説明

癌を治療するためのインターフェロンアルファ逐次レジメン

本発明は、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌を治療する方法に関する。さらに、本発明は、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌たとえば幹細胞主導の癌を治療するための特異的インターフェロンアルファ逐次レジメンを提供する。より特定的には、本発明は、癌治療用医薬製剤を調製するためのIFNアルファの使用に関する。ただし、この医薬製剤は、逐次投与パターン、すなわち、治療上有効量のIFNアルファが投与される誘導期、IFNアルファが投与されない期間、および治療上有効量の化学療法剤が投与される化学療法期、に従って投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌を治療する方法に関する。さらに、本発明は、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌たとえば幹細胞主導の癌(stem cell driven cancers)を治療するための特異的インターフェロンアルファ逐次レジメン(sequential regimen)を提供する。より特定的には、本発明は、癌治療用医薬製剤を調製するためのIFNアルファの使用に関する。ただし、この医薬製剤は、逐次投与パターンに従って投与されるものとする。
【背景技術】
【0002】
I型インターフェロン(IFNα/β)は、細胞増殖の阻害、分化の誘導、免疫系の調節、および細胞表面の改変を含む多面的細胞効果を有する1つの分泌タンパク質ファミリーを構成する。これらの活性により、主に悪性およびウイルス性の疾患の診察でそれらの使用が促進されてきた。インターフェロンアルファ(IFNα)は、血液学的悪性疾患、固形腫瘍、およびウイルス症候群の診察で使用されてきてた。残念ながら、それらを抗癌剤として使用しても、ごく限られた成果が得られているにすぎず、それらが臨床的有益性を示す状況下では、それらの作用機序は依然として不明のままである(Grander and Einhorn, 1998, Acta Oncol., 37, 331-338)。全体的に、IFNαは、新生物に対してごく限られた活性を有しているにすぎず、重篤な癌は、I型インターフェロンにより誘導される抗増殖作用に対して耐性がある。
【0003】
最近の実験モデル(Reya et al., 2001, Nature, 414, 105-111; Polyak and Hahn, 2006, Nature Med.; 11: 296-300)では、多くの癌が少数のいわゆる「癌幹細胞」(CSC)により主導されるという仮説が支持される。このCSCは、古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性があると推測される。分裂細胞を排除する化学療法により腫瘍塊が低減されるという事実にもかかわらず、疾患の頻繁に観測される再発が、化学療法耐性つまり生存性のCSCにより生成される新しい腫瘍細胞により引き起こされる。CSCが化学療法耐性であると考えられる理由の1つは、休眠状態としても知られるその一般的休止状態である。したがって、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌たとえば幹細胞主導の癌を治療および管理するための新規な手法に対する明確な必要性が当技術分野に存在する(Polyak and Hahn, 2006、上掲)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌たとえば幹細胞主導の癌を治療する方法に関する。さらに、本発明は、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌たとえば幹細胞主導の癌を治療するための特異的インターフェロンアルファレジメンを提供する。そのような方法および使用は、癌とくに古典的抗増殖化学療法薬剤に対して耐性を示す癌たとえば幹細胞主導の癌を治療するのに有用である。たとえば、本発明に係る方法および使用は、白血病、リンパ腫、および黒色腫のような癌幹細胞主導の悪性疾患の治療に有用である。本発明に係る方法および使用では、該治療は、誘導治療とそれに続く化学療法治療とを含む逐次投与パターンを含むものとする。
【0005】
静止状態のHSC(KLS CD150+CD34-CD48-)の効率的な活性化および細胞周期への進入を誘導して、それを古典的抗増殖性化学療法剤に対して感受性になるようにすることにより、つまりその特異的排除を可能にすることにより、IFNαは、造血幹細胞(HSC)に対して強い予想外の効果を有することが判明した。休眠状態のHSCは、in vivoで活性化されて増殖し自己複製する。パルスIFNα治療はまた、生物体内でHSCの全数を増大させる。注目すべき点として、HSCに及ぼすこの活性化効果は、すべての他の細胞タイプで報告されているその増殖阻害効果とは正反対である(図4にまとめられている)。
【0006】
本発明の第1の態様は、癌治療用医薬製剤を調製するためのIFNアルファの使用を提供する。ただし、この医薬製剤は、以下の逐次的工程、すなわち、
(i)治療上有効量のIFNアルファが投与される誘導期(induction period)、次に、
(ii)IFNアルファが投与されないIFNアルファ不使用期(IFN alpha-free period)、そして次に、
(iii)治療上有効量の化学療法剤が投与される化学療法期、
を含む投与パターンに従って投与されるものとする。
【0007】
本発明の第2の態様は、IFNアルファまたはその医薬製剤の投与を必要とする患者にIFNアルファまたはその医薬製剤を投与することを含む癌の治療方法に関する。ただし、この方法は、以下の工程、すなわち、
(i)治療上有効量のIFNアルファが投与される誘導期、次に、
(ii)IFNアルファが投与されないIFNアルファ不使用期、そして次に、
