説明

癌幹細胞を標的とした薬剤耐性癌治療法

本発明は、薬剤耐性癌幹細胞集団および薬剤耐性成熟癌細胞を減少または除去する、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含む、癌を予防、治療、および/または管理するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年9月10日に出願された米国仮出願第61/241,180号の利益を主張し、その全体がここに援用される。
【0002】
本発明は、癌細胞を予防、治療、減少、または除去するための方法および医薬組成物を提供し、より特定的には、本発明は、癌幹細胞および薬剤耐性癌細胞を減少または除去するための、予防上および/もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを提供する。
【背景技術】
【0003】
ヒトテロメアは、(TTAGGG)ヘキサヌクレオチドリピートからなる、染色体の末端の非コードDNA配列である。各細胞分裂の間、テロメアDNA(30−100bp)は、末端複製の問題により消失する(Blackburn D.H., Nature, 408:53-56, 2000 & Phatak, P. et al., Br. J. Pharmacol., 152: 1003-11, 2007)。テロメアは、染色体の完全性を維持し、欠陥遺伝子の複製を防止する。染色体は限られた量のテロメアDNAとともに生じるため、細胞は、決定的な長さのテロメアに到達する前に、有限数の分裂しかできない。正常細胞が決定的なテロメア長さに到達すると、それらは細胞周期から出て、複製老化する(Phatak, P. et al, Br. J. Pharmacol., 152: 1003-11, 2007 & Holt, S.E. et al., Nature Biotechnol., 14: 1734-1741, 1996)。しかし、正常細胞から悪性細胞への初期の腫瘍形成の間、テロメアは低減するが、その後、ほとんどの場合、酵素テロメラーゼの再活性化により、短いが安定した長さで維持される(Blackburn D.H., Nature, 408:53-56, 2000; Phatak, P. et al., Br. J. Pharmacol, 152: 1003-11, 2007 & Holt, S.E. et al., Nature Biotechnol., 14: 1734-1741, 1996)。テロメラーゼは、新たなテロメアリピートの追加のためのテンプレートおよび触媒サブユニットhTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)として作用する、リボ核タンパク逆転写酵素である。テロメラーゼは、癌細胞が無限増殖の根本的な限定を克服できるようにして、それらを不死化させる。したがって、テロメラーゼおよびテロメアは、抗癌療法のための有望な標的として出現している(Phatak, P. et al., Br. J. Pharmacol., 152: 1003-11, 2007, Chumsri, S. et al., Curr. Opin. Mol. Ther. 10: 323-333, 2008)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
癌に対して有効で、最終的に根治的な治療を開発する際の主要な問題は、癌が不均一(heterogeneous)であり、成熟細胞および、幹細胞と呼ばれ、自己再生の要因である細胞を含有することにある。現在の細胞毒性抗癌剤は、主に成熟細胞集団を死滅させることを目的としているが、癌幹細胞を根絶させることはできない。その結果、癌はしばしば再発し、その後、腫瘍はより侵襲性の幹細胞様の薬剤耐性癌細胞を含む(Chumsri,S. et al., Curr. Opin. Mol. Ther. 10: 323-333, 2008)。したがって、テロメラーゼを阻害し、またはテロメアを標的にして、薬剤耐性癌幹細胞および成熟癌細胞を含む成熟癌細胞ならびに幹様癌細胞の両方を減少または除去することができる、新たな治療剤および/または投与計画が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面に従うと、患者における屈折性形態(refractive form)の癌を治療するための方法が提供される。これは、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウム(NaAsOまたはKML001)を、単独で、または他の抗癌剤と併用して、患者に投与することにより達成される。ある実施形態においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムは、1日当たり1回以上、0.1〜20mgの単位用量で投与される。ある実施形態においては、患者は、メタ亜ヒ酸ナトリウムによる治療後に、幹細胞集団の存在について監視される。ある他の実施形態においては、患者は、メタ亜ヒ酸ナトリウムによる治療の後、4年以上の期間そうして監視されてもよい。ある実施形態においては、屈折性癌(refractive cancer)は、前立腺癌、肺癌、リンパ腫または白血病である。
【0006】
本発明の別の局面においては、正常よりも高いIL−6の血清レベルを有する癌患者を治療する方法であって、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを患者に投与し、最後のメタ亜ヒ酸ナトリウム治療の後、患者の血清IL−6レベルを監視することを含む、方法が提供される。患者のIL−6レベルの監視は、メタ亜ヒ酸ナトリウム治療の終了後、4年以上の間、周期的に行なわれてもよい。
【0007】
本発明の別の局面においては、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムと、癌がそれに対して薬剤耐性であることが示された抗癌剤とを患者に投与することを含む、薬剤耐性形態の癌を患う患者における抗癌剤の有効性を向上させる方法が提供される。
【0008】
本発明のさらに別の局面においては、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムおよび抗癌剤の各々を患者に投与することを含む、患者における屈折性癌細胞を、該癌細胞が先にそれに対して耐性であった抗癌剤に対して感作させる方法が提供される。抗癌剤は、メタ亜ヒ酸ナトリウム治療投与計画の投与の前、メタ亜ヒ酸ナトリウム治療投与計画の終了後、またはメタ亜ヒ酸ナトリウム治療投与計画の投与中に投与されてもよい。
【0009】
本発明のさらに別の局面においては、患者における癌の再発を阻害または予防する方法が提供される。この方法は、1種類以上の抗癌剤による治療投与計画の終了後、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを患者に投与することを含む。ある実施形態においては、患者は、メタ亜ヒ酸ナトリウムによる治療の後、癌幹細胞集団の存在について監視される。監視は、4年以上の間、周期的に行なうことができる。
【0010】
特定の理論またはメカニズムによって拘束されることなく、癌幹細胞集団の減少または除去は、癌幹細胞集団により産生される癌細胞集団を減少または除去することにより、腫瘍の成長、腫瘍のバルクサイズ、腫瘍の形成および/または転移の形成を減少または除去する。すなわち、癌幹細胞集団の減少または除去により、癌細胞による腫瘍および/または転移の形成、再形成または成長が防止される。
【0011】
一局面に従うと、本発明は、薬剤耐性の癌幹細胞集団を減少または除去するために十分な治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、対象に投与することを含む、癌の治療方法に関する。この局面に関する別の実施形態においては、癌幹細胞集団は、パクリタキセルに耐性である。さらに別の関連する実施形態においては、癌幹細胞集団は、ドセタキセルに耐性である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】ヘキスト33342染料を用いたDU145wtおよびDoc50耐性細胞におけるサイドポピュレーション(SP)の検出を示す図である。
【図1B】フローサイトメトリーにより求められたwtおよび耐性クローンにおけるPgpの細胞表面発現を示す図である。白色曲線はPE(フィコエリトリン)−アイソタイプコントロール染色細胞であり、灰色曲線はPgp陽性細胞である。
【図1C】wtおよびタキサン耐性DU145細胞における、アイソタイプコントロール(白色曲線)と比較したCD44染色(灰色曲線)についてのヒストグラムを示す図である。
【図1D】MTT検定法において、ドセタキセルにより処置したときのパクリタキセル、ドセタキセル、およびDU145wt細胞を比較する成長曲線を示す図である。
【図1E】MTT検定法において、KML001により処置したときのパクリタキセル、ドセタキセル、およびDU154wt細胞を比較する成長曲線を示す図である。
【図2】図2Aは、DCV染色で染色したDU145wt細胞のサイドポピュレーションを示す図である。図2Bは、BCRP/ABCG2インヒビターであるフミトレモルギンC(FTC)により処置したDU145wtのサイドポピュレーションを示す図である。図2Cは、Pgp/ABCB1インヒビターであるベラパミルにより処置したDU145wtのサイドポピュレーションを示す図である。
【図3】図3Aは、通常の(コントロール)培地で処置したDU145wtを示す図である。図3Bは、IC100濃度(13μM)のKMLを含有する培地で72時間前処置された、DU145wtを示す図である。
【図4】図4Aは、KML001で処置したDU145/Pac200を示すMTT増殖検定法を示す図である。図4Bは、GRN163Lで処置したDU145/Pac200を示すMTT増殖検定法を示す図である。
【図5】図5Aは、DCV染料のみで処置したDU145/Pac200細胞のサイドポピュレーションを示す図である。図5Bは、DCVおよびフミトレモルギンC(FTC)で処置したDU145/Pac200のサイドポピュレーションを示す図である。図5Cは、DCVおよびベラパミルで処置したDU145/Pac200のサイドポピュレーションを示す図である。図5Dは、IC100濃度のKML001で処置したDU145/Pac200を示すサイドポピュレーション検定法を示す図である。図5Eは、IC100濃度のGRN163Lで処置したDU145/Pac200を示すサイドポピュレーション検定法を示す図である。
【図6A】未処置の細胞株に対してKML001処置した細胞株において形成されたコロニーの平均数として、クローン原性検定法における前立腺癌細胞(DU145)の成長を示す図である。
【図6B】未処置の細胞株に対してKML001で処置した細胞株において形成されたコロニーの平均数として、クローン原性検定法における前立腺癌細胞(DU145/pac200)の成長を示す図である。
【図7】前立腺癌細胞株であるDU145/Pac200からの未ソート細胞、SP−およびSP+フラクションを比較して、5日間のKML001処置による標準MTTによる成長曲線を示す図である。
