説明

痔核治療装置

痔核治療装置(10)は、第一端部(11)と、中央部(20)と、凹部(17)とを備えている。第一端部(11)は、人体の直腸に嵌め込むに適した寸法を有する。中央部(20)は、第一端部(11)と凹部(17)との間に位置する。中央部(20)の長さは、12mm〜19mmである。中央部(20)は、円筒状、凹状又は凸状の形状である。凹部(17)は、第二端(18)から12mm〜19mm離れた第一端(16)を有する。凹部(17)の第一端(16)と第二端(18)及び凹部(17)から反対側にある中央部(20)の端(15)の直径は、ほぼ等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痔核の治療のための器具に関するものである。特に、本発明は、器具の自動運動により内痔核と外痔核とをマッサージするための装置に関するものである。また、本発明は、内痔核と外痔核とをマッサージするために、肛門管内に保持され、肛門管の表面の蠕動運動により動かされる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
痔核組織の治療を容易ならしめることを意図したいくつかの肛門治療拡張器と種々の機械的装置とがある。例えば、1942年7月11日に発行されたアメリカ特許第3675642号は、肛門管を拡張するための術後の静止装置である。この装置は、1.25インチを越す直径を有し、装置の自由運動を制限する肩部を装置の底部に備えている。この装置の大きな直径は、肛門直腸部の排便反応を引き起こす。また、この装置の直径は、基部のフランジから装置の端部に向って1.5インチ未満に狭くなっている。装置の緩和端に向って徐々に狭くなるテーパ面の広い部分は、肛門直腸の側圧から下方向のスラスト力を受ける。この装置を肛門管内に維持するためには何らかの支持が必要である。
【0003】
アメリカ特許第4263914号は、肛門管を手動でマサージする。1986年4月22日、Z.R.ボイドに対して発行されたアメリカ特許第4583542号は、頭部における急勾配の周縁肩部と装置に関連させた大きなフランジとにより自由な自動運動が制限されている静止装置を説明している。この装置は、静止位置にとどまるように意図されている。本発明者のアメリカ特許第5797950号は、会陰部に取り付けられたロッドにより保持された装置の往復直線運動により前立腺のマッサージを行なうために、肛門括約筋の収縮を利用している。
【0004】
本発明者のアメリカ特許第6589193号は、内痔核と外痔核とをマッサージするために、全肛門管の静的及び動的な側圧と肛門管の蠕動運動とを利用している。アメリカ特許第6589193号を除き、櫛膜の活動と肛門管内の蠕動運動とにより内痔核と外痔核とをマッサージするために装置を動かしている発明はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、肛門管内の蠕動運動を引き起こすことにある。装置は、櫛膜により保持され、櫛膜内の蠕動運動により若干前後に動かされる。櫛膜は、肛門管の狭い凹部である。この僅かな動きは、状態を悪化させることなく、内痔核と外痔核とを効果的にマッサージする。
【0006】
更に、櫛膜内の蠕動運動は、大量のエネルギーを消費し、肛門直腸部に対する新鮮な血液の循環を増加させ、以て痔核の状態を改善する。
【0007】
本発明の別の目的は、痔核の状態を悪化させないように滑らかな表面を備えた小径の装置を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、使い易く、安価であり、かつ、製造容易な痔核治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基本的には、第一端部と、中央部と、凹部とよりなる。第一端部は、球状の上部と中央部に延びる種々の表面とを備えている。中央部は、円筒状、テーパ状、凸状、及び該中央部の両端における直径がほぼ等しい凹状のような、種々の形状の面により形成される。該中央部の両端の直径は19mm未満である。この小さな直径は、櫛膜の活動を最適化すると共に内痔核の側圧の影響を減少させる。該中央部の長さは、12mm〜20mmであり、12mmと20mmとを含む。該凹部は、その第一端と第二端との間の部分を備えている。この凹部は、櫛膜が装置を把持することができるように設けられている。該凹部の長さは、12mm〜20mmであり、12mmと20mmとを含む。該凹部の第一端と第二端の直径は、ほぼ等しい。第一端部の上端と凹部の第二端との間の距離は100mm未満である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の痔核治療装置の好ましい実施例による痔核治療装置10を示す。装置10は、肛門管内の櫛膜と共に動くように利用される。この櫛膜は、肛門管の狭い凹部である。
【0011】
装置10は、人体の肛門管に嵌め込むに適した寸法を有する。装置10は、第一端部11と、中央部20と、凹部17とを備えている。第一端部11は、上端5と、球状の上部7と、該上部7から中央部の端15まで延びる円筒状の面14とを備えている。該端15は破線hにより示されている。該中央部20は、該端15から第一端16まで延びる円筒状の面21を備えている。凹部17は、凹部17の第一端16から第二端18まで延びる凹面を有する。第二端18は、破線gにより示されている。
【0012】
装置10は、第二端18で終了してもよいが、所望の場合には、種々の補助的な付属物、延長部、止め部及びハンドルを該第二端18に付設する。しかしながら、図1においては、ハンドル22が第二端18に設けられている。装置10が隆起のある材料により形成されている場合には、第一端部の上端5から凹部の第二端18までの好ましい合計長さは、60mm未満である。
【0013】
端15における破線hから第二端18における破線gまでの距離は、25mm〜40mmであり、25mmと40mmとを含む。この距離は、肛門括約筋の全長をあらわす。中央部20の長さは、13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含む。この距離は、内痔核部の長さをあらわす。凹部17の長さは、13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含む。この距離は、櫛膜の長さをあらわす。端15と第一端16と第二端18の直径は、それぞれほぼ等しい。典型的には、これらの直径は19mm未満である。本発明の好ましい実施例においては、最適の直径は12mm未満である。
【0014】
第一端部11は肛門括約筋の範囲外にあり、括約筋の側圧は第一端部11に影響を与えないため、第一端部11の円筒状の面14は種々の形状の面に代えてもよい。
【0015】
また、中央部20の円筒状の面21も種々の形状の面に代えてもよい。このような種々の形状の面を用いた場合には、中央部20の端15と凹部17の第一端16との直径の差は、±15%である。中央部20が種々の形状の面を有する場合には、凹部17の最狭部の直径は、端15の直径を上回らない。
【0016】
図2は、痔核治療装置10と肛門管の構成部分との関係を示す。肛門管の主な構成部分は、内痔核部80と櫛膜81と皮下の外側括約筋83とである。この皮下の外側括約筋83は外痔核を含む。内痔核部80の上方には直腸85の膨大部が示されている。装置10の使用時には、凹部17が櫛膜81の外形に適合するため、装置は肛門管内に挿入される。装置10の凹部17長さは、櫛膜81の長さに適合させるために、13mm〜19mmとする。
【0017】
櫛膜81は、肛門管の略1/3を以上に及ぶ。櫛膜81は約13mm〜19mmの長さを有する。櫛膜81は、線維組織の厚い硬化した環を形成し、その結果としての狭窄と拘縮とが狭い通路壁を形成しているという特徴を有する。
【0018】
排便圧力を加えることなく櫛膜81が装置10の凹部17を把持したときには、該装置に排便圧力が加えられない限り、装置10は肛門管から動くことができない。これは、凹部17の第一端16と第二端18とが防護壁となるなるからである。櫛膜81内の蠕動運動が櫛膜81から装置10を取り除こうとすると、装置は櫛膜81内で短い距離だけわずかに前後動する。更に、中央部20の円筒状の面21の直径は一定であるため、中央部20に対する内痔核部の側圧によるスラスト力がなく、櫛膜81の把持能力を妨げないのである。
【0019】
中央部20の端15の直径が櫛膜の長さよりも小さいという状況、及び、端15と第一端16との直径の差が±15%であるという状況においては、内痔核部の側圧により中央部20に加えられるスラスト力は、櫛膜81により凹部17に加えられる把持力に比べて、装置10に対して僅かな効果を持つに過ぎない。凹部17の第一端16と第二端18との理想的な直径は、櫛膜81の長さよりも小さい。
【0020】
櫛膜の蠕動運動は大量のエネルギーを消費する。これは、血液の循環を増加させ、痔核部の温度を上昇させる。その結果、痔核の状態が治癒される。
【0021】
図3は、本発明による痔核治療装置700の第一の別の実施例を示す。装置700は、第一端部711と、中央部720と、凹部717とを備えている。第一端部711は、球状の上部707と、該上部707から端715まで延びる徐々に狭くなるテーパ面714とを備えている。該端715は破線hにより示されている。該中央部720は、該端715と凹部717の第一端716との間に位置する。
【0022】
中央部720は、端715から第一端716まで延びる凸面721を備えており、凹部717は、第一端716から第二端718まで延びる凹面を有する。第二端718は、破線gにより示されている。装置700は、第二端718で終了してもよいが、止め部、ハンドル等の種々の補助的な付属物を該第二端718に付設してもよい。例えば、図3においては、第二端718にハンドル722が設けられている。第一端部711の上端705から凹部717の第二端718までの長さは、100mm未満である。
【0023】
破線hから破線gまでの長さは、25mm〜40mmであり、25mmと40mmとを含む。この長さは、人体の肛門管の全長をあらわす。中央部720の長さは、13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含む。この長さは、内痔核部の長さをあらわす。凹部717の長さは、13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含む。この距離は、櫛膜の長さをあらわす。
【0024】
中央部720の端715と凹部717の第一端716との直径の差は、±15%である。その結果、中央部720の凸面は、内痔核部の側圧によるかなりのスラスト力にも屈することはなく、凹部717に対する櫛膜の把持能力を阻止し又は妨げることはない。凹部717の最狭部の直径は、中央部720の端715の直径を上回らない。
【0025】
凹部717の第一端716と第二端718との直径は、ほぼ等しい。その直径は19mm未満でよい。
【0026】
図3に示す本発明による当該別の実施例においては、端部711は、球状の上部707から中央部720の端715まで延びる種々の形状の面に置き換えてもよい。
【0027】
図4は、本発明による痔核治療装置900の第二の別の実施例を示す。装置900は、第一端部911と、中央部920と、凹部917とを備えている。第一端部911は、球状の上部907を備えている。徐々に狭くなるテーパ面914が上部907から端915まで延びている。該端915は破線hにより示されている。該中央部920は、該端915と凹部917の第一端916との間に位置する。凹部917は、第一端916から第二端918まで延びる凹面を有する。第二端918は、破線gにより示されている。装置900は第二端918で終了してもよい。この実施例の好ましい形態においては、装置900の凹部917の端918に延長部922が設けられている。第一端部907の球状の上部905から凹部917の第二端918までの好ましい長さは、60mm未満である。
【0028】
