説明

発光装置の製造方法において反射性トリガ電極膜を形成する工程

【課題】小型化が図られると共に光の利用効率が改善された発光装置を実現する。
【解決手段】本発明では、トリガ電極として、放電管(1)のガラスバルブ(2)の外周面上に反射性の導電性材料膜(5)を形成する。反射性トリガ電極膜は細条状の光放出開口(6)を有し、光放出開口を介して照明光を外部に放出する。発光作用により発生した照明光は、光放出開口を介して直接外部に放出されると共に、反射性トリガ電極膜を介して多重反射して外部に放出される。反射性トリガ電極膜による多重反射作用及び細条状の光放出開口の発散光抑制効果により光利用効率の高い発光装置が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光を放出する発光装置(ストロボ装置)の製造方法における反射性トリガ電極膜を形成する工程に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチールカメラや携帯電話等の各種撮像装置が実用化されている。これら撮像装置には、ストロボ装置が搭載され、暗視野状態においても鮮明な画像が撮像されている。ストロボ装置として、放電管と反射鏡を用いたストロボ装置が既知である(例えば、特許文献1参照)。この既知のストロボ装置では、反射鏡の内部空間内に放電管を装着し、放電管から直接被写体に向けて投射すると共に反射鏡で反射した照明光を被写体に向けて投射している。このような反射鏡を利用したストロボ装置では、放電管から出射した照明光を効率よく被写体に入射させるため、反射鏡の先端(ひさしの部分)を光出射側に突出させ、反射鏡の集光作用が利用されている。
【0003】
迷光の発生を抑制したストロボ装置も既知である(例えば、特許文献2参照)。このストロボ装置では、反射鏡の内部空間内に発光管を配置し、反射鏡の最奥部に導光手段を配置し、発光管から後方に出射した照明光を導光手段を利用して前方に戻すように構成されている。
【特許文献1】特開2006−107803公報
【特許文献2】特許第3824311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載のストロボ装置では、放電管から出射した照明光を効率よく被写体に向けて投射するため、反射鏡が用いられている。そして、反射鏡の先端(ひさしの部分)を光出射方向に突出させることにより、放電管から出射した照明光の発散が防止されている。反射鏡による発散防止効果は、反射鏡のひさしの部分を長くするほど照明に寄与しない発散光が減少し、発散性が抑制される。しかしながら、反射鏡の先端を突出させるほど反射鏡が大型化してしまい、小型カメラに搭載することが困難になる不具合が生じてしまう。これに対して、反射鏡を小型にすれば、携帯電話や小型カメラに搭載することが可能になる。しかし、照明光に対する発散防止効果が低下し、照明に寄与しない発散光が増大し、光利用効率が低下する不具合が発生する。このように、反射鏡を利用した発光装置は、光の利用効率の観点及び小型化の観点において改善する必要性が認められる。
【0005】
本発明の目的は、小型化が図られると共に光の利用効率が改善された発光装置を実現することにある。
本発明の別の目的は、反射鏡を用いることなく、照明に寄与しない発散光の発生が抑制された発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるキセノン管に反射性トリガ電極膜を形成する工程は、発光装置製造方法の一工程である。
製造対象の発光装置は、照明光を放出するキセノン管と、トリガ電圧及び発光電圧を発生する電源回路と、電源回路で発生したトリガ電圧をキセノン管に印加するための接続端子部材とを具え、前記キセノン管は、キセノンガスが封入されている細管状のガラスバルブと、ガラスバルブの両端にそれぞれ設けた主電極と、反射性の導電膜により構成され、ガラスバルブの外周面上に形成した反射性トリガ電極膜とを有し、前記反射性トリガ電極膜は、ガラスバルブの中心軸線と平行に延在する細条状の光放出開口であって、ガラスバルブの中心軸線の周りで円周方向に沿って100°以下の角度範囲に設定される光放出開口を有し、前記細条状の光放出開口を介して照明光を放出することを特徴とする発光装置である。
