説明

異方性多孔質材料およびそれを用いたフィルタモジュール

【課題】
本発明は、汚染物質などのろ過すべき物質をその表面で捕獲することにより、初期の性能が長期に亘って維持することが可能な異方性多孔質材料の提供を目的とする。さらに本発明の別の目的は、孔の大きさが全て揃っており精度の高いろ過が可能な異方性多孔質材料の提供にある。
【解決手段】
本発明の異方性多孔質材料は、予め決められた長さに裁断された複数本の棒状物と、これらの棒状物の互いの外周部が接するように一方向に揃えるとともに、これらの端部が揃うように束ね、前記互いに接した部分を接合して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、水処理機器および空調機器などにおける流体のろ過や汚染物質の分離、除去などに用いられる異方性多孔質材料およびそれを用いたフィルタモジュール関する。
【背景技術】
【0002】
流体のろ過などに一般的に使用されているフィルタ類は、汚染物質などのろ過すべき物体(被ろ過物質)の大きさに応じて、その細孔径が選択されている。そして、その細孔径に応じてフィルタ自体さまざまなもので構成されている。すなわち、比較的ろ過すべき物質が大きい発電所等の冷却水などのろ過には金属板に細孔を多数設けたパンチングメタル状のものや金属製のワイヤを織物状のしたものが、また水道水などのろ過などでは繊維状のものやセラミックス製のものが(例えば、特許文献1、2参照)、さらにエンジンの排気のろ過にはセラミックス製のフィルタが使用されている(例えば、特許文献3参照)。加えてイオンなどのろ過には化学繊維製の浸透膜などが使用されている。
【0003】
一方、これらのフィルタの特性は、孔径、孔分布、孔形状、等の構造により決定されるため、多くの用途において、複数の構造を有するフィルタを組合せて使用している。セラミックス製のフィルタにおいては、通常、流体の流入側から流出側に向うに従い孔径が順次大きくなるように構成されており、例えば、水の浄化などに使用されるセラミックス製のフィルタでは、数〜数百ミクロンオーダの孔径の構造のものからサブミクロンオーダーの微細な孔径を有する構造のものを複数重ねた層状の構造になっている。
【0004】
ところで、このようなフィルタの基本的な原理は言うまでもなく、流体などに含まれる被ろ過物質の大きさが、フィルタに多数開いた孔の大きさよりも大きければこの孔で捕獲され、この孔よりも小さい被ろ過物質は、通り抜けるという単純なものである。よって、ろ過を完全に行ないたいという場合には、流体中に含まれる最小の被ろ過物質よりも細かい孔を有するフィルタを用いる必要がある。
【0005】
しかしながら、フィルタ自体は、上記したように金属や布などを繊維状にしたもの、もしくはセラミックスなどを焼結したもので形成されているため、その製作上や構造上の観点から、同じ大きさの孔をフィルタ全体に亘って設けることは出来ない。さらに、1つの孔に注目しても、同じ大きさがフィルタの入口側から出口側まで連続しているとは限らないのである。すなわち、フィルタの流体入口側の孔の大きさと流体出口側の孔の大きさが異なる場合や、フィルタ内部の孔の大きさが入口側、出口側の孔の大きさと異なる場合も有り得るため、被ろ過物質は、フィルタの流体入口側、流体出口側、フィルタ内部等、さまざまな箇所で捕獲されることとなる。
【特許文献1】特開2006−272112号公報
【特許文献2】特開2002−166115号公報
【特許文献3】特開2003−212672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被ろ過物質(汚染物質)がフィルタの流体入口側で捕獲された場合には、運転時とは逆に流体を流す、すなわち出口側から入口側に流体を流す所謂「逆洗浄」を行うことによって、除去可能である。
【0007】
ところが、フィルタの流体出口側やフィルタ内部で捕獲された場合、被ろ過物質は上記のような逆洗浄を行っても除去できないため、運転を続けることによってフィルタ内部に溜まり続けることになり長時間の使用とあいまって、いわゆる「目詰まり」状態となる。その結果、フィルタ自体はろ過が可能なものの、内部の流体流路(通過面積)が減少して被ろ過物質の捕獲量が減少したり、流体の流動抵抗が増すなどの不具合が生じ、最終的にはフィルタの交換が必要となる。
【0008】
