説明

畜舎の換気装置および畜舎の換気方法

【課題】天井付近や壁面付近のみの空気を排出するのではなく、畜舎内部の空気を良好に排出しうる換気装置を提供する。
【解決手段】上端部31bが畜舎10の屋根15から上方に開口し、下端部31aが畜舎10内に開口してなる、上下方向に延びた筒状の排気管31と、排気管31内部に設けられ、排気管31の下端部31aから吸い込んだ空気を排気管31内を流通させて上端部31bから排出させるファン32とを具備し、排気管31は、上下方向に伸縮可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畜舎内を換気する換気装置および換気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛舎、豚舎および鶏舎等の畜舎においては、畜舎内を良好な飼育環境に維持するために、換気装置が設けられている。
以下、従来の換気装置について説明する。
畜舎の換気装置としては、畜舎の天井部分に換気用の窓を設け、この窓から畜舎内の空気を排気することが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構造の畜舎では、畜舎の側面または下方から外気が導入される。
【0003】
また、畜舎の窓にファンを設け、ファンによって強制的に畜舎内の空気を排気する構成も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−164235号公報
【特許文献2】特開2007−93062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示されているような換気装置では、天井付近に存在する暖まった空気のみが排気されやすい。したがって、入気した新鮮な空気がそのまま排気されてしまうという課題がある。また、このような構成では、暖房が必要な時期には、畜舎内の温度を一定に維持することが困難であり、暖房費(燃料代)がかさんでしまうという課題もある。
【0006】
また、特許文献2に開示されているような換気装置では、畜舎の壁面に設けられたファンが畜舎内の空気を強制的に排気する。
しかし、鶏卵採取用の鶏を飼育する鶏舎のように建物内に複数列のネストが存在しているような場合、ネストとネストとで挟まれた空間の空気は排気されにくく、良好な飼育環境を作りにくいという課題がある。
【0007】
なお、天井付近で排気をすると、鶏卵採取用の鶏舎では短時間でアンモニアやCO2濃度が高い空気を排出することができ、良好な飼育環境を提供できる。
しかし、ブロイラーを飼育する鶏舎の場合には、床面で飼育を行うため、鶏が成長するにつれて床面付近のアンモニア濃度が上昇し、また床面の湿りも多くなってしまい、育成率の低下により生産効率が下がるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、天井付近や壁面付近のみの空気を排出するのではなく、畜舎内部の空気を良好に排出しうる換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる畜舎の換気装置によれば、上端部が畜舎の屋根から上方に開口し、下端部が畜舎内に開口してなる、上下方向に延びた筒状の排気管と、該排気管内部に設けられ、前記排気管の下端部から吸い込んだ空気を排気管内を流通させて上端部から排出させるファンとを具備し、前記排気管は、上下方向に伸縮可能に設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、排気管を下方に向けて伸ばすことで、天井付近の空気だけでなく、様々な位置における空気を排気できる。また、天井から排気管が下方に伸びてくるので、畜舎内に複数のネスト等が配置されている場合であっても、ネストとネストとの間の空気を良好に排気できる。また、床面付近の空気を排気することができるので、ブロイラーの飼育にあっても良好な飼育環境を提供できる。
【0010】
また、前記排気管の上下方向の長さを調整可能な長さ調整手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、畜舎の高さに応じ、また飼育している家畜の大きさに応じて排気管の長さを調整することができるので、より好適な飼育環境を提供できる。
【0011】
前記排気管の下端部はベルマウス形状に形成されていることを特徴としてもよい。
このように構成することによって、排気管内に流入する空気流がスムーズになる。
【0012】
