説明

癌治療のためのチロシンキナーゼインヒビターとHER−2/neuとの組み合わせ

4−キナゾリンアミンとHER−2/neu分子を標的とするワクチンとを投与するステップを含む、癌を治療する方法、ならびに4−キナゾリンアミンとHER−2/neu分子を標的とするワクチンとを含んでなる医薬配合物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、(a)チロシンキナーゼであるヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER−2/neuまたはc−erbB2としても知られる)および上皮細胞増殖因子受容体(EGFRまたはc−erbB1としても知られる)のインヒビターであるキナゾリン誘導体および(b)HER−2分子を標的とする免疫原性組成物の配合物に関する。該配合物を癌の治療において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タンパク質チロシンキナーゼは、細胞増殖および分化の調節に関与する種々のタンパク質中の特定のチロシン残基のリン酸化を触媒する。HER−2/neuおよびEGFRはタンパク質チロシンキナーゼの例である。特定のタンパク質チロシンキナーゼのインヒビターについての例は、例えば、WO99/35146(US2002 177567)(参照により本明細書中に組み入れられる)に挙げられている。
【0003】
EGFRは170kDaの単一鎖の膜貫通型糖タンパク質であり、チロシンキナーゼ活性を有する細胞内触媒ドメイン、アンカー膜貫通ドメインおよび細胞外リガンド結合領域からなる。
【0004】
HER−2/neuは、チロシンキナーゼ受容体のファミリーである上皮細胞成長因子受容体ファミリーのメンバーである。該HER−2/neu分子を標的にするワクチンまたは免疫原性組成物の例は、例えばWO00/44899(US2002 177567)(参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0005】
HER−2/neuは膜貫通タンパク質であり、推定の相対分子量は185kDであり、長さは約1255アミノ酸である。HER−2/neuは、約645アミノ酸の細胞外ドメイン(ECD)、非常に疎水性の高い膜貫通ドメイン、および約580アミノ酸のカルボキシ末端細胞内ドメイン(ICD)を有する。用語「PD」とは、細胞内ドメイン内の「リン酸化ドメイン」(すなわちリン酸化されるドメイン)を表し、「ΔPD」とは、該リン酸化ドメイン内のリン酸化ドメインの特定の断片(配列番号16で示されるものなど)を表し、「KD」とは、細胞内ドメイン内のキナーゼドメインを表す。HER−2/neuのPDは268アミノ酸長であり、細胞内にあり、タンパク質チロシンキナーゼによってリン酸化することができる。
【0006】
約30%の乳癌患者では、HER−2/neu遺伝子が増幅され、該タンパク質が過剰発現されている。HER−2/neuの過剰発現は、種々の異なる悪性腫瘍において報告されている。該悪性腫瘍には、乳房、卵巣、腎細胞、前立腺、膵臓、結腸、非小細胞肺、胃、唾液腺、膀胱および口腔扁平細胞の悪性腫瘍が含まれる。乳癌患者では、HER−2/neuの過剰発現は予後が悪いことを示す因子であり、一部の化学療法剤に対する耐性の予想材料であると思われる。
【0007】
HER−2/neu DNAおよびHer2ペプチドに基づくHER−2/neuワクチンは、動物モデルおよびヒトワクチン試験においてHER−2/neuに対するT細胞免疫を誘発することが示されている。さらにまた、HER−2/neuに対するヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(Trastuzumab)(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標))は、転移性乳癌の治療に有効であることがわかった。
【発明の開示】
【0008】
本発明の第1の態様では、哺乳動物において癌を治療する方法であって、
(a)本明細書中に記載の式I、II、IIIまたはIVの化合物、および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体であって、RがClまたはBrであり;XがCH、N、またはCFであり;かつHetがチアゾールまたはフランであるもの;ならびに
(b)HER−2/neuタンパク質に由来する少なくとも1つのエピトープを含む単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる免疫原性組成物
を治療上有効量で該哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の第2の態様では、以下のものを治療上有効量で含んでなる医薬配合物を提供する:
(a)本明細書中に記載の式I、II、IIIまたはIVの化合物、および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体であって、RがClまたはBrであり;XがCH、N、またはCFであり;かつHetがチアゾールまたはフランであるもの;ならびに
(b)HER−2/neuタンパク質に由来する少なくとも1つのエピトープを含む単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる免疫原性組成物。
【0010】
本発明の第3の態様では、癌の治療のための医薬の製造における、本明細書中に記載の医薬配合物の使用を提供する。
【0011】
本発明の第4の態様では、個体での癌の治療のための医薬の製造における、本明細書中に記載の式I、II、IIIまたはIVの化合物および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体を治療上有効量で含んでなる医薬配合物の使用であって、該個体は、本明細書中に記載の、HER−2/neuタンパク質に由来する少なくとも1つのエピトープ、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる免疫原性組成物の投与を受けた個体である使用を提供する。
【0012】
驚くべきことに、本発明の免疫原性組成物(b)での免疫化にしたがって得られる血清の投与とともに、本発明の成分(a)を組み合わせると、乳癌細胞の増殖が阻害されることを発明者らは発見した。この2成分の相乗効果は、単一薬剤での処理で示される阻害よりずっと顕著であった。
【0013】
図面の簡単な説明
図1は、ヒトHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号12)を示す。
図2は、ラットHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号13)を示す。キナーゼドメインはアミノ酸721〜アミノ酸998の領域(両端を含む)にわたる。
図3は、細胞外HER−2/neuタンパク質のアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
図4は、ヒトHER−2/neuタンパク質のリン酸化ドメイン(PD)のアミノ酸配列(配列番号15)を示す。
図5は、ヒトHER−2/neuタンパク質のリン酸化ドメインの一部分(ΔPD)のアミノ酸配列の一例(配列番号16)を示す。
図6は、ヒトHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)およびリン酸化ドメイン(PD)を含む融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号17)を示す。
図7は、ヒトHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)およびリン酸化ドメインの代表的な部分(ΔPD)を含む融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号18)を示す。
図8は、ラットHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)のアミノ酸配列(配列番号19)を示す。
図9は、ヒトHER−2/neuタンパク質をコードするDNA分子の完全長ヌクレオチド配列(配列番号20)を示す。該完全長ヌクレオチド配列はWO96/30514(US 5,726,023)に記載されており、該融合タンパク質はWO00/44899(US2002/0177567)に記載されている。これらの文献の開示内容は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
図10は、ラットHER−2/neuタンパク質をコードするDNA分子の完全長ヌクレオチド配列(配列番号21)を示す。この完全長ヌクレオチド配列はBargmann et al. (1986) Nature, 319:226-30、およびGENBANK/X03362に記載されている。該文献およびデータベースの開示内容は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
図11Aは、BT474ヒト乳癌細胞の増殖に対する、ラパチニブ(Lapatinib)との併用での抗HER2/neuポリクローナル抗体の抗増殖効果を示す。
図11Bは、SKBR3ヒト乳癌細胞の増殖に対する、ラパチニブとの併用での抗HER2/neuポリクローナル抗体の抗増殖効果を示す。
図12A(上段パネル)は、指数増殖中のBT474細胞を以下のもので処理した結果を示す:(i)DMSO単独(ラパチニブに関する陰性対照)、(ii)ラパチニブ(0.1μM)、(iii)pAb(100μg/mL)、(iv)ラパチニブ(0.1μM)およびpAb(100μg/mL)、(v)TA2021(100μg/mL)、(vi)ラパチニブ(0.1μM)およびTA2021(100μg/mL)、(vii)トラスツズマブ(10μg/mL)、または(viii)ラパチニブ(0.1μM)およびトラスツズマブ(10μg/mL)。72時間後、アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用してアポトーシスを評価した。
図12Eは、図12Aと同様の結果を示す。
72時間後に、ウエスタンブロットを使用して、活性化型ホスホErbB2(p−ErbB2)、トータルErbB2、およびSurvivinの定常状態タンパク質レベルも評価した(下段パネル(図中、レーン1はDMSO単独であり;レーン2はラパチニブ(0.1μM)であり;レーン3はpAb(100μg/mL)であり;レーン4はラパチニブ(0.1μM)およびpAb(100μg/mL)であり;レーン5はTA2021(100μg/mL)であり;レーン6はラパチニブ(0.1μM)およびTA2021(100μg/mL)であり;レーン7はトラスツズマブ(10μg/mL)であり;かつレーン8はラパチニブ(0.1μM)およびトラスツズマブ(10μg/mL)である))。アクチンの定常状態タンパク質レベルは、等しいタンパク質ロード量に関する対照として用いた。ビヒクル(DMSO)またはTA2021で処理されたBT474細胞は、それぞれラパチニブおよびpAbに関する対照として用いた。
図12Bは、位相差顕微鏡検査を使用して、BT474細胞増殖に対する図中に示した処理条件の効果(72時間後)を示す。処理条件には、図12Aに関して記載される条件、およびそれに加えて、ゲフィチニブ(gefitinib)(イレッサ(Iressa))(0.1μM);ゲフィチニブ(0.1μM)およびpAB(100μg/mL);ゲフィチニブ(0.1μM)およびTA2021(100μg/mL);およびゲフィチニブ0.1μMおよびトラスツズマブ(10μg/mL)を含めた。
図12Cは、アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用して、BT474細胞のアポトーシスに対する、単独またはラパチニブ(100nM)との併用での漸増濃度のpAbの効果を示す。
図12Dは、単独またはラパチニブ(100nM)との併用での漸増量のpAbに応答してのトータルErbB2およびp−ErbB2の定常状態タンパク質レベルを示す。そのレベルはウエスタンブロットによって評価されたものである。アクチンの定常状態タンパク質レベルは、等しいタンパク質ロード量に関する対照として用いた。
図12Eは、図12Aと同様の結果を示す。
図13は、Erk1/2およびAktの活性化状態がラパチニブおよびワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)に応答してモジュレートされることを示す。指数増殖中のBT474細胞を、記載の処理条件下で72時間培養した。トータルErk1/2、活性化型ホスホErk1/2、トータルAkt、および活性化型ホスホAktの定常状態タンパク質レベルをウエスタンブロットによって評価した。ビヒクル(DMSO)またはTA2021単独で処理された細胞は対照として用いた。
図14は、ErbB3の活性化状態に対する、ラパチニブおよびワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)の効果を示す。図のように、BT474細胞を種々の処理条件下で培養した。72時間後、細胞ライセートを回収し、トータルErbB3および活性化型ホスホErbB3の定常状態タンパク質レベルをウエスタンブロットによって評価した。
図15Aは、BT474細胞のアポトーシスに対する、図中に示した処理条件の効果を示す。アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用してアポトーシスを評価した。
図15Bは、図中に示した定処理条件下で培養されたBT474細胞における、72時間後の、トータルErbB2、p−ErbB2、およびSurvivinの定常状態タンパク質レベルのウエスタンブロット解析を示す。
図15Cは、トータルErk1/2、p−Erk1/2、トータルAkt、およびp−Aktの定常状態タンパク質レベルに対する、図中に示した処理条件の効果を示す。その効果は、処理の72時間後にウエスタンブロットによって評価されたものである。
図16は、SKBR3細胞を以下のもので処理した場合のアポトーシス効果を示す:(i)DMSO単独(ラパチニブに関する陰性対照)、(ii)ラパチニブ(0.1μM)、(iii)pAb(100μg/mL)、(iv)ラパチニブ(0.1μM)およびpAb(100μg/mL)、(v)TA2021(100μg/mL)、(vi)ラパチニブ(0.1μM)およびTA2021(100μg/mL)、(vii)トラスツズマブ(10μg/mL)、または(viii)ラパチニブ(0.1μM)およびトラスツズマブ(10μg/mL)。72時間後、アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用してアポトーシスを評価した。
図17は、SKBR3細胞を以下のもので72時間処理した場合の、Survivinタンパク質に対する効果を示す:(i)DMSO単独(ラパチニブに関する陰性対照)、(ii)ラパチニブ(0.1μM)、(iii)pAb(100μg/mL)、(iv)ラパチニブ(0.1μM)およびpAb(100μg/mL)、(v)TA2021(100μg/mL)、(vi)ラパチニブ(0.1μM)およびTA2021(100μg/mL)、(vii)トラスツズマブ(10μg/mL)、または(viii)ラパチニブ(0.1μM)およびトラスツズマブ(10μg/mL)。
図18は、図中に示されたSkbR3細胞のpTyr/ErbB12および下流バイオマーカーに対する、ラパチニブおよび抗Her−2/neu抗体の効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書を通して、文脈によって特に要求されない限り、用語「含む(comprise)」および「含む(包含する)(include)」または「comprising」、「comprises」、「including」、「includes」、等の変化形は、包括的に解釈されるものとし、すなわち、これらの用語が使用される場合、具体的に列挙されていない整数または要素を含む可能性を含意する。
【0015】
留意すべきは、本明細書の全体を通して参照されるすべての参考文献および刊行物は参照により本明細書中に組み入れられることである。
【0016】
さらに、本明細書中では、用語「タンパク質」は「ポリペプチド」または「ペプチド」と交換可能に使用される。
【0017】
成分(a)
以下の構造式は式Iの化合物を表す:
【化1】

【0018】
式中、RはClまたはBrであり;XはCH、N、またはCFであり;かつHetはチアゾールまたはフランである。
【0019】
一実施形態では、RはClであり;XはCHであり;かつHetはフランであり、成分(a)は式IIの化合物および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体であってよい。
【化2】

【0020】
式IIの化合物は、N−{3−クロロ−4−[(3−フルオロベンジル)オキシ]フェニル}−6−[5−({[2−(メタンスルホニル)エチル]アミノ}メチル)−2−フリル]−4−キナゾリンアミンという化学名を有する。
【0021】
別の実施形態では、RはClであり;XはCHであり;かつHetはチアゾールであり、成分(a)は式IIIの化合物および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体であってよい。
【化3】

【0022】
式IIIの化合物は、(4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−(6−(2−((2−メタンスルホニル−エチルアミノ)−メチル)−チアゾール−4−イル)キナゾリン−4−イル)−アミンである。
【0023】
別の実施形態では、RはBrであり;XはCHであり;かつHetはフランであり、成分(a)は式IVの化合物および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体であってよい。
【化4】

【0024】
式IVの化合物は、(4−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−ブロモフェニル)−(6−(5−((2−メタンスルホニル−エチルアミノ)−メチル)−フラン−2−イル)キナゾリン−4−イル)−アミンである。
【0025】
本明細書中で使用される用語「有効量」とは、例えば研究者または臨床医が求める組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する、薬物または医薬物質の量を意味する。さらにまた、用語「治療上有効量」とは、任意の量であって、その量を投与されなかった対応する被験体と比較して、疾患、障害、もしくは副作用の改善された治療、治癒、予防、もしくは軽減または疾患もしくは障害の進行率の減少を生じさせる量を意味する。該用語には、その範囲内に、正常な生理的機能を増強するために有効な量も含まれる。好適には、有効量および/または治療上有効量で成分(a)を投与する。
【0026】
