切り20は、少なくとも糞尿スクレーパーが通過することができる程度に上方へ退避して糞尿スクレーパーとの衝突を回避して、糞尿スクレーパーの円滑な移動を確保し、一方、糞尿スクレーパーの通過前や通過後においては、最下部に位置して畜房12間の空気の流通を遮断する。
【0044】
この間仕切り20の上下動は、具体的には、例えば、次の構成により達成することができる。即ち、間仕切り20の駆動機構は、特に図3に示すように、畜房12間の床面12A上の壁面内や、この壁面に隣接して設置された支柱枠22と、この支柱枠22に取り付けられた駆動モーター24と、この駆動モーター24に連結された牽動ワイヤー26とを備え、間仕切り20は、この牽動ワイヤー26の先端に取り付けられて、駆動モーター24の回転による牽動ワイヤー26の巻き取り又は送り出し動作により、上下動することができる。従って、これらの支柱枠22、駆動モーター24、牽動ワイヤー26は、間仕切り20を支持するのに充分な強度を有する設定とする。
【0045】
また、これらの駆動機構による間仕切り20の上下動は、図3に示すように、駆動モーター24に接続された制御盤28により制御することができる。この場合、この制御盤28に設定された図示しないスイッチのOn/Offにより、間仕切り20の上下動の開始及び停止を制御することができる。この場合、各間仕切り20毎にスイッチを設定して、糞尿スクレーパーが通過しようとする畜房12間の当該間仕切り20のみを上下動させることにより、できるだけ空気の流通を遮断するように設定することもできるし、当該排出ピット14内の糞尿スクレーパーに共通のスイッチとして、一度にとある排出ピット14内の全ての間仕切り20を上下動させる設定とすることもできる。
【0046】
更に、この場合、間仕切り20の上下動のタイミングとしては、糞尿スクレーパーの移動とは関係なく上記スイッチのOn/Offにより上下動させることができる設定として、作業者が、必要に応じて、例えば、糞尿スクレーパーが排出ピット14を往復する間、即ち、糞尿スクレーパーの移動開始前に間仕切り20を上方に退避させ、糞尿スクレーパーの移動終了後に間仕切り20を下降させることができる。これにより、簡易な構成で、また、複雑な操作をすることなく、作業を行うことができる。その他、この制御盤28を糞尿スクレーパーの駆動のための機構と電気的に連結して、糞尿スクレーパーの移動に連動して上下動するように設定することもできる。この場合、更に、糞尿スクレーパーの移動開始を検知すると、全ての間仕切り20が上方へ退避して糞尿スクレーパーの追加を許容する設定とすることもできるし、糞尿スクレーパーの移動位置を検知して、当該糞尿スクレーパーが通過しようとする畜房12間の当該間仕切り20のみを上下動させる設定とすることもできる。これにより、排出ピット14を介した畜房12間の空気の流通を可能な限り最小限に止めつつ、糞尿の回収作業を行うことができる。
【0047】
また、畜舎10は、図3に示すように、支柱枠22や畜舎10の床面に取り付けられて、この間仕切り20の上下動を案内するガイド30が設けられている。このガイド30は、横断面が略コの字状に形成されて、間仕切り20の左右の端面を囲むようにして設置される。従って、間仕切り20は、その左右の端部が、このガイド30に沿って上下動することにより、円滑に上方に退避することができる。
【0048】
この場合、間仕切り20は、この上下動に伴い、畜房12の床面12A、即ち、排出ピット14の上縁(通常は、畜舎10の床面)を境に下方の排出ピット14から上方の畜房12側へ変位するため、畜舎10の床面には、この間仕切り20の通過を許容する開口を形成しておく必要がある。この場合、上述したように、間仕切り20の上下動のための機構を、畜房12を区切る壁面内に設置する場合には、間仕切り20は、上方へ退避した場合には、この壁面内に格納されるため、壁面の下方を開口させておくことにより、また、畜房12を区切る壁面に隣接して設置する場合には、畜房12の床面12Aに、この板状の間仕切り20が通過することができる図示しない開口を形成しておく。
【0049】
この場合、特に、間仕切り20が排出ピット14内へ下降した場合に、間仕切り20の全体が、これらの通過のための開口よりも下方に位置すると、上方へ向けて移動した場合に、円滑に開口内へ導かれずに、畜房12の床面12A等に下方から衝突して、適切に上方に退避できないおそれがある。このため、特に、図3に示すように、間仕切り20は、排出ピット14を遮蔽するために最下部に移動した場合にも、上端側の一部が、ガイド30内に位置するように大きさや形状又は位置を設定する。なお、ガイド30を設置しない場合においても、上下動のための上記開口、即ち、排出ピット14の上縁(通常は、畜舎10の床面)よりも上方に位置するように設定することが望ましい。
【0050】
