説明

発光機能付き畳

【課題】心をリラックスさせるような柔らかい光を発する発光機能付き畳を提供する。
【解決手段】畳床の上面全体を覆うように透光性の畳表を取り付け、かつ畳床の内部に光源を内蔵した発光機能付き畳において、畳床2は、踏み板としての強度を有する頂板12と頂板とほぼ同形の底板4との各外周部を枠体6で連結し、かつ、頂板12下面と底板4上面と枠体6の内周面とで形成する空間内に光源14を設置してなり、 畳表20は、表面を光学的粗面とする非透過性の第1の緯22と透光性の第2の緯24とを緯材として、緯同士が相互に密接するように経糸で製織してなり、さらに上記光源14の上方に遮光部10を設け、光源14から斜めに当たった光の少なくとも一部が第2の緯24を透過して第1の緯22の表面に当たって散乱するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光機能付き畳に関する。
【背景技術】
【0002】
畳は、元来、経緯の一方にい草とし、他方に糸として製織した畳表と、稲わらを交互に重ねて圧縮して畳糸で縫い付けた畳床とからなるが、天然のい草は、断面ハチの巣状の構造を有し、吸湿性が高い、二酸化炭素などを吸着する、い草の香りが心をリラックスさせる作用を有するとされている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、近年、生活に役立つ特別な機能を付加するために、畳の素材の全部又は一部を人工物に置き換えた畳が提案されている。例えば天然い草に比べて品質・価格が安定しており、耐久性・対候性に優る合成樹脂製の模造い草を用いることもある(特許文献1)。また、畳床としてクッション性に優れた畳ボードを用いることもある(特許文献2)。畳そのものではないが、ベットに用いる畳マットレスであって、枠体の内部に縦横のダンボール製の仕切り板を設け、仕切り板で区画する空間内に木炭を挿入して、消臭機能を持たせたものもある(特許文献3)。畳床に熱媒体を通すためのガイド溝を形成した冷暖房用畳も知られている(特許文献4)。
【0004】
こうした物質的な快適性の他に、精神面での安らぎ、癒しの効果を探求して、本出願人は、畳の表面又は内部に光源を有し、発光するようにした畳を提案した(特許文献5)。
【特許文献1】特開平11-350711
【特許文献2】特開平05−287885
【特許文献3】特開平11−076002
【特許文献4】特開平10−292605
【特許文献5】特開2007−309071
【特許文献6】特開2005−201002
【非特許文献1】「畳屋さんドットコム」 検索日平成19年12月11日 1198148590631_0.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献5の発光機能付き畳は、光のデザインによる見た目の面白さ、光による癒しやリラックス効果を狙った斬新な畳である。例えば朝日を見て心地良さを感じることは誰でも経験することであろう。しかしながら、光によるリラックス効果は人間の体内時計と密接な関係がある。朝日は日中の太陽光よりは柔らかく、夜と昼との間の早朝の時間帯にみれば心地よいのであるが、仮に夜間に朝日と同程度の光量・強度の照明を用いるとすれば、就寝に向かって休もうとしている身体を活性化してしまう。単に光量を減らすには例えば電球への供給電力を調整すればよいが、それだけでは心をリラックスさせるようなぼんやりと柔らかな光は得られない。そうした柔らかな光源を如何に畳の構造に組み込むのかということが問題となっていた。
【0006】
間接照明では例えば壁に設置したランプのうち部屋内方側を遮光板で覆い、ランプの光を壁に照射させて、その反射光を明かりとするということが行われているが、その手法を畳にそのまま取り入れるのは無理である。畳の表面に光を当てると言っても畳の上には人が座ったりするのだから、人に光が当たってしまう。
【0007】
この他に発光性能を備えた畳として、畳表に蛍光剤を含有させた少なくとも一本のい草を織り込んだものがあるが(特許文献6)、これは業者が自社の真性品と競業者の類似品とを見分けるマークとして用いるものであり、光による癒しの効果を目的とするものではない。
【0008】
本発明の第1の目的は、人の心をリラックスさせるような柔らかい光を発する発光機能付き畳を提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、畳という伝統的な敷物に、光によるデザインという新しい機能を取り込み、見た目に美しく楽しい発光機能付き畳を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の手段は、