本明細書中で使用される用語「生理的に機能しうる誘導体」とは、式I、II、III、またはIVの化合物の、任意の製薬上許容しうる誘導体、例えばエステルまたはアミドであって、哺乳動物への投与時に、式I、II、III、もしくはIVの化合物またはその活性代謝産物を(直接または間接的に)提供可能な誘導体を表す。そのような誘導体は、過度の実験を行うことなく、Burger's Medicinal Chemistry And Drug Discovery, 5th Edition, Vol 1: Principles and Practiceの教示内容を参照して当業者に自明である。該文献は、それが生理的に機能しうる誘導体を教示する範囲で、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0027】
本明細書中で使用される用語「溶媒和物」とは、溶質(本発明では、式I、II、III、もしくはIVの化合物またはその塩もしくは生理的に機能しうる誘導体)および溶媒によって形成される種々の化学量論の複合体を表す。そのような溶媒は、本発明の目的のために、該溶質の生物学的活性を妨害してはならない。好適な溶媒の例には、非限定的に、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が含まれる。使用される溶媒は製薬上許容しうる溶媒でありうる。好適な製薬上許容しうる溶媒の例には、水、エタノールおよび酢酸が含まれる。一実施形態では、使用される溶媒は水である。
【0028】
式I、II、IIIおよびIVの化合物(a)は、1種以上の形態で結晶化する能力を有し、それは多形性として公知の特徴であり、該多形性の形態(「多形」)は式I、II、IIIおよびIVの範囲内であることが理解される。多形性は、一般に、温度もしくは圧力または両者の変化に対する応答として生じうるものであり、結晶化プロセスにおける変動にも由来しうる。多形は、当技術分野において公知の種々の物理的特性、例えばX線回折パターン、溶解度、および融点によって識別しうる。
【0029】
典型的に、式I、II、III、またはIVの化合物の塩は製薬上許容しうる塩である。用語「製薬上許容しうる塩」の範囲内に包含される塩とは、本発明の化合物の無毒の塩を表す。式I、II、III、またはIVの化合物の塩には、式I、II、III、またはIVの化合物中の置換基上の窒素に由来する酸付加塩が含まれるであろう。代表的な塩には、以下の塩が含まれる:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウムエデト酸塩(calcium edetate)、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩(clavulanate)、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート(edisylate)、エストラート(estolate)、エシラート(esylate)、フマル酸塩、グルセプタート(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニラート(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシナート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メチルブロミド、メチル硝酸塩(methylnitrate)、メチル硫酸塩(methylsulfate)、一カリウムマレイン酸塩(monopotassium maleate)、粘液酸塩、ナプシラート(napsylate)、硝酸塩、N−メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボナート)(pamoate(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(teoclate)、トシラートおよびジトシラート、トリエチオダイド(triethiodide)、トリメチルアンモニウムおよび吉草酸塩。製薬上許容されない他の塩は、本発明の化合物の製造において有用である可能性があり、これらは本発明の別の態様を形成する。さらにまた、該塩は無水形態または水和形態であってよい。一実施形態では、式I、II、III、または
IVの化合物は塩酸塩またはジトシラート塩、例えばジトシラート塩、例えばジトシラート塩の一水和物である。
【0030】
式I、II、III、またはIVの化合物の側鎖CHSOCHCHNHCHはHet基の任意の好適な位置に連結されていてよい。同様に、キナゾリン核のフェニル基はHet基の任意の好適な位置に連結されていてよい。
【0031】
本発明の一実施形態では、成分(a)は、無水または水和形態のラパチニブジトシラート(GSK572016; Lapatinib)(GSK)、例えば該ジトシラート塩の一水和物であってよい。
【0032】
成分(b)
本明細書中で使用される用語「免疫原性組成物」は、好適な哺乳動物被験体に投与された場合に、該被験体においてHER−2/Neuの少なくとも1つの部分に対する免疫応答を誘発する能力を有する、任意の組成物を包含する。本明細書中で使用される用語「免疫原」とは、HER−2/Neuの少なくとも1つの部分に対する免疫応答を誘発する能力を有する、組成物の成分を表す。
【0033】
成分(b)は、HER−2/neuタンパク質に由来する少なくとも1つのエピトープを含む単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。本発明の一実施形態では、該少なくとも1つのエピトープは9個以上のアミノ酸長を有する。
【0034】
本明細書中に記載のHER−2/neu分子は、ラット、マウス、非ヒト霊長類、ヒト由来またはそれらのハイブリッドであってよい。一実施形態では、本明細書中に記載のHER−2/neu分子はタンパク質全体、またはそのハイブリッドであってよい。本発明の一実施形態では、HER−2/neuはヒト由来である。
【0035】
本発明の一実施形態では、本明細書中に記載の成分(b)は、HER−2/neu細胞外ドメインに由来する少なくとも1つのエピトープを含む単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。本発明の一実施形態では、該少なくとも1つのエピトープは9個以上のアミノ酸長を有する。
【0036】
本発明の一実施形態では、成分(b)は、HER−2/neu細胞外ドメインを含むか、もしくはそれからなる単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0037】
本発明の一実施形態では、本明細書中に記載の成分(b)は、HER−2/neu細胞内ドメインに由来する少なくとも1つのエピトープを含む単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。本発明の一実施形態では、該少なくとも1つのエピトープは9個以上のアミノ酸長を有する。
【0038】
代替の実施形態では、成分(b)は、HER−2/neu細胞内ドメインを含むか、もしくはそれからなる単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0039】
本発明の別の実施形態では、成分(b)は、HER−2/neuタンパク質、例えばその細胞外ドメインに由来する少なくとも1つのエピトープを含む融合タンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明において使用することができる融合タンパク質の例は、WO00/44899(US2002 177567)に記載されている。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0040】
用語「融合タンパク質」とは、少なくとも2種のペプチドまたはポリペプチドを含むタンパク質を表す。融合タンパク質の一実施形態では、一方のペプチドまたはポリペプチドは1種のタンパク質配列またはドメインに由来し、他方のペプチドまたはポリペプチドは別のタンパク質配列またはドメインに由来する。該ペプチドまたはポリペプチドは、例えば共有結合性リンカー、例えばアミノ酸リンカー、例えばポリグリシンリンカー、または別のタイプの化学リンカー、例えば炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー、例えばPEG、等を介して共有結合によって連結されていてよい(例えばHermanson, Bioconjugate techniques(1996)を参照のこと)。
【0041】
本発明の別の実施形態では、成分(b)は、(例えば、化学コンジュゲーション技術を使用して)担体分子にコンジュゲートされているか、あるいは、担体分子に融合されている(例えば、Her2/neuタンパク質および/またはそのエピトープおよび担体を含む組換え融合タンパク質を形成している)、本明細書中に記載のHer2/neuタンパク質および/またはそのエピトープを含んでよい。該担体は、該HER−2/neu分子に対する免疫応答を発生させるためのT細胞の支援を提供するものでもよい。
【0042】
本発明において使用することができる担体の非網羅的なリストには、以下のものが含まれる:キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、例えばウシまたはヒト血清アルブミン(BSAまたはHSA)、オボアルブミン(OVA)、不活性化型細菌毒素、例えば破傷風トキソイド(TT)またはジフテリアトキソイド(DT)、またはその組換え断片(例えば、TTの断片Cのドメイン1、またはDTの転位ドメイン)、ツベルクリンの精製済みタンパク質誘導体(PPD)。担体タンパク質が動物起源、例えばKLHまたは血清アルブミンである本発明の実施形態では、該担体タンパク質は組換えによって生成されたものであってよい。
【0043】
本発明の一実施形態では、該担体はインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)由来のタンパク質Dであってよい(参照により本明細書中に組み入れられるEP0594610B1)。タンパク質Dはインフルエンザ菌由来のIgD結合性タンパク質であり、Forsgrenによって特許が取得されている(参照により本明細書中に組み入れられるWO91/18926、権利化されているEP 0 594 610 B1)。何らかの環境、例えば組換え免疫原の発現系では、タンパク質Dの断片、例えばタンパク質D 1/3(1/3rd)(タンパク質DのN末端の100〜110アミノ酸を含む(参照により本明細書中に組み入れられるGB 9717953.5(US6,342,224))を使用することが望ましいであろう。
【0044】
本発明の一実施形態では、該担体は「T細胞ヘルパー(Th)エピトープ」または「Tヘルパーエピトープ」であってよく、それは、MHC分子に結合し、動物種においてT細胞を刺激することができるペプチドである。Tヘルパーエピトープは外来性または非自己エピトープであってよい。T細胞エピトープは、不特定エピトープ(promiscuous epitopes)、すなわち、動物種または集団においてMHCクラスII分子の大部分に結合するエピトープであってよい(Panina-Bordignon et al, EJI. 1989, 19:2237-2242; Reece et al, JI 1993, 151:6175-6184(これらの文献は参照により本明細書中に組み入れられる))。
【0045】
不特定のThエピトープは、動物およびヒト集団において、広く多岐にわたるMHCタイプと高度かつ広範に反応性である(Partidos et al. (1991) "Immune Responses in Mice Following Immunisation with chimaeric Synthetic Peptides Representing B and T Cell Epitopes of Measles Virus Proteins" J. of Gen. Virol. 72:1293-1299; US 5,759,551(これらの文献は参照により本明細書中に組み入れられる))。本発明にしたがって使用することができるThドメインは約10〜約50アミノ酸、例えば約10〜約30アミノ酸を有する。複数のThエピトープが存在する場合、これらはすべて同一である(すなわち該エピトープは同種性(homologous)である)か、あるいは2種以上のタイプのエピトープの組み合わせを使用してよい(すなわち該エピトープは異種性(heterogeneous)である)。
【0046】
Thエピトープには、例として、病原体由来のエピトープ、例えば肝炎ウイルス表面またはコア(ペプチド50〜69、Ferrari et al., J.Clin.Invest, 1991, 88, 214-222)抗原Thエピトープ、百日咳毒素Thエピトープ、破傷風毒素Thエピトープ(例えばP2(参照により本明細書中に組み入れられるEP 0 378 881 B1)およびP30(参照により本明細書中に組み入れられるWO96/34888、WO95/31480、WO95/26365))、麻疹ウイルスFタンパク質Thエピトープ、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)大外膜タンパク質Thエピトープ(例えばP11、Stagg et al., Immunology, 1993, 79, 1-9)、エルシニア(Yersinia)のインベジン(invasin)、ジフテリアトキソイド、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(haemagluttinin)(HA)、および熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)のCS抗原が含まれる。
【0047】
他のThエピトープは、以下のものをはじめとする文献に記載されている:WO98/23635; Southwood et al., 1998, J. Immunol., 160: 3363-3373; Sinigaglia et al., 1988, Nature, 336: 778-780; Rammensee et al., 1995, Immunogenetics, 41: 4, 178-228; Chicz et al., 1993, J. Exp. Med., 178:27-47; Hammer et al., 1993, Cell 74:197-203; およびFalk et al., 1994, Immunogenetics, 39: 230-242, US5,759,551; Cease et al., 1987, PNAS 84, 4249-4253; Partidos et al., J.Gen.Virol, 1991, 72, 1293-1299; WO95/26365およびEP 0 752 886 B。T細胞エピトープは人工配列、例えばPan D−Rペプチド「PADRE」であってもよい(参照により本明細書中に組み入れられるWO95/07707(US6,675,428))。本発明の一実施形態では、使用される担体はPADREである。
【0048】
T細胞エピトープは、ヒトにおいて2種以上のMHC II分子を発現するいくつかの個体に結合するエピトープの群から選択してよい。例えば、特に意図されるエピトープはTT由来のP2およびP30エピトープである(Panina-Bordignon Eur. J. Immunol 1989 19 (12) 2237)。一実施形態では、異種性T細胞エピトープはTT由来のP2またはP30である。
【0049】
P2エピトープは配列QYIKANSKFIGITE(配列番号1)を有し、破傷風毒素のアミノ酸830−843に相当する。
【0050】
P30エピトープ(破傷風毒素の残基947−967)は配列FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(配列番号2)を有し;場合により、FNNFTV配列を欠失させてよい。
【0051】
他の汎用Tエピトープは熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)由来のスポロゾイト周囲タンパク質、特に配列DIEKKIAKMEKASSVFNVVNS(配列番号3)を有する領域378−398に由来する(Alexander J, (1994) Immunity 1 (9), p 751-761)。
【0052】
使用することができる別のエピトープは、麻疹ウイルス融合タンパク質の、配列LSEIKGVIVHRLEGV(配列番号4)を有する残基288−302から誘導される(Partidos CD, 1990, J. Gen. Virol 71(9) 2099-2105)。
【0053】
使用することができるさらに別のエピトープは、B型肝炎ウイルス表面抗原の、特に、配列FFLLTRILTIPQSLD(配列番号5)を有するアミノ酸から誘導される。
【0054】
使用することができる別のセットのエピトープはジフテリア毒素に由来する。これらのペプチドのうちの4種(アミノ酸271−290、321−340、331−350、351−370)は、該毒素の断片BのTドメイン内に位置し、残りの2種はそのRドメイン中に位置する(411−430、431−450):

【0055】
(Raju R., Navaneetham D., Okita D., Diethelm-Okita B., McCormick D., Conti-Fine B. M. (1995) Eur. J. Immunol. 25: 3207-14.)。
【0056】
したがって、本発明の免疫原性組成物は、本明細書中に記載のHer2/neuタンパク質および/またはそのエピトープ、ならびに本明細書中に記載の担体および/またはThエピトープを、化学コンジュゲートまたは純粋な合成ペプチド構築物として含んでよい。免疫原は、該免疫原のN末端またはC末端でスペーサー(例えばGly−Gly)を介してThエピトープに取り付けることができる。
【0057】
1種以上の担体(群)および/または不特定のThエピトープ(群)を含ませてよい。一実施形態では、免疫原性組成物は2〜5種の範囲の担体および/またはThエピトープを含んでよい。
【0058】
一実施形態では、免疫原をリポソーム担体に直接コンジュゲートしてよく、リポソーム担体はT細胞の支援を提供可能な免疫原をさらに含んでよい。
【0059】
コンジュゲーションまたは融合タンパク質
当技術分野において周知のコンジュゲーションの方法を使用して、担体またはThエピトープをカップリングすることができる。ゆえに、例えば、直接の共有結合によるカップリングに関して、共通の市販のヘテロ二機能性リンカー、例えばCDAPおよびSPDPを(製造元の指示を用いて)利用して、カルボジイミド、グルタールアルデヒドまたは(N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステルを利用することが可能である。カップリング反応後、透析法、ゲル濾過法、分画法等を用いて、コンジュゲートを容易に単離および精製することができる。本発明では、グルタールアルデヒド(gluteraldehyde)またはマレイミド化学の使用によって形成されるコンジュゲートを使用することができる。一実施形態では、マレイミド化学を使用することができる。