また、前記排気管の下端部の開口面をいずれかの方向へ向けることができる向き調整手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、排気したい箇所に開口面を向けることができ、排気したい箇所の空気を的確に排気できるようになる。
【0013】
さらに、前記長さ調整手段は、一端が前記排気管の下端部に締結され、他端を引っ張ることによって排気管の下端部が上昇するように中途部が前記一端よりも上方に設けられた架け渡し部材に架け渡された複数の紐状部材であることを特徴としてもよい。
【0014】
前記向き調整手段は、複数の紐状部材のうち少なくともいずれか1つの紐状部材による排気管の下端部の上昇距離を増やすことにより、下端部の上昇距離を増やした方向に開口面が向くように設けられていることを特徴としてもよい。
【0015】
本発明にかかる換気方法によれば、請求項4記載の換気装置を、畜舎内部の空気の流通方向に沿って複数配置し、前記排気管の下端部の開口面を空気の流通方向上流に向けることにより、畜舎内の風速を上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる畜舎の換気装置によれば、天井付近だけでなく様々な位置の空気を排気できるので、床面付近の空気を良好に排気することができ、また、ネストが存在している場合であっても、ネスト間の隙間の空気を排気できるので、飼育環境を良好に維持することができる。そして、特に暖房が必要な時期の暖房費の節減に寄与する。
本発明にかかる畜舎の換気方法によれば、畜舎内の風速を容易に上げることができ、夏場のブロイラー飼育においては、鶏の体感温度を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明に係る畜舎の換気装置が設けられる畜舎全体の概要について、図1〜図2に基づいて説明する。図1は、畜舎の平面図であり、図2は、畜舎の側面図である。
なお、本実施形態における畜舎で飼育される家畜としては鶏であって、畜舎は鶏舎と呼ばれる。この鶏舎10は食肉用の鶏を飼育するものであり、鶏は床の上で放し飼いにされて飼育される。
鶏舎10は、平面視すると細長い長方形状に形成されており、図1〜図2で示す鶏舎10は幅12m程度、長さ80m程度である。このような鶏舎10に対し、天井には本発明にかかる換気装置30がほぼ所定間隔を開けて複数箇所(図1では5箇所)に設けられている。
【0018】
鶏舎10の長手方向に沿った側面11には空気取り込み用の小さい窓12が設けられているが、換気用の大きな窓は設けられていない。鶏舎の短手方向に沿った両側面13a,13bにはそれぞれ換気用の窓14が設けられている。このような構成とすることで、鶏舎の長手方向に沿って外気が流通し、換気が行える。なお、この窓14のうち一方の側面13aにはファンを設け、他方の側面13bにはファンを設けないようにしてもよい。
このような鶏舎はウインドレス鶏舎と言い、内部は照明灯によってその明るさが調整される。
【0019】
図3に基づいて、換気装置の鶏舎への取付構造について説明する。
本実施形態における鶏舎10は、天井が形成されておらず、柱9に対して傾斜して取り付けられた屋根支え用の複数のビーム8と、各ビーム8の上に配置されたサブビーム7の上に屋根15が設けられている。
鶏舎10の屋根15には、換気装置30を取り付けるための取付穴20が穿設されており、換気装置30の上端部が取付穴20から屋根15の外側に突出するように屋根15に対して取り付けられる。
【0020】
屋根15の外側においては、取付穴20から突出する換気装置30の上端部の外周及び上面を覆う風雨防護部22が設けられている。風雨防護部22は、換気装置30の上端部の外周において配置された排気が可能なガラリ16と、上面において配置された雨の進入を防止する屋根17とを備えている。
換気装置30が鶏舎10内の空気を換気装置30の上端部へ送り込み、上端の開口部から排気すると、この排気は風雨防護部22の側面のガラリ16から排気される。
【0021】
次に、図4〜図6に基づいて本発明にかかる換気装置30について説明する。図4は、換気装置の全体構成を示し、図5は、換気装置の下部の変形部について示している。図6は、換気装置の上端部の構成について示している。なお、図4では、変形部34は縮んでおり固定部35と比較して短い状態で図示されている。
【0022】
換気装置30は、鶏舎10の屋根15から屋根15の外部へ上端部が突出する筒状の排気管31を備えており、この排気管31の内部にファン32が設けられている。ファン32が回転駆動することによって、鶏舎10内の空気が排気管31の下端部の流入口31aから流入し、排気管31内部を流通して排気管31の上端部の排気開口部31bから排気される。
【0023】
換気装置30の排気管31は、上下方向の所定箇所で区切った上側と下側とではその構造が異なっており、上側は変形不能な円筒状に形成された固定部35であり、下側は上下方向に伸縮可能に形成された変形部34である。
固定部35は、例えばポリエチレンなどの合成樹脂製であり、鶏舎10への取り付け、並びに内部にファン32を内蔵する必要があるため、変形しないように強固に形成される。
【0024】
以下、固定部35の構造と、鶏舎10への固定方法について説明する。
換気装置30は、固定部35がビーム8またはサブビーム7から吊り下げられて固定されている。具体的には、取付穴20の周囲のサブビーム7には枠(図示せず)が組み付けられ、この枠に固定部35の周囲を囲むように配置された4本の柱材26が取り付けられている。柱材26の下端部には、固定部35の周囲を囲むように配置された枠状の保持部材27が取り付けられている。
【0025】
保持部材27は、固定部35の所定位置において、排気管31の外周全体を囲むように配置される。この保持部材27はL字状の固定金具51によって固定部35の外壁に固定されている。保持部材27は、例えば木製の角柱であり、排気管31の周囲を、平面視四角形状に囲むように配置される。
【0026】
このようにして排気管31に取り付けられた保持部材27と、鶏舎10の屋根15の下に配置されたサブビーム7から下方に向けて設けられた柱材26とによって換気装置30が吊り下げられる。
【0027】
次に、排気管31内へのファン32の取り付け構造について説明する。
排気管31の固定部35の内壁面には、ファン32を構成するモータ49を支持する支持部材52が内側に突出するように設けられている。支持部材52がモータ49を支持することによって、ファン32は排気管31内の所定箇所で固定される。
【0028】
また、図6に示すように、排気管31の排気開口部31bには、外気の逆流防止用の逆流防止弁24が設けられている。逆流防止弁24の具体例としては、厚さ5mm〜1cm程度のポリウレタン製のシート(防水加工が必要)等を用いることができる。
逆流防止弁24は、排気開口部31bの径よりも大径であって、排気開口部31bから排気される空気に押圧されると排気開口部31bから外方に向かって開く。そして、逆流防止弁24は、排気管31からの排気が無いときは、自重および外気によって排気開口部31b方向に押圧されて排気開口部31bの端縁に当接し、排気開口部31bは閉塞される。
【0029】
図7〜図9に、逆流防止弁24の具体的構成を示す。図7は、排気開口部を閉塞しているときの平面図、図8は、排気開口部を閉塞しているときの側面図、図9は、逆流防止弁の開閉部分の取付構造の拡大図である。
逆流防止弁24としては、上記のように軽量の板状部材24a,24bが排気開口部31bの上面に対して2枚取り付けられて構成されている。
各板状部材24a,24bは、排気開口部31bの円の中心を通る直線に対して対向して配置され、この直線を中心に上方に向けて回動可能にそれぞれ取り付けられる。
【0030】
各板状部材24a,24bの、互いに対向する側の端部には、それぞれ複数個のクリップ状部材60a,60bがネジ63等によって取り付けられている。クリップ状部材60a,60bは、側面視するとコの字状に形成されており、板状部材24a,24bを挟み込んでいる部位とコの字の壁面61との間に空隙62が形成される。
この空隙62に排気開口部31bの円の中心を通る直線上に配置される回動用支持シャフト64が挿入される。各クリップ状部材60a,60bは、回動用支持シャフト64を中心に自由に回動可能となる。回動用支持シャフト64の両端部は、固定部35の側面に対して取り付けられる支持具65によって固定されている。
このような構成により、排気圧が各板状部材24a,24bの下面を押圧すると、各板状部材24a,24bが容易に上方へ開いて排気が可能となる。
【0031】
また、各板状部材24a,24bの回動について、回動しすぎないように各板状部材24a,24bが所定の位置で停止するように規制する規制部材66が設けられている。規制部材66は、回動用支持シャフト64の上方に設けられ、回動用支持シャフト64よりも外方に突出して回動した各板状部材24a,24bに当接する。
【0032】
次に変形部の構成について説明する。
変形部34は、上下方向に伸縮可能に設けられている部位であり、具体的には、排気管31におけるファン32よりも下方に位置する部位が、低剛性の変形自在なシート状部材で形成されている。
このようなシート状部材の変形部34は、何も力を加えていないときは自身の重量および下端部の取り入れ口部材(後述する)38の重量によって下方に力が加えられているので、通常下方に向けて伸びた状態となる。
そして、何らかの手段で変形部34の下端部を持ち上げることによって変形部34を変形させて縮めることにより、排気管31の上下方向の長さを自在に変更することができる。
【0033】
なお、固定部35の下端部35aはベルマウス形状に形成されており、変形部34のシート状部材は、このベルマウス形状の下端部35aに取り付けられる。
【0034】
変形部34を構成するシート状部材としては、ポリエステルやナイロンで形成されたターポリン、あるいは綿などで形成された帆布など様々なものを採用できる。ただし、汚れが付着した場合の洗浄しやすさや、耐熱性・耐火性などを考慮する必要がある。
【0035】
変形部34には、筒状の形状維持のために、金属製でリング状の保持部材36が所定間隔おきに、上下方向に亘って取り付けられている。したがって、変形部34は、その上下方向の長さが縮められる際には、保持部材36と上下方向に隣接する保持部材36との間でシート状部材が蛇腹状に折り畳まれる。
【0036】
排気管31の下端部(変形部34の下端部)はベルマウス形状に形成されている。具体的には、排気管31の変形部34の下端部には、ベルマウス形状に形成された取り入れ口部材38が取り付けられている。取り入れ口部材38は合成樹脂等で形成されており、外壁面が、下方に向けて徐々に大径となるような曲面で形成されている。
取り入れ口部材38の外壁面の上端部は垂直に立ち上がるように形成されており、この上端部と、排気管31の変形部34の下端部とがボルト58とナット59によって複数箇所で固定されることで、取り入れ口部材38が排気管31に取り付けられる。
このように、排気管31の下端部をベルマウス形状に形成したことによって、排気管31には空気がスムーズに流入するようになる。
【0037】
また、取り入れ口部材38の下端部周縁38aは、ほぼ水平となるように形成されており、この水平の周縁には上方に向けて突出するアイボルト(リング状の部材)40が取り付けられる。
このアイボルト40には、排気管31の下端部の高さを調節するための紐状部材42の一端が結びつけられている。紐状部材42は、他端をユーザ(作業者)が引っ張ることによって、一端に連結された排気管31の下端部を上昇させるために設けられているものである。すなわち、本実施形態では、この紐状部材42が特許請求の範囲でいう高さ調整部材に該当する。
【0038】
次に、図10〜図12に基づいて換気装置30の伸縮動作について説明する。なお、図10は変形部が伸びているところ、図11は変形部が縮んでいるところ、図12は変形部が伸びている状態で開口部の向きを変えているところを示す。
また、これらの図面では上述した保持部材27などを省略して図示している。
【0039】
取り入れ口部材38において上方へ突出するように設けられたアイボルト40には、紐状部材42の一端が挿入され、長さ調整部材46に固定されている。長さ調整部材46は、アイボルト40との間の紐状部材42の長さ調整をするために用いられるものであり、紐状部材42を通す2つの穴47,47が形成されている。
紐状部材42の一端は、まず長さ調整部材46の上方の穴47に挿入され、アイボルト40のリング状の部分を通して、長さ調整部材46の下方の穴47に挿入され、縛ったりして結び目を作り、穴47から抜けないようにすることで固定される。
【0040】
また、紐状部材42の他端は、ユーザの手の届く範囲で上方から垂れ下がるように設けられるとよい。
すなわち、図10〜図12に示すように、紐状部材42は排気管31の下端部から上方に延び、中途部がビーム8に設けられた複数(単数でもよい)の滑車44に掛け渡され、他端が下方に位置するように滑車44から下向きに向かって延びている。紐状部材42の他端は、鶏舎10の壁面等に設けられたフック状部材57にかけて固定させればよい。なお、本実施形態の滑車44が特許請求の範囲でいう架け渡し部材に該当する。したがって、本発明としては、紐状部材42を架け渡すのは滑車には限定されず、単なるリング状またはフック状の部材であってもよい。
【0041】
また、紐状部材42は、排気管31の平面視すると所定間隔おきにわたって複数本設けられている。好ましくは所定の間隔をあけて3本程度の紐状部材42を設けることが好ましい。ただし、図面上では2本の紐状部材42しか示していない。
すなわち、図11に示すように、複数本の紐状部材42の他端をそれぞれ等しい長さ分だけ引っ張ることによって、排気管31の下端部を所定の高さにまで引き上げることができる。
また、複数本の紐状部材42の他端を、なるべく1箇所に集めることによりユーザの作業性を良くすることができる。
【0042】
なお、図12に示すように、複数本の紐状部材42のうち、いずれかの紐状部材42の長さ調整部材46によって長さ調整をすることにより、この紐状部材42の一端が取り付けられた部分のみが高く持ち上げられる。すなわち、長さ調整部材46を紐状部材42に対してスライドさせるように上方に引っ張り上げることで、排気管31の下端部を任意の傾きにすることができる。
この結果、排気管31の下端部の開口面が傾いて、排気管31の下端部の開口面が床面ではない方向を向くようにすることができる。
すなわち、複数本の紐状部材が特許請求の範囲でいう向き調整手段に該当する。
【0043】
次に、上述してきた換気装置の使用形態について、図13〜図15に基づいて説明する。
これらの図は、1つの鶏舎10に対して複数の換気装置30が長手方向に複数配置されているところを示している。この構成の鶏舎10では、側面13aの窓14にファンが設けられており、鶏舎10内では、鶏舎10の長手方向に沿って空気が流通するようになっている。
【0044】
図13では、換気装置30の変形部34を縮めており、排気管31の流入口31aが屋根15に近い位置に配置される。この場合は、屋根付近の暖かい空気を排気する。なお、床面付近の空気は窓14からの排気をすることができる。ただし、鶏卵用のネスト(鶏に卵を産ませる場所)が設けられていると、ネストとネストとの間の空気はなかなか排気されずに滞留することとなってしまい、鶏の飼育環境に影響を及ぼすおそれもある。
【0045】
図14では、換気装置30の変形部34を伸ばしており、排気管31の流入口31aが床面に近い位置に配置される。この場合は、鶏がいる床面近くの空気を確実に排気できる。このため、鶏が生活する床面付近の温度を下げ、アンモニア濃度も下げることができるので、鶏の生活環境を改善することができる。また、上部の暖まった空気を保持することができるので、暖房効率を良くし、暖房費の節減などにも寄与する。
【0046】
図15には、複数の換気装置30の流入口31aの向きを揃えて鶏舎10内を流れる空気の風速を上げる構成を示している。
ここでは、元々鶏舎10内では、長手方向に沿って空気が流通するように設けられており、複数の換気装置30はこの空気の流通方向に沿って配置されている。
各換気装置30の流入口31aは、空気の流通方向の上流側を向くように傾けられる。すると、流通する空気が各流入口31aに吸い込まれていくので、鶏舎10内の風速を容易に上げることができる。このため、特に夏場のブロイラー飼育においては、鶏の体感温度を下げることができる。
【0047】
また、畜舎内で家畜の飼育を場所を区切って行う場合もある。例えば、食肉用の鶏の場合、雛のように小さいときは畜舎内を区切った一部内のみで飼育を行い、大きくなるにつれて畜舎全体を使って飼育を行うことが考えられる。
このような場合、換気装置30の位置によっては、単に排気管31を下降させただけでは排気したい場所に排気管31の下端部が到達しないこともある。かかる場合、高さ調整手段を用いて排気管の下端部を鶏の成長に合わせて所定の高さに調整するとともに、上述した向き調整手段を用いて家畜が飼育されている側に下端部の開口部を向けるようにするとよい。すると、飼育スペース側(排気したい空気が存在する箇所)の空気を適切に排気することができる。
【0048】
なお、上述してきた実施形態では、排気管の伸縮は、シート状部材を排気管の構成としてこのシート状部材が折り畳まれたり延びたりして、伸縮を可能とした。
しかし、本発明としてはこの構成に限定することはない。例えば、排気管を蛇腹状に形成し、蛇腹の部分を伸縮させることにより排気管を伸縮可能に設けても良い。さらに、この蛇腹の部分が変形させた状態一定の形状を保持できる構成であれば好適である。
【0049】
上述した実施形態では、畜舎の例としてウインドレスの鶏舎を例に挙げたが、本発明はウインドレスの鶏舎に限らず、牛舎、豚舎等様々な家畜を飼育する畜舎に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る換気装置を設置する畜舎の概略平面図である。
