発光装置及びその製造方法
【目的】 有機エレクトロルミネセント多色画像表示装置とその製造方法を開示する。
【構成】 該装置は、交差しているファイル(行と列)で配置された複数の発光画素でできている画像表示配列を含有する。各画素は、基板上に光透過性第一電極と、エレクトロルミネセント媒体と、上に重なっている第二電極とを有する。電極は従来のX−Yアドレシングパターンで画素を接続している。各画素内の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる色相で発光できる少なくとも二つの二次画素を形成している。各画素は、二つの二次画素を分割している境界に沿って配置された壁を含有する。該壁の高さは有機エレクトロルミネセント媒体の厚さよりも大きい。第一電極と第二電極のうちの一方は、横方向に間隔をあけて配置された少なくとも二つの素子に分割されており、その各々が同じファイル内で有機エレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している。
【構成】 該装置は、交差しているファイル(行と列)で配置された複数の発光画素でできている画像表示配列を含有する。各画素は、基板上に光透過性第一電極と、エレクトロルミネセント媒体と、上に重なっている第二電極とを有する。電極は従来のX−Yアドレシングパターンで画素を接続している。各画素内の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる色相で発光できる少なくとも二つの二次画素を形成している。各画素は、二つの二次画素を分割している境界に沿って配置された壁を含有する。該壁の高さは有機エレクトロルミネセント媒体の厚さよりも大きい。第一電極と第二電極のうちの一方は、横方向に間隔をあけて配置された少なくとも二つの素子に分割されており、その各々が同じファイル内で有機エレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機エレクトロルミネセント画像表示装置と、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】欧州特許第 349,265号明細書が有機エレクトロルミネセント画像表示装置とその製造方法について開示している。
【0003】上記カナダ国特許出願明細書は、横方向に間隔をあけて配置された一連の平行なインジウム錫酸化物の陽極ストリップを有する基板について開示している。有機エレクトロルミネセント媒体がその陽極ストリップの上に重ねられている。その陽極ストリップに対して垂直に配向させ、横方向に間隔をあけて配置された平行な陰極ストリップが、陰極形成金属を連続層として付着させた後にパターニングすることによって、有機エレクトロルミネセント媒体の上に形成されている。陰極層を陰極ストリップへパターニングすることは、2−エトキシエタノール中のモノマー性ネガティブワーキングフォトレジストの溶液をスピンコーティングすることによって行われている。そのフォトレジストにUV放射線を像様照射して架橋パターンを作製し、そして架橋されていないフォトレジストを、その配列を2−エトキシエタノール中に2〜3秒間浸漬することによって除去する。これにより未照射のフォトレジストが取り除かれて、陰極層の領域が露出される。この露出された陰極層の領域を、1000:1の水:硫酸溶液からなる酸性エッチング浴中に配列を浸漬することによって除去する。この手順によって陰極ストリップを製作した後、その配列を水でリンスし、そして回転させて過剰の水分を除去する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】印加電圧に応答して発光し、その印加電圧を取り除くと発光を停止する、各々が一体式素子となっている陽極及び陰極で構築されている有機エレクトロルミネセント装置は、スイッチの開閉をすることができるが、単独で使用した場合には画像表示性能に欠ける。陽極及び陰極の各々をパターニングして相対的に垂直に配向させた平行ストリップにすることによって有機エレクトロルミネセント装置に画像表示性能を付与する場合、有機エレクトロルミネセント媒体の上に重ねられている電極素子をその付着後にパターン化しなければならないという問題が生じる。これを、従来の湿式化学パターニング技法、とりわけScozzafavaが例示する技法によって行った場合、画像表示の性能及び有効動作寿命のいずれかまたは両方が、一体式の陰極及び陽極を有する類似の有機エレクトロルミネセント装置よりも劣化する。有機エレクトロルミネセント媒体と陰極の両方の劣化が認められている。
【0005】本発明が解決する第二の問題は、Scozzafavaらが開示している種類の配置を採用しても単色画像しか得られないという問題である。換言すれば、発光する画素(pixel) のすべてが同じ色相に見える、ということである。それでは、画像表示は、特定の画素を励起して発光させると同時にその他の画素を意図的に励起しないで作り出すことができるパターンに限定される。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】一態様において、本発明は、交差している2組の平行ファイルで配置されている複数の発光画素から成り、第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し且つ第二組の平行ファイル内の画素が列を形成している画像表示配列を含んで成る発光装置に関する。各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されている。一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置されている共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つそれによって接合されている。一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されている。有機エレクトロルミネセント媒体が第一電極手段の上に重ねられている。残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、有機エレクトロルミネセント媒体上に配置されている共通の第二電極手段を含有し、且つそれによって接合されている。そして残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている。
【0007】本発光装置は、多色画像表示が可能であることを特徴とする。各画素中の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる色相の光を発することができる少なくとも二つの二次画素(sub-pixel) 領域を形成し、各画素は、二つの二次画素領域を分離している境界に沿って配置された壁を含有し、その壁の高さは有機エレクトロルミネセント媒体の厚さを上回り、その壁は隣接した二次画素領域に陰を与えることができ、そして、特定の組の画素の各ファイルにおいて、前記第一電極手段及び前記第二電極手段の一方は、各々が同じファイル内のエレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している少なくとも二つの横方向に間隔をあけて配置された素子へ、分割されている。
【0008】別の態様では、本発明は、交差している2組の平行ファイルで配置されている複数の発光画素から成り、第一の組の平行ファイル内の画素が行を形成し、第二の組の平行ファイル内の画素が列を形成し、各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており、一方の組の平行ファイルの同じファイルにある各画素は、基板上に配置されている共通の光透過性第一電極手段を含有し、またそれによって接合されており、一方の組の隣接ファイルにおける第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており、有機エレクトロルミネセント媒体が第一電極手段の上に重ねられており、残りの組の平行ファイルの同じファイルにある各画素は、有機エレクトロルミネセント媒体上に配置されている共通の第二電極手段を含有し、またそれによって接合されており、そして残りの組の隣接ファイルにおける第二電極手段は、有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている、そのような発光装置の製造方法において、(a)第一電極手段が横方向に間隔をあけて表面に配置されている基板を提供する工程、(b)その基板表面に有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる工程、並びに(c)その有機エレクトロルミネセント媒体の表面に第二電極手段を形成する工程、を含んで成る前記製造方法に関する。
【0009】本法は、(i)基板上の、横方向に間隔をあけて配置されている第一電極手段の上に、有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる前に、1組の平行な壁を形成する工程、(ii)有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分の蒸着のための第一源を、基板表面に対して、前記源と基板表面の隣接部分との間に各壁を差し挟む角度で配向させる工程(該有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分は、可視スペクトルにおける第一色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する)、(iii )基板表面の、前記源と基板表面との間に壁が差し挟まれている領域以外の領域に、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を選択的に付着させる工程、(iV)基板表面の、エレクトロルミネセント媒体の第一部分が存在しない基板表面領域に、エレクトロルミネセント媒体の第二部分を付着させる工程(該エレクトロルミネセント媒体の第二部分は、第一色相の各々とは異なる第二色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する)、並びに(v)少なくとも第一及び第二の横方向に間隔をあけて配置された電極素子として、1組のファイルを接合する電極手段の各々を形成する工程(各ファイルにおける第一電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有する同じファイル中の画素の領域を接合し、そして各ファイルにおける第二電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有しない画素の領域を接合する)、によって多色表示性能をもつ画像表示配列を製作することを特徴とする。
【0010】本発明の利点は、画像表示性能を有する本発明の有機エレクトロルミネセント装置が、画像表示性能をもたないこと以外は同等の有機エレクトロルミネセント装置に匹敵する動作特性を示すことができる、という点である。本発明のさらに重要な利点は、本発明の装置が、従来のその他の有機エレクトロルミネセント表示装置、例えば先に引用したScozzafavaらの装置、には無い多色画像表示性能を示す、という点である。
【0011】画像表示用有機エレクトロルミネセント装置を製作する本発明の方法は、エレクトロルミネセント媒体とそのエレクトロルミネセント媒体上に重ねられている電極との両方を、それらの所望のパターンで最初に付着させることができるという利点を提供する。それゆえ、エレクトロルミネセント媒体または電極のいずれかを除去して素子の所望のパターンを形成させる手順、及びこのような手順に付随する欠点が完全に排除される。
【0012】装置形状の寸法、例えば層厚は、しばしばマイクロメートルのオーダーを下回るので、図面の縮尺は見やすくするために寸法精度を犠牲にしている。
【0013】実施態様場合によって、用語「エレクトロルミネセント」の頭字語ELを使用する。用語「画素」は、当該技術分野で認識されている意味で使用されており、他の領域とは独立に励起されて発光することができる画像表示配列の領域、のことを意味する。用語「多色」は、同じ画素の異なる領域(二次画素)において異なる色相の光を発することができる画像表示配列を記述するのに用いられている。用語「全色」は、単一画素の異なる領域(二次画素)において可視スペクトルの赤、緑及び青領域で発光することができる多色画像表示配列を記述するのに用いられている。用語「ファイル」は、列または行を示すために用いられている。用語「色相」は、可視スペクトル範囲内の発光の強度プロフィールを意味し、異なる色相は視覚的に識別できる色の差を示す。
【0014】図1を参照すると、多色画像を形成することができる有機EL装置100の一部が示されている。一連の光透過性の、好ましくは透明な第一電極R1、R2、R3、R4及びR5を有する光透過性の、好ましくは透明な電気絶縁性基板101の上面が示されている。第一電極は、平行列において電気絶縁のために基板表面上で横方向に間隔をあけて配置されている。有機EL媒体ELは、この第一電極の最左部を除いた全体と接触し且つその上に重ねられている。この有機EL媒体の上には、互いに横方向に間隔をあけて平行に並べられた行において配置されている一連の第二電極C1、C2、C3、C4及びC5が重ねられている。第二電極は、有機EL媒体の下方端を越えて基板の下方部分上へ横方向に伸びている。各行において、電極は、二つの平行な横方向に間隔をあけて配置された素子a及びbに分割されている。実際には、該装置は図示したよりもはるかに大きな領域の広がりを有することができる(またほとんどすべての場合に有する)が、その重要な構造を例示するには図示した装置の部分で十分である。
【0015】図1に示した交差している格子状の破線は、一連の画素Pの境界を表している。画素は、交差している2組のファイルの配列において配置されている。一方の組のファイルが図1に示したように水平方向に伸びて列を形成し、一方、第二の組のファイルが図1に示したように垂直方向に伸びて行を形成している。図1中の下方の列が各々第一電極R1の上に重なり、そして引続く各々の画素列が、引続く第一電極R2、R3、R4及びR5の一つの上に重なっている。
【0016】図1において左方から右方へと進むと、第一行の画素は共通の覆い重なっている第二電極C1を共有し、そして引続く行の画素が引続く第二電極を同様に共有している。ある一つの行の画素C6を、覆い重なっている第二電極を取り去った領域に示して見やすくしてある。行C6では、画素を二次画素P1及びP2へさらに分割して示してある。実際には、各行の画素が同様に分割されているが、見やすくするために、各画素ではここまで詳細には示していない。各行における二次画素P1は、各第二電極の覆い重なっているa素子を含み、一方各行における二次画素P2は、各第二電極の覆い重なっているb素子を含んでいる。二次画素P1及びP2は、それらが別々の波長強度プロフィールの光を発するので色相に差異がある、という点で異なる。例えば、二次画素P1を、主として一つの一次色(すなわち、青、緑または赤)を発光するように選定し、一方、二次画素P2を、一つのその他の一次色を発光するように選定することができる。
【0017】動作時には、透明基板101の底面を見ることによって見える装置100からの特定の発光パターンが作り出される。好ましい動作モードでは、連続的に一度に一列の画素を励起し、各列の反復励起の時間間隔が人の目の検出限界、典型的には60分の1秒未満になるように選定した速度で配列の励起を反復することによって、装置を励起する。観測者には、装置はどの瞬間においても一つの列からしか発光していないにもかかわらず、すべての励起された列からの発光によって形成された画像が見える。
【0018】所望の画像パターンを作り出すため、第二電極の各々の素子a及びbを独立に電気的にアドレスし、一方、第一電極R1を基板発光へ電気的にバイアスする。例えば、二次画素P1の発光色相のみが必要で、しかも第二電極C2、C3及びC4を含む行においてのみ必要な場合、これらの行における素子aを基板発光へバイアスし、一方、残りの第二電極素子は電気的にバイアスしないか、あるいは基板発光に必要な極性とは逆の極性のバイアスを与える。第一電極R1によって接合されている画素列から所望のパターンで発光した直後に、新たなパターンの励起が第二電極素子に供給され、そして次いで第一電極素子R2をバイアスして、それが接合している画素列からの所望の発光パターンを励起する。
【0019】装置100の製造において、第一の工程は、基板101の上面に第一電極R1、R2、R3、R4及びR5を図1に示したパターンで設ける工程である。最も普通の選択は、インジウム錫酸化物をコーティングしたガラス基板である。フォトレジストのパターニングに次いで、保護されていないインジウム錫酸化物の領域をヨウ化水素酸でエッチングし、その後フォトレジストを除去してすすぎ洗いすることによって、所望のパターンの第一電極が得られる。インジウム錫酸化物、酸化錫または似たような透明な導電性酸化物を使用する代わりに、高い(例えば、4.0 eVよりも高い)仕事関数のいずれかの金属の光透過性薄層で第一電極素子を製作することができる。該第一電極の製作には、特にクロムと金の混合物が意図される。基板と第一電極の化学安定性は高く、続く加工工程でそれらの表面にフォトリソグラフィーを劣化を伴うことなく施すことができる。
【0020】装置100の続く加工工程を図2〜図4に示す。平行な画素行の境界を形成するための一連の第一壁103を、基板と第一電極の上面に形成させる。これらの図面では、第一電極R1の断面において壁を示してある。簡単で特に好ましい技法では、付着面にネガティブワーキングフォトレジストをスピンコーティングすることによって、壁103を形成する。所望であれば、そのスピンコーティング工程を乾燥後に繰り返して、フォトレジスト層厚を増加させることができる。パターン化した露光によって、露光領域のフォトレジストを架橋し不溶形とする一方で、未露光領域を現像及び洗浄技法によって除去することができる。露光による架橋が、強く、比較的硬い壁を作り出す。