【0060】
あるいは、本明細書中に記載のHer−2/neuタンパク質もしくはエピトープに担体またはThエピトープを融合することができる。例えば、EP0421635B(参照により本明細書中に組み入れられる)では、ウイルス様粒子中で外来ペプチド配列を提示するためのキメラヘパドナウイルスコア抗原粒子の使用が記載されている。そのように、融合分子は、例えばB型肝炎コア抗原からなるキメラ粒子中で提示される本発明の免疫原を含むことができる。あるいは、組換え融合タンパク質はインフルエンザウイルスの免疫原およびNS1を含むことができる。
【0061】
本発明の成分(b)の一部分を形成する任意の組換え発現タンパク質に関して、該タンパク質をコードする核酸もまた、本発明の一態様を形成する。
【0062】
本発明の一実施形態では、融合タンパク質は、場合によりリンカー配列を介した、遺伝子改変融合パートナーの発現体であってよい。
【0063】
融合タンパク質を形成するポリペプチドはC末端とN末端を連結することができる。あるいは、C末端とC末端、N末端とN末端、またはN末端とC末端でそれらを連結してよい。融合タンパク質のポリペプチドは任意の順序であってよい。用語「ポリペプチド」および「融合タンパク質」とは、該ポリペプチドの保存的に改変された変異体、多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、部分配列および種間ホモログ、または融合タンパク質を構成するポリペプチドを表してもよい。
【0064】
1種のタンパク質配列由来のアミノ酸の鎖を別のタンパク質配列由来のアミノ酸の鎖に共有結合で連結することによって融合タンパク質を作製することができ、例えば、該融合タンパク質を連続してコードする組換えポリヌクレオチドを調製することによって融合タンパク質を作製する。融合タンパク質は、同種または異種由来の2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なるアミノ酸鎖を含むことができる。融合タンパク質中の異なるアミノ酸鎖は直接つなぎ合わせることができ、あるいは化学連結基またはアミノ酸連結基を介して間接的につなぎ合わせてよい。融合タンパク質は、場合により、本明細書中でさらに詳細に記載される他の成分を含んでよい。
【0065】
コンジュゲートまたは融合タンパク質は、実質的に、生物学的に不活性であってよい。
【0066】
一実施形態では、本明細書中に記載のHER−2/neuタンパク質またはエピトープを組換えGM−CSF、例えばヒトGM−CSFに連結または融合する。別の実施形態では、本明細書中に記載のHER−2/neuタンパク質またはエピトープを含む組成物はGM−CSFをさらに含む。
【0067】
本明細書中で使用される用語「HER−2/neu ECD−ICD融合タンパク質」は、本明細書中で「ECD−ICD」または「ECD−ICD融合タンパク質」とも称され、該用語は、HER−2/neuタンパク質の(i)細胞外ドメインまたはその断片を含むか、あるいはそれからなるアミノ酸配列;および(ii)細胞内ドメインまたはその断片を含むか、あるいはそれからなるアミノ酸配列を含む融合タンパク質またはその断片を表す。
【0068】
本明細書中で使用される用語「HER−2/neu ECD−PD融合タンパク質」は、「ECD−PD」または「ECD−PD融合タンパク質」とも称され、該用語は、HER−2/neuタンパク質の(i)細胞外ドメインまたはその断片を含むか、あるいはそれからなるアミノ酸配列;および(ii)リン酸化ドメインまたはその断片を含むか、あるいはそれからなるアミノ酸配列を含む融合タンパク質またはその断片を表す。
【0069】
本明細書中で使用される用語「HER−2/neu ECD−ΔPD融合タンパク質」は、「ECD−ΔPD」または「ECD−ΔPD融合タンパク質」とも称され、該用語は、HER−2/neuタンパク質の(i)細胞外ドメインまたはその断片を含むか、あるいはそれからなるアミノ酸配列;および(ii)ΔPDドメインまたはその断片を含むか、あるいはそれからなるアミノ酸配列を含む融合タンパク質またはその断片を表す。
【0070】
一実施形態では、成分(b)は、融合タンパク質「ECD−ICD」、または該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、あるいはそれからなる免疫原性組成物を含む。
【0071】
別の実施形態では、成分(b)は、融合タンパク質「ECD−PD」、または該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、あるいはそれからなる免疫原性組成物を含む。
【0072】
さらに別の実施形態では、成分(b)は、融合タンパク質「ECD−ΔPD」、または該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、あるいはそれからなる免疫原性組成物を含む。
【0073】
本発明の一実施形態では、融合タンパク質はHER−2/neu膜貫通ドメインの大部分を含まない。別の実施形態では、融合タンパク質はいずれのHER−2/neu膜貫通ドメインをも含まない。
【0074】
本発明のECD−ICD融合タンパク質およびECD−PD融合タンパク質は、可溶性で、分泌型で、培地中で安定であることができる。
【0075】
本明細書中に記載のHER−2/neuタンパク質は、その断片、そのホモログおよびその機能的等価物(包括的に「変異体」と称される)、例えば、1個以上のアミノ酸が挿入、欠失または、他のアミノ酸(群)または非アミノ酸(群)で置換されているものを含むと理解され、本発明のいくつかの実施形態では、変異体は(i)HER−2/neuタンパク質と比較して、免疫応答の誘発または増強を高めるか、あるいは(ii)HER−2/neuタンパク質と比較して、免疫応答の誘発または増強に実質的に影響しない(例えば、変異体はヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞による応答を刺激するか、あるいは抗体の生産を刺激する)。
【0076】
HER−2/neu ECD−ICD融合タンパク質およびHER−2/neu ECD−PD融合タンパク質の典型的な断片、ホモログおよび機能的等価物を含む変異体の例は、WO00/44899(US2002/0177567)にさらに詳細に記載されている。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。変異体はネイティブのポリペプチド成分を含む融合タンパク質と「実質的に同一」または「実質的に類似」であってよく、免疫応答を刺激する能力を保持する。使用することができる変異体およびそのような変異体を決定する方法の例は、WO00/44899(US2002/0177567)に記載されている。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0077】
本発明の一部分を形成しうるICDはヒト、ラットまたはマウス起源のICDであってよい。ヒトICD(図1;配列番号12)はLys676〜Val1255の領域にわたる(両端を含む)。ラットICDは図2および配列番号13に記載され、Lys677〜Val1256の領域にわたる(両端を含む)。
【0078】
本発明の一部分を形成しうるPDはヒト、ラットまたはマウス起源のICDであってよい。ヒトPDは図4に記載される(配列番号15のアミノ酸配列1−266(HER−2/neuのアミノ酸配列990−1255に相当する))。ヒトPDは図15に示されるヒトΔPDであってよい(配列番号16のアミノ酸配列1−59(HER−2/neuのアミノ酸配列990−1050に相当する))。ラットPDは図2および配列番号13に示され、Gln991〜Val1256の領域にわたる(両端を含む)。ラットPDは図2および配列番号13に示されるラットΔPDであってよく、Gln991〜Arg1049の領域にわたる(両端を含む)。
【0079】
一実施形態では、ヒトECDを、(i)ヒトICDもしくはラットICD、あるいは(ii)ヒトPDもしくはΔPD、またはラットPDもしくはΔPDと融合することができる。別の実施形態では、ラットECDを、(i)ヒトICDもしくはラットICD、あるいは(ii)ヒトPDもしくはΔPD、またはラットPDもしくはΔPDと融合することができる。
【0080】
本発明の一部分を形成しうる融合タンパク質は、HER−2/neuリン酸化ドメインに融合されたHER−2/neu細胞外ドメインを含んでよい。該タンパク質は、配列番号17の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号15の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を有してよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号13のGln991〜Val1256を含む配列と少なくとも80%、90%または95%同一のアミノ酸配列に直接融合された、配列番号3の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号13のGln991〜Val1256を含む配列と少なくとも80%、90%または95%同一のアミノ酸配列に融合された、配列番号3(17)の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号15の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号15の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号13のGln991〜Val1256を含むアミノ酸配列に直接融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号13のGln991〜Val1256を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。
【0081】
別の実施形態では、融合タンパク質は、HER−2/neuリン酸化ドメインの断片に融合されたHER−2/neu細胞外ドメインを含んでよい。一実施形態では、該タンパク質は、配列番号18の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号16の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を有してよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号2のGln991〜Arg1049を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号13のGln991〜Arg1049を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号16の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号16の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号13のGln991〜Arg1049を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号13のGln991〜Arg1049を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。
【0082】
別の実施形態では、融合タンパク質は、HER−2/neu細胞内ドメインに融合されたHER−2/neu細胞外ドメインを含んでよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号12のLys676〜Val1255を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号12のLys676〜Val1255を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に、少なくとも1つの化学連結基またはアミノ酸連結基を介して融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号13のLys677〜Val1256を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよく、あるいは、その場合、該タンパク質は、配列番号2のLys677〜Val1256を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に、少なくとも1つの化学連結基またはアミノ酸連結基を介して融合された、配列番号14の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含む。あるいは、該タンパク質は、配列番号12のLys676〜Val1255を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号12のLys676〜Val1255を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に、少なくとも1つの化学連結基またはアミノ酸連結基を介して融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。あるいは、該タンパク質は、配列番号13のLys677〜Val1256を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に直接融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列、または配列番号13のLys677〜Val1256を含むアミノ酸配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列に、少なくとも1つの化学連結基またはアミノ酸連結基を介して融合された、配列番号19の配列と少なくとも80%、90%または95%同一の配列を含んでよい。
【0083】
本発明において使用することができるECD−ICD融合タンパク質は、変異体を含むと理解され、ヒトおよび非ヒトポリペプチド間の任意の可能な組み合わせを含む。非ヒトポリペプチドには、任意の哺乳動物、例えばラット、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、等由来のポリペプチドが含まれる。一実施形態では、ECD−ICD融合タンパク質としては以下のものが挙げられる:
(i)ヒトECD−ヒトICD融合タンパク質、例えば、図3(配列番号14)のヒトECDを、図1(配列番号12)に示されるLys676〜Val1255にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるヒトICDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体;
(ii)(ii)ラットECD−ラットICD融合タンパク質、例えば、図8(配列番号19)のラットECDを、図2(配列番号13)に示されるLys677〜Val1256にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるラットICDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体;
(iii)ヒトECD−ラットICD融合タンパク質、例えば、図3(配列番号14)に示されるヒトECDを、図2(配列番号13)に示されるLys677〜Val1256にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるラットICDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体;および
(iv)ラットECD−ヒトICD融合タンパク質、例えば、図8(配列番号19)に示されるラットECDを、図1(配列番号12)に示されるLys676〜Val1255にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるヒトICDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体。
【0084】
本明細書中に記載のECD−ICD融合タンパク質の任意の変異体は、本発明の融合タンパク質として包含される。一実施形態では、そのような変異体はネイティブのHER−2/neu ECD−ICDタンパク質と実質的に同一または実質的に類似であり、免疫応答を刺激する能力を保持する。
【0085】
ECDタンパク質をコードするヒトDNA配列は、例えば図9(配列番号20)に示され、ヌクレオチド1〜ヌクレオチド1959にわたる(両端を含む)。ICDタンパク質をコードするヒトDNA配列は、例えば図9(配列番号20)に示され、ヌクレオチド2026〜ヌクレオチド3765にわたる(両端を含む)。HER−2/neu ECD−ICDタンパク質が免疫応答を生じさせる能力に対する、任意の配列改変の影響は、例えば、突然変異型HER−2/neu ECD−ICDタンパク質がT細胞応答を誘発する能力を、例えば本明細書中に記載の方法を使用して分析することによって、あるいは突然変異型HER−2/neu ECD−ICDタンパク質が抗体を産生させる能力を分析することによって、容易に決定されるであろう。
【0086】
本発明において使用することができるECD−PD融合タンパク質は、変異体を含むと理解され、ヒトおよび非ヒトポリペプチド間の任意の可能な組み合わせを含む。非ヒトポリペプチドには、例えばラット、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、等由来のものが含まれる。一実施形態では、ECD−PD融合タンパク質としては以下のものが挙げられる:
(i)ヒトECD−ヒトPD融合タンパク質、例えば図6(配列番号17)に示されるものおよびその変異体、例えば、図3(配列番号14)のヒトECDを図4(配列番号15)のヒトPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成される融合タンパク質およびその変異体;
(ii)ラットECD−ラットPD融合タンパク質、例えば、図8(配列番号19)のラットECDを、図2(配列番号13)に示されるGln991〜Val1256にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるラットPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体;
(iii)ヒトECD−ラットPD融合タンパク質、例えば、図3(配列番号14)に示されるヒトECDを、図2(配列番号13)に示されるGln991〜Val1256にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるラットPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体;および