本発明による発光装置は、照明光を放出する放電管と、トリガ電圧及び発光電圧を発生する電源回路と、電源回路で発生したトリガパルスを放電管に印加するための接続端子部材とを具え、前記放電管は、希ガスが封入されている細管状のガラスバルブと、ガラスバルブの両端にそれぞれ設けた主電極と、反射性の導電膜により構成され、ガラスバルブの外周面上に当該外周面のほぼ全周を覆うように形成した反射性トリガ電極膜とを有し、前記反射性トリガ電極膜は、ガラスバルブの中心軸線と平行に延在する細条状の光放出開口を有し、前記細条状の光放出開口を介してほぼ線状の照明光を放出することを特徴とする。
【0007】
本発明では、照明光を放出する放電管として、ガラスバルブの外周面のほぼ全周を覆うように形成した反射性トリガ電極膜を有する放電管を用いる。キセノン管等の各種放電管には、放電を励起させるためのトリガ電極が用いられている。従来の放電管においては、トリガ電極は、ガラスバルブの外周面に形成した透明な導電性膜により構成され又は反射鏡がトリガ電極を兼用するように構成されている。これに対して、本発明では、トリガ電極膜は、透明材料ではなく、光学的に反射性の反射性導電膜を用い、ガラスバルブの外周面上に反射性トリガ電極膜を形成する。ガラスバルブの外周面上に、照明光を取り出すための光放出開口を有する反射性トリガ電極膜を形成すれば、トリガ電極膜自身が励起用の電極として作用すると共に反射鏡としても機能するため、反射鏡を用いることなく、発光により発生したほぼ全ての照明光を光放出開口を介して被写体方向に投射することが可能になる。この結果、小型な発光装置(ストロボ装置)が実現される。
【0008】
トリガ電極にトリガパルスが供給されて放電が発生すると、ランプの全周方向に向けて照明光が発生する。従って、光放出開口とは反対側に向けて発光した光は、放電管の内部で多重反射し、最終的に光放出開口を介して外部に出射する。従って、発光光のほぼ全てを光放出開口を介して外部に放出させることができる。さらに、光放出開口の開口角度は、外部に出射する照明光の発散方向を規制する作用を果たすので、スリット状光放出開口の開口角を適切に設定することにより、放電管から発散光として出射し被写体の照明に寄与しない照明光の割合を大幅に低減することが可能である。従って、反射性トリガ電極膜による多重反射作用及びスリット状開口の発散光抑制効果により、光利用効率が相当改善される。さらに、従来のストロボ装置では、反射鏡がトリガ電極を兼用する場合或いはトリガ電極膜が局所的に形成されている場合がある。このような場合、放電管の内部では局所的な放電が発生するため、発光効率及び放電の安定性の観点より好ましくないものである。これに対して、本発明では、外周面のほぼ全周を覆うように反射性トリガ電極膜が形成されているので、放電管全体について均一な放電が行われ、上述した不具合は発生しない。
【0009】
本発明による発光装置の好適実施例は、反射性トリガ電極膜に設けた光放出開口は、ガラスバルブの中心軸線の周りで円周方向に沿って100°以下の角度範囲に設定されることを特徴とする。本発明者が、スリット状光放出開口の開口角を変えたキセノン管を試作して比光量を測定したところ、中心軸線のまわりでの開口角が100°付近を境にして比光量が急激に増大することが判明した。従って、スリット状光放出開口の角度は、100°以下の角度範囲に設定することが望ましい。
【0010】
本発明による発光装置の別の好適実施例は、接続端子は、弾性を有する金属部材により構成され、一端が電源回路のトリガコイルに接続され、他端はガラスバルブの曲率半径にほぼ等しい曲率半径の湾曲面を有し、当該湾曲面がガラスバルブの外周面に形成された反射性トリガ電極膜と面接触するように構成したことを特徴とする。本発明による放電管の外周面には、反射性トリガ電極膜が形成されているため、接続端子を放電管の外周面と直接面接触させることが可能である。
【0011】
本発明による放電管は、希ガスが封入されている細管状のガラスバルブと、ガラスバルブの一端に設けたカソード電極及び他端に設けたアノード電極と、反射性の導電性膜により構成され、ガラスバルブの外周面のほぼ全周を覆うように形成した反射性トリガ電極膜とを有し、
前記反射性トリガ電極膜は、ガラスバルブの中心軸線に平行に延在する細条状の光放出開口を有し、
前記細条状の光放出開口を介して線状の照明光を放出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、細条状の光放出開口が形成される部分を除き、放電管の外周面のほぼ全周を覆うように反射性トリガ電極膜が形成されているので、反射性トリガ電極膜による多重反射作用及び細条状の光放出開口の発散光抑制効果により光利用効率の高い発光装置が実現される。しかも、反射鏡が不要になるため、小型の発光装置が実現される。さらに、光利用効率が改善されるので、放電管の寿命も改善される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明による発光装置に用いられる放電管の一例を示す図であり、図1(A)は斜視図、図1(B)は中心軸線と直交する面で切って示す断面図である。本例では、放電管1としてキセノン管を用いる。放電管1は、キセノンガスが封入されている細管状のガラスバルブ2を有する。ガラスバルブ2の一端にアノード電極3を封止し、他端にはカソード電極4を封止する。ガラスバルブ2の外周面上にトリガ電極膜5を直接形成する。トリガ電極膜5は、ガラスバルブの主電極が封止されている両端部分及び光放出開口6が形成されるエリアを除き、ほぼ全周を覆うように形成する。トリガ電極膜は、例えば銀のような高反射性の金属材料で構成することができる。銀の反射率は約97%程度であり、高反射性の導電性トリガ電極膜が形成される。尚、銀膜の形成方法として、例えばペースト状の銀をガラスバルブの外周面に塗布することにより形成することができる。また、銀以外の別の反射性の導電性材料膜をトリガ電極膜として利用することも可能である。
【0014】
反射性のトリガ電極膜5は、ガラスバルブの中心軸線Oと平行に延在する細条状の光放出開口6を有する。この光放出開口6は、多重反射した照明光を取り出すためのものであり、反射性トリガ電極膜が形成されていない領域である。従って、放電管1が発光すると、光放出開口6を介して照明光が放出される。反射性のトリガ電極膜に形成した光放出開口6は、ガラスバルブ2の一端側から他端側まで延在する細条状の開口であるから、放電管が発光するとほぼ線状の照明光が放出される。
【0015】
図1(B)及び(C)は、中心軸線Oと直交する面で切った断面図であり、発光した照明光の伝搬状態を示す。放電により発生する照明光は種々の方向に伝搬する。スリット状の光放出開口6に向けて発光した照明光は、そのまま光放出開口を介して外部に出射する。一方、図1(C)に示すように、光放出開口6と反対側に向けて発光した光は、反射性トリガ電極膜5で反射し、多重反射を繰り返し、最終的に光放出開口6を介して外部に向けて出射する。同様に、斜め前方に向けて発光した光は、反射性トリガ電極膜で多重反射し、最終的に光放出開口6から出射する。従って、放電により発生した大部分の照明光が光放出開口から外部に向けて出射するため、光利用効率が相当改善されることになる。
【0016】
光放出開口6の開口角は、発散光の量を規制する意義を有し、開口角が大きいほど発散光の光量が増大し、被写体の照明に寄与しない照明光が増大してしまう。一方、携帯電話等の小型撮像装置では、照明エリアは比較的小さいため、光放出開口の開口角θは、比較的小さく設定することができ、例えば撮像装置の撮像視野の画角を考慮して、放電管の中心軸線Oの周りで100°以下の角度範囲に設定することが望ましく、例えば60°の角度に設定することができる。
【0017】
図2は、放電管1の支持方法を示す図であり、図2(A)は線図的斜視図、図2(B)は放電管の中心軸線と直交する面で切って示す断面図である。放電管1は、接続端子部材10により支持する。接続端子部材10は、例えば燐青銅のような弾性金材料により構成され、半円形の把持部10aと、取付け部10bとを有する。把持部10aは、保持すべき放電管1のガラスバルブの曲率半径とほぼ等しい曲率半径を有する半円形をなし、把持部10aに放電管1を嵌め込むことにより放電管を保持する。従って、把持部10aとトリガ電極膜とは面接触することになる。取付け部10bはネジ等の締結部材11によりベース部材12上に固定する。尚、リード線13の一端を接続端子部材10に接続し、その他端はトリガコイル(図示せず)に接続する。本発明による放電管は、外周面に反射性トリガ電極膜が形成されているため、光放出開口が形成されている側とは反対側には種々の部材を連結することが可能である。そこで、本例では、接続端子部材10を用いて放電管1を支持すると共に、接続端子部材を介してトリガ電極膜にトリガパルスを供給する。
【0018】