畳床の上面全体を覆うように透光性の畳表を取り付け、かつ畳床の内部に光源を内蔵した発光機能付き畳において、
畳床2は、踏み板としての強度を有する頂板12と頂板とほぼ同形の底板4との各外周部を枠体6で連結し、かつ、頂板12下面と底板4上面と枠体6の内周面とで形成する空間内に光源14を設置してなり、
畳表20は、表面を光学的粗面とする非透過性の第1の緯22と透光性の第2の緯24とを緯材として、緯同士が相互に密接するように経糸で製織してなり、
さらに上記光源14の上方に遮光部10を設け、
光源14から斜めに当たった光の少なくとも一部が第2の緯24を透過して第1の緯22の表面に当たって散乱するようにしている。
【0011】
本手段は、畳表を構成する経(たて材)・緯(よこ材)のうち、緯材の一部を透光材料で形成して光を透過させるとともに、残りの非透光性の緯が光を散乱するようにしたものである。単に光を透過するだけであれば全ての緯材を透光性にすればよいが、それでは畳の上に電球を置いたのと同じことであり、透過光が目に入ると刺激が強すぎる。光源から畳表に入射した光の少なくとも一部が非透過性の緯材の側面に散乱することで、ぼんやりと柔らかな光を発生する間接照明の効果が得られる。尚、本発明の畳は、和室に敷くための普通の畳としてだけでなく、置き畳みとしても使用できる。
【0012】
「畳床」は、頂板と底板と枠体とで形成される中空台状の箱体であり、その内部に光源を有する。後述の図示例では、枠体の内周面に光源を設けているが、設置箇所は任意であり、例えば底板中心に光源を配置してもよい。頂板と底板との間には後述の支持手段を介在させるとよい。また頂板と底板とのうち何れか一方は光源の交換やメンテナンスのため枠体に対して着脱自在に設けるとよい。
【0013】
「光源」は、発光手段として機能すればよく、電球、蛍光灯などでもよいが、安全性とエネルギーの効率性を考えると、発光ダイオード(LED)が望ましい。発熱を伴う光源であると、畳表が熱せられ、座り心地が悪くなる可能性があるからである。
【0014】
「畳表」は、非透光性の第1の緯に、透光性の第2の緯を混入させ、光学的には縦格子状の構造を有する。第1の緯と第2の緯との混入割合は、用途によって適宜変更することができるが、好適な一例として、1対1とすることができる。この場合には、第1の緯と第2の緯とを交互に配置することが望ましい。畳表と畳床との間にはクッション層を敷設してもよい。
【0015】
「遮光部」は、光が畳表を垂直に透過しないように光源の真上に設ける。光が畳表を垂直に透過すると、斜めに透過する場合に比べて第1の緯により散乱される光の割合が低下するとともに、光源の形が畳表を透けて見えて体裁が悪いからである。後述の図示例では、枠体そのものを遮光部としているが、光源を底板の中央側に設置するときには、枠体とは別に光源の上方の適所(例えば頂板の表面)に遮光部を設けてもよい。
【0016】
「第1の緯」は、非透光性であって、表面を光学的粗面として、光を散乱する性能を有する。この性質により、光源からの光線を柔らかな散乱光として周囲に反射する。「光学的な粗面」とは、本明細書において、い草などの植物素材の表面の如く適当に光を散乱(又は拡散)して反射する面という程度の意味である。第1の緯は、い草などの天然素材で形成することができるが、合成樹脂で形成してもよい。
【0017】
「第2の緯」は、畳表に並設された、スリット状の光の通り道である。暗い場所で発光中の本発明の畳を見ると、光量にもよるが、少なくとも畳表に一部に暗い縞(第1の緯)に対して明るい縞(第2の緯)が浮かび上がるようにすることができ(図7参照)、美しい「光る畳」のデザインが出来上がる。単に薄箱状の発光体というと、例えば薄箱型の照明カバーに蛍光灯を入れた天井用の照明などがあり、照明器具の意匠としてはありふれている。本発明では、畳表にい草状の縞が現れるようにすることで、畳のような伝統的な敷物に近代的な光る機能を組み込み、斬新な意匠を提供することができる。第2の緯は、ポリプロピレンなどの合成樹脂材、或いは紙を主成分とする材料で形成することができる。
【0018】
尚、前述の遮光部とは別に、畳表又は畳表下方の適所に、光源からの光の少なくとも一部(光量の一部又は一部の波長帯の光)を遮る模様部を設け、畳表に光が浮かび上がるようにしてもよい。
【0019】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記畳表20と光源14との間に散光材28を介在させ、光源14から発する全ての光が一旦散乱された後に、畳表20に入射するようにしている。
【0020】