(iv)ラットECD−ヒトPD融合タンパク質、例えば、図8(配列番号19)に示されるラットECDを、図4(配列番号15)に示されるヒトPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体。
【0087】
ECD−PD融合タンパク質の任意の変異体は、本発明の実施形態として包含される。一実施形態では、そのような変異体はネイティブのHER−2/neu ECD−PDタンパク質と実質的に同一または実質的に類似であり、免疫応答を刺激する能力を保持する。ECDタンパク質をコードするヒトDNA配列は、例えば図9(配列番号20)に示され、ヌクレオチド1〜ヌクレオチド1959にわたる(両端を含む)。PDタンパク質をコードするヒトDNA配列は、例えば図9(配列番号20)に示され、ヌクレオチド2968〜ヌクレオチド3765にわたる(両端を含む)。HER−2/neu ECD−PDタンパク質が免疫応答を生じさせる能力に対する、任意の配列改変の影響は、例えば、突然変異型HER−2/neu ECD−PDタンパク質がT細胞応答を誘発する能力を、例えば本明細書中に記載の方法を使用して分析することによって、あるいは突然変異型HER−2/neu ECD−PDタンパク質が抗体を産生させる能力を分析することによって、容易に決定されるであろう。
【0088】
別の実施形態では、ECD−PD融合タンパク質は本発明のECD−ΔPD融合タンパク質であり、それは変異体を含むと理解され、ヒトおよび非ヒトポリペプチド間の任意の可能な組み合わせを含む。非ヒトポリペプチドには、例えばラット、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、等由来のものが含まれる。一実施形態では、ECD−ΔPD融合タンパク質としては以下のものが挙げられる:
(i)ヒトECD−ヒトΔPD融合タンパク質、例えば図7(配列番号18)に示されるものおよびその変異体、例えば、図3(配列番号14)のヒトECDを図5(配列番号16)のヒトΔPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成される融合タンパク質およびその変異体;
(ii)ラットECD−ラットΔPD融合タンパク質、例えば、図8(配列番号19)のラットECDを、図2(配列番号13)に示されるGln991〜Arg1049にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるラットΔPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体;
(iii)ヒトECD−ラットΔPD融合タンパク質、例えば、図3(配列番号14)に示されるヒトECDを、図2(配列番号13)に示されるGln991〜Arg1049にわたるアミノ酸配列(両端を含む)であるラットΔPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体;および
(iv)ラットECD−ヒトΔPD融合タンパク質、例えば、図8(配列番号19)に示されるラットECDを、図5(配列番号16)に示されるヒトΔPDと、化学連結基および/またはアミノ酸連結基を用いて、あるいは用いずに、連結することによって形成されるもの、およびその変異体。
【0089】
ECD−ΔPD融合タンパク質の任意の変異体は、本発明の実施形態として包含される。一実施形態では、そのような変異体はネイティブのHER−2/neu ECD−ΔPDタンパク質と実質的に同一または実質的に類似であり、免疫応答を刺激する能力を保持する。ECDタンパク質をコードするヒトDNA配列は、例えば図9(配列番号20)に示され、ヌクレオチド1〜ヌクレオチド1959にわたる(両端を含む)。配列番号16のΔPDタンパク質をコードするヒトDNA配列は、例えば図9(配列番号20)に示され、ヌクレオチド2968〜ヌクレオチド3144にわたる(両端を含む)。HER−2/neu ECD−ΔPDタンパク質が免疫応答を生じさせる能力に対する、任意の配列改変の影響は、例えば、突然変異型HER−2/neu ECD−ΔPDタンパク質がT細胞応答を誘発する能力を、例えば本明細書中に記載の方法を使用して分析することによって、あるいは突然変異型HER−2/neu ECD−ΔPDタンパク質が抗体を産生させる能力を分析することによって、容易に決定されるであろう。
【0090】
一実施形態では、免疫原性成分(b)は、ECD−PD融合タンパク質または当該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0091】
成分(b)がタンパク質である本発明の実施形態では、成分(b)はアジュバントまたは免疫刺激剤、例えば、非限定的に、TH1型応答を刺激可能なものをさらに含んでよい。本発明の一実施形態では、成分(b)はTH1型応答を刺激可能なアジュバントを含む。
【0092】
タンパク質製剤に好適なアジュバント
腸内細菌性リポ多糖(LPS)が免疫系の強力な刺激因子であることが長い間知られているが、アジュバントにおけるその使用はその有毒な影響によって抑制されてきた。LPSの無毒の誘導体であるモノホスホリル脂質A(MPL)は、コアの炭水化物基および還元末端グルコサミン由来のリン酸基を除去することによって製造される。MPLはRibi et al(1986, Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)によって報告され、以下の構造を有する:
【化5】

【0093】
さらに無毒化された型のMPLは、二糖主鎖の3位からアシル鎖を除去することによって得られ、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)と称される。それはGB 2122204Bにおいて教示される方法によって精製および製造することができ、該参考文献は、ジホスホリル脂質A、およびその3−O−脱アシル化変種の製造をさらに開示している。一実施形態では、免疫原性組成物は3D−MPLを含む。
【0094】
一実施形態では、使用することができる3D−MPLの形態は、直径が0.2μm未満の小さい粒子サイズを有するエマルジョンの形態であり、その製造方法はWO94/21292に開示されている。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。モノホスホリル脂質Aおよび界面活性剤を含む水性製剤はWO9843670に記載されている。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0095】
本発明の組成物中に製剤化される対象の細菌性リポ多糖由来のアジュバントは細菌供給源から精製および加工することができ、あるいはそれらは合成されたものでもよい。例えば、精製モノホスホリル脂質Aは、Ribi et al 1986(上掲)に記載され、サルモネラ属の種(Salmonella sp.)由来の3−O−脱アシル化モノホスホリルまたはジホスホリル脂質AはGB 2220211およびUS 4912094に記載されている。他の精製および合成リポ多糖が報告されている(Hilgers et al., 1986, Int.Arch.Allergy.Immunol., 79(4):392-6; Hilgers et al., 1987, Immunology, 60(1):141-6; およびEP 0 549 074 B1)。一実施形態では、細菌性リポ多糖アジュバントは3D−MPLである。
【0096】
したがって、本発明において使用することができるLPS誘導体は、LPSまたはMPLまたは3D−MPLと構造が類似している免疫刺激剤である。本発明の別の態様では、LPS誘導体はアシル化単糖であってよく、それは上記MPL構造の一部分である。
【0097】
3D−MPLはToll様受容体4(TLR−4)のアゴニストである。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物に1種以上のTLR−4アゴニスト(群)を含ませてよい。TLR−4アゴニストには以下のものが含まれる:グラム陰性菌由来のリポ多糖(LPS)またはその断片;熱ショックタンパク質(HSP)10、60、65、70、75または90;界面活性タンパク質A、ヒアルロナンオリゴ糖、ヘパラン硫酸断片、フィブロネクチン断片、フィブリノゲンペプチドおよびb−デフェンシン−2およびMPL、例えば3D−MPL。
【0098】
サポニンは以下の文献に教示されている:Lacaille-Dubois, M and Wagner H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)。サポニンは植物および海洋動物界で広く分布しているステロイドまたはトリテルペングリコシドである。サポニンは、振とう時に泡立つコロイド水溶液を形成させること、およびコレステロールを沈殿させることに関して有名である。サポニンが細胞膜の付近に存在すると、それらは膜中に細孔様構造を創出し、該膜を破裂させる。赤血球の溶血はこの現象の例であり、これはすべてではないが特定のサポニンの特性である。
【0099】
サポニンは全身投与用ワクチンにおけるアジュバントとして知られる。個々のサポニンのアジュバントおよび溶血活性は当技術分野において広範に研究されている(Lacaille-Dubois and Wagner, 上掲)。例えば、US 5,057,540および"Saponins as vaccine adjuvants", Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55; およびEP 0 362 279 B1には、Quil A(南米のキラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の木の皮由来)およびそのフラクションが記載されている。Quil Aのフラクションを含む、免疫刺激性複合体(ISCOM)と称される微粒子構造は溶血性であり、ワクチンの製造に使用されている(Morein, B., EP 0 109 942 B1; WO96/11711; WO96/33739(これらの文献は参照により本明細書中に組み入れられる))。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製フラクション)は強力な全身性アジュバントとして報告されており、その生産方法は米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。全身性ワクチン接種研究において使用されている他のサポニンには、他の植物種、例えばカスミソウ(Gypsophila)およびサポンソウ(Saponaria)由来のものが含まれる(Bomford et al., Vaccine, 10(9):572-577, 1992)。
【0100】
本発明において使用することができる1つのアジュバント系は、無毒の脂質A誘導体およびサポニン誘導体を含む。使用することができる特定のアジュバント系は、例えばWO94/00153に開示されているように3D−MPLおよびQS21を含む。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。使用することができる別の系は、例えばWO96/33739に開示されているように3D−MPLおよびQS21を含み、その場合、該QS21はコレステロールでクエンチされる。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0101】
本発明の別の実施形態では、成分(b)は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドとともにサポニンを含むアジュバント組成物をさらに含む。例えば、該アジュバント組成物は免疫調節性オリゴヌクレオチド、例えばメチル化されていないCGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(CpGオリゴヌクレオチド)とともにQS21を含んでよい。
【0102】
本発明の一実施形態では、アジュバント中に包含することができる免疫刺激性オリゴヌクレオチドは以下の群から選択される:

【0103】
本発明の別の実施形態では、成分(b)は、例えばEP 382 271に記載の水中油型エマルジョンを含むアジュバント組成物をさらに含む。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0104】
別の実施形態では、成分(b)は、例えばWO02/32450に記載のリポソームまたは水中油型エマルジョン担体とともに3D−MPL、QS21およびCpGオリゴヌクレオチドを用いて製剤化されたアジュバント組成物をさらに含む。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。そのような製剤は体液性応答および細胞性応答の両者を生じさせるであろう。QS21および3D−MPLのみを含むアジュバント製剤と比較して、本発明の製剤は、マウスにおいて強いTH1応答を好都合に示すであろう。
【0105】
本発明のさらに別の実施形態では、アジュバントは、水中油型エマルジョンおよびサポニンを含むアジュバントであるSB62’cであり、その場合、油は代謝可能な油であり、代謝可能な油:サポニンの比(w/w)は1:1〜200:1(低量水中油型エマルジョン)の範囲である。それはWO99/11241に記載され、該文献の全教示内容は参照により本明細書中に組み入れられる。一実施形態では、代謝可能な油:サポニンの比(w/w)は実質的に48:1である。サポニンはQuilA、例えばQS21であってよい。一例では、代謝可能な油はスクアレンである。該SB62’cアジュバント組成物はステロール、例えばコレステロールをさらに含んでよい。該SB62’cアジュバント組成物は、1種以上の免疫調節物質、例えば:3D−MPLおよび/またはα−トコフェロールを追加的にまたは代替でさらに含んでよい。3D−MPLを含むSB62’cの実施形態では、QS21:3D−MPLの比(w/w)は1:10〜10:1、例えば1:1〜1:2.5、または1:1〜1:20であってよい。
【0106】
ゆえに、該アジュバントSB62’cの一実施形態では、代謝可能な油:サポニンの比(w/w)は1:1〜200:1の範囲であるか、あるいは実質的に48:1であり、該サポニンはQS21であり、かつ、該アジュバントは3D−MPLをさらに含む(低量水中油型エマルジョン、QS21、3D−MPL)。
【0107】
本発明の別の実施形態では、アジュバントは、例えばEP0382271に記載されるトコール(tocol)を含む水中油型エマルジョンからなる。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。別の実施形態では、使用することができる水中油型エマルジョンはα−トコフェロールを含む。
【0108】
一実施形態では、アジュバントは、例えばEP822831に記載されているものなどのリポソーム中で提供される本明細書中に記載のアジュバント組成物である。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。別の実施形態では、アジュバントはモンタニド(montanide)ISA51を含んでよい。
【0109】
ワクチン
本発明は、本明細書中に記載の免疫原性組成物を、製薬上許容しうる賦形剤、アジュバントまたはビヒクルとともに含むワクチンをさらに提供する。本発明は、ワクチン組成物を製造する方法であって、本明細書中に記載の免疫原性組成物を製薬上許容しうる適切なビヒクル、アジュバントまたは賦形剤と混合するステップを含む方法をさらに提供する。適切なビヒクルおよび賦形剤は当技術分野において周知であり、例えば水またはバッファーが挙げられる。ワクチン製造は、Vaccine Design("The subunit and adjuvant approach"(Powell M.F. & Newman M.J.編)(1995)Plenum Press New York)に全般的に記載されている。
【0110】
ポリヌクレオチド
本発明の一実施形態では、成分(b)は、本明細書中に記載の本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0111】
別の実施形態では、該ポリヌクレオチド配列は、該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものでありうる。本明細書中で使用される用語「ストリンジェントな条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、配列間に少なくとも95%および好ましくは少なくとも97%の同一性が存在する場合にのみハイブリダイゼーションが生じることを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の具体例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%硫酸デキストラン、および20マイクログラム/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩インキュベーションした後、0.1×SSC中で約65℃で該ハイブリダイゼーション支持体を洗浄することである。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)、特にそのChapter 11で例示されている。
【0112】
したがって、該融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列としては、保存的に改変された変異体、多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、部分配列、および種間ホモログが挙げられる。成分(b)がポリヌクレオチドを含む実施形態では、成分(b)はアジュバントをさらに含み、あるいはアジュバントまたは免疫刺激性物質と同時にまたは連続して投与してよい。
【0113】