なお、この間仕切り20の上下動の範囲は、図3に示すように、間仕切り20に取り付けられたリミットスイッチ32により規制することができる。具体的には、例えば、図3に示すように、支柱枠22に上方側リミットスイッチ32Aを、ガイド30の下方付近に下方側リミットスイッチ32Bを設け、一方、間仕切り20の板面に、これらのリミットスイッチ32に接触する上下の接触子34を取り付け、図3の左側の間仕切り板20に示すように、上方側の接触子32Aが上方側のリミットスイッチ30に接触することにより、又は、下方側の接触子32Bが下方側のリミットスイッチ30Bに接触することにより、上昇を停止し、逆に、図3の右側の間仕切り板20に示すように、上方の接触子34Aが下方のリミットスイッチ30Bに接触することにより下降を停止する設定とすることができる。なお、この間仕切り20の上下動の範囲を規制することができれば、このリミットスイッチ32を設置する箇所に特に限定はなく、他に、例えば、畜房12の床面12Aに設置することなどもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、豚等の家畜を収容する畜舎及び、この畜舎内に設置される畜房に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の畜舎の概略平面図である。
【図2】本発明の畜舎の概略縦断面図である。
【図3】本発明の間仕切りの正面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 畜舎
12 畜房
12A 畜房の床面
14 排出ピット
14A 排出ピットの底面
14B 排出ピットの側面
16 通路
18 回収路
20 間仕切り
22 支柱枠
24 駆動モーター
26 牽動ワイヤー
28 制御盤
30 ガイド
32 リミットスイッチ
34 接触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の畜房の簀の子状の床面の下方において前記複数の畜房間を連通するように設けられ前記簀の子状の床面から落下した家畜の糞尿を排出する排出ピット内に設けられ、前記排出ピットを前記畜房間で遮蔽する畜房用の間仕切り。
【請求項2】
請求項1に記載された畜房用の間仕切りであって、最下部に位置したときに前記排出ピットの底面に形成された糞尿排出用の溝又はパイプその他の回収路を除いた部分を遮蔽することを特徴とする畜房用の間仕切り。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された畜房用の間仕切りであって、上下動することを特徴とする畜房用の間仕切り。
【請求項4】
請求項3に記載された畜房用の間仕切りであって、前記排出ピット内を移動する糞尿スクレーパーの前記移動の障害とならないように上下動することを特徴とする畜房用の間仕切り。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれかに記載された畜房用の間仕切りであって、ガイドに沿って上下動することを特徴とする畜房用の間仕切り。
【請求項6】
請求項5に記載された畜房用の間仕切りであって、前記排出ピットを遮蔽するために最下部に移動した場合にも、上端側の一部が前記排出ピットの上縁よりも上方に又は前記ガイド内に位置することを特徴とする畜房用の間仕切り。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載された畜房用の間仕切りであって、リミットスイッチにより上下動の範囲が設定されていることを特徴とする畜房用の間仕切り。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれかに記載された畜房用の間仕切りであって、前記糞尿スクレーパーの移動に連動して上下動することを特徴とする畜房用の間仕切り。
【請求項9】
簀の子状の床面を有する複数の畜房と、前記簀の子状の床面の下方において前記複数の畜房間を連通するように設けられ前記簀の子状の床面から落下した家畜の糞尿を排出する排出ピットとを備えた畜舎であって、前記排出ピット内に設けられ、前記排出ピットを前記畜房間で遮蔽する間仕切りを備えたことを特徴とする畜舎。
【請求項10】
請求項9に記載された畜舎であって、前記間仕切りは、最下部に位置したときに前記排出ピットの底面に形成された糞尿排出用の溝又はパイプその他の回収路を除いた部分を遮蔽することを特徴とする畜舎。
【請求項11】
請求項9又は請求項10のいずれかに記載された畜舎であって、前記間仕切りは、上下動することを特徴とする畜舎。
【請求項12】
請求項11に記載された畜舎であって、前記排出ピット内を移動して前記糞尿を回収する糞尿スクレーパーを更に備え、前記間仕切りは、前記糞尿スクレーパーの移動の障害とならないように上下動することを特徴とする畜舎。
【請求項13】
請求項11又は請求項12のいずれかに記載された畜舎であって、前記間仕切りは、ガイドに沿って上下動することを特徴とする畜舎。
【請求項14】
請求項13に記載された畜舎であって、前記間仕切りは、前記排出ピットを遮蔽するために最下部に移動した場合にも、上端側の一部が前記畜舎の床面よりも上方に又は前記ガイド内に位置することを特徴とする畜舎。
【請求項15】
請求項11乃至請求項14のいずれかに記載された畜舎であって、前記間仕切りは、リミットスイッチにより上下動の範囲が設定されていることを特徴とする畜舎。
【請求項16】
請求項11乃至請求項15のいずれかに記載された畜房であって、前記間仕切りは、前記糞尿スクレーパーの移動に連動して上下動することを特徴とする畜房。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−4768(P2010−4768A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165357(P2008−165357)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(591171932)
【Fターム(参考)】