図3は、本発明による発光装置に用いられる電源回路の一例を示す回路図である。放電管1のアノード電極とカソード電極との間に電源20を接続する。トリガコイル21は、入力側コイル21aと出力側コイル21bとを有する。出力側コイル21bの出力端子は接続端子部材10を介してトリガ電極膜5に接続し、放電管1のトリガ電極にトリガ電圧パルスを供給する。トリガコイルの入力側コイルの一端は、スイッチ22を介してコンデンサ23の一端に接続し、入力側コイルの他端はコンデンサ23の他端に接続する。コンデンサ23と抵抗24とのRC回路を電源20に接続する。放電管1のアノード電極とカソード電極との間300V程度の発光電圧を印加し、トリガ電極に4000〜6000Vのトリガ電圧パルスを印加すると、放電管の絶縁が破壊され、コンデンサ23に蓄積された電荷が流れ、発光が生じ照明光が放射される。
【0019】
図4は、本発明による発光装置の変形例を示す図である。本例では、光放出開口6の前面に1対の画角調整用の反射板30a及び30bを配置する。本発明による発光装置は、反射鏡が不要になるため、反射鏡が占めていた空間を利用することができる。そこで、本例では、光放出開口の前面側に1対の反射板30a及び30bを配置する。これら反射位置は、光放出開口6を挟むように配置され、光放出開口に平行に延在する。これら反射板は、光放出開口6から発散するように出射した照明光は、反射板30a及び30bで反射し、角度調整されて進行する。従って、反射板30a及び30bは、出射する照明光の発散角を規定する画角調整板として機能する。
【0020】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形へ変更が可能である。例えば、上述した実施例では、反射性トリガ電極膜として銀の被膜を用いたが、銀の被膜以外に、アルミニウム等の反射性被膜や、各種反射性の導電性テープや導電性シート等を用いることが可能である。反射性導電性テープ等を用いる場合、細いスリット状の開口が予め形成された反射性導電性テープ等を放電管の外周面に耐熱性接着剤を介して装着することにより装着することができる。従って、簡単な作業により反射性トリガ電極膜を有する放電管が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による発光装置に用いられる放電管の一例を示す図である。
【図2】放電管の支持方法の一例を示す図である。
【図3】電源回路の一例を示す図である。
【図4】本発明による発光装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 放電管
2 ガラスバルブ
3 アノード電極
4 カソード電極
5 反射性トリガ電極膜
6 光放出開口
10 接続端子部材
11 締結部材
12 ベース部材
13 リード線
30a,30b 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を放出するキセノン管と、トリガ電圧及び発光電圧を発生する電源回路と、電源回路で発生したトリガ電圧をキセノン管に印加するための接続端子部材とを具え、
前記キセノン管は、キセノンガスが封入されている細管状のガラスバルブと、ガラスバルブの両端にそれぞれ設けた主電極と、反射性の導電膜により構成され、ガラスバルブの外周面上に形成した反射性トリガ電極膜とを有することを特徴とする発光装置の製造工程の一工程であって、前記キセノン管に前記反射性トリガ電極膜を形成する工程。
【請求項2】
前記反射性トリガ電極膜は、ガラスバルブの中心軸線と平行に延在する細条状の光放出開口であって、ガラスバルブの中心軸線の周りで円周方向に沿って100°以下の角度範囲に設定される光放出開口を有し、前記細条状の光放出開口を介して照明光を放出することを特徴とする請求項1に記載の工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−147016(P2010−147016A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70686(P2009−70686)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【分割の表示】特願2008−321058(P2008−321058)の分割
【原出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(500133473)新東ホールディングス株式会社 (15)
【Fターム(参考)】