説明

疑似餌の姿勢状態変化制御方法及びそのための重量調整錘

【課題】重量変化に伴う姿勢の崩れを抑制して、水中での自然な動きを実現できる疑似餌および疑似餌に着脱される重量調整錘を提供する。
【解決手段】本発明は、餌の形態を模した浮力を有する疑似餌1の前端に重さの異なる重量調整錘20A,20Bを着脱可能に装着することに伴う疑似餌1の水中での姿勢状態の変化を制御する、疑似餌の姿勢状態変化制御方法に関する。重さの異なる重量調整錘20A,20Bにそれぞれ釣糸が係止される釣糸係止部21を設け、重量が重い重量調整錘ほど釣糸係止部21を重量調整錘20A,20Bの後方側に位置させる。そして、そのような釣糸係止部21を有する重量調整錘20A,20Bを疑似餌1の前端に対して選択的に装着することにより、重量変化に伴う疑似餌1の水中での姿勢状態の変化を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餌の形態を模した浮力を有する疑似餌の前端に重さの異なる重量調整錘を着脱可能に装着することに伴う疑似餌の水中での姿勢状態の変化を制御する疑似餌の姿勢状態変化制御方法、および、そのような方法に用いられる重量調整錘に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣りに用いられる疑似餌として、様々な形態のものがあり、例えば、イカ釣りに際しては、「餌木」と称される疑似餌を用いることが知られている。通常、餌木は、小魚や海老等に似せた胴部(本体)と、胴部の前方側の下部に突出するように取り付けられた錘と、胴部前端に設けられた釣糸接続環(アイ部とも称する)と、胴部の後端に設けられ、先端を前方に向けた釣り針とを有している。このように構成される餌木は、釣糸接続環に釣糸を取り付けて、ルアーキャスティングと同様、ポイントに投げ込んでリールで釣糸を巻く際に、釣竿を煽ることでアクションを与えると、イカは、餌木の動きに誘われて餌木に抱きつく。そして、餌木に抱きついたイカは、胴部後端に設けられた釣り針に掛かって釣り上げることが可能となる。
【0003】
上記したアクションにおいて、餌木は、釣竿を煽ることで水面に向けて上昇し、釣竿の煽りを止めることで胴部の前方側の下部に設けられた錘によって前方を下向きにして沈んで行き、このような水中の上下運動でイカを誘うようにしている。この場合、本体に取り付けられた錘の重量によって餌木の沈み具合が異なることから、従来から、錘の重量を可変にして重量調整を行なうことができるようにしている。
【0004】
例えば特許文献1では、餌木の本体の前方側の下部に突出するように取り付けられる前記錘を本体に対して着脱自在にすることにより、錘の重量を可変にして重量調整を行なえるようにしている。また、特許文献2では、餌木ではないが、小魚や海老等の頭部の形態を模した重量調整錘を疑似餌の先端部に被せるように着脱自在に装着することにより、錘の重量を変えることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−127731号
【特許文献2】特開平11−289921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、上記構成の重量調整錘を用いれば、餌木全体の重さを調整することができるが、餌木本体の特定の部位で重量が変化すると、水中での餌木の姿勢が崩れて餌木の動きが不自然になる場合がある。すなわち、特許文献1および特許文献2に開示されるように餌木本体の前部で重量調整錘により重量変化が生じると、釣糸を介してアクション(張力)を加えた際の水中での餌木の引き上げ姿勢、釣糸張力を弱めた際の沈み込み姿勢、あるいは、餌木を水中で漂わせる際のキープ姿勢などが所望の姿勢から崩れてしまう場合がある。また、このような問題は、餌木に限らず、ルアー等の様々な疑似餌にも存在する。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、重量調整錘の取り付けに伴う重量変化によって疑似餌の姿勢が崩れること(疑似餌の姿勢状態の変化)を制御して水中での自然な動きを実現できる疑似餌の姿勢状態変化制御方法及びそのための重量調整錘を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、餌の形態を模した浮力を有する疑似餌の前端に重さの異なる重量調整錘を着脱可能に装着することに伴う疑似餌の水中での姿勢状態の変化を制御する、疑似餌の姿勢状態変化制御方法であって、重さの異なる前記重量調整錘にそれぞれ釣糸が係止される釣糸係止部を設け、重量が重い前記重量調整錘ほど前記釣糸係止部を前記重量調整錘の後方側に位置させ、前記釣糸係止部を有する重量調整錘を前記疑似餌の前端に対して選択的に装着することにより、重量変化に伴う疑似餌の水中での姿勢状態の変化を制御することを特徴とする。
【0009】
上記方法によれば、重量調整錘の重量が重いほど釣糸係止部が重量調整錘の後方側に位置されているため、疑似餌の重量変化に伴う水中での姿勢の崩れ(姿勢状態変化)を制御でき、したがって、疑似餌の水中での自然な動きを実現できる。すなわち、重量調整錘の重量が軽い場合には、重量調整錘の前方側、つまり重量調整錘の重心位置の前方側に釣糸係止部が位置されるため、例えば、釣竿を煽るアクション時に釣糸へ加えた張力を弱めた際に、重量調整錘の重心が釣糸の延長線下へ移行しようとする重量調整錘の下方へ向けた回転が、重量調整錘の重量(重量調整錘に作用する重力)に抗する疑似餌本体の上方へ向かう浮力によって抑制されて、疑似餌の姿勢が水平に保たれる(重量変化に伴う疑似餌の水中での姿勢状態の変化が制御されて所望の水平姿勢が保たれる)といった状況を生み出すことができる(水中での疑似餌の自然な動きを実現できる)一方、前記重量調整錘の重量が重い場合には、重量調整錘の後方側、すなわち重量調整錘の重心位置の方向へ釣糸係止部が位置されるため、例えば、釣竿を煽るアクション時に釣糸へ加えた張力を弱めた際でも、重量調整錘の重心が釣糸の延長線下にほぼ位置されることから、重量調整錘の回転が殆ど生じることなく、疑似餌の姿勢が水平に保たれる(重量変化に伴う疑似餌の水中での姿勢状態の変化が制御されて所望の水平姿勢が保たれる)といった状況を生み出すことができる(水中での疑似餌の自然な動きを実現できる)。
【0010】
また、本発明は、釣糸が係止される釣糸係止部を有し、疑似餌の前端部に着脱可能に選択的に取り付けられる重量調整錘であって、その重量が重いほど前記釣糸係止部が重量調整錘の後方側に位置されていることを特徴とする重量調整錘も提供する。また、この構成において、重量調整錘は、釣糸を連結可能な疑似餌の前端のアイ部が貫通できる貫通孔を更に有し、該貫通孔は、重量調整錘が疑似餌に取り付けられた際に、前記アイ部を重量調整錘の前端から突出させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重量調整錘の重量が大きいほど釣糸係止部が重量調整錘の後方側に位置されているため、重量調整錘の取り付けに伴う重量変化によって疑似餌の姿勢が崩れること(疑似餌の姿勢状態の変化)を制御して水中での自然な動きを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る疑似餌の側面図であり、(a)は軽い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けた状態を示す図、(b)は重い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けた状態を示す図である。
【図2】疑似餌本体に対する重量調整錘の取り付け形態を示す概略側面図である。
【図3】軽い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けて成る疑似餌の水中での姿勢を示す図であり、(a)は本発明の一実施形態に係る軽い重量調整錘(重量調整錘の前端に釣糸係止部が位置される)を疑似餌本体に取り付けた状態の図、(b)は比較例として後端に釣糸係止部が位置された軽い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けた状態の図である。
【図4】重い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けて成る疑似餌の水中での姿勢を示す図であり、(a)は比較例として前端に釣糸係止部が位置された重い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けた状態の図、(b)は本発明の一実施形態に係る重い重量調整錘(重量調整錘の後方側、例えば略中間部に釣糸係止部が位置される)を疑似餌本体に取り付けた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る疑似餌について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る疑似餌の側面図であり、(a)は軽い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けた状態を示す図、(b)は重い重量調整錘を疑似餌本体に取り付けた状態を示す図である。
【0014】
これらの図から分かるように、本実施形態における疑似餌1は、主にイカ釣りに適した構造となっており、例えば、合成樹脂材料(合成樹脂製の発泡材を含む)や木材で形成され、前後方向に長く小魚や海老等の生き物(餌)の形態を模して構成された浮力を有する疑似餌本体3と、疑似餌本体3の前端部(先端部)に着脱可能に取り付けられる重量調整錘20とを有している。この場合、重量調整錘20は、重量が異なるものが複数用意されており、必要に応じて疑似餌本体3の前端部に選択的に取り付けられる。
【0015】
疑似餌本体3の前端(先端)には、釣糸が連結できるように、金属等によって形成されたリング状のアイ部5が設けられており、後端には、先端が前方を向いた複数の釣り針6が設けられている。また、疑似餌本体3の前方側の下部には、板状に形成された錘7が、その一部を疑似餌本体3に差し込まれて取り付けられている。さらに、疑似餌本体3には、必要に応じて目8やひれ部材9等が設けられている。
【0016】
重量調整錘20は、図2にも示されるように、疑似餌本体3の前端部に対して着脱可能に被着できるように、内部に空洞33を有する筒状に形成されている。また、重量調整錘20は、疑似餌本体3の重量を調整するように、例えば、SUS、タングステン、スズ、鉛、熱可塑性樹脂とタングステンの複合材料(タングステン粉末を分散した樹脂)等によって形成することが可能である。また、重量調整錘20の表面には、必要に応じて、本体と同様な模様を設けておいても良い。
【0017】
また、重量調整錘20は、疑似餌本体3の前端のアイ部5が貫通できる貫通孔31を空洞33に連通して前方側に有している(図2参照)。そして、この構造では、重量調整錘20が疑似餌本体3の前端部に被着して取り付けられた際に、アイ部5が貫通孔31を貫通して重量調整錘20の前端から突出するようになっている(図1参照)。
【0018】
更に、本実施形態では、重量調整錘20を疑似餌本体3の前端部に取り付けた際、重量調整錘20が疑似餌本体3の前端部から抜け落ちることを防止する脱落防止手段が設けられている。この脱落防止手段は、例えば、貫通孔31の径よりも大きく且つ貫通孔31から突出するアイ部5に取り付けられるスプリットリングまたはスナップ32(図1参照)によって形成される。
【0019】
また、本実施形態において、重量調整錘20には、釣糸が係止される釣糸係止部21が設けられている。この場合、釣糸係止部21は、重量調整錘20の重量が重いほど重量調整錘の後方側に位置されている。すなわち、相対的に重量が軽い重量調整錘20Aでは、図1の(a)に示されるように釣糸係止部21が重量調整錘20の前方側に位置され(図1の(a)では、重量調整錘20の前端に釣糸係止部21が設けられ)、一方、相対的に重量が重い重量調整錘20Bでは、図1の(b)に示されるように釣糸係止部21が重量調整錘20の後方側に位置され(図1の(b)では、重量調整錘20の長手方向の略中間部に釣糸係止部21が設けられ)ている。言い換えると、疑似餌本体3の前端部に選択的に取り付けられる重量調整錘20は、その重量が重いほど釣糸係止部21が重量調整錘20の後方側に位置されている。
【0020】
図3は、軽い重量調整錘を疑似餌本体3の前端部に取り付けて成る疑似餌1の水中での姿勢を示す図であり、図3の(a)は本実施形態に係る軽い重量調整錘20A(重量調整錘20Aの前端に釣糸係止部21が位置される)を疑似餌本体3に取り付けた状態の図、(b)は比較例として後端に釣糸係止部21が位置された軽い重量調整錘20’を疑似餌本体3に取り付けた状態の図である。本実施形態に係る図3の(a)の場合には、重量調整錘20Aの前端、すなわち重量調整錘20Aの重心Gの位置の前方側に釣糸係止部21が位置されるため、釣竿を煽るアクション時に釣糸係止部21に結合する釣糸Sへ加えた張力を弱めると、重量調整錘20Aの重心Gが釣糸Sの延長線L下へ移行しようとする重量調整錘20Aの下方へ向けた回転(図中に矢印で示される方向の回転・・・重量調整錘20Aの重心Gが釣糸Sの延長線L下へ移行してしまった仮想的な状態が図3の(a)の左側の囲みの中に二点鎖線で示されている)が、重量調整錘20Aの重量(重量調整錘20Aに作用する重力)に抗する疑似餌本体3の上方へ向かう浮力Fによって抑制される(錘20Aが軽いため、浮力Fによって疑似餌1の後方側が上方へ浮き上がる)。そのため、疑似餌1の姿勢を水平に保つことができ(重量変化に伴う疑似餌1の水中での姿勢状態の変化を制御して所望の水平姿勢を保つことができ)、水中での疑似餌1の自然な動きを実現できる。