【0021】代わりとなる数多くの壁形成技法が可能である。連続的なスピンコーティング工程によって厚いフォトレジスト層を構築する代わりに、透明フィルムのような軟質支持体上のフォトレジストコーティングを支持面に積層することによって、より厚いフォトレジスト層を基板上に形成させることができる。この態様では、そのフォトレジストが、積層後の像様露光によって重合するモノマーであることが典型的である。像様露光後にフィルムを剥すと、露光されなかった領域中のモノマーも除去される。
【0022】別の壁形成技法では、フォトレジストは壁を形成しないが、支持面の壁を包囲する領域に存在することによって壁のパターンを画定する。フォトレジスト層の形成は、上記態様のいずれのものをとることもできるが、像様露光は、壁を包囲する領域にフォトレジストを残存させるように選定される。ポジティブまたはネガティブどちらのワーキングフォトレジストを使用してもよい。続いて、シリカ、窒化珪素、アルミナ、等の壁形成材料を、存在するフォトレジストの上に重なるように均一に付着させ、また壁領域内の付着面に付着させる。壁が形成された後、従来の便利な何らかの技法、例えば溶剤リフト−オフ、によってフォトレジストを除去することができる。
【0023】第一壁103を画素領域の行境界に形成させた後、各画素行を二次画素へ中央で分割する境界において1組の平行な第二壁105を形成させる。第二壁の高さは第一壁よりも低いので、第二壁は、第一壁の形成前または形成後の別の加工順序で形成される。第一壁を形成するための上記技法のいずれか一つを、壁の高さを変更するように調節して採用し、第二壁を形成させることができる。第二壁は、ネガティブワーキングフォトレジストの単一のスピンキャスティングによって形成することが好ましい。
【0024】壁を正しい位置に配置すると、材料を除去するための湿式化学処理を必要として装置の効率及び/または安定性を劣化させることなく、装置の有機EL媒体と第二電極素子部分を所望のパターンで形成させることが可能となる。第一のパターニングの目的は、P1二次画素領域における第一電極上の発光の第一色相を担う部分の有機EL媒体を付着させることである。これは、矢印107によって示した方向から有機EL媒体材料を気相堆積させることによって行われる。図示した付着を完成するために、基板表面を有機EL媒体(図示なし)の源に対して配向させて、壁103を、該源と二次画素P2内にある第一電極部分との間に差し挟むようにする。付着した有機EL媒体の有効領域109は、二次画素P1内の第一電極の上に重なる。壁の側面に付着した有機EL媒体は、ルミネセンスには寄与せず、また不活性である。
【0025】便利な従来のいずれの方向性(図中のライン)付着技法でも採用できる。気相原子の平均自由行程を増加させる減圧雰囲気によって有機媒体を気相で輸送することが好ましく、よって散乱が最小限に抑えられ、また方向性の制御された方法で付着が維持される。一般に、源と所期の付着面との間隔が、有機EL媒体分子の平均自由行程よりも小さく(すなわち、有機EL媒体分子が別の気相分子に衝突するまでの平均の移動距離よりも小さく)なるように、付着工程中の周囲雰囲気圧力を低下させる。方向性輸送の要件に適合する従来の付着技法には、分子ビーム付着のいずれかの形態、例えば真空蒸着法、電子ビーム付着法またはレーザーアブレーション法、が含まれる。
【0026】加工方法の次の工程は、P2二次画素領域内の第一電極上の発光の第二色相を担う有機EL媒体の第二部分を付着させる工程である。有機EL媒体の第二部分の有効領域111は、有機EL媒体の第一部分を受容しなかった二次画素P2の領域である。このように、第二色相発光の所望のパターンは、有機EL媒体の第一部分の付着によって既に画定されているので、矢印113で示したように、有機EL媒体の第二部分を全面に均一に付着させることができる。付着は、基板上面に垂直な方向から行っても、あるいは無方向様式で行ってもよい。有機EL媒体の第一部分が第一電極の上に重なり且つ有機EL媒体の第二部分が該第一部分の上に重なっている領域では、発光の色相は、有機EL媒体の第一部分によって完全に制御され、また有機EL媒体の第二部分が存在しない場合に起こる発光の色相との差は有意ではない。第一電極に最も近い有機EL媒体の部分が発光の色相を制御する。
【0027】有機EL媒体を付着させた後、第二電極素子を付着させるために用いる金属の源を供給する。効率的な有機EL装置には、第二電極素子は、有機EL媒体と接触させるべき、より低い(4.0 eV未満)仕事関数を示す金属を必要とする。単独のまたは1種以上のより高い仕事関数金属と組み合わせた1種以上の低仕事関数金属を、従来のいずれの方向性(図中のライン)輸送技法によっても、有機EL媒体上に付着させることができる。源から有機EL媒体表面へ確実に線形輸送するために、好ましくは、減圧下で金属原子を輸送する。一般には、有機EL媒体の方向性付着について先に記載したものと同じ考慮がなされる。便利な従来のいずれの付着技法でも採用することができる。有機EL媒体の方向性付着に関連して先に述べた付着技法の他に、イオンビーム付着法またはスパッタリング法によって金属を方向性付着させることができる。金属の方向性付着を、図4において矢印115で示す。
【0028】図1に示した横方向に間隔をあけて配置された対a及びbにおける第二電極素子の付着パターンを達成するため、基板表面を、付着すべき金属の源に対して配置させて、各壁が該源と有機EL媒体の表面の隣接部分との間に差し挟まれるようにする。このような方向付けで付着を行うと、差し挟まれている壁の部分が源から移動してくる金属を遮り、よって各壁の片側の有機EL媒体上の金属付着が妨害される。これによって、隣合う第二電極素子間の間隔が設けられる。
【0029】金属を付着させるために採用される角度θ2 が、有機EL媒体を付着させるために採用される角度θ1 よりも著しく小さいことに着目されたい。角度θ1 は、二次画素の幅全体に確実に陰を与えるように選定され、一方、角度θ2 は、隣合う第二電極素子の横方向の電気絶縁を達成するに必要十分なだけの小さな角度である。
【0030】低い(<4.0 eV)仕事関数金属を単独でまたは1種以上の高仕事関数金属との組合せで付着させることは、低仕事関数金属を含有する連続層を付着させて、有機EL媒体への電子注入効率を最大にすることのみを要求する。しかしながら、連続層を提供することが期待される 200〜500 オングストロームの厚さレベルを越えて第二電極の厚さを増加させることが好ましい。最初の金属組成を用いて1μmまでまたはそれ以上の厚い電極を形成させることはできるが、低仕事関数金属を含有する連続層の初期形成後に、比較的高い仕事関数(こうして化学反応性がより低くなる)の金属のみを付着させるように組成を変更することが一般に好ましい。例えば、回路製作に普通に用いられている便利な高仕事関数金属、例えば金、銀、銅及び/またはアルミニウムを付着させることによって、第二電極素子の抵抗を低下させるために、マグネシウム(好ましい低仕事関数金属)及び銀、インジウムまたはアルミニウムの初期連続層の厚みを増加させることが好ましいであろう。有機EL媒体の界面における低仕事関数金属と、重なっている第二電極素子の厚みを完成している高仕事関数金属との組合せが特に有利である。なぜなら、低仕事関数金属は有機EL媒体との第二電極素子界面に限られているけれども、低仕事関数金属によって生み出される高い電子注入効率が十分に実現されると同時に、高仕事関数金属の存在が第二電極素子の安定性を向上させるからである。このように、高い注入効率と高い電極素子安定性の組合せがこの配置によって実現される。
【0031】今までの記述では、有機EL媒体はできるだけ単純な態様で記載されている。すなわち、有機EL媒体の第一部分109及び第二部分111は、単一の有機EL媒体層を含有する従来の装置を構築するのに用いられている従来のいずれの各種形態をとることもできる。各活性二次画素領域における有機EL媒体が、重畳された層を含有する場合に、さらに高効率の動作が実現される。効率的な従来の多層有機EL装置では、正孔注入電極の上に正孔注入及び輸送帯域が被覆され、順にその上に電子注入及び輸送帯域が被覆され、さらにその上に電子注入電極が被覆されている。効率をより高めるには、正孔注入及び輸送帯域を、正孔注入電極と接触している正孔注入層とその正孔注入層の上に重ねられている正孔輸送層とにさらに二次分割することができる。電子注入及び輸送帯域が、正孔注入及び輸送帯域と接触している発光層を含有する。少なくとも1組の二次画素において、発光層が、電子注入及び輸送帯域全体を形成することができる。別の二次画素領域では、隣の組の二次画素において発光層を形成している材料が、別の発光材料で形成されている層の上に重なっている。その重なっている材料は、正孔注入及び輸送帯域から分離されており、正孔を直接受容することがないので発光には寄与しない。さらに別の変型では、電子注入及び輸送帯域の発光部分を形成している材料の上に、より効率的な電子輸送性材料を被覆することができる。このように、これらの効率のさらに高い有機EL装置では、2層、3層、4層またはさらに多くの層の配列の有機EL媒体が存在することが普通である。
【0032】このような従来の有機EL媒体層配列を本発明の実施に適用する際に、発光が起こる一つの層を除くその他の各層を均一に付着させることができる。例えば、正孔注入及び輸送帯域が発光層の下部にある有機EL装置を構築するには、正孔注入及び輸送帯域を形成する有機EL媒体を、非方向性付着または垂直付着(矢印113の方向)によって、第一電極R1の上に均一にまず付着させる。次いで、その均一に付着した正孔注入及び輸送帯域の上に、有機EL媒体の第一部分109及び第二部分111を図2及び図3に示したように付着させる。この第一部分及び第二部分から2種の色相の異なる発光がなおも起こるが、但し、装置の効率は、第一電極と部分109及び111との間に挿入されている正孔注入及び輸送帯域の存在によって改善されている。第二電極素子a及びbを付着する前に活性部分109及び111の上に電子注入層を均一に被覆することによって、有機EL装置をさらに改善することができる。
【0033】重畳された層で有機EL媒体を形成してさらに高い効率を実現した場合でさえも、有機EL媒体の厚みは、すべての場合において、1μm未満、より典型的には5000オングストローム未満である。有機EL媒体の個々の層は、50オングストローム程度の薄さを示すと同時に十分な装置性能を達成することができる。一般には、有機EL媒体の個々の層が 100〜2000オングストロームの範囲の厚さを示し、しかもその有機EL媒体の全体の厚さが少なくとも1000オングストロームであることが好ましい。
【0034】壁103及び105は各々、有機EL媒体の全体の厚さを上回る高さをもっている。壁105の唯一の機能は、第二電極素子a及びbの横方向の分離を提供することである。それゆえ、壁105の高さは、採用する壁形成技法にとって便利な最小値となるように通常は選定される。フォトレジスト塗膜上にスピンで形成された壁105にとって都合のよい高さは、典型的には1〜10μmの範囲にあり、また典型的には有機EL媒体の全体厚の2〜20倍である。壁105に沿って第二電極素子a及びbを電気的に確実に分離するこれら電極の間隔は、5〜20度の範囲にあることが好ましいθ2 アドレシング角を採用することによって達成することができる。より大きな値のθ2 も確実な間隔を提供するが、一般には好ましくはない。なぜなら、同じ画素内部の隣合う第二電極素子a及びbの間の間隔が電気絶縁に必要な最小の間隔よりも大きくなる程度にまで、各画素内部の活性発光領域が減少されるからである。
【0035】壁103の好ましい高さは、有機EL媒体の方向性付着に採用される角度θ1と二次画素の幅によって決まる。本発明は、従来の範囲の数及び寸法における個々の画素の形成に一般に適用可能である。画素の縁長が小さいほど、その構築にはより大きな注意が必要である。微細画像形成には、全縁長が 400μm以下の画素が意図される。微細画像形成にとって好ましい二次画素幅は、 200〜20μmの範囲、最も好ましくは 100〜25μmの範囲にある。二次画素領域を画定するための有機EL媒体の方向性付着は、10〜70度、最も好ましくは30〜60度のθ1 角について一般に実行可能である。θ1 が45度である場合、壁103の高さは二次画素の幅に等しくなる。θ1 が60度である場合、壁103の高さは、幅 200μmの二次画素を製作するためには 100μmを少しだけ上回ることが必要である。壁103の高さを 150μm以下に制限することが一般には好ましい。
【0036】壁103及び105は、それらの形成にとって都合のよい任意の幅で形成することができる。壁の高さ対幅の比率を5:1〜1:1の範囲にすることは容易に達成され、また一般に好ましい。各画素の活性(すなわち、発光性)部分が、全画素面積の少なくとも25%、最適には少なくとも50%を占めることが意図される。一つの縁が 400μmよりも大きな画素については、壁の幅が全画素領域の有意な画分を占めることはめったにない。
【0037】多色画像表示装置100は本発明の要件を十分に満たすけれども、該装置には欠点がいくつかある。第一に、図1を参照すると、各電極を連続的にバイアスする際に、それが、発光する同じ列内の画素の各々に電流を運搬しなければならないことが明白である。このように、各第一電極によって運搬される電流は、発光する一列の画素を励起する際に第二電極素子の各々によって運搬される電流の合計となる。この配置の欠点は、第一電極が、見られるべき発光に対して光透過性でなければならず、またそれらの厚さがこの特性を保持するために制限されなければならないという点である。しかしながら、電極の厚さを制限することは、同時に導電性も制限してしまう。
【0038】画素を、列ではなく行において連続的にアドレスする場合、第二電極素子a及びbの各々が同じ行内のすべての画素の電流を運搬しなければならない。第二電極素子の厚さは第一電極のそれを上回ることができ、また通常は上回っているが、第二電極素子の幅は二次画素の幅よりも狭くなければならない。その結果、第二電極素子の導電性も制限されてしまう。さらに、画素を一行一行アドレスすることは望ましくない。なぜならば、各行が二つの第二電極素子を含有するために、行と列とで同じ数の画素を有する配列においては、行のアドレシング速度が列のそれの2倍でなければならないからである。発光させるために行内の二次画素をバイアスできる時間は半分にされているので、バイアス電圧を列アドレシングよりも増大させて、一列一列のアドレシングで得られるのと同等の、バイアス時の二次画素のクーロンレベル及び発光レベルを維持しなければならない。同等の発光特性を得るために、バイアス電圧を増大すること及びアドレシング速度を2倍にすることは、重大な欠点を意味する。
【0039】装置100の別の欠点は、高さが違う壁103及び105を別個の工程で形成しなければならないという点である。
【0040】図5に示した多色有機EL画像表示装置200は、装置100の画像形成性能のすべてを示すと同時に、その上述の欠点を解決する。特別に記述するものを除いては、装置200の特徴は装置100に関連して記載したいずれの態様をとることもできるので、さらに説明を要することはない。
【0041】装置200の第一電極C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16及びC17は、それぞれ素子c及びdに分割されている。第一電極素子c及びdは装置100の第一電極の光透過性を示し、また装置100の第一電極と同様に、有機EL媒体を付着させる前に基板101の上に配置されている。各第一電極素子cは、同じ行内の二次画素P1の一部を形成し且つこれらを接合しており、一方、各第一電極素子dは、同じ行内の二次画素P2の一部を形成し且つこれらを接合している。第二電極R10、R11及びR12は、装置100の第二電極素子と、同じ材料で構築され、また同じ厚さであることができるが、行ではなく列内に配置されている。列の配置によって、第二電極を、装置100の第二電極よりも幅広くすることができる。
【0042】装置200の電極配置が達成する電極電導度は、装置100において実現できるものよりも高くなる。一列の画素をアドレスする際、第一電極素子c及びdの各々を独立にバイアスして、一列内の画素からの所望の発光パターンを達成する。同時に、第二電極の一つをバイアスして、選定された列内の発光を励起する。各第一電極素子は、一つの二次画素だけを励起し、また一つの二次画素の電流のみを運搬する。選定された列内の第二電極は、その列内で発光させるべく励起されたすべての二次画素の電流を運搬する。第二電極は、光透過性である必要がないため、第一電極素子よりも厚く且つ幅広くすることができるので、装置200の電極の電導度を装置100の電極のそれよりも高くすることができる。装置200においては、装置100に関連して述べた2倍の走査速度を要する一行毎の走査方法によることなく、このような電導度の利点が実現される。
【0043】装置200の画素Pの一つの構築について図6、7及び8に示す。壁205は、隣合う列における画素の境界に沿って配置されており、各壁は一列全体で共有されている。壁203は、各画素の行の境界において、隣合う画素の第一電極素子c及びdの間に配置されている。壁203は、一つの隣合う壁205からは短い距離または空隙G1を隔てて配置され、また残りの隣合う壁205からは有意に長い距離または空隙G2を隔てて配置されている。
