説明

異種構造部材の接合構造、及び複合構造物

【課題】鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の構造部材と、耐火性を有する木造の構造部材との間で、確実に荷重を伝達することができる。
【解決手段】鉄筋コンクリートにより形成された構造部材としての柱18と、梁心材32、燃え止まり層34、及び燃え代層36を備えた木造の梁26と、柱18に固定され梁心材32の端部60が接続される接合部材40と、を有する異種構造部材の接合構造38により、柱18と梁26との間で確実に荷重を伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の構造部材と、木造の構造部材とを接合する異種構造部材の接合構造、及びこの異種構造部材の接合構造により接合された複数の構造体を有する複合構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造の異なる構造部材同士を接合する技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、鉄筋コンクリート造の柱と、鉄骨造の梁とを接合する異種構造部材の接合方法が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、耐火性を有する木造の構造部材として、荷重支持層と、荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる燃え代層とを有する複合木質構造材が開示されている。
【0004】
ここで、特許文献2に開示されているような、耐火性を有する3層構造の複合木質構造材と、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の構造部材とを接合する場合、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の構造部材と、複合木質構造材の荷重支持層との間で荷重を確実に伝達できるように接合しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−212700号公報
【特許文献2】特開2008−2189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る事実を考慮し、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の構造部材と、耐火性を有する木造の構造部材との間で、確実に荷重を伝達することができる異種構造部材の接合構造、及びこの異種構造部材の接合構造により接合された複数の構造体を有する複合構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨により形成され、柱、梁又は壁を構成する構造部材と、荷重を支持する木製の梁心材、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層、及び前記燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層を備えた梁と、前記構造部材に固定され、前記梁心材の端部が接続される接合部材と、を有する異種構造部材の接合構造である。
【0008】
請求項1に記載の発明では、接合部材により、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨により形成され、柱、梁又は壁を構成する構造部材と、耐火性を有する木造の梁との間で、確実に荷重を伝達することができる。すなわち、構造部材と梁とを接合することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異種構造部材の接合構造を有する複合構造物において、前記構造部材を備える第1構造体と、前記梁を備える第2構造体と、前記梁心材の端部を、前記接合部材に回転可能にピン接合する接合部と、を有する複合構造物である。
【0010】
請求項2に記載の発明では、梁心材の端部を、接合部材に回転可能にピン接合することにより、梁心材の端部に生じる曲げモーメントを低減する又は無くすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記第1構造体は、コアスペースを形成するコア部である。
【0012】
請求項3に記載の発明では、コアスペースを形成するコア部を第1構造体とすることにより、コア部の有する高い強度を、複合構造物全体の強度向上に有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の構造部材と、耐火性を有する木造の構造部材との間で、確実に荷重を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る複合構造物を示す平面断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る木造の柱と木造の梁とを接合する接合構造を示す平面断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造の変形例を示す正面断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造の変形例を示す正面断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造の変形例を示す正面断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造の変形例を示す正面断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造の変形例を示す正面断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造の変形例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態に係る複合構造物の変形例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造、及び複合構造物について説明する。