また、上記したように従来のセラミックス製フィルタ、繊維状フィルタ、金属ワイヤの織物状フィルタなどは、その孔の大きさはある程度同じではあるものの全て同一ではなく、一般的には図2の曲線Bで示すように、有る大きさを中心としたなだらかな正規分布をしている。よって、例えば公称「X」μmのフィルタというのは、この正規分布の中心値が「X」μmであるフィルタを言うのであって、「X」μm以上の大きさの被ろ過物質全てを捕獲することが可能であるということではない。そのため、通常フィルタを構成する場合には、異なる孔の大きさを有するフィルタを2重または3重にして、安全を図っている。
【0009】
そこで、本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、汚染物質などのろ過すべき物質をその表面で捕獲することにより、初期の性能が長期に亘って維持することが可能な異方性多孔質材料の提供を目的とする。さらに本発明の別の目的は、孔の大きさが全て揃っており精度の高いろ過が可能な異方性多孔質材料の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の異方性多孔質材料は、予め決められた長さに裁断された複数本の棒状物と、これらの棒状物の互いの外周部が接するように一方向に揃えるとともに、これらの端部が揃うように束ね、前記互いに接した部分を接合して構成することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の異方性多孔質材料は、予め決められた長さに裁断された複数本のパイプ状物と、これらのパイプ状物の互いの外周部が接するように一方向に揃えるとともに、これらの端部が揃うように束ね、前記互いに接した部分を接合して構成することを特徴とする。
【0012】
さらに、上記目的を達成するために、本発明の異方性多孔質材料は、前記棒状物が、鋼材、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、チタン、炭素、炭素繊維またはガラス繊維のいずれか1種で構成することを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明の異方性多孔質材料は、前記パイプ状物が、鋼材、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、チタン、ガラスまたは炭素のいずれか1種で構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異方性多孔質材料によれば、その表面で汚染物質などのろ過すべき物質の捕獲が可能となるので、逆洗浄等の手段を行うことにより、長期に亘り初期の性能を維持することか可能となる。さらに、本発明の異方性多孔質材料では、孔の大きさが均一であるため、精度の高い汚染物質などのろ過すべき物質の捕獲が可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の異方性多孔質材料の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の異方性多孔質材料10を模式的に表わした図であり、(a)はその斜視図、(b)は軸方向に垂直な面での断面図である。
【0017】
図1において、棒状体1は鋼材、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、チタン、炭素、炭素繊維またはガラス繊維のいずれか1種の材料で構成されている。ここで、炭素繊維やガラス繊維などは、通常、複数本の繊維がまとめられた束が巻きつけられたボビンから供給されるため、ボビンから所定の長さの束を切り取り、束になっている繊維を一本一本の繊維としてばらばらにし、このばらばらにした一本一本の繊維を用いるものとする。
【0018】
なお、本発明において棒状体というのは、広義の中実円柱形状の部材を指すものとし、例えば、ある長さに裁断された断面が円形の針金やさらに細い金属繊維のようなもの、またある長さに裁断された断面が円形の1本のガラス繊維や1本の炭素繊維のようなものも含むものとし、その円形断面の径の大小は問わないものとする。
【0019】
このような棒状体1を予め決められた長さに裁断し、裁断した棒状体1を複数本、図1に示すように一方向に端部を揃えるとともに互いの外周部が接するように層状に並べて数段積み重ねる。互いに接した外周部(以下接合部)3は、予めそれぞれの棒状体1の外周部に塗布されたロウ材などによるロウ付けや拡散接合によって、または層状に並べて数段積み重ねられた状態で加熱および加圧することによる圧接や熱間等方圧加圧法(HIP)などで互いに接合する。
【0020】
ここで重要なのは、棒状体1を積み重ねる際に、単に外周部が接するように積み重ねるのではなく、下段に並べた棒状体1が形成する凹状部に上段の棒状体1を乗せることで、各棒状体の断面の中心点を結んだときに、それが軸方向から見て正三角形になるように積み重ねることである。
【0021】
そして、このような構成とすることにより、積み重ねられた棒状体1同士の間には、接合部3(互いに接した外周部)以外の部分に空間2が生じるが、本実施の形態の異方性多孔質材料では、この空間部2を多孔質材料の多孔部として利用するものである。
【0022】
なお、ここで棒状体1の予め決められた長さとしては、棒状体1の直径をD、その軸方向長さをLとしたときに、L/Dは10程度が望ましい。あまりL/Dが大きいと製作上、棒状体1を直線状のまま維持することが難しく、逆に小さいと製作上での取扱いが難しくなるととともに、複数の棒状体1を接合した後の強度が保てなくなる。
【0023】
本実施の形態では、棒状体1を積み重ねて製作する場合を説明したが、これに限らず、ある径の有する円筒を用意し、その中に順次棒状体1を詰めて円筒内を棒状体1で埋め尽くした後、接合しても良い。
【0024】
ここで、このような空間部2を多孔質材料の多孔部として利用する際の効果を説明する。
【0025】
例えば、金属をある形状に加工する方法の1つとして、予め求める形状に加工された金型(ダイス)に通し、引き抜くことで加工を行なう引抜き加工と言われる手法があるが、この加工は高精度の製品が得られることで知られている。そして、その精度は最大でも平均外径のプラスマイナス10%以内であると言われている。逆に言えば、このような精度を有する棒状体を用いることにより、最大でもプラスマイナス10%以内の精度を有するものを構成できるということであり、本実施の形態はまさにそれを利用したものである。
【0026】
すなわち、図1に示す各棒状体1は予め決められた径Dで構成されており、それらは全てプラスマイナス10%以内の精度のものであるから、これらを積み重ねた際に形成される空間部2もプラスマイナス10%以内の精度のものが出来上がるのである。これを分かり易く示したのが図2の曲線Aであり、有る孔(空間部2)の大きさを中心としてプラスマイナス10%以内に分布しており、従来のフィルタの孔の分布とは異なる急峻な分布をしているのが分かる。よって、このような構成の多孔質材料をフィルタとして用いることにより、従来に比較して精度のよいフィルタを構成することが可能となる。
【0027】
さらに、本実施の形態による多孔質材料では、棒状体1がその主たる構成部材であるため、それにより形成される空間部2もその軸方向のいずれの位置においても同じ大きさ(断面積)に保たれているのである。よって、これをフィルタとして用いた場合には、入口部で捕獲された被ろ過物質は、それ以上下流には流れることはなく、一方、入口部で捕獲されなかった被ろ過物質は、そのまま出口部まで流れて行き、フィルタの内部で留まることはない。よって、入口部が被ろ過物質で覆われてしまっても、いわゆる「逆洗浄」を行うことにより、容易に被ろ過物質を取り除くことができ、全く初期の性能を落とすことなく再生が可能となり、繰り返しの使用が可能なフィルタを構成することが出来る。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、図3を用いて本発明の第2の実施の形態の異方性多孔質材料20を説明する。
【0029】
本第2の実施の形態と前記第1の実施の形態との違いは、棒状体1の代わりパイプ状体21を用いた点にあり、その他の構成は同一である。このパイプ状体21は、鋼材、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、チタン、ガラスまたは炭素のいずれか1種で構成されている。ここで、本発明においてパイプ状体というのは、広義の円筒形状の部材を指すものとし、例えば、医療用や実験/研究用の金属針用パイプ、ガラスパイプ、ガラス針用パイプのようなものをも含むものとし、その円筒の内径の大小およびその肉厚の大小は問わないものとする。
【0030】
このようなパイプ状体21を第1の実施の形態と同様に、予め決められた長さに裁断し、裁断したパイプ状体21を複数本、図3に示すように一方向に端部を揃えるとともに互いの外周部が接するように層状に並べて数段積み重ねる。互いに接した外周部(以下接合部)23は、予めそれぞれのパイプ状体21の外周部に塗布されたロウ材などによるロウ付けや拡散接合によって、または層状に並べて数段積み重ねられた状態で加熱および加圧することによる圧接や熱間等方圧加圧法(HIP)などで互いに接合する。
【0031】
第1の実施の形態と同様、積み重ねた際に、各パイプ状体21の断面の中心点を結んだときに、それが軸方向から見て正三角形になるようにする。
【0032】