非透光性の第1の緯に透光性の第2の緯を混入してなる畳表に斜めに光を照射する前述の構成によれば、散乱光の割合を多くすることができるが、看る角度によっては光源から第2の緯を透過した直進光が目に入ってしまい、まぶしさを感じる可能性がある。そこで本手段では、畳表と光源との間に散光材を介入させ、どの方向から見ても柔らかな光となるようにしている。
【0021】
「散光材」は、畳表の下方に敷設する層状のものでもよい。例えば前述の畳表の頂板を散光材とすることもできるも、別個に散光材を設けてもよい。
【0022】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
上記枠体6の内周面に、少なくとも枠体の上部分を遮光部10として残して、内方開口の内溝8を形成し、
この内溝8内に点列状又は線状の光源14を設置している。
【0023】
本手段では、枠体の内周面の内溝に光源を組み込むことで、光源から畳表下面へ斜めに光を照射する構造を実現するとともに、内溝上方の枠体部分を遮光部としている。暗い枠体(遮光部)に明るく輝く畳表が映えて美しいデザインを作り上げることができる。明色の畳表と暗色の畳縁という畳本来の意匠を活かして前述の「光る畳」のデザインの演出を強化することができる。枠体が縦横4辺から成る方形の場合、その横方向(第1、第2の緯の延びる方向)の辺の内面に設置すると、第1の緯の側面からの反射量を大きくとることができる。
【0024】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ
外周部を除く頂板12部分及び底板4部分の間に支持手段18を挟持させるとともに、この支持手段18を透光性材料で形成している。
【0025】
本手段では、頂板と底板の間に支持手段を介在させることで支持力を向上させるとともに、支持手段を透明にすることで畳表に影を作らないようにしている。これにより本発明本来の光る畳のデザインを活かすことができる。
【0026】
「支持手段」は、柱状のものとして底板の各所に配置するとよい。また支持手段の上面に、上述の如く光の一部を遮る模様部を設けてもよい。
【0027】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかを有し、かつ
少なくとも上記底板4の上面を、反射率の高い明色面又は鏡面としている。
【0028】
前述の如く畳表の下面に斜めから光を照射する構造であると、光源から近いところと遠いところで明度の相違が大きくなる、底板に照射した光が吸収されてしまうと光エネルギーが無駄になる、という問題点がある。本手段では、光源からの光を底板上面で反射して畳表の下面に照射することで、エネルギー効率を高めるとともに、光源に近いところから遠いところへ光量が減衰する度合いを弱める働きをする。なお、畳表の底板上面だけでなく枠体の内周面も反射率の高い明色面又は鏡面とすることができる。
【0029】
第6の手段は、第1の手段から第5の手段のいずれかを有し、かつ
第1の緯22として、天然い草のような植物素材を使用している。
【0030】
本手段では、天然い草などの植物素材を畳表に用いることを提案しており、草などの植物の香りや色合いによって人の気持ちをリラックスさせることができる。植物素材としては、日本で一般的に使用されるい草の他に、莞草(日本名カンエンガヤツリ)などであってもよい。後者は、い草によく似た1年草であって、外国でござ製品の材料などとして用いられるものである。この明細書では、天然い草又はこれに類似した性質の植物をい草類と呼ぶ。なお、第1の緯にい草類等の植物素材を使用する場合には、第2の緯を、第1の緯の植物素材より硬く耐久性に優る素材で形成するとともに、第2の緯の径を第1の緯の径より大きくするとよい。このようにすることで畳表の耐久性を向上することができる。
【0031】
第7の手段は、第1の手段から第6の手段のいずれかを有し、かつ
上記光源14として、白色系の光源と、暖色系の光源とを備え、一日のうち或る時間帯には白色系の光源を、別の時間帯には暖色系の光源を発光することができるようにオンオフの切替を行う機構を設けている。
【0032】
人間の体調と光とは密接な関係があり、朝は自然光のような白い光、夕方はオレンジ色等の暖かい光が好ましいとされている。こうした光のサイクルとかけ離れた環境で生活をしていると、人はイライラしたり、気持ちがせっかちになる傾向がある。本手段では、時間に応じて白色光・暖色光の2種類の光源を使い分けることが可能な機構を設けることを提案する。使い分けの機構としては、時間帯に応じて自動的にオンオフを切り替える制御部を用いることが望ましいが、手動で切り替えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0033】
第1の手段に係る発明によれば次の効果を奏する。
○足元の、畳表からの低い位置のあかりであるので、落ち着きや安らぎを与える。
○光源14から真上に照射する光を遮光部10で遮るとともに、光源から斜めに進む光が第1の緯の表面に当たって散乱されるようにしたから、柔らかな優しい光を実現することができ、居住者の心を癒す快適な居住空間を実現できる。
○非透光性の第1の緯と透光性の第2の緯とを組み合わせ、光量次第で畳表にい草状の暗縞が浮かび上がるようにしたから、美しい「光る畳」の意匠を演出できる。
【0034】
第2の手段によれば、光源14からの光が全て散乱され、直射光が目に入ることはないので、さらに柔らかな光を提供できる。
【0035】
第3の手段に係る発明によれば、光源14を枠体6の内周面に組み込んだから、畳の縁が暗く、縁の内側が明るくなり、既存の畳のイメージを残しながら斬新なデザインを提供することができる。
【0036】
第4の手段に係る発明によれば、支持手段18を透光性材料で形成したから、この支持柱のうち光源14の反対側に影ができることがない。
【0037】
第5の手段に係る発明によれば、底板4の上面を、反射率の高い明色面又は鏡面としたから、畳表20からの光量を増加することができる。
【0038】
第6の手段に係る発明によれば、天然い草などの植物素材を畳表に用いることで、植物の香りや色合いによって人の気持ちをリラックスさせ、光の癒し効果と相まって快適性が高まる。
【0039】
第7の手段に係る発明によれば、発光色の切替を可能としたから、体内時計と関連付けて健康によい調光を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1から図9は、本発明の実施形態に係る発光機能付き畳を示す。この畳は、畳床2と畳表20とからなる。
【0041】
畳表2は、底板4と、枠体6と、頂板12と、光源14と、制御部16と、支持手段18とを有する。
【0042】
上記底板4は、矩形(図示例では正方形)の板材である。底板の上面は、反射率の高い明色、例えば白色となっている。
【0043】
上記枠体6は、上記底板4の上面周縁部に接着されている。枠体の対向する2辺の内面には、各辺の長手方向全長に亘って光源収納用の内溝8を横設する。図示の内溝は図3に示す如く、内方に開口する断面凹状のものであり、枠体の上下方向中間部に形成されている。枠体6は非透光性の材料で形成され、内溝上方の枠体部分は遮光部10としての機能を有する。内溝8の設置箇所であるが、後述の図7の如く隣り合う2辺に設けてもよく、また1辺のみに設けてもよく、4辺全てに設けてもよい。また内溝8は各辺の一部(例えば長手方向中間部)にのみ形成してもよい。
【0044】
上記頂板12は、その頂板外周部を上記枠体6の上面に着脱自在に取り付けており、透光性の材料で形成している。この頂板12は、人の体重を支えられるように十分強度のある素材、例えばポリカーボネートで形成する。
【0045】
上記光源14は、上記内溝8内に収納されている。図示の光源は、直列に接続されたLEDとしている。これらの光源14は、枠体6内周面から内方へ拡散光を放射するように配置されている。図面では、作図の都合上でLEDの数を少なくしているが、現実には、より多数のLEDを僅かな隙間を存して配置するとよい。またこれら一連のLEDを相互に連結した発光部材としておくと取り扱いに便利である。
【0046】
上記制御部16は、図示しない外部電源に接続されており、上記光源14に対するオンオフ、光量の制御などを行う。最も枠体内に電源を内蔵させてもよい。光の色の調整も行うことができるが、これについては実施例の欄で述べる。
【0047】
上記支持手段18は、底板4と頂板12との間に挟み込こまれた柱状の部材として形成している。支持手段の下面は底板4に接合しておくとよい。この支持手段は、透明材料で形成され、図1に想像線で示す如く光源からの光を遮って影を作ることがないように形成している。支持手段は、ポリカーボネートで形成するとよい。
【0048】
図面では省略しているが、上記畳床2の外面の適所を抉って、上記制御部16へ給電するための電線挿入用の空所を形成するとよい。好適な一例として、畳床の側面と底面との間の角部を面取りし、或いは抉り取って、二つの畳を隣接させたときに、各畳の空所が合わさって成る凹溝に電線を配線するとよい。この電線は枠体の適所を貫いて制御部16へ到達するようにするとよい。
【0049】
畳表20は、図4に示すように第1の緯22と第2の緯24とを経糸で製織してなる。製織の仕方は普通の畳と同じでよい。第1の緯22は、天然のい草であり、入射光を反射することが可能な粗面を外周面としている。天然のい草は淡い緑色であり、入射した光を適度に拡散反射するので、素材として良好である。もっともい草でなくても、適当な反射率を有し、光を散乱・拡散する素材であればよい。第2の緯24は、例えばポリプロピレンなどの透明材料で形成することができる。第1の緯22と第2の緯24とを交互に設けている。第1、第2の緯は内溝を設置した辺の方向に配向している。
【0050】
上記構成において、図示しないスイッチをオンにして、光源14に電流を供給すると、図4に示す如く光源からの光の一部は第2の緯24を通って直進するが、他の一部は、この第2の緯24の隣りの第1の緯22の側面に当り、さまざまな方向に散乱する。これにより柔らかい光が畳表20上方へ放出される。また光源14から底板4の上面に照射された光は、底板4上面で乱反射され、畳表20のさまざまな方向に向かう。これにより、畳表20のうち光源14から距離のある場所にも光が分配される。
【0051】
以下、本発明の実施例について解説する。これらの解説において、第1の実施形態と同じ構成については説明を省略する。
[実施例1]
図6は、第1の実施例を示している。この例では、畳表20と頂板12との間にクッション層を兼ねた散光材28を敷設したものである。この散光材は、乳白色の透光板とすることができる。この構成とすることで、散光材に入射した光は図示のように散乱する。従って光源14から散光材へ浅い傾斜で光が入射したときでも、光の一部は上方へ向かう。従って畳表のうち光源から距離のある場所にも光が分配される。散乱材28から出た光の一部は更に第1の緯22の表面で散乱する。上記散光材はクッションの他に防水シートを兼ねるものとしてもよい。この場合には、防水シート兼散光材を、図2に示す畳表と同様に、頂板の縁を超えて畳床の側面へ延長するとよい。
【0052】
図7は、本実施例のうち、枠体の隣り合う2辺に光源を配置したタイプのものを試作し、発光させた状態をスケッチしたものである。第1の緯22のある場所は暗い横縞Sが、第2の緯24がある場所には明るい横縞Sがそれぞれ表われる。またこれらとの直交方向には経糸による縦縞Sが表われる。明るい縞Sが暗い縞Sより巾広なのは、第1の緯の表面のうち側面部分が光を反射するからである。枠体に近い場所では縞が薄くなっているのは、光源に近い場所では発光量が多いからである。第1の緯22の表面に光が当たって散乱するため、図7のように畳の枠体の外側から畳表を見たときでも十分に明るく感じられる。さらに畳表の下に散光材28を敷設することで第1、第2の緯の走向方向にも散乱光が照射される。
[実施例2]
図8は、畳表の実施例であり、第1の緯22をい草などの植物素材で、第2の緯24を合成樹脂などの耐久性のある素材で形成するとともに、第1の緯22に比べて第2の緯24の径を大きくしたものである。これにより、畳表20を足で踏んだときでも第1の緯22が摩擦や圧縮により劣化することを抑制することができる。これにより畳表の寿命を長くすることができる。
[実施例3]
図9は、支持手段18の実施例であり、ダンボールに類似した波形の芯材を含むものである。即ち、この支持手段は横板18aと縦板18bと波形の芯材18cを含んでいる。芯材18cは、横板18a及び縦板18bよりやや薄いが、これがあることで縦板の座屈や傾斜を防いでおり、軽量ながら強い支持力を発揮する。この支持手段は、ポリカーボネートで形成することができる。
[実施例4]
図10は、支持手段18の他の実施例である。この支持手段は、透明な支持柱の上面に、不透明な模様部30を設けたものである。光源から光を照射すると、模様部30に対応した影が畳表に浮かび上がるようにしている。模様部30は、完全に光を遮断しなくてもよく、周囲よりやや暗くなるもの、特定の色調の色を通過させるものであってもよい。模様部は例えば頂板や畳表そのものに形成してもよいのであるが、図示例では、支持柱の上面に設けることで模様の位置やパターンの変更を可能としている。図示例と異なり、複数の支持柱の上面の模様部をピースとして、これらを組み合わせて模様のパターンを作るようにしてもよい。支持柱は図示のような多角柱としているが、円柱などでもよい。
【0053】
[実施例5]
図1の畳の構成のうち、枠体の4辺に内溝を設け、向かい合う1対の辺の内溝に白色系の光源(LEDなど)を、他の1対の辺の内溝にオレンジなど暖色系の光源(LEDなど)をそれぞれ配置する。各種の光源群をそれぞれ制御部16に接続し、朝方の時間帯には白色系光源が、夕方又は夜間の時間帯には暖色系光源がそれぞれ発光するように制御部16で時間制御を行う。制御部は例えばマイクロコンピュータで形成することができる。白色系LEDと暖色系LEDとの配置は自由である。例えば4辺全てに白色系LEDと暖色系LEDとを互い違いに配置し、前者のみ、或いは後者のみ発光することができるように配線してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光機能付き畳の平面図である。