前記ポリヌクレオチドは当業者に公知の任意の種々の送達系内で提供してよく、それには核酸発現系、細菌およびウイルス発現系が含まれる。多数の遺伝子送達技術が当技術分野において周知であり、例えばRolland (1998) Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15:143-198およびその引用文献に記載されている技術である。適切な核酸発現系は、患者体内での発現に必要なDNA配列(例えば好適なプロモーターおよび終結シグナル)を含有する。細菌送達系には、該融合タンパク質の免疫原性部分をその細胞表面で発現するか、あるいはそのようなエピトープを分泌する細菌(例えばカルメット・ゲラン菌(Bacillus Calmette-Guerin))の投与が含まれる。一実施形態では、ウイルス発現系またはベクター(例えばワクシニアウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス、またはアデノウイルス)を使用してDNAを導入することができ、それは非病原性(欠損型)で複製能を有するウイルスの使用を含む。好適な系は、例えばFisher-Hoch et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:317-321; Flexner et al. (1989) Ann. N.Y. Acad. Sci. 569:86-103; Flexner et al. (1990) Vaccine 8:17-21; 米国特許第4,603,112号, 同第4,769,330号, 同第4,777,127号および同第5,017,487号; WO89/01973; GB 2,200,651; EP 0,345,242; WO91/02805; Berkner (1988) Biotechniques 6:616-627; Rosenfeld et al. (1991) Science 252:431-434; Kolls et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:215-219; Kass-Eisler et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11498-11502; Guzman et al. (1993) Circulation 88:2838-2848; およびGuzman et al. (1993) Cir. Res. 73:1202-1207に開示されている。そのような発現系にDNAを組込む技術は当業者に周知である。該DNAは「裸の」DNAであってもよく、それは例えばUlmer et al. (1993) Science 259:1745-1749に記載され、Cohen (1993) Science 259:1691-1692に総説として示されている。DNAを生分解性ビーズ上にコーティングすることによって裸のDNAの取り込みを高めることができ、この場合、該ビーズは細胞内に効率的に輸送されるものである。
【0114】
本発明のワクチンまたは免疫原性組成物はポリヌクレオチドおよびポリペプチド成分の両者を含んでよいことが明らかである。そのようなワクチンまたは免疫原性組成物は増強された免疫応答を提供するであろう。
【0115】
ポリヌクレオチド配列とともに使用することができる免疫刺激性物質には、合成イミダゾキノリン、例えばイミキモド(imiquimod)[S-26308, R-837]または、Toll様受容体7を刺激することが知られている任意の他の分子、(Harrison, et al. 'Reduction of recurrent HSV disease using imiquimod alone or combined with a glycoprotein vaccine', Vaccine 19: 1820-1826, (2001));およびレシキモド(resiquimod)[S-28463, R-848](Vasilakos, et al. 'Adjuvant activites of immune response modifier R-848: Comparison with CpG ODN', Cellular immunology 204: 64-74 (2000).)、抗原提示細胞およびT細胞表面で構成的に発現されるカルボニルおよびアミンのシッフ塩基、例えばツカレソール(tucaresol)(Rhodes, J. et al. 'Therapeutic potentiation of the immune system by costimulatory Schiff-base-forming drugs', Nature 377: 71-75 (1995))、以下のものが含まれるであろう、タンパク質またはペプチドであるサイトカイン、ケモカインおよび共刺激分子:炎症誘発性サイトカイン(例えばインターフェロン、特にインターフェロンおよびGM−CSF、IL−1α、IL−1β、TGF−αおよびTGF−β)、Th1誘導物質(例えばインターフェロンγ、IL−2、IL−12、IL−15、IL−18およびIL−21)、Th2誘発物質(例えばIL−4、IL−5、IL−6、IL−10およびIL−13)および他のケモカインおよび共刺激遺伝子(例えばMCP−1、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、TCA−3、CD80、CD86およびCD40L)、他の免疫刺激性ターゲティングリガンド(例えばCTLA−4およびL−セレクチン)、アポトーシス刺激性タンパク質およびペプチド(例えばFas、(49))、合成脂質ベースのアジュバント(例えばバックスフェクチン(vaxfectin)(Reyes et al., 'Vaxfectin enhances antigen specific antibody titres and maintains Th1 type immune responses to plasmid DNA immunization', Vaccine 19: 3778-3786)、スクアレン、α−トコフェロール、ポリソルベート80、DOPCおよびコレステロール)、内毒素、[LPS](Beutler, B., 'Endotoxin, 'Toll-like receptor 4, and the afferent limb of innate immunity', Current Opinion in Microbiology 3: 23-30 (2000));CpGオリゴおよびジヌクレオチド(Sato, Y. et al., 'Immunostimulatory DNA sequences necessary for effective intradermal gene immunization', Science 273 (5273): 352-354 (1996). Hemmi, H. et al., 'A Toll-like receptor recognizes bacterial DNA', Nature 408: 740-745, (2000))、およびToll受容体を作動させてTh1誘発性サイトカインを産生させる他の潜在的なリガンド(例えば合成のマイコバクテリアリポタンパク質、マイコバクテリアタンパク質p19、ペプチドグリカン、タイコ酸および脂質A)。他の細菌由来免疫刺激性タンパク質には、コレラ毒素、大腸菌毒素およびその突然変異型トキソイドが含まれる。主にTh1型応答を誘発するためのアジュバントの例としては、例えば、脂質A誘導体、例えばモノホスホリル脂質A、または3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aが挙げられる。MPL(登録商標)アジュバントはCorixa Corporation(Seattle, WA; 例えば米国特許第4,436,727号;同第4,877,611号;同第4,866,034号および同第4,912,094号を参照のこと)から入手可能である。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドはメチル化されていない)もまた、主にTh1応答を誘発する。そのようなオリゴヌクレオチドは周知であり、例えばWO96/02555、WO99/33488および米国特許第6,008,200号および同第5,856,462号に記載されている。免疫刺激性DNA配列は、例えばSato et al., Science 273:352, 1996にさらに記載されている。使用することができる別のアジュバントはサポニン、例えばQuil A、またはその誘導体を含み、それにはQS21およびQS7(Aquila Biopharmaceuticals Inc., Framingham, MA);エスシン(Escin);ジギトニン(Digitonin);またはカスミソウ(Gypsophila)またはキノア(Chenopodium quinoa)サポニンが含まれる。
【0116】
本発明の一実施形態では、アジュバント中に包含することができる免疫刺激性オリゴヌクレオチドは以下の群から選択される:

【0117】
組み合わせ
任意の治療上適切な組み合わせにおいて、成分(a)および成分(b)を同時にまたは逐次的に組み合わせて使用することができる。
【0118】
本発明にしたがって、成分(a)および(b)の同時投与によって該組み合わせを使用することができる。同時投与は、例えば(1)両成分を含む単位医薬組成物を投与するか、あるいは(2)各々が一方の成分を含む別個の医薬組成物を被験体に同時投与することによる。
【0119】
成分(a)および(b)が別々に投与される実施形態では、該組み合わせを同時にまたは逐次的様式で投与してよい。該逐次様式では、一方が最初に投与され、次に他方が投与されるか、あるいはその逆である。
【0120】
本明細書中で使用される逐次的投与とは、生物学的に関連する期間以内の成分(a)および(b)の両者の投与を表す。逐次的投与の例には、例えば、第一の成分の投与が完了した直後の第二の成分の投与;または被験体が第一投与成分の生物学的効果を経験している時点で第二の成分を投与することが含まれる。ゆえに、最初に成分(b)が投与される場合、成分(a)は、成分(b)によって誘発される免疫応答、例えば抗体および/またはT細胞応答の期間中に投与されることが明らかである。成分(b)が初回免疫・追加免疫処方で投与される本発明の一実施形態では、成分(a)は成分(b)の「追加免疫」投与と同時に投与してよい。
【0121】
最初に成分(a)が投与される場合、成分(b)は成分(a)が被験体の体内に存在する期間中に投与される。該成分は1:1様式以外の様式で投与してよく、例えば成分(a)の投与前に成分(b)を2回以上投与してよく;成分(b)の投与に続いて、生物学的に関連する期間以内に成分(a)を複数回投与してよいこと、等が当業者には明らかである。
【0122】
一実施形態では、成分(b)の前に成分(a)が投与される。成分(b)の前に成分(a)を1回以上投与してよい。
【0123】
別の実施形態では、成分(a)の前に成分(b)が投与される。成分(a)の前に成分(b)を1回以上投与してよい。一実施形態では、免疫原性組成物(b)を以前に投与されている個体に成分(a)を投与してよい。
【0124】
成分(b)が2回以上投与される場合、1回以上の投与がタンパク質であってよく、1回以上の投与がDNAであってよいことが理解される。
【0125】
本発明は、本発明の組み合わせと任意の治療上適切な組み合わせにおいて、同時または逐次的に組み合わせて、少なくとも1つの追加の癌治療法の実施を含んでもよい。該追加の癌治療法には、放射線療法、外科治療および/または、少なくとも1種の追加の抗新生物剤を投与することを含む少なくとも1つの追加の化学療法による治療が含まれるであろう。
【0126】
成分(a)の前に成分(b)が投与される本発明の実施形態では、免疫応答、例えばポリクローナル抗体応答の発生を許容するために、成分(a)より十分に前の時点で成分(b)を投与する。本発明の一実施形態では、成分(b)に対して発生した免疫応答のピークの時点で成分(a)を投与してよい。一実施形態では、既往性(記憶)応答のピークの時点で成分(a)を投与してよい。
【0127】
成分(a)の投与
治療における使用に関して、成分(a)の式I、II、III、IVの化合物ならびにその塩、溶媒和物および生理的に機能しうる誘導体を未製剤の化学物質として投与することが可能であるが、医薬組成物として該有効成分を提供することが可能である。したがって、一実施形態では、式I、II、IIIおよび/またはIVの化合物、およびその塩、溶媒和物、および生理的に機能しうる誘導体、ならびに1種以上の製薬上許容しうる担体、希釈剤、または賦形剤を含んでなる医薬組成物として本発明の成分(a)を提供する。
【0128】
担体(群)、希釈剤(群)または賦形剤(群)は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して有害でないという意味で許容しうるものである必要がある。
【0129】
本発明の別の態様にしたがえば、成分(a)の医薬製剤の製造方法であって、式I、II、IIIおよび/もしくはIVの化合物、および/またはその塩、溶媒和物、および/もしくは生理的に機能しうる誘導体を、1種以上の製薬上許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と混合するステップを含む方法がさらに提供され、そのような医薬製剤は本発明の成分(b)と組み合わせて提供される。
【0130】
本発明の成分(a)の医薬組成物の成分は、任意の経路による投与用に製剤化することができ、適切な経路は治療対象の具体的な癌ならびに治療対象の被験体に依存する。好適な医薬製剤には、経口、経直腸、鼻腔、局所(例えば頬側、舌下、および経皮)、経膣または非経口(例えば筋肉内、皮下、静脈内、および患部組織内への直接)の投与のための製剤または吸入もしくは吹送による投与に好適な形式の製剤が含まれる。適切であれば、該製剤を別個の用量単位で都合よく提供してよく、製薬分野で周知の任意の方法によって製造してよい。
【0131】
経口投与用に製造される医薬製剤は、分離した単位、例えばカプセル剤または錠剤;散剤または顆粒剤;水性もしくは非水性液体中の溶液剤または懸濁液剤;食用フォームまたはホイップ;あるいは水中油型乳濁液剤または油中水型乳濁液剤として提供してよい。
【0132】
例えば、錠剤またはカプセル剤の剤形での経口投与に関して、有効薬物成分を、経口の無毒の製薬上許容しうる不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水等と組み合わせることができる。散剤は、化合物を粉砕して好適な微細サイズにし、同様に粉砕された医薬用担体、例えば食用炭水化物、例えばデンプンまたはマンニトールと混合することによって製造される。香味物質、保存料、分散剤および着色剤を加えることもできる。
【0133】
カプセル剤は、上記粉末混合物を製造し、有形ゼラチンの入れ物に充填することによって作成される。流動促進剤および滑沢剤、例えばコロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固形ポリエチレングリコールを、充填操作前に該粉末混合物に加えることができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムを加えて、カプセル摂取時の該医薬の有効性を改善することもできる。
【0134】
さらに、所望または必要である場合、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を該混合物に組み込むこともできる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖類、例えばグルコースまたはβ−ラクトース、トウモロコシ甘味料、天然ガムおよび合成ガム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が含まれる。これらの剤形中で使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が含まれる。崩壊剤には、非限定的に、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が含まれる。錠剤は、例えば粉末混合物を製造し、顆粒化またはスラグ化し、滑沢剤および崩壊剤を加え、圧縮して錠剤にすることによって製剤化される。粉末混合物は、好適に粉砕された化合物を上記希釈剤または基剤および、場合により、結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート(aliginate)、ゼラチン、またはポリビニルピロリドン、溶解遅延剤(例えばパラフィン)、再吸収促進剤(例えば四級塩)および/または吸収剤(例えばベントナイト、カオリンまたは第二リン酸カルシウム)と混合することによって製造される。該粉末混合物は、結合剤、例えばシロップ、デンプンペースト、アカディアガムのり(acadia mucilage)またはセルロース系もしくはポリマー材料の溶液で湿潤させ、スクリーンに押し通すことによって顆粒化することができる。顆粒化の代替として、該粉末混合物を打錠機に通すことができ、その結果、不完全に形成されたスラグが崩壊して顆粒になる。ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えることによって該顆粒を潤滑にして、錠剤形成鋳型に対する固着を防ぐことができる。次いで、該潤滑化混合物を圧縮して錠剤にする。本発明の化合物を自由流動性不活性担体と混合し、顆粒化またはスラグ化ステップを経由せずに直接圧縮して錠剤にすることもできる。シェラックの密封コート、糖またはポリマー材料のコーティングおよびワックスの光沢コーティングからなる透明または不透明の保護性コーティングを提供することができる。これらのコーティングに色素を加えて、種々の単位用量を識別することができる。
【0135】
経口用の液体、例えば溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤を単位投与剤形で製造して、所定量があらかじめ決められた量の該化合物を含有するようにすることができる。好適に香味を付けた水性溶液に該化合物を溶解することによって、シロップ剤を製造することができ、一方、エリキシル剤は無毒のアルコール性ビヒクルの使用によって製造される。無毒のビヒクルに該化合物を分散させることによって、懸濁液剤を製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル、保存料、香味添加物、例えばペパーミント油または天然甘味料またはサッカリンまたは他の人工甘味料、等を加えることもできる。
【0136】
適切な場合、経口投与用の単位投与製剤をマイクロカプセル化することができる。例えばポリマー、ワックス等の中に微粒子材料をコーティングまたは包埋することによって該製剤を製造し、放出を延長または持続させることもできる。
【0137】
本発明の医薬組成物の成分は、リポソーム送達系、例えば小型単層小胞、大型単層小胞および多重膜小胞の形態で投与することもできる。種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンからリポソームを形成させることができる。
【0138】
本発明の医薬組成物の成分は、化合物分子がカップリングされる対象の個別の担体としてモノクローナル抗体を使用することによって送達してもよい。ターゲティング可能な薬物担体としての可溶性ポリマーと該化合物をカップリングしてもよい。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール(polyhydroxyethylaspartamidephenol)、またはポリエチレンオキシドポリリシン(パルミトイル残基で置換されている)が挙げられる。さらにまた、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーのクラス、例えばポリ乳酸、ポリイプシロン(polepsilon)カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリラートおよびヒドロゲルの架橋型または両親媒性ブロックコポリマーに該化合物をカップリングしてよい。
