説明

異種要素が無いgM−ネガティブEHV−変異体

【課題】この発明に内在する技術的課題は、先行技術のワクチンよりもよくEHV感染を防ぐ改良されたワクチンを提供することである。
【解決手段】本発明は、動物の健康、特にタンパク質gMをコードする遺伝子が存在せず、かつ異種要素が無いウマヘルペスウイルス(EHV)の分野に関する。本発明のさらなる局面は、前記ウイルスを含んでなる医薬組成物、その使用、EHV感染症の予防及び治療方法に関する。本発明は、タンパク質gMをコードする遺伝子が存在せず、かつ異種要素が無いEHV-1及びEHV-4ウイルスの組合せを含んでなる医薬組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、動物の健康、特にタンパク質gMをコードする遺伝子が存在せず、かつ異種要素(heterologous element)が無いウマヘルペスウイルス(Equine Herpes Viruses)(EHV)の分野に関する。本発明のさらなる局面は、前記ウイルスを含む医薬組成物、その使用、EHV感染症の予防及び治療方法に関する。本発明は、タンパク質gMをコードする遺伝子が存在せず、かつ異種要素が無いEHV-1とEHV-4ウイルスの組合せを含む医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アルファヘルペスウイルス亜科のメンバーであるウマヘルペスウイル1(EHV-1)は、ウマのウイルス誘発流産の主要原因であり、かつ呼吸器及び神経性疾患を引き起こす。ウマヘルペスウイルス4(EHV-4)も呼吸器症状、流産又は神経障害を誘発しうる。両種(EHV-1: 株Ab4p; EHV-4: 株NS80567)の完全DNA配列は決定されている(Telford, E. A. R.ら, 1992; Telford, E. A. R.ら, 1998)。しかし、少しの遺伝子及び遺伝子産物しか、EHVのビルレンス及び免疫原特性に対するその関連性について特徴づけされていない。
【0003】
ヘルペスウイルス糖タンパク質は、感染の初期段階、細胞からのビリオンの放出、及び隣接細胞の融合によるビリオンの直接的な細胞間伝播に極めて重大に関与する。現在までに、11の単純ヘルペスウイルス型1(HSV-1)-コード化糖タンパク質が同定されており、gB、gC、gD、gE、gG、gH、gI、gJ、gK、gL、及びgMと命名されている。gC、gE、gG、gI、gJ、及びgMを欠いているHSV-1変異体は生存可能であり、これら遺伝子が培養細胞内の複製に不必要であることを示している。HSV-1とウマヘルペスウイルス1ヌクレオチド配列の比較は、すべての既知HSV-1糖タンパク質がEHV-1内で保存されることを明らかにした。現在の命名法に従ってこれら糖タンパク質はそのHSV-1相同体の名称によって命名される。EHV-1 gC、gE及びgIは、細胞培養内におけるウイルス成長に必須でないが、gB及びgDは、細
胞培養内におけるウイルス成長に必須であることが分かっている。培養細胞内における複製に対するEHV-1糖タンパク質の他の寄与は知られていない(Flowers, C. C.ら, 1992)。
転写及びタンパク質解析は、糖タンパク質gB、gC、gD、gG、gH、及びgKがEHV-1感染細胞内で発現されることを示した。糖タンパク質gM(遺伝子UL10によってコードされる[Baines, J. D.ら, 1991; Baines, J. D.ら, 1993])は、すべてのヘルペスウイルスサブファミリー内で保存される唯一の報告されている非必須糖タンパク質であり、ヒト及びウマのサイトメガロウイルス及びガンマヘルペスウイルス亜科メンバーEHV-2、ヘルペスウイルスサイミリ(saimiri)、及びエプステイン-バー(Epstein-Barr)ウイルスについて記載されている。多くのヘルペスウイルス糖タンパク質同様、HSV-1 gMは、感染細胞のビリオンと膜中に存在する。単にgMを欠いているだけのHSV-1変異体は、野生型ウイルスの力価に対して細胞培養系中の力価が約10倍減少し、マウスモデル内でビルレンスの減少を示した(Baines, J. D.ら, 1991; MacLean, C. A.ら, 1993)。EHV-1 gM相同体(gp21/22a;以後、EHV-1 gMとも呼ぶ)は、最初Allen及びYeargan(Allen, G. P.ら, 1987)によって記載され、ウイルスエンベロープの主構成要素であることが示された。さらなる研究により、HSV-1 UL10に対して遺伝子相同的である遺伝子52が450-アミノ-酸 EHV-1 gMポリペプチドをコードすることが明らかになった(Pilling, A.ら, 1994; Telford, E. A. R.ら, 1992)。EHV-1 gMは、8つの予測される膜貫通ドメインを含む多疎水性タンパク質を表し、Mr 45,000タンパク質として感染細胞及び精製ビリオン中に存在すると報告されている(Pilling, A.ら, 1994; Telford, E. A. R.ら, 1992)。
【0004】
EHV-1感染の制御のため、2つの異なるアプローチが分かっている。第1に、株RacHを含む修飾生ワクチン(MLVs)が開発され(Mayr, A.ら, 1968; Hubert, P. H.ら, 1996)、欧州及び米国で広く使用されている。第2に、組換え体を基礎とする不活化ワクチン及びサブユニットワクチンは、マウスモデル内で、その後のチャレンジEHV-1感染に対して部分的保護を生じさせる糖タンパク質(g)B、C、D、及びHのようなウイルス性糖タンパク質を発現した。前記糖タンパク質、例えばgB、gC、gD、及びgHを含むサブユニットワクチンは再感染に対して十分に保護しない(Awanら, 1990, Osterriederら, 1995, Tewariら, 1994, Stokesら, 1996)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明に内在する技術的課題は、先行技術のワクチンよりもよくEHV感染を防ぐ改良されたワクチンを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】HΔgM-wの構築に用いるウイルスとプラスミドの地図を示す。
【図2】外来性配列が無いgM-欠失EHV-1ウイルス(HΔgM-w)のサザン-ブロットを示す。
【図3】EHV-4株NS80567のBamHI地図を示す。
【図4】外来性配列が無いgM-欠失EHV-4ウイルス(E4ΔgM-w)のサザン-ブロットを示す。
【図5】gM欠失EHV-4ウイルス、E4ΔgM-wの成長特性を示す。
【図6】E4ΔgM-wのプラークサイズを示す。
【図7】ベロ細胞中へのEHV-4ウイルスの透過を示す。
【図8】PCRプライマー配列及びEHV-4ゲノム内の増幅物の位置を示す。
【図9】ウマ血清のウエスタンブロット分析を示す。
【図10】EHV-4 gMの同定を示し、(A)はEHV-1 gMとEHV-4 gMの比較を示し、(B)はビリオンのgB反応性とgM反応性の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(図の説明)
図1:外来性配列が無いgMネガティブEHV-1 RacHウイルスの生成(HΔgM-w)
この図は、HΔgM-wの構築に用いるウイルスとプラスミドの地図を示す。“第1世代”HΔgM-wウイルスは、大腸菌lacZ(HΔgM-lacZ)又は緑色蛍光タンパク質(GFP)発現カセット(HΔgM-GFP)のどちらかを挿入することによって以前に構築されている。EHV-1株RacHのBamHI地図が示され(A)、gM-ORFを含有するBamHI-HindIII断片を拡大して該領域のゲノム組織を示している(B)。gM-ネガティブウイルス、HΔgM-GFPは、GFP-発現カセットを運び、EHV-1 gM遺伝子の主要部と置き換える。サザン-ブロット法で用いたGFP-特異的プローブが図示される(C)。プラスミドpBH3.1は、問題のEHV-1 BamHI-HindIII断片を運び、プラスミドpXuBaxAの構築に使用した。HΔgM-GFPのDNAのプラスミドpXuBaxAによる共形質移入後、HΔgM-wが生じた(D)。制限部位:BamHI−B、HindIII−H、SphI−S、HincII−Hc、ApaI−A、PstI−P
図2:外来性配列が無いgM-欠失EHV-1ウイルスのサザン-ブロット(HΔgM-w)。
RacH、HΔgM-GFP及びHΔgM-wのDNAをBamHI、HindIII又はPstIで切断し、GFP-特異的プローブ(GFP)又はpBH3.1のEHV-1 BamHI-HindIII断片(pBH3.1)で分析した。DNA-ハイブリッドは、CSPDを用いる化学発光で検出した。左縁上にkbpで分子量マーカーサイズ(Biolabs)を示す。矢印は、わずかに見える特有のハイブリッドを指す。
【0008】
図3:外来性配列が無いgMネガティブEHV-4ウイルスの生成(E4ΔgM-w)。
この図には、EHV-4株NS80567のBamHI地図が示される。拡大したBamHI-e断片は、gM-及び隣接ORFsを包含する(A)。プラスミド構成物とプライミング部位が示される(B)。プラスミドpgM4GFP+は、E4ΔgM-GFP、GFP-ポジティブ及びgMネガティブEHV-4の生成に用いた(B、C)。E4ΔgM-GFPのDNAの、gM-ORFを含む3.109bpのEHV-4配列を含有するプラスミドpgM4R(B)による組換えの結果E4RgM、gM-修復EHV-4(A)が生じ、又はE4ΔgM-GFPのDNAの、プラスミドpgM4w(B)による組換えの結果E4ΔgM-w、GFP-及びgM-ネガティブEHV-4が生じた(D)。
制限部位:BamHI−B、PstI−P、EcoRI−E、SalI−Sa、MluI−M、AsnI−As、EcoRV−EV
図4:外来性配列が無いgM-欠失EHV-4ウイルスのサザン-ブロット(E4ΔgM-w)。
示したとおりに、EHV-4、E4RgM、E4ΔgM-w及びE4ΔgM-GFPのDNAをPstI、EcoRV又はHindIIIで切断してDNA-断片をナイロン膜上にブロットした。平行の膜は、GFP-特異的配列、又はプラスミドpgM4R(図3)から得られるEHV-4特異的配列を含有するgM3.1という名称のプローブのどちらかとハイブリダイズした。CSPDを用いる化学発光でDNAハイブリッドを検出した。分子量マーカーサイズ(Biolabs)はkbpで示す。
【0009】
図5:gM欠失EHV-4ウイルス、E4ΔgM-wの成長特性。
ボックス内に列挙したようなMOIが2の種々のウイルスで細胞を感染させた。指定した時点について、感染細胞の上清内(細胞外活性)又は感染細胞内(細胞内活性)で決定されるウイルス力価としてウイルス成長のキネティクスを示す。2つの別個の実験手段を示し、標準偏差を誤差バーとして示す。
図6:E4ΔgM-wのプラークサイズ。
6-ウェルプレート内のベロ又はベロ-gM細胞を50 PFUのEHV-4、E4RgM、E4ΔgM-GFP又はE4ΔgM-wのいずれかで感染させた。150の代表プラークの最大直径を決定し、平均プラークサイズを野生型プラークのサイズを100%とした場合の%で示す。標準偏差を誤差バーとして示す(A)。プラークを間接的免疫蛍光(抗-gD Mab 20C4, 1:1000)によって、日4p.iで染色し、Axioscope(×100, Zeiss, Germany)内で分析した。図を走査してデジタル処理した(B)。
【0010】
図7:ベロ細胞中へのEHV-4ウイルスの浸透。
EHV-4、E4RgM、E4ΔgM-w及びE4ΔgM-GFPの浸透は、ベロ細胞中の非補完ベロ細胞(A)又は補完ベロ-gM細胞(B)上で生じた。所定の時点で、対照処理後に存在するプラーク数に対するクエン酸処理後に存在するプラーク数のパーセンテージとして浸透効率を決定した。
2つの独立的な実験の平均を与える。標準偏差を誤差バーとして示す。
図8:PCRプライマー配列及びEHV-4ゲノム内の増幅物の位置。
制限酵素認識部位を表す配列を太字で印刷し、それぞれの酵素を列挙する。所定のベクター中にPCR産物を挿入すると、示されるように、プラスミドpCgM4、pgM4R pgM4Del1又はpgM4Del2が生じた。EHV-4ゲノム内の断片の位置をTelfordら(1998)によって決定された配列に関連して与える。
【0011】
図9:ウマ血清のウエスタンブロット分析。
