説明

異臭の少ない塗膜形成用塗料組成物

【課題】加熱時間に制約を受けるプレコート金属板製造ラインでも、塗膜臭のない熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗膜を形成できる塗料を提供する。
【解決手段】質量比10:90〜90:10で(メタ)アクリル系単量体,(メタ)アクリル系重合体を配合した(メタ)アクリル系混合物:100質量部に対し、1分間半減期温度がそれぞれ異なる第一熱ラジカル重合開始剤を0.05〜3質量部,第二熱ラジカル重合開始剤:0.05〜2質量部を配合した塗料である。第一熱ラジカル重合開始剤の1分間半減期温度T1は100〜160℃,第二熱ラジカル重合開始剤の1分間半減期温度T2は110〜170℃の範囲にあり、温度差ΔT(T2-T1)が10〜50℃の範囲に調製されている。第一,第二熱ラジカル重合開始剤の合計配合量は:0.1〜5質量部に調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ラジカル重合型アクリル樹脂をベースとし、異臭の少ない塗膜の形成に適した塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル鋼板は、耐久性,加工性,耐疵付き性,防火性等に優れていることから内装材,外装材,表装材,電気製品用筐体等、広範な分野で使用されてきた。しかし、廃材処理プロセスでは、ダイオキシンの発生を防止するため塩化ビニル樹脂塗装鋼板を高温加熱し、塩化ビニル樹脂が溶融除去された鋼板をリサイクルしている。
高温加熱には1500℃以上が必要で多量の熱エネルギーが消費されるので、環境負荷が小さな塩化ビニル樹脂代替材料が望まれており、フッ素樹脂塗料,ウレタン樹脂塗料等が検討されている。
【0003】
フッ素樹脂塗料やウレタン樹脂塗料から成膜された塗膜は、膜厚が20〜40μm程度であり、塩化ビニル樹脂塗装金属板の膜厚200μmに比べて薄い。塗膜が薄い塗装金属板を屋根材等に使用すると、下地金属に至る疵がつかないように細心の注意が施工時に必要となる。
フッ素樹脂,ウレタン樹脂塗料から樹脂塗膜を厚膜形成する場合、樹脂塗膜の表面が荒れやすい。具体的には、多量の塗料を塗装原板に塗布し、熱風乾燥させると、初期段階で塗料表面の乾燥が先行し、塗料内部に残存している有機溶剤が後から気化する。気化した有機溶剤は、乾燥した塗膜表面の下で気泡となり、ワキ,肌荒れ等の塗膜欠陥の原因になる。
【0004】
本発明者等は、ワキ,肌荒れ等の塗膜欠陥が生じがたい塗料組成物について種々調査・検討を重ねた結果、未重合の(メタ)アクリル系単量体を含む熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗料に可塑剤を配合することにより、塩化ビニル樹脂塗膜と同等の膜厚で、ワキ,肌荒れ等の欠陥なく厚膜化が可能で、加工速度の大きなプレス成形等でも亀裂,脱落等が生じがたいアクリル樹脂塗膜を形成することを見出した(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004-331897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱によりラジカルが発生する重合開始剤を配合したアクリル樹脂塗料では、重合開始剤によりモノマーの重合を促進させて塗膜としている。ところが、熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗料をプレコート金属板用に使用すると、焼付け時間が短いため重合反応が十分に進行しない場合がある。不十分な重合反応のため焼付け硬化後にモノマーが残留すると、異臭を発する塗膜となる。
異臭の原因となるモノマーの残留は、熱ラジカル重合開始剤を増量して重合反応を加速させることで回避できる。しかし、熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗料を増量すると塗膜が過度に硬質化し、プレコート金属板に要求される加工性が低下する。
【0006】
本発明は、このような問題を解消すべく、アクリル樹脂塗料に配合する重合開始剤に関する知見をベースとし、1分間半減期温度が異なる複数種の熱ラジカル重合開始剤を配合することにより、焼付け温度近傍に達する前の段階で(メタ)アクリル系単量体の重合反応を進行させ、短時間焼付けでも十分な塗膜物性が確保され、加工性を損なうことなく異臭の原因となるモノマーが低減された塗膜の形成に適した熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗料は、未重合の(メタ)アクリル系単量体と重量平均分子量:103〜106の(メタ)アクリル系重合体との質量比が10:90〜90:10の範囲にある(メタ)アクリル系混合物を主成分とし、少なくとも1分間半減期温度の異なる複数の熱ラジカル重合開始剤が配合されている。二種の熱ラジカル重合開始剤を配合する場合、1分間半減期温度T1:100〜160℃の第一熱ラジカル重合開始剤,1分間半減期温度T2:110〜170℃の第二熱ラジカル重合開始剤で、且つ温度差ΔT(T2−T1)が10〜50℃の範囲にある組合せを選択する。