【0044】壁203は、有機EL媒体の付着に際して、壁103と同じ機能を発揮する。第一部分109に関連して上述した同じ手順を採用して有機EL媒体の第一部分209を付着させる際に、二次画素P2の活性領域である領域P2Aを除いた全画素領域において付着が起こる。有機EL媒体の第二部分211を、第二部分111と同様に付着させる。簡略化のため、壁上に付着し、よって有効な機能を発揮することがない有機EL媒体部分は、ここでは、また後に記載する実施態様では示していない。
【0045】二次画素P2の活性領域P2Aが装置100におけるものよりも若干小さいことに着目されたい。なぜならは、列及び行の境界における壁の間の間隔が、二次画素P2領域内で有機EL媒体の第一部分209を排除できない空隙G1及びG2の幅をもつ領域を残しているからである。空隙G2の領域内の有機EL媒体の第一部分の色相の望ましくないエレクトロルミネセンスを防止するため、第一電極素子を基板上に形成した後で且つ壁を形成する前に、絶縁性パッド207を空隙領域内に形成する。その絶縁性パッドは、便利ないずれの絶縁層によって形成させてもよい。絶縁性パッドの厚みは、好ましくは1μm未満、最も好ましくは5000オングストローム未満である。絶縁性パッドを形成するには、便利ないずれの絶縁性材料を使用してもよいが、本目的にとってはシリカが理想的な絶縁材である。絶縁性パッドのパターニングは、便利ないずれかの技法によって、好ましくは従来のフォトリソグラフィーによって行うことができる。図示したように、各絶縁性パッドは、隣合う列の画素の境界において配置され、また空隙G1と、壁205の一つと、空隙G2との隣接領域にわたって広がっている。実際には、望ましくないエレクトロルミネセンスを防止するためには、絶縁性パッドが空隙G2の領域のみを占めることが必要であり、しかもこのことは二次画素P2の領域内だけのことである。しかしながら、二次画素P1及びP2の両方に渡る連続ストリップとして絶縁性パッドを構築する方が簡単である。二次画素P1を横切ると、これらの二次画素の各々の活性領域が領域P2Aまで減少する。こうして、二次画素の活性領域が等しくなってバランスがとれる。
【0046】図示したように構築した場合には、装置200に絶縁性パッドを導入することが好ましい。しかしながら、絶縁性パッドが必要であることはない。絶縁性パッドが空隙G2の領域内に存在しない場合でさえも、第一電極素子とその上に重なっている第二電極との間の縦方向の間隔が、両方の有機EL媒体部分209及び211の存在によって、活性二次画素領域と比較して増加されている。これによって、これらの領域内の電極間の電位の傾きが低減され、その結果エレクトロルミネセンスが減少することになる。こうして、二次画素P2からの発光色相は、空隙G2からの望ましくない発光によっていくらかはシフトするが、それでもなお、要求の厳しさが少ない画像形成用途には許容できるものである。
【0047】図7では、同じ列内の隣合う画素を接合している第二電極R11が示されている。図2で示した壁105に相当する壁が無いことに着目されたい。装置100における壁105の機能は壁205によって発揮され、また図8から明白である。第二電極R11を形成する金属は、矢印215によって示したように角度θ3で方向性付着される。壁205の高さは壁103の高さに等しいので、壁205の高さは壁105の高さよりも大きく、また角度θ3 は角度θ2 に等しいか、またははるかに小さい。θ3 の角度が少なくとも5度であることが一般に好ましい。
【0048】行及び列の境界における壁の間の空隙G1によって、各第二電極は、各列の全長にわたって隣合う第二電極から横方向に間隔をあけて配置されることになる。空隙G2は、同じ列内の画素間に壁を含まない交差境界を提供するので、第二電極によって横切られることができ、電気的連続性の確実性が向上する。壁の上に重なっている金属は、壁の縁の曲率半径が小さいために、局部的な電気不連続性を提供しやすい。しかしながら、壁の上に重なっている金属の電気連続性が、特定の第二電極構成にとって十分であることがわかる場合には、空隙G2を完全に除外し、順に絶縁性パッド207を除外することができる。このことによって、二次画素の活性領域が増加する。それはまた、空隙G2によって分離されるであろう各画素領域内の壁203と壁205を交差させることも可能にする。このことは、加工中に、壁を横方向に支え、また壁に不注意な損傷を与える危険性を低減する効果を有する。
【0049】装置200の構築に関する顕著な利点は、すべての壁を同じ高さのものとすることができ、よって同時に加工できるという点である。このことは加工を簡便化する。
【0050】多色有機EL画像表示装置100及び200は、各種の画像カラーの組合せを含有することができる。各画素において、以下の組合せが可能である:(a)第一の二次画素だけが第一の色相の光を発する;
(b)第二の二次画素だけが別の色相の光を発する;
(c)第一及び第二の両方の二次画素が、目が混合して第三の色相に見える知覚を作り出す光を発する;
(d)どちらの二次画素も発光せずに、その他の画素における発光のための黒色のバックグラウンドを作り出す。
こうして、2種の色相しか発光できない二次画素を用いて、多様な画像色相が可能である。
【0051】それにもかかわらず、多色装置100及び200は、人間の目が認識できる全範囲の色相の組合せの画像を表示する性能に欠ける。全色画像表示性能を得るためには、加法混色の3原色の個別の色を各々が発光できる少なくとも三つの二次画素に各画素を分割する必要がある。全色画像表示には、青、緑及び赤の3色1組の発光原色が最も普通に用いられる。
【0052】多色有機EL画像表示装置300及び400が、全色画像表示性能を有する本発明による装置構成を例示する。図9及び図15に示した装置300及び400は、それぞれ図1及び図5に示した装置100及び200と本質的に同じであるが、但し、各画素Pは三つの二次画素P1、P2及びP3に二次分割されており、その各々が、スペクトルの青、緑及び赤の部分の異なる一つにおけるピーク波長で発光することができる。各画素は、二つの代わりに三つの二次画素に二次分割されているので、装置100における二つの第二電極素子a及びbは、装置300では三つの第二電極素子e、f及びgに替わっている。同様に、装置200における第一電極素子c及びdは、装置400では三つの第一電極素子h、i及びjに替わっている。
【0053】装置300の構築は、特別に記述するものを除いて、装置100の構築について採用したものと同様である。装置300の製作を図10〜図14によって例示する。壁303a及び303bは壁103と同じであることができる。壁103と同様に、隣合う画素の境界に壁303aが配置されている。壁303bは、P2及びP3の二次画素境界に配置されている。壁305は壁105と類似しており、二次画素P1及びP2の共有された境界に配置されている。
【0054】有機EL媒体の第一部分309を、第一の二次画素領域P1内に付着させて第一電極R1の上に重ねる場合、矢印307aで示した方向における角度θ1 で付着させる。壁303a及び303bは、第二及び第三の二次画素領域内の第一電極上への付着を妨害するが、より低い壁305は、第一の二次画素領域内での有機EL媒体の第一部分の所望の付着を可能にしていることに着目されたい。この付着パターンを図11に示す。
【0055】図12を参照すると、矢印307bによって示されるように、方向性付着の角度を単に−θ1 に反対にすることによって、第二の発光原色を担う有機EL媒体の第二部分311を第二の二次画素P2内に選択的に付着させている。
【0056】図13を参照すると、第三の発光原色を担う有機EL媒体の第三部分312を、矢印313で示されるように均一に付着させている。第一及び第二の二次画素内では、有機EL媒体の第三部分は、その前に付着されている部分の上に重なっているが、これらの領域内の発光色相を変化させる効果はない。第三の二次画素P3内では、第三部分312が第一電極R1に最も近い発光材料であり、そして発光の色相を制御する。
【0057】図14を参照すると、各行内で第一、第二及び第三の二次画素を接続する第二電極素子e、f及びgの形成が、図4に関連して記述した同じ手順によって行われている。矢印315が付着の方向を示している。
【0058】装置300は、装置100の利点のすべてを示し、その上全色画像形成性能を有している。青、緑及び赤の原色発光を採用すると、各画素から以下の発光の組合せが可能である:(a)一つの二次画素を励起して青色を発光させる;
(b)一つの二次画素を励起して緑色を発光させる;
(c)一つの二次画素を励起して赤色を発光させる;
(d)二つの二次画素を励起して青及び緑色を発光させて、シアンの知覚を作り出す;
(e)二つの二次画素を励起して青及び赤色を発光させて、マゼンタの知覚を作り出す;
(f)二つの二次画素を励起して緑及び赤色を発光させて、イエローの知覚を作り出す;
(g)すべての二次画素を励起して、白色発光を作り出す;及び(h)いずれの二次画素も励起せずに、暗い、実質的に黒色のバックグラウンドを提供する。
【0059】全色有機EL媒体画像表示装置400の画素Pを図16〜図18に示す。壁405は画素の列の境界に沿って配置され、各壁は隣合う列の画素によって共有されている。壁403aは、各画素の行の境界において、隣合う画素の第一電極素子hとjの間に配置されている。画素内の二次画素P2及びP3の境界に、別の新たな壁403bが配置されている。壁403a及び403bは、一方の隣合う壁405からは短い距離または空隙G1によって隔たれ、また残りの隣合う壁405からは有意に長い距離または空隙G2によって隔たれて配置されている。
【0060】有機EL媒体の第一部分409を、第一部分109及び209を形成するのに用いた手順によって付着させる際に、画素P2及びP3の活性領域であるそれぞれ領域P2A及びP3Aを除いた画素の全領域内に付着が起こる。空隙G1及びG2の領域内では、第一部分が絶縁性パッド407の上に重なり、よって第一の二次画素を活性領域P1Aに限定する。有機EL媒体の第二及び第三部分411及び413は、先に述べた第二及び第三部分311及び312と同様に、それぞれ活性二次画素領域P2A及びP3A内に付着される。第二電極R11の付着は、装置200に関連して記載したものと同様であり、方向性付着の矢印415及び付着角度θ3 によって示される。
【0061】装置400は、装置200の利点のすべてを有し、その上装置300の全色画像形成性能を有する。
【0062】本発明の画像表示用有機EL装置の材料は、従来の有機EL装置のいずれの態様をとることもでき、例えば、先に引用したScozzafavaのもの;Tangの米国特許出願第 4,356,429号;VanSlykeらの米国特許出願第 4,539,507号;VanSlykeらの米国特許出願第 4,720,432号;Tangらの米国特許出願第 4,885,211号;Tangらの米国特許出願第 4,769,292号;Perry らの米国特許出願第 4,950,950号;Littman らの米国特許出願第 5,059,861号;VanSlykeの米国特許出願第 5,047,687号;Scozzafavaらのカナダ国特許出願第 2,046,439号;VanSlykeらの米国特許出願第5,059,862号;VanSlykeらの米国特許出願第 5,061,617号に記載されている。
【0063】本発明の装置にとって特に好ましい基板は透明ガラス基板である。本発明の装置の好ましい第一電極は、ガラス基板上に直接被覆された透明なインジウム錫酸化物電極である。
【0064】第一電極の上に被覆された有機EL媒体は、順に重畳された層でできていることが好ましい。これらの層のうち、エレクトロルミネセンスを特別に担う一つまたは二つの層のみを、上述のように領域を制限した方法で付着させる必要がある。もちろん、所望であれば、有機EL媒体のエレクトロルミネセント部分をパターニングするために上述した技法や配置を、有機EL媒体のその他の層部分の付着に採用できることが認識される。
【0065】有機EL媒体が第一電極と接触している領域全体の上に、Adler の米国特許出願第 3,935,031号またはTangの米国特許出願第 4,356,429号明細書に開示されているタイプのポルフィリン系化合物を含んで成る正孔注入層を、均一層として付着することが特に好ましい。
【0066】好ましいポルフィリン系化合物は、以下の構造式(I)で示される:
【0067】
【化1】
【0068】上式中、Qは−N=または−C(R)=であり;Mは金属、金属酸化物、または金属ハロゲン化物であり;Rは水素、アルキル、アラルキル、アリール、またはアルカリルであり;そしてT1 及びT2 は水素を表すか、あるいはアルキルまたはハロゲンのような置換基を含有できる不飽和六員環を共に完成する。好ましいアルキル部分は1〜6個の炭素原子を含有し、一方フェニルが好ましいアリール部分を構成する。
【0069】別の好ましい態様では、構造式(II)に示したように、ポルフィリン系化合物は構造式(I)の金属原子を2個の水素で置換した別の化合物である:
【0070】
【化2】
【0071】有用なポルフィリン系化合物の非常に好ましい例は、金属を含有しないフラロシアニンと金属を含有するフタロシアニンである。ポルフィリン系化合物は一般に、そしてフタロシアニンは特に、いずれかの金属を含有し得るが、金属が2またはそれ以上の正の原子価数を有することが好ましい。好ましい金属の例として、コバルト、マグネシウム、亜鉛、パラジウム及びニッケルが挙げられ、そして特に好ましい金属は銅、鉛、及び白金である。
【0072】有用なポルフィリン系化合物の例として、以下の化合物が挙げられる:PC−1;ポルフィンPC−2;1,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィン銅(II)
PC−3;1,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィン亜鉛(II)
PC−4;5,10,15,20- テトラキス(ペンタフルオロフェニル)-21H,23H- ポルフィンPC−5;珪素フタロシアニンオキシドPC−6;アルミニウムフタロシアニンクロリドPC−7;フタロシアニン(金属不含)
PC−8;ジリチウムフタロシアニンPC−9;銅テトラメチルフタロシアニンPC−10;銅フタロシアニンPC−11;クロムフタロシアニンフルオリドPC−12;亜鉛フタロシアニンPC−13;鉛フタロシアニンPC−14;チタンフタロシアニンオキシドPC−15;マグネシウムフタロシアニンPC−16;銅オクタメチルフタロシアニン
【0073】本発明による装置の好ましい構成では、正孔注入層の上に正孔輸送層を均一に付着させる。正孔輸送層が少なくとも一種の正孔輸送性芳香族第三アミンを含有することが好ましい。該第三アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1個は芳香環の員である)にのみ結合している三価窒素原子を少なくとも1個含有する化合物であると理解される。ある一態様では、芳香族第三アミンはアリールアミン、例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、または高分子量アリールアミンであることができる。例示的なモノマーのトリアリールアミンがKlupful らの米国特許出願第 3,180,730号明細書に例示されている。ビニルまたはビニリデン基で置換された及び/または少なくとも一つの活性水素含有基を含有する、その他の適当なトリアリールアミンがBrantleyらの米国特許出願第 3,567,450号及び同第 3,658,520号明細書に開示されている。
【0074】好ましい種類の芳香族第三アミンは、少なくとも二つの芳香族第三アミン部分を含むものである。このような化合物には、構造式( III):
【0075】
【化3】
【0076】(上式中、Q1 及びQ2 は独立に、芳香族第三アミン部分であり、そしてGは結合基、例えばアリレン、シクロアルキレン、もしくはアルキレン基、または炭素−炭素結合である)で示される化合物が含まれる。
【0077】構造式( III)を満たし且つ二つのトリアリールアミン部分を含有する特に好ましい種類のトリアリールアミンは、構造式(IV):
【0078】
【化4】
【0079】(上式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に、水素原子、アリール基、またはアルキル基を表すか、あるいはR1 及びR2 は一緒にシクロアルキル基を完成する原子を表し;そしてR3 及びR4 はそれぞれ独立に、構造式(V):
【0080】
【化5】
【0081】(上式中、R5 及びR6 は独立に、特定のアリール基である)で示されるような、ジアリール置換アミノ基で順に置換されたアリール基を表す)を満たすものである。
【0082】別の好ましい種類の芳香族第三アミンはテトラアリールジアミンである。好ましいテトラアリールジアミンは、アリレン基によって結合されている構造式(IV)で示されるような二つのジアリールアミノ基を含む。好ましいテトラアリールジアミンには、構造式(VI):
【0083】
【化6】
【0084】(上式中、Areはアリレン基であり、nは1〜4の整数であり、そしてAr、R7 、R8 、及びR9 は独立に特定のアリール基である)で示されるものが含まれる。
【0085】上記構造式(III )、(IV)、(V)、及び(VI)の各種アルキル、アルキレン、アリール、及びアリレン部分は各々順に置換されていてもよい。典型的な置換基には、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、並びにハロゲン例えばフッ化物、塩化物及び臭化物が含まれる。各種アルキル及びアルキレン部分は典型的には1〜5個の炭素原子を含有する。シクロアルキル部分は3〜10個の炭素原子を含有することができるが、典型的には、5、6、または7個の環炭素原子を含有する、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチル環構造である。アリール及びアリレン部分はフェニル及びフェニレン部分であることが好ましい。