これに対し、後端に釣糸係止部21が位置される軽い重量調整錘20’を疑似餌本体3に取り付けた図3の(b)の場合には、重量調整錘20’の後端、すなわち重量調整錘20’の重心Gの位置の後方側に釣糸係止部21が位置されるため、釣竿を煽るアクション時に釣糸Sへ加えた張力を弱めると、重量調整錘20’の重心Gが釣糸Sの延長線L下へ移行しようとする重量調整錘20’の上方へ向けた回転(図中に矢印で示される方向の回転・・・重量調整錘20’の重心Gが釣糸Sの延長線L下へ移行してしまった状態が図3の(b)の左側の囲みの中に実線で示され、更に上方へ回転した状態が二点鎖線で示されている)と疑似餌本体3自体の浮力Fとによって疑似餌1の後方側が上方へと大きく浮き上がる(疑似餌1の頭部が下を向く)。したがって、疑似餌1の姿勢を水平に保つことができず、疑似餌1の水中での姿勢が不自然な状態となる。
【0021】
図4は、重い重量調整錘を疑似餌本体3に取り付けて成る疑似餌1の水中での姿勢を示す図であり、図4の(a)は比較例として前端に釣糸係止部21が位置された重い重量調整錘20”を疑似餌本体3取り付けた状態の図、図4の(b)は本実施形態に係る重い重量調整錘20B(重量調整錘20Bの後方側、ここでは重量調整錘20Bの長手方向の略中間部に釣糸係止部21が位置される)を疑似餌本体3に取り付けた状態の図である。図4の(a)の場合には、重量調整錘20”の重心Gの位置の前方側に釣糸係止部21が位置されるため、釣竿を煽るアクション時に釣糸Sへ加えた張力を弱めても、疑似餌本体3の浮力Fは重い重量調整錘20”の重量に殆ど抗することができず、疑似餌1は(場合により重量調整錘20”の下方へ向けた更なる回転を伴って)前部が上を向き且つ後部が下を向いたままとなる。したがって、疑似餌1の姿勢を水平に保つことができず、疑似餌1の水中での姿勢が不自然な状態となる。これに対し、本実施形態に係る図4の(b)の場合には、重量調整錘20Bの後方側、重量調整錘20Bの重心Gの位置の直上近傍に釣糸係止部21が位置されるため、釣竿を煽るアクション時に釣糸Sへ加えた張力を弱めると、重量調整錘20Bの重心Gが釣糸Sの延長線L下にほぼ位置されることから、重量調整錘20Bの回転が殆ど生じることなく、疑似餌1の姿勢がほぼ水平に保たれる(重量変化に伴う疑似餌1の水中での姿勢状態の変化を制御して所望の水平姿勢を保つことができ、水中での疑似餌1の自然な動きを実現できる)。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、重量調整錘20の重量が大きいほど釣糸係止部21が重量調整錘20の後方側に位置されているため、重量変化に伴う疑似餌1の姿勢の崩れを抑制して(重量変化に伴う疑似餌1の水中での姿勢状態の変化を制御して所望の水平姿勢を保つことができ)、水中での自然な動きを実現できる。
【0023】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、本発明がイカ釣りに際して用いられる餌木に適用されているが、本発明は、餌木以外の様々な疑似餌に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 疑似餌
3 疑似餌本体
5 アイ部
20,20A,20B 重量調整錘
21 釣糸係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
餌の形態を模した浮力を有する疑似餌の前端に重さの異なる重量調整錘を着脱可能に装着することに伴う疑似餌の水中での姿勢状態の変化を制御する、疑似餌の姿勢状態変化制御方法であって、
重さの異なる前記重量調整錘にそれぞれ釣糸が係止される釣糸係止部を設け、重量が重い前記重量調整錘ほど前記釣糸係止部を前記重量調整錘の後方側に位置させ、前記釣糸係止部を有する重量調整錘を前記疑似餌の前端に対して選択的に装着することにより、重量変化に伴う疑似餌の水中での姿勢状態の変化を制御することを特徴とする疑似餌の姿勢状態変化制御方法。
【請求項2】
釣糸が係止される釣糸係止部を有し、疑似餌の前端部に着脱可能に選択的に取り付けられる重量調整錘であって、その重量が重いほど前記釣糸係止部が重量調整錘の後方側に位置されていることを特徴とする重量調整錘。
【請求項3】
前記重量調整錘には、疑似餌前端のアイ部が貫通する貫通孔が更に設けられ、
前記貫通孔は、重量調整錘が疑似餌に装着された際に、前記アイ部を重量調整錘の前端から突出させて疑似餌に対する重量調整錘の抜け止めを可能としたことを特徴とする請求項2に記載の重量調整錘。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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