EHV-1 gM発現細胞系ccgMとRk13細胞のライセートを56℃で2分間(1、2)又は95℃で5分間(3)加熱した(gMは非常に疎水性であり、かつ煮沸するとすぐ凝集することが分かっているので、gMは、これ以上、分離しているゲルに入らない)。同一ブロットを種々のウマ血清(1:3000)又は抗-gMウサギ血清と共にインキュベートした。矢印は、煮沸及び非煮沸試料内のgM特異的反応性を指す。血清についてウイルス学の診断ユニットから得られた中和試験滴定量(NT)を示す。
図10:
(A)抗EHV-1 gMポリクロナール抗体を用いたEHV-1 gMのEHV-4 gMに対する比較。示したウイルス(MOIが0.5〜1)で細胞を感染させ、指定した時点p.iで細胞ライセートを調製した。スクロースクッション(30%)を通じてEHV-1又は-4ビリオンを繰返し遠心分離で精製し、PBS中に再懸濁させた。試料を5%の2-メルカプトエタノールを含有する緩衝液と混合してから、99℃で5分間加熱するか、又は4℃で放置した。SDS-10%PAGEでタンパク質を分離し、ニトロセルロースフィルター上にブロットした。抗-ウサギ免疫グロブリンG(IgG)ペルオキシダーゼ接合体(Sigma)を用いて抗体結合を可視化後、ECLTM検出を行った(Pharmacia-Amersham)。
(B)(A)で述べたように、EHV-4、E4ΔgM-w、E4ΔgM-GFP又はE4Rgで感染させたEdmin337細胞のビリオンを精製し、ウエスタンブロット分析に供した。ビリオンのgB反応性を、抗EHV-1 gBモノクロナール抗体3F6又は抗EHV-1 gMポリクロナール抗体を用いてgM反応性と比較した。
【0012】
(発明の開示)
本明細書で使用する用語の定義:
本発明の実施形態の前に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形、“a”、“an”、及び“the”は、文脈が特に明白に示さない限り、複数の言及を包含することに留意しなければならない。従って、例えば、“an EHVウイルス”は、EHV1、4などのようなすべての亜種をも含む複数の該EHVウイルスを包含し、“細胞”に対する言及は、1個又は複数の細胞及び当業者に公知の均等物に対する言及である等である。特に言及しない限り、本明細書で使用するすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験では、本明細書で述べた方法や材料と同様又は等価ないずれの方法や材料も使用できるが、ここでは、好ましい方法、装置、及び材料について述べる。本明細書で言及するすべての出版物は、本発明と関連して使用しうる該出版物内で報告されているとおりに細胞系、ベクター、及び方法論を述べかつ開示する目的のため、参照によって本明細書に取り込まれる。本明細書のいずれも、本発明が、先行発明によって該開示を事前日付にする権利を与えられないという承認として解釈すべきでない。
【0013】
本出願で使用する場合、用語“EHV”は、ファミリーアルファヘルペスウイルス亜科内の種EHV-1及びEHV-4のようなすべてのウマヘルペスウイルスを表す。用語EH-ウイルス、EHウイルス、EHVウイルス、EHV-ウイルス及びEHVは、すべてウマヘルペスウイルスに関する。
ビルレンス:本明細書で使用する場合、“ビルレンス”は、呼吸器症状、流産又は神経障害を特徴とする無症状疾患及び臨床的疾患を誘発する可能性のある標的宿主種(すなわちウマ)内で増殖可能なEH-ウイルスに関する。ビルレントEHVの例は、強い臨床症状を誘発する野生型ウイルスである。ビルレント因子の例は、溶血素(赤血球を溶解する)又は付着因子(病原体が宿主に付着し、かつコロニー形成又は浸潤を惹起できるタンパク質)である。さらに具体的には、“ビルレンス”は、本明細書では、ウイルスエンベロープの主な構成要素であるgM遺伝子産物を意味し、ウイルスを宿主に浸透させ、かつ細胞間伝播に関与する。
【0014】
弱毒化:本明細書で使用する場合、“弱毒化EH-ウイルス”は、EHV-関連無症状又は臨床的疾患を引き起こさない感染性EHVに関連する。特に本発明によれば、このような弱毒化EH-ウイルスは、複製でき、かつgMを発現しないEHVである。
本発明のEH-ウイルスの“機能変異体”は、実質的に本発明のEHVと同一である生物学的活性(機能的又は構造的)を有するEHVウイルスである。用語“機能変異体”は“機能変異体の断片”、“縮退核酸コードに基づく変異体”、又は“化学的誘導体”をも包含する。このような“機能変異体”は、例えば、1つ又はいくつかの核酸交換、欠失又は挿入を保有しうる。前記交換、欠失又は挿入は、完全配列の10%を占めうる。前記機能変異体は、少なくとも部分的にその生物学的活性、例えば感染クローン又はワクチン株としての機能を保持し、或いは生物学的活性が高まることさえある。
【0015】
“遺伝コードの縮退特性に基づく変異体”は、特定のアミノ酸は、いくつかの異なったヌクレオチドトリプレットによってコードされうるという事実から生じる変異体である。前記変異体は、少なくとも部分的にその生物学的活性を保持し、或いは生物学的活性が高まることさえある。
“融合分子”は、例えば、放射性標識のようなリポーター、蛍光標識のような化学分子又は技術的に公知のいずれかの他の分子に融合した、本発明のDNA分子又は感染性EHVウイルスでありうる。
本明細書で使用する場合、本発明の“化学的誘導体”は、本発明のDNA分子又は感染性EHVクローンであって、化学的に修飾され、或いは標準的には該分子の一部でない追加の化学的成分を含有するDNA分子又は感染性EHVクローンである。このような成分は、分子の可溶性、吸収、生物学的半減期などを改良しうる。
【0016】
両分子が実質的に同一のヌクレオチド配列又は生物学的活性を有する場合、一方の分子はもう一方の分子と“実質的に同一”である。従って、2つの分子が同一の活性を所有するという条件で、該ヌクレオチドが同一でない場合、それらは、当該用語を本明細書で使用するところの変異体とみなされ、同一の配列を有する2つの分子は、その生物学的活性が同一でない場合でさえ、当該用語を本明細書で使用するところの変異体とみなされる。
本明細書で使用する場合、用語“ワクチン”は、動物内で免疫学的応答を誘発する少なくとも1種以上の疫学的に活性な成分と、必ずしも必要でないが、おそらく前記活性成分の免疫学的活性を高める1種以上の追加成分とを含んでなる医薬組成物を表す。ワクチンは、さらに医薬組成物に典型的なさらなる成分を含んでよい。ワクチンの免疫学的に活性な成分は、いわゆる修飾生ワクチン(MLV)中、弱毒化粒子としてその元の形態の完全ウイルス粒子、或いはいわゆる死菌ワクチン中、適切な方法で不活化した粒子を含みうる。別の形態では、ワクチンの疫学的に活性な成分が前記生物(サブユニットワクチン)の適切な要素を含み、それによって、これら要素が、全粒子又は該粒子を含有する成長培養を殺し、かつ任意に、次の所望構造を与える精製工程によって、或いは例えば、細菌、昆虫、哺乳類又は他の種を基礎とした適切な系を利用する適宜の操作を含む合成プロセスと、任意に次の単離及び精製手順によって、或いは適切な医薬組成物(ポリヌクレオチドワクチン接種)を用いる遺伝物質の直接取込みによってワクチンを必要とする動物内における前記合成プロセスの誘導によって生成さる。ワクチンは、1種又は同時に複数の上記要素を含むことができる。
【0017】
本明細書で解釈する場合、用語“ワクチン”は、抗原性物質を含む獣医学用のワクチンであり、EHVによって引き起こされる病気に対して特異的かつ活性な免疫を誘発する目的で投与される。本発明のEHVワクチンは、それが含有する免疫原に対し、時には抗原的に関連する生物にも対する母性抗体によって受動的に移行しうる活性免疫を与える。
免疫応答を高めるための添加成分は、一般的にアジュバントと呼ばれる構成要素であり、例えば、水酸化アルミニウム、鉱油若しくは他の油又はワクチンに付加される補助的分子、又は限定するものではないが、インターフェロン、インターロイキン又は成長因子のように、該添加成分のそれぞれの誘導後、体によって産生される。
“ワクチン組成物又は医薬組成物”は、本質的に、それを投与する生物、又は該生物内若しくは生物上で生きている生物の生理学的、例えば免疫学的機能を変更できる1種以上の成分から成る。この用語は、限定するものではないが、抗体又は抗寄生虫、並びに限定するものではないが、形質のプロセシング、無菌性、安定性、経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内若しくは他の適切な経路のような腸内又は腸管外経路で該組成物を投与するための容易性、投与後の耐性、制御放出特性のような特定の他の目的を達成するために一般的に使用する他の構成要素を包含する。
【0018】
発明の開示
上記課題に対する解決は、特許請求の範囲を特徴とする記述と実施形態によって達成される。
本発明は、外来性配列が無いウマヘルペスウイルスが産生されないという技術的困難性と偏見を克服する。本発明の方法を用いることで、ワクチン用の優れた品質のEH-ウイルスが提供される。残存gMカルボキシ末端配列がアミノ末端配列とは異なるリーディングフレーム内にあるように、タンパク質gMの中心コーディング配列が除去される。必須タンパク質UL9相同体(遺伝子53)の隣接遺伝子、その定位及びタンパク質gMの遺伝子コーディングとの重なりは、gM用遺伝子の最小ヌクレオチド配列が遺伝子53の発現を許したままであり、それによってウイルス生存度を保持しなけれればならないことを必要とする。従って、本発明のEHVは、UL9相同体(遺伝子53)用遺伝子コーディングの発現が影響されないような様式で、タンパク質gM用遺伝子コーディングが欠失していることを特徴とするEHV’sに関する。用語“影響されない”は、UL9の特定の定量的又は定性的特性に関するものではないが、単に、前記タンパク質が該ウイルスによって発現され、かつ該ウイルスの生存度に本質的に十分な量で存在する限り、該遺伝子の発現は影響されないということを意味する。
【0019】
組換えウマヘルペスウイルス4を含むワクチンの長い間の技術的要望が本発明者らによって満たされ、本技術の主要な困難を克服したた。本発明のEHV-1及びEHV-4ウイルスは、例えば、ワクチン用に有利に使用することができる。
従って、第1の重要な実施形態では、本発明は、タンパク質gMをコードする配列、ひいてはgM自体が存在しないウマヘルペスウイルス(EHV)に関し、異種要素が無いことを特徴とする。“異種要素が無い”は、外来性配列、すなわち本発明の前記ウイルス用コーディング配列内に存在するlacZ-又はGFP-コード化カセットのような非-EHV配列が無いことを意味する(いわゆる“ホワイトクローン”)。従って、本発明のEHVは、EHV配列によって完全にコードされる。本発明のEHVは、細菌要素又は前記細菌要素をコードする核酸が無い。さらに、gMタンパク質用の完全コーディング配列のほとんど、ひいてはコードされた上記gMタンパク質が排除されている。従って、好ましくは、本発明の前記EHVは、該タンパク質gM用遺伝子コーディングの欠失のため、該タンパク質gMが存在しないことを特徴とする。しかし、上述したように、“タンパク質gM用遺伝子コーディングが存在しない”ことは、最小gM配列が、少なくとも重なり遺伝子53配列がまだ存在するように残存していることも必要であり、該残存gM配列は欠失されうる(後述する)。これはすべて分子生物学的技術(後述する)で達成しうるので、組換えEHVが産生される。
EHV-1又はEHV-4のgM遺伝子の欠失をうまく行うためのマーカーとしてlacZを使用しても、本発明のウイルスの生成は成功しない(実施例1、2参照)。そこで、本発明者らは、前記ウイルスを得る本発明の方法を開発した。GFPマーカーを含有するカセットの挿入によってgM遺伝子を欠失せてEH-ウイルスを構築した。このアプローチは、驚くべきことに、入力ウイルス(緑色蛍光プラーク)と新しい組換えプラーク(非蛍光プラーク)との間の区別を可能にした。
【0020】
好ましくは、EHVは以下の工程を含む方法で得られる。
a)野生型EHVを単離する工程;
b)EHV gM遺伝子をコードし、任意に隣接配列を有するプラスミドを確立する工程;
c)gM又はその一部を発現する補完細胞系(complementing cell line)を生成する工程;
d)工程b)の補完細胞系を、EHV-核酸及びGFP-コード化カセット挿入断片で中断されているgMをコードするプラスミドを用いて共形質移入することによって、そのgMコーディング配列内にGFP-コード化カセット挿入断片を保有するEHウイルスを確立する工程;