【0008】
第一,第二熱ラジカル重合開始剤は、熱ラジカル重合開始剤にはジアシルパーオキサイド類,パーオキシジカーボネート類,パーオキシエステル類,パーオキシケタール類等から、1分間半減期温度T1:100〜160℃,1分間半減期温度T2:110〜170℃,温度差ΔT(T2−T1):10〜50℃を満足する組合せが選択される。(メタ)アクリル系混合物:100質量部に対して第一熱ラジカル重合開始剤は0.05〜3質量部,第二熱ラジカル重合開始剤は0.05〜2質量部の比率で配合される。第一,第二ラジカル重合開始剤の合計配合量は、0.1〜5質量部の範囲とすることが好ましい。
【0009】
熱ラジカル重合開始剤の他に、ブロック型イソシアネート架橋剤:0.1〜20質量部,分子量:500以上の可塑剤:1〜20質量部,顔料:0.1〜100質量部を配合しても良く、塗料組成物の粘度は好ましくは1〜100Pa・sに調整される。顔料には、体質顔料,防錆顔料,着色顔料等があり、高反射度が要求される反射板,ランプシェード等の用途では酸化チタン顔料が好適である。
【発明の効果】
【0010】
熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗料に使用される未重合(メタ)アクリル系単量体は、たとえばアクリル酸エステルモノマー(CH2=CH-COOR,R:アルキル基)であり、アルキル基Rの種類に応じガラス転移温度,沸点,屈折率等が異なる。そのため、焼付け硬化後の塗膜に要求される加工性,硬度等の性能に対応する(メタ)アクリル系単量体が選定されるが、焼付け時間の短いプレコート金属板製造ラインでは未重合のモノマーが残留しやすい。
【0011】
本発明では、1分間半減期温度が異なる複数種の熱ラジカル重合開始剤を配合することにより、塗膜臭の原因物質である未重合モノマーの残留を減少させている。熱ラジカル重合開始剤は1分間半減期温度近傍でラジカルを発生するが、ラジカルは重合反応に使用されると消滅する。ラジカルが消滅すると、未重合の(メタ)アクリル系単量体が残っていても重合反応が生じないので、一種類の熱ラジカル重合開始剤では塗膜中に未重合の(メタ)アクリル系単量体が残留しやすい。
【0012】
通常、プレコート金属板製造ラインでは、塗装原板に塗料を塗布した後、炉内温度分布が図1のパターンになっている加熱炉に送り込み、塗料硬化に必要な温度まで板温を徐々に上げていく。1分間半減期温度T1が比較的低い第一熱ラジカル重合開始剤,1分間半減期温度T2が比較的高い第二熱ラジカル重合開始剤が塗料に含まれているので、第一熱ラジカル重合開始剤のみのラジカル反応で(メタ)アクリル系単量体が未重合のまま残存しても、1分間半減期温度T2が比較的高い第二熱ラジカル重合開始剤のラジカルによりラジカル反応が生起される。そのため、残存する未重合(メタ)アクリル系単量体が極めて少なくなる。
【0013】
1分間半減期温度T1が比較的高い第二熱ラジカル重合開始剤が働く前に、塗料又は塗膜に含まれていた大半の(メタ)アクリル系単量体がすでにポリマー化しているので、第二熱ラジカル重合開始剤から発生したラジカルによる(メタ)アクリル系単量体の重合反応を短時間に設定しても、塗膜に残留する未重合(メタ)アクリル系単量体が極端に少なくなる。その結果、塗料の焼付け時間が制約されるプレコート金属板製造ラインでも異臭のない塗膜が得られる。しかも、熱ラジカル重合開始剤の増量を必要としないので、必要以上に塗膜硬度が上昇してプレコート金属板の加工性を低下させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔熱重合型アクリル塗料の調製〕
熱重合型アクリル塗料は、未重合の(メタ)アクリル系単量体,既重合の(メタ)アクリル系重合体を混合したアクリル系混合物をベース樹脂としている。未重合(メタ)アクリル系単量体,既重合(メタ)アクリル系重合体の配合比率は、10:90〜90:10の範囲で選定される。既重合(メタ)アクリル系重合体の配合量が少なすぎると硬化時に揮発量が多く、塗膜の平滑性が劣化しやすい。逆に既重合(メタ)アクリル系重合体の配合量が多すぎると塗料の粘度が上昇し、塗工時に不具合を生じ易くなる。
【0015】
未重合(メタ)アクリル系単量体は、分子内にアクリロイル基,メタクリロイル基の何れかを1個以上を有する化合物であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル,脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル,アクリル酸アリールエステル,(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル,官能基含有単量体等が1種又は2種以上を組み合わせて使用される。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸デシル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0016】
脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステルには(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アリールエステルには(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルには、(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸プロポキジエチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル,(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル,(メタ)アクリル酸等の官能基含有単量体等も使用できる。
【0017】
アクリル系混合物には、(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他の重合性不飽和基を有する化合物を混合しても良い。
共重合可能な他の重合性不飽和基を有する化合物には、イタコン酸,クロトン酸,マレイン酸,フマル酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリルアミド,N-メチロール(メタ)アクリルアミド,N-メトキシ(メタ)アクリルアミド,N-ブトキシ(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体、ビニルトリメトキシシラン,γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機ケイ素基含有ビニル単量体、スチレン,メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリロニトリル等がある。
【0018】
更に、分子内に重合性不飽和基を2個以上有し、架橋剤と同様な作用を呈する単量体を混合しても良い。分子内に重合性不飽和基を2個以上有する単量体としては、エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル等の多価(メタ)アクリル酸エステル,ジビニルベンゼン等のジビニル単量体等が挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリル系単量体は、分子内にアクリロイル基,メタクリロイル基の何れかを1個以上を有する化合物を主成分とするが、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル:100質量部に対し、官能基を有する単量体:0.1〜30質量部,共重合可能な単量体:0〜30質量部を配合した組成物が好ましい。(メタ)アクリル系単量体は、ガラス転移温度Tgが−20〜60℃(好ましくは、0〜40℃)の共重合体になるものが好ましい。ガラス転移温度Tgは、分子内に重合性不飽和基を2個以上有する単量体を除きFoxの式で算出できる。
【0020】
アクリル系混合物の他方の成分である(メタ)アクリル系重合体は、分子内にアクリロイル基,メタクリロイル基の何れかを1個以上有する単量体を重合させた化合物であり、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が1000〜1000000の範囲にある。特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対し官能基を有する単量体を0.1〜30質量部,共重合可能な単量体を0〜30質量部配合して重合させた(メタ)アクリル系重合体が好ましい。重合反応は、ガラス転移温度Tgが−20〜60℃(好ましくは、0〜40℃)の重合体が得られるように調整される。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体は、塊状重合,溶液重合,乳化重合,懸濁重合等の重合法で調製できるが、未重合(メタ)アクリル系単量体混合物成分との混合を考慮すると、塊状重合法,溶液重合法が好ましく、なかでも溶剤の揮散を要しない塊状重合法が好適である。
既重合(メタ)アクリル系重合体成分を構成する単量体の主成分が未重合(メタ)アクリル系単量体と同一の場合、塊状重合法で部分重合させることが好ましい。部分重合としては、特開2000−313704号公報記載の方法を採用できる。部分重合を利用すると、部分重合物に重合開始剤成分,架橋剤成分等を混合し、必要に応じて更に未重合の(メタ)アクリル系単量体混合物成分を添加することにより、目標とする熱重合型アクリル塗料が得られる。
【0022】
