説明

異なる歯科領域に対し異なるブラシ毛区画を有する歯磨き用マウスピース

マウスピース保持具アセンブリ12が、ユーザの上歯および下歯を受容するように構成される。このマウスピース保持具アセンブリは、マウスピース保持具アセンブリの歯に面する表面上に取り付けられたブラシ毛が、表面に接触してその表面に対して洗浄効果をもたらすよう駆動される。マウスピース保持具アセンブリの歯に面する部分には、複数のブラシ毛区画30、32、34、41、44が確保されている。それらのブラシ毛区画はそれぞれ、ある特定の配置構成を有するブラシ毛であって、その区画と対応付けられた歯科領域を効果的に洗浄するように異なる態様で適合化されたブラシ毛を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、歯磨き用のマウスピースに関するものであり、より詳細には、そのマウスピースのブラシ毛がすべて同一ではなく、異なる洗浄機能を実現するため異なる領域では異なるものとされている、歯磨き用のマウスピースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
口内の異なる歯科領域は、洗浄および/または見た目につき、異なる必要条件または目標を有することがよく知られている。しかしながら、昔ながらの歯ブラシは、単一のブラシ毛領域を有するため、特定のブラシ毛特性を選択することはある種の妥協であった。単一のブラシ毛領域内の一部のブラシ毛を、歯間領域を磨くのに特に適したものとすることはできる。しかしながら、歯間向けブラシ毛の効果は限定的であることが多かった。それは、ユーザは口内の全体に亘ってブラシを動かすためである。そのため、歯の間に届くよう意図された歯間向けブラシ毛の位置は、常にそれらの歯間領域と揃えられているわけではない。しかしながら、歯の複数の特定領域の洗浄または見た目のため、様々な機能を実現するべく異なる複数の歯ブラシを揃えることは、一般的には、現実的でなく、時間の浪費であると考えられている。
【0003】
特に電動歯ブラシについていえば、異なる複数のブラシヘッドを使用することで、歯の異なる複数の領域に対して、特定の歯科的な必要条件を満たすことはできる。しかしながら、いつもブラシヘッドを交換することは、費用が嵩むだけではなく、不便である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デンタルマウスピースの使用は、単一の器具で異なる複数の洗浄ニーズを満たす可能性があり、したがって上記で述べた歯ブラシにまつわる問題を克服できる可能性がある。しかしながら、これまでのマウスピースは、そのブラシ毛領域内に単一のタイプのブラシ毛を使用していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、かかるマウスピースが、ユーザの上歯および下歯を受容するように構成された保持具アセンブリと、そのマウスピース保持具アセンブリの歯に面する表面上に取り付けられたブラシ毛が、その表面に接触してその表面に対して洗浄効果をもたらすよう、マウスピース保持具アセンブリを駆動するシステムと、マウスピース保持具アセンブリの歯に面する部分に確保された複数のブラシ毛区画とを含むものとされ、異なる歯科領域は異なる洗浄の仕方を必要とするところ、上記の複数のブラシ毛区画が、それら異なる歯科領域内の歯を磨くのに適した特性を有するブラシ毛を含むものとされる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の特徴を組み込んだマウスピースの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、デンタルマウスピースアセンブリ10を示している。このマウスピースアセンブリ10は、ユーザの上歯および下歯を受容するように構成されたマウスピース保持具12と、全体として参照番号14で示された電源および制御アセンブリとを含んでいる。マウスピース保持具12は、全体として馬蹄型の形状をしており、典型的にはプラスチック材料を含んでいる。マウスピース保持具12が上歯および下歯の両方を受容するものである場合は、図に示すように、マウスピースの断面は、2つの垂直な側面部材16および18と、中間の水平部材20とを有する「H」字型となる。側面部材16、18は、典型的には、歯の側面をカバーするのに十分な高さを有するものとされる。しかしながら、マウスピースユニット12が上歯のみまたは下歯のみをカバーするものとされる場合もあり、その場合には、マウスピースユニットの断面は、当該器具が上歯用であるか下歯用であるかに応じて、上向きまたは上下逆向きの「U」字型となる。
【0008】
側面部材16、18の内側の(歯に面する)表面上、および水平部材20の上下の表面上には、ブラシ毛、または歯をこする作用もしくはその他の歯科洗浄作用をもたらすように設計された他の部材が配されている。典型的には、これらのブラシ毛は、マウスピースの領域全体に亘って同一のものとされ、それにより、すべての歯またはその他の歯科領域(たとえば歯茎のラインもしくは歯間領域)に対し、類似の洗浄作用を提供する。
【0009】
しかしながら、本発明では、異なる歯科領域をカバーするマウスピース12の異なる領域は、異なるブラシ毛を有するものとされる。ブラシ毛の構成は、マウスピースユニットの上側部分と下側部分との間では似た構成となるので、ここでは、ユーザの上歯を収容するマウスピースの上側部分についてのみ、ブラシ毛の構成を説明する。