破線hから破線gまでの長さは、25mm〜40mmであり、25mmと40mmとを含む。中央部の長さは、13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含む。凹部の長さは、13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含む。
【0029】
中央部の端915と凹部917の端916との直径の差は、±15%である。その結果、中央部における装置の凸面は、内痔核部の側圧によるかなりのスラスト力にも屈することはなく、櫛膜の把持能力を妨げ又は阻止することはない。凹部917の端916と端918との直径は、ほぼ等しい。この直径は19mm未満でよい。凹部917の最狭部の直径は、中央部920の端915の直径を上回らない。
【0030】
本発明においては、第一端部911は、球状の上部907から中央部920の端915まで延びる種々の形状の面に置き換えてもよい。
【0031】
本発明の上記開示と説明は、その例示的、かつ、説明的なものである。本発明の要旨から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内において、図示の構成の詳細における種々の変更を行なうことが可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の痔核治療装置の好ましい実施例の側面図である。
【図2】肛門管の櫛膜内に位置させた本発明の痔核治療装置の好ましい実施例の説明図である。
【図3】本発明の痔核治療装置の別の実施例の側面図である。
【図4】本発明の痔核治療装置の更に別の実施例の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の直腸に嵌め込むに適した寸法を有する第一端部を備え、該第一端部は上端を有し、
中央部を備え、該中央部は該第一端部の該上端から該中央部の端まで延びる少なくとも凹状、凸状又は円筒状の面を有し、
更に、該中央部の該端まで延びる第一端を有する凹部を備え、該凹部は該凹部の該第一端と該凹部の第二端とから延びる凹面を有し、該中央部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該凹部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該中央部の該端は該凹部の該第一端の直径とほぼ等しい直径を有し、該凹部の該第一端の直径は該凹部の該第二端の直径とぼぼ等しく、該凹部の該第一端の直径は該凹部の長さよりも小さい痔核マッサージ装置。
【請求項2】
前記第一端部と前記凹部の第二端との間の長さは60mm未満である請求項1の装置。
【請求項3】
前記中央部は円筒状である請求項1の装置。
【請求項4】
前記中央部は該中央部の前記端から前記凹部の第一端まで延びる凹面を有する請求項1の装置。
【請求項5】
前記中央部は該中央部の前記端から前記凹部の第一端まで延びる凸面を有している請求項1の装置。
【請求項6】
前記凹部の第一端の直径は12mm未満である請求項1の装置。
【請求項7】
人体の直腸に嵌め込むに適した寸法を有する第一端部を備え、該第一端部は上端を有し、
中央部を備え、該中央部は該第一端部の該上端から該中央部の端まで延びる円筒状の面を有し、
更に、該中央部の端まで延びる第一端を有する凹部を備え、該凹部は該第一端から該凹部の第二端まで延びる凹面を有し、該中央部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該凹部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該中央部の該端は該凹部の該第一端の直径とほぼ等しい直径を有し、該凹部の該第一端の直径は該凹部の該第二端の直径とぼぼ等しく、該凹部の該第一端の直径は該凹部の長さよりも小さい痔核マッサージ装置。
【請求項8】
人体の直腸に嵌め込むに適した寸法を有する第一端部を備え、該第一端部は上端を有し、
中央部を備え、該中央部は該上端から該中央部の端まで延びる徐々に狭くなる曲面を有し、
更に、第一端を有する凹部を備え、該中央部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該凹部は該第一端と該凹部の第二端との間に凹面を有し、該凹部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該中央部の該端は該凹部の該第一端の直径とほぼ等しい直径を有し、該凹部の該第一端の直径は該凹部の該第二端の直径とぼぼ等しく、該凹部の該第一端の直径は該凹部の長さよりも小さい痔核マッサージ装置。
【請求項9】
人体の直腸に嵌め込むに適した寸法を有する第一端部を備え、該第一端部は上端を有し、
中央部を備え、該中央部は該第一端部の該上端から該中央部の端まで延びる円筒状の面を有し、
更に、第一端を有する凹部を備え、該凹部は該凹部の該第一端と第二端との間に延びる凹面を有し、該中央部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該凹部の長さは13mm〜19mmであり、13mmと19mmとを含み、該中央部の該端の直径と該凹部の該第一端の直径とがほぼ等しく、該凹部の該第一端の直径と該凹部の該第二端の直径とがぼぼ等しく、該凹部の該第一端の直径は該凹部の長さよりも小さい痔核マッサージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−524557(P2006−524557A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513370(P2006−513370)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/012983
【国際公開番号】WO2004/096145
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(503107842)
【Fターム(参考)】