【0086】有用な芳香族第三アミンの代表的なものが、Berwick らの米国特許出願第 4,175,960号及びVanSlykeらの同第 4,539,507号明細書に開示されている。Berwickらは有用な正孔輸送性化合物として、N−置換カルバゾールをさらに開示している。N−置換カルバゾールは、先に開示したジアリール及びトリアリールアミンの環架橋変体として見ることができる。
【0087】先に引用したVanSlykeらのカナダ国特許出願第 2,046,135号明細書の教示に従うと、上述の芳香族第三アミン中の第三級窒素原子に直接結合しているアリール基の1個以上を、少なくとも2個の縮合芳香環を含有する芳香族部分に換えることによって、短期及び長期両方の動作期間においてより高い有機EL素子安定性を達成することが可能である。芳香族第三アミンが、(1)少なくとも二つの第三アミン部分を含んで成り且つ(2)少なくとも2個の縮合芳香環を含有する芳香族部分を第三アミン部分に結合して含有しているものである場合に、短期間動作(0〜50時間)及び長期間動作(0〜300時間以上)両方の最良の組合せが達成される。第三アミンの縮合芳香環部分は、24個以上の炭素原子を含有し得るが、好ましくは10〜16個の環炭素原子を含有する。不飽和五及び七員環を六員芳香環(すなわち、ベンゼン環)に縮合させて有用な縮合芳香環部分を形成することは可能であるが、一般に、縮合芳香環部分が少なくとも2個の縮合ベンゼン環を含むことが好ましい。2個の縮合ベンゼン環を含有する縮合芳香環部分の最も簡単な形態はナフタレンである。それゆえ、好ましい芳香環部分はナフタレン部分である。ナフタレン部分とは、ナフタレン環構造を含有するすべての化合物を包含するものと理解される。一価形では、ナフタレン部分はナフチル部分であり、そして二価形では、ナフタレン部分はナフチレン部分である。
【0088】有用な芳香族第三アミンの例を以下に記載する:ATA−1;1,1-ビス(4-ジ-p- トリルアミノフェニル)シクロヘキサンATA−2;1,1-ビス(4-ジ-p- トリルアミノフェニル)フェニルシクロヘキサンATA−3;4,4'''- ビス(ジフェニルアミノ)クァテルフェニルATA−4;ビス(4-ジメチルアミノ-2- メチルフェニル)フェニルメタンATA−5;N,N,N-トリ(p-トリル)アミンATA−6;4-(ジ-p- トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p- トリルアミノ)スチリル]スチルベンATA−7;N,N,N',N'-テトラ-p- トリル-4,4'-ジアミノビフェニルATA−8;N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニルATA−9;N-フェニルカルバゾールATA−10;ポリ(N-ビニルカルバゾール)
ATA−11;4,4'- ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−12;4,4"- ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]-p- ターフェニルATA−13;4,4'- ビス[N-(2-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−14;4,4'- ビス[N-(3-アセナフテニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−15;1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ナフタレンATA−16;4,4'- ビス[N-(9-アントリル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−17;4,4"- ビス[N-(1-アントリル)-N- フェニルアミノ]-p- ターフェニルATA−18;4,4'- ビス[N-(2-フェナントリル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−19;4,4'- ビス[N-(8-フルオランテニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−20;4,4'- ビス[N-(2-ピレニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−21;4,4'- ビス[N-(2-ナフタセニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−22;4,4'- ビス[N-(2-ペリレニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−23;4,4'- ビス[N-(1-コロネニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−24;2,6-ビス(ジ-p- トリルアミノ)ナフタレンATA−25;2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレンATA−26;2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N- (2-ナフチル)アミノ]ナフタレンATA−27;4,4"- ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]ターフェニルATA−28;4,4'- ビス{N-フェニル-N- [4-(1-ナフチル)フェニル]アミノ}ビフェニルATA−29;4,4'- ビス[N-フェニル-N- (2-ピレニル)アミノ]ビフェニルATA−30;2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレンATA−31;4,4"- ビス(N,N-ジ-p- トリルアミノ)ターフェニルATA−32;ビス(N-1-ナフチル)(N-2-ナフチル)アミン。
【0089】正孔輸送層の上には装置の発光層が重ねられている。各画素において、異なる発光層が各二次画素内の正孔輸送層と接触している。所望の発光の各々の色相には、異なる発光層を選ぶことが必要である。
【0090】少なくとも一つの発光層が、以下の式を満たす金属オキシノイド系電荷受容性化合物を使用することが好ましい。
【0091】
【化7】
【0092】上式中、Meは金属を表し、nは1〜3の整数であり、そしてZはオキシン環を完成するのに必要な原子を表す。
【0093】有用なキレート化オキシノイド化合物の例として、以下が挙げられる:CO−1;アルミニウムトリスオキシンCO−2;マグネシウムビスオキシンCO−3;ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラート]亜鉛CO−4;アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)
CO−5;インジウムトリスオキシンCO−6;リチウムオキシンCO−7;ガリウムトリス(5−クロロオキシン)
CO−8;カルシウムビス(5−クロロオキシン)
CO−9;ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]
CO−10;ジリチウムエピンドリジオンCO−11;アルミニウムトリス(4−メチルオキシン)
CO−12;アルミニウムトリス(6−トリフルオロメチルオキシン)。
【0094】各種の金属オキシノイドのうち最も好ましいものはアルミニウムのトリスキレートである。これらのキレートは、3個の8−ヒドロキシ−キノリンと1個のアルミニウム原子とを反応させることによって生成する。これらのキレートには、特に好ましい緑色発光体であるアルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノール)アルミニウム]及びアルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム]が含まれる。
【0095】スペクトルの青色部分で発光する発光層を構築するためには、共通に譲渡されたVanSlykeらの米国特許出願第 738,777号(1991年 1月 8日出願、発明の名称「IMPROVED BLUE EMITTING INTERNAL JUNCTION ORGANIC ELECTROLUMINESCENT DEVICE (III)」)に開示されているタイプの混合配位子アルミニウムキレートを使用することが好ましい。特に好ましい態様では、該特許に開示されている混合配位子アルミニウムキレートは、ビス(RS −8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム(III )キレートを含む。ここで、RS は、アルミニウム原子に対して2個を超える8−キノリノラート配位子の結合をブロックするように選ばれた8−キノリノラート環の環置換基である。これらの化合物は、以下の式:
【0096】
【化8】
【0097】(上式中、Qは各場合において、置換8−キノリノラート配位子を表し、RS は、アルミニウム原子に対する2個を超える置換8−キノリノラート配位子の結合を立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を表し、O−Lはフェノラート配位子であり、そしてLは、フェニル部分を含んで成る炭素原子数6〜24個の炭化水素である)によって表すことができる。
【0098】2個の置換8−キノリノラート配位子及び1個のフェノラート配位子を含むアルミニウムキレートを使用する利点は、有機EL装置の好ましい緑色発光団であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III )キレートの望ましい物理特性のすべてが、発光がスペクトルの青色領域に移動しても保持されるという点にある。
【0099】フェノラート配位子の存在が、発光をスペクトルの青色部分へ移動させる原因である。本明細書で用いられる語句「フェノラート配位子」は、フェノールの脱プロトン化したヒドロキシル基によってアルミニウムに結合した配位子を意味する、当該技術分野で認識されている用語法で使用されている。
【0100】最も簡単な態様では、フェノラート配位子はヒドロキシベンゼンの脱プロトン化によって提供され得る。有機EL素子性能は、500 nmよりも短波長における極大発光、及び許容できる素子安定性(初期発光強度の少なくとも半分を50時間を超えて保持すること)が実現され得ることを例示した。
【0101】性能改善のための努力において、続いて置換フェノールが検討された。メトキシ及びジメトキシ置換フェノラート配位子が比較的弱い発光強度を示すことが観測された。メトキシ置換基は電子供与性なので、電子吸引性の強い置換基、例えばハロ、シアノ、及びα−ハロアルキル置換基をもつフェノールについても検討した。アルミニウムはこれらの配位子とキレートを形成するが、発光団の気相転換がうまくいかなかった。
【0102】式VIIIのアルミニウムキレートに好ましいフェノラート配位子が、HO−Lフェノール(ここで、Lはフェニル部分を含んで成る炭素原子数6〜24個の炭化水素である)から誘導されることが決められた。これはヒドロキシベンゼンのみならず、各種の炭化水素置換ヒドロキシベンゼン、ヒドロキシナフタレン、及び他の縮合環炭化水素も含む。フェニル部分のモノメチル置換は発光波長を短くするので、フェノラート配位子が少なくとも7個の炭素原子を含有することが好ましい。一般に、非常に多数の炭素原子を有するフェノラート配位子を使用して得られる利点はほとんどない。しかしながら、18個の芳香環炭素原子を有するフェノラート配位子の検討は、高いレベルの安定性を示した。こうして、フェノラート配位子が総数7〜18個の炭素原子を含有することが好ましい。
【0103】フェノラート配位子のフェニル部分の脂肪族置換基は、それぞれ1〜12個の炭素原子を含有することを意図される。炭素原子数1〜3個のアルキルフェニル部分置換基が特に好ましく、メチル置換基を用いると最良の全体特性が生じることが観測された。
【0104】フェニル部分の芳香族炭化水素置換基は、フェニルまたはナフチル環であることが好ましい。フェニル部分のフェニル、ジフェニル、及びトリフェニル置換基はすべて非常に望ましい有機EL素子特性を生み出すことが観測された。
【0105】αまたはβナフトール由来のフェノラート配位子は、安定性の非常に高いアルミニウムキレートを生じることが観測された。ヒドロキシベンゼン由来のフェノラート配位子により示されたものと同様に、より短波長への発光移動の程度が限定されることも認められた。以下に記述するように、青色発光性の蛍光色素と組み合わせてナフトラート配位子含有アルミニウムキレートを使用することによって、非常に望ましい素子の構築が可能である。
【0106】各種フェノラート配位子のオルト、メタ、及びパラ置換類似体を比較したところ、炭化水素置換基が占めるフェニル部分の環の位置が寄与する性能の差は、あったとしてもほとんどないことがわかった。
【0107】好ましい態様では、アルミニウムキレートは、以下の式、
【0108】
【化9】
【0109】(上式中、Q及びRS はさきに定義したとおりであり、そしてL1 、L2 、L3 、L4 、及びL5 は、集合的に12個以下の炭素原子を含有し、しかも各々は独立して、水素または炭素原子数1〜12個の炭化水素基を表し、但し、L1 とL2 は一緒に、あるいはL2 とL3 は一緒に縮合ベンゾ環を形成することができる)を満たす。
【0110】8−キノリノラート環の一方または両方が立体妨害置換基以外の置換基を含有することはできるが、環のさらなる置換は必要ではない。環一個当たり一個を超える置換基が立体妨害に寄与し得ることがさらに認識されている。各種の立体妨害置換基となり得るものは、以下の式:
【0111】
【化10】
【0112】(上式中、Lは上述のいずれの態様でもとることができ、そしてR2 〜R7 は8−キノリノラート環の2〜7の各位置における置換可能性を表す)を参照することによって最も容易に想見される。環の4、5、及び6位における置換基は、1個のアルミニウム原子に3個の8−キノリノラート環が結合するのを立体的に妨害するには好ましくない配置である。環の3位または7位における大きな置換基は十分な立体障害を提供できることが期待されるが、かさ高い置換基の導入は、分子の性能を高めることなく分子量を実質的に増加させるので、全体の性能を低下させる。しかるに、環の2位は立体障害を提供するのに適しており、そしてこれらの環の位置の一つにおける非常に小さな置換基(例えば、メチル基)でさえも効果的な立体妨害置換基を提供する。合成上の都合からは、立体妨害置換基が環の2位に配置されていることが特に好ましい。本明細書で用いる語句「立体妨害」は、RS −Q配位子がアルミニウム原子の第三の配位子としての包含に対しては競争できないことを示すのに用いられる。
【0113】青色発光の獲得を主に担うのはフェノラート配位子であるが、8−キノリノラート環に対する置換基も、有用な色相移動作用をなし得ることが観測された。キノリン環は、縮合されたベンゾ環及びピリド環から成る。キノリン環のピリド環成分が1個以上の電子供与性置換基で置換されると、発光の色相がスペクトルの緑色領域からより主要な青色発光へとシフトする。ピリド環のオルト位及びパラ位(すなわち、キノリン環の2位及び4位)における電子供与性置換基は発光の色相に特に影響を与えるが、一方、ピリド環のメタ位(キノリン環の3位)が発光の色相に与える影響は比較的小さい。実際に、所望であれば、青色発光特性を保持させながら環の3位に電子受容性置換基を配置できることが認められている。立体障害は電子供与性または電子受容性とはまったく無関係であって、R2 は理論上電子供与性基または電子受容性基のいずれの態様でもとり得るが、R2 を電子供与性基の中から選択することが好ましい。第二の電子供与性基R4 を付加することによって、スペクトルの緑色部分から色相をさらにシフトすることが達成される。R3 を存在させる場合には、合成上便利ないずれの態様でもとり得るが、これもまた電子供与性であることが好ましい。
【0114】特定の置換基が電子供与性か電子受容性かを決めることは当業者にとって周知である。共通の部類の置換基をすべて反映する、数百の最も普通の置換基の電子供与性または電子受容性が測定され、定量され、そして文献に記載されている。電子供与性及び受容性の最も普通の定量化法はハメットσ値に関するものである。負のハメットσ値を示す置換基は電子供与性であり、逆に正のハメットσ値を示す置換基は電子受容性である。水素のハメットσ値は0であり、他の置換基はそれらの電子受容性または供与性に直接関連して正方向または負方向に増加するハメットσ値を示す。Lange のHandbook of Chemistry, 12th Ed., McGraw Hill, 1979, Table 3-12, pp.3-134〜3-138 が、数多くの通常の置換基に対するハメットσ値を記載している。ハメットσ値はフェニル環置換を基準として割り付けられているが、それらはキノリン環について電子供与性置換基及び電子受容性置換基を定性的に選択するのに利用可能な案内を提供する。
【0115】すべての因子、すなわち立体妨害性、合成上の利便性、及び電子供与性または受容性をまとめて考慮すると、R2 はアミノ、オキシ、または炭化水素置換基であることが好ましい。R2 がメチル基であり且つ唯一の8−キノリノラート環置換基である(すなわち、R3 、R4 、R5 、R6 、及びR7 は各々水素である)場合でも、十分な立体障害が提供される。こうして、いずれかのアミノ基、オキシ基、または少なくとも1個の炭素原子を有する炭化水素基が、好ましい置換基に含まれる。いずれの一炭化水素部分においても、存在する炭素原子数が10個を超えないことが好ましく、そしてそれが6個を超えないことが最適である。こうして、R2 は、−R' 、−OR' 、または−N(R" )R' (式中、R' は炭素原子数1〜10個の炭化水素であり、そしてR" はR' または水素である)の態様をとることが好ましい。好ましくは、R2 は10個以下の炭素原子を、そして最適には6個以下の炭素原子を含有する。