e)GFP-コード化カセットを欠失させる工程;及び
f)GFP-コード化カセットがうまく欠失しているEHVクローンを選択する工程。
【0021】
“lacZ”は、β-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子として当業者に知られている。本発明では、“GFP”は、生物発光クラゲ類によって産生された緑色蛍光タンパク質(GFP)を指す(Chalfieら, 1994)。
“補完細胞系”は、該細胞系ゲノム内に普通は存在しない遺伝子が導入され、かつ構成的に発現されている細胞系を意味する。有用な細胞系としては、限定するものではないが、実施例1と2で開示されるように、ウサギ腎臓細胞系tRk13、細胞系cc(Seyboldtら, 2000)又はクローン1008のようなベロ細胞系(ATCCカタログ # CRL-1586)が挙げられ、かつ当業者に知られているいずれの他の細胞系も含まれる。通常、それは、この追加タンパク質を発現する細胞クローン用に選択することができる。この細胞系は、該ウイルス内で欠失している遺伝子を発現し、この欠損を補完し、かつ遺伝子欠失後の該ウイルスの成長を可能にする。
制限酵素、連結、PCR、形質移入等の標準的分子生物学的方法は技術的に周知である(例えば、Sambrookら (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York参照)。
好ましくは、このような本発明のEHVは、EHV-1であることを特徴とする。さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、1332bpのgMオープンリーディングフレームの850〜1100bpが欠失していることを特徴とする。なおさらに好ましくは、本発明のEHV-4は、該gMオープンリーディングフレームの900〜1000bpを欠失していることを特徴とする。さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、該gMオープンリーディングフレームの960〜970bpが欠失していることを特徴とする(960、961、962、963、964、965、966、967、968、969又は970bp)。最も好ましくは、本発明のEHV-1は、該gMオープンリーディングフレームの962bpが欠失していることを特徴とする。
さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の150〜200塩基対(bp)及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の150〜250bpを除いて欠失していることを特徴とする。このより好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードするコーティング配列のヌクレオチド93118-93267〜93118-93317及びgMのN末端部をコードするコーディング配列のヌクレオチド94223-94472〜94323-94472だけを残して欠失している。従って、さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、ヌクレオチド93268-93318〜94222-94322(gMのコアタンパク質をコードする)が欠失している(Telford, 1992に従ってナンバリング)ことを特徴とする。与えられた範囲内で、いずれの数のヌクレオチドが欠失していてもよい。従って、本発明によれば、欠失は、低くてヌクレオチド位置93268で開始しうるが、位置93318で始まらなければならない。欠失は、位置94222程度の早さで終わりうるが、位置94322より遅くない。従って、本発明の好ましいEHV-1は、Telford位置(1992)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド93268〜94322を欠失していることを特徴とする。93272〜94312、93300〜94300等のようないずれの組合せも、本発明の範囲内である。
【0022】
なおさらに好ましくは、本発明のEHV-1は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の160〜190bp及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の190〜220を除いて欠失していることを特徴とする。このより好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードする配列のヌクレオチド93118-93277〜93118-93307及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の94253-94472〜94283-94472だけを残して欠失している。従って、さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、ヌクレオチド93278-93308〜94252-94282(gMのコアタンパク質をコードする)が欠失していることを特徴とする(Telford, 1992に従ってナンバリング)。
さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の180〜190(180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190)bp及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の200〜210(200、201、202、203、204、205、206、207、208、209又は210)bpを除いて欠失していることを特徴とする。このより好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードする配列のヌクレオチド93118-93297〜93118-93307(93297、93298、93299、93300、93301、93302、93303、93304、93305、93306、93307)及びgMのN末端部をコードする配列のヌクレオチド94263-94472〜94273-94472(94263、94264、94265、94266、94267、94268、94269、94270、94271、94272、94273)でけを残して欠失している。従って、さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、ヌクレオチド94298-94308〜94262-94272(gMのコアタンパク質をコードする)が欠失している(Telford, 1992に従ってナンバリング)。これは、本発明により、上述した残存ヌクレオチド内のいずれのヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド94299〜94263又は94299〜94264又は94300〜94272又はそのいずれの組合せも欠失しうることを意味する。
【0023】
最も好ましくは、本発明のEHV-1は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の184bp及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の209bpを除いて欠失していることを特徴とする。この最も好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードするコーディング配列のヌクレオチド93118〜93301及びgMのN末端部をコードするコーディング配列のヌクレオチド94264〜94472だけを残して欠失している。従って、最も好ましくは、本発明のEHV-1は、ヌクレオチド94263〜93302(gMのコアタンパク質をコードする)を欠失していることを特徴とする(Telford, 1992に従ってナンバリング)。この最も好ましい実施形態では、gMをコードする配列の962ヌクレオチドが欠失している。これについては、実施例1で非限定的様式で実証する。
【0024】
また、gMが欠失しており、異種要素が無く、群AB69(ATCC VR2581)、EHV-1 Ts-変異体ECACC V99061001、EHV-1のKyA、KyD、Ab1、Ab4、RacH、RacL11又はRacMから選択される株に基づく組換え変異体であり、かつGFP-又はlacZ-要素のような異種要素が存在しないことを特徴とするEHV-1がさらに好ましい。また、さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、gMが欠失しており、GFP-又はlacZ-要素のような異種要素が無く、かつEHV-1の株RacHに基づく組換え変異体であることを特徴とする。最も好ましくは、本発明のEHV-1は、gMが欠失しており、GFP-又はlacZ-要素のような異種要素が無く、かつ実施例1で開示するようなRacH-ベース組換え変異体アイソレートHΔgM-wであることを特徴とする。本発明の前記EHV-1 HΔgM-wは、ブダペスト条約に従い、特許寄託として“Centre for Applied Microbiology and Research(CAMR)及びEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)”, Salisbury, Wiltshire SP4 0JG, UKに寄託した。寄託日付は、2002年10月16日であり、予備識別リファレンスはH-delta-gM-wであり、国際寄託当局ECACC/CAMRによって与えられた受託番号は02101663である。前記寄託したEHV-1のすべての同定特徴を有するEHV-1も好ましい。
【0025】
前述したすべてのEHV-1は、GFPのような異種要素のあるウイルスを超える優れた特性を有する。本発明の前記EHV-1は、まだ異種要素を含むウイルスより有利に高い細胞外感染力を有する。これは、図5で実証される(例えば、4〜12時間)。
本発明が為されるまで、本分野では誰もワクチンとして使用できる組換えEHV-4ウイルスを生成できなかった。EHV-1とEHV-4は相同性であり、ある程度まで交差反応性である。しかし、EHV-1はEHV-4感染に対して十分な保護を与えないようなので、本分野では、長い間、弱毒化EHV-4ウイルスが要望されていた。従って、好ましくは、本発明のEHVは、EHV-4であることを特徴とする。さらに好ましくは、本発明のEHV-4は、1332bpのgMオープンリーディングフレームの900〜1150bpが欠失していることを特徴とする。なおさらに好ましくは、本発明のEHV-4は、該gMオープンリーディングフレームの1000〜1150bpを欠失していることを特徴とする。さらに好ましくは、本発明のEHV-1は、該gMオープンリーディングフレームの1110〜1115bpが欠失していることを特徴とする(1110、1111、1112、1113、1114又は1115)。最も好ましくは、本発明のEHV-1は、該gMオープンリーディングフレームの1110bpを欠失していることを特徴とする。
【0026】
さらに好ましくは、本発明のEHV-4は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の0〜50塩基対(bp)及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の150〜250bpを除いて欠失していることを特徴とする。このより好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードするコーティング配列のヌクレオチド92681-92680〜92681-92730及びgMのN末端部をコードする配列のヌクレオチド93766-94033〜93866-94033だけを残して欠失している。従って、さらに好ましくは、本発明のEHV-4は、ヌクレオチド92681-92731〜93765-93865(gMのコアタンパク質をコードする)が欠失している(Telford, 1998に従ってナンバリング)ことを特徴とする。与えられた範囲内で、いずれの数のヌクレオチドが欠失していてもよい。従って、本発明によれば、欠失は、低くてヌクレオチド位置92681で開始しうるが、位置92731で始まらなければならない。欠失は、位置93765程度の早さで終わりうるが、位置93865より遅くない。従って、好ましくは、本発明のEHV-4は、Telford位置(1998)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド92681〜93865を欠失していることを特徴とする。92672〜93801、92700〜93800等のようないずれの組合せも、本発明の範囲内である。