(メタ)アクリル系単量体の重合には、過酸化物系,アゾ系等の熱ラジカル重合開始剤が使用可能であるが、ラジカル発生温度が異なる複数種類の熱ラジカル重合開始剤が使用される。たとえば、到達板温を210℃とした焼付け条件下では、1分間半減期温度T1が100〜160℃にある第一熱ラジカル重合開始剤,1分間半減期温度T2が110〜170℃にある第二熱ラジカル重合開始剤を選定し、第一,第二熱ラジカル重合開始剤のラジカル発生温度の間に30±20℃程度の温度差ΔT(T2−T1)をつけることが好ましい。なお、1分間半減期温度は、一定温度における有機過酸化物の分解速度を表す指標であり、分解により当初の活性酸素量が半減するまでに要する時間が1分間となるような温度で表す。
【0023】
1分間半減期温度が80〜280℃の範囲にある重合開始剤は多数知られているので、設定焼付け温度との関連で第一,第二熱ラジカル重合開始剤を容易に選択できる。しかし、ベンゼン環,シクロ環等の環状基を含む化合物では、重合硬化後に塗膜が黄変するので好ましくない。具体的には次の化合物が熱ラジカル重合開始剤に挙げられる。
【0024】
第一熱ラジカル重合開始剤(1分間半減期温度T1):
t-ヘキシルパーオキシネオデカネート (100.9℃)
t-ブチルパーオキシネオデカネート (103.5℃)
t-ブチルパーオキシネオヘプタネート (104.6℃)
t-ヘキシルパーオキシピバレート (109.1℃)
ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノール)パーオキサイド (112.6℃)
t-ブチルパーオキシピバレート (110.3℃)
ジラウロイルパーオキサイド (116.4℃)
1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート (124.3℃)
t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート (132.6℃)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート (132.6℃)
【0025】
第二熱ラジカル重合開始剤(1分間半減期温度T2)
t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート (155.5℃)
t-ブチルパーオキシマレイン酸 (167.5℃)
t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート (166.0℃)
t-ブチルパーオキシラウレート (159.4℃)
t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート (158.8℃)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート (161.4℃)
t-ブチルパーオキシアセテート (159.9℃)
2,2ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン (159.9℃)
【0026】
重合開始剤は、(メタ)アクリル系混合物:100質量部に対し、第一熱ラジカル重合開始剤:0.05〜3質量部(好ましくは、0.2〜2質量部),第二熱ラジカル重合開始剤:0.05〜2質量部(好ましくは、0.1〜1質量部),合計:0.1〜5質量部(好ましくは、0.3〜3質量部)の割合で配合される。
有機酸化物のような第一熱ラジカル重合開始剤では1分間半減期温度(100〜160℃)近傍になってラジカルが発生するとラジカル重合反応が開始され、未重合の(メタ)アクリル系単量体が減少する。第一熱ラジカル重合開始剤が0.05質量部未満では十分なラジカル重合反応が進行せず、3質量部を超える過剰量になるとラジカル重合反応が急峻になりプレコートとしての加工性を維持できない。
【0027】
第二熱ラジカル重合開始剤としては、1分間半減期温度T2が110〜170℃の範囲にある重合開始剤を0.05〜2質量部配合する。第二熱ラジカル重合開始剤が働き始める前に未重合の(メタ)アクリル系単量体が大幅に減少しているので、第一熱ラジカル重合開始剤ではラジカル重合できなかった部分の重合反応に第二熱ラジカル重合開始剤が作用すればよく、第二熱ラジカル重合開始剤の配合量を第一熱ラジカル重合開始剤よりも少ない0.05〜2質量部(好ましくは、0.1〜1質量部)の範囲で設定する。0.05質量部未満では未重合(メタ)アクリル系単量体のラジカル重合反応に十分寄与せず、逆に2質量部より多いと急激なラジカル重合反応となり、プレコートとしての加工性が維持できない。
【0028】
更に、アクリル系混合物100質量部に対して0.1〜20質量部(好ましくは、0.5〜10質量部)の割合で架橋剤が配合される。架橋剤の配合量が少ないと塗膜の強度が低下し、逆に多すぎると塗膜の柔軟性が失われ、発泡の原因にもなる。
架橋剤には、イソシアネート系,エポキシ系,アジリジン系,金属キレート系,メラミン樹脂系,シランカップリング剤系等があり、単独で或いは2種類以上を組み合わせてアクリル系混合物に添加される。