【0010】
ブラシ毛は、様々な取り付け方で、マウスピースの様々な内側表面に取り付けることができる。その取り付け方には、ステープル留め、接着剤による取り付け、またはマウスピースとの一体成型が含まれる。以下でより詳細に説明するように、個々のブラシ毛は、特定の洗浄目標を達成するために、断面形状、断面積ならびに直径、長さ、材料密度、角度ならびに配置間隔、および形状が、あるいは色さえも、異なるものとされ得る。一般的に、従来型の歯ブラシ/マウスピースのアプリケーションでは、ブラシ毛は、直径0.01−0.08mm、フィラメント長1−5mmで、円形断面を有するものとされる。本実施形態では、様々な領域は、特定の機能を実現するために特定の特性を持つブラシ毛を有する。
【0011】
図中で、領域30は、前の6本の歯をカバーしており、ホワイトニングまたは艶出し磨きに特に適したブラシ毛を含む領域とされ得る。かかるブラシ毛は、以下の具体的な特性のうちの、1つまたは複数の特性を有する:ブラシ毛は、長手方向のエッジが艶出し磨き用とされた、非円形の断面を有する。例としては、矩形、三角形、5辺以上の辺を有する多角形、または螺旋状のエッジを有するブラシ毛が挙げられる。ブラシ毛の断面積は、0.0001mmと0.0064mmとの間の面積とされる。
【0012】
領域32は、上記と同じ6本の歯の内側表面をカバーしている。これらは、歯石が蓄積しやすい領域なので、ブラシ毛は、歯石の蓄積を防止または軽減するため、他のブラシ毛よりも研磨力のあるものとされてもよい。かかるブラシ毛は、以下の具体的な特性のうちの、1つまたは複数の特性を有する:ブラシ毛は、金属またはセラミック粒子といった、研磨作用のある添加物を含み得る;ブラシ毛は、擦り落とし力を強化するための非円形の断面を有し得る;直径が0.01−0.2mm、長さ1−7mmである。
【0013】
いくつかの個別の部分を含む第3の領域が、図中の参照番号34で示されている。この領域は、マウスピースユニット12の側面部材16および18両方の、内側表面上に存在する。領域34は、領域30および32の垂直端から、それぞれマウスピースの開放端36および38まで延設されている。領域34はまた、歯茎のラインの領域をカバーするように、各側面部材16および18の上端および下端39、40から、それぞれ、中間部材20の方向に、比較的短い距離だけ延設されている。これらのブラシ毛は、歯茎のラインの内部に届くように、角度45°で伸びている。あるいは、これらのブラシ毛は、以下のブラシ毛特性を特徴とするものであってもよい:ブラシ毛は、(非常に細く尖った)羽毛状のものが付与された先端を有するものであってもよく、その場合、フィラメント直径は0.01−0.05mm、長さは2−7mmであり、一般的には円形の断面を有する。
【0014】
やはりいくつかの部分を含む領域41は、側面部材16および18の内側表面上において、当該領域41のエッジが領域34と境を接しており、対向する境界エッジ42は、水平部材20上にある。歯の垂直な外側側面をこすって磨くために、これらの領域内のブラシ毛は、垂直とされ、他よりも少し短く固いブラシ毛とされる。これらの領域はまた、歯の間に届くようにするため、すなわち歯間領域内に届くようにするために、特別なより長いブラシ毛も有していてもよい。これらのブラシ毛は、以下の追加特性を有する:ブラシ毛は、羽毛状のものが付与された先端を有するものであってもよく、その場合、ブラシ毛(フィラメント)直径は0.03−0.2mm、長さは1−5mmであり、一般的には円形の断面を有する。
【0015】
領域44は、中間部材20の全長に亘って延設されている。この領域44は、側面部材16および18の内側表面と当接する2つの対向する帯状部分を有し、これら2つの帯状部分の間には、別のブラシ毛領域のためのスペースが空けられている。この領域44内のブラシ毛は、歯の咬合せ面を磨き、歯茎とは接触しない。これらのブラシ毛は、以下の特性を有する:ブラシ毛の直径は0.05−0.2mm、長さは1−5mmであり、一般的には円形の断面を有する。
【0016】
領域46もまた、領域44の2つの対向する帯状部分間において、中間部材20の全長に亘って延設されている。この領域内のブラシ毛も、固いブラシ毛とされるが、領域44内のブラシ毛よりは幾分長い。これらのより長いブラシ毛は、咬合せ面の隙間に入り込み、それら咬合せ面上にある物質および歯垢を除去する。これらのブラシ毛は、以下のブラシ毛特性を有する:領域44内のブラシ毛よりも1−3mm長く、たとえば3−8mmの長さを有し、直径は0.08−0.3mmであり、一般的には円形の断面を有する。
【0017】
以上、異なる歯科領域において異なるブラシ毛を含むマウスピースを説明してきた。各歯科領域において、ブラシ毛の機能は異なり、したがって、それら特定の機能を最良な態様で実現するべく、ブラシ毛の特性も異なるものとされる。
【0018】
説明目的で本発明の好ましい実施形態を開示してきたが、以下の特許請求の範囲により規定される本発明の精神から逸脱することなく、上記の実施形態に対して、様々な変更、修正および置換を加えることができる点を理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯磨き用のマウスピースであって、
ユーザの上歯および下歯を受容するように構成されたマウスピース保持具アセンブリと、
前記マウスピース保持具アセンブリの歯に面する表面上に取り付けられたブラシ毛が、表面に接触して該表面に対して洗浄効果をもたらすよう、前記マウスピース保持具アセンブリを駆動するシステムと、