【0027】
なおさらに好ましくは、本発明のEHV-4は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の10〜400bp及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の190〜220を除いて欠失していることを特徴とする。このより好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードする配列のヌクレオチド92681-92690〜92681-92720及びgMのN末端部をコードするコーディング配列のヌクレオチド93806-94033〜93836-94033だけを残して欠失している。従って、さらに好ましくは、本発明のEHV-4は、ヌクレオチド92691-92721〜93805-93835(gMのコアタンパク質をコードする)が欠失していることを特徴とする(Telford, 1998に従ってナンバリング)。
【0028】
さらに好ましくは、本発明のEHV-4は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の30〜40(30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40)bp及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の200〜210(200、201、202、203、204、205、206、207、208、209又は210)bpを欠失していることを特徴とする。このより好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードする配列のヌクレオチド92681-92710〜92681-92720(92710、92711、92712、92713、92714、92715、92716、92717、92718、92719、92720)及びgMのN末端部をコードする配列のヌクレオチド93816-94033〜93826-94033(93824、93825、93826、93827、93828、93829、93830、93831、93832、93833、93834)だけを残して欠失している。従って、さらに好ましくは、本発明のEHV-4は、ヌクレオチド92711-92721〜93823-93833(gMのコアタンパク質をコードする)を欠失している(Telford, 1998に従ってナンバリング)。これは、本発明により、上述した残存ヌクレオチド内のいずれのヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド94299〜94257又は94299〜94256又は94300〜94257又はそのいずれの組合せも欠失しうることを意味する。
【0029】
最も好ましくは、本発明のEHV-4は、gMのコーディング配列が、gMのC末端部をコードするコーディング配列の34bp及びgMのN末端部をコードするコーディング配列の209bpを除いて欠失していることを特徴とする。この最も好ましい実施形態では、gMのコーディング配列は、gMのC末端部をコードするコーディング配列のヌクレオチド92681〜92714及びgMのN末端部をコードするコーディング配列のヌクレオチド93825〜94033だけを残して欠失している。従って、最も好ましくは、本発明のEHV-1は、ヌクレオチド92715〜93824(gMのコアタンパク質をコードする)を欠失していることを特徴とする(Telford, 1998に従ってナンバリング)。この最も好ましい実施形態では、gMをコードする配列の1110ヌクレオチドが欠失している。これについては、実施例2で非限定的様式で実証する。
【0030】
また、gMが欠失しており、GFP-又はlacZ-要素のような異種要素が無く、かつEHV-4の株MSV Lot 071398に基づく組換え変異体であることを特徴とするEHV-4がさらに好ましい。最も好ましくは、本発明のEHV-4は、gMが欠失しており、GFP-又はlacZ-要素のような異種要素が無く、株MSV Lot 071398に基づき、かつ実施例2で開示するようなアイソレートE4ΔgM-4であることを特徴とする。本発明の前記EHV-1 HΔgM-wは、ブダペスト条約に従い、特許寄託として“Centre for Applied Microbiology and Research(CAMR)及びEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)”, Salisbury, Wiltshire SP4 0JG, UKに寄託した。寄託日付は、2003年1月14日であり、予備識別リファレンスはEHV-4であり、国際寄託当局ECACC/CAMRによって与えられた受託番号は03011401である。前記寄託したEHV-4のすべての同定特徴を有するEHV-4も好ましい。
【0031】
本分野では、組換えEHV-4は入手できないので、前述したすべてのEHV-4は、先行技術で知られているウイルスを超える優れた特性を有する。さらに、本発明の前記EHV-4は、まだGFPのような異種要素を含むウイルスより有利に高い細胞外感染力を有する。これは、図10で実証される(例えば、24時間で)。
本発明の別の重要な要素は、上述したようなEHVの核酸コーディングである。熟練家は、技術的に公知の標準的な分子生物学的方法で容易に対応する配列を決定できる。
【0032】
本発明のEHVを得るために技術的に特有の困難があった。本発明者らは、gM遺伝子中にマーカー遺伝子(lacZ)を導入するgMネガティブEHVウイルスを構築した。lacZ挿入によって産生されたEHV-1及びEHV-4変異体の両者内でこのカセットを除去しようとしたとき、表現型的にlacZネガティブなすべてのクローンが、まだlacZカセットを含んでいた。そこで、発明者らは、前記ウイルスを得る方法発明を開発した。GFPマーカーを含有するカセットの挿入によってgM遺伝子を欠失せてEH-ウイルスを構築した。このアプローチは、驚くべきことに、入力ウイルス(緑色蛍光プラーク)と新しい組換えプラーク(非蛍光プラーク)との間の区別を可能にした。また、本発明者らは、構成的にEHV-4-gMを発現するベロ細胞系(ベロ細胞クローン1008に基づく)を生成して本技術の困難を克服した。適切なgM遺伝子の形質移入及びその後のgM-発現ベロ細胞の選択によって前記細胞系を生成した。前記細胞だけがEHV-4 gMネガティブウイルスを複製できた。
【0033】
本発明の前記gM-補完ベロ細胞系は、ブダペスト条約に従い、特許寄託として“Centre for Applied Microbiology and Research (CAMR)及びEuropean Collection of Cell Cultures (ECACC)“, Salisbury, Wiltshire SP4 0JG, UKに寄託した。寄託日付は、2003年1月28日であり、予備識別リファレンスはVERO GMであり、国際寄託当局によって与えられた受託番号は03012801である。前記寄託したVERO GM細胞系のすべての同定特徴を有する細胞系も好ましい。
【0034】
好ましくは、組換えEHVを得る方法は、以下の工程を含む。
a)野生型EHVを単離する工程;
b)EHV gM遺伝子をコードし、任意に隣接配列を有するプラスミドを確立する工程;
c)gM又はその一部を発現する補完細胞系を生成する工程;
d)工程b)の補完細胞系を、EHV-核酸及びGFP-コード化カセット挿入断片で中断されているgMをコードするプラスミドを用いて共形質移入することによって、そのgMコーディング配列内にGFP-コード化カセット挿入断片を保有するEHウイルスを確立する工程;
e)GFP-コード化カセットを欠失させる工程;及び
f)GFP-コード化カセットがうまく欠失しているEHVクローンを選択する工程。
【0035】
前記見出し細胞は、本発明の重要な実施形態である。従って、本発明は、本発明の方法で使用するための細胞系であって、タンパク質gMをコードする遺伝子を前記細胞系中に形質移入し、かつ前記細胞系がgMを発現することを特徴とする細胞系に関する。本発明は、好ましくは、ベロ細胞(Vero-gM細胞)、RK-13、及びcc(cc-gM)の群から選択される細胞系であることを特徴とする本発明の細胞系に関する。
EHV-1について上述したように、EHV-4でもマーカーとしてGFPの代わりにlacZを使用することは、本発明のウイルスの生成の成功をもたらさなかった(実施形態2の非限定的様式を参照せよ)。“LacZ-ポジティブ”細胞は、一般的にベロ細胞上ではRk13細胞上より弱く染色するので、同定が困難であり、かつEHV-4系はEHV-1よりゆっくり複製するので、プラーク同定と生きたウイルス子孫の単離との間の時間が短かった。そのため、GFPの使用が前記EHV-4を得るために唯一の方法であることを示した。手順は、EHV-1について上述したように行い、驚くべきことに、蛍光プラークを同定することによって、EHV-4 gM欠失ウイルス同定の成功ももたらされた。
【0036】
野生型EHVの単離は、EHVによって病気にかかっている疑いのある動物から検死時に肺組織を収集し、かつ技術的に知られているとおりに組織細胞上のEHVを単離することによって達成した。EHV-1完全ゲノム配列はTelfordら(1992)によって公表されている。同様に、EHV-4の完全ゲノム配列はTelfordら(1998)によって公表されている。問題のDNA範囲に隣接する標的DNAの相補鎖に結合する特異的プライマーを用いるDNA配列のPCR増幅は、標準的な分子生物学的方法を代表する。意図した構成に好適なプラスミド中に適切なDNA配列を連結する方法、真核生物細胞中へのDNA形質移入の方法、サザン-ブロット法やウエスタンブロット分析法、制限酵素によるDNA断片の部位特異的切除法、及び所望異種遺伝子を発現する細胞系又は所望の遺伝子を内部にもつプラスミド又は特定遺伝子が欠失しているウイルスの選択方法を当業者は知っている。上述した技法のような標準的な分子生物学的方法は、当業者に周知であり、かつ例えばSambrookら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York及びBertram, S. and Gassen, H.G. Gentechnische Methoden, G. Fischer Verlag, Stuttgart, New York, 1991で見つけることもできる。
“欠失”は、1個又は数個のヌクレオチド又はアミノ酸の除去を意味する。
【0037】
本発明の別の重要な実施形態は、本発明のEHVを、任意に薬学的に許容しうる担体又は賦形剤と共に含む医薬組成物又はワクチンである。
また、本発明の重要な実施形態は、上述したとおりの本発明の核酸を含む医薬組成物である。
好ましくは、本発明のワクチンは、上で定義したとおりのワクチンを指す。用語“生ワクチン”は、複製、特に活性ウイルス成分の複製が可能な粒子を含むワクチンを指す。
好ましくは、本発明のワクチンは、上述したとおりの本発明のgM-欠失EHV-1を、上述したとおりの本発明のgM-欠失EHV-4又は任意に他の抗原性基及び任意に薬学的に許容しうる担体又は賦形剤と組み合わせて含む。前記ワクチンは、同時に混合ワクチンとして投与してよい。最も好ましくは、本発明の前記弱毒化EHV-1を最初に投与し、次いで3〜4週間後に、本発明の弱毒化EHV-4を投与する。また、最も好ましくは、本発明の前記弱毒化EHV-1を本発明の弱毒化EHV-4と組み合わせて、2又は3回の基礎ワクチン接種が与えられる典型的なワクチン接種スキームで投与する。このようなワクチンの典型的なワクチン接種スキームは、4週間離して2回のワクチン接種後(基礎ワクチン接種)、6カ月ごとに正規の追加免疫する。しかし、上述したとおりの本発明の前記ワクチンは、異なる間隔、例えば3カ月ごとに投与してもよい。
【0038】