【0029】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート,クロルフェニレンジイソシアナート,ヘキサメチレンジイソシアナート,テトラメチレンジイソシアナート,イソホロンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,ジフェニルメタンジイソシアネート,水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパン等と付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物,ビュレット型化合物、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオ一ル,アクリルポリオール,ポリブタジエンポリオール,ポリイソプレンポリオール等を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等が挙げられる。貯蔵安定性を必要とする場合、常温ではポリオールと反応しないブロック型イソシアネート架橋剤の使用が好ましい。
【0030】
エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールグリシジルエーテル,ポリエチレングリコールシグリシジルエーテル,グリセリンジグリシジルエーテル,グリセリントリグリシジルエーテル,1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン,N,N,N',N'-テトラグリジル-m-キシリレンジアミン,N,N,N',N'-テトラグリジルアミノフェニルメタン,トリグリシジルイソシアヌレート,m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル,N,N-ジグリシジルトルイジン,N,N-ジグリシジルアニリン等が挙げられる。
【0031】
アジリジン系架橋剤としては、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート,トリメチロールプロパントリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート,テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート等が挙げられる。
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウムイソプロピレート,ジイソプロポキシビスアセチルアセトンチタネート,アルミニウムトリエチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0032】
メラミン樹脂系架橋剤としては、メチル化メラミン樹脂,ブチル化メラミン樹脂,ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
シランカップリング剤系架橋剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリメトキシシラン,クロロプロピルトリメトキシシラン等がある。
【0033】
熱ラジカル重合型アクリル塗料には、加工時の衝撃付加で塗膜に生じる割れを防止するため分子量500以上の可塑剤を配合できる。未重合(メタ)アクリル系単量体,既重合(メタ)アクリル系重合体のアクリル系混合物に熱ラジカル重合開始剤,架橋剤を配合した熱重合型アクリル塗料(特許文献2)を使用すると、塩化ビニル・ゾル塗料を用いた場合と同程度の膜厚で気泡のない塗膜が形成されるが、得られた塗装金属板を加工速度の大きなプレス成形等で製品形状に加工する際に塗膜割れが散見される。衝撃による塗膜割れの発生は、分子量500以上の可塑剤を1〜20質量部の割合で配合することにより抑制される。可塑剤の配合により塗膜の耐ベタツキ性,耐屈曲性が損なわれることはない。可塑剤配合が塗膜の衝撃割れ抑制に及ぼす作用は次のように推察される。
【特許文献2】特開2003-171579号公報
【0034】
可塑剤を添加しない場合、塗膜のガラス転移温度Tgが加工温度より低い場合であっても、加工速度が大きなプレス成形等ではアクリル樹脂の変形に限界があり、変形に追従できない部分に塗膜割れが発生する。他方、可塑剤を配合した系では、既重合(メタ)アクリル系重合体の分子間に可塑剤が入り込み、既重合(メタ)アクリル系重合体の分子間で辷りが生じやすくなると共に、相溶していない可塑剤層の部分でも変形が生じる。その結果、加工時に衝撃が加わっても、塗膜が割れることなく基材の変形に十分追従する。
【0035】
塗膜の耐衝撃性は、塩化ビニル・ゾル塗料やアクリル・ゾル塗料で一般的に使用されている分子量500未満のジオクチルフタレート(DOP)等の可塑剤を使用した場合でもある程度向上できるが、分子量の小さな可塑剤は既重合(メタ)アクリル系重合体に対する結合力が弱く、塗膜内で比較的自由に移動するため、ブリードアウトして塗膜表面がべたつきやすい。可塑剤の分子量が大きくなるほど既重合(メタ)アクリル系重合体に対する相溶性が低下するものの、分子量増加に伴って塗膜内で移動しがたく、大きなベタツキ抑制効果が得られる。
【0036】
分子量500以上の可塑剤を1〜20質量部添加した場合、耐ベタツキ性,耐屈曲性,耐衝撃性等の塗膜特性をバランスさせる上で、既重合(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度Tgを−20〜60℃(好ましくは、0〜40℃)の範囲に調整する。既重合(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度Tgが−20℃を下回ると塗膜の対ベタツキ性が低下し、逆に60℃を超えるガラス転移温度Tgでは塗膜の耐屈曲性,耐衝撃性が劣化しやすい。
【0037】
可塑剤としては、一分子中に3個以上のエステル結合をもつ可塑剤が好適である。具体的には、トリメリット酸誘導体,ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等の脂肪酸誘導体,リン酸誘導体,ポリエステル系可塑剤,アクリル系単量体を主成分とするアクリル系低分子単量体等が挙げられる。可塑剤は1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて配合しても良い。アクリル系混合物に対する可塑剤の配合割合は、アクリル系混合物100質量部に対して1〜20質量部の範囲で選定される。塗膜の柔軟性に及ぼす可塑剤の影響は1質量部以上の配合量でみられるが、過剰量の可塑剤を配合すると塗膜にベタツキが発生しやすくなる。
【0038】
熱ラジカル重合型アクリル塗料には、体質顔料,防錆顔料,無機着色顔料,有機着色顔料等の顔料が必要に応じて配合される。
体質顔料としては、炭酸カルシウム,クレー,タルク,硫酸バリウム等が例示される。
防錆顔料としては、亜鉛末,鉛丹,亜酸化鉛,シアナミド鉛,鉛酸カルシウム,ジンククロメート等が例示される。
【0039】
無機着色顔料としては、チタン白,硫化亜鉛,鉛白,黄色酸化鉄,酸化クロム,亜鉛華,カーボンブラック,モリブデン赤,パーマネントレッド,ベンガラ,黄鉛,黄土,クロムグリーン,紺青,群青,アルミ粉末,銅合金粉末等が例示される。
有機着色顔料としては、ハンザエロー,フタロシアニングリーン,フタロシアニンブルー,フラバンスロンイエロー,インダンスレンブルー等が例示される。
【0040】
個々の顔料は、必要とする肉持ち,防錆性能,色調に応じて単独で、或いは2種以上を組み合わせて添加される。反射板,ランプシェード等、高い白色度が要求されるプレコート金属板には酸化チタン顔料の添加が好ましい。なかでも、塩素法で作られたルチル型酸化チタンをアルミナ,シリカ,ジルコニア,チタニア,有機物等で表面処理した酸化チタンが好適である。
アクリル系混合物に対する顔料の配合割合は、アクリル系混合物100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲で選定される。必要とする色調や防錆作用は0.1質量部以上の顔料配合割合でみられるが、過剰な配合量では塗料自体が増粘し、美麗な膜面をもつ塗膜が得難くなる。
【0041】
充填材,酸化防止剤,難燃剤,紫外線吸収剤等の添加剤も、必要に応じて熱重合型アクリル塗料に配合される。
各成分を配合した熱ラジカル重合型アクリル塗料は、1〜100Pa・s(好ましくは、2〜50Pa・s)の範囲に粘度が調整される。粘度が低すぎる塗料では塗布後硬化までに流動して均一な塗膜が得られず、粘度が高すぎる塗料では塗布時に塗りすじ等が生じ、塗膜から気泡が抜け難くなる。
【0042】
〔塗装原板及び塗装前処理〕
塗装原板には、Znめっき鋼板,Zn−Alめっき鋼板,Zn−Al−Mgめっき鋼板,Alめっき鋼板,Al−Siめっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板等を使用できる。塗装原板は、下地金属に対する防食作用や塗膜密着性を向上させるため、適宜化成処理される。
【0043】
熱ラジカル重合型アクリル塗料の塗布に先立って、塗装原板を下塗り塗装しても良い。下塗り塗装では、たとえば化成処理した塗装原板にアクリル変性エポキシ樹脂塗料を塗布・焼付けすることにより下塗り塗膜を形成する。アクリル変性エポキシ樹脂塗膜は、エポキシ、ポリエステル系の下塗り塗膜に比較して良好な塗膜密着性を得る上で有利である。アクリル変性エポキシ樹脂塗料には、ストロンチウムクロメート等の防錆顔料を10〜30質量部配合しても良い。十分な防錆効果は10質量部以上の防錆顔料でみられるが、30質量部を超える過剰配合では防錆効果が飽和しコストを上昇させる。
【0044】
〔塗装条件〕
所定組成に調整された熱ラジカル重合型アクリル塗料を被塗装物・金属板に塗布し、乾燥・焼付けすることにより熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗膜が形成される。
塗料塗布には、ロールコート,カーテンコート,ダイコート,ナイフコート等を採用でき、塩化ビニル塗膜の作製と同様な条件下で厚膜塗装が可能である。このため、新たな設備を必要とすることなく、経済的である。基材・金属板に対する塗布量は、乾燥膜厚100μm以上の塗膜が形成されるように設定される。100μm未満の膜厚では、重合開始剤の分解により発生したラジカルが空気中の酸素と結合して消失し、重合硬化不足になりやすい。
【0045】
次いで、焼付け処理で重合硬化反応を生起させ、熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗膜を形成する。熱ラジカル重合型アクリル塗料に1分間半減期温度が異なる複数種の熱ラジカル重合開始剤が含まれているので、130℃程度の比較的低い温度からラジカル重合反応が開始され、(メタ)アクリル系単量体のポリマー化が十分進行し、1分間半減期温度が比較的高い第二熱ラジカル重合開始剤が働き始める前に塗料中の未重合(メタ)アクリル系単量体が大幅に少なくなっている。
【0046】
第二熱ラジカル重合開始剤から発生したラジカルが残りの未重合(メタ)アクリル系単量体に作用するので、短時間加熱であってもラジカル重合反応が十分に進行し、焼付け完了後の塗膜に含まれる未重合(メタ)アクリル系単量体が極端に減少する。
このように二段階でラジカル重合反応させるとき、(メタ)アクリル系単量体のほぼ全量がラジカル重合するので焼付け後の塗膜に残存する未重合(メタ)アクリル系単量体が極端に少なくなり、塗膜臭の原因物質である未重合(メタ)アクリル系単量体の残留が抑えられた塗膜が形成される。
【0047】
また、焼付け時に未重合(メタ)アクリル系単量体を5質量%以上(好ましくは、8〜20質量%)揮散させると、表面の塗膜強度及び擦過性がより優れた塗膜が得られる。未重合(メタ)アクリル系単量体の適量揮散は、重合硬化反応工程温度における蒸気圧を70kPa(好ましくは、80kPa以上)にすることにより達成される。
焼付け処理条件は、加熱温度:120〜250℃,加熱時間:30〜600秒の範囲で選定されるが、加熱温度,焼付け時間共に塩化ビニル樹脂塗膜の成膜条件とほぼ同等であり、塗装条件の大幅な変更を必要としない。ただし、比較的低い温度でのラジカル重合反応を進行させるため、急激な温度上昇を避け、適度の温度勾配をもつヒートパターン(図1)の採用が好ましい。
【実施例】
【0048】
〔上塗り塗膜用塗料組成物の調製〕
アクリル酸2-エチルヘキシル(2-EHA):95質量部とアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4-HBA):5質量部からなる重量平均分子量:5×105のコポリマーをアクリル系重合体Aとした。
アクリル系重合体A:12質量部,2-EHA:26.6質量部,4-HBA:1.4質量部,アクリル酸イソボルニル(大阪有機化学工業製):60質量部を配合し、可塑剤(W-2050:大日本インキ化学工業製),ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロック型イソシアネート架橋剤(MF-K60X:旭化成ケミカルズ製),1分間半減期温度が異なる二種類の有機過酸化物(熱ラジカル重合材)を配合し、複数の塗料組成物(表1)を用意した。
【0049】
何れの塗料組成物においても、架橋剤,可塑剤の配合量はそれぞれ8.8質量部,10質量部に固定した。
試験No.1〜9には、第一熱ラジカル重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート(パーブチルO:日本油脂製,1分間半減期温度:132.6℃),第二熱ラジカル重合開始剤としてt-ブチルパーオキシラウレート(パーブチルL:日本油脂製,1分間半減期温度:159.4℃)を使用した。
【0050】
試験No.8では、塩素法で製造した不純物:0.001質量%以下の酸化チタン顔料(CR58-2:石原産業製)80質量部を試験No.1の塗料組成物に配合した。試験No.9では、試験No.1の硬化剤のみを非ブロック型ヘキサメチレンジイソシアネート架橋剤(TPA-100:旭化成ケミカルズ製)に変更し、2.5質量部配合した。
試験No.10〜13では、複数の有機過酸化物を使用することなく、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート(パーブチルO:日本油脂製)のみを熱ラジカル重合開始剤に使用した。
【0051】

【0052】
〔塗装焼付け〕
片面当りめっき付着量:45g/m2,板厚:0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板を塗装原板に用い、Ni置換処理後にクロムフリーの化成皮膜を形成した。次いで、2コート2ベークで下塗り塗膜,上塗り塗膜を設けた。下塗り塗装では、アクリル変性エポキシ樹脂塗料を塗布し、230℃×40秒の加熱で乾燥膜厚:5μmの下塗り塗膜を形成した。上塗り塗装では、表1の塗料組成物を塗布した後、200℃×90秒の加熱で乾燥膜厚:160μmの上塗り塗膜を形成した。
【0053】
〔塗装鋼板の性能評価〕
製造された塗装鋼板から試験片を切り出し、次の試験で塗膜の残留臭,塗膜密着性,加工性を調査した。また、酸化チタンを配合した試験No.8では、反射率も測定した。
-塗膜残留臭の評価試験-
塗膜表面の臭いを嗅ぐ官能試験で、塗膜臭のない試験片を○,塗膜臭が残っている試験片を×と評価した。
【0054】
-塗膜密着性試験-
JIS5600-5-6に規定されている碁盤目試験により、粘着テープ引き剥がし後にも剥離していない塗膜を○,剥離した塗膜を×として塗膜密着性を評価した。
-加工性試験-
JIS5600-5-1に準拠して直径:2mmのマンドレルで試験片をT曲げした後、板厚と同じ厚さの板4枚を曲げ部の内側に挟み、この状態で曲げ部を折り曲げ試験した(4t曲げ)。そして、曲げ部外側の塗膜を観察し、クラックの発生がない塗膜を○,大きなクラックが発生した塗膜を×として加工性を評価した。
-反射率の測定-
JIS Z8722に準拠した物体色の測定に使用される分光測色計(CM3700d:ミノルタ製,光源C)を用い、650nmの反射率を全反射率として測定した。また、正反射光を除去した波長:650nmでの反射率を拡散反射率として測定した。
【0055】
表2の調査結果にみられるように、有機過酸化物として1分間半減期温度が異なる二種類の熱ラジカル重合材を配合した熱ラジカル重合アクリル塗料から成膜された塗膜は、未重合(メタ)アクリル系単量体に起因する塗膜臭がなく、塗膜密着性,加工性に優れていた。また、酸化チタンを含むNo.8の塗膜は、全反射率:95%以上,拡散反射率:93%以上と優れた反射特性を呈した。
他方、一種類の有機過酸化物(熱ラジカル重合開始剤)のみを配合した熱ラジカル重合型アクリル塗料から成膜された塗膜では、ラジカル重合開始剤の配合量が少ないと、未重合の(メタ)アクリル系単量体が塗膜に多く残留し、塗膜臭の強い塗膜になった。逆に、過剰量のラジカル重合開始剤を含む塗料から成膜された塗膜では、未重合の(メタ)アクリル系単量体が減少するものの、ラジカル重合反応で生成したアクリルポリマーの分子量が小さくなるため、プレコートとして必要な加工性を維持できなかった。
【0056】

【産業上の利用可能性】
【0057】
以上に説明したように、1分間半減期温度が異なる複数種の熱ラジカル重合開始剤を配合しているので、金属板に塗布した熱ラジカル重合型アクリル樹脂塗料を焼き付ける際の昇温過程で比較的低い温度からラジカル重合反応が開始され、焼付け温度に達する前に大部分の(メタ)アクリル系単量体がポリマー化している。そのため、焼付け硬化後の塗膜に残留する未重合(メタ)アクリル系単量体が極めて少なく、塗膜臭が抑えられたプレコート金属板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】塗料焼付け時のヒートパターンとの関係でラジカル重合反応の開始を説明するグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未重合の(メタ)アクリル系単量体と重量平均分子量:103〜106の(メタ)アクリル系重合体との質量比が10:90〜90:10の範囲にある(メタ)アクリル系混合物を主成分とし、少なくとも第一,第二熱ラジカル重合開始剤の二種が配合されており、第一熱ラジカル重合開始剤の1分間半減期温度T1が100〜160℃,第二熱ラジカル重合開始剤の1分間半減期温度T2が110〜170℃の範囲にあり、温度差ΔT(T2−T1)が10〜50℃の範囲にあることを特徴とする異臭の少ない塗膜形成用塗料組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル系混合物:100質量部に対する比率で、第一熱ラジカル重合開始剤が0.05〜3質量部,第二熱ラジカル重合開始剤が0.05〜2質量部配合され、第一,第二ラジカル重合開始剤の合計配合量が0.1〜5質量部の範囲に調整されている請求項1記載の塗膜形成用塗料組成物。
【請求項3】
ジアシルパーオキサイド類,パーオキシジカーボネート類,パーオキシエステル類,パーオキシケタール類から選ばれた一種又は二種以上の有機過酸化物が第一,第二熱ラジカル重合開始剤に使用されている請求項1記載の塗膜形成用塗料組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル系混合物:100質量部に対する比率でブロック型イソシアネート架橋剤:0.1〜20質量部,分子量:500以上の可塑剤:1〜20質量部,顔料:0.1〜100質量部が配合され、粘度:1〜100Pa・sに調整されている請求項1又は2記載の塗膜形成用塗料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−31294(P2008−31294A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206143(P2006−206143)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】