前記マウスピース保持具アセンブリの歯に面する部分に確保された複数のブラシ毛区画とを含み、
異なる歯科領域は異なる洗浄の仕方を必要とするところ、前記複数のブラシ毛区画が、該異なる歯科領域内の歯を磨くのに適した特性を有するブラシ毛を含むものとされていることを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
前記複数のブラシ毛区画が、歯の垂直な側面を磨くのに適したブラシ毛を有する区画と、歯の咬合せ面を磨くのに適したブラシ毛を有する別の区画と、歯茎のラインを磨くのに適したブラシ毛を有するさらに別の区画とを含むことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項3】
前記複数のブラシ毛区画が、前歯の外側表面の艶出し磨きまたはホワイトニングに適したブラシ毛と、歯茎のラインを磨くのに適したブラシ毛とを有する区画を含むことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項4】
前記複数のブラシ毛区画が、前歯の外側表面の艶出し磨きまたはホワイトニングに適したブラシ毛を有する区画と、前歯の内側表面から歯石を磨き落とすのに適したブラシ毛を有する区画とを含むことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項5】
歯の咬合せ面を磨くのに適したブラシ毛を有する別のブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項4記載のマウスピース。
【請求項6】
前歯の外側表面の艶出し磨きまたはホワイトニングに適したブラシ毛を有する別のブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項2記載のマウスピース。
【請求項7】
歯の咬合せ面を磨くのに適したブラシ毛を有する別のブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項3記載のマウスピース。
【請求項8】
前歯以外の歯の垂直表面を磨くのに適したブラシ毛を有するブラシ毛区画と、歯茎のラインを磨くのに適したブラシ毛を有するブラシ毛区画と、歯の咬合せ面を磨くのに適したブラシ毛を有するブラシ毛区画とを含むことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項9】
前歯の内側表面から歯石を磨き落とすのに適したブラシ毛を有するブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項3記載のマウスピース。
【請求項10】
歯の咬合せ面を磨くのに適したブラシ毛を有するブラシ毛区画と、前歯の内側表面から歯石を磨き落とすのに適したブラシ毛を有する別のブラシ毛区画とを含むことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項11】
前歯の外側表面の艶出し磨きまたはホワイトニングに適したブラシ毛と、歯の咬合せ面を磨くのに適したブラシ毛とを有するブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項12】
(a)前歯の外側表面の艶出し磨きもしくはホワイトニングに適したブラシ毛、
(b)歯の垂直表面を磨くのに適したブラシ毛、
(c)歯の咬合せ面を磨くのに適したブラシ毛、
(d)歯茎のラインを磨くのに適したブラシ毛、および
(e)前歯の内側表面から歯石を磨き落とすのに適したブラシ毛
の群から選択されたブラシ毛を有する2つのブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項13】
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の前記群の残りから選択された、別の1つのブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項12記載のマウスピース。
【請求項14】
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の前記群の残りから選択された、別の1つのブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項13記載のマウスピース。
【請求項15】
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の前記群の残りから選択された、別の1つのブラシ毛区画を含むことを特徴とする請求項14記載のマウスピース。

【図1】
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【公表番号】特表2012−513796(P2012−513796A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542938(P2011−542938)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055521
【国際公開番号】WO2010/076695
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】