【図2】図1の畳のII−II方向縦断面図である。
【図3】図1の畳のIII−III方向部分縦断面図である。
【図4】図1の畳の要部拡大断面図である。
【図5】図1の畳の作用説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る発光機能付き畳の要部拡大縦断面図である。
【図7】図6の畳の変形例の発光状態を示す図である。
【図8】本発明に係る発光機能付き畳の畳表の実施例を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係る発光機能付き畳の支持手段の実施例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る発光機能付き畳の支持手段の他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
2…畳床 4…底板 6…枠体 8…内溝 10…遮光部 12…頂板
14…光源 16…制御部
18…支持手段 18a…横板 18b…縦板 18c…芯材
20…畳表 22…第1の緯 24…第2の緯 28…散光材
30…模様部
…暗い横縞 S…明るい横縞 S…縦縞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳床の上面全体を覆うように透光性の畳表を取り付け、かつ畳床の内部に光源を内蔵した発光機能付き畳において、
畳床2は、踏み板としての強度を有する頂板12と頂板とほぼ同形の底板4との各外周部を枠体6で連結し、かつ、頂板12下面と底板4上面と枠体6の内周面とで形成する空間内に光源14を設置してなり、
畳表20は、表面を光学的粗面とする非透過性の第1の緯22と透光性の第2の緯24とを緯材として、緯同士が相互に密接するように経糸で製織してなり、
さらに上記光源14の上方に遮光部10を設け、
光源14から斜めに当たった光の少なくとも一部が第2の緯24を透過して第1の緯22の表面に当たって散乱するようにしたことを特徴とする、発光機能付き畳。
【請求項2】
上記畳表20と光源14との間に散光材28を介在させ、光源14から発する全ての光が一旦散乱された後に、畳表20に入射するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の発光機能付き畳。
【請求項3】
上記枠体6の内周面に、少なくとも枠体の上部分を遮光部10として残して、内方開口の内溝8を形成し、
この内溝8内に点列状又は線状の光源14を設置したことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の発光機能付き畳。
【請求項4】
外周部を除く頂板12部分及び底板4部分の間に支持手段18を挟持させるとともに、この支持手段18を透光性材料で形成したことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れかに記載の発光機能付き畳。
【請求項5】
少なくとも上記底板4の上面を、反射率の高い明色面又は鏡面としたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の発光機能付き畳。
【請求項6】
第1の緯22として、天然い草のような植物素材を使用したことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発光機能付き畳。
【請求項7】
上記光源14として、白色系の光源と、暖色系の光源とを備え、一日のうち或る時間帯には白色系の光源を、別の時間帯には暖色系の光源を発光することができるようにオンオフの切替を行う機構を設けたことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発光機能付き畳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−150132(P2009−150132A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329388(P2007−329388)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(506202630)
【Fターム(参考)】