【0016】
図1の平面断面図に示すように、複合構造物としての建物10は、建物10の略中央に配置された、第1構造体としての鉄筋コンクリート造のコア部構造体12と、コア部構造体12の周囲を取り囲むように配置された、第2構造体としての木造の外周部構造体14と、接合部16とを有している。
【0017】
コア部構造体12は、コアスペースとしてのエレベーターシャフト30を形成し、建物10の耐震要素となるコア部を構成している。また、外周部構造体14は、建物10に作用する静的荷重を主に負担している。
【0018】
図1、及び図1のA−A断面図である図2に示すように、コア部構造体12は、鉄筋コンクリートにより形成された構造部材としての柱18、梁20及び壁(不図示)によって構成されている。柱18と梁20とは、鉄筋コンクリートにより形成された柱と梁との接合において一般的に用いられている柱梁接合構造によって接合されている。
【0019】
また、図1、2に示すように、外周部構造体14は、木造の柱24、梁26及び壁(不図示)と、鉄筋コンクリートにより形成された床スラブ28とによって構成されている。
【0020】
図2、及び図2のB−B断面図である図3に示すように、梁26は、荷重を支持する木製の梁心材32と、梁心材34の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層34と、燃え止まり層34の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層36とを備えている。
【0021】
図1に描かれた外周部構造体14の左上コーナー部の拡大図である図4に示すように、柱24は、荷重を支持する木製の柱心材42と、柱心材42の外周を取り囲む燃え止まり層44と、燃え止まり層44の外周を取り囲む木製の燃え代層46とを備えている。
【0022】
図2に示すように、柱18と梁26とは、異種構造部材の接合構造としての接合構造38によって接合されている。接合構造38は、構造部材としての柱18、梁26、及び接合部材40を有している。
【0023】
図2、及び図5の斜視図に示すように、接合部材40は、奥壁部48と、奥壁部48の左右端部に固定された側壁部50、52と、奥壁部48及び側壁部50、52の下端部に固定された底部54とによって構成されている。奥壁部48、側壁部50、52、及び底部54は、鋼製の板状部材により形成されている。
【0024】
接合部材40は、柱18を形成するコンクリート中に埋設されることにより、柱18と一体化され固定されている。また、奥壁部48の背面に固定された頭付きスタッド56によりコンクリートとの一体化が高められている。
【0025】
接合部材40は、奥壁部48、側壁部50、52、及び底部54に囲まれて形成された接合部としての箱状の挿入部58を有している。挿入部58は、上面及び正面が開口している。そして、梁心材32の端部60を挿入部58へ挿入して接続することによって、柱18に梁26が接合されている。梁心材32の端部60は、接合部材40に対して端部60が回転するのを阻止するように、ボルト等によって接合部材40に固定されていない。すなわち、梁心材32の端部60は、接合部材40(接合部)に回転可能にピン接合されている。
【0026】
このような構成により、せん断荷重は、接合部材40を介して柱18と梁心材32との間で伝達され、梁心材32の端部60に生じる曲げモーメントを低減する又は無くすることができる。なお、このような効果が得られなくてもよければ、梁心材32の端部60を、接合部材40(接合部)にボルトやドリフトピン等によって固定してもよい。
【0027】
図2に示すように、梁26の上面には、鉄筋コンクリートにより形成された床スラブ28が設けられている。すなわち、梁心材32、燃え止まり層34、及び燃え代層36の上面に、床スラブ28が設けられている。これにより、梁心材32の外周が、燃え止まり層34と床スラブ28とによって取り囲まれている。
【0028】
また、図2、5に示すように、梁心材32の端部60を挿入部58へ挿入し接続して、柱18に梁26が接合された状態で、燃え止まり層34の端面は、接合部材40の前端面62と、この前端面62の外周付近に位置する柱18の側壁面64に接触している。すなわち、燃え止まり層34の端面は、柱18の側壁面64を形成するコンクリート面に接触している。
【0029】
図4に示すように、柱24と梁26とは、接合部材40を有する接合構造66によって接合されている。柱24において、接合部材40は、燃え代層46及び燃え止まり層44に上下方向へ形成された溝68に挿入され、柱心材42の外周面に、奥壁部48の背面が接触するようにして配置されている。
【0030】
また、柱心材42及び燃え止まり層44を略水平に貫通する貫通孔70が、柱心材42の構造断面(水平断面)を略二等分するように形成されており、この貫通孔70に固定部材としてのアンカーボルト72が貫通している。そして、アンカーボルト72の両端にナット74をねじ込み締め付けることによって、柱心材42に接合部材40を固定している。
【0031】