【0116】R3 及びR4 は、上述の理由によって、R2 よりも広い範囲の態様をとり得るが、R2 と同じ好ましい置換基群の中から選択することを特に意図する。環の3位及び4位の置換は必要ではないので、R3 及びR4 はさらに水素であってもよい。
【0117】環の5、6、または7位の置換は必要ではないので、R5 、R6 、及びR7 は水素を表すことができる。好ましい態様では、R5 、R6 、及びR7 は、合成上都合のよい電子受容性置換基、例えばシアノ、ハロゲン、並びに10個以下の、最も好ましくは6個以下の炭素原子を含有するα−ハロアルキル、α−ハロアルコキシ、アミド、スルホニル、カルボニル、カルボニルオキシ、及びオキシカルボニル置換基、から選択することができる。
【0118】以下は、本発明の要件を満たす好ましい混合配位子アルミニウムキレートの特別な例を構成するものである:PC−1;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム(III )
【0119】
【化11】
【0120】PC−2;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(オルト−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0121】
【化12】
【0122】PC−3;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(メタ−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0123】
【化13】
【0124】PC−4;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0125】
【化14】
【0126】PC−5;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(オルト−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0127】
【化15】
【0128】PC−6;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(メタ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0129】
【化16】
【0130】PC−7;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0131】
【化17】
【0132】PC−8;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0133】
【化18】
【0134】PC−9;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0135】
【化19】
【0136】PC−10;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0137】
【化20】
【0138】PC−11;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0139】
【化21】
【0140】PC−12;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0141】
【化22】
【0142】PC−13;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0143】
【化23】
【0144】PC−14;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0145】
【化24】
【0146】PC−15;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0147】
【化25】
【0148】PC−16;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0149】
【化26】
【0150】PC−17;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III )
【0151】
【化27】
【0152】PC−18;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム(III )
【0153】
【化28】
【0154】PC−19;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(オルト−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0155】
【化29】
【0156】PC−20;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0157】
【化30】
【0158】PC−21;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(メタ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0159】
【化31】
【0160】PC−22;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0161】
【化32】
【0162】PC−23;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0163】
【化33】
【0164】PC−24;ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)(パラ−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0165】
【化34】
【0166】PC−25;ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0167】
【化35】
【0168】PC−26;ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)(オルト−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0169】
【化36】
【0170】PC−27;ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム(III )
【0171】
【化37】
【0172】上述のように青色発光のためにビス(Rs −8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム(III )キレートを使用する代わりに、青色発光性の発光層として青色発光性のビス(Rs −8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(Rs −8−キノリノラート)アルミニウム(III )化合物を使用することが意図される。これらの化合物を有機EL装置に使用することが、VanSlykeの共通に譲渡された米国特許出願第 738,776号(1991年、 1月 8日出願、発明の名称「IMPROVED BLUE EMITTING INTERNAL JUNCTION ORGANIC ELECTROLUMINESCENT DEVICE (I)」)に教示されている。これらの化合物は、広くは以下の式を満たし:
【0173】
【化38】
【0174】そして、特別に好ましい態様は以下の式を満たす:
【0175】
【化39】
【0176】上式中、Q、Rs 及びR2 〜R7 は、先に式VIII及びXに関連して記載したものと同じである。
【0177】以下の化合物は、式XI及びXII を満たす好ましい化合物の特別例である:
【0178】BA−1;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0179】
【化40】
【0180】BA−2;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0181】
【化41】
【0182】BA−3;ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0183】
【化42】
【0184】BA−4;ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラート)アルミニウム(III )
【0185】
【化43】
【0186】BA−5;ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0187】
【化44】
【0188】BA−6;ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0189】
【化45】
【0190】1組の二次画素内の発光層は、式VIII〜XII の青色発光性化合物のうちのいずれか一つまたはいずれかの組合せから成ることもできる。発光層内に青色発光性化合物を単独で使用する代わりに、先に引用したTangらの米国特許出願第 4,769,292号明細書の教示に従い、青色発光性蛍光色素用のホストとして使用することができる。1種以上の蛍光色素と式VIII〜XII のうちのいずれかを満たす1種以上の化合物との任意の青色発光性混合物を使用することができる。
【0191】本発明の一つの好ましい態様では、有機EL媒体の青色発光性部分が、ホストとしての式VIII〜XII の化合物と、ペリレンまたはベンゾピレン発色単位を含有する少なくとも1種の青色発光性蛍光色素とを含有する。これらの発色単位は、少なくとも5個の縮合炭素環式芳香環と該芳香環中に20個の炭素原子を必要とする。青色発光性を減少させることのない別の縮合環を発色単位内に含有させることはできる。一般には、20〜40個の環炭素原子を含有する発色単位を使用することが好ましい。
【0192】以下の化合物は、ペリレンまたはベンゾピレン系発色単位を含有する青色蛍光色素としての使用を意図される例示的な化合物を示す:
【0193】
【化46】
【0194】
【化47】
【0195】
【化48】
【0196】
【化49】
【0197】
【化50】
【0198】
【化51】
【0199】これらの芳香族環化合物は、有機媒体の他の成分と同様に、真空蒸着によって付着させることができるという利点を有する。上記芳香族化合物はそれら自身で発色団を示すので、他の環置換基を存在させる必要がない。しかしながら、発色団として芳香族環を含有する多くの色素が慣例であり、元来、溶液化学において使用するために製造されているので、溶解度や、場合によっては色相を改良するための置換基を有する。先に引用したTangらの米国特許出願第 4,762,292号明細書に開示されているタイプの各種の芳香族環置換基が意図される。
【0200】青色発光性の発光層を製作する際に、上記青色発光性アルミニウムキレートの1種を使用する場合、青色発光性の発光層とその上の第二電極との間に式VII のオキシノイド化合物の1種を挿入させることによって、より高いレベルの効率が実現される。青色発光層が、装置100及び200における有機EL媒体の第一部分に、または装置300及び400における有機EL媒体の第一もしくは第二部分に対応する場合に、この配置が好ましい。別の配置では、青色発光性アルミニウムキレートが直接その上の第二電極と接触しないように、別の新たな層を付着することができる。
【0201】上述の層は、全色画像形成にとって必要な青色及び緑色発光を供給することができる。全色画像形成にとって必要な、1組の二次画素からの新たな赤色発光を達成するためには、上述の好ましい緑色及び青色発光体のいずれか一方または両方を、従来の赤色発光性蛍光色素と組み合わせることができる。このタイプの好ましい構成は、先に引用したTangらの米国特許出願第 4,769,292号明細書に開示されている。
【0202】有機ホスト材料、好ましくは上記緑色または青色発光性材料の一つは、赤色発光性蛍光色素と組み合わされる。数多くの赤色発光性蛍光色素がTangらによって有用であると開示されているが、蛍光性の4−ジシアノメチレン−4H−ピラン及び4−ジシアノメチレン−4H−チオピラン(以降、これらを蛍光性ジシアノメチレンピラン及びチオピラン色素と呼ぶ)の中から赤色発光性蛍光色素を選ぶことが特に好ましい。この種の好ましい蛍光色素は以下の式を満たす:
【0203】
【化52】
【0204】上式中、Xは酸素または硫黄を表し、R10は2−(4−アミノスチリル)基を表し、そしてR11は第二のR10基、アルキル基またはアリール基を表す。
【0205】Xが酸素または硫黄を表すことが最も便利ではあるが、原子番号のより大きなカルコゲンが、深色移動ではあるが、同様の応答を提供することは認識されている。アミノ基は、第一、第二または第三アミノ基であることができる。一つの特に好ましい態様では、アミノ基は、スチリルフェニル環との少なくとも一つの別の縮合環を形成することができる。例えば、スチリルフェニル環とアミノ基は、スチリルフェニル環と縮合した5員または6員環を形成することができる。アルキル基R11は好ましくはフェニル基である。R10とR11の両方が2−(4−アミノスチリル)基を形成する場合、その基は同じであっても別のものであってもよいが、対称化合物の方が便利に合成される。
【0206】以下は、例示的な蛍光性ジシアノメチレンピラン及びチオピラン色素である:FD−12;4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランFD−13;4−(ジシアノメチレン)−2−フェニル−6−[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−ピランFD−14;4−(ジシアノメチレン)−2,6−ジ[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−ピランFD−15;4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−ピランFD−16;4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−チオピラン
【0207】上記の青色発光層の場合には、赤色発光層をその上の第二電極との直接接触から分離すると、より高い効率の性能が実現される。
【0208】先に引用したTangらの教示によると、蛍光色素をホスト化合物と組合せて使用する場合には、蛍光色素が、ホストのバンドギャップよりも大きくないバンドギャップと、ホストの還元電位よりもその負の値の幅がより小さな還元電位とを示すように選定される。さらに、ホスト化合物と蛍光色素の組合せは、それらが分光的に結合するように、すなわち、ホスト化合物が、単独で用いられたときに蛍光色素の吸収波長に対応する波長で発光するように選定される。最適な結合にとっては、ホスト化合物のピーク発光波長が蛍光色素のピーク吸収波長の±100 nm以内、最適には±25 nm 以内に対応することが好ましい。
【0209】蛍光色素は、色相移動に都合のよい任意の量で含有させることができる。先に引用したTangらは、ホストと色素の合計量を基準として10-3〜10モル%の濃度範囲を示唆しているが、より低濃度で用いる方が好ましい。好ましい蛍光色素濃度は、蛍光色素とホストのモル数を基準として0.05〜5(最適には 0.2〜3)モル%の範囲にある。
【0210】第二電極は、より低い(<4.0 eV)仕事関数を示すいずれかの(アルカリ金属以外の)金属を、単独でまたはより高い(>4.0 eV)仕事関数を示す1種以上の金属との組合せで、用いて製作することができる。しかしながら、第二電極は、Tangらの米国特許出願第 4,885,432号明細書の教示に従い構築することが好ましい。特に好ましい構成では、第二電極は、その有機EL媒体との界面において、少なくとも50%のマグネシウムと、少なくとも 0.1%(最適には少なくとも1%)の、仕事関数が4.0 eVよりも大きな金属、例えば銀またはアルミニウム、とを含有する。上述したように、有機EL媒体との界面を形成する金属を付着させた後、便利な任意の金属を付着させることによって、第二電極を厚くして、電子注入効率を低下させることなく電導度を増大させることができる。この目的で高い(>4.0 eV)金属を使用すると、第二電極の安定性もまた増大する。
【0211】本発明は、好ましい実施態様に関して記述されている。すなわち、有機EL媒体と第二電極の両方がそれらの所望のパターン化された形態で形成されるので、その後のパターニングのためのエッチングや材料除去工程をまったく必要としない。好ましい態様ではないが、第二電極を形成する材料を有機EL媒体の上に均一に付着させた後に、従来のマスキング及びエッチング技法によってパターン化できることは認識される。この方法を採用する場合、壁105、205、305及び405は、第二電極をパターン化することがこれらの壁の唯一の機能であるため、省略することができる。壁205または405を省略した場合、壁203または403a及び403bは、同じ行内のすべての画素及び二次画素を接合する連続壁であることができる。装置200及び400のすべての壁は、好ましくは単一加工で形成され、またこのように好ましくは同じ高さのものであるが、壁205対壁203の、または壁405対壁403a及び403bの高さの関係が、壁105対壁103の高さの関係と同じであってもよいことが認識される。
【0212】画素は、装置100では壁103の間に、装置200では壁203の間に、装置300では壁303aの間に、そして装置400では壁403aの間に、横方向に広がっているように記述されているが、画素の境界は記載の便宜上で選定されていることが認識される。その代わりに、各画素を、一つの二次画素によって各列内で横方向にシフトされているものと見てもよい。画素境界をそのように見る場合、壁103、203、303a及び403aは二次画素境界になおも配置されているが、画素境界にはない。しかしながら、装置の構造に実際の変化が起こることはない。
【0213】
【発明の効果】画像表示性能をもたない類似の有機エレクトロルミネセント装置に匹敵する動作特性を示す画像表示性能と、多色画像表示を示す性能とがある、という点が、本発明の少なくとも一つの実施態様の有利な特徴である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図2】本発明の第一の実施態様の二つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図3】本発明の第一の実施態様の二つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図4】本発明の第一の実施態様の二つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図5】本発明の第二の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図6】本発明の第二の実施態様の画素を示す平面図である。
【図7】図6の線7−7に沿った断面図である。
【図8】図6の線8−8に沿った断面図である。
【図9】本発明の第三の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図10】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図11】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図12】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図13】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図14】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図15】本発明の第四の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図16】本発明の第四の実施態様の画素を示す平面図である。
【図17】図16の線17−17に沿った断面図である。
【図18】図16の線18−18に沿った断面図である。
【符号の説明】
100,200,300,400…有機EL装置
101…絶縁性基板
103,105,203,205,303,305,403,405…壁
207…絶縁性パッド
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機エレクトロルミネセント画像表示装置と、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】欧州特許第 349,265号明細書が有機エレクトロルミネセント画像表示装置とその製造方法について開示している。
【0003】上記カナダ国特許出願明細書は、横方向に間隔をあけて配置された一連の平行なインジウム錫酸化物の陽極ストリップを有する基板について開示している。有機エレクトロルミネセント媒体がその陽極ストリップの上に重ねられている。その陽極ストリップに対して垂直に配向させ、横方向に間隔をあけて配置された平行な陰極ストリップが、陰極形成金属を連続層として付着させた後にパターニングすることによって、有機エレクトロルミネセント媒体の上に形成されている。陰極層を陰極ストリップへパターニングすることは、2−エトキシエタノール中のモノマー性ネガティブワーキングフォトレジストの溶液をスピンコーティングすることによって行われている。そのフォトレジストにUV放射線を像様照射して架橋パターンを作製し、そして架橋されていないフォトレジストを、その配列を2−エトキシエタノール中に2〜3秒間浸漬することによって除去する。これにより未照射のフォトレジストが取り除かれて、陰極層の領域が露出される。この露出された陰極層の領域を、1000:1の水:硫酸溶液からなる酸性エッチング浴中に配列を浸漬することによって除去する。この手順によって陰極ストリップを製作した後、その配列を水でリンスし、そして回転させて過剰の水分を除去する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】印加電圧に応答して発光し、その印加電圧を取り除くと発光を停止する、各々が一体式素子となっている陽極及び陰極で構築されている有機エレクトロルミネセント装置は、スイッチの開閉をすることができるが、単独で使用した場合には画像表示性能に欠ける。陽極及び陰極の各々をパターニングして相対的に垂直に配向させた平行ストリップにすることによって有機エレクトロルミネセント装置に画像表示性能を付与する場合、有機エレクトロルミネセント媒体の上に重ねられている電極素子をその付着後にパターン化しなければならないという問題が生じる。これを、従来の湿式化学パターニング技法、とりわけScozzafavaが例示する技法によって行った場合、画像表示の性能及び有効動作寿命のいずれかまたは両方が、一体式の陰極及び陽極を有する類似の有機エレクトロルミネセント装置よりも劣化する。有機エレクトロルミネセント媒体と陰極の両方の劣化が認められている。
【0005】本発明が解決する第二の問題は、Scozzafavaらが開示している種類の配置を採用しても単色画像しか得られないという問題である。換言すれば、発光する画素(pixel) のすべてが同じ色相に見える、ということである。それでは、画像表示は、特定の画素を励起して発光させると同時にその他の画素を意図的に励起しないで作り出すことができるパターンに限定される。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】一態様において、本発明は、交差している2組の平行ファイルで配置されている複数の発光画素から成り、第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し且つ第二組の平行ファイル内の画素が列を形成している画像表示配列を含んで成る発光装置に関する。各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されている。一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置されている共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つそれによって接合されている。一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されている。有機エレクトロルミネセント媒体が第一電極手段の上に重ねられている。残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、有機エレクトロルミネセント媒体上に配置されている共通の第二電極手段を含有し、且つそれによって接合されている。そして残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている。
【0007】本発光装置は、多色画像表示が可能であることを特徴とする。各画素中の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる色相の光を発することができる少なくとも二つの二次画素(sub-pixel) 領域を形成し、各画素は、二つの二次画素領域を分離している境界に沿って配置された壁を含有し、その壁の高さは有機エレクトロルミネセント媒体の厚さを上回り、その壁は隣接した二次画素領域に陰を与えることができ、そして、特定の組の画素の各ファイルにおいて、前記第一電極手段及び前記第二電極手段の一方は、各々が同じファイル内のエレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している少なくとも二つの横方向に間隔をあけて配置された素子へ、分割されている。
【0008】別の態様では、本発明は、交差している2組の平行ファイルで配置されている複数の発光画素から成り、第一の組の平行ファイル内の画素が行を形成し、第二の組の平行ファイル内の画素が列を形成し、各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており、一方の組の平行ファイルの同じファイルにある各画素は、基板上に配置されている共通の光透過性第一電極手段を含有し、またそれによって接合されており、一方の組の隣接ファイルにおける第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており、有機エレクトロルミネセント媒体が第一電極手段の上に重ねられており、残りの組の平行ファイルの同じファイルにある各画素は、有機エレクトロルミネセント媒体上に配置されている共通の第二電極手段を含有し、またそれによって接合されており、そして残りの組の隣接ファイルにおける第二電極手段は、有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている、そのような発光装置の製造方法において、(a)第一電極手段が横方向に間隔をあけて表面に配置されている基板を提供する工程、(b)その基板表面に有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる工程、並びに(c)その有機エレクトロルミネセント媒体の表面に第二電極手段を形成する工程、を含んで成る前記製造方法に関する。
【0009】本法は、(i)基板上の、横方向に間隔をあけて配置されている第一電極手段の上に、有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる前に、1組の平行な壁を形成する工程、(ii)有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分の蒸着のための第一源を、基板表面に対して、前記源と基板表面の隣接部分との間に各壁を差し挟む角度で配向させる工程(該有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分は、可視スペクトルにおける第一色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する)、(iii )基板表面の、前記源と基板表面との間に壁が差し挟まれている領域以外の領域に、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を選択的に付着させる工程、(iV)基板表面の、エレクトロルミネセント媒体の第一部分が存在しない基板表面領域に、エレクトロルミネセント媒体の第二部分を付着させる工程(該エレクトロルミネセント媒体の第二部分は、第一色相の各々とは異なる第二色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する)、並びに(v)少なくとも第一及び第二の横方向に間隔をあけて配置された電極素子として、1組のファイルを接合する電極手段の各々を形成する工程(各ファイルにおける第一電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有する同じファイル中の画素の領域を接合し、そして各ファイルにおける第二電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有しない画素の領域を接合する)、によって多色表示性能をもつ画像表示配列を製作することを特徴とする。
【0010】本発明の利点は、画像表示性能を有する本発明の有機エレクトロルミネセント装置が、画像表示性能をもたないこと以外は同等の有機エレクトロルミネセント装置に匹敵する動作特性を示すことができる、という点である。本発明のさらに重要な利点は、本発明の装置が、従来のその他の有機エレクトロルミネセント表示装置、例えば先に引用したScozzafavaらの装置、には無い多色画像表示性能を示す、という点である。
【0011】画像表示用有機エレクトロルミネセント装置を製作する本発明の方法は、エレクトロルミネセント媒体とそのエレクトロルミネセント媒体上に重ねられている電極との両方を、それらの所望のパターンで最初に付着させることができるという利点を提供する。それゆえ、エレクトロルミネセント媒体または電極のいずれかを除去して素子の所望のパターンを形成させる手順、及びこのような手順に付随する欠点が完全に排除される。
【0012】装置形状の寸法、例えば層厚は、しばしばマイクロメートルのオーダーを下回るので、図面の縮尺は見やすくするために寸法精度を犠牲にしている。
【0013】実施態様場合によって、用語「エレクトロルミネセント」の頭字語ELを使用する。用語「画素」は、当該技術分野で認識されている意味で使用されており、他の領域とは独立に励起されて発光することができる画像表示配列の領域、のことを意味する。用語「多色」は、同じ画素の異なる領域(二次画素)において異なる色相の光を発することができる画像表示配列を記述するのに用いられている。用語「全色」は、単一画素の異なる領域(二次画素)において可視スペクトルの赤、緑及び青領域で発光することができる多色画像表示配列を記述するのに用いられている。用語「ファイル」は、列または行を示すために用いられている。用語「色相」は、可視スペクトル範囲内の発光の強度プロフィールを意味し、異なる色相は視覚的に識別できる色の差を示す。
【0014】図1を参照すると、多色画像を形成することができる有機EL装置100の一部が示されている。一連の光透過性の、好ましくは透明な第一電極R1、R2、R3、R4及びR5を有する光透過性の、好ましくは透明な電気絶縁性基板101の上面が示されている。第一電極は、平行列において電気絶縁のために基板表面上で横方向に間隔をあけて配置されている。有機EL媒体ELは、この第一電極の最左部を除いた全体と接触し且つその上に重ねられている。この有機EL媒体の上には、互いに横方向に間隔をあけて平行に並べられた行において配置されている一連の第二電極C1、C2、C3、C4及びC5が重ねられている。第二電極は、有機EL媒体の下方端を越えて基板の下方部分上へ横方向に伸びている。各行において、電極は、二つの平行な横方向に間隔をあけて配置された素子a及びbに分割されている。実際には、該装置は図示したよりもはるかに大きな領域の広がりを有することができる(またほとんどすべての場合に有する)が、その重要な構造を例示するには図示した装置の部分で十分である。
【0015】図1に示した交差している格子状の破線は、一連の画素Pの境界を表している。画素は、交差している2組のファイルの配列において配置されている。一方の組のファイルが図1に示したように水平方向に伸びて列を形成し、一方、第二の組のファイルが図1に示したように垂直方向に伸びて行を形成している。図1中の下方の列が各々第一電極R1の上に重なり、そして引続く各々の画素列が、引続く第一電極R2、R3、R4及びR5の一つの上に重なっている。
【0016】図1において左方から右方へと進むと、第一行の画素は共通の覆い重なっている第二電極C1を共有し、そして引続く行の画素が引続く第二電極を同様に共有している。ある一つの行の画素C6を、覆い重なっている第二電極を取り去った領域に示して見やすくしてある。行C6では、画素を二次画素P1及びP2へさらに分割して示してある。実際には、各行の画素が同様に分割されているが、見やすくするために、各画素ではここまで詳細には示していない。各行における二次画素P1は、各第二電極の覆い重なっているa素子を含み、一方各行における二次画素P2は、各第二電極の覆い重なっているb素子を含んでいる。二次画素P1及びP2は、それらが別々の波長強度プロフィールの光を発するので色相に差異がある、という点で異なる。例えば、二次画素P1を、主として一つの一次色(すなわち、青、緑または赤)を発光するように選定し、一方、二次画素P2を、一つのその他の一次色を発光するように選定することができる。
【0017】動作時には、透明基板101の底面を見ることによって見える装置100からの特定の発光パターンが作り出される。好ましい動作モードでは、連続的に一度に一列の画素を励起し、各列の反復励起の時間間隔が人の目の検出限界、典型的には60分の1秒未満になるように選定した速度で配列の励起を反復することによって、装置を励起する。観測者には、装置はどの瞬間においても一つの列からしか発光していないにもかかわらず、すべての励起された列からの発光によって形成された画像が見える。
【0018】所望の画像パターンを作り出すため、第二電極の各々の素子a及びbを独立に電気的にアドレスし、一方、第一電極R1を基板発光へ電気的にバイアスする。例えば、二次画素P1の発光色相のみが必要で、しかも第二電極C2、C3及びC4を含む行においてのみ必要な場合、これらの行における素子aを基板発光へバイアスし、一方、残りの第二電極素子は電気的にバイアスしないか、あるいは基板発光に必要な極性とは逆の極性のバイアスを与える。第一電極R1によって接合されている画素列から所望のパターンで発光した直後に、新たなパターンの励起が第二電極素子に供給され、そして次いで第一電極素子R2をバイアスして、それが接合している画素列からの所望の発光パターンを励起する。
【0019】装置100の製造において、第一の工程は、基板101の上面に第一電極R1、R2、R3、R4及びR5を図1に示したパターンで設ける工程である。最も普通の選択は、インジウム錫酸化物をコーティングしたガラス基板である。フォトレジストのパターニングに次いで、保護されていないインジウム錫酸化物の領域をヨウ化水素酸でエッチングし、その後フォトレジストを除去してすすぎ洗いすることによって、所望のパターンの第一電極が得られる。インジウム錫酸化物、酸化錫または似たような透明な導電性酸化物を使用する代わりに、高い(例えば、4.0 eVよりも高い)仕事関数のいずれかの金属の光透過性薄層で第一電極素子を製作することができる。該第一電極の製作には、特にクロムと金の混合物が意図される。基板と第一電極の化学安定性は高く、続く加工工程でそれらの表面にフォトリソグラフィーを劣化を伴うことなく施すことができる。
【0020】装置100の続く加工工程を図2〜図4に示す。平行な画素行の境界を形成するための一連の第一壁103を、基板と第一電極の上面に形成させる。これらの図面では、第一電極R1の断面において壁を示してある。簡単で特に好ましい技法では、付着面にネガティブワーキングフォトレジストをスピンコーティングすることによって、壁103を形成する。所望であれば、そのスピンコーティング工程を乾燥後に繰り返して、フォトレジスト層厚を増加させることができる。パターン化した露光によって、露光領域のフォトレジストを架橋し不溶形とする一方で、未露光領域を現像及び洗浄技法によって除去することができる。露光による架橋が、強く、比較的硬い壁を作り出す。
【0021】代わりとなる数多くの壁形成技法が可能である。連続的なスピンコーティング工程によって厚いフォトレジスト層を構築する代わりに、透明フィルムのような軟質支持体上のフォトレジストコーティングを支持面に積層することによって、より厚いフォトレジスト層を基板上に形成させることができる。この態様では、そのフォトレジストが、積層後の像様露光によって重合するモノマーであることが典型的である。像様露光後にフィルムを剥すと、露光されなかった領域中のモノマーも除去される。
【0022】別の壁形成技法では、フォトレジストは壁を形成しないが、支持面の壁を包囲する領域に存在することによって壁のパターンを画定する。フォトレジスト層の形成は、上記態様のいずれのものをとることもできるが、像様露光は、壁を包囲する領域にフォトレジストを残存させるように選定される。ポジティブまたはネガティブどちらのワーキングフォトレジストを使用してもよい。続いて、シリカ、窒化珪素、アルミナ、等の壁形成材料を、存在するフォトレジストの上に重なるように均一に付着させ、また壁領域内の付着面に付着させる。壁が形成された後、従来の便利な何らかの技法、例えば溶剤リフト−オフ、によってフォトレジストを除去することができる。
【0023】第一壁103を画素領域の行境界に形成させた後、各画素行を二次画素へ中央で分割する境界において1組の平行な第二壁105を形成させる。第二壁の高さは第一壁よりも低いので、第二壁は、第一壁の形成前または形成後の別の加工順序で形成される。第一壁を形成するための上記技法のいずれか一つを、壁の高さを変更するように調節して採用し、第二壁を形成させることができる。第二壁は、ネガティブワーキングフォトレジストの単一のスピンキャスティングによって形成することが好ましい。
【0024】壁を正しい位置に配置すると、材料を除去するための湿式化学処理を必要として装置の効率及び/または安定性を劣化させることなく、装置の有機EL媒体と第二電極素子部分を所望のパターンで形成させることが可能となる。第一のパターニングの目的は、P1二次画素領域における第一電極上の発光の第一色相を担う部分の有機EL媒体を付着させることである。これは、矢印107によって示した方向から有機EL媒体材料を気相堆積させることによって行われる。図示した付着を完成するために、基板表面を有機EL媒体(図示なし)の源に対して配向させて、壁103を、該源と二次画素P2内にある第一電極部分との間に差し挟むようにする。付着した有機EL媒体の有効領域109は、二次画素P1内の第一電極の上に重なる。壁の側面に付着した有機EL媒体は、ルミネセンスには寄与せず、また不活性である。
【0025】便利な従来のいずれの方向性(図中のライン)付着技法でも採用できる。気相原子の平均自由行程を増加させる減圧雰囲気によって有機媒体を気相で輸送することが好ましく、よって散乱が最小限に抑えられ、また方向性の制御された方法で付着が維持される。一般に、源と所期の付着面との間隔が、有機EL媒体分子の平均自由行程よりも小さく(すなわち、有機EL媒体分子が別の気相分子に衝突するまでの平均の移動距離よりも小さく)なるように、付着工程中の周囲雰囲気圧力を低下させる。方向性輸送の要件に適合する従来の付着技法には、分子ビーム付着のいずれかの形態、例えば真空蒸着法、電子ビーム付着法またはレーザーアブレーション法、が含まれる。
【0026】加工方法の次の工程は、P2二次画素領域内の第一電極上の発光の第二色相を担う有機EL媒体の第二部分を付着させる工程である。有機EL媒体の第二部分の有効領域111は、有機EL媒体の第一部分を受容しなかった二次画素P2の領域である。このように、第二色相発光の所望のパターンは、有機EL媒体の第一部分の付着によって既に画定されているので、矢印113で示したように、有機EL媒体の第二部分を全面に均一に付着させることができる。付着は、基板上面に垂直な方向から行っても、あるいは無方向様式で行ってもよい。有機EL媒体の第一部分が第一電極の上に重なり且つ有機EL媒体の第二部分が該第一部分の上に重なっている領域では、発光の色相は、有機EL媒体の第一部分によって完全に制御され、また有機EL媒体の第二部分が存在しない場合に起こる発光の色相との差は有意ではない。第一電極に最も近い有機EL媒体の部分が発光の色相を制御する。
【0027】有機EL媒体を付着させた後、第二電極素子を付着させるために用いる金属の源を供給する。効率的な有機EL装置には、第二電極素子は、有機EL媒体と接触させるべき、より低い(4.0 eV未満)仕事関数を示す金属を必要とする。単独のまたは1種以上のより高い仕事関数金属と組み合わせた1種以上の低仕事関数金属を、従来のいずれの方向性(図中のライン)輸送技法によっても、有機EL媒体上に付着させることができる。源から有機EL媒体表面へ確実に線形輸送するために、好ましくは、減圧下で金属原子を輸送する。一般には、有機EL媒体の方向性付着について先に記載したものと同じ考慮がなされる。便利な従来のいずれの付着技法でも採用することができる。有機EL媒体の方向性付着に関連して先に述べた付着技法の他に、イオンビーム付着法またはスパッタリング法によって金属を方向性付着させることができる。金属の方向性付着を、図4において矢印115で示す。
【0028】図1に示した横方向に間隔をあけて配置された対a及びbにおける第二電極素子の付着パターンを達成するため、基板表面を、付着すべき金属の源に対して配置させて、各壁が該源と有機EL媒体の表面の隣接部分との間に差し挟まれるようにする。このような方向付けで付着を行うと、差し挟まれている壁の部分が源から移動してくる金属を遮り、よって各壁の片側の有機EL媒体上の金属付着が妨害される。これによって、隣合う第二電極素子間の間隔が設けられる。
【0029】金属を付着させるために採用される角度θ2 が、有機EL媒体を付着させるために採用される角度θ1 よりも著しく小さいことに着目されたい。角度θ1 は、二次画素の幅全体に確実に陰を与えるように選定され、一方、角度θ2 は、隣合う第二電極素子の横方向の電気絶縁を達成するに必要十分なだけの小さな角度である。
【0030】低い(<4.0 eV)仕事関数金属を単独でまたは1種以上の高仕事関数金属との組合せで付着させることは、低仕事関数金属を含有する連続層を付着させて、有機EL媒体への電子注入効率を最大にすることのみを要求する。しかしながら、連続層を提供することが期待される 200〜500 オングストロームの厚さレベルを越えて第二電極の厚さを増加させることが好ましい。最初の金属組成を用いて1μmまでまたはそれ以上の厚い電極を形成させることはできるが、低仕事関数金属を含有する連続層の初期形成後に、比較的高い仕事関数(こうして化学反応性がより低くなる)の金属のみを付着させるように組成を変更することが一般に好ましい。例えば、回路製作に普通に用いられている便利な高仕事関数金属、例えば金、銀、銅及び/またはアルミニウムを付着させることによって、第二電極素子の抵抗を低下させるために、マグネシウム(好ましい低仕事関数金属)及び銀、インジウムまたはアルミニウムの初期連続層の厚みを増加させることが好ましいであろう。有機EL媒体の界面における低仕事関数金属と、重なっている第二電極素子の厚みを完成している高仕事関数金属との組合せが特に有利である。なぜなら、低仕事関数金属は有機EL媒体との第二電極素子界面に限られているけれども、低仕事関数金属によって生み出される高い電子注入効率が十分に実現されると同時に、高仕事関数金属の存在が第二電極素子の安定性を向上させるからである。このように、高い注入効率と高い電極素子安定性の組合せがこの配置によって実現される。
【0031】今までの記述では、有機EL媒体はできるだけ単純な態様で記載されている。すなわち、有機EL媒体の第一部分109及び第二部分111は、単一の有機EL媒体層を含有する従来の装置を構築するのに用いられている従来のいずれの各種形態をとることもできる。各活性二次画素領域における有機EL媒体が、重畳された層を含有する場合に、さらに高効率の動作が実現される。効率的な従来の多層有機EL装置では、正孔注入電極の上に正孔注入及び輸送帯域が被覆され、順にその上に電子注入及び輸送帯域が被覆され、さらにその上に電子注入電極が被覆されている。効率をより高めるには、正孔注入及び輸送帯域を、正孔注入電極と接触している正孔注入層とその正孔注入層の上に重ねられている正孔輸送層とにさらに二次分割することができる。電子注入及び輸送帯域が、正孔注入及び輸送帯域と接触している発光層を含有する。少なくとも1組の二次画素において、発光層が、電子注入及び輸送帯域全体を形成することができる。別の二次画素領域では、隣の組の二次画素において発光層を形成している材料が、別の発光材料で形成されている層の上に重なっている。その重なっている材料は、正孔注入及び輸送帯域から分離されており、正孔を直接受容することがないので発光には寄与しない。さらに別の変型では、電子注入及び輸送帯域の発光部分を形成している材料の上に、より効率的な電子輸送性材料を被覆することができる。このように、これらの効率のさらに高い有機EL装置では、2層、3層、4層またはさらに多くの層の配列の有機EL媒体が存在することが普通である。
【0032】このような従来の有機EL媒体層配列を本発明の実施に適用する際に、発光が起こる一つの層を除くその他の各層を均一に付着させることができる。例えば、正孔注入及び輸送帯域が発光層の下部にある有機EL装置を構築するには、正孔注入及び輸送帯域を形成する有機EL媒体を、非方向性付着または垂直付着(矢印113の方向)によって、第一電極R1の上に均一にまず付着させる。次いで、その均一に付着した正孔注入及び輸送帯域の上に、有機EL媒体の第一部分109及び第二部分111を図2及び図3に示したように付着させる。この第一部分及び第二部分から2種の色相の異なる発光がなおも起こるが、但し、装置の効率は、第一電極と部分109及び111との間に挿入されている正孔注入及び輸送帯域の存在によって改善されている。第二電極素子a及びbを付着する前に活性部分109及び111の上に電子注入層を均一に被覆することによって、有機EL装置をさらに改善することができる。
【0033】重畳された層で有機EL媒体を形成してさらに高い効率を実現した場合でさえも、有機EL媒体の厚みは、すべての場合において、1μm未満、より典型的には5000オングストローム未満である。有機EL媒体の個々の層は、50オングストローム程度の薄さを示すと同時に十分な装置性能を達成することができる。一般には、有機EL媒体の個々の層が 100〜2000オングストロームの範囲の厚さを示し、しかもその有機EL媒体の全体の厚さが少なくとも1000オングストロームであることが好ましい。
【0034】壁103及び105は各々、有機EL媒体の全体の厚さを上回る高さをもっている。壁105の唯一の機能は、第二電極素子a及びbの横方向の分離を提供することである。それゆえ、壁105の高さは、採用する壁形成技法にとって便利な最小値となるように通常は選定される。フォトレジスト塗膜上にスピンで形成された壁105にとって都合のよい高さは、典型的には1〜10μmの範囲にあり、また典型的には有機EL媒体の全体厚の2〜20倍である。壁105に沿って第二電極素子a及びbを電気的に確実に分離するこれら電極の間隔は、5〜20度の範囲にあることが好ましいθ2 アドレシング角を採用することによって達成することができる。より大きな値のθ2 も確実な間隔を提供するが、一般には好ましくはない。なぜなら、同じ画素内部の隣合う第二電極素子a及びbの間の間隔が電気絶縁に必要な最小の間隔よりも大きくなる程度にまで、各画素内部の活性発光領域が減少されるからである。
【0035】壁103の好ましい高さは、有機EL媒体の方向性付着に採用される角度θ1と二次画素の幅によって決まる。本発明は、従来の範囲の数及び寸法における個々の画素の形成に一般に適用可能である。画素の縁長が小さいほど、その構築にはより大きな注意が必要である。微細画像形成には、全縁長が 400μm以下の画素が意図される。微細画像形成にとって好ましい二次画素幅は、 200〜20μmの範囲、最も好ましくは 100〜25μmの範囲にある。二次画素領域を画定するための有機EL媒体の方向性付着は、10〜70度、最も好ましくは30〜60度のθ1 角について一般に実行可能である。θ1 が45度である場合、壁103の高さは二次画素の幅に等しくなる。θ1 が60度である場合、壁103の高さは、幅 200μmの二次画素を製作するためには 100μmを少しだけ上回ることが必要である。壁103の高さを 150μm以下に制限することが一般には好ましい。
【0036】壁103及び105は、それらの形成にとって都合のよい任意の幅で形成することができる。壁の高さ対幅の比率を5:1〜1:1の範囲にすることは容易に達成され、また一般に好ましい。各画素の活性(すなわち、発光性)部分が、全画素面積の少なくとも25%、最適には少なくとも50%を占めることが意図される。一つの縁が 400μmよりも大きな画素については、壁の幅が全画素領域の有意な画分を占めることはめったにない。
【0037】多色画像表示装置100は本発明の要件を十分に満たすけれども、該装置には欠点がいくつかある。第一に、図1を参照すると、各電極を連続的にバイアスする際に、それが、発光する同じ列内の画素の各々に電流を運搬しなければならないことが明白である。このように、各第一電極によって運搬される電流は、発光する一列の画素を励起する際に第二電極素子の各々によって運搬される電流の合計となる。この配置の欠点は、第一電極が、見られるべき発光に対して光透過性でなければならず、またそれらの厚さがこの特性を保持するために制限されなければならないという点である。しかしながら、電極の厚さを制限することは、同時に導電性も制限してしまう。
【0038】画素を、列ではなく行において連続的にアドレスする場合、第二電極素子a及びbの各々が同じ行内のすべての画素の電流を運搬しなければならない。第二電極素子の厚さは第一電極のそれを上回ることができ、また通常は上回っているが、第二電極素子の幅は二次画素の幅よりも狭くなければならない。その結果、第二電極素子の導電性も制限されてしまう。さらに、画素を一行一行アドレスすることは望ましくない。なぜならば、各行が二つの第二電極素子を含有するために、行と列とで同じ数の画素を有する配列においては、行のアドレシング速度が列のそれの2倍でなければならないからである。発光させるために行内の二次画素をバイアスできる時間は半分にされているので、バイアス電圧を列アドレシングよりも増大させて、一列一列のアドレシングで得られるのと同等の、バイアス時の二次画素のクーロンレベル及び発光レベルを維持しなければならない。同等の発光特性を得るために、バイアス電圧を増大すること及びアドレシング速度を2倍にすることは、重大な欠点を意味する。
【0039】装置100の別の欠点は、高さが違う壁103及び105を別個の工程で形成しなければならないという点である。
【0040】図5に示した多色有機EL画像表示装置200は、装置100の画像形成性能のすべてを示すと同時に、その上述の欠点を解決する。特別に記述するものを除いては、装置200の特徴は装置100に関連して記載したいずれの態様をとることもできるので、さらに説明を要することはない。
【0041】装置200の第一電極C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16及びC17は、それぞれ素子c及びdに分割されている。第一電極素子c及びdは装置100の第一電極の光透過性を示し、また装置100の第一電極と同様に、有機EL媒体を付着させる前に基板101の上に配置されている。各第一電極素子cは、同じ行内の二次画素P1の一部を形成し且つこれらを接合しており、一方、各第一電極素子dは、同じ行内の二次画素P2の一部を形成し且つこれらを接合している。第二電極R10、R11及びR12は、装置100の第二電極素子と、同じ材料で構築され、また同じ厚さであることができるが、行ではなく列内に配置されている。列の配置によって、第二電極を、装置100の第二電極よりも幅広くすることができる。
【0042】装置200の電極配置が達成する電極電導度は、装置100において実現できるものよりも高くなる。一列の画素をアドレスする際、第一電極素子c及びdの各々を独立にバイアスして、一列内の画素からの所望の発光パターンを達成する。同時に、第二電極の一つをバイアスして、選定された列内の発光を励起する。各第一電極素子は、一つの二次画素だけを励起し、また一つの二次画素の電流のみを運搬する。選定された列内の第二電極は、その列内で発光させるべく励起されたすべての二次画素の電流を運搬する。第二電極は、光透過性である必要がないため、第一電極素子よりも厚く且つ幅広くすることができるので、装置200の電極の電導度を装置100の電極のそれよりも高くすることができる。装置200においては、装置100に関連して述べた2倍の走査速度を要する一行毎の走査方法によることなく、このような電導度の利点が実現される。
【0043】装置200の画素Pの一つの構築について図6、7及び8に示す。壁205は、隣合う列における画素の境界に沿って配置されており、各壁は一列全体で共有されている。壁203は、各画素の行の境界において、隣合う画素の第一電極素子c及びdの間に配置されている。壁203は、一つの隣合う壁205からは短い距離または空隙G1を隔てて配置され、また残りの隣合う壁205からは有意に長い距離または空隙G2を隔てて配置されている。
【0044】壁203は、有機EL媒体の付着に際して、壁103と同じ機能を発揮する。第一部分109に関連して上述した同じ手順を採用して有機EL媒体の第一部分209を付着させる際に、二次画素P2の活性領域である領域P2Aを除いた全画素領域において付着が起こる。有機EL媒体の第二部分211を、第二部分111と同様に付着させる。簡略化のため、壁上に付着し、よって有効な機能を発揮することがない有機EL媒体部分は、ここでは、また後に記載する実施態様では示していない。
【0045】二次画素P2の活性領域P2Aが装置100におけるものよりも若干小さいことに着目されたい。なぜならは、列及び行の境界における壁の間の間隔が、二次画素P2領域内で有機EL媒体の第一部分209を排除できない空隙G1及びG2の幅をもつ領域を残しているからである。空隙G2の領域内の有機EL媒体の第一部分の色相の望ましくないエレクトロルミネセンスを防止するため、第一電極素子を基板上に形成した後で且つ壁を形成する前に、絶縁性パッド207を空隙領域内に形成する。その絶縁性パッドは、便利ないずれの絶縁層によって形成させてもよい。絶縁性パッドの厚みは、好ましくは1μm未満、最も好ましくは5000オングストローム未満である。絶縁性パッドを形成するには、便利ないずれの絶縁性材料を使用してもよいが、本目的にとってはシリカが理想的な絶縁材である。絶縁性パッドのパターニングは、便利ないずれかの技法によって、好ましくは従来のフォトリソグラフィーによって行うことができる。図示したように、各絶縁性パッドは、隣合う列の画素の境界において配置され、また空隙G1と、壁205の一つと、空隙G2との隣接領域にわたって広がっている。実際には、望ましくないエレクトロルミネセンスを防止するためには、絶縁性パッドが空隙G2の領域のみを占めることが必要であり、しかもこのことは二次画素P2の領域内だけのことである。しかしながら、二次画素P1及びP2の両方に渡る連続ストリップとして絶縁性パッドを構築する方が簡単である。二次画素P1を横切ると、これらの二次画素の各々の活性領域が領域P2Aまで減少する。こうして、二次画素の活性領域が等しくなってバランスがとれる。
【0046】図示したように構築した場合には、装置200に絶縁性パッドを導入することが好ましい。しかしながら、絶縁性パッドが必要であることはない。絶縁性パッドが空隙G2の領域内に存在しない場合でさえも、第一電極素子とその上に重なっている第二電極との間の縦方向の間隔が、両方の有機EL媒体部分209及び211の存在によって、活性二次画素領域と比較して増加されている。これによって、これらの領域内の電極間の電位の傾きが低減され、その結果エレクトロルミネセンスが減少することになる。こうして、二次画素P2からの発光色相は、空隙G2からの望ましくない発光によっていくらかはシフトするが、それでもなお、要求の厳しさが少ない画像形成用途には許容できるものである。
【0047】図7では、同じ列内の隣合う画素を接合している第二電極R11が示されている。図2で示した壁105に相当する壁が無いことに着目されたい。装置100における壁105の機能は壁205によって発揮され、また図8から明白である。第二電極R11を形成する金属は、矢印215によって示したように角度θ3で方向性付着される。壁205の高さは壁103の高さに等しいので、壁205の高さは壁105の高さよりも大きく、また角度θ3 は角度θ2 に等しいか、またははるかに小さい。θ3 の角度が少なくとも5度であることが一般に好ましい。
【0048】行及び列の境界における壁の間の空隙G1によって、各第二電極は、各列の全長にわたって隣合う第二電極から横方向に間隔をあけて配置されることになる。空隙G2は、同じ列内の画素間に壁を含まない交差境界を提供するので、第二電極によって横切られることができ、電気的連続性の確実性が向上する。壁の上に重なっている金属は、壁の縁の曲率半径が小さいために、局部的な電気不連続性を提供しやすい。しかしながら、壁の上に重なっている金属の電気連続性が、特定の第二電極構成にとって十分であることがわかる場合には、空隙G2を完全に除外し、順に絶縁性パッド207を除外することができる。このことによって、二次画素の活性領域が増加する。それはまた、空隙G2によって分離されるであろう各画素領域内の壁203と壁205を交差させることも可能にする。このことは、加工中に、壁を横方向に支え、また壁に不注意な損傷を与える危険性を低減する効果を有する。
【0049】装置200の構築に関する顕著な利点は、すべての壁を同じ高さのものとすることができ、よって同時に加工できるという点である。このことは加工を簡便化する。
【0050】多色有機EL画像表示装置100及び200は、各種の画像カラーの組合せを含有することができる。各画素において、以下の組合せが可能である:(a)第一の二次画素だけが第一の色相の光を発する;
(b)第二の二次画素だけが別の色相の光を発する;
(c)第一及び第二の両方の二次画素が、目が混合して第三の色相に見える知覚を作り出す光を発する;
(d)どちらの二次画素も発光せずに、その他の画素における発光のための黒色のバックグラウンドを作り出す。
こうして、2種の色相しか発光できない二次画素を用いて、多様な画像色相が可能である。
【0051】それにもかかわらず、多色装置100及び200は、人間の目が認識できる全範囲の色相の組合せの画像を表示する性能に欠ける。全色画像表示性能を得るためには、加法混色の3原色の個別の色を各々が発光できる少なくとも三つの二次画素に各画素を分割する必要がある。全色画像表示には、青、緑及び赤の3色1組の発光原色が最も普通に用いられる。
【0052】多色有機EL画像表示装置300及び400が、全色画像表示性能を有する本発明による装置構成を例示する。図9及び図15に示した装置300及び400は、それぞれ図1及び図5に示した装置100及び200と本質的に同じであるが、但し、各画素Pは三つの二次画素P1、P2及びP3に二次分割されており、その各々が、スペクトルの青、緑及び赤の部分の異なる一つにおけるピーク波長で発光することができる。各画素は、二つの代わりに三つの二次画素に二次分割されているので、装置100における二つの第二電極素子a及びbは、装置300では三つの第二電極素子e、f及びgに替わっている。同様に、装置200における第一電極素子c及びdは、装置400では三つの第一電極素子h、i及びjに替わっている。
【0053】装置300の構築は、特別に記述するものを除いて、装置100の構築について採用したものと同様である。装置300の製作を図10〜図14によって例示する。壁303a及び303bは壁103と同じであることができる。壁103と同様に、隣合う画素の境界に壁303aが配置されている。壁303bは、P2及びP3の二次画素境界に配置されている。壁305は壁105と類似しており、二次画素P1及びP2の共有された境界に配置されている。
【0054】有機EL媒体の第一部分309を、第一の二次画素領域P1内に付着させて第一電極R1の上に重ねる場合、矢印307aで示した方向における角度θ1 で付着させる。壁303a及び303bは、第二及び第三の二次画素領域内の第一電極上への付着を妨害するが、より低い壁305は、第一の二次画素領域内での有機EL媒体の第一部分の所望の付着を可能にしていることに着目されたい。この付着パターンを図11に示す。
【0055】図12を参照すると、矢印307bによって示されるように、方向性付着の角度を単に−θ1 に反対にすることによって、第二の発光原色を担う有機EL媒体の第二部分311を第二の二次画素P2内に選択的に付着させている。
【0056】図13を参照すると、第三の発光原色を担う有機EL媒体の第三部分312を、矢印313で示されるように均一に付着させている。第一及び第二の二次画素内では、有機EL媒体の第三部分は、その前に付着されている部分の上に重なっているが、これらの領域内の発光色相を変化させる効果はない。第三の二次画素P3内では、第三部分312が第一電極R1に最も近い発光材料であり、そして発光の色相を制御する。
【0057】図14を参照すると、各行内で第一、第二及び第三の二次画素を接続する第二電極素子e、f及びgの形成が、図4に関連して記述した同じ手順によって行われている。矢印315が付着の方向を示している。
【0058】装置300は、装置100の利点のすべてを示し、その上全色画像形成性能を有している。青、緑及び赤の原色発光を採用すると、各画素から以下の発光の組合せが可能である:(a)一つの二次画素を励起して青色を発光させる;
(b)一つの二次画素を励起して緑色を発光させる;
(c)一つの二次画素を励起して赤色を発光させる;
(d)二つの二次画素を励起して青及び緑色を発光させて、シアンの知覚を作り出す;
(e)二つの二次画素を励起して青及び赤色を発光させて、マゼンタの知覚を作り出す;
(f)二つの二次画素を励起して緑及び赤色を発光させて、イエローの知覚を作り出す;
(g)すべての二次画素を励起して、白色発光を作り出す;及び(h)いずれの二次画素も励起せずに、暗い、実質的に黒色のバックグラウンドを提供する。
【0059】全色有機EL媒体画像表示装置400の画素Pを図16〜図18に示す。壁405は画素の列の境界に沿って配置され、各壁は隣合う列の画素によって共有されている。壁403aは、各画素の行の境界において、隣合う画素の第一電極素子hとjの間に配置されている。画素内の二次画素P2及びP3の境界に、別の新たな壁403bが配置されている。壁403a及び403bは、一方の隣合う壁405からは短い距離または空隙G1によって隔たれ、また残りの隣合う壁405からは有意に長い距離または空隙G2によって隔たれて配置されている。
【0060】有機EL媒体の第一部分409を、第一部分109及び209を形成するのに用いた手順によって付着させる際に、画素P2及びP3の活性領域であるそれぞれ領域P2A及びP3Aを除いた画素の全領域内に付着が起こる。空隙G1及びG2の領域内では、第一部分が絶縁性パッド407の上に重なり、よって第一の二次画素を活性領域P1Aに限定する。有機EL媒体の第二及び第三部分411及び413は、先に述べた第二及び第三部分311及び312と同様に、それぞれ活性二次画素領域P2A及びP3A内に付着される。第二電極R11の付着は、装置200に関連して記載したものと同様であり、方向性付着の矢印415及び付着角度θ3 によって示される。
【0061】装置400は、装置200の利点のすべてを有し、その上装置300の全色画像形成性能を有する。
【0062】本発明の画像表示用有機EL装置の材料は、従来の有機EL装置のいずれの態様をとることもでき、例えば、先に引用したScozzafavaのもの;Tangの米国特許出願第 4,356,429号;VanSlykeらの米国特許出願第 4,539,507号;VanSlykeらの米国特許出願第 4,720,432号;Tangらの米国特許出願第 4,885,211号;Tangらの米国特許出願第 4,769,292号;Perry らの米国特許出願第 4,950,950号;Littman らの米国特許出願第 5,059,861号;VanSlykeの米国特許出願第 5,047,687号;Scozzafavaらのカナダ国特許出願第 2,046,439号;VanSlykeらの米国特許出願第5,059,862号;VanSlykeらの米国特許出願第 5,061,617号に記載されている。
【0063】本発明の装置にとって特に好ましい基板は透明ガラス基板である。本発明の装置の好ましい第一電極は、ガラス基板上に直接被覆された透明なインジウム錫酸化物電極である。
【0064】第一電極の上に被覆された有機EL媒体は、順に重畳された層でできていることが好ましい。これらの層のうち、エレクトロルミネセンスを特別に担う一つまたは二つの層のみを、上述のように領域を制限した方法で付着させる必要がある。もちろん、所望であれば、有機EL媒体のエレクトロルミネセント部分をパターニングするために上述した技法や配置を、有機EL媒体のその他の層部分の付着に採用できることが認識される。
【0065】有機EL媒体が第一電極と接触している領域全体の上に、Adler の米国特許出願第 3,935,031号またはTangの米国特許出願第 4,356,429号明細書に開示されているタイプのポルフィリン系化合物を含んで成る正孔注入層を、均一層として付着することが特に好ましい。
【0066】好ましいポルフィリン系化合物は、以下の構造式(I)で示される:
【0067】
【化1】
【0068】上式中、Qは−N=または−C(R)=であり;Mは金属、金属酸化物、または金属ハロゲン化物であり;Rは水素、アルキル、アラルキル、アリール、またはアルカリルであり;そしてT1 及びT2 は水素を表すか、あるいはアルキルまたはハロゲンのような置換基を含有できる不飽和六員環を共に完成する。好ましいアルキル部分は1〜6個の炭素原子を含有し、一方フェニルが好ましいアリール部分を構成する。
【0069】別の好ましい態様では、構造式(II)に示したように、ポルフィリン系化合物は構造式(I)の金属原子を2個の水素で置換した別の化合物である:
【0070】
【化2】
【0071】有用なポルフィリン系化合物の非常に好ましい例は、金属を含有しないフラロシアニンと金属を含有するフタロシアニンである。ポルフィリン系化合物は一般に、そしてフタロシアニンは特に、いずれかの金属を含有し得るが、金属が2またはそれ以上の正の原子価数を有することが好ましい。好ましい金属の例として、コバルト、マグネシウム、亜鉛、パラジウム及びニッケルが挙げられ、そして特に好ましい金属は銅、鉛、及び白金である。
【0072】有用なポルフィリン系化合物の例として、以下の化合物が挙げられる:PC−1;ポルフィンPC−2;1,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィン銅(II)
PC−3;1,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィン亜鉛(II)
PC−4;5,10,15,20- テトラキス(ペンタフルオロフェニル)-21H,23H- ポルフィンPC−5;珪素フタロシアニンオキシドPC−6;アルミニウムフタロシアニンクロリドPC−7;フタロシアニン(金属不含)
PC−8;ジリチウムフタロシアニンPC−9;銅テトラメチルフタロシアニンPC−10;銅フタロシアニンPC−11;クロムフタロシアニンフルオリドPC−12;亜鉛フタロシアニンPC−13;鉛フタロシアニンPC−14;チタンフタロシアニンオキシドPC−15;マグネシウムフタロシアニンPC−16;銅オクタメチルフタロシアニン
【0073】本発明による装置の好ましい構成では、正孔注入層の上に正孔輸送層を均一に付着させる。正孔輸送層が少なくとも一種の正孔輸送性芳香族第三アミンを含有することが好ましい。該第三アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1個は芳香環の員である)にのみ結合している三価窒素原子を少なくとも1個含有する化合物であると理解される。ある一態様では、芳香族第三アミンはアリールアミン、例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、または高分子量アリールアミンであることができる。例示的なモノマーのトリアリールアミンがKlupful らの米国特許出願第 3,180,730号明細書に例示されている。ビニルまたはビニリデン基で置換された及び/または少なくとも一つの活性水素含有基を含有する、その他の適当なトリアリールアミンがBrantleyらの米国特許出願第 3,567,450号及び同第 3,658,520号明細書に開示されている。
【0074】好ましい種類の芳香族第三アミンは、少なくとも二つの芳香族第三アミン部分を含むものである。このような化合物には、構造式( III):
【0075】
【化3】
【0076】(上式中、Q1 及びQ2 は独立に、芳香族第三アミン部分であり、そしてGは結合基、例えばアリレン、シクロアルキレン、もしくはアルキレン基、または炭素−炭素結合である)で示される化合物が含まれる。
【0077】構造式( III)を満たし且つ二つのトリアリールアミン部分を含有する特に好ましい種類のトリアリールアミンは、構造式(IV):
【0078】
【化4】
【0079】(上式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に、水素原子、アリール基、またはアルキル基を表すか、あるいはR1 及びR2 は一緒にシクロアルキル基を完成する原子を表し;そしてR3 及びR4 はそれぞれ独立に、構造式(V):
【0080】
【化5】
【0081】(上式中、R5 及びR6 は独立に、特定のアリール基である)で示されるような、ジアリール置換アミノ基で順に置換されたアリール基を表す)を満たすものである。
【0082】別の好ましい種類の芳香族第三アミンはテトラアリールジアミンである。好ましいテトