説明

畦塗り機に於ける畦成形装置

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は畦塗り時、水分過多や水分不足、或は泥土の掻い込み不足等により成形不良となった場合、再度整然とした畦が成形できるよう調整が可能な畦成形装置に関するものである。
〔従来の技術〕
従来の畦成形板の斜面成形板は固定され、傾動調整するものはなかった。
又、その固定状態は斜面成形板の下部が機体の後方側に傾倒しているか、或は下部が泥地と水平状態になって斜面成形板の前辺が垂直となっていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
畦塗りに際し、水分過多になると泥土を塗り付けても塗り付け後泥土が落下し易く、又水分不足になると泥土の延びが少なく、放てき又は塗り付けもし難く、又畦成形板での均し方にも泥土そのものが延び難く、穴が残り易く、再度手直しをしなければならないのである。
更に、耕土が浅くて泥土不足等の場合も同様である。そして、畦成形は必ずしも一度で満足するものはできず、部分的にも成形不良となり易いのである。
又、手直し前の畦成形は、斜面成形板の前辺下部を機体の後方側に傾倒させ、泥土の流下する斜め方向に泥土を塗り付け、塗り厚を平均にするため斜面成形板の前辺下方を狭小にするか、又は切り欠き、該箇所より余分の泥土を除去していたが、水分過多の場合は余分の水分が多いだけ掻い込み量を多くしなければならないのであるが、斜面成形板が固定されているため、掻い込み量を変化させることができなかった。
上記点に鑑み、本発明は畦の成形不良で再度是正を必要とする場合に畦成形板を変位することにより、泥土の掻い込み量を多くすると共に、泥土の流失を防止し、整然とした畦成形を可能にせんとしたものである。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため本発明畦成形装置は、前端縁を上方へ反曲し、畦の上面に接する上面成形板、及び上面成形板の機体側の側部に畦側に傾斜して上部が取り付けられると共に、前辺と下辺との角部が直角をなし、かつ下辺と前記上面成形板の前端縁を除いた上面が平行な畦の機体側の側部に接する斜面成形板より成る畦成形板を、機体の進行方向の前後に回動可能としたことを特徴とするもある。
〔作用〕
次に本発明の作用を説明すれば、畦が成形不良の場合、畦成形板を第4図矢印(イ)方向(機体の進行方向の後方側)に回動して斜面成形板の下辺を機体進行方向側に変位させて斜面成形板の下辺後方を泥土中に下降すると共に、下辺前方を上向きに調整し、機体を進行すれば、斜面成形板の前辺下方の開口した箇所より泥土の掻い込みを多くすることができ、新たな耕土の泥土を掻い込むと同時に最初の畦塗り時、斜面成形板前辺下部から流出した残存泥土をも掻い込むことができる。
又、掻い込みに依って畦成形板の後部が畦に密着し、斜面成形板の下部後方が泥土中に入っていると共に前方が開口していることと、斜面成形板の前辺が成形板内の斜方向に流下する泥土の流れ方向に対して略直角方向に調整されていることにより、流下する泥土は斜面成形板の前辺下方で受けられ、畦成形板が進行すれば泥土は下方から逃げれず、上部へ押し上げられることになり、泥土の流出は阻止される。
水分過多では掻い込み度が少ないと下部へ垂れ落ちるので、水分の多いだけ泥土量も多くして通常以上に泥上げの掻い込み量を多くしなければならないので、これに十分対応し得る。そして、斜面成形板の後部で水分を搾り出す事により、整然とした畦の修正ができるようになった。
尚、斜面成形板は軸を中心に回動するので、斜面成形板が機体の進行方向の後方側へ回動すれば、該斜面成形板の下辺と上面が平行に取り付けられている上面成形板の後部は下降して畦の上面を押さえることになる。
従って、最初に塗られた畦の上面は再度押さえて締められることになり、斜面の下方の再成形と共に一挙に成形作業ができるものである。
〔実施例〕
以下本発明装置の実施例を図面に基づき説明すれば、(1)は畦塗り機本体、(2)は畦塗り機(1)の車輪であり、該車輪(2)の前方に畦塗り作業部が設けられている。
畦塗り作業部は、泥上げローター(3)、該泥上げローター(3)の背面及び上面を覆い、畦(4)側に延びるカバー(5)、及び該カバー(5)の後方で畦(4)側に設けた畦の上面に接する上面成形板(6)、並びに畦の機体側の側部に接する斜面成形板(7)より構成されている。
上面成形板(6)は前端縁を上方へ反曲し、畦(4)の上面に接する方形の板状体であり、斜面成形板(7)は方形の板状体で前記上面成形板(6)の機体側の側部に畦(4)側に傾斜して上部が取り付けられ、斜面成形板(7)は前辺と下辺との角部が直角をなし、かつ斜面成形板(7)の下辺と上面成形板(6)の前端縁を除いた上面が平行となっている。このような上面成形板(6)と斜面成形板(7)により畦成形板が構成されている。
斜面成形板(7)には一定間隔を於いて多数の孔(8)を一線上に穿設した支持管(9)が機体側に向け設けられ、該支持管(9)は泥上げローター(3)のチエーンケース(10)に取り付けた套管(11)に挿通されている。
そして、套管(11)には外周に数個の孔(12)が穿設され、前記孔(8)と孔(12)を合致し、ピン又ボルト(13)で止着している。
従って、上面成形板(6)及び斜面成形板(7)より成る畦成形板を回動するには、ピン又はボルト(13)を外せば任意に調整可能である。
第4図は畦成形板の回動調整を示すもので、鎖線は最初の畦成形時の使用状態を示し、実線は畦の修正時の使用状態を示すもので、修正時は斜面成形板(7)の下方前部が機体進行方向側に前進開口し、後方下部が泥土中に下降するので下部の泥土及び最初の畦塗り時の余泥土を掻い込み、上方に塗り上げる働きをする。
又、斜面成形板(7)の前辺の下方が上方向きに調整された為、斜面成形板(7)に掻い込んで均されながら斜めに下降する泥土は斜面成形板(7)の前辺下方で受けられ、上方に上げられる働きを受けるので、上方からの泥土と下方からの泥土を有効に利用することができる。
(14)は機体(1)の前部に設けたフレームであり、該フレーム(14)の先端に畦に沿って進行する案内板(15)のロッド(16)が挿通される短管(17)が取り付けられている。
ロッド(16)の後方には数個の孔(18)が穿設され、短管(17)に設けたピン(19)により左右に調整可能となっている。
(20)はロッド(16)に挿通され、締螺子(21)により前後に回動する除水板取り付け管であり、該除水板取り付け管(20)は、横方向にスライドし、該除水板取り付け管(20)に除水板(22)が取り付けられている。
(23)は錘(24)を挿し込み取り付けるための支持棒であり、機体のフレーム(14)に一定間隔を於いて立設されると共に、フレーム(14)の先端の短管(17)の畦塗り作業部と反対端にも立設されている。
錘(24)は作業機の前方に重量を加えるためで、車輪(2)の羽根の構造上作業機を前方に取り付けて水田作業をする場合、前進すると前方の作業機が浮上する事になり、作業者は絶えずハンドルを持ち上げて泥上げローター部を一定の深さに沈下させなければならない。
そこで、各自手持ちのテーラー等に取り付ける場合、テーラーの重量が一定でなく、一定でないものに一定の重量にした畦塗り機を取り付けると当然進行作業時、前方作業機が浮き沈みするので、それに応じた重量を加重しなければならない。
又、一定重量の専用機に取り付けても深田と浅田、又は地盤の深浅により車輪の反力が同一でなく、場所及び耕運機の重量の違いにより作業機に取り付ける重量も変えなければならない。
そこで、一定の作業機の重量ならばフレーム(14)の支持棒(23)のいずれを選ぶかにより重量が違うことになり、最適の箇所を選択できる。
又、同一箇所で錘(24)の重量を変えても良い。
更に、圃場外の運搬中は耕運機後方に取り付ければ作業機側が軽くあたり、運転が容易になる。
又、錘(24)を短管(17)の支持棒(23)に取り付ければ、作業機の重量の畦側への片寄りが是正されて作業が容易に出来るものである。
尚、錘(24)のフレーム(14)及び短管(17)への取り付けは、かかる手段に限定されるものではなく、スライド式としてもよい。
第5図は支持管(9)と套管(11)が角パイプを使用したもので、この場合は套管(11)の孔(12)に関係なく、ピン又はボルト(13)を孔(A)又は孔(B)、或は孔(A)(B)の双方に挿通しても固定できる。
〔発明の効果〕
本発明装置によれば、畦成形板が機体の進行方向前後に回動可能となるため、畦成形時、水分過多や水分不足、又は耕土が浅くて泥土不足等が生じた場合、畦成形板を機体の進行方向の後方側へ変位させ、泥土の掻い込み量を多くすると共に掻い込み後の泥土の下降を防げ、塗り上げられることにより、上方及び下方の双方の泥土を利用でき、従来のものに比べ掻い込み量が多くなり、整然とした畦の修正が可能となった。
又、ローターを停止して畦成形板だけでも理想的な仕上げができるようになった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明装置を備えた畦塗り機の実施例を示した平面図、第2図は同上の側面図、第3図は本発明装置の実施例を示した斜視図、第4図は同上の作用を示した側面図、第5図は本発明装置の他の実施例を示した部分斜視図である。
符号
(1)は畦塗り機本体
(4)は畦
(6)は上面成形板
(7)は斜面成形板
(8)(12)は孔
(9)は支持管
(11)は套管
(13)はピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】前端縁を上方へ反曲し、畦の上面に接する上面成形板、及び上面成形板の機体側の側部に畦側に傾斜して上部が取り付けられると共に、前辺と下辺との角部が直角をなし、かつ下辺と前記上面成形板の前端縁を除いた上面が平行な畦の機体側の側部に接する斜面成形板より成る畦成形板を、機体の進行方向の前後に回動可能としたことを特徴とする畦塗り機に於ける畦成形装置。

【第2図】
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【第4図】
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【第1図】
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【第3図】
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【第5図】
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【特許番号】第2630999号
【登録日】平成9年(1997)4月25日
【発行日】平成9年(1997)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−199591
【出願日】昭和63年(1988)8月10日
【公開番号】特開平2−49501
【公開日】平成2年(1990)2月19日
【出願人】(999999999)
【参考文献】
【文献】特開 昭52−6609(JP,A)
【文献】実開 昭59−113002(JP,U)
【文献】特公 昭44−7046(JP,B1)