【0139】
経皮投与用に製造される医薬製剤は、レシピエントの表皮と密接に接触した状態を長期間保つための個別のパッチとして提供することができる。例えば、イオン泳動によって該パッチから有効成分を送達させてよい。それはPharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に全般的に記載されている。
【0140】
局所投与用に製造される医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤または油剤として製剤化することができる。
【0141】
眼または他の外側組織、例えば口腔および皮膚の治療に関して、局所軟膏剤またはクリーム剤として製剤を投与してよい。軟膏中に製剤化される場合、パラフィン系または水混和性軟膏基剤とともに該有効成分を使用する。あるいは、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を伴うクリーム中で該有効成分を製剤化してよい。
【0142】
眼に対する局所投与用に製造される医薬製剤には点眼剤が含まれ、その場合、好適な担体、特に水性溶媒に該有効成分が溶解または懸濁される。
【0143】
口腔での局所投与に合わせて製造される医薬製剤には、ロゼンジ剤、トローチ剤および口腔洗浄剤が含まれる。
【0144】
経直腸投与用に製造される医薬製剤は坐剤または浣腸剤として提供することができる。
【0145】
担体が固形である場合に鼻腔投与用に製造される医薬製剤には、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗末が含まれ、該粗末は、嗅薬が摂取される様式で、すなわち鼻に近接して保持される該粉末の容器から鼻腔を通過する高速吸入によって投与される。担体が液体である場合の鼻内スプレーまたは点鼻剤としての投与に好適な製剤としては、該有効成分の水性または油性溶液が挙げられる。
【0146】
吸入による投与用に製造される医薬製剤には微粒子ダストまたはミストが含まれ、それらは種々のタイプの定量式加圧エアロゾル、噴霧器または空気吸入器を用いて生成することができる。
【0147】
経膣投与用に製造される医薬製剤は、膣坐剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー製剤として提供することができる。
【0148】
非経口投与用に製造される医薬製剤としては、水性および非水性滅菌注射溶液剤(抗酸化剤、バッファー、静菌剤および、該製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有してよい);および水性および非水性滅菌懸濁液剤(懸濁化剤および増粘剤を含んでよい)が挙げられる。該製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中で提供することができ、使用直前に滅菌液状担体、例えば注射用の水を加えるだけでよい凍結乾燥(lyophilized)条件で保存してよい。滅菌粉末、顆粒および錠剤から即席注射溶液および懸濁液を製造してよい。
【0149】
上で具体的に記載される成分に加えて、該製剤は、対象となっている製剤のタイプを考慮して当技術分野において慣用の他の物質を含んでよく、例えば経口投与に好適な製剤には香味物質を含ませてよいことが理解されるべきであろう。
【0150】
本発明の医薬組成物の成分(a)についての治療上有効量はいくつかの要因に依存し、その要因には、非限定的に、哺乳動物の年齢および体重、治療を必要とする厳密な障害およびその重症度、製剤の性質、および投与経路が含まれ、最終的には、担当医師または獣医師の判断にしたがう。典型的に、本発明の医薬組成物の成分は、治療に関して、1日あたりレシピエント(哺乳動物)の体重1kgあたり0.1〜100mgの範囲で投与され、より一般的には、1日あたり体重1kgあたり1〜10mgの範囲で投与される。許容しうる1日量は、約0.1〜約1000mg/日、例えば約0.1〜約100mg/日であってよい。
【0151】
成分(b)の投与
本明細書中に記載の成分(b)についての投与の経路および頻度ならびに投与量は個体ごとに異なり、それは標準的技術を使用して容易に設定することができる。一般に、免疫原性組成物および/またはワクチンは、注射(例えば皮内、筋肉内、静脈内または皮下)によって、鼻腔内に(例えば吸引によって)、または経口で投与することができる。一実施形態では、52週間にわたって1〜10用量の範囲で投与する。1か月の間隔で6用量を投与してもよく、その後、定期的に追加免疫用ワクチン接種を行ってよい。代替のプロトコルは個別の患者に適切なものであってよい。好適な用量は、上記のように投与される場合に、抗腫瘍免疫応答を促進可能な化合物の量であり、それは基底(すなわち治療していない)レベルを少なくとも10〜50%上回る。ワクチンに関して、そのような応答は、患者中の抗腫瘍抗体を測定することによって、あるいは患者の腫瘍細胞をin vitroで死滅させることが可能な細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存的発生に基づいてモニターすることができる。そのようなワクチンは、ワクチン非接種患者と比較して、ワクチン接種患者において改善された臨床転帰(例えば、寛解がより起りやすい、完全なもしくは部分的なまたは長期の無疾患生存)をもたらす免疫応答を引き起こすことがさらに可能であろう。
【0152】
一般に、免疫原性組成物およびワクチンに関して、1用量中に存在する各免疫原の量は、宿主体重1kgあたり約1μg〜5mg、例えば100μg〜5mg、または例えば5μg〜250μgの範囲である。好適な用量サイズは患者のサイズにともなって変動するが、典型的には、約0.1mL〜約5mLの範囲である。
【0153】
一実施形態では、最初のまたは初期免疫化は、本明細書中に記載のHER−2/neu免疫原性組成物、例えば、少なくとも1つのECDおよび/またはICDまたはPDを例えば有するHER−2/neu融合タンパク質を用いて施され、以後の免疫化または追加免疫化がさらに施される。免疫化に好適なECD−ICDおよび/またはECD−PD融合タンパク質には、本明細書中に記載のものが含まれる。当業者には理解されるように、HER−2/neu免疫原性組成物が融合タンパク質である場合、本発明は、インタクトなHER−2/neu融合タンパク質ならびに該Her−2/neu融合タンパク質を複数のペプチドに分割したものの使用を意図する。
【0154】
一般に、適切な投与量および治療方式では、治療的および/または予防的利益を提供するために十分な量の活性化合物(群)が提供される。そのような応答は、治療していない患者と比較して、治療した患者において改善された臨床転帰(例えば、より頻繁な寛解、完全なもしくは部分的な、または長期の無疾患生存)が確立されることに基づいてモニターすることができる。HER−2/neuタンパク質または融合タンパク質に対する免疫応答の発生またはそれに対する既存の免疫応答の増加によっても、成分(b)の十分な量の使用が示されるであろう。既存の免疫応答の増加は臨床転帰の改善と相関するであろう。そのような免疫応答は、一般に、標準的な増殖アッセイ、細胞傷害性アッセイまたはサイトカインアッセイを使用して評価することができ、それは治療前後に患者から取得されたサンプルを使用して実施することができる。
【0155】
T細胞
本発明の成分(b)は、本明細書中に記載のポリペプチドもしくは融合タンパク質に特異的なT細胞を、さらに、または代替的に含んでよい。そのような細胞は、一般に、標準的手順を使用してin vitroまたはex vivoで調製してよい。例えば、市販の細胞分離系を使用して、患者の骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血のフラクションからT細胞を単離してよい(米国特許第5,240,856号および同第5,215,926号; WO89/06280; WO91/16116およびWO92/07243をさらに参照のこと)。あるいは、血縁関係があるか、もしくはないヒト、非ヒト哺乳動物、細胞株または培養からT細胞を取得してよい。
【0156】
ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび/または該ポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)でT細胞を刺激することができる。そのような刺激は、該融合ポリペプチドに特異的なT細胞の生成を可能にするために十分な条件下かつ時間で実施される。該ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、特異的なT細胞の生成を促進するために、送達ビヒクル、例えばミクロスフェア内で提供することができる。
【0157】
T細胞がHER−2/neu融合ポリペプチドに特異的であると見なされるのは、該T細胞が、該融合ポリペプチドでコーティングされた標的細胞または該融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する標的細胞を死滅させる場合である。T細胞の特異性は種々の標準的技術のいずれかを使用して評価することができる。例えば、クロム放出アッセイまたは増殖アッセイでは、溶解および/または増殖が陰性対照と比較して2倍以上に増大していることを示す刺激指数によってT細胞の特異性が示される。そのようなアッセイは、例えばChen et al. (1994) Cancer Res. 54:1065-1070に記載のように実施してよい。あるいは、種々の公知技術によってT細胞増殖の検出を達成することができる。例えば、DNA合成の割合の増加を測定することによって(例えばトリチウム化チミジンを用いてT細胞をパルス標識培養し、DNAに取り込まれたトリチウム化チミジンの量を測定することによって)、T細胞増殖を検出することができる。HER−2/neu融合ポリペプチド(100ng/mL〜100μg/mL、例えば200ng/mL〜25μg/mL)と3〜7日間接触させると、その結果、T細胞の増殖が少なくとも2倍増加するはずである。2〜3時間の上記接触の結果、T細胞が活性化されるはずであり、これは標準的サイトカインアッセイを使用して測定される。その場合、サイトカイン放出(例えばTNFまたはIFNγ)のレベルの2倍の増大がT細胞の活性化を示す(Coligan et al., Current Protocols in Immunology, vol. 1, Wiley Interscience (Greene 1998)を参照のこと)。HER−2/neu融合ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは融合ポリペプチド発現APCに応答して活性化されたT細胞は、CD4+および/またはCD8+であってよい。標準的技術を使用してHER−2/neu特異的T細胞を増殖させることができる。いくつかの実施形態では、T細胞は患者から取得されるか、あるいは血縁関係があるかまたはないドナーから取得され、刺激および増殖後に該患者に投与される。
【0158】
治療目的では、HER−2/neuポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはAPCに応答して増殖するCD4+T細胞またはCD8+T細胞の数をin vitroまたはin vivoで増大させることができる。そのようなT細胞のin vitroでの増殖は種々の様式で達成することができる。例えば、T細胞をHER−2/neuポリペプチドに再曝露することができ、その場合、T細胞成長因子、例えばインターロイキン−2、および/または、HER−2/neuポリペプチドを合成する刺激細胞(stimulator cell)を加えるか、あるいは加えない。あるいは、HER−2/neuタンパク質の存在下で増殖する1種以上のT細胞の数をクローニングによって増大させることができる。細胞をクローニングするための方法は当技術分野において周知であり、それには限界希釈が含まれる。増殖後、例えばChang et al. (1996) Crit. Rev. Oncol. Hematol. 22:213に記載のように、該細胞を該患者に投与して戻してよい。
【0159】
樹状細胞
本発明の成分(b)は、本明細書中に記載のポリペプチドまたは融合タンパク質に特異的な樹状細胞(DC)を、さらに、あるいは代替的に含んでよい。そのような細胞は、一般に、標準的手順を使用してin vitroまたはex vivoで調製することができる。使用することができる方法の例はWO01/74855に記載されている。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0160】
一実施形態では、本発明の方法および使用における哺乳動物はヒトである。
【0161】
成分(a)の製造方法の例
式(I)の化合物の遊離塩基、HCl塩、およびジトシラート塩は、以下の文献の手順にしたがって、ならびに以下に列挙される適切な実施例にしたがって調製することができる:1999年1月8日に出願され、1999年7月15日にWO99/35146として公開された上記参照の国際特許出願第PCT/EP99/00048号および2001年6月28日に出願され、2002年1月10日にWO02/02552として公開された国際特許出願第PCT/US01/20706号。式(I)の化合物のジトシラート塩を調製するための該手順の1つを以下のスキーム1に提供する。
【0162】
スキーム1
【化6】

【0163】
スキーム1では、式(III)の化合物のジトシラート塩の調製は4ステージで進行する:ステージ1:上記の二環式化合物およびアミンを反応させて、上記のヨウ化キナゾリン誘導体を得るステージ;ステージ2:対応するアルデヒド塩を調製するステージ;ステージ3:キナゾリンジトシラート塩を調製するステージ;およびステージ4:一水和物のジトシラート塩を調製するステージ。
【0164】
成分(b)の融合タンパク質についての製造方法の例はWO00/44899(US2002/0177567)に記載されている。
【0165】
本発明の方法、使用、配合物および組成物は、癌、例えば乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌または前立腺癌に罹患している患者に対する投与に有用であろう。一実施形態では、癌はerbB2過剰発現癌、例えばerbB2過剰発現乳癌である。本明細書中で使用される「癌を治療する」とは、被験体が治癒することを必要としない。当業者には明らかであるように、癌が治療される場合の臨床転帰の成功には、生存期間の延長、疾患進行までの期間延長、部分的応答、ならびに癌の寛解が含まれる。
【0166】
バイオマーカーとしてのSurvivinの使用
本明細書中で提供される結果は、併用療法(二重EGFR/erbB2インヒビター、例えばラパチニブおよびワクチン誘発抗Her−2/neu抗体を使用)後の、erbB2過剰発現癌細胞における腫瘍細胞のアポトーシスの増加が、MAPK−Erk1/2またはPI3K−Akt経路のダウンレギュレーションよりもSurvivinタンパク質のダウンレギュレーションに密接に関連していたことを示す。この結果は、該併用療法の使用および該併用療法の効力に関するバイオマーカーとしてのSurvivinレベルの使用に関する生物学的な理論的根拠を提供する。
【0167】
Survivinはアポトーシスファミリーのタンパク質のインヒビター(IAP)のメンバーである。Survivinタンパク質の発現は、ラパチニブ単独で処理されたBT474細胞において阻害され(図12A、下段);対照的に、pAbまたはトラスツズマブはSurvivinに対してほとんど効果を有しなかった(図12A、下段)。ラパチニブとpAbまたはトラスツズマブを併用すると、BT474細胞において高い程度(図12A、下段)にSurvivinが阻害された。同様に、ラパチニブ単独と比較して、併用のラパチニブおよびpAbまたはトラスツズマブで処理されたBT474細胞においてアポトーシスが増加した(図12A、上段)。本明細書中で提供される、SKBR3細胞を使用した結果では、BT474細胞においてよりは低い程度にではあるが、併用療法後のSurvivinの阻害とアポトーシスの増加の間の同様の関連性が示される(図16および図17)。
【0168】
ゆえに、本結果は、ラパチニブおよび抗ErbB2抗体の組み合わせに応答するSurvivinのダウンレギュレーションが(pErk1/2またはpAktのダウンレギュレーションと比較して)アポトーシスの増加と相関していることを示す。本実施例では、Survivinタンパク質が最も阻害された処理条件(pAbまたはトラスツズマブと併用のラパチニブ)で顕著な腫瘍細胞のアポトーシスが生じた。
【0169】
ゆえに、本発明の別の実施形態は、二重EGFR/erbB2キナーゼインヒビター、例えば本明細書中に記載の成分(a)の化合物での癌の治療におけるバイオマーカーとしてのSurvivinの使用に関する。
【0170】
二重EGFR/erbB2チロシンキナーゼインヒビターでの治療に応答する腫瘍組織における種々の具体的なタンパク質のレベルの変化は、患者の腫瘍が該治療に応答しているかどうかを評価する際に有用であると示唆されている。例えばWO2005/017493;WO2004/000094を参照のこと。本結果は、erbB2過剰発現腫瘍細胞または組織におけるSurvivinレベルを使用して、該腫瘍を有する患者が、本明細書中に記載の二重EGFR/erbB2チロシンキナーゼインヒビターでの治療または本明細書中に記載の成分(a)および(b)の組み合わせでの治療に好都合に反応する可能性を予測することができることを示す。初期の治療後に腫瘍細胞が低下レベル(治療前レベルと比較して低下している)のSurvivinを有する被験体は、初期の治療後に腫瘍細胞中に不変または増加レベルのSurvivinを有する被験体より、該治療に対して好都合な臨床応答を有する可能性が高い。対照的に、初期の治療後に不変または増加レベルのSurvivinを有する被験体は好都合な臨床応答を有する可能性が低く、代替の治療から恩恵を受けるかもしれない。
【0171】
Survivinは、当技術分野において公知であるように任意の好適な手段によって測定してよい。本明細書中で使用される被験体または患者とは、erbB2を過剰発現する固形腫瘍を患う哺乳動物を表し、それにはヒトが含まれる。本明細書中で使用される、治療に対する「好都合な臨床応答」とは、いかなる治療も存在しない条件下で生じる腫瘍成長と比較して、腫瘍成長の割合の低下を示すことが当業者によって認識される生物学的または身体的応答を表し;それは治癒を示すことを意図するものではない。治療前の生物学的に関連する期間内にSurvivinの治療前レベルが評価される。それは、好ましくは治療前の1か月、2週間、10日、または1週間以内である。初期治療期間が経過した後、該腫瘍組織におけるSurvivinレベルが再評価される。
【実施例】
【0172】
以後、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
【0173】
実施例1
導入
以下の実施例によって示されるように、組換えdHER2タンパク質を用いて動物にワクチン接種すると、該HER2/neu分子に特異的なポリクローナル抗体応答が誘発された。
【0174】
本明細書中に記載の実験では、in vitroモデルにおいて該ポリクローナル抗体がHER2過剰発現細胞の増殖を阻害することが示されている。
【0175】
本明細書中で提供される実施例では、HER2/neu分子を過剰発現しているヒト乳癌細胞(BT474およびSKBR3)に対する、HER2/neu分子およびEGFR分子の両者に特異的なチロシンキナーゼインヒビターであるラパチニブとの併用での、前記ワクチンによって生成された抗HER2ポリクローナル抗体(pAb)の抗増殖性効果を評価した。
【0176】
実施例2
方法および材料
HER2/neuタンパク質をコードする発現プラスミドの構築
組換えHer2/neu糖タンパク質を産生する安定なCHO−K1細胞株が樹立されている。該タンパク質は細胞培養培地中に分泌され、次いで、該培地からそれを精製する。
【0177】
簡潔に言えば、乳房腫瘍サンプルから調製されたmRNAから出発して、HER2/neu分子の細胞外ドメイン(ECD:AA1−653)に相当するcDNAおよび細胞内ドメイン(ICD:AA991−1255)のリン酸化領域(PD)に相当するcDNAをRT−PCR(Clontech)によって増幅した。次いで該2種のcDNAをpcDNA3.1ハイグロマイシンベクター中にライゲーションしてクローニングし、HindII−XbaI制限断片(2782bp長)をCHO K1グルタミンシンターゼ発現ベクター(pEE14 I Celltech)中にクローニングした。このプラスミドをpEE14−ECD−PD#13と称し、またはpRIT15050と称し、従来のCaPO共沈法を使用したCHO−K1細胞(Lonza's MCB 024M由来)の安定なトランスフェクションに使用した。グルタミンを含まず、5%ウシ胎児血清(New Zealand)、グルタミン酸、アスパラギン、ヌクレオシドおよび30μM MSX(選択的試薬として)を添加したGMEM(Glasgow最少イーグル培地)中で、トランスフェクトしたクローンを選択した。1クローン(#13002)をその発現レベルに基づいて選択した。組換え発現タンパク質は、トランケート型のHER2/neu増殖因子受容体であり、それは細胞外ドメイン(ECD)および細胞内ドメイン(ICD)のC末端リン酸化部分(PD)の融合物からなり、該受容体の膜貫通部分およびホスホキナーゼ部分は排除されている。この組換えdHER2タンパク質はCHOK1細胞から効率的に分泌され、それを細胞培養上清から精製する。
【0178】
実施例3
HER2/neuタンパク質の精製(dHER2)
該培養回収物をアニオン交換Q Sepharose FFカラム(Amersham)でのクロマトグラフィーによる分離に付した。該カラムは150mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含有する20mMビス−トリスプロパンバッファーpH6.5中で平衡化した。同平衡化バッファー中のNaClの濃度を増加させることによって該カラムから抗原を溶出させた。リン酸を加えた後、抗原陽性の溶出物を2連続のアフィニティーカラムに通した。該カラムは、40mMリン酸バッファーpH7.0中で平衡化された1本のMacro-Prep Ceramic Hydroxyapatite type I カラム(Bio-Rad)、それに続く、10mMリン酸バッファーpH7.0で平衡化された1本のBlue Trisacryl plus LS カラム(Biosepra)であった。硫酸アンモニウム(AMS)を加え、pHを調整(7.0)した後、該抗原を含有するBlue Trisacrylフロースルーを、1.2M AMSを含有する10mMリン酸バッファーpH7.0中で平衡化された疎水性Ether Toyopearl 650 M カラム(TosoHaas)に注入した。同リン酸バッファー中のAMSの濃度を低下させることによって該カラムから抗原を溶出させた。抗原陽性の溶出物を濃縮し、次いでBiomax 10 kDaメンブレン(Millipore)で5mMリン酸最終バッファーpH7.0に対してダイアフィルトレーションした。限外濾過の残留物をナノフィルトレーションステップ(Planova 15 Nメンブレン, Asahi)に付し、次いで得られた透過物を0.22μm Duraporeメンブレン(Millipore)に通して滅菌濾過した。精製済み材料を−20℃で保存した。
【0179】
実施例4
ワクチンまたは免疫原性組成物
本実施例で使用される免疫原性組成物は、500μg CpGオリゴヌクレオチド2006(ODN 7909としても知られる)(Coley Pharmaceutical)と混合された50μg 3D−MPL(Corixa, Seattle, WA, USA)、50μg QS21(Antigenics, New York, NY, USA)のリポソーム製剤を含むGSK Bioの専売アジュバント系を用いて、即席で、あるいは注射の前日に製剤化したECD−PD(Her−2/neuの「欠失」構築物、または「dHER2」として知られる)タンパク質を含むものであった。
【0180】
実施例5
細胞株および試薬
BT474およびSKBR3細胞をAmerican Type Culture Collection(Manassas, VA, USA)から入手し、10%ウシ胎児血清を添加したDMEM中で培養した。
【0181】
抗ヒトSurvivin抗体はRD System(Minneapolis, MN, USA)から入手した。抗マウスIgGはRockland(Gilbertsville, PA, USA)から入手した。ホスホチロシンおよびアクチンに対する抗体はSigma-Aldrich(St Louis, MO, USA)から購入した。抗ErbB1(Ab-12)および抗ErbB2(Ab-11)抗体はNeo Markers(Union City, CA, USA)から入手した。抗ホスホAKT(Ser 437)はCell Signaling Technology, Inc.(Beverly, MA, USA)から入手した。抗Akt1/2、抗ホスホErk1/2、抗Erk1および抗Erk2抗体はSanta Cruz Biotechnology, Inc.(Santa Cruz, CA USA)から購入した。トラスツズマブはGenentech Inc.(South San Francisco, CA, USA)から購入した。Guava PCA 96 NesinキットはGuava Technologies Inc.(Hayward, CA, USA)から購入した。SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity SubstrateはPierce(Rockford, IL, USA)から入手した。プロテインGアガロースはBoehringer Mannheim(Germany)から購入した。GW572016(ラパチニブ)は、報告されているように合成した(Cockerill et al.,Bioorg Med. Chem. Lett, 11:1401-1405 (2001))。細胞培養実験用のラパチニブはDMSOに溶解させた(Xia et al., Oncogene 21:6255-63 (2002))。
【0182】
実施例6
動物
アジュバント中のdHER2タンパク質を用いてワクチン接種されたメスのニュージーランド系統白色ウサギを、in vitro増殖阻害実験用の血清の供給源として使用した。簡潔に言えば、実施例4に記載のようにリポソームアジュバント系中に製剤化された100μgのdHER2タンパク質を用いて、3週間間隔で該ウサギの筋肉内にワクチン接種した。161日目に追加免疫注射を行い、14日後に血清を採取した。プロテインAセファロースで血清のIgGフラクションを精製し、10mg/mLに濃縮した。
【0183】
ErbB1およびErbB3と比べてのErbB2に関するpAbの選択性を、BT474細胞における免疫沈降およびウエスタンブロット解析によって実証した(データは示していない)。トラスツズマブ等のモノクローナル抗体と比較して、ポリクローナル抗体は、標的免疫原の複数のエピトープに対する結合親和性のスペクトルによって特徴付けられる。
【0184】
実施例7
アポトーシスの評価:アネキシンV染色およびフローサイトメトリー
アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用して評価される対象の細胞を、6ウェルプレート中で、図12A、図12C、図15Aおよび図16の説明に記載された濃度のDMSO、ラパチニブ、pAb、あらかじめ免疫化されたウサギ由来の血清(本明細書中で「pABプレ免疫」またはTA2021と称される)、トラスツズマブ、および/またはゲフィチニブで処理した。トリプシン−EDTAを用いて細胞を回収した後、50μL中の5000細胞を96ウェルマイクロプレート上にサンプリングした。該マイクロプレート中で、200μLの最終反応容量中の1×ネキシンバッファー中のアネキシンV−PEおよびネキシン7−AADを用いて、該細胞を直接的に染色した。室温で20分間インキュベートした後、該反応サンプルはGuava PCA-96システム(Guava Technology, Inc., Hayward, CA USA)においてデータ取得できるものとなった。
【0185】
7−AADは、後期アポトーシスにおいて細胞膜が崩壊した後に細胞の核物質に結合する。アネキシンV染色では、細胞膜の完全性の喪失に先行する初期のアポトーシス変化が示される。ゆえに7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD)と併用のアネキシンVの使用により、初期および後期のアポトーシス細胞の両者を特定することができる。
【0186】
フローサイトメトリーの結果をドットプロットの結果(データは示していない)としてグラフで示した。その場合、アネキシンVをX軸にとり、7−AADをY軸にとった。低アネキシンVおよび低7−AADは生存細胞を表し;低アネキシンVおよび高7−AADは核の細片を示し;高アネキシンV染色を伴う細胞はアポトーシス細胞を示した。図12A、図12C、図15A、および図16において提供されるグラフは、細胞全体と比較したアポトーシス細胞(高アネキシンV)のパーセンテージを示す。
【0187】
実施例8
細胞のタンパク質レベル:SDS−PAGEおよびウエスタンブロット解析
細胞中の種々のタンパク質のレベルを評価するために、細胞をペトリ皿からかき取り、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で該細胞ペレットを2回洗浄し、次いで2倍の細胞容量(two-packed-cell volumes)のRIPAバッファー(150mM NaCl、50mM トリス−HCl、pH7.5、0.25%(w/v)デオキシコール酸、1% NP−40、5mMオルトバナジウム酸ナトリウム、2mMフッ化ナトリウム、およびプロテアーゼインヒビターカクテル)に該ペレットを再懸濁することによって、全細胞抽出物を調製した。Bradford法の変法(Bio-Rad Laboratory)を使用してタンパク質濃度を測定した。該細胞ライセートを遠心分離によって清澄化し;3μgの抗ErbB1(Ab-13, NeoMarkers)、抗ErbB2(Ab-11, NeoMarkers)、抗ErbB3(C-17, Santa Cruz Biotechnology)抗体、または5μgのpAbおよび20μLのプロテインA+Gセファロースを用いて、200μgの該ライセートからErbB1、ErbB2およびErbB3を別々に免疫沈降した。4〜15%勾配のSDS−ポリアクリルアミドアガロースゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって該免疫沈降物を分離し、抗ErbB受容体抗体を用いたウエスタンブロットによってErbB受容体を検出した。
【0188】
Survivin、トータルErbB2、リン酸化ErbB2(pErbB2またはpTyr)、トータルErk1/2、活性化型Erk1/2(p−Erk)、トータルpErbB3、活性化型pErbB3(pErbB3)、トータルAKTタンパク質および活性化型Akt(p−Akt)タンパク質の定常状態レベルをウエスタンブロットによって評価した。複数のチロシンがリン酸化された型のErbB2に結合する抗体(すなわち該抗体はリン酸化部位特異的でない)を使用してpErbB2のレベルを評価した。アクチン定常状態タンパク質レベルは、等しいタンパク質ロード量に関する対照として用いた。
【0189】
ウエスタンブロットでは、7.5%または4〜15%勾配のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって還元条件下で等量のタンパク質を分離させた。タンパク質をImmobilon-Pまたはニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。効率およびタンパク質の等しいロード量をポンソーS染色によって評価した。4%(w/v)低脂肪乳または3% BSA(w/v)を含有するTBS(25mMトリス−HCl、pH7.4、150mM NaCl、2.7mM KCl)中で1時間、メンブレンをブロッキングした。次いで、標的タンパク質を認識する特異的抗体を用いてメンブレンをプローブし、SuperSignal West Femto Maximum 感度基質キット(Pierce)またはOdyssey Infrared Imaging System(LI-COR, Lincoln, NE USA)を用いてそれを可視化した。
【0190】
実施例9
in vitro成長阻害アッセイ(抗増殖)
ラパチニブとの併用でのワクチン誘発抗HER2ポリクローナル抗体(pAb)の抗増殖性効果を、[H]チミジン取り込み法を使用して、該HER2/neu分子を過剰発現しているヒト乳癌細胞(BT474およびSKBR3細胞)で評価した。簡潔に言えば、96ウェルプレートにおいて、200μL中に10e4細胞を3通りで播種し、以下の培地中で37℃で72時間インキュベートした:
1)培地;
2)ラパチニブ単独(0.01μM)を含有する培地;
3)pAb単独(50μg/mL)を含有する培地;
4)プレ免疫pAb(TA2021)(50μg/mL)を含有する培地;
5)(2)ラパチニブ(0.01μM)および(3)pAb(50μg/mL)の組み合わせ;または
6)(2)ラパチニブ(0.01μM)および(4)プレ免疫pAb(TA2021)(50μg/mL)の組み合わせ。
【0191】
次の24時間、1μCiの[H]チミジン(5Ci/mmol; Amersham)を加え、その後、トリプシン処理によってフィルタープレート上に細胞を回収し、取り込まれた放射能をβ線カウンター(beta counter)でカウントした。結果をcpmで表し、該培地に関して増殖阻害のパーセンテージを算出した。
【0192】
ラパチニブおよびpAbの両者に関して用量範囲曲線を作成した(データは示していない)。考えられる相加効果または相乗効果を調べることができるように、10〜30%の増殖阻害しか誘発しない各成分の最適以下の用量を選択した。
【0193】
非ワクチン接種ウサギから精製されたIgG(pAb pre−imm)を前記アッセイの陰性対照として使用した。
【0194】
本実験を独立して少なくとも3回実施し、代表的な1回の実験の3通りのウェルに関するデータをまとめて、図11Aおよび図11Bに提供する。
【0195】
実施例10
結果:抗増殖効果
強力なアジュバント中に製剤化された組換えdHER2タンパク質を用いてウサギにワクチン接種すると、HER2/neu分子に特異的なポリクローナル抗体応答が誘発された。
【0196】
HER2/neu分子を過剰発現しているヒト乳癌細胞(BT474およびSKBR3)に対する、HER2/neu分子およびEGFR分子の両者に特異的なチロシンキナーゼインヒビターであるラパチニブとの併用での、前記抗HER2ポリクローナル抗体(pAb)の抗増殖性効果を評価した。データを図11Aおよび図11Bに示す。
【0197】
実施例11
結果(アポトーシスおよびタンパク質レベル)
図12A、図12C、図12D、図13、図14、図15A、図15B、図15C、図16および図17に示されるすべての結果は少なくとも3回の独立の実験を代表するものである。
【0198】
図12A、BおよびCに見られるように、ラパチニブおよびワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)は協働してErbB2(HER−2/neu)過剰発現BT474細胞のアポトーシスを誘発する。
【0199】
図12Aは、指数増殖中のBT474を以下のもので処理した場合の結果を示す:(i)DMSO単独(ラパチニブに関する陰性対照)、(ii)ラパチニブ(0.1μM)、(iii)pAb(100μg/mL)、(iv)ラパチニブおよびpAb、(v)TA2021(100μg/mL)、(vi)ラパチニブおよびTA2021、(vii)トラスツズマブ(10μg/mL)、または(viii)ラパチニブおよびトラスツズマブ。72時間後、アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用してアポトーシスを評価した。72時間後、ウエスタンブロットを使用して、活性化型ホスホErbB2(p−ErbB2)、トータルErbB2、およびSurvivinの定常状態タンパク質レベルをさらに評価した(図12A、下段パネル)。アクチン定常状態タンパク質レベルは、等しいタンパク質ロード量に関する対照として用いた。ビヒクル(DMSO)またはTA2021で処理されたBT474細胞は、それぞれラパチニブおよびpAbに関する対照として用いた。
【0200】
図12Bは、位相差顕微鏡検査を使用して、BT474細胞増殖に対する種々の処理条件の効果(72時間後)を示す。処理条件には、図12Aに関して記載される条件、およびそれに加えて、ゲフィチニブ(イレッサ)(0.1μM);ゲフィチニブ(0.1μM)およびpAB(100μg/mL);ゲフィチニブ(0.1μM)とTA2021(100μg/mL);およびゲフィチニブ0.1μMとトラスツズマブ(10μg/mL)が含まれた。
【0201】
図12Cは、アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用して、BT474細胞のアポトーシスに対する、単独またはラパチニブ(100nM)との併用での漸増濃度のpAbの効果を示す。
【0202】
図12Dは、単独またはラパチニブ(100nM)との併用での漸増量のpAbという条件で処理された細胞における、トータルErbB2およびp−ErbB2の定常状態タンパク質レベルを示す。そのレベルはウエスタンブロットによって評価されたものである。アクチンの定常状態タンパク質レベルは、等しいタンパク質ロード量に関する対照として用いた。
【0203】