【図8A】定量RT−PCRにより測定されたhTERT遺伝子発現を示す図である。ソートされたフラクション:DU145/Pac200 SP−およびSP+におけるテロメラーゼmRNA転写レベルは、同様の発現レベルを有する。
【図8B】定量RT−PCRにより測定されたhTERT遺伝子発現を示す図である。標準MTTにより求められた、72時間のIC50およびIC100のKML001処置後のhTERT発現レベルの減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳類、特にヒトにおける癌を予防、治療、および/または管理するための方法を提供する。方法は、癌幹細胞集団ならびに薬剤耐性の成熟幹細胞および薬剤耐性の癌幹細胞を減少または除去する、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0014】
本発明の一部は、前立腺癌の治療のための第I/II相臨床試験における薬剤であるメタ亜ヒ酸ナトリウム(KML001)が、テロメラーゼの触媒サブユニットおよびテロメアの両方を標的とし、化学療法を受けていない(chemo-naive)、および化学療法に耐性のある前立腺癌細胞株の成熟および幹細胞集団の成長を阻害することができるという発見に基づく。
【0015】
定義
ここで用いられる「癌幹細胞」という用語は、増殖性の高い癌細胞の前駆体であり得る細胞を指す。癌幹細胞は、マウスなどの免疫無防備状態の哺乳類において腫瘍を形成し、典型的には、マウスなどの免疫無防備状態の哺乳類におけるその後の累代移植(serial transplantation)の際に腫瘍を形成する能力により証明されるように、腫瘍を再成長させる能力を有する。また、癌幹細胞は、典型的には、腫瘍のバルクに対して成長が遅く、すなわち、癌幹細胞は一般的に静止状態にある。すべてではないが、ある実施形態においては、癌幹細胞は、腫瘍のおよそ0.1〜20%を占めてもよい。
【0016】
ここで用いられる「抗癌剤」という用語は、医薬、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼインヒビター、キナーゼインヒビターおよび他の抗腫瘍剤を含む化学療法、手術ならびに放射線療法を含む癌のための如何なる治療も指す。
【0017】
ここで用いられる「治療上有効な量」という用語は、癌幹細胞もしくは癌および1つ以上のその症状の進行、再発、または発症の予防が得られ、別の療法の予防効果を向上または改善し、癌の重症度および継続期間を減少させ、癌の1つ以上の症状を緩和し、癌の進行を防止し、癌の回復をもたらし、および/または別の療法の治療効果を向上または改善するのに十分なメタ亜ヒ酸ナトリウムの量を指す。本発明のある実施形態においては、SMAの治療上有効な量は、一旦投与されると、次の結果のうち1、2または3つ以上を達成するのに有効な量である。(1)癌幹細胞集団の減少または除去、(2)癌細胞集団の減少または除去、(3)腫瘍または新生物の成長の減少、(4)腫瘍の形成の障害、(5)原発性、限局性および/または転移性の癌の根絶、切除、または制御、(6)死亡率の減少、(7)無疾患、無再発、無進行、および/または全生存の継続期間または率の増加、(8)反応率、反応の継続期間、または反応するもしくは寛解状態にある患者の数の増加、(9)腫瘍のサイズが維持され、増加しないか、または10%未満、5%未満、4%未満、もしくは2%未満だけ増加する、(10)寛解状態にある患者の数の増加、(11)寛解状態の長さまたは継続期間の延長、(12)癌の再発率の低下、(13)癌の再発までの時間の延長、(14)癌に関連する症状および/またはクオリティーオブライフの緩和、および(15)癌細胞の薬剤耐性の低下。
【0018】
ここで用いられる「治療上有効な投与計画」という用語は、癌もしくはその症状の治療および/または管理のためのメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与の量、タイミング、頻度、および継続期間についての投与計画を指す。特定の実施形態においては、投与計画は、次の結果の1つ以上を達成する。(1)薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集合の減少または除去、(2)癌幹細胞集団の減少または除去、(3)腫瘍または新生物の成長の減少、(4)腫瘍の形成の障害、(5)原発性、限局性および/または転移性癌の根絶、切除、または制御、(6)死亡率の減少、(7)無疾患、無再発、無進行、および/または全生存の増加、(8)反応率、反応の継続期間、または反応するもしくは寛解状態にある患者の数の増加、(9)入院率の低下、(10)入院期間の低下、(11)腫瘍のサイズが維持され、増加しないか、または10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、または好ましくは2%未満だけ増加する、(12)寛解状態にある患者の数の増加、(12)癌患者の癌幹細胞を含む薬剤耐性癌細胞の、それに対して屈折性である薬剤に対する感受性の増加。
【0019】
ここで用いられる「対象」および「患者」という用語は、交換可能に用いられる。ここで用いられる「対象」という用語は、動物、好ましくは、非霊長類(たとえば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(たとえばサルおよびヒト)などの哺乳類を指し、最も好ましくは、ヒトを指す。いくつかの実施形態においては、対象は、家畜(たとえば、ウマ、ブタ、またはウシなど)およびペット(たとえば、イヌまたはネコ)などの非ヒト動物である。特定の実施形態においては、対象は高齢のヒトである。別の実施形態においては、対象はヒトの成人である。別の実施形態においては、対象はヒトの子供である。さらに別の実施形態においては、対象はヒトの幼児である。
【0020】
ここで用いられる「寛解」という用語は、癌活性が復活するおそれはあるが、検出可能な癌の非存在により証拠付けられる、対象の健康の状態を意味する。
【0021】
癌幹細胞は、腫瘍の残りの90%ほど(すなわち、腫瘍の大部分)に対して、より腫瘍形成性が高く、比較的より成長が遅いかまたは静止状態にあり、しばしば腫瘍のバルクよりも比較的化学療法への耐性が高い、腫瘍の特有の副集団(しばしば0.1〜10%程であるが、0.1〜20%以上まで)を含む。従来の療法および投与計画の大部分が、急速に増殖する細胞(すなわち、腫瘍バルクを構成する癌細胞)を攻撃するように設計されていることを考えると、しばしば成長の遅い癌幹細胞は、より速く成長する腫瘍バルクよりも従来の療法および投与計画に対して比較的耐性がある可能性がある。癌幹細胞は、多剤耐性および抗アポトーシス経路など、それらを比較的化学療法に対して耐性にする他の特徴を表わし得る。上記のことは、標準的な腫瘍学治療投与計画が、進行期の癌を患う多くの患者における長期的な利益を確保できない、すなわち、癌幹細胞を適切に標的として根絶させることができないことの主要な理由であろう。いくつかの場合においては、癌幹細胞は、腫瘍の創始細胞である(すなわち、腫瘍バルクを構成する癌細胞の前駆体である)。
【0022】
癌幹細胞は、多くの種類の癌において同定されている。たとえば、Bonnetらは、フローサイトメトリーを用いて特定の表現型CD34+ CD38−を持つ白血病細胞を単離することができ、その後、免疫不全マウスに移入したときに由来したときから白血病を反復させることが可能なのは、白血病バルクの残りの99+%ではなく、これらの細胞(所与の白血病の<1%を含む)であることを証明することができた。たとえば、"Human acute myeloid leukemia is organized as a hierarchy that originates from a primitive hematopoietic cell," Nat Med 3:730-737 (1997)を参照。すなわち、これらの癌幹細胞は、10,000個の白血病細胞のうち<1であることがわかったにも関わらず、この低頻度集団は、ヒト白血病を、元の腫瘍と同じ組織学的表現型を有する重度の複合免疫不全/非肥満型糖尿病(NOD/SCID)マウス内に誘発し、累代移入することが可能であった。
【0023】
Coxらは、表現型CD34+/CD10−およびCD34+/CD19−を有するヒト急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞の少量のサブフラクションを同定し、免疫無防備状態のマウスに、ALL腫瘍、すなわち、癌幹細胞を生着させることができた。反対に、ALLバルクを用いた場合、10倍以上の細胞を注入したケースがあったにも関わらず、マウスの生着は観察されなかった。Coxら、"Characterization of acute lymphoblastic leukemia progenitor cells," Blood 104(19): 2919-2925 (2004)を参照。
【0024】
多発性骨髄腫は、CD138−であり、CD138+骨髄腫細胞の大部分のバルク集団に対して、より大きなクローン原性および腫瘍形成性能を有する細胞の少量の副集団を含有することがわかった。Matsuiら、"Characterization of clonogenic multiple myeloma cells," Blood 103(6): 2332を参照。著者らは、多発性骨髄腫のCD138−副集団が癌幹細胞集団であると結論付けている。
【0025】
Kondoらは、C6−神経膠腫細胞株から少量の細胞集団を単離し、この細胞集団は、免疫無防備状態のマウスにおいて神経膠腫を自己再生し反復させる能力により、癌幹細胞集団として同定された。Kondoら、"Persistence of a small population of cancer stem-like cells in the C6 glioma cell line," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 :781-786 (2004)を参照。この研究において、Kondoらは、癌細胞株は、その株の免疫不全マウスに生着する能力を授与する癌幹細胞の集団を含有すると判断した。
【0026】
乳癌は、幹細胞特徴を有する細胞の少量の集団(表面マーカーCD44+CD24lowを持つ)を含有することが示されている。Al−Hajjら、"Prospective identification of tumorigenic breast cancer cells," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3983-3988 (2003)を参照。腫瘍細胞集団全体の1〜10%に相当する、これらの細胞の僅か200個が、NOD/SCIDマウスにおいて腫瘍を形成することができた。反対に、この表現型を有さない20,000個の細胞(すなわち、腫瘍バルク)を移入しても、腫瘍を再成長させることはできなかった。
【0027】
ヒト前立腺腫瘍由来の細胞の副集団は、それらが由来する前立腺腫瘍の表現型を自己再生し反復させることにより、前立腺癌幹細胞集団を構築することがわかっている。Collinsら、"Prospective Identification of Tumorigenic Prostate Cancer Stem Cells," Cancer Res 65(23): 10946-10951 (2005)を参照。