熟練家は、投与を2回又は複数回の処理に分け、相互にすぐ後に施し、或いは何らかの他の所定間隔範囲で施すように選択することができる。好ましくは、このような間隔は、1°免疫化、約4週間後に2°免疫化、任意にその5〜6カ月後の3°免疫化でよい。所望の持続時間及び処理の有効性によって、ワクチンを1回又は数回投与するか、また間欠的に投与することができる。本発明のワクチンは、飼育前にロバに投与し、その妊娠中に再び投与してEHV関連流産を防止することができる。他のウマは、例えば1年に1回ワクチン接種することができる。子馬は、出生後まもなくワクチン接種してよい。
本発明のワクチンは、専門家に知られる種々の投与経路、特に静脈内注射又は標的組織内への直接注射で投与することができる。全身投与では、静脈内、血管内、筋肉内、動脈内、腹腔内、経口、又は粘膜内(例えば、鼻又は呼吸器スプレー又は注射)経路が好ましい。より局所的な投与は、皮下、皮内、肺内又は治療すべき組織内若しくはその近傍に直接投与することができる(結合-、骨-、筋肉-、神経-、上皮組織)。本発明のワクチン組成物は、移植によって又は経口的に投与することもできる。筋肉内投与が最も好ましい。
【0039】
上記用途に好適なワクチン製剤を調製するため、専門家は既知の注射用の生理学的に許容しうる無菌溶液を使用できる。腸管外注射又は注入用にすぐに使える溶液を調製するため、食塩水又は対応する血漿タンパク質のような等張水溶液が容易に利用できる。ワクチン製剤は、使用直前に無菌状態で既知の注射用溶液と再構成できる凍結乾燥又は乾燥製剤として存在しうる。本発明のワクチン製剤の最終製剤は、本発明の精製したウイルスを、無菌の生理学的に許容しうる溶液(既知の担体及び/又は賦形剤で補充してよい)と混合することによって注射、注入又は潅流用に調製される。ワクチン製剤中に存在する本発明の各EH-ウイルスの適用量は、好ましくは104〜108 TCID50/動物毎、105〜107 TCID50/動物毎、最も好ましくは106 TCID50/動物毎である。
さらに、本発明は、本発明のEHVの、EHV-関連状態の予防及び/又は治療用薬物の製造における使用に関する。
本発明は、さらに本発明の核酸の、EHV-関連状態の予防及び/又は治療用薬物の製造における使用に関する。
さらに、本発明は、本発明の医薬組成物を前記動物に投与し、かつ治療の成功をモニターすることを特徴とする動物の予防及び/又は治療方法に関する。
【0040】
本発明は、好ましくはEHV-感染ウマ動物を上述したとおりの本発明のgM-欠失EHVで治療する方法であって、上述したとおりの弱毒化EHV又はワクチン組成物を、投与が必要なウマ動物に、当業者が知っている適切な投与量で投与し、ウイルス血症及び白血球減少症及び/又は咳及び/又は発熱及び/又は鼻汁及び/又は下痢及び/又はうつ病及び/又は流産のようなEHV症状の低減をモニターする方法に関する。従って、本発明は、本発明の医薬組成物を前記動物に投与し、かつ治療の成功をモニターすることを特徴とする動物の予防及び/又は治療方法に関する。治療は、上記ワクチン組成物について開示したとおりに行うことができる。
【0041】
本発明は、好ましくは感染性EHV-1又はEHV-4の特異的構造に対する抗体を検出する方法、及び野生型感染を上述したようなgM欠失EHV-1又はEHV-4の存在から免疫学的方法で区別する方法に関する。免疫学的方法は本分野の専門家に知られており、限定するものではないが、ELISAs(エンザイム-リンクドイムノソルベントアッセイ(enzyme-linked immuno-sorbent assay))又はサンドイッチ-ELISAs、ドット-ブロット法、イムノブロット法、ラジオイムノアッセイ(Radioimmunoassay RIA)、核酸-ベースドオークターロニー試験(Ouchterlony tests)、ロケット免疫蛍光アッセイ又はウエスタンブロット法が挙げられる。免疫学的方法の例は、例えば以下の文献に記載されている:An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques, Elsevier Science Publishers, Amsterdam。The Netherlands (1986); Bullockら, Techniques in Immunocytochemistry, Academic Press, Orlando, FL Vol. 1 (1982), Vol. 2 (1983), Vol. 3 (1985); Tijssen, Practice and Theory of Enzyme Immunoassays: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands (1985)。
前記ELISAは、限定するものではないが、ELISA分析に好適なプラスチック表面上に固定化したgM遺伝子産物又はgM遺伝子産物の一部又は他のいずれかのEHウイルス1若しくはEHウイルス4遺伝子産物を使用することができる。
【0042】
本発明のELISAは、限定するものではないが、以下の工程を含む。
a)gM遺伝子産物又はその断片をプラスチック支持体上に固定化する工程、
b)プラスチック表面を適切な洗浄緩衝液(例えば、PBS-Tween)ですすぐ工程;
c)該試料を選択ウェルに添加し、該ELISAプレートを標準的な方法でインキュベートする工程、
d)該ELISAプレートのウェルを洗浄し、HRP(ワサビペルオキシダーゼ(horse radish peroxidase))のような酵素に結合して適切な抗体を添加する工程、
e)適切な基質を添加して、結合した抗体/HRP接合体を検出後、個々のウェルの光学密度の測光読み出しをする工程。適切な抗体、例えばウサギ抗ウマIgは本分野で知られる。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は、さらに本発明を説明するのに役立つが、これら実施例は、本明細書で開示する本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
(実施例1)
実施例1:gM欠失EHV-1アイソレート
大腸菌lacZ(HΔgM-lacZ)又は緑色蛍光タンパク質(GFP)発現カセット(HΔgM-GFP)のどちらかを挿入して、gM-遺伝子配列の74.5%を置換することによって、gMネガティブEHV-1を構築した。マーカータンパク質の発現が組換えウイルスの同定とその後の精製を容易にする。ワクチンウイルス内のいかなる“非-EHV-1”配列の存在も回避するため、マーカー遺伝子配列を除去し、別の第2世代gM-ネガティブEHV-1、“ホワイト”HΔgM(HΔgM-w)を構築することを決定した。
この目的のため、プラスミドpXuBaxAを構築した(図1)。まず、pXuBaxA-配列のlacZ-標識化ウイルスHΔgM-lacZ中への組換えを試みた。第1工程で、形質移入上清の100〜1000PFUの塗布後いくつかのホワイトプラークが生じるように、リン酸カルシウム法によって媒介されるDNA形質移入を最適化した。その結果、子孫ウイルスの精製用にいくつかのプラークを選び、4〜5ラウンドの単プラークの単離に供した。
【0044】
複数の独立的に単離された表現型的にlacZ-ネガティブのウイルス集団をサザン-ブロット法で遺伝子型的に分析すると、まだlacZ-カセットの配列を保有することが分かった。
“lacZ-サイレンシング”のため真にlacZ-ネガティブウイルス集団を単離することの困難性が予測されたので、多数の表現型的にlacZ-ネガティブのウイルス集団を精製したが、分析は成功しなかった。そこで、“ホワイト”gM-ネガティブRacHウイルスを生成するという戦略を、GFPカセットの挿入によって構築したgMネガティブEHV-1との共形質移入に切り替えることによって変えた。 GFP-発現ウイルスの使用は、入力ウイルス(緑色蛍光プラーク)と新しい組換えウイルス(非蛍光プラーク)との間の区別を容易にし、ひいては表現型的にGFP-ネガティブのプラークの単離効率を高めた。(i)両方の第1世代HΔgMウイルスは、マーカーは別として、遺伝的に同一であり、かつ(ii)問題の領域内の最終的な表現型は組換えプラスミド(pXuBaxA)によって決定されるので、“入力”gM-ネガティブRacHは、期待される組換えウイルスの表現型に影響しないと予想した。
プラスミドpXuBaxA(“ホワイト”gMネガティブEHV-1を得るために必要な構成物)の構築のため、EHV-1 gMの1352bpのオープンリーディングフレーム内の962bpのApaI-HincII断片をプラスミドpBH3.1から除去した(図1D)。プラスミドpBH3.1は、gM遺伝子の周囲のEHV-1 BamHI-HindIII断片を運ぶ(Seyboldtら, 2000)。先端が切れた(truncated)いかなるgM-産物の発現も妨げるため、平滑末端調整及び連結後、残存C末端gM配列(183bp)が残存N末端配列(208bp)と共にフレーム内にないように、制限エンドヌクレアーゼApaIとHincIIを選択した。
【0045】
EHV-1 gM発現細胞系ccgM(Seyboldtら, 2000;Dr. N. Osterriederから得た)を、5〜10%のウシ胎児血清(Biochrom, γ-照射した)で補充した最小基本培地内で維持した。ccgM-細胞と5〜10μgのプラスミドpXuBaxA(図1D)及びHΔgM-lacZ又はHΔgM-GFPのそれぞれ2μgのDNAとのリン酸カルシウム媒介共形質移入によって、EHV-1中への相同的組換えを達成した。
引き続くプラスミドpBH3.1のBamHI-HindIII断片に特異的なジゴキシゲニン標識化プローブによるHΔgM-GFPのDNAの分析は以下を明らかにした(図2)。
(i)BamHI上の2.757bp及び9.043bp断片、
(ii)HindIII上の10.006bp及び825bp断片、及び
(iii)PstI消化DNA上の5.415bp及び4.474bp断片。
【0046】
使用した制限酵素(BamHI、HindIII、PstI)は、GFP-マーカーカセット内で切断することによって、それぞれのGFP-マーカーカセットフリーDNAに対する断片パターンを変える。 GFP-プローブは、それぞれの第1断片(i〜iii)に結合し、RacH又はHΔgM-wのDNA上のGFP-特異的配列を検出しなかった。
RacHのDNAEuでは、予想したBamHI(11.166bp)、HindIII(10.199bp)及びPstI(9.257bp)断片が検出され、962bpのgM-配列の除去に従ってサイズ減少していた(10.204bp、9.237bp及び8.279bpに;図3B)。
【0047】
図1に対する解説で述べたとおりに構築したgM-ネガティブウイルス(HΔgM-w又はHΔgM-GFP)と、RacHの単工程成長キネティクスを実行した。24ウェルプレート内のRk13細胞を
、それぞれのウイルスの2のMOIで感染させた。種々の時間p.i(0、4、8、12、16、20、24時間p.i.)で、上清及び感染した細胞ペレットを別個に収集した。上清を低速遠心分離によって細胞デブリから除去し、細胞を凍結-解凍に供した後、細胞-関連感染力を検定した。すべてのウイルス力価は、24ウェルプレート内のそれぞれRk13又はccgM細胞について別個に決定した。結果(データ示さず)は以下のようにまとめることができる:両HΔgM-ウイルスの細胞-関連感染力は、RacHで感染させた細胞の力価(細胞内感染力)と比較した場合、Rk13細胞について係数1.6(4時間p.i.)〜45(20時間p.i.)減少した。RacHの力価(細胞外感染力)と比較した場合、両HΔgMウイルスの細胞外ウイルス力価は最大186(HΔgM-w)又は650(HΔgM-GFP)倍(12時間p.i.)まで減少し、ウイルスが出ていくことにおけるRacHの役割も支持している。
【0048】
実施例2:gM欠失EHV-4アイソレート
gM-ネガティブEHV-1の構成と類似のものとして示すため、lacZ選択をEHV-4の選択用に選んだ。gM-ネガティブEHV-4の単離を可能にするため、構成的にEHV-4 gMを発現するベロ細胞系を構築した。5〜10%のウシ胎児血清(Biochrom, γ-照射した)で補充した最小基本培地内でベロ細胞クローンC1008(ATCC番号:CRL-1586)を維持した。1μgのプラスミドpCgM4(図3B)と0.1μgのプラスミドpSV2neo(G418に対する抵抗性を与える;Neubauerら, 1997)のベロ細胞中へのをEffecteneTM(Qiagen)媒介形質移入によって、組換え細胞系ベロ-gMを生成した。細胞クローンをまずG418(Calbiochem)に対する抵抗性について選択し、次にgMネガティブEHV-4のトランス-相補性について選択した。組換え細胞系のあらゆる第5継代培地(500μg/ml)にG418を添加した。すべての細胞をPCRによるマイコプラズマ(Mycoplasma)及びFACS分析によるウシウイルス性下痢ウイルス(Bovine Viral Diarrhoe Virus)(BVDV)抗原について規則正しく分析した。選択した細胞クローンをベロ-gMと称し、以下の実験で使用した。
【0049】
EHV-4 DNAをプラスミドpgM4β+と共にベロ-gM細胞中に形質移入した(図3B)。組換えの結果、いくつかの“lacZ-ポジティブ”プラークが生じ、それを単離して再び培地に塗布した。しかし、EHV-4の欠失変異体の精製は、(i)“lacZ-ポジティブ”プラークは一般にRk13細胞上よりベロ細胞上で低強度で染色するため同定が困難であり、かつ(ii)EHV-4系はEHV-1より遅く複製するためプラークの同定と生存ウイルス子孫の単離との間の時間が少ないので、EHV-1におけるより困難かつ遅いことが分かった。
単離されたすべてのlacZ-ポジティブプラークは精製の第1ラウンドで失われ、別の溶液を探さざるをえなかった。そこで、EHV-4でもGFP-マーカーの使用を試みた。第1工程でプラスミドpgM4GFP+を構築し(図3B)、EHV-4 DNA中への組換えに用いた。結果のGFP-ポジティブプラークを、細胞系ベロ-gM上の単プラークの3ラウンドの単離で精製した。
相同性GFP-ポジティブウイルス集団を選択し、ウイルスDNAをサザン-ブロット分析に供した(図4)。結果のウイルス、E4ΔgM-GFPのDNA(図3C)をプラスミドpgM4R又はpgM4wのどちらかと共に形質移入した(図3B)。プラスミドpgM4Rは、E4RgMと呼ばれるgM-修復EHV-4の構築で用いた(図3A)。プラスミドpgM4wは、同時にgM-及びマーカー遺伝子-ネガティブEHV-4、E4ΔgM-wを生成するための基礎だった(図3D)。E4RgM及びE4ΔgM-wウイルス集団をGFP-ネガティブ表現型について単離し、ベロ又はベロ-gM細胞上で精製し、最後にサザン-ブロット法で分析した(図4)。真核生物細胞内でEHV-4 gMを発現させるため、プラスミドpCgM4を生成した(図3B)。図8に示されるプライマーとTaqポリメラーゼ(MBI-Fermentas)を用いるPCRでEHV-4 gMの完全ORFを増幅した。結果のPCR-産物をベクターpcDNAI/Amp(Invitrogene)中に挿入した。
【0050】
EHV-4のヌクレオチド91.699〜94.808のPCR-増幅(Telfordら, 1998)及び増幅産物のベクターpGEM3Zf+(Promega)中への挿入後、プラスミドpgM4Rが生じた(図3B;図8)。このプラスミドをgM-修復EHV-4、E4RgMの構築に使用した(図3A)。
最初に1352bpのEHV-4 gMの1110bpを欠失するように設計したプラスミドpgM4β+(図3B)を構築するため、多工程戦略を選択した。第1工程で、PFUポリメラーゼ(Stratagene)を用いてPCRでDNA組換えに必要な両フランキング配列を独立的に増幅した。段階的クローニングに必要な制限部位をプライマー配列で付加した(図8)。PCR産物をベクターpTZ18R(Pharmacia)中に挿入し、その結果プラスミドpgM4Del1とpgM4Del2が生じた(図8)。
次工程で、3.9kbpの大腸菌lacZ発現カセットをプラスミドptt264A+(Osterriederら, 1996)からSalI及びBamHI消化によって離し、プラスミドpgM4Del1中に挿入するとプラスミドpgM4Del1β+が生じた。次いで、pgM4Del2から得たEHV-4特異的配列を、結果のプラスミドpgM4β+内でマーカー遺伝子カセットがEHV-4特異的配列に隣接するように、PstIと SalIを用いてpgM4Del1β+中に導入した(図3B)。
次に、プラスミドpgM4β+をSalIとBamHIで消化し、再びlacZ-カセットを離し、結果の5’-オーバーハングをクレノウポリメラーゼと共に充填し、再連結から生じた構成物をpgM4wと呼んだ(図3B)。この場合もやはりgM-配列のN末端208ntと残存C末端33ntとの間のフレームシフトを設計した。
【0051】
プラスミドpgM4GFP+を生成するため(図3B)、SalI及びBamHI部位を用いてlacZ-カセットをpgM4β+から取り出し(図3B)、AsnI及びMluI消化によってベクターpEGFP-C1(Clontech)から除去したベクターGFP-カセット(CMV-プロモーターとSV40-ポリAを含む)で置換した。制限酵素生成オーバーハングをクレノウポリメラーゼで平滑末端調整した。
すべてのPCR産物の正しい増幅は、サイクルシークエンシング(MWG Biotech)及びEHV-4株NS80567の公表されている配列との比較で確認した(Telfordら, 1998)。
細胞系ベロ-gMを用いてEHV-4中への組換えを行い、プラスミドpgM4β+又はpgM4GFP+のどちらかを(図3B)EHV-4 DNAと共に形質移入して第1世代gM-ネガティブEHV-4を生成した(図3C)。プラスミドpgM4w(図3B)とgM-ネガティブEHV-4のDNAね結合の結果、E4ΔgM-wとなった(図3D)。最後に、プラスミドpgM4R (図3B)とE4ΔgM-GFPのDNAのベロ細胞中への共形質移入後、gM-修復EHV-4、E4RgM(図3A)を単離した。
EHV-4、E4RgM、E4ΔgM-w及びE4ΔgM-GFPのDNAをPstI、EcoRV又はHindIIIで切断し、DNA-断片をナイロン膜上にブロットした。平行膜は、GFP-特異的配列(図2と同様に)又はプラスミドpgM4Rから取り出したEHV-4特異的配列を含有するgM3.1という名前のプローブ(図3B)のどちらかとハイブリダイズした。
【0052】
得られた消化の結果は以下のとおりである(図4):
(i)E4ΔgM-GFPのDNA上で、GFP-プローブは、PstI切断時、5.531bpの断片、EcoRV-消化後8.383bpの断片、及びHindIII消化後4.528bpの断片を認識した。同一の断片プラス1.792bp(PstI)、1.801bp(EcoRV)及び826プラス5.487bp(HindIII)の断片がプローブgM3.1と反応した。
(ii)親EHV-4、又は修復ウイルスE4RgM若しくはE4ΔgM-wのどちらもいずれのGFP特異的配列も運ばなかった。
(iii)EHV-4及びE4RgM中のgM3.1反応性DNA-断片は、それぞれ6.806bp(PstI)、7.874bpプラス1.801bp(EcoRV)及び4.837プラス5.487bp(HindIII)で欠失した。
(iv)gM-及びGFP-カセットネガティブウイルスE4ΔgM-wは、GFP-配列とハイブリダイズしないが、それぞれEHV-4特異的配列(gM3.1)とハイブリダイズした。後者のプローブは野生型ウイルスと比較した場合1110bpのgM配列を欠いている、すなわちそれぞれ5.696bp(PstI)、6.764bpプラス1.801bp(EcoRV)及び3.727bpプラス5.487bp(HindIII)で欠失している断片を検出した。
これらすべてのウイルスのHindIII切断DNA上に、別のgM3.1プローブ特異的断片が126bpで存在するが(図2C)、この断片は、このサザン-ブロットで示すには小さすぎた。
ウイルスE4ΔgM-GFP及びE4ΔgM-wはそのgMを発現する能力を失い、かつさらにE4ΔgM-wはマーカー遺伝子配列を失った。
【0053】
a)培養細胞上でのウイルス成長。上で詳述したような種々の変異体ウイルスのウイルス成長特性をベロ細胞及びベロ-gM細胞上で比較した。24ウェルプレート内に接種した細胞を1〜2のMOIで感染させ、細胞外(細胞外感染力)と細胞内(細胞内感染力)ウイルス力価を種々の時点p.i.で決定した(図5)。レスキュアント(rescuant)E4RgMウイルスの成長特性は、EHV-4の成長特性とよく一致したが、非補完細胞上のE4ΔgM-wの産生及びのE4ΔgM-GFP細胞外ウイルス力価には驚くべき阻害があった。この一連の実験では(2つの独立した実験の平均)、細胞外感染力は24時間p.i.前に欠失しなかった。30時間p.iでさえ、細胞は高度の細胞変性効果を示したが、非常に低い力価が細胞外で観察されただけだった(最低希釈度10-1で最大1.5プラーク/ml)。しかし、細胞外感染力の差異は100倍に達せず、24時間p.i.でピークだった(EHV-4とE4ΔgM-wの間で84倍)。細胞内感染力検出の遅延は、1時点だけだった(12時間対15時間p.i.)。まとめると、驚くべきことに、EHV-4バックグラウンドのgM-配列の欠失はウイルスのインビトロ複製に莫大な影響を及ぼす
が、gMの発現は複製に必須でないことを示した。特に細胞外感染性ウイルスが減少し、かつプラークサイズによって反映されるように、直接隣接細胞を感染する能力が減少した。
【0054】
b)プラークサイズ。ベロ又はベロ-gM細胞のEHV-4、E4RgM、E4ΔgM-w又はE4ΔgM-GFPによる感染後、150個のプラークの直径を測定し、野生型プラークのサイズを100%に設定し、それに対する平均プラークサイズを決定した。gMネガティブウイルスはベロ細胞内で感染かつ複製できるが、最大プラーク径が野生型プラーク径の20%未満に著しく減少することが明白に実証された(図6)。親又はレスキュアントウイルスによる感染の結果、野生型様外観のプラークをもたらし、観察された表現型が確かにgM-欠失によって誘導されたことを示している。こんことは、E4ΔgM-w及びE4ΔgM-GFPのプラーク形成が細胞系ベロ-gM上で完全に修復されるという事実によって、さらに確証された(データ示さず)。
【0055】
c) 透過実験。この実験では、EHV-4のエントリキネティクスに及ぼすEHV-4 gMの影響を評価した。100PFUの異なるウイルス、親EHV-4、gM修復ウイルスE4RgM、及びgM-欠失変異体及びE4ΔgM-GFP(図3参照)を4℃で6-ウェルプレート内のベロ細胞に吸着させた。
90分後、それぞれの接種材料を新鮮な培地と交換し、インキュベーション温度を37℃にシフトさせて透過を惹起した。温度シフト後異なる時間に−開始直後(=0分)−クエン酸緩衝液(pH3.0)で細胞を処理することによって細胞外感染力をpH-不活化した。それに従って平行試料を洗浄するが、あらゆる時点で“吸着感染力”を“透過感染力”と比較できるように、クエン酸緩衝液をPBSと交換した。細胞をメトセルオーバレイ(methocell overlay)下で4日間インキュベート後、プラーク数を決定した。
c)数セットの実験を行った:図7Aには、非補完ベロ細胞上で増殖後の遺伝子型的及び表現型的gM-ネガティブウイルスの結果が示され、図7Bは、ウイルスがgM-発現ベロ-gM細胞上で成長したとき、表現型的に補完されたE4ΔgM-w及びE4ΔgM-GFPのキネティクスを示す。
【0056】
透過を惹起して40分後、感染性親EHV-4(E4RgM)の平均52.8%(56,7%)が細胞外酸処理から保護されたが(図7A、○)、33.7%(E4ΔgM-w−■)及び38.5%(E4ΔgM-GFP−▲)のgMネガティブウイルスが保護されただけだった。エントリキネティクスの最後の時点では、異なるグラフがいろいろ重なり始め、150分の透過時間後に61.7%〜78.9%の最大透過効率に達し、特定の検定可変性が、観察されるわずかな差異を説明しうることを示している(図7A)。
gMネガティブウイルスを補完ベロ-gM細胞上で調製した場合、その透過効率に全く差異は観察されなかった(7B)。約20%(株RacL11;Osterriederら, 1996)から40%まで(株KyA;Seyboldtら, 2000)のgM-ネガティブEHV-1のエントリキネティクスの遅延とは対照的に、EHV-4のgMを欠失することの効果は、条件付きで言及しなければならない。それにもかかわらず、以下の結論を引き出すことができる:(i)表現的に補完されないgM-ネガティブウイルスに対して表現型的に補完されるgM-ネガティブウイルスのキネティクスに差異が観察されたが(図7A〜B)、(ii)EHV-4透過に及ぼすgMを欠失することの効果は実質的に無視できる。
【0057】
実施例3:gM特異的血清学試験を用いる抗gM抗体用ウマ血清の分析