図13は、Erk1/2およびAktの活性化状態がラパチニブおよびワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)に応答してモジュレートされることを示す。指数増殖中のBT474細胞を、記載の処理条件下で72時間培養した。トータルErk1/2、活性化型ホスホErk1/2、トータルAkt、および活性化型ホスホAktの定常状態タンパク質レベルをウエスタンブロットによって評価した。ビヒクル(DMSO)またはTA2021単独で処理された細胞は対照として用いた。
【0204】
図14は、ErbB3の活性化状態に対する、ラパチニブおよびワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)の効果を示す。BT474細胞を図中に示された種々の処理条件下で培養した。72時間後、細胞ライセートを回収し、トータルErbB3および活性化型ホスホErbB3の定常状態タンパク質レベルをウエスタンブロットによって評価した。
【0205】
図15は、ワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)と協働してBT474細胞のアポトーシスを誘発し、かつSurvivinをモジュレートするその能力に関する、ラパチニブとゲフィチニブとの間の差異を示す。ゲフィチニブ(イレッサまたはzd1839)はEGFRタンパク質チロシンキナーゼのインヒビターである。
【0206】
図15Aは、図中に示された処理条件下で72時間培養された、指数増殖期のBT474細胞を使用した結果を示す。アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用してアポトーシスを評価した。
【0207】
図15Bは、図中に示された処理条件下で培養されたBT474細胞における、72時間後の、トータルErbB2、p−ErbB2、およびSurvivinの定常状態タンパク質レベルのウエスタンブロット解析の結果を示す。
【0208】
図15Cは、BT474細胞における、トータルErk1/2、p−Erk1/2、トータルAkt、およびp−Aktの定常状態タンパク質レベルに対する、図中に示された処理条件の効果を示す。その効果は、処理の72時間後にウエスタンブロットによって評価されたものである。
【0209】
図16は、SKBR3細胞に対する図中に示された処理条件の効果を示す。72時間後、アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用してアポトーシスを評価した。
【0210】
図17は、SKBR3細胞でのSurvivinに対する図中に示された処理条件の処理72時間後の効果を示す。
【0211】
図18は、図中に示されたSkbR3細胞のpTyr/ErbB12および下流バイオマーカーに対する、ラパチニブおよび抗Her−2/neu抗体の効果を示す。
【0212】
上で記載した図において示されるように、ラパチニブ、pAb、またはトラスツズマブでの単独療法としての処理は、対照(DMSO、TA2021)と比較してアポトーシスのわずかな増加しか生じなかった(図12A上段パネル)。ラパチニブをpAbまたはトラスツズマブと組み合わせると、いずれの単独処理と比較しても腫瘍細胞のアポトーシスが増加した(図12A、上段パネル)。単独でpAbの濃度を増加させても、アポトーシスに対してほとんど影響はなかった(図12C)。固定濃度のラパチニブと組み合わせると、pAbの濃度を増加させることによってB474細胞のアポトーシスが増加した(図12C)。同様に、ラパチニブをpAbと組み合わせると、別のErbB2過剰発現乳癌細胞株であるSKBR3細胞でもアポトーシスが増加したが、BT474細胞において観察される程度よりは低い程度であった(図16)。
【0213】
上で記載した図において同様に示されるように、活性化型のリン酸化ErbB2タンパク質(pErbB2)の定常状態レベルがラパチニブ単独によって阻害され、トータルErbB2タンパク質には影響しなかった(図12A、下段パネル)。ラパチニブは、また、pErk1/2およびpAktの定常状態レベルを低下させた(図13)。対照的に、pAbはトータルErbB2タンパク質を顕著に阻害し、リン酸化(活性化型)ErbB2には影響しなかった(図12A、下段パネル)。ホスホErk1/2およびpAktもまた、pAbによって顕著に阻害された(図13)。本研究では、トラスツズマブは、pAbと比較して、トータルErbB2に対する低い効果しか有さなかったが、pErbB2をわずかに阻害した(図12A、下段パネル)。さらに、pErk1/2およびpAktもまた、トラスツズマブによって阻害されたが、pAbを用いて観察された阻害より低い程度であった(図13)。ラパチニブをpAbと組み合わせると、ラパチニブ単独と比較してpErbB2がさらに阻害された(図12A、下段パネル)。ラパチニブとトラスツズマブの組み合わせは、pErbB2の定常状態タンパク質レベルを完全に阻害し(図12A、下段パネル)、さらにpErk1/2およびpAktを阻害した。pAbの濃度を20から100〜200μg/mLに増加させても、トータルErbB2タンパク質の阻害は増加しなかったが、pErbB2の阻害は、特に高濃度のpAbでは増加した。
【0214】
結論
図11AおよびBで示されるように、それぞれ50μg/mLのワクチン誘発抗HER2/neuポリクローナル血清および0.01μMのラパチニブを使用しても、両細胞株に対する中程度の増殖阻害しか観察されなかった。
【0215】
ワクチン誘発抗HER2/neu抗体(pAb)とラパチニブとを組み合わせると、単一薬剤での処理より顕著な増殖阻害がみられた。この組み合わせは、BT474およびSKBR3 Her2/neu過剰発現細胞株の両者に対する相乗的な(相加的を超える)増殖阻害効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1−1】ヒトHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図1−2】ヒトHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図1−3】ヒトHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図2−1】ラットHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号13)を示す。キナーゼドメインはアミノ酸721〜アミノ酸998の領域(両端を含む)にわたる。
【図2−2】ラットHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号13)を示す。キナーゼドメインはアミノ酸721〜アミノ酸998の領域(両端を含む)にわたる。
【図2−3】ラットHER−2/neuタンパク質の完全長アミノ酸配列(配列番号13)を示す。キナーゼドメインはアミノ酸721〜アミノ酸998の領域(両端を含む)にわたる。
【図3−1】細胞外HER−2/neuタンパク質のアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
【図3−2】細胞外HER−2/neuタンパク質のアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
【図4】ヒトHER−2/neuタンパク質のリン酸化ドメイン(PD)のアミノ酸配列(配列番号15)を示す。
【図5】ヒトHER−2/neuタンパク質のリン酸化ドメインの部分(ΔPD)のアミノ酸配列の例(配列番号16)を示す。
【図6−1】ヒトHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)およびリン酸化ドメイン(PD)を含む融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号17)を示す。
【図6−2】ヒトHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)およびリン酸化ドメイン(PD)を含む融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号17)を示す。
【図7−1】ヒトHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)およびリン酸化ドメインの代表的な部分(ΔPD)を含む融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号18)を示す。
【図7−2】ヒトHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)およびリン酸化ドメインの代表的な部分(ΔPD)を含む融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号18)を示す。
【図8−1】ラットHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)のアミノ酸配列(配列番号19)を示す。
【図8−2】ラットHER−2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)のアミノ酸配列(配列番号19)を示す。
【図9】ヒトHER−2/neuタンパク質をコードするDNA分子の完全長ヌクレオチド配列(配列番号20)を示す。
【図10】ラットHER−2/neuタンパク質をコードするDNA分子の完全長ヌクレオチド配列(配列番号21)を示す。
【図11A】BT474ヒト乳癌細胞の増殖に対する、ラパチニブ(Lapatinib)と併用の抗HER2/neuポリクローナル抗体の抗増殖効果を示す。
【図11B】SKBR3ヒト乳癌細胞の増殖に対する、ラパチニブと併用の抗HER2/neuポリクローナル抗体の抗増殖効果を示す。
【図12A】上段パネルは、指数増殖中のBT474細胞をラパチニブ等で処理した結果を示す。下段パネルは、72時間後に、ウエスタンブロットを使用して、活性化型ホスホErbB2(p−ErbB2)、トータルErbB2、およびSurvivinの定常状態タンパク質レベルをさらに評価した結果を示す。
【図12B】位相差顕微鏡検査を使用して、BT474細胞増殖に対する図中に示された処理条件の効果(72時間後)を示す。
【図12C】アネキシンV染色およびフローサイトメトリーを使用して、BT474細胞のアポトーシスに対する、単独またはラパチニブ(100nM)との併用での漸増濃度のpAbの効果を示す。
【図12D】単独またはラパチニブ(100nM)との併用での漸増量のpAbに応答する、トータルErbB2およびp−ErbB2の定常状態タンパク質レベルを示す。
【図12E】図12Aと同様の結果を示す。
【図13】Erk1/2およびAktの活性化状態がラパチニブおよびワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)に応答してモジュレートされることを示す。
【図14】ErbB3の活性化状態に対する、ラパチニブおよびワクチン誘発抗HER−2/neu抗体(pAb)の効果を示す。
【図15A】BT474細胞のアポトーシスに対する、図中に示された処理条件の効果を示す。
【図15B】指定処理条件下で培養されたBT474細胞における、72時間後の、トータルErbB2、p−ErbB2、およびSurvivinの定常状態タンパク質レベルのウエスタンブロット解析を示す。
【図15C】トータルErk1/2、p−Erk1/2、トータルAkt、およびp−Aktの定常状態タンパク質レベルに対する、図中に示された処理条件の効果を示す。
【図16】SKBR3細胞をラパチニブ等で処理した場合のアポトーシス効果を示す。
【図17】SKBR3細胞をラパチニブ等で72時間処理した場合の、Survivinタンパク質に対する効果を示す。
【図18】図中に示されたSkbR3細胞のpTyr/ErbB12および下流バイオマーカーに対する、ラパチニブおよび抗Her−2/neu抗体の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において癌を治療する方法であって、
(a)式I、II、IIIもしくはIVの化合物、および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体であって、RがClまたはBrであり;XがCH、NまたはCFであり;かつHetがチアゾールまたはフランであるもの;ならびに
(b)HER−2/neuタンパク質に由来する少なくとも1つのエピトープを含む単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる免疫原性組成物
を治療上有効量で該哺乳動物に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項2】
がClであり;XがCHであり;かつHetがフランである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がBrであり;XがCHであり;かつHetがフランである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
がClであり;XがCHであり;かつHetがチアゾールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
成分(a)が式IIの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
成分(a)と成分(b)とを同時に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
成分(a)と成分(b)とを逐次的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
以下のもの:
(a)式I、II、IIIもしくはIVの化合物、および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体であって、RがClまたはBrであり;XがCH、NまたはCFであり;かつHetがチアゾールまたはフランであるもの;ならびに
(b)HER−2/neuタンパク質に由来する少なくとも1つのエピトープを含んでなる単離されたタンパク質、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる免疫原性組成物
を治療上有効量で含んでなる、医薬配合物。
【請求項9】
請求項8に記載の配合物を含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
治療での使用のための、請求項8に記載の医薬配合物または請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
癌の治療のための医薬の製造における、請求項8に記載の医薬配合物または請求項9に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
個体での癌の治療のための医薬の製造における、式I、II、IIIもしくはIVの化合物、および/またはその塩、溶媒和物もしくは生理的に機能しうる誘導体を治療上有効量で含んでなる医薬配合物の使用であって、該個体はHER−2/neuタンパク質に由来する少なくとも1つのエピトープ、または当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる免疫原性組成物の投与を受けた個体である、上記使用。
【請求項13】
前記免疫原性組成物が、HER−2/neu細胞外ドメインとそれに融合したHER−2/neuリン酸化ドメインとを含む融合タンパク質を含んでなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項14】
前記免疫原性組成物が、HER−2/neu細胞外ドメインとそれに融合したHER−2/neu細胞内ドメインとを含む融合タンパク質を含んでなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項15】
前記免疫原性組成物がアジュバントを含んでなる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項16】
前記アジュバントが、コレステロール;水中油型エマルジョン;低量水中油型エマルジョン;トコフェロール;リポソーム;サポニン;3D−MPL、および免疫刺激性オリゴヌクレオチドのうち1以上を含んでなる、請求項15に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項17】
前記アジュバントが、サポニンと、免疫刺激性オリゴヌクレオチドとを含んでなる、請求項16に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項18】
リポ多糖をさらに含んでなる、請求項16に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項19】
前記サポニンがQS21である、請求項17または18に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項20】
前記リポ多糖が、
(i)モノホスホリル脂質A
(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A
(iii)ジホスホリル脂質A
からなる群より選択される、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法、配合物、組成物または使用。
【請求項21】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが少なくとも2つのCpGモチーフを含有する、請求項17〜20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、以下のもの:

からなる群より選択される、請求項17〜21のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記サポニンが、ISCOMまたはリポソームを形成するように製剤化されている、請求項17〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記サポニンが、水中油型エマルジョン中に存在している、請求項17〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1つのエピトープがHER−2/neuタンパク質の細胞外領域に由来するものである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法、配合物、組成物または使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−523017(P2008−523017A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544843(P2007−544843)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013409
【国際公開番号】WO2006/061253
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】