そして、このような構成とすることにより、積み重ねられたパイプ状体21自体が有する孔24およびパイプ状体21同士の間の接合部23(互いに接した外周部)以外の部分に生じた空間部22を、本実施の形態の異方性多孔質材料の多孔部として利用するものである。
【0033】
第1の実施の形態と同様、層状に積み重ねて製作する方法に加え、ある径の有する円筒を用意し、その中に順次パイプ状体21を詰めて円筒内をパイプ状21で埋め尽くした後、接合しても良い。
【0034】
なお、第1の実施の形態同様な理由から、ここでパイプ状体21の予め決められた長さとしては、パイプ状体21の直径をD、その軸方向長さをLとしたときに、L/Dが10程度が望ましい。
【0035】
ここで、このようなパイプ状体21自体の孔24および空間部22を多孔質材料の多孔部として利用する際の効果を説明する。
【0036】
一般的に、医療用の金属針用ステンレスパイプなどは精度高く製作されており、平均外径に対してプラスマイナス数%以下、内径についても同様の精度であるといわれている。そして、このような精度を有するパイプを用いることで、本実施の形態の多孔質材料の孔は、その平均孔径に対して最大でもプラスマイナス数%の精度を有するものが製作でき、これをフィルタに用いることにより、第1の実施の形態以上に精度高く被ろ過物を捕獲することが可能になるのである。
【0037】
また、第1の実施の形態と同様、多孔部はその軸方向に対して同一径を有しているため、途中で被ろ過物質が留まることは無くなる。また、入口部で捕獲された被ろ過物質は、それ以上下流には流れることはなく、一方、入口部で捕獲されなかった被ろ過物質は、そのまま出口部まで流れて行き、フィルタの内部で留まることはない。よって、入口部が被ろ過物質で覆われてしまっても、いわゆる「逆洗浄」を行うことにより、容易に被ろ過物質を取り除くことができ、全く初期の性能を落とすことなく再生が可能となり、繰り返しの使用が可能なフィルタを構成することが出来る。
【0038】
(第3の実施の形態)
次に、図4を用いて本発明の第3の実施の形態の異方性多孔質材料30を説明する。
【0039】
本第3の実施の形態では、前記第2の実施の形態で説明したパイプ状体21用いた異方性多孔質材料20において、パイプ状体21の外周部におけるパイプ状体21同士の接合部23(互いに接した外周部)以外の部分に生じた空間部22を、多孔部として用いるのではなく金属や樹脂などの充填材35で充填したところが異なる。
【0040】
充填材35のうち、充填する金属としては、パイプ状体31に用いる材料よりも融点の低い金属材料であれば特にその種類は問わないが、一般的な錫や鉛を主成分としたいわゆる通常のはんだ材料や、一般的な金属の接合に使われる銀など主成分としたロウ材などが、取扱いの上で有利である。また、充填材35のうち、充填する樹脂材料としては熱硬化性樹脂で耐熱性、耐水性、耐薬品性などに優れているフェノール樹脂、エポキシ樹脂やメラミン樹脂などが良い。
【0041】
そして、このような構造とすることにより、互いのパイプ状体31の接合がより強固になるという効果を奏する。また、第2の実施の形態では、パイプ状体21自体の孔24と各パイプ状体21の外周部で形成される空間部22とはその孔の断面積が異なる。そのため、フィルタとして用いた場合に、狭いほうの孔の断面積でそのフィルタの捕獲性能は決まるため、必ずしも2種類の孔を必要としなかったが、本第3の実施の形態では、パイプ状体31自体の孔34のみで構成されるため、より精度の高い捕獲性能を有するフィルタを構成することが出来る。
【0042】
(第4の実施の形態)
次に、図5を用いて本発明の第4の実施の形態の異方性多孔質材料40を説明する。
【0043】
本実施の形態と第2の実施の形態と異なる点は、多孔質材料40のパイプ状体41自体の孔44の内面と各パイプ状体41の外周部を金属コーティング(メッキ)46を施したことである。パイプ状体41の材料やその接合方法等は、第2の実施の形態と同じである。コーティングする金属材料としては、ニッケル、クロムなどが挙げられる。また、コーティングする材料は使用する環境によっては、必ずしも金属材料である必要はなく、樹脂を薄く塗布してもよい。塗布する樹脂としては、第3の実施の形態で充填材35として挙げたフェノール樹脂、エポキシ樹脂やメラミン樹脂などが良い。
【0044】
このような構成の異方性多孔質材料40においては、耐蝕性が向上することにより化学薬品などに対しても適用が可能となるとともに、通常の汚水等に用いた場合にはその性能を長期間維持することが可能となる。
【0045】
(第5の実施の形態)
次に、図6を用いて本発明の第5の実施の形態の異方性多孔質材料50を説明する。
【0046】
本実施の形態と第3の実施の形態と異なる点は、多孔質材料50のパイプ状体51自体の孔54の内面に金属コーティング(メッキ)56を施したことである。パイプ状体51の材料や充填材55については、第3の実施の形態と同じである。コーティングする金属材料としては、ニッケル、クロムなどが挙げられる。またコーティングする材料は使用する環境によっては、必ずしも金属材料である必要はなく、樹脂を薄く塗布してもよい。塗布する樹脂としては、第3の実施の形態で充填材35として挙げたフェノール樹脂、エポキシ樹脂やメラミン樹脂などが良い。
【0047】
このような構成の異方性多孔質材料50においては、耐蝕性が向上することにより化学薬品などに対しても適用が可能となるとともに、通常の汚水等に用いた場合にはその性能を長期間維持することが可能となる。
【0048】
(第6の実施の形態)
次に、図7を用いて本発明の第6の実施の形態であるフィルタモジュール60を説明する。
【0049】
図7は、上記第1乃至第5の実施の形態で説明した異方性多孔質材料(10、20、30、40、50)をフィルタモジュールに適用した一実施例を示したものある。このフィルタモジュール60は、ケーシング64の内部に、孔径の異なる2種類の異方性多孔質材料62、63をろ過すべき流体の流れ(Fin、Fout)に対して略垂直になるよう設置したものである。ケーシング64の入口側、出口側には水を導くための入口配管61a、出口配管61bが図示しないフランジを介して接続されている。本実施の形態のフィルタモジュール64では、孔径の異なる異方性多孔質材料は2種類用いているが、これに限定されず、1種類でもよいし3種類以上設置してもよい。
【0050】
なお、フィルタモジュールに適用する際には、異方性多孔質材料の外周部(ケーシング64内面と接する部分)については、補強、交換および設置上の容易さを考慮して、金属等で形成された枠を設けるのが望ましい。
【0051】
このような構成のフィルタモジュール64においては、内部の異方性多孔質材料の孔の径がある精度で良く揃っているため、確実はフィルタリング(ろ過)が可能となる。すなわち、捕獲したい被ろ過物質の大きさに応じて、その大きさより小さい径を有する異方性多孔質材料を選択することにより、異方性多孔質材料の孔の径に関してはばらつきがほとんどないため、確実にその被ろ過物質をろ過することが出来る。
【0052】
さらに、異方性多孔質材料の孔の径はその入口から出口まで同じ径であるため、ろ過された物質は入口で捕獲されるため、孔が詰まった場合には、逆洗浄を行うことにより容易に捕獲物質を排出することができるため、ろ過と逆洗浄を繰り返すことにより、長期間に亘り、フィルタモジュール60として機能を維持することができる。
【0053】
(その他の実施の形態)
次に、図8を用いて本発明の異方性多孔質材料の別の適用例である熱交換器70を説明する。
【0054】
図8において、熱交換器70は、熱伝導性の良い材料で製作された基部72と、その上に立てられた異方性多孔質材料71とから構成されている。第1乃至第5の実施の形態で説明したように、異方性多孔質材料71は多数の棒状体もしくはパイプ状体で構成されているが、これら個々の棒状体もしくはパイプ状体が、基部72の表面とそれぞれ密着するように異方性多孔質材料71と基部72とが接続されている。ここで、基部72を構成する材料としては銅が望ましい。また、異方性多孔質材料71を構成する個々の棒状体やパイプ状体と基部72との接続は、その作業の容易性、材料の入手の容易さを考慮してロウ付けが望ましい。さらに、用いるロウ材は、熱伝導の良い銀ロウが望ましいが、これに限らない。
【0055】
ここで、本発明の異方性多孔質材料が熱交換器70に適する理由を説明する。
【0056】
一般の熱交換器では、効果的/効率的に熱を逃がす(または取り入れる)ために、エンジンや配管などの周囲にフィンを設けて、外気(冷却材)との接触面積を増すことでその目的を達成しているものがほとんどである。そこで、本発明の異方性多孔質材料71の構成を考えると、各実施の形態で説明したように、棒状体もしくはパイプ状体を多数束ねたものである。そして、特にパイプ状体で構成された場合を考えると、用いたパイプ状体の数Nとそのパイプ状体のパイプの内面積Sin(Sin=π(Din)2*L、ここで、Dinはパイプ状体のパイプ内径、Lはパイプ状体の長さ)を乗じた値だけの表面積(Sall=N*Sin)を有することが分かる。そして、求められた表面積(Sall)は、異方性多孔質材料の長さLに比例するため、単純な異方性多孔質材料71の軸方向断面積より増加させることは容易である。すなわち、本発明の異方性多孔質材料71を立てる領域があるならば、この部分をなにもせずに単純に冷却するよりも、本適用例のように異方性多孔質材料71を立てることにより、フィンなどを設けたことと同じ効果を奏することが可能となるのである。