(iii)治療上有効量の化学療法剤が投与される化学療法期、
を含むものとする。
【0008】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、実施例1に記載されるように、対照として使用されたC57Bl/6野生型(Wt)未治療マウス(図1A(a))、IFNαを用いて10,000U/gで1回治療されたC57Bl/6 Wtマウス(図1A(b))、対照として使用されたIFNレセプターノックアウト(IFNAR-/-)未治療マウス(図1A(c))、およびポリICを用いて10μg/gで1回治療されたIFNレセプターノックアウトマウス(IFNAR-/-)(図1A(d))において、これらの細胞のBrdU取込みの動態を示すことにより、C57Bl/6マウスの造血幹細胞(HSC)(KLS、たとえば、lineage-CD117+Sca1+)に対するIFNα治療の効果を示している。
【図1B】図1Bは、実施例1に記載されるように、対照として使用されたC57Bl/6野生型(Wt)未治療マウス(図1B(a))およびIFNαを用いて10,000U/gで1回治療されたC57Bl/6 Wtマウス(図1B(b))において、HSC亜集団のBrdU取込みの動態を示している。
【図1C】図1Cは、マウスにおいて異なる用量のIFNα(ユニットIFNα/gマウス単位)についてBrdU染色KLS細胞(BrdU)のパーセントを未治療C57Bl/6 Wtマウス(0)と比較して示している。
【図1D】図1D。
【図2A】図2Aは、種々の比の野生型(wt)およびIFNAR-/-(IFNRKO)の骨髄細胞を含む異なる骨髄細胞混合物を示している。実施例3に記載されるように、未治療wtマウス(C)と比較して、異なるマウスをIFNα(10×103 U/マウス)で治療した。
【図2B】図2Bは、IFNαによる治療に応答する混合骨髄キメラ中のwt(CD45.1)LSK細胞内およびIFNAR-/-(CD45.2)LSK細胞内へのBrdU取込みを示している。
【図3A】図3は、実施例4に記載されるように、すべての増殖細胞の排除に起因して大量の骨髄破壊を引き起こす化学療法剤5FUによる反復治療を受けたマウスの生存率を示している。図3Aは、ポリIC(pI:C)注射および5-FU注射に対する治療スケジュールを示している。
【図3B】図3は、実施例4に記載されるように、すべての増殖細胞の排除に起因して大量の骨髄破壊を引き起こす化学療法剤5FUによる反復治療を受けたマウスの生存率を示している。図3Bは、最初の5-FU治療の20日後までのマウスの生存曲線を示している。
【図3C】図3は、実施例4に記載されるように、すべての増殖細胞の排除に起因して大量の骨髄破壊を引き起こす化学療法剤5FUによる反復治療を受けたマウスの生存率を示している。図3Cは、最初の5-FU注射時の増殖性BrdU陽性HSCのパーセントを示している。
【図4】上側:モデルは、休眠状態/静止状態のHSCに及ぼす短期(急性)IFNα刺激の活性化効果およびHSC自己複製に及ぼす慢性IFNα治療の阻害効果を示している。下側:IFNαは、IFNARに結合してそれを活性化し、結果的に、STAT1をリン酸化していくつかのIFNα標的遺伝子の発現を引き起こす。これらのうちの1つであるSca-1は、mRNAレベルでアップレギュレートされ、Sca-1タンパク質は、形質膜中に組み込まれる。Sca-1の下流のシグナリング経路は、依然として未知のままであるが、Sca-1-/-マウスがIFNα刺激に応答しないので、IFNαにより誘導される増殖に必要とされる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中で用いられる「癌」という用語は、白血病、リンパ腫、および黒色腫のような癌、さらには癌幹細胞により主導される(driven by cancer stem cell)すべての他の癌を意味する。さらに、「癌」という用語は、古典的抗増殖化学療法に対して耐性のある癌および癌幹細胞(静止状態の癌細胞または休眠状態の癌細胞とも呼ばれる)主導の悪性疾患を包含する。
【0011】
本明細書中で用いられる場合、「治療」および「治療する」などは、一般的には、所望の薬理学的および生理学的な効果を取得することを意味する。効果は、疾患、疾患に帰属される病態、症状、もしくは有害作用の部分治癒もしくは完全治癒に関して、治療的でありうるか、かつ/または疾患の再発症(再発)、その症状もしくは病態の予防もしくは部分予防に関して、予防的でありうる。本明細書中で用いられる「治療」という用語は、哺乳動物とくにヒトにおける疾患の任意の治療を対象とし、たとえば、(a)疾患の阻害、すなわち、その発症の停止もしくは遅延、あるいは疾患の軽減、すなわち、疾患および/またはその症状もしくは病態の退行、(b)疾患の再発症(再発)の素因を有する可能性のある被験体における疾患の再発症の予防を包含する。特定的には、本発明に係る治療は、癌とくに古典的抗増殖化学療法に対して耐性のある癌および癌幹細胞主導の悪性疾患の疾患状態を治療、予防、または改善することを包含する。
【0012】
「誘導治療」または「プライミング」は、(i)IFNアルファまたはIFNアルファ医薬組成物が投与される誘導期と、(ii)IFNアルファ不使用期と、の逐次移行(sequential succession)よりなる。典型的には、誘導期は、約1、2、3、または約4日間まで持続する。たとえば、誘導期は、約1〜約2日間持続する。誘導期の間、IFNアルファまたはIFNアルファ医薬組成物は、1回または複数回投与可能である。典型的には、誘導期の間、IFNアルファまたはIFNアルファ医薬組成物は、1回または2回投与される。
【0013】
「IFNアルファ不使用期」とは、IFNアルファが患者に投与されない期間のことである。IFNアルファ不使用期の間、患者は、いかなる化学療法も受けないかまたはプラセボ丸剤の投与を受けることが可能である。典型的には、IFNアルファ不使用期は、約2、3、4、または約5日間まで持続する。たとえば、IFNアルファ不使用期は、約2、3、または約4日間、たとえば約2〜3日間持続する。