貫通孔70は、上下方向に対して等間隔に複数(例えば、各3つ)形成され、これらの貫通孔70の全てにアンカーボルト72が設けられている。また、接合部材40の側壁部50、52と燃え代層46との間に形成された隙間76、ナット74を収容するために燃え代層46に形成された切り欠き78、及びナット74を収容するために接合部材40の内側に設けられた収容部80は、モルタル等の充填材Mによって塞がれている。なお、充填材Mは、隙間76、切り欠き78、及び収容部80を塞ぐことができ、耐火性や熱吸収性を有する材料であればよい。
【0032】
そして、梁心材32の端部60を挿入部58へ挿入し接続することによって、柱24に梁26が接合されている。梁心材32の端部60は、接合部材40にボルトやドリフトピン等によって固定してもよいし、接合部材40に回転可能にピン接合してもよい。柱24に梁26が接合された状態で、燃え止まり層34の端面は、接合部材40の前端面62、及び隙間76に充填された充填材Mの端面82に接触している。
【0033】
このように、接合構造66では、燃え止まり層44及び充填材Mで接合部材40の側面を覆うとともに、この燃え止まり層44及び充填材Mの側面を燃え代層46で覆い、さらに、燃え止まり層34の端面を、充填材Mの端面82と、接合部材40の前端面62とに接触させることによって、柱24と梁26との接合部に耐火性を与えている。なお、柱24と梁26とは、接合部に耐火性を与えることができれば、どのような接合構造によって接合してもよい。
【0034】
次に、本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造、及び複合構造物の作用と効果について説明する。
【0035】
本発明の実施形態に係る異種構造部材の接合構造としての接合構造38では、図2に示すように、構造部材としての柱18に固定された接合部材40に、梁心材32の端部60を接続することにより、梁26(梁心材32)と柱18との間で確実に荷重を伝達することができ、柱18に梁26を接合することができる。
【0036】
また、火災が発生したときに火炎が燃え代層36に着火し、燃え代層36が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層36は炭化する。よって、梁26の外部から梁心材32への熱伝達と酸素供給とを、炭化した燃え代層36と、コンクリートによって形成された床スラブ28とが遮断し、燃え止まり層34が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材32の温度上昇を抑制することができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、梁心材32を着火温度未満に抑え、梁心材32を燃焼させずに燃え止まらせて、荷重を支持する部材として梁26を機能させることができる。
【0037】
また、図2、5に示すように、梁心材32の端部60が挿入部58へ接続された状態で、燃え止まり層34の端面は、接合部材40の前端面62と、柱18の側壁面64とに接触しているので、柱18と梁26との接合部から熱が進入して、梁26の梁心材32の温度が上昇するのを抑制することができる。すなわち、柱18と梁26との接合部に耐火性を与えることができる。
【0038】
よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、梁心材32を着火温度未満に抑え、梁心材32を燃焼させずに燃え止まらせて、荷重を支持する部材として梁26を機能させることができる。
【0039】
また、図5に示すように、柱18に固定されている接合部材40は、側面(側壁部50、52)及び下面(底部54)が、柱18を形成するコンクリートに覆われ、上端面が、床スラブ28を形成するコンクリートに覆われている。また、梁心材32の端部60が挿入部58へ接続された状態で、燃え止まり層34の端面は、接合部材40の前端面62と、柱18の側壁面64とに接触している。
【0040】
これらにより、先に説明した「梁心材32の温度上昇が抑制される」のと同様の原理で、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における接合部材40の温度上昇を抑制することができる。これによって、柱18と梁26との接合部に耐火性を与えることができる。
【0041】
また、接合部材40の挿入部58へ梁心材32の端部60を挿入することにより、柱18に梁26を接合することができる。すなわち、ボルト接合やコンクリート打設等の煩雑な作業を必須の作業とせずに、柱18に梁26を接合することができる。
【0042】
また、本発明の実施形態に係る複合構造物としての建物10では、図1に示すように、木造の外周部構造体14により、建物10全体の軽量化を図ることができる。また、コア部構造体12を鉄筋コンクリート造とすることにより、建物10全体の強度を向上させることができる。
【0043】
また、図2に示すように、梁心材32の端部60を、接合部材40に回転可能にピン接合することにより、梁心材32の端部60に生じる曲げモーメントを低減する又は無くすることができる。
【0044】
また、図1に示すように、建物10では、コアスペースとしてのエレベーターシャフト30を形成するコア部をコア部構造体12とすることにより、コア部構造体12の有する高い強度を、建物10全体の強度向上に有効に利用することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0046】