【図2】図1に示した畜舎の側面図である。
【図3】換気装置の畜舎への取付構造を示す説明図である。
【図4】換気装置の全体構成を示す側面図である。
【図5】換気装置の変形部を示す側面図である。
【図6】排気管の上端部の構成を示す説明図である。
【図7】逆流防止弁が排気開口部を閉塞しているところを示す平面図である。
【図8】逆流防止弁が排気開口部を閉塞しているところを示す側面図である。
【図9】逆流防止弁の取付構造の拡大図である。
【図10】換気装置の変形部を伸ばした使用状態を示す説明図である。
【図11】換気装置の変形部を縮めた使用状態を示す説明図である。
【図12】排気管の下端部の向きを変えたところを示す説明図である。
【図13】畜舎内に複数の換気装置を設け、排気管を縮めたときの作用効果を説明する説明図である。
【図14】畜舎内に複数の換気装置を設け、排気管を伸ばしたときの作用効果を説明する説明図である。
【図15】畜舎内に複数の換気装置を設け、流入口を傾けて向きを揃えたときの作用効果を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0051】
7 サブビーム
8 ビーム
9 柱
10 鶏舎(畜舎)
11 側面
12,14 窓
13a,13b 側面
15,17 屋根
16 ガラリ
20 取付穴
22 風雨防護部
24 逆流防止弁
24a,24b 板状部材
26 柱材
27 保持部材
30 換気装置
31 排気管
32 ファン
34 変形部
35 固定部
36 保持部材
38 取り入れ口部材
40 アイボルト
42 紐状部材
44 滑車
46 長さ調整部材
47 穴
49 モータ
51 固定金具
52 支持部材
57 フック状部材
58 ボルト
59 ナット
60 クリップ状部材
61 壁面
62 空隙
63 ネジ
64 回動用支持シャフト
65 支持具
66 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が畜舎の屋根から上方に開口し、下端部が畜舎内に開口してなる、上下方向に延びた筒状の排気管と、
該排気管内部に設けられ、前記排気管の下端部から吸い込んだ空気を排気管内を流通させて上端部から排出させるファンとを具備し、
前記排気管は、上下方向に伸縮可能に設けられていることを特徴とする畜舎の換気装置。
【請求項2】
前記排気管の上下方向の長さを調整可能な長さ調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の畜舎の換気装置。
【請求項3】
前記排気管の下端部はベルマウス形状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の畜舎の換気装置。
【請求項4】
前記排気管の下端部の開口面をいずれかの方向へ向けることができる向き調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載の畜舎の換気装置。
【請求項5】
前記長さ調整手段は、一端が前記排気管の下端部に締結され、他端を引っ張ることによって排気管の下端部が上昇するように中途部が前記一端よりも上方に設けられた架け渡し部材に架け渡された複数の紐状部材であることを特徴とする請求項2〜請求項4のうちのいずれか1項記載の畜舎の換気装置。
【請求項6】
前記向き調整手段は、複数の紐状部材のうち少なくともいずれか1つの紐状部材による排気管の下端部の上昇距離を増やすことにより、下端部の上昇距離を増やした方向に開口面が向くように設けられていることを特徴とする請求項5記載の畜舎の換気装置。
【請求項7】
請求項4記載の換気装置を、畜舎内部の空気の流通方向に沿って複数配置し、
前記排気管の下端部の開口面を空気の流通方向上流に向けることにより、畜舎内の風速を上げることを特徴とする畜舎の換気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−104300(P2010−104300A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280177(P2008−280177)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【特許番号】特許第4382140号(P4382140)
【特許公報発行日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000150453)株式会社中嶋製作所 (8)
【Fターム(参考)】