【0014】
「化学療法治療」は、化学療法剤またはその医薬組成物が投与される化学療法期に行われる。
【0015】
典型的には、化学療法期は、約1または2ヶ月間まで持続する。たとえば、化学療法期は、約1ヶ月間まで持続する。他の実施形態では、化学療法期は、約1または2週間まで持続する。化学療法期は、化学療法剤ごとに適合化可能である。「化学療法不実施期」は、IFNアルファも化学療法剤も患者に投与されない期間に存在する。典型的には、化学療法不実施期は、約1または2ヶ月間まで持続する。
【0016】
本明細書中で用いられる「被験体」という用語は、哺乳動物を意味する。たとえば、本発明の対象となりうる哺乳動物としては、ヒト、霊長動物、家畜、たとえば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなどが挙げられる。
【0017】
「再発」は、化学療法治療後の疾患の再発症を伴う。再発は、抗増殖化学療法耐性つまり生存性の癌幹細胞(CSC)により生成される新しい腫瘍細胞により引き起こされると考えられる。これは、「休眠状態」としても知られるその「休止状態」に起因すると考えられる。
【0018】
本発明に係る治療の「有効性」は、本発明に係る使用に応答して疾患過程が変化することに基づいて測定可能である。たとえば、癌治療の有効性は、癌細胞/癌幹細胞の減少により測定可能である。本明細書中で用いられる「誘導体」という用語は、誘導体が親化合物に類似の生化学的活性を有するように親化合物に対して実質的な構造活性相関を有する任意の化合物を意味する。
【0019】
「1週間」とは、約5、約6、もしくは約7日の期間または日数を意味する。「1ヶ月間」とは、約28、約29、約30、もしくは約31日の期間または日数を意味する。
【0020】
インターフェロンアルファ
本明細書中で用いられる「インターフェロン-アルファ(IFN-アルファまたはIFNα)」という用語は、Escherichia coli菌内で産生される組換えヒトインターフェロンα-2a(ROFERON(登録商標)、Roche)などの組換えインターフェロンα-2aのようなインターフェロンα2aを含むものとする。IFN-アルファはさらに、ペグ化インターフェロンα2a(PEGASYS(登録商標)、Roche)などのIFN-アルファコンジュゲートのようなIFN-アルファ誘導体を包含する。典型的には、IFNαは10×103ユニット/gである。
【0021】
化学療法剤
本明細書中で用いられる「化学療法剤」という用語は、抗新生物剤または抗代謝剤、たとえば、白血病、リンパ腫、および黒色腫の治療に使用されるものなどを包含するものとする。たとえば、化学療法剤という用語は、ピリミジノン系抗新生物剤たとえばシタラビン(Cytosar(登録商標)、Pfizer)もしくは5-フルオロウラシル(5-flurouracil)またはシスプラチンまたはタキセン類(taxens)あるいはそれらの誘導体を包含する。化学療法剤という用語はまた、BCR-ABLキナーゼ阻害剤、たとえば、イマチニブ(Gleevec(登録商標))のような白血病の治療に使用されるものを包含する。BCR-ABLキナーゼ阻害剤は、他の抗新生物剤または抗代謝剤と組み合わせて使用可能である。
【0022】
組成物
本発明は、癌とくに古典的抗増殖化学療法に対して耐性のある癌および癌幹細胞主導の悪性疾患に罹患している患者、好ましくは哺乳動物患者、最も好ましくはヒト患者を治療するための医薬製剤の調製のための方法および使用を提供する。
【0023】
IFNアルファは、本明細書中に記載の任意の形態で1種以上のIFNアルファを含有しうる医薬製剤として投与可能である。本発明に係る組成物は、1種以上の製薬上許容される追加の成分、たとえば、ミョウバン、安定化剤、抗微生物剤、緩衝剤、着色剤、風味剤、アジュバントなどをさらに含みうる。
【0024】
化学療法剤は、本明細書中に記載の任意の形態で1種以上の化学療法剤を含有しうる医薬製剤として投与可能である。本発明に係る組成物は、1種以上の製薬上許容される追加の成分、たとえば、ミョウバン、安定化剤、抗微生物剤、緩衝剤、着色剤、風味剤、アジュバントなどをさらに含みうる。
【0025】
本発明に係るIFNアルファおよび/または化学療法剤は、従来から利用されているアジュバント、担体、希釈剤、または賦形剤と一緒に、医薬組成物およびその単位投与量製剤の形態に個別に配置することが可能であり、そのような形態で、錠剤もしくは充填カプセル剤のような固形剤として、または溶液剤、サスペンジョン剤、エマルジョン剤、エリキシル剤、もしくはそれらが充填されたカプセル剤のような液剤として、いずれも経口用途に、あるいは滅菌注射用溶液剤の形態で、非経口(皮下を含む)用途に、利用可能である。そのような医薬組成物およびその単位投与量製剤は、追加の活性化合物または活性成分と併用してまたは併用せずに、従来の割合で成分を含みうる。また、そのような単位投与量製剤は、利用される目標一日投与量範囲に見合った任意の好適な有効量の活性成分を含有しうる。本発明に係るIFNアルファ組成物は、好ましくは注射可能である。
【0026】