【0028】
Fangらは、癌幹細胞特性を有する黒色腫から細胞の副集団を単離した。特に、この細胞の副集団は分化し、自己再生することができた。培養中、副集団は球体を形成し、一方、病巣からのより分化した細胞フラクションは、より接着性であった。さらに、球状細胞を含有する副集団は、マウスに移植したとき、接着細胞よりもより腫瘍形成性が高かった。Fangら、"A Tumorigenic Subpopulation with Stem Cell Properties in Melanomas," Cancer Res 65(20): 9328-9337 (2005)を参照。
【0029】
Singhらは、脳腫瘍幹細胞を同定した。CD133+癌幹細胞は、単離してヌードマウスに移植すると、CD133−腫瘍バルク細胞と異なり、その後、累代移植することのできる腫瘍を形成する。Singhら、"Identification of human brain tumor initiating cells," Nature 432:396-401 (2004);Singhら、"Cancer stem cells in nervous system tumors," Oncogene 23:7267-7273 (2004);Singhら、"Identification of a cancer stem cell in human brain tumors," Cancer Res. 63:5821-5828 (2003)を参照。
【0030】
従来の癌療法は、急速に増殖する細胞(すなわち、腫瘍バルクを形成する細胞)を標的とするため、これらの治療は、癌幹細胞を標的とし障害させることに対しては比較的有効でないと考えられる。事実、白血病幹細胞を含む癌幹細胞は、従来の化学療法的療法(たとえば、Ara−C、ダウノルビシン)および、より新しい標的療法(たとえば、グリベック(登録商標)、ベルケイド(登録商標)など)に対して比較的耐性があることが実際に示されている。化学療法に耐性のあるさまざまな腫瘍からの癌幹細胞の例および、それらが耐性となるメカニズムを、下記の表に記載する。
【0031】
【表1】

たとえば、白血病幹細胞は、比較的成長が遅いかまたは静止状態にあり、多剤耐性遺伝子を発現し、それらの化学療法耐性に寄与する特徴である他の抗アポトーシスメカニズムを利用する。Jordanら、"Targeting the most critical cells: approaching leukemia therapy as a problem in stem cell biology", Nat Clin Pract Oncol. 2: 224-225 (2005)を参照。さらに、それらの化学療法耐性により、癌幹細胞は、治療の失敗の一因となる可能性があり、また、臨床的寛解状態の後に患者に存続する可能性もあり、したがって、これらの残存する癌幹細胞は、後日再発の一因となる可能性がある。Behboodら、"Will cancer stem cells provide new therapeutic targets?" Carcinogenesis 26(4): 703-711 (2004)を参照。したがって、癌幹細胞を標的とすることにより、癌患者に対する長期的な成果の改善が得られることが期待される。したがって、この目標に到達するために、癌幹細胞を標的をするように設計された新たな治療剤および/または投与計画が必要とされる。
【0032】
この発明は、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することにより、その目標を達成する。
【0033】
新生物、腫瘍、転移、白血病または制御不能な細胞成長により特徴付けられる任意の疾患もしくは障害を含むが、これらに限定されない、癌または新生物疾患を、予防上もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することにより、予防、治療、および/または管理することができる。
【0034】
本発明は、予防上もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含む、成熟癌細胞および癌幹細胞、特に、薬剤耐性癌幹細胞を減少させるまたは除去することにより、癌を予防、治療、および/または管理するための方法を提供する。本発明のある実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の少なくともおよそ5%の減少が得られる。ある実施形態においては、癌幹細胞集団の減少は、メタ亜ヒ酸ナトリウム治療の終了後、たとえば、4年以上の間、周期的に監視される。したがって、特定の実施形態においては、本発明は、対象における癌の再発を予防、癌を治療および/または管理する方法であって、(a)有効量のメタ亜ヒ酸ナトリウムの1回以上の用量を、それを必要とする対象に投与することと、(b)ある回数の用量の投与の前、間、および/または後、さらに次の用量の投与の前に、対象における癌幹細胞集団を監視することと、(c)必要に応じて工程(a)を繰返すことによって、対象における、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の少なくとも5%の減少を検出することとを含む、方法を提供する。患者の癌幹細胞集団の監視の間に、幹細胞細胞集団が増加したことが明らかになった場合、主治医は、メタ亜ヒ酸ナトリウムを(単独でまたは別の抗癌剤と併用して)、同じまたは異なる投与量および/または投与計画で、患者に再度投与してもよい。
【0035】
メタ亜ヒ酸ナトリウムは、非経口(静脈内など)、腹腔内、または経口を含む、如何なる形態で患者に投与することもできる。1日量は、その日を通して1回以上で投与することができる。メタ亜ヒ酸ナトリウムによる治療投与計画は、1日以上の間、たとえば、1日〜10日間連続、または、1日〜10日間の間の任意の日数の間、たとえば、1日〜5日、4日、3日もしくは2日間連続など、1日量を投与することを含んでもよい。または、投与計画は、たとえば、1週間〜1ヶ月の間の数日間にわたって、非連続的に、たとえば、1日置き、または、たとえば3日もしくは4日置き、または、たとえば3日間等の連日治療をした後、たとえば3日間等で連日で治療をしないなど、必要に応じてそのパターンを繰返したり修正したりすることにより、投与することを含んでもよい。当業者であれば、患者の健康、年齢、サイズ、薬剤許容性(drug tolerance)などに基づき、患者にとって最善の成果を達成するために必要なメタ亜ヒ酸ナトリウムの最も有効な投与法および投与量を容易に判断することができる。
【0036】
ある実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の減少が得られる。たとえば、いくつかの実施形態において、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の少なくともおよそ5%〜99%、5%〜80%、5〜40%、10%〜99%、10〜80%、10〜60%、10%〜40%、20〜99%、20%〜80%、20%〜60%、20%〜40%、50%〜98%、50%〜80%、または60%〜99%の減少が得られる。
【0037】
他の実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、200倍または1000倍の減少が得られる。いくつかの実施形態においては、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の減少は、投与計画の投与の2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、1年後、2年後、3年後、または4年後に得られる。癌幹細胞集団の検出および癌幹細胞の量の変化を判断する方法は、後で記載する。監視期間中に癌幹細胞の増加が検出された場合、患者はメタ亜ヒ酸ナトリウムの別の投与計画(先の投与計画と同じまたは異なる)および/または他の抗癌剤により治療されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムの治療によって、癌細胞集団、および薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の減少が得られる。ある実施形態においては、癌細胞集団の減少または、癌細胞集団の減少および癌幹細胞集団の減少は、周期的に監視される。したがって、一実施形態においては、本発明は、対象における癌を予防、治療および/または管理する方法であって、(a)有効量のメタ亜ヒ酸ナトリウムの1回以上の用量を、それを必要とする対象に投与することと、(b)ある回数の用量の投与の前、間、および/または後、さらに次の用量の投与の前に、対象における癌幹細胞集団および癌細胞集団を監視することと、(c)必要に応じて工程(a)を繰返すことによって、対象における、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団、および癌細胞集団の少なくとも5%の減少を検出することとを含む、方法を提供する。
【0039】
ある実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、癌幹細胞集団の少なくともおよそ5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の減少が得られる。たとえば、いくつかの実施形態においては、その投与計画によって、癌細胞集団のおよそ2%〜98%、5%〜80%、5〜40%、10%〜99%、10〜80%、10〜60%、10%〜40%、20〜99%、20%〜80%、20%〜60%、20%〜40%、50%〜98%、50%〜80%、または60%〜99%の減少が得られる。他の特定的な実施形態においては、その投与計画によって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、200倍または1000倍の減少が得られる。いくつかの実施形態においては、癌細胞集団の減少は、投与計画の投与の2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、1年後、2年後、3年後、4年後、5年後または10年後に得られる。癌細胞集団の検出および癌細胞の量の変化を判断する方法は、後で記載する。
【0040】
いくつかの実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、バルク腫瘍サイズの減少および、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の減少が得られる。ある実施形態においては、バルク腫瘍の腫瘍サイズの減少;バルク腫瘍の腫瘍サイズの減少および、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の減少;またはバルク腫瘍の腫瘍サイズの減少、癌幹細胞集団の減少、および癌細胞集団の減少は、周期的に監視される。したがって、一実施形態においては、本発明は、対象における癌を予防、治療および/または管理する方法であって、(a)有効量のメタ亜ヒ酸ナトリウムの1回以上の用量を、それを必要とする対象に投与することと、(b)ある回数の用量の投与の前、間、および/または後、さらに次の用量の投与の前に、対象における癌幹細胞集団およびバルク腫瘍サイズを監視することと、(c)必要に応じて工程(a)を繰返すことによって、対象における、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団および、バルク腫瘍サイズの少なくとも5%の減少を検出することとを含む、方法を提供する。
【0041】
ある実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団および、バルク腫瘍サイズの少なくともおよそ5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、98%または99%の減少が得られる。たとえば、いくつかの実施形態において、その投与計画によって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団および、バルク腫瘍サイズのおよそ2%〜98%、5%〜80%、5〜40%、10%〜99%、10〜80%、10〜60%、10%〜40%、20〜99%、20%〜80%、20%〜60%、20%〜40%、50%〜99%、50%〜80%、または60%〜99%の減少が得られる。他の特定的な実施形態においては、その投与計画によって、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団および、バルク腫瘍サイズの少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、200倍または1000倍の減少が得られる。いくつかの実施形態においては、薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団および、バルク腫瘍サイズの減少は、投与計画の投与の2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、1年後、2年後、3年後、4年後、5年後または10年後に得られる。
【0042】
腫瘍のバルクサイズを評価するには、多くの既知の方法を用いることができる。このような方法の非限定的な例は、画像法(たとえば、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、X線像、マンモグラフィ、PETスキャン、放射性核種スキャン、骨スキャンなど)、視覚的方法(たとえば、結腸内視鏡法、気管支鏡法、内視鏡法など)、身体検査(たとえば、前立腺検査、胸検査、リンパ節検査、腹部検査、直腸検査、一般的な触診など)、血液試験(たとえば、前立腺特異抗原(PSA)試験、癌胎児性抗原(CEA)試験、癌抗原(CA)−125試験、α−フェトプロテイン(AFP)、肝機能試験)、骨髄分析(たとえば、血液悪性腫瘍の場合)、組織病理診断、細胞診断、およびフローサイトメトリーを含む。
【0043】
いくつかの実施形態においては、バルク腫瘍サイズは、画像法から求められる腫瘍病巣のサイズに基づく評価により測定することができる。特定の実施形態においては、評価は、Therasse,P.ら、"New Guidelines to Evaluate the Response to Treatment in Solid Tumors," J. of the Nat. Canc. Inst. 92(3), 205-216 (2000)に記載される、Response Evaluation Criteria In Solid Tumors (RECIST) Guidelinesに従って行なわれる。たとえば、特定の実施形態においては、バルク腫瘍サイズを表わす対象の病巣は、従来の画像技術を用いる場合(たとえば、従来のCTスキャン、PETスキャン、骨スキャン、MRIまたはX線)、ベースライン(治療前)でその最長直径が少なくとも≧20mmとなるように選択され、スパイラルCTスキャニングを用いる場合、ベースラインでその最長直径が少なくとも≧10mmの病巣となるように選択される。
【0044】
いくつかの実施形態においては、画像技術および血清マーカー検出の組合せを用いてバルク腫瘍サイズの減少を評価することができる。このような血清マーカーの非限定的な例は、前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原(CA)125およびα−フェトプロテイン(AFP)を含む。
【0045】
本発明は、治療上もしくは予防上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを対象に投与することを含む、寛解状態の患者の癌の再発を予防する方法を提供する。本方法は、対象にメタ亜ヒ酸ナトリウムを、最大耐用量(MTD)と同等もしくはそれ未満の用量で、または「無毒性レベル」(NOAEL)と同等もしくはそれ未満の用量で投与することを含む。メタ亜ヒ酸ナトリウムのMTDは、典型的には、第I相用量増加試験の結果に基づく。ある実施形態においては、患者は、治療上有効な量の第2の抗癌剤、たとえば、寛解状態の患者の1次治療に用いられる抗癌剤などによっても治療される。第2の抗癌剤は、メタ亜ヒ酸ナトリウムの投与と同時、後または前に投与することができる。
【0046】
動物実験で求められるようなNOAELは、ヒト診療試験用の最大推奨開始用量を求めるためにしばしば用いられる。NOAELは、ヒト等価投与量(HED)を求めるために外挿できる。典型的には、種間のこのような外挿は、体表面積(すなわち、mg/m)に標準化された用量に基づいて行なわれる。特定の実施形態においては、NOAELは、マウス、ハムスター、ラット、フェレット、ギニアブタ、ウサギ、イヌ、霊長類、霊長類(サル、マーモセット、リスザル、ヒヒ)、マイクロブタおよびミニブタのいずれかにおいて求められる。ヒト等価用量を求めるためのNOAELの使用およびそれらの外挿に関する考察については、Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers, U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER), Pharmacology and Toxicology, July 2005を参照。したがって、ある実施形態においては、投与計画は、HED未満の用量での療法を投与することを含む。たとえば、本発明は、予防上もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含み、HEDと同等またはそれ未満の用量でメタ亜ヒ酸ナトリウムを対象に投与することを含む、寛解状態の対象における癌の再発を予防する方法を提供する。
【0047】
本発明に従うと、予防上および/もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムが、癌を患っているかまたは癌を発病すると予想される患者(たとえば、特定の型の癌に対して遺伝的素因を有する患者、発癌物質に晒された患者、新たに診断された癌を患う患者、癌の治療に失敗した患者、癌を再発した患者、または特定の癌から寛解状態にある患者)に投与される。特定の実施形態において、対象は、身体検査(たとえば、前立腺検査、胸検査、リンパ節検査、腹部検査、皮膚サーベイランス、一般的な触診など)、視覚的方法(たとえば、結腸内視鏡法、気管支鏡法、内視鏡法など)、PAPスメア分析(子宮頸癌)、便グアヤック分析、血液試験(たとえば、完全血球算定(CBC)試験、前立腺特異抗原(PSA)試験、癌胎児性抗原(CEA)試験、癌抗原(CA)−125試験、α−フェトプロテイン(AFP)、肝機能試験など)、核型分析、骨髄分析(たとえば、血液悪性腫瘍の場合)、組織学、細胞学、唾液分析および画像法(たとえば、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、X線像、マンモグラフ画像、PETスキャン、放射性核種スキャン、骨スキャンなど)を含むが、これらに限定されない、現在用いられている技術により測定すると、寛解状態にあるか、または無癌状態である。このような対象は、先に癌のための治療を受けていても受けていなくてもよい。
【0048】
一実施形態において、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、腫瘍、癌細胞または新生物を切除するための手術を受けているか、または受けた対象に投与される。特定の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、腫瘍、癌細胞または新生物を切除するための手術と同時にまたはその後に対象に投与される。別の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、腫瘍または新生物を切除するための手術の前、さらに、いくつかの実施形態においては、手術の間および/または後に、対象に投与される。
【0049】
特定の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、放射線療法を受ける予定であるか、受けているか、または受けた対象に投与される。このような対象には、化学療法を受けた対象、ホルモン療法を受けた対象、および/または免疫療法を含む生物学的療法を受けた対象、ならびに手術を受けた対象が含まれる。
【0050】
別の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、ホルモン療法および/または免疫療法を含む生物学的療法および/または標的療法を受ける予定であるか、受けているかまたは受けた対象に投与される。これらの対象には、化学療法を受けた対象および/または放射線療法を受けた対象ならびに手術を受けた対象が含まれる。
【0051】
ある実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、1種類以上の療法に失敗したかまたはそれに対して屈折性である主体に投与される。一実施形態においては、癌が療法に屈折性であるということは、癌細胞の少なくとも一部の有意な部分が死滅していないか、またはそれらの細胞区分が停止していることを意味する。癌細胞が屈折性であるか否かの判断は、このような文脈において、「屈折性」の当該技術分野で受入れられている意味を用いて、癌細胞に対する療法の効果を検定するための当該技術分野で既知の任意の方法によって、インビボまたはインビトロのいずれでも行なうことができる。
【0052】
特定の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、サイトカインIL−6のレベルが増加した患者に投与されるが、サイトカインIL−6レベルの増加は、化学療法およびホルモン療法などの異なる治療上の投与計画に対して耐性がある癌細胞の発達と関連付けられている。
【0053】
如何なる型の癌も本発明に従って予防、治療および/または管理することができる。本発明に従って予防、治療および/または管理することのできる癌の非限定的な例は、白血病、たとえば、以下に限定されないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、たとえば、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病など、ならびに骨髄異形成症候群(MDS)など;慢性白血病、たとえば、以下に限定されないが、慢性骨髄球性(顆粒白血球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病など;真性赤血球増加症;リンパ腫、たとえば、以下に限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病など;多発性骨髄腫、たとえば、以下に限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫など;ワルデンストレームマクログロブリン血症;原因不明の単クローン性免疫グロブリン血症;良性の単クローン性免疫グロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織肉腫、たとえば、以下に限定されないが、骨肉腫(bone sarcoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫瘍、骨の繊維肉腫、脊索腫、骨膜性肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)(血管肉腫(hemangiosarcoma))、繊維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫など;脳腫瘍、たとえば、以下に限定されないが、神経膠腫、星状細胞腫、脳幹部神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、非神経膠腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫など;乳癌、たとえば、以下に限定されないが、腺管癌、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭状乳癌、パジェット病、および炎症性乳癌など;副腎癌、たとえば、以下に限定されないが、褐色細胞腫および副腎皮質癌;甲状腺癌、たとえば、以下に限定されないが、乳頭状または濾胞性甲状腺癌、髄様甲状腺癌および未分化甲状腺癌など;膵臓癌、たとえば、以下に限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは膵島細胞腫瘍など;下垂体癌、たとえば、以下に限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症など;眼癌、たとえば、以下に限定されないが、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体黒色腫などの眼球黒色腫、ならびに網膜芽細胞腫など;膣癌、たとえば、扁平細胞上皮癌、腺癌、および黒色腫など;外陰癌、たとえば、扁平細胞上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病など;子宮頸癌、たとえば、以下に限定されないが、扁平細胞上皮癌、および腺癌など;子宮癌、たとえば、以下に限定されないが、子宮内膜癌および子宮肉腫など;卵巣癌、たとえば、以下に限定されないが、卵巣上皮癌、境界型腫瘍、胚細胞腫瘍、および間質性腫瘍など;食道癌、たとえば、以下に限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌など;胃癌、たとえば、以下に限定されないが、腺癌、腫瘤形成性(ポリープ様)、潰瘍性、表在拡大型、び慢性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、および癌肉腫など;結腸癌;直腸癌;肝臓癌、たとえば、以下に限定されないが、肝細胞癌および肝芽腫など;腺癌などの胆嚢癌;胆管癌、たとえば、以下に限定されないが、乳頭状、結節型および、び慢性など;肺癌、たとえば、以下に限定されないが、非小細胞肺癌、扁平細胞上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺癌など;睾丸癌、たとえば、以下に限定されないが、生殖腫瘍、精上皮腫、未分化、典型的、精母細胞性、非精上皮腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)など;前立腺癌、たとえば、以下に限定されないが、前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫など;陰茎癌;口腔癌、たとえば、以下に限定されないが、扁平細胞上皮癌など;基底癌;唾液腺癌、たとえば、以下に限定されないが、腺癌、粘表皮癌、および腺様嚢胞癌など;咽頭癌、たとえば、以下に限定されないが、扁平細胞上皮癌および、いぼ状癌など;皮膚癌、たとえば、以下に限定されないが、基底細胞癌、扁平細胞上皮癌および黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、黒子悪性黒色腫、先端黒子型黒色腫など;腎臓癌、たとえば、以下に限定されないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行上皮癌(腎盤および/または子宮)など;ウイルムス腫瘍;膀胱癌、たとえば、以下に限定されないが、移行上皮癌、扁平細胞上皮癌、腺癌、癌肉腫などを含む。さらに、癌は、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌および乳頭状腺癌を含む。
【0054】
予防上および/もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、以下を含む(しかし、これらに限定されない)、さまざまな癌および他の異常増殖性疾患の治療、予防および/または管理にも有用である。すなわち、扁平上皮細胞癌を含む、膀胱、胸、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、頚部、甲状腺および皮膚の癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含む、リンパ系造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病ならびに前骨髄性白血病を含む、骨髄系造血腫瘍;繊維肉腫および横紋筋肉腫を含む、間葉由来の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む、他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、およびシュワン腫を含む、中枢神経系および末梢神経系の腫瘍;繊維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含む、間葉由来の腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌および奇形癌を含む、他の腫瘍。いくつかの実施形態においては、アポトーシスの変性に関連する癌が、本発明の方法に従って予防、治療および/または管理される。このような癌は、濾胞性リンパ腫、p53突然変異を伴う癌腫、乳房、前立腺および卵巣のホルモン依存性腫瘍、ならびに家族性大腸腺腫症および骨髄異形成症候群などの前癌性の病変を含み得るが、これらに限定されない。特定の実施形態においては、皮膚、肺、肝臓、骨、脳、胃、結腸、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、脾臓、卵巣、および/または子宮の悪性腫瘍もしくは異常増殖性変化(異形成および形成障害など)、または過剰増殖性障害が、本発明の方法に従って予防、治療および/または管理される。他の特定の実施形態においては、肉腫または黒色腫が、本発明の方法に従って予防、治療および/または管理される。
【0055】
ある実施形態においては、本発明に従って予防、治療、および/または管理されている癌は、白血病、リンパ腫または骨髄腫(たとえば、多発性骨髄腫など)である。
【0056】
本発明の方法により予防、治療、および/または管理され得る白血病および他の血液由来の癌の非限定的な例は、急性リンパ芽球性白血病「AAL」、急性リンパ芽球性B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性骨髄球性白血病「AML」、急性前骨髄球性白血病「APL」、急性単芽球性白血病、急性赤白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ球性白血病、急性未分化白血病、慢性骨髄球性白血病「CML」、慢性リンパ性白血病「CLL」、骨髄異形成症候群「MDS」、および毛様細胞性白血病を含む。
【0057】
本発明の方法に従って予防、治療、および/または管理され得るリンパ腫の非限定的な例は、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病および真性赤血球増加症を含む。
【0058】
別の実施形態においては、本発明に従って予防、治療、および/または管理されている癌は、固形腫瘍である。本発明の方法に従って予防、治療、および/または管理され得る固形腫瘍の例は、繊維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、骨癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、口腔癌、鼻腔癌、喉頭癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎児性癌、ウイルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、睾丸癌、小細胞肺癌、膀胱癌、肺癌、上皮癌、神経膠腫、多形性膠芽腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、皮膚癌、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫を含むが、これらに限定されない。
【0059】
一実施形態においては、患者における癌を予防、治療、および/または管理するために対象に投与されるメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与量は、患者の体重の500mg/kg以下、たとえば、250mg/kg以下、100mg/kg以下、95mg/kg以下、90mg/kg以下、85mg/kg以下、80mg/kg以下、75mg/kg以下、70mg/kg以下、65mg/kg以下、60mg/kg以下、55mg/kg以下、50mg/kg以下、45mg/kg以下、40mg/kg以下、35mg/kg以下、30mg/kg以下、25mg/kg以下、20mg/kg以下、15mg/kg以下、10mg/kg以下、5mg/kg以下、2.5mg/kg以下、2mg/kg以下、1.5mg/kg以下、または1mg/kg以下である。たとえば、メタ亜ヒ酸ナトリウムは、1日当たり1回〜5回、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、または約0.25mg/kg〜約5mg/kgの範囲の量で投与することができる。
【0060】
別の実施形態においては、患者における癌を予防、治療、および/または管理するために対象に投与されるメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与量は、0.1mg〜20mg、0.1mg〜15mg、0.1mg〜12mg、0.1mg〜10mg、0.1mg〜8mg、0.1mg〜7mg、0.1mg〜5mg、0.1〜2.5mg、0.25mg〜20mg、0.25〜15mg、0.25〜12mg、0.25〜10mg、0.25〜8mg、0.25mg〜7mg、0.25mg〜5mg、0.5mg〜2.5mg、1mg〜20mg、1mg〜15mg、1mg〜12mg、1mg〜10mg、1mg〜8mg、1mg〜7mg、1mg〜5mg、または1mg〜2.5mgの単位用量である。
【0061】
ある実施形態においては、患者における癌を予防、治療、および/または管理するために対象に投与されるメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与量は、対象の体重の0.01〜10g/mの範囲であり、より典型的には、0.1g/mm〜7.5g/mの範囲である。一実施形態においては、対象に投与される投与量は、対象の体の表面積の0.5g/m〜5g/m、または1g/m〜5g/mの範囲である。
【0062】
いくつかの実施形態においては、予防上および/もしくは治療上有効な量または投与形態のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、1種類以上の追加的な療法と併用して投与される。併用療法で用いられる1種類以上の追加的な療法の投与量は、患者における癌を予防、治療、および/または管理するのに使用されたか、または現在使用されている投与量よりも低くてもよい。癌の予防、治療、および/または管理のために現在用いられる1種類以上の追加的な療法の推奨される投与量は、ここにその全体が引用により援用される、Hardman et al., eds., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics, 10th ed, Mc-Graw-Hill, New York, 2001、およびPhysician's Desk Reference (60.sup.th ed., 2006)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野の任意の参考文献から得ることができる。
【0063】
追加的な癌療法の例は、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール;アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン(Vidaza)、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、二メシル酸ビスナフィド、ビスフォスフォネート(たとえば、パミドロネート(アレディア)、クロドロン酸ナトリウム(Bonefos)、ゾレドロン酸(ゾメタ)、アレンドロネート(フォサマックス)、エチドロネート、イバンドロネート、シマドロネート、リセドロネート、およびチルドロネートなど)、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルマスティン、塩酸カルビシン、カルゼルシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン(Ara−C)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン(ダコジェン)、脱メチル化剤、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキサート、塩酸エフロルニチン、EphA2インヒビター、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロキシウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキドン、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒストンデアセチラーゼインヒビター(HDAC−Is)、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモホシン、メシル酸イマチニブ(グリベック)、(組換えインターロイキンII、またはrIL2を含む)インターロイキンII、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−nl、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レナリドマイド(レブラミド)、レトロゾール、酢酸リュープロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、抗CD2抗体(たとえば、シプリズマブ(メドイミューン社の国際公開WO02/098370、その全体がここに引用により援用される))、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、マイトジリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスパー、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキサリプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフール、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネジピン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンレウロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシンを含むが、これらに限定されない。ある実施形態においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムは、肺癌などの原発性癌または続発性癌の治療において、シスプラチンと併用して用いてもよい。
【0064】
メタ亜ヒ酸ナトリウムおよび1種類以上の追加的な抗癌療法は、別々に、同時に、または順番に、または患者による許容に最も適した任意の方法により投与することができる。薬剤の組合せは、同じまたは異なる投与経路により対象に投与され得る。代替的な実施形態においては、2種類以上の予防剤または治療剤が単一の組成物で投与される。
【0065】
予防上および/もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムの一部として、癌幹細胞集団は、療法または投与計画の有効性を評価するため、療法を維持または変更する根拠として用いるため、さらに、癌を患う対象の予後を判断するために、監視することができる。一実施形態においては、投与計画を受けている対象は、投与計画の結果、対象における薬剤耐性癌幹細胞を含む癌幹細胞集団の減少が得られたか否かを評価するように監視される。
【0066】
癌幹細胞の量は、当業者に既知の標準的な技術を用いて監視/評価することができる。癌幹細胞は、たとえば、対象から、組織/腫瘍サンプル、血液サンプルまたは骨髄サンプルなどのサンプルを得て、サンプル中の癌幹細胞を検出することにより監視することができる。サンプル中の癌幹細胞の量(たとえば、全細胞または全癌細胞の百分率として表わしてもよい)は、癌幹細胞上の抗原の発現を検出することにより評価することができる。これらの活性を測定するためには、当業者に既知の技術を用いることができる。抗原発現は、たとえば、ウエスタンブロット、免疫組織化学、放射線免疫検定法、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」免疫検定法、免疫沈殿検定法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散検定法、凝集検定法、補体結合検定法、免疫放射定量検定法、蛍光免疫検定法、免疫蛍光、プロテインA免疫検定法、フローサイトメトリー、およびFACS分析を含むが、これらに限定されない、免疫検定法によって検定することができる。このような場合、対象からの試験サンプル中の癌幹細胞の量は、その結果を、参照サンプル(たとえば、癌が検出されない対象からのサンプル)中の幹細胞の量、または所定の参照範囲、または以前の地点(たとえば、療法の前または間)の患者自身と比較することにより求めてもよい。
【0067】
特定の実施形態においては、患者から得られたサンプル(たとえば、血液または腫瘍組織)中の癌幹細胞集団は、フローサイトメトリーにより求められる。この方法は、腫瘍のバルクに対する癌幹細胞上のある表面マーカーの発現差異を活用する。標識抗体(たとえば、蛍光抗体)は、サンプル中の細胞と反応させるために用いることができ、細胞はその後、FACS法によりソートされる。いくつかの実施形態においては、サンプル中の癌幹細胞の量を求めるために、細胞表面マーカーの組合せが利用される。たとえば、陽性および陰性セルソーティングの両方を、サンプル中の癌幹細胞の量を評価するために用いてもよい。特定の腫瘍型の癌幹細胞は、癌幹細胞上のマーカーの発現を評価することにより求めることができる。ある実施形態においては、腫瘍は、下記のリストに列挙されるような、癌幹細胞およびそれらの関連するマーカーを持つ。以下に、さまざまな癌の種類に関連する癌幹細胞表現型の非限定的なリストを示す。
【0068】
【表2】

追加的な癌幹細胞マーカーは、CD123、CLL−1、SLAM(シグナル伝達リンパ球活性化分子ファミリー受容体(signaling lymphocyte activation molecule family receptors);Yilmazら、"SLAM family markers are conserved among hematopoietic stem cells from old and reconstituted mice and markedly increase their purity" Hematopoiesis 107: 924-930 (2006)を参照、たとえば、CD150、CD244、およびCD48など)の組合せ、ならびに、その全体がここに引用により各々援用される、Bergsteinの米国特許US6,004,528、係属中の米国特許出願09/468,286、ならびに米国特許出願公開US2006/0083682、US2007/0036800、US2007/0036801、US2007/0036802、US2007/0041984、US2007/0036803、およびUS2007/0036804に開示されるマーカーを含むが、これらに限定されない。たとえば、米国特許US6,004,528の表1、米国特許出願09/468,286の表1、2、および3、ならびに、米国特許出願公開US2006/0083682、US2007/0036800、US2007/0036801、US2007/0036802、US2007/0041984、US2007/0036803、およびUS2007/0036804を参照。
【0069】
サンプルのフローサイトメトリーを用いる、ある実施形態においては、腫瘍中の癌幹細胞を同定するために、ヘキスト染色プロトコルを用いることができる。簡潔には、異なる色(典型的には赤色および青色)の2種類のヘキスト色素を腫瘍細胞とともにインキュベートする。バルク癌細胞と比較して、癌幹細胞は、これらの細胞が色素を細胞外に排出するのを可能にする色素排出ポンプをその表面に過剰発現する。バルク腫瘍細胞の大部分は、これらのポンプをより少なく有するため、フローサイトメトリーにより検出可能である色素に対して比較的陽性である。典型的には、細胞の集団全体を観察するとき、色素陽性(「色素+」)細胞対色素陰性(「色素−」)細胞の勾配が出現する。癌幹細胞は、色素−または色素low(低い色素)の集団中に含有される。幹細胞または幹細胞集団を特徴付けるためのヘキスト色素プロトコルの使用の例については、Goodellら、"A leukemic stem cell with intrinsic drug efflux pump capacity in acute myeloid leukemia," Blood, 98(4): 1166-1173 (2001)およびKondoら、"Persistence of a small population of cancer stem-like cells in the C6 glioma cell line," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 781-786 (2004)を参照。このように、治療の前および後に癌幹細胞の量を測定し、所与の療法または投与計画により生ずる癌幹細胞の量の変化を評価するために、フローサイトメトリーを用いることができるであろう。
【0070】
他の実施形態においては、患者から得られたサンプル(たとえば、腫瘍もしくは正常組織サンプル、血管サンプルまたは骨髄サンプル)をインビトロ系中で培養して、癌幹細胞集団または癌幹細胞の量を評価する。たとえば、腫瘍サンプルを軟寒天上で培養し、癌幹細胞の量を、サンプルの目視でカウントできる細胞のコロニーを発生する能力と関連付けることができる。コロニー形成は、幹細胞含有量の代用的測定値と見なすことができるため、癌幹細胞の量を定量するのに用いられ得る。たとえば、血液癌の場合、コロニー形成検定法は、コロニー形成細胞(CFC)検定法、長期培養始原細胞(LTC−IC)検定法、および懸濁培養始原細胞(SC−IC)検定法を含む。このように、細胞株の長期的な期間永続化/継代(perpetuation/passage)のような、コロニー形成検定法または関連する検定法は、療法の前および後に癌幹細胞の量を測定し、所与の療法または投与計画により生じる癌幹細胞の量の変化を評価するために用いることができるであろう。
【0071】
特定の実施形態においては、癌幹細胞の量は、(a)有効量の、癌幹細胞上に存在する細胞表面マーカーに特異的に結合する標識癌幹細胞マーカー結合剤を対象に投与する工程と、(b)癌幹細胞表面マーカーが発現される対象中の部位に標識剤を集中させるのに十分な時間間隔の後、対象における標識剤を検出する工程とを含む方法に従って、対象においてインビボで検出される。この実施形態に従うと、癌幹細胞表面マーカー結合剤は、たとえば、非経口(静脈内など)、または腹腔内など、当該技術分野において任意の好適な方法に従って、対象に投与される。この実施形態に従うと、標識剤の有効量は、対象における標識剤の検出を可能にする量である。このような量は、特定の対象、用いる標識、および採用する検出方法によって異なる。たとえば、当該技術分野において、対象のサイズおよび用いる画像システムが、画像手段を用いて対象における標識剤を検出するために必要な標識剤の量を判断することが理解される。ヒト対象用の放射標識剤の場合、投与される標識剤の量は放射能の単位で測定され、たとえば、約5〜20ミニキュリーの99Tcである。癌幹細胞表面マーカーが発現される対象中の部位に標識剤を集中させるのに十分な標識剤の投与後の時間間隔は、たとえば、用いる標識の型、投与の形式、画像化される対象の体の部分などのいくつかの要因に依存して異なる。特定の実施形態においては、十分な時間間隔は6〜48時間、6〜24時間、または6〜12時間である。別の実施形態においては、時間間隔は5〜20日または5〜10日である。標識癌幹細胞表面マーカー結合剤の存在は、当該技術分野で既知の画像手段を用いて、対象において検出することができる。一般的に、採用される画像手段は、用いる標識の型に依存する。当業者であれば、特定の標識を検出する適切な手段を判断することができるであろう。用いられ得る方法および装置は、コンピューター断層撮影(CT)、陽電子放射形断層撮影(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光標識を検出して局在化することのできるイメージャーおよび超音波検査を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態においては、癌幹細胞表面マーカー結合剤は放射性同位体で標識され、放射線反応性手術器具(Thurstonら、米国特許US5,441,050)を用いて患者において検出される。別の実施形態においては、癌幹細胞表面マーカー結合剤は、蛍光性化合物で標識され、蛍光反応性スキャニング器具を用いて、患者において検出される。別の実施形態においては、癌幹細胞表面マーカー結合剤は、陽電子放射性金属で標識され、陽電子放射性断層撮影法を用いて患者において検出される。さらに別の実施形態においては、癌幹細胞表面マーカー結合剤は、常磁性標識で標識され、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、患者において検出される。
【0072】
メタ亜ヒ酸ナトリウムの予防上および/または治療上有用性を評価するために、癌幹細胞を検出および/または定量化することのできる当業者に既知の任意のインビトロまたはインビボ(エクスビボ)検定法を用いて、癌幹細胞を監視することができる。これらの検定法の結果をその後、癌療法または投与計画を維持または変更するために用いてもよい。
【0073】
本明細書に挙げたすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的に個別に、ここに引用により援用されるように指定されたのと同じ程度で、引用により本明細書中に援用される。本明細書中の参考文献の引用または考察は、それが本発明の先行技術であることを認めるとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0074】
以下の材料および方法をここに記載する実施例において使用した。
細胞株:DU145wt、DU145/Pac200およびDU145/Doc50細胞が、メリーランド大学、UMGCCのフセイン(Hussain)博士により提供された。細胞株を、推奨されるとおり、5%FBS、1%抗生物質を添加した1:1 DMEM/F12培地(インビトロジェン)中で培養し、37℃、5%CO2の標準条件下で成長させた。パクリタキセルおよびドセタキセル耐性クローンを、薬剤の選択圧力下で保った。
【0075】
薬剤:KML001(メタ亜ヒ酸ナトリウム)をシグマアルドリッチ社(CAS# 7784−46−5)から入手し、50mM薬剤原液をPBSで調製し、−20Cでアリコートを保存した。GRN163Lをジェロン社(カリフォルニア州,メンロパーク)から入手した。10mM実用原液をPBSで調製した。
【0076】
MTT増殖検定法:指数関数的成長性の細胞を採取し、96ウェルプレートに平板培養した(DU145wtについては1,500細胞/ウェル、DU145/Pac200およびDU145/Doc50については2,000〜3,000細胞/ウェル)。試験されている薬剤は、それらの成長阻害ポテンシャルを評価するために、0.01μm〜100μmの範囲の濃度で加えた。5日間連続的に薬剤に暴露した後、生存染料である3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)をプレートに加えた。生存細胞によるMTTの紫色ホルマザンへの変換を、550nmのSynergy2プレートリーダーおよびGen5ソフトウェアを用いて測定した。成長曲線をマイクロソフトエクセルを用いて作成し、成長阻害濃度50%(IC50)および100%を求めた。
【0077】
細胞株の前処置:DU145wtおよびDU145/Pac200細胞株を、KMLまたはGRN163Lにより、それらのIC50およびIC100値(μM)で48時間(PAC200)または72時間(DU145wt)処置した培地中で成長させ、その後、サイドポピュレーション検定法に供した。
【0078】
サイドポピュレーション検定法:サブコンフルエントな生存細胞をカウントし(106細胞/管が必要)、ともに幹細胞(サイドポピュレーション)と成熟細胞とを分化する染料である、H33343またはDye Cycle Violet(DCV)のいずれかにより処置した。Goodellらにより記載されるとおりのプロトコルを用いた(Goodell, M.A. et al., J. Exp. Med., 183: 1797-806, 19966)。3つのサンプルを毎回分析した。サンプル中、1つのサンプルはDCVによってのみ処置し、別のサンプルはDCVおよび50μMベラパミル(PgPインヒビター)により処置し、最後のサンプルは、DCVおよび10μMフミトレモルギンC(FTC、BCRPインヒビター)により処置した。その後、フローサイトメトリーを用いて、サンプルを読み取って分析した。
【0079】
フローサイトメトリー:サンプルをBDLSR IIフローサイトメーターで読み取った。405nMバイオレットレーザによりDCV染料を励起させ、細胞分化に基づく異なる波長を発生した。450/50(青色)および680/30(赤色)での検出器により、発された波長を遮り、それに応じて散布図上にデータをプロットした。CD44およびPgp染色は、PE(Pgp)またはAPC(CD44)で標識した抗体および、エピトープ標識のための通常の手順の後のそれらのアイソタイプコントロールを用いて行われた。
【実施例1】
【0080】
癌細胞株中の癌幹細胞の同定
この研究においては、癌幹細胞(サイドポピュレーション(SP)とも呼ばれる)およびSPを定義するATP結合カセット(ABC)トランスポータを、前立腺癌細胞株であるDU145wt(親)、DU145/Pac200(パクリタキセル耐性)、およびDU145/Doc50(ドセタキセル耐性)において同定した。
【0081】
検査した前立腺癌細胞株DU145wt、DU145/Pac200、DU145/Doc50のすべては、サイドポピュレーションを示した(図1、図3、図5)。重要なことには、DU145/Pac200およびDU145/Doc50細胞は、それらの細胞集団全体の約40〜60%の非常に多いサイドポピュレーション(図1、図5)を有することが分かり、薬剤耐性細胞が癌幹細胞から生じ得るという我々の仮説と一致した。
【実施例2】
【0082】
薬剤耐性癌幹細胞および成熟癌細胞のメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性
親の細胞株DU145とともにタキサン耐性細胞株DU145/Pac200(高パクリタキセル耐性)およびDU145/Doc50(高ドセタキセル耐性)ならびに、アンドロゲン耐性癌細胞株(LNCaP/C81およびLAPC−4/CSS100)および対応するホルモン反応性親細胞株(LNCaPおよびLAPC−4)を、メタ亜ヒ酸ナトリウムに対する反応について試験した。標準MTT検定法による成長曲線により、それらの細胞株が、薬剤耐性に関わらず、同様の感受性でメタ亜ヒ酸ナトリウムに対して反応することが示された(表1)。
【0083】
DCVサイドポピュレーション分析を用いて、前立腺細胞株の各々を癌幹様細胞フラクションの存在について分析した。薬剤耐性細胞株においてDye Cycle Violet(DCV)染料排出に基づくサイドポピュレーション(SP)が同定され、DU145/Doc50についてヘキスト33342染料を用いた先の結果(図示せず)が確認された。SPの発生は、標準的な細胞傷害性療法が働くのを防ぐ要因である、P−糖タンパク質またはBCRPなどの薬剤排出ポンプの発現に基づく。標準化学療法剤であるパクリタキセルおよびドセタキセルに対して耐性のDU145前立腺癌細胞株が、最も高いSPを有した(表1)。ホルモン耐性細胞株LnCaP/C81およびその親株も、ベラパミル(P−gPインヒビター)またはフミトレモルギンC(FTC、BCRPインヒビター)である薬剤排出ポンプインヒビターにより抑制可能であるサイドポピュレーションを明確に示し、LAPC−4についての確定的なサイドポピュレーションおよびそのホルモン耐性誘導体は、この方法によって検出されなかった。たとえば、アンドロゲン合成インヒビターなどのホルモン療法は、薬剤排出ポンプの基質ではないため、これらの発見は驚きではない。
【0084】
【表3】

【実施例3】
【0085】
薬剤耐性癌幹細胞におけるテロメラーゼ活性およびテロメア長さの判断
この研究においては、パクリタキセルおよびドセタキセルに対する耐性が高いDU145/Pac200およびDU145/Doc50株が、それらの親の薬剤耐性DU145細胞と比較して、同様のテロメラーゼ活性およびテロメア長さを有すると判断された(表1)。
【0086】
【表4】

【実施例4】
【0087】
薬剤耐性癌幹細胞に対するベラパミルの効果
PacおよびDoc耐性DU145細胞のSPは、ベラパミルによっては阻害されたが、FTCによっては阻害されず、Pgp(P−糖タンパク質)が、SPの発生の要因である主なABCトランスポーターであることが示唆された(図1、図5)。このことは、これらの細胞および前立腺癌特異幹細胞マーカーCD44によるPgpの高い表面発現と一致していた(図1B)。
【実施例5】
【0088】
KML001およびGRN163L癌細胞および癌幹細胞の効果
この研究においては、テロメラーゼインヒビターであるKML001(メタ亜ヒ酸ナトリウム)の、DU145wt、DU145/Pac200、およびDU145/Doc50細胞に対する効果を、進行臨床試験が現在行われているテロメラーゼインヒビターであるGRN163Lの効果と比較した。
【0089】
KML001またはGRN163Lで処置されたDU145wt、DU145/Doc50およびDU145/Pac200のMTT検定法は、成長の阻害を著しく示した(表1、図1、図4)。KML001は、薬剤耐性および親DU145細胞において同等に有効であった(表1、図1D)。
【実施例6】
【0090】
メタ亜ヒ酸ナトリウムおよびGRN163Lの癌幹細胞に対する効果
この研究においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムおよびGRN163LのIC100で48〜72時間前処置されたときのDU145wtおよびDU145/Pac200のサイドポピュレーションを根絶させる能力を調べた。
【0091】
この研究により、DU145およびDU145/Pac200細胞の成長を100%まで阻害する薬剤濃度KML001により前処置されたこれらの細胞が、SPを劇的に減少させることができることが証明された(図3B、図5D)。しかし、成熟細胞(非SP)もまた根絶された。特異(テロメラーゼのみ)インヒビターであるGRN163Lを用いて、メタ亜ヒ酸ナトリウムのSPに対する効果が確証された。GRN163LもSPを劇的に減少させたが、KML001と同じ程度には非SP細胞を死滅させることはできなかった(図5)。
【0092】
全体として、データは、メタ亜ヒ酸ナトリウムが、成熟薬剤耐性癌細胞および薬剤耐性癌幹細胞の両方を根絶させるのに有効であることを証明する。
【実施例7】
【0093】
薬剤耐性癌細胞集団中のSPの分離/KML001に対する反応
前立腺癌細胞株、タキサン耐性およびアンドロゲン耐性細胞株ならびにホルモン反応性親細胞のすべてが、同様の感受性でKML001に対して反応する(1〜6μMのIC50)。パクリタクセルおよびドセタキセルに耐性の癌細胞株を、それらのKML001に対する反応について、確立されている腫瘍クローン原生幹細胞検定法を用いて試験した(図6)。検定法は、癌幹細胞集団のみを、それらの自己再生能により軟寒天マトリックスで成長させる。したがって、この検定法は、幹細胞集団の抗癌剤に対する感受性を特異的に試験する。
【0094】
細胞の平板培養効率(DU145およびDU145/Pac200について2%)は、サイドポピュレーション検定法で求められた、先に報告した幹細胞集団(DU145については1%、DU145/Pac200については50%)と同様である。KML001の存在下でのコロニー形成能の減少に示されるように、親およびパクリタキセル耐性細胞についてKML001に対する同様の感受性が観察された。先に行われた標準MTT検定法(DU145について4μMおよびDU145/Pac200について6μM)についてのと同様のIC50(6μM)が、この検定法における細胞株について導き出された。
【0095】
タキサン耐性細胞株は最も高いSPを有し、一方、ホルモン反応性細胞株LAPC−4およびそのホルモン耐性誘導体は、薬剤排出インヒビターであるベラパミル(Pgpインヒビター)およびフミトレモルギンc(FTC、BCRPインヒビター)により抑制可能な、より非確定的なSPを示した。SP陽性細胞株であるDU14をCD44およびCD133の存在について試験し、その結果は、0.46%が両方のマーカーを有することを示した(データは図示せず)。
【0096】
SPをバルク腫瘍塊から分離し、標準MTT検定法による成長曲線は、癌幹細胞様SP陽性(SP+)および陰性(SP−)フラクションの両方のフラクションが、KML001に対して同様の感受性で反応することを示した(図7)。
【実施例8】
【0097】
テロメア長さ、テロメラーゼ活性およびhTERT活性の判断
上に示したように(実施例3)、SP検定法で同定した癌幹細胞様フラクションは、バルク細胞フラクションよりも高いテロメラーゼ活性を示した。予備研究は、ヒトテロメラーゼ(hTERT)の触媒サブユニットのmRNA転写レベルが、両方の集団について同様であることを示している。(図8A)、これは、癌幹細胞様集団のより高いテロメラーゼ活性が、テロメラーゼに関連するタンパク質による刺激シグナル経路の結果である可能性があることを示し得る。ソートされたDU145/Pac200細胞株における予備結果は、KML001処置が、72時間後にIC50およびIC100でのhTERT転写レベルを大きく減少させることを示す。(図8B)
薬剤排出ポンプ(Pgp)は、タキサン耐性前立腺癌細胞株における大部分の細胞中で(膜で)機能的に発現されるが、これは、それらの細胞株のSPが薬剤排出ポンプインヒビターであるベラパミルにより抑制可能であることから、予測されることである。IC50で72時間、KML001により処置することにより、Pgp陽性細胞集団が減少したが、これは、クローン原性検定法およびSP検定法の結果を確証付ける。
【実施例9】
【0098】
パクリタキセル耐性前立腺癌細胞株DU145/Pac200および親細胞株DU145におけるシスプラチンの効果を標準MTTにおいて検査した。結果は、両方の細胞株が同様の感受性(IC50がそれぞれ3および4μM)で反応することを示す。予備結果は、親およびパクリタキセル耐性細胞株におけるシスプラチンとKML001との相乗効果を示す(結果は図示せず)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ亜ヒ酸ナトリウムがヒト血液脳関門を越える、ヒト患者における脳腫瘍の治療のための医薬組成物を製造するためのメタ亜ヒ酸ナトリウムの使用。
【請求項2】
前記医薬組成物は、経口投与用に製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬組成物は、2.5mgから20mgの量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを送達するように製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記脳腫瘍は、少なくとも1種類の化学療法剤による治療に対して屈折性である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記脳腫瘍は、乏突起細胞腫、乏突起星状細胞腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、シュヴァン鞘腫、血管芽細胞腫または血管細胞腫である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬組成物は、静脈内送達用に製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記脳腫瘍は、全体または一部が手術により切除された、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
経口または静脈内送達用に製剤化されたメタ亜ヒ酸ナトリウムの1以上の投与単位と、経口または静脈内投与用に製剤化された、メタ亜ヒ酸ナトリウムと異なる抗脳腫瘍化学療法剤の1以上の投与単位とを含む、キット。
【請求項10】
前記抗脳腫瘍化学療法剤は、アルキル化剤、葉酸代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼから選択される、請求項9に記載のキット。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate


【公表番号】特表2013−504587(P2013−504587A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528903(P2012−528903)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/048308
【国際公開番号】WO2011/031890
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509267579)コミノックス・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】