なお、本発明の実施形態では、接合部材40により柱18と梁26とを接合する例を示したが、柱18と梁心材32との間で確実に荷重を伝達することができれば、接合部材は、どのような材料によって形成してもよいし、どのような形状でもよい。例えば、接合部材は、必要とする強度が得られれば、木、鋼鉄、樹脂、コンクリート等のどのような材料によって形成してもよい。先に述べたように、接合構造38では、接合部材の温度上昇が抑制されるので、耐火性や吸熱性が期待できない材料によって接合部材が形成されていても、柱18と梁26との接合強度が、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後に損なわれることはない。
【0047】
また、例えば、図6、7に示す接合構造84、86に用いられている、接合プレート88やコッター溝部材90により、柱18に梁26を接合するようにしてもよい。図6の正面断面図に示すように、接合構造84では、接合部材としての鋼製の接合プレート88の末端部が、柱18に固定されている。そして、接合プレート88を、複数のドリフトピン92により梁心材32に連結することにより、柱18に梁26を接合している。
【0048】
図7の正面断面図に示すように、接合構造86では、接合部材としての鋼製のコッター溝部材90が柱18に固定されており、梁心材32の端部に鋼製のコッター溝部材94が固定されている。コッター溝部材90の外側の端面(突出している部分の頂部の面)は、柱18の外周面と略面一になっている。そして、コッター溝部材90とコッター溝部材94との間にモルタル等の充填材Mを充填し硬化させて、柱18に梁26を接合している。なお、コッター溝部材の形状は、柱18と梁心材32との間で鉛直方向のせん断力を確実に伝達できれば、どのような形状にしてもよい。
【0049】
また、本発明の実施形態では、柱18を形成するコンクリート中に接合部材40を埋設することにより、接合部材40を柱18に固定した例を示したが、柱18と梁心材32との間で確実に荷重を伝達することができれば、接合部材40は、どのような方法で柱18に固定してもよい。例えば、図8〜10に示す接合構造96、98、100のように、柱18や壁102に接合部材40を固定してもよい。
【0050】
図8の正面断面図に示すように、接合構造96では、柱18に埋設されたボルト104により、接合部材40を柱18に固定している。また、図9の正面断面図に示すように、接合構造98では、鉄筋コンクリート製の壁102に貫通させたアンカーボルト106により、接合部材40を壁102に固定している。
【0051】
また、図10の正面断面図、及び図11の斜視図に示すように、接合構造100では、プレキャストコンクリート製の下柱18Aの上に、プレキャストコンクリート製の上柱18Bが載置されている。下柱18Aと上柱18Bとは、鋼製の筒状部材110によって接合されている。筒状部材110は角筒形状の部材であり、下柱18Aの上部に形成された下柱ほぞ部112Aと、上柱18Bの下部に形成された上柱ほぞ部112Bとが、筒状部材110の中空部114に挿入されて、下柱18Aと上柱18Bとが接合されている。そして、筒状部材110は、接着剤により、下柱ほぞ部112A及び上柱ほぞ部112Bに固定されている。
【0052】
下柱ほぞ部112Aの上面と、上柱ほぞ部112Bの下面とは、直接接触させてもよいし、間にモルタル等の充填材Mや接着剤を充填してもよいし、間に鋼板を配置してもよい。充填材Mを充填したり、鋼板を配置したりすれば、下柱ほぞ部112Aの上面に均一に上柱18Bの荷重を伝達することができる。
【0053】
筒状部材110のコーナー部外側には、鉄筋コンクリートにより形成されたブロック部材116が設けられ、これらのブロック部材116同士の間に、接合部材40が配置されている。接合部材40は、筒状部材110の外周面に奥壁部48の背面を接触させた状態で、溶接等により筒状部材110に固定されている。
【0054】
また、本発明の実施形態で示した、梁心材32、柱心材42、及び燃え代層36、46は、木材によって形成されていればよい。例えば、梁心材32、柱心材42、及び燃え代層36、46は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる梁材や柱材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
【0055】
また、燃え止まり層34、44は、熱の吸収が可能な層であればよい。例えば、燃え止まり層34、44は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0056】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0057】
また、本発明の実施形態では、図3に示すように、燃え止まり層34が、梁心材32の側面と下面とを取り囲み、燃え代層36が、燃え止まり層34の側面と下面とを取り囲む例を示したが、燃え止まり層34が、梁心材32の外周を取り囲み、燃え代層36が、燃え止まり層34の外周を取り囲むようにしてもよい。
【0058】
また、本発明の実施形態では、鉄筋コンクリートにより形成された柱18を構造部材とした例を示したが、構造部材は、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨により形成され、柱、梁又は壁を構成する部材であればよい。
【0059】
例えば、構造部材を鉄骨鉄筋コンクリートにより形成された柱、梁や壁にした場合には、この構造部材と梁26とを接合した状態で、燃え止まり層34の端面が、構造部材の側壁面を形成するコンクリート面と対向することになるので、柱18と梁26との接合部に、本発明の実施形態で示した接合構造38(図2を参照のこと)とほぼ同様の耐火性を与えることができる。
【0060】
また、例えば、構造部材を鉄骨により形成された柱や梁にした場合には、構造部材の外周面に耐火被覆を施して、この耐火被覆表面を燃え止まり層34の端面と対向させることにより、柱18と梁26との接合部に、本発明の実施形態で示した接合構造38(図2を参照のこと)とほぼ同様の耐火性を与えることができる。
【0061】
また、本発明の実施形態では、鉄筋コンクリートにより形成された構造部材としての柱18と、梁心材32、燃え止まり層34及び燃え代層36により構成された木造の梁26とを接合する例を示したが、構造部材を、柱心材、梁心材又は壁心材と、燃え止まり層と、燃え代層とによって構成した木造部材とし、この木造部材に接合する梁を、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨により形成された部材としてもよい。
【0062】
また、本発明の実施形態では、梁心材32の端部60を挿入部58へ挿入し接続して、柱18に梁26が接合された状態で、燃え止まり層34の端面が、接合部材40の前端面62と、柱18の側壁面64とに接触させた例を示したが、燃え止まり層34の端面と接合部材40の前端面62、及び燃え止まり層34の端面と柱18の側壁面64とは、対向していればよい。すなわち、燃え止まり層34の端面と接合部材40の前端面62、及び燃え止まり層34の端面と柱18の側壁面64とは、接触していてもよいし、隙間を有していてもよい。隙間を有する場合には、この隙間からの熱の進入を防ぐために、モルタル等の充填材Mを充填してこの隙間を塞ぐのが好ましい。
【0063】
また、本発明の実施形態では、柱18に、2つの梁20と、2つの梁26とを接合した例を示したが、柱18に接合する梁20、26はいくつでもよいし、どのように配置してもよい。
【0064】
また、本発明の実施形態では、梁26を、梁心材32、燃え止まり層34、及び燃え代層36により構成した例を示したが、本発明の実施形態は、一般的な木造の梁に対しても適用可能である。
【0065】
また、本発明の実施形態では、床スラブ28を鉄筋コンクリートによって形成した例を示したが、床スラブ28は、鉄筋コンクリートによって形成されていなくてもよい。例えば、ALC(軽量気泡コンクリート)床版、穴あきPC(プレストレスト・コンクリート)床版、ハーフPC(プレストレスト・コンクリート)床版であってもよいし、プレキャスト製のこれらの床版であってもよい。
【0066】
また、本発明の実施形態では、コア部構造体12を、コアスペースとしてのエレベーターシャフト30を形成するコア部とした例を示したが(図1を参照のこと)、コア部構造体12は、建物のどの部分を構成するものであってもよい。
【0067】
コア部構造体12は、コアスペースを形成し耐震要素となるコア部を構成するものであることが好ましい。ここで、コア部により形成されるコアスペースとは、オフィスビルなどで、階段、エレベーターシャフト、トイレなどの共有施設や設備を、建物各階の一定の平面位置に集中して配置する方式(コアシステム)における、これらの共有施設や設備のスペースを意味する。
【0068】
図12には、コアスペースを階段とした複合構造物としての建物118の例が示されている。建物118は、建物118の左側に配置された、第1構造体としての鉄筋コンクリート造のコア部構造体120と、コア部構造体120の右側に配置された、第2構造体としての木造の隣接部構造体122と、接合部16とを有している。
【0069】
コア部構造体120は、コアスペースとしての階段スペース124を形成し、建物118の耐震要素となるコア部を構成している。また、隣接部構造体122は、建物118に作用する静的荷重を主に負担している。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
10、118 建物(複合構造物)
12、120 コア部構造体(コア部、第1構造体)
14 外周部構造体(第2構造体)
16 接合部
18 柱(構造部材)
18A 下柱(構造部材)
18B 上柱(構造部材)
26 梁
30 エレベーターシャフト(コアスペース)
32 梁心材
34 燃え止まり層
36 燃え代層
38、84、86、96、98、100 接合構造(異種構造部材の接合構造)
40 接合部材
60 端部
88 接合プレート(接合部材)
90 コッター溝部材(接合部材)
102 壁(構造部材)
122 隣接部構造体(第2構造体)
124 階段スペース(コアスペース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨により形成され、柱、梁又は壁を構成する構造部材と、
荷重を支持する木製の梁心材、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層、及び前記燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層を備えた梁と、
前記構造部材に固定され、前記梁心材の端部が接続される接合部材と、
を有する異種構造部材の接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の異種構造部材の接合構造を有する複合構造物において、
前記構造部材を備える第1構造体と、
前記梁を備える第2構造体と、
前記梁心材の端部を、前記接合部材に回転可能にピン接合する接合部と、
を有する複合構造物。
【請求項3】
前記第1構造体は、コアスペースを形成するコア部である請求項2に記載の複合構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−53415(P2013−53415A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190777(P2011−190777)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)