本発明に係る組成物はまた、液状製剤でありうる。液状製剤としては、水性もしくは油性のサスペンジョン剤、溶液剤、エマルジョン剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。経口投与に好適な液状製剤は、緩衝剤、懸濁化剤および分散剤(dispensing agents)、着色剤、風味剤などと共に、好適な水性もしくは非水性の媒体を含みうる。組成物はまた、使用前に水または他の好適な媒体を用いて再構成するための乾燥製剤として製剤化可能である。そのような液状製剤は、添加剤を含有しうる。添加剤としては、懸濁化剤、乳化剤、非水性媒体、および保存剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。懸濁化剤としては、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/シュガーシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルミニウムステアレートゲル、および水素化食用脂肪が挙げられるが、これらに限定されるものではない。乳化剤としては、レシチン、ソルビタンモノオレエート、およびアカシアが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非水性媒体としては、食用油、アーモンド油、分別ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコール、およびエチルアルコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。保存剤としては、メチルp-ヒドロキシベンゾエートまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートおよびソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらなる材料および加工技術などは、Part 5 of Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, Marck Publishing Company, Easton, Pennsylvania(参照により本明細書に組み入れられるものとする)記載されている。
【0027】
本発明に係る固形組成物は、従来方式で製剤化された錠剤またはロゼンジ剤の形態をとりうる。たとえば、経口投与に供される錠剤およびカプセル剤は、従来の賦形剤を含有しうる。賦形剤としては、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、および湿潤剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。結合剤としては、シロップ、アカシア(accacia)、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプン漿、およびポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
充填剤としては、ラクトース、糖、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、およびソルビトールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。滑沢剤としては、マグネシウムステアレート、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、およびシリカが挙げられるが、これらに限定されるものではない。崩壊剤としては、ジャガイモデンプンおよびナトリウムデンプングリコレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。湿潤剤としては、ナトリウムラウリルスルフェートが挙げられるが、これに限定されるものではない。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティング可能である。
【0029】
注射用組成物は、典型的には、注射用の滅菌された生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水または当技術分野で公知の他の注射用担体をベースとする。
【0030】
本発明に係る組成物はまた、坐剤基剤を含有しうる坐剤として製剤化可能である。坐剤基剤としては、ココア脂またはグリセリドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明に係る組成物はまた、吸入用として製剤化可能であり、たとえば、乾燥粉末として投与可能な溶液剤、サスペンジョン剤、もしくはエマルジョン剤(ただし、これらに限定されるものではない)などの形態をとりうるか、またはジクロロジフルオロメタンもしくはトリクロロフルオロメタンのような噴射剤を用いるエアロゾル剤の形態をとりうる。本発明に係る組成物はまた、水性もしくは非水性の媒体を含んで製剤化された経皮製剤でありうる。経皮製剤としては、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ペースト剤、薬剤入り硬膏剤、貼付剤、または膜剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明に係る組成物はまた、非経口投与に供すべく製剤化可能である。非経口投与としては、注射または連続注入によるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。注射用の製剤は、油性もしくは水性の媒体中のサスペンジョン剤、溶液剤、またはエマルジョン剤の形態をとうる。また、製剤化剤を含有しうる。製剤化剤としては、懸濁化剤、安定化剤、および分散剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。組成物はまた、好適な媒体を用いて再構成すべく粉末形態で提供可能である。媒体としては、滅菌されたパイロジェンフリーの水が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明に係る組成物はまた、留置または筋肉内注射により投与しうるデポ製剤として製剤化可能である。組成物は、好適な高分子材料もしくは疎水性材料を用いて(たとえば、許容される油中のエマルジョンとして)、イオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として(たとえば、難溶性塩として)、製剤化可能である。
【0034】