【0057】
次に、このように構成された熱交換器70を実際に適用する場合について説明する。 熱交換器70の基部72を熱源である図示しない被冷却部に密着させる一方、異方性多孔質材料71の頂部附近を冷却材となる空気を流通させる。もしくは、異方性多孔質材料71の頂部から冷却材となる水を入れても良い。いずれの場合も、熱源の温度よりも低いことが必要であるが、冷却材に関しては、適用される被冷却部の環境に応じて、水、空気に限らず適宜選択すれば良い。
【0058】
このような熱交換器70を用いることにより、狭い空間においても効率的な冷却が可能となり、集積回路などの電子機器の冷却からモータやエンジンなどに代表される一般の産業機器まで適用できる。また、上記したように異方性多孔質材料71は金属材料のみならず炭素繊維やセラミックスなど金属よりも耐熱性を有する材料でも構成可能であるため、熱源の温度は選ばない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態を模式的に示したもので、(a)はその斜視図、(b)は(a)の軸方向断面図。
【図2】本発明による異方性多孔質材料の孔径の分布(曲線A)と従来のフィルタに用いられる材料の孔径分布(曲線B)を示したグラフ。
【図3】本発明の第2の実施の形態を模式的に示したもので、(a)はその斜視図、(b)は(a)の軸方向断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態を模式的に示した軸方向断面図。
【図5】本発明の第4の実施の形態を模式的に示したもので、(a)はその斜視図、(b)は(a)の軸方向断面図。
【図6】本発明の第5の実施の形態を模式的に示した軸方向断面図。
【図7】本発明の第6の実施の形態を模式的に示した斜視図。
【図8】本発明の他の実施の形態を模式的に示した斜視図。
【符号の説明】
【0060】
1……棒状体、2,22,32,42……空間部、3,23,43……接合部、10,20,30,40,50……異方性多孔質材料、21,31,41,51……パイプ状体、24,34,44,54……パイプ孔、35,55……充填材、46,56……コーティング層、60……フィルタモジュール、61a……入口配管、61b……出口配管、62,63……異方性多孔質材料、64……ケーシング、70……熱交換器、71……異方性多孔質材料、72……基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた長さに裁断された複数本の棒状体を、
互いの外周部が接するとともにこれらの端部が揃うように一方向に束ね、
前記互いに接した部分を接合して構成すること
を特徴とする異方性多孔質材料。
【請求項2】
予め決められた長さに裁断された複数本のパイプ状体を、
互いの外周部が接するとともにこれらの端部が揃うように一方向に束ね、
前記互いに接した部分を接合して構成すること
を特徴とする異方性多孔質材料。
【請求項3】
前記棒状体が、鋼材、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、チタン、炭素、炭素繊維またはガラス繊維のいずれか1種で構成することを特徴とする請求項1に記載の異方性多孔質材料。
【請求項4】
前記パイプ状体が、鋼材、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、チタン、ガラスまたは炭素のいずれか1種で構成することを特徴とする請求項2に記載の異方性多孔質材料。
【請求項5】
前記パイプ状体を束ねた際に、互いのパイプ状体の外周部で構成される空隙部領域へ充填材を充填して構成することを特徴とする請求項2に記載の異方性多孔質材料。
【請求項6】
前記接合する部分は、ロウ付け、拡散接合、圧接、熱間等方圧加圧法(Hot Isostatic Pressing)のいずれか1種の方法で接合されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の異方性多孔質材料。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の異方性多孔質材料を用いたフィルタモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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