gMが、野生型感染とgM-ネガティブワクチンによるワクチン接種を区別するための血清学的マーカーとして使用できるか述べるため、いくつかの仮説を試験しなければならなかった。第1に、野外ウイルス感染したウマの血清がgM-特異的抗体を含むかどうか評価する必要があった。初期分析では、ウエスタンブロットシステムがバックグラウンド反応性に対する特異的反応を同定できるので、ウエスタンブロット試験を選択した。高度に中和した血清を用いると(EHV-1及び/又は-4中和滴定量は1:128〜256)、EHV-1 gM発現細胞系ccgMのライセートがウマ血清による特異的シグナルを欠失させ、かつ1:3000への血清の希釈が最も良く機能するようであることを立証した(データ示さず)。
【0058】
結果として、EHV-1 gMワクチン治験で期待した12頭のすべての子馬(6頭にワクチン接種し、6頭は対照)の血清をウエスタンブロットでgM反応性について分析した。各個のウマの3つの異なる血清を試験した:それぞれ治験に入る前(Pre)、2回目のワクチン接種4週間後(V2)及び誘発(challenge)感染2週間後(C)に採取。
ウエスタンブロット分析による概要では(図9)、(i)EHV-1中和活性を示すウマの血清すべてをgMにポジティブに試験し、(ii)EHV-1への接触が分かる前、又はgM-ネガティブEHV-1でワクチン接種後に分析したいずれの試料内でもgM反応性は欠失されず、かつ(iii)ワクチン治験ウマのgM-ポジティブ誘発ウイルスによる感染後、12例の中から10例でgMが明らかに検出できることが分かった。最後に(iv)抗EHV-1抗体力価及びgM反応性の強さは直接関係しないようであることが観察された。
【0059】
ウマ血清の高いバックグラウンド反応性のため、血清学的試験の立証は困難である。ウマ血清内で得られた間接的免疫蛍光(IIF)データに基づき、間接的又は遮断試験システムのどちらかを確立しなければならず、或いはELISA試験で使用するための高度に精製したgM-ポリペプチドが必要であることを確認した。この目的のため、以下のようにELISAを確立した。精製したgMポリペプチド又は完全gMのどちらかを、該捕獲タンパク質の良い付着を確実にするためにコーティングした96ウェルプレートの固体支持体上に固定化した。検定では、乾燥ミルク又は同様の物質で非特異的結合部位を遮断して非特異的結合を防止した。この後、プラスチック表面を適宜の洗浄緩衝液(例えば、PBS-Tween)ですすぎ、過剰の遮断剤を除去した。次いで、試料を選択ウェルに加え、標準化方法に従ってELISAプレートを37℃でインキュベートし、試料中の抗体を固定化捕獲タンパク質に結合させた。次工程で、洗浄緩衝液による数回のすすぎによってELISAプレートのウェルを完全に洗浄後、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)のような酵素に結合した適切な抗-ウマ抗体を添加した。最後に、適切な基質を添加することによって、結合した抗体/HRP接合体の検出、次いで個々のウェルの光学密度の測光読み出しを行った。得られた値を同一検定法で実験したポジティブ及びネガティブ対照と比較した。
【0060】
実施例4:EHV-4 gMの同定
EHV-4 gMの予測されるアミノ酸配列を計算すると、EHV-1 gMのアミノ酸配列と86.7%の同一性であるが(Telfordら, 1998)、抗EHV-1 gM Mab 13B2(Allen及びYeargan, 1987)は、ウエスタンブロット法で特異的に型-特異的タンパク質のみと反応する(Crabbら, 1991)。それにもかかわらず、この研究でEHV-4相同体を同定するため、他の抗-EHV-1 gM抗体を(Seyboldtら, 2000;Day, 1999)、精製したEHV-4ビリオン上、EHV-4で感染した細胞のライセート上又はベロ-gM細胞のライセート上で試験した。組換え細胞系である後者をIE-HCMVプロモーターの制御下発育させてEHV-4 gMを合成した。EHV-4 gMに対するすべての抗-EHV-1 gMモノクロナール抗体の反応性はウエスタンブロット法の検出限界未満であったが、対応するEHV-1試料は、常に容易に反応を示した(データ示さず)。His-標識化EHV-1 gM誘導ポリペプチド(アミノ酸376〜450;Seyboldtら, 2000)に対してウサギ内で産生されたポリクロナール抗血清だけが、異種gMと十分に強く反応して、EHV-4 gMの同定を可能にした(図10A)。この抗体を用いると、精製したEHV-4ビリオン内で約50,000〜55,000のMrの特異的反応性が観察された。その予測される疎水特性によって、検出されたgM-タンパク質は煮沸すると凝集した。対照的に、組換えベロ-gM細胞内で発現したgMの型は、主に約46,000〜48,000のMrで発達し、EHV-4のgM-タンパク質が、EHV-1について示されているのと同様に処理されることを示している(Osterriederら,1997;Rudolph及びOsterrieder, 2002)。
【0061】
いくつかの実験を行ってEHV-4内のgM-欠失の表現型を分析した。他の糖タンパク質の発現と比較するため、EHV-4、E4RgM、E4ΔgM-w又はE4ΔgM-GFPで感染させたベロ細胞のライセートをウエスタンブロット分析に供した。gMの欠失は遅発型タンパク質gB又はgDの産生に影響しないことを実証し、ウイルス複製の初期段階が実質的に該欠失に影響されないことを示している。
別の実験では、野生型、修復又は両gM-欠失EHV-4のビリオン標品の分析によって、gM-ネガティブウイルス内では全くgM反応性が検出できないが、該タンパク質は対照ビリオン内で容易に反応を示すことを実証できた。それぞれの標品中のビリオンの存在は、gBに対する類似のブロット探索で示された(図10B)。
【0062】
(参考文献)
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【0063】
なお、本発明の態様として以下のものが挙げられる。
〔1〕
タンパク質gMが存在しないウマヘルペスウイルス(EHV)であって、前記EHVが異種要素が無いことを特徴とするEHV。
〔2〕
前記タンパク質gMの遺伝子コーディングが欠失していることを特徴とする〔1〕記載のEHV。
〔3〕
以下の工程:
a)野生型EHVを単離する工程;
b)EHV gM遺伝子をコードし、任意に隣接配列を有するプラスミドを確立する工程;
c)gM又はその一部を発現する補完細胞系を生成する工程;
d)工程b)の補完細胞系を、EHV-核酸及びGFP-コード化カセット挿入断片で中断されているgMをコードするプラスミドを用いて共形質移入することによって、そのgMコーディング配列内にGFP-コード化カセット挿入断片を保有するEHウイルスを確立する工程;
e)GFP-コード化カセットを欠失させる工程;及び
f)GFP-コード化カセットがうまく欠失しているEHVクローンを選択する工程;
を含む方法で得られる〔1〕又は〔2〕記載のEHV。
〔4〕
EHV-1であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のEHV。
〔5〕
850〜1100bpのgMオープンリーディングフレームが欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔6〕
完全gMコーディング配列が、C末端部用の150〜200bpの該コーディング配列及びN末端部用の150〜250bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔7〕
Telford位置(1992)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド93268-93318〜94222-94322が欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔8〕
Telford位置(1992)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド93268〜94322が欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔9〕
完全gMコーディング配列が、C末端部用の184bpの該コーディング配列及びN末端部用の209bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔10〕
Telford位置(1992)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド94263〜93302が欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔11〕
EHV-1の株RacHに基づく組換え変異体であることを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔12〕
受託番号02101663で2002年10月16日にECACC/CAMRで寄託したとおりのRacH-ベース組換え変異体アイソレートHΔgM-wであることを特徴とする〔1〕〜〔11〕のいずれか1つに記載のEHV-1。
〔13〕
EHV-4であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のEHV。
〔14〕
900〜1150bpのgMオープンリーディングフレームが欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は13のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔15〕
完全gMコーディング配列が、C末端部用の0〜50bpの該コーディング配列及びN末端部用の150〜250bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔14〕のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔16〕
Telford位置(1998)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド92681-92731〜93765-93865が欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔15〕のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔17〕
Telford位置(1998)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド92681〜93865が欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔16〕のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔18〕
完全gMコーディング配列が、C末端部用の34bpの該コーディング配列及びN末端部用の209bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔17〕のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔19〕
Telford位置(1998)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド92715〜93824が欠失していることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔18〕のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔20〕
EHV-4のMSV Lot 071398に基づく組換え変異体であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は13〜19のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔21〕
MSV Lot 071398及びアイソレートE4ΔgM-wに基づき、かつ受託番号03011401で2003年1月14日にECACC/CAMRで寄託したEHV-4であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔20〕のいずれか1つに記載のEHV-4。