本発明に係る組成物はまた、リポソーム製剤として製剤化可能である。リポソーム製剤は、対象の細胞または角質層に浸透しかつ細胞膜と融合することによりリポソームの内容物を細胞内に送達するリポソームを含みうる。他の好適な製剤では、ニオソームを利用することが可能である。ニオソームは、リポソームに類似した脂質ベシクルであり、主に非イオン性脂質よりなる膜を有し、そのいくつかの形態は、角質層を横切って化合物を輸送するのに有効である。
【0035】
本発明に係る化合物はまた、持続放出製剤の形態でまたは持続放出薬剤送達システムから投与可能である。代表的な持続放出材料についての説明は、Remington's Pharmaceutical Sciencesの組込み材料のところに見いだしうる。
【0036】
投与形態
単回用量または複数回用量として個体に投与される投与量は、薬動学的性質、患者の病態および特性(性別、年齢、体重、健康状態、背格好)、症状の程度、併用治療、治療頻度、および所望の効果をはじめとするさまざまな因子に依存して異なるであろう。
【0037】
本発明に係る組成物は、任意の方式で投与可能である。方式としては、経口投与、非経口投与、舌下投与、経皮投与、直腸内投与、経粘膜投与、吸入投与、頬腔内投与、もしくは鼻腔内投与、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非経口投与としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、髄腔内投与、および関節内投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明に係る組成物はまた、組成物の徐放さらには緩速制御静脈内注入を可能にするインプラントの形態で投与可能である。好ましい実施形態では、IFNαまたはその医薬製剤は、静脈内投与または皮下投与される。IFNαおよび化学療法剤の投与レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整可能である。たとえば、いくつかの分割用量を毎日投与しうるか、単回用量を毎日投与しうるか、または治療状況の緊急性に応じて比例的に用量を低減させうる。
【0038】
以下の実施例により本発明についてさらに説明するが、これらの実施例により本発明の範囲をなんら限定しようとするものではない。
【0039】
組合せ
本発明によれば、化学療法剤は、単独でまたは少なくとも1種の追加の化学療法剤との組合せで、予防的または治療的に、他の治療レジメンまたは治療剤(たとえば、複数の薬剤レジメン)の前、それと同時、またはそれと逐次的に、治療上有効量で、個体に投与可能であり、特定的には、癌治療用の治療剤である。他の化学療法剤と同時に投与される化学療法剤は、同一もしくは異なる組成物の形態でかつ同一もしくは異なる投与経路で投与可能である。しかしながら、本発明との関連では、化学療法剤の投与は、常に、本発明に係るレジメンに従ってIFNαの投与後に逐次的に行われる。
【0040】
患者
一実施形態では、本発明に係る患者は、癌たとえば古典的抗増殖化学療法に対して耐性のある癌および癌幹細胞主導の悪性疾患に罹患している患者である。
【0041】
さらなる実施形態では、本発明に係る患者は、白血病、リンパ腫、および黒色腫から選択される疾患に罹患している患者である。
【0042】
本発明に係る使用
本発明に関連する範囲内では、本発明に係る組成物および使用の有益な効果としては、疾患の発症後の病理学的進行の減衰、低減、減少、または減弱が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、本発明に係る使用および方法は、再発イベントの減少および/または化学療法剤の有効性の増強により疾患の再発症(再発)に対して有益な効果を及ぼす。
【0043】
一実施形態では、本発明は、癌治療用医薬製剤を調製するためのIFNアルファの使用を提供する。ただし、この医薬製剤は、以下の逐次的工程、すなわち、
(i)治療上有効量のIFNアルファが投与される誘導期、次に、
(ii)IFNアルファが投与されないIFNアルファ不使用期、そして次に、
(iii)治療上有効量の化学療法剤が投与される化学療法期、
を含む投与パターンに従って投与されるものとする。
【0044】
他の実施形態では、本発明は、IFNアルファまたはその医薬製剤の投与を必要とする患者にIFNアルファまたはその医薬製剤を投与することを含む癌の治療方法を提供する。ただし、この方法は、以下の工程、すなわち、
(i)治療上有効量のIFNアルファが投与される誘導期、次に、
(ii)IFNアルファが投与されないIFNアルファ不使用期、そして次に、
(iii)治療上有効量の化学療法剤が投与される化学療法期、
を含むものとする。
【0045】
さらなる実施形態では、本発明は、誘導期が約2、3、または約4日間まで持続する本発明に係る使用または方法を提供する。
【0046】
他のさらなる実施形態では、本発明は、IFNα不使用期が約2、3、4日間までまたは約5日間まで持続する本発明に係る使用または方法を提供する。
【0047】
他のさらなる実施形態では、本発明は、IFNα不使用(ii)期が約2日間までまたは約4日間まで持続する本発明に係る使用または方法を提供する。
【0048】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法期が約1ヶ月間または約2ヶ月間まで持続する本発明に係る使用または方法を提供する。
【0049】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法剤がシタラビンまたはその誘導体である本発明に係る使用または方法を提供する。
【0050】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法剤が5-フルオロウラシルまたはその誘導体である本発明に係る使用または方法を提供する。
【0051】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法剤がシスプラチンまたはその誘導体である本発明に係る使用または方法を提供する。
【0052】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法剤がタキセン化合物(a Taxen)またはその誘導体である本発明に係る使用または方法を提供する。
【0053】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法剤がイマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体である本発明に係る使用または方法を提供する。
【0054】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法治療剤がシタラビンまたはその誘導体とイマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体との組合せである本発明に係る使用または方法を提供する。
【0055】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法治療剤が5-フルオロウラシルまたはその誘導体とイマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体との組合せである本発明に係る使用または方法を提供する。
【0056】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法治療剤がシスプラチンまたはその誘導体とイマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体との組合せである本発明に係る使用または方法を提供する。
【0057】
他のさらなる実施形態では、本発明は、化学療法治療剤がタキセン(Taxen)またはその誘導体とイマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体との組合せである本発明に係る使用または方法を提供する。
【0058】
他のさらなる実施形態では、本発明は、投与パターンが少なくとも1回または複数回の本発明に係る投与パターンサイクル、すなわち工程(i)〜(iii)のサイクルを少なくとも1回または複数回含む本発明に係る使用または方法を提供する。
【0059】
他のさらなる実施形態では、本発明は、本発明に係る投与パターンが工程(iii)の後に工程(iv)をさらに含みかつ工程(iv)が化学療法不実施期を含む本発明に係る使用または方法を提供する。
【0060】
他のさらなる実施形態では、本発明は、投与パターンが少なくとも1回または複数回の本発明に係る投与パターンサイクル、すなわち工程(i)〜(iv)のサイクルを少なくとも1回または複数回含む本発明に係る使用または方法を提供する。
【0061】
他のさらなる実施形態では、本発明は、癌が白血病、リンパ腫、および黒色腫から選択される本発明に係る使用または方法を提供する。
【実施例】
【0062】
次の略号は、それぞれ、以下の定義を表す。
【0063】
h(時間)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、g(グラム)、wt(野生型)、BrdU(ブロモデオキシウリジン)、CSC(癌幹細胞)、FACS(蛍光標示式細胞分取)、5FU(5-フルオロ-ウラシル)、HSC(造血幹細胞)、KO(ノックアウト)、IFN(インターフェロン)、U(ユニット)。
【実施例1】
【0064】
造血幹細胞(HSC)に及ぼすIFNアルファ治療の効果
0hおよび24hにおいてそれぞれ10×103U/マウスを用いて、文献(Le Bon et al., 2003, Nat. Immunol. 4(10):1009-15)の記載どおりに取得されたIFNαで野生型C57Bl/6マウスを治療し、次に、細胞検出のために36hにおいて360μg/マウスのブロモデオキシウリジン(BrdU)で治療した。BrdUだけが注射されたマウスを対照として使用した。次に、骨髄を後肢の長骨から採取し、標準的手順(Wilson et al., 2004, Genes & Dev 18; 2747-2763)により準備した。次に、マウス系列マーカー(CD4、CD8、CD11b、Gr1、TER119、B220)、CD117(c-kit)、Sca1(Ly-6A/E)、CD34、CD135、CD48、またはCD150に対するコンジュゲート化抗体(Bioscience)のカクテルで骨髄細胞を染色した。次に、細胞を固定した。BrdU染色キット(BD Biosciences)を用いてBrdU取込みを分析した。
【0065】
文献(Wilson et al., 2004、上掲)の記載どおりにFACS Cantoフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて5色および6色の蛍光標示式細胞分取(FACS)分析(FITC、PE、PE-Cy5、PE-Cy7、APC、APC-Cy7)を行った。FlowJo(Tree Star, Inc.; Ashland, USA software)を用いてデータを解析した。
【0066】
これらの細胞の増殖率の測定値としてBrdU陽性KLS-HSC細胞(lineage CD117+Sca1+)のパーセントを決定した。HSCの亜集団について同一のBrdU分析を行った。
【0067】
図1Aに示されるように、IFNα治療によりHSC(この場合、lineage-CD117+Sca1+細胞)の増殖率が23%から63%に増大される(それぞれ図1A(a)および図1A(b))。IFNAR-/-マウスにおいて、IFNα/bを強力に誘導する二本鎖RNA模倣体であるポリIポリCの注射後、この効果が観測されないことから(図1A(c+d))、HSCに及ぼす効果は、IFNシグナリングを介するものであることが示唆される。詳細な分析の結果、IFNα治療の後、HSCのすべての亜集団(CD150+, CD34-、CD150+, CD48-、およびCD135-, CD34-、長期HSCとも呼ばれる;CD135-, CD34+、短期HSCとも呼ばれる;ならびにCD135-, CD34-、多能性前駆細胞(MPP)とも呼ばれる)で増殖が増大することが判明した(図1B)。IFNα治療はまた、HSC細胞の絶対数の増大を引き起こした。IFNα治療の後の増殖の増大は、用量依存的である(図1C)。
【実施例2】
【0068】
休眠状態の造血幹細胞(HSC)に及ぼすIFNアルファ治療の効果
C57Bl/6マウスおよびIFNAR-/-マウスに飲料水中のBrdU(0.8mg/ml、Sigma)を10日間与えた。このBrdUパルスの後、マウスをそのまま10週間追跡した。次に、それぞれ10×103U/マウスの濃度でIFNαをマウスに2回注射するか(2回の注射の間隔は48hである)または未治療のままにした。次に、最後のIFNα注射の10日後にBrdU取込みを分析した。野生型マウスにおけるこのBrdUパルス追跡実験の後、長期HSC(KSL CD150+CD48-CD34-)の約15%は、依然としてBrdUで標識されている(標識保持細胞LRC)。しかしながら、IFNα治療によりLRC+長期HSCの数が劇的に低減されることから、これらの細胞のほとんどが細胞周期に入ることによりBrdU標識が希釈消失されることが示唆される。重要なこととして、これらのデータにより示されるように、IFNαは、細胞分裂周期への進入を促進することにより休眠状態のHSCを活性化させる。このことは、IFNレセプターを欠失している長期HSCの場合(IFNAR-/-マウスの場合)にはあてはまらなかったことから、この効果は、実際に、インターフェロンシグナリングにより媒介されることが示される(図1D)。
【実施例3】
【0069】
造血幹細胞(HSC)の活性化に及ぼすIFNアルファ治療の直接的効果
HSCがin vivoでIFNαに直接的に応答するかどうかを調べるために、野生型(wt)骨髄細胞とIFNAR-/-(IFNRKO)骨髄細胞とを種々の比で含む混合骨髄「キメラ」を未治療wtマウス(C)と比較してIFNα(10×103U/マウス)で治療した(図2A)。実験の結果、IFNαによりHSCが直接的かつ間接的に活性化されることが判明した(図2B)。
【0070】
要するに、これらのデータにより示されるように、マウスをIFNαで治療すると静止状態の造血幹細胞(HSC)(KSL CD150+CD34-CD48-)の効率的な細胞周期への進入が誘導されることから、休眠状態のHSCは活性化されて増殖および自己複製することが示唆される。パルスIFNα治療はまた、HSCの全数を増大させる。正常細胞とIFNレセプター欠損細胞との混合物を含有する骨髄キメラにより得られたデータから、観測された活性化は、少なくとも部分的に、HSCに及ぼすIFNαの直接的効果により引き起こされることが示唆される。我々の知るかぎり、これは、IFNαがHSCに対して特異的効果を及ぼすことを示す最初の報告である。注目すべき点として、HSCに及ぼすこの活性化効果は、すべての他の細胞タイプで報告されているその増殖阻害効果とは正反対である。
【実施例4】
【0071】
IFNアルファ「パルス」と化学療法剤(5-フルオロ-ウラシル)とによる逐次治療プロトコル
野生型C57Bl/6マウスおよびIFNAR-/-マウスを次のように治療した。10 25μg/gマウスのポリIC(Invivogen)をマウスに2回注射した(ポリICは、IFNα/bを強力に誘導する二本鎖RNA模倣体である)。2回の注射間の時間差は48hである。この実験ではIFNアルファ「パルス」としてポリIC注射を使用する。ポリICのプライミング注射を行わずに5FUだけで治療されたマウスを対照として使用した。
【0072】
最後のポリIC注射の後、異なる時点で、すなわち、0h(最後のポリIC注射と同時)、24h、48h、72h、5日、および7日で、5-フルオロ-ウラシル(5FU)を注射した(150mg/kg、Sigma)。以上の実施例に記載したようなKLS細胞のBrdU分析により、5FU注射時の細胞の増殖率を分析した。5FU単独注射を7日ごとに反復した。マウスの生存を20日間にわたり監視した。
【0073】
図3に示されるように、未治療マウスは、すべての増殖細胞の排除に起因して大量の骨髄破壊を引き起こす化学療法剤5FUによる反復治療に耐えて生存する。休眠状態のHSCは5FUに対して耐性がありかつ新しい前駆細胞および成熟血液細胞を生成して機能的造血系を急速に回復しうるので、マウスは生存する。これとは対照的に、5FUの前にポリICを注射すると(これによりIFNαが誘導される)、すべてのHSCの効率的な排除に起因してマウスの効率的な致死が引き起こされる。これは、ポリICを5FU治療の24〜72時間前に注射した場合に最も効率的であった。マウスの死亡効率は、増殖HSCのパーセント(89%〜93%)と良い相関を示す。IFNAR-/-マウスを用いて反復された同一の実験の結果、マウスの生存に対して効果がないことが判明したことから、ポリICの効果はI型IFNシグナリングにより媒介されることが示される。これらのデータにより示されるように、IFNシグナリングは、通常はほとんどが休眠状態のHSCの細胞周期への効率的な進入を促進することにより、抗増殖薬剤5FUによる死亡を起こしやすくする。Tは、最後のポリIC注射の後の5FU注射の時点を表し、20日間の終了時の死亡マウスの割合を表し、そして% BrdU+は、増殖BrdU陽性HSCのパーセントを表す。
【実施例5】
【0074】
IFNアルファ注射と化学療法剤(シタラビン)とによる逐次治療プロトコル
急性骨髄性白血病(AML)の患者に由来するヒト白血病細胞をマウスに移植する。白血病の最初の徴候を示すマウスにヒトIFNアルファのパルス注射を2回行い、続いて、最後のIFNアルファ治療の2日後に開始して注射によりシタラビンで2週間治療する。必要であれば、このレジメンを4週間ごとに反復する。マウスの腫瘍増殖および生存を監視し、そして骨髄を二次マウスレシピエントに移植して白血病癌幹細胞がこの新規な逐次治療戦略により排除されたことを示す。
【0075】
IFNアルファと、すべての機能性HSCの排除をもたらす化学療法剤(5-フルオロウラシルまたはシタラビン)の逐次治療と、を組み合わせたこれらの逐次治療プロトコルの結果から、IFNα治療と細胞周期停止化学療法剤との組合せにより癌幹細胞が排除される可能性があること、したがって、おそらく転移性悪性疾患を含めて、腫瘍の再発が予防され、癌からの長期治癒がもたらされる可能性があることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療用医薬製剤を調製するためのIFNアルファの使用であって、該医薬製剤が、以下の逐次的工程、すなわち、
(i)治療上有効量のIFNアルファが投与される誘導期、次に、
(ii)IFNアルファが投与されないIFNアルファ不使用期、そして次に、
(iii)治療上有効量の化学療法剤が投与される化学療法期、
を含む投与パターンに従って投与される、上記使用。
【請求項2】
前記誘導期が約2、3、または約4日間まで持続する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記IFNα不使用期(ii)が約2、3、4日間までまたは約5日間まで持続する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記IFNα不使用(ii)期が約2日間までまたは約4日間まで持続する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記化学療法期が約1または約2ヶ月間まで持続する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記化学療法剤がシタラビンまたはその誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記化学療法剤が5-フルオロウラシルまたはその誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記化学療法剤がシスプラスチン(Cisplastin)またはその誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記化学療法剤が25タキセン化合物(a 25 Taxen)またはその誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記化学療法剤がイマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記化学療法剤が、シタラビンまたはその誘導体と、イマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体と、の組合せである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記化学療法剤が、5-フルオロウラシルまたはその誘導体と、イマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体と、の組合せである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記化学療法剤が、シスプラチンまたはその誘導体と、イマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体と、の組合せである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記化学療法剤が、タキセン化合物(a Taxen)またはその誘導体と、イマチニブもしくは他のBCR-ABLキナーゼ阻害剤またはそれらの誘導体と、の組合せである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記投与パターンが工程(iii)の後に工程(iv)をさらに含みかつ工程(iv)が化学療法不実施期を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記投与パターンが工程(i)〜(iii)の少なくとも1回または複数回のサイクルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記投与パターンが工程(i)〜(iv)の少なくとも1回または複数回のサイクルである、請求項10に記載の使用。
【請求項18】
前記癌が白血病、リンパ腫、および黒色腫から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
IFNアルファまたはその医薬製剤の投与を必要とする患者にIFNアルファまたはその医薬製剤を投与することを含む癌の治療方法であって、以下の工程、すなわち、
(i)治療上有効量のIFNアルファが投与される誘導期、次に、
(ii)IFNアルファが投与されないIFNアルファ不使用期、そして次に、
(iii)治療上有効量の化学療法剤が投与される化学療法期、
を含む、上記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−529984(P2010−529984A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511773(P2010−511773)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/IB2008/052343
【国際公開番号】WO2008/152609
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(510106027)ハイ−ステム ハイデルベルク インスティチュート フォー ステム セル テクノロジー アンド エクスパーリメンタル メディシン ゲマイニュツィック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】