〔22〕
〔1〕〜〔21〕のいずれか1つに記載のEHVをコードする核酸。
〔23〕
〔1〕〜〔21〕のいずれか1つに記載のEHVを含んでなるワクチン製剤。
〔24〕
〔22〕記載の核酸を含んでなるワクチン製剤。
〔25〕
〔1〕〜〔21〕のいずれか1つに記載のEHVの、EHV関連状態の予防及び/又は治療用薬物の製造での使用。
〔26〕
〔22〕記載の核酸の、EHV関連状態の予防及び/又は治療用薬物の製造での使用。
〔27〕
動物の予防及び/又は治療方法であって、〔23〕又は〔24〕記載のワクチン製剤を前記動物に投与し、かつその治療成果をモニターすることを特徴とする方法。
〔28〕
〔1〜12記載の少なくとも1種のEHV-1と、〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔21〕記載の少なくとも1種のEHV-4とを含んでなるワクチン製剤。
〔29〕
〔1〜12記載の少なくとも1種のEHV-1と、〔1〕〜〔3〕又は〔13〕〜〔21〕記載の少なくとも1種のEHV-4の、EHV関連状態の治療用薬物の製造での使用。
〔30〕
動物の予防及び/又は治療方法であって、〔28〕記載のワクチン製剤を前記動物に投与し、かつその治療成果をモニターすることを特徴とする方法。
〔31〕
組換えEHVを得る方法であって、以下の工程:
a)野生型EHVを単離する工程;
b)EHV gM遺伝子をコードし、任意に隣接配列を有するプラスミドを確立する工程;
c)gM又はその一部を発現する補完細胞系を生成する工程;
d)工程b)の補完細胞系を、EHV-核酸及びGFP-コード化カセット挿入断片で中断されているgMをコードするプラスミドを用いて共形質移入することによって、そのgMコーディング配列内にGFP-コード化カセット挿入断片を保有するEHウイルスを確立する工程;
e)GFP-コード化カセットを欠失させる工程;及び
f)GFP-コード化カセットがうまく欠失しているEHVクローンを選択する工程;
を含む方法。
〔32〕
〔31〕記載の方法で使用するための細胞系であって、タンパク質gMをコードする遺伝子が前記細胞系中に形質移入され、かつ前記細胞系がgMを発現することを特徴とする細胞系。
〔33〕
ベロ細胞、RK-13、及びccの群から選択されることを特徴とする〔32〕記載の細胞系。
〔34〕
受託番号03012801で2003年1月28日にECACC/CAMRで寄託したgM補完細胞系VERO GMであることを特徴とする〔31〕〜〔33〕のいずれか1つに記載の細胞系。
【0064】
本発明に関するアミノ酸配列及び遺伝子配列を以下に示す。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質gMが存在しないウマヘルペスウイルス(EHV)であって、前記EHVが異種要素が無いことを特徴とするEHV。
【請求項2】
前記タンパク質gMの遺伝子コーディングが欠失していることを特徴とする請求項1記載のEHV。
【請求項3】
以下の工程:
a)野生型EHVを単離する工程;
b)EHV gM遺伝子をコードし、任意に隣接配列を有するプラスミドを確立する工程;
c)gM又はその一部を発現する補完細胞系を生成する工程;
d)工程b)の補完細胞系を、EHV-核酸及びGFP-コード化カセット挿入断片で中断されているgMをコードするプラスミドを用いて共形質移入することによって、そのgMコーディング配列内にGFP-コード化カセット挿入断片を保有するEHウイルスを確立する工程;
e)GFP-コード化カセットを欠失させる工程;及び
f)GFP-コード化カセットがうまく欠失しているEHVクローンを選択する工程;
を含む方法で得られる請求項1又は2記載のEHV。
【請求項4】
EHV-1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のEHV。
【請求項5】
850〜1100bpのgMオープンリーディングフレームが欠失していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項6】
完全gMコーディング配列が、C末端部用の150〜200bpの該コーディング配列及びN末端部用の150〜250bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項7】
Telford位置(1992)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド93268-93318〜94222-94322が欠失していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項8】
Telford位置(1992)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド93268〜94322が欠失していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項9】
完全gMコーディング配列が、C末端部用の184bpの該コーディング配列及びN末端部用の209bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項10】
Telford位置(1992)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド94263〜93302が欠失していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項11】
EHV-1の株RacHに基づく組換え変異体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項12】
受託番号02101663で2002年10月16日にECACC/CAMRで寄託したとおりのRacH-ベース組換え変異体アイソレートHΔgM-wであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のEHV-1。
【請求項13】
EHV-4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のEHV。
【請求項14】
900〜1150bpのgMオープンリーディングフレームが欠失していることを特徴とする請求項1〜3又は13のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項15】
完全gMコーディング配列が、C末端部用の0〜50bpの該コーディング配列及びN末端部用の150〜250bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする請求項1〜3又は13〜14のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項16】
Telford位置(1998)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド92681-92731〜93765-93865が欠失していることを特徴とする請求項1〜3又は13〜15のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項17】
Telford位置(1998)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド92681〜93865が欠失していることを特徴とする請求項1〜3又は13〜16のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項18】
完全gMコーディング配列が、C末端部用の34bpの該コーディング配列及びN末端部用の209bpの該コーディング配列を除いて欠失していることを特徴とする請求項1〜3又は13〜17のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項19】
Telford位置(1998)に対応するとおりのgMコーディング配列のヌクレオチド92715〜93824が欠失していることを特徴とする請求項1〜3又は13〜18のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項20】
EHV-4のMSV Lot 071398に基づく組換え変異体であることを特徴とする請求項1〜3又は13〜19のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項21】
MSV Lot 071398及びアイソレートE4ΔgM-wに基づき、かつ受託番号03011401で2003年1月14日にECACC/CAMRで寄託したEHV-4であることを特徴とする請求項1〜3又は13〜20のいずれか1項記載のEHV-4。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項記載のEHVをコードする核酸。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1項記載のEHVを含んでなるワクチン製剤。
【請求項24】
請求項22記載の核酸を含んでなるワクチン製剤。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項記載のEHVの、EHV関連状態の予防及び/又は治療用薬物の製造での使用。
【請求項26】
請求項22記載の核酸の、EHV関連状態の予防及び/又は治療用薬物の製造での使用。
【請求項27】
非ヒト動物の予防及び/又は治療方法であって、請求項23又は24記載のワクチン製剤を前記動物に投与し、かつその治療成果をモニターすることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1〜12記載の少なくとも1種のEHV-1と、請求項1〜3又は13〜21記載の少なくとも1種のEHV-4とを含んでなるワクチン製剤。
【請求項29】
請求項1〜12記載の少なくとも1種のEHV-1と、請求項1〜3又は13〜21記載の少なくとも1種のEHV-4の、EHV関連状態の治療用薬物の製造での使用。
【請求項30】
非ヒト動物の予防及び/又は治療方法であって、請求項28記載のワクチン製剤を前記動物に投与し、かつその治療成果をモニターすることを特徴とする方法。
【請求項31】
組換えEHVを得る方法であって、以下の工程:
a)野生型EHVを単離する工程;
b)EHV gM遺伝子をコードし、任意に隣接配列を有するプラスミドを確立する工程;
c)gM又はその一部を発現する補完細胞系を生成する工程;
d)工程b)の補完細胞系を、EHV-核酸及びGFP-コード化カセット挿入断片で中断されているgMをコードするプラスミドを用いて共形質移入することによって、そのgMコーディング配列内にGFP-コード化カセット挿入断片を保有するEHウイルスを確立する工程;
e)GFP-コード化カセットを欠失させる工程;及び
f)GFP-コード化カセットがうまく欠失しているEHVクローンを選択する工程;
を含む方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法で使用するための細胞系であって、タンパク質gMをコードする遺伝子が前記細胞系中に形質移入され、かつ前記細胞系がgMを発現することを特徴とする細胞系。
【請求項33】
ベロ細胞、RK-13、及びccの群から選択されることを特徴とする請求項32記載の細胞系。
【請求項34】
受託番号03012801で2003年1月28日にECACC/CAMRで寄託したgM補完細胞系VERO GMであることを特徴とする請求項31〜33のいずれか1項記載の細胞系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−57512(P2010−57512A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284427(P2009−284427)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2004−522473(P2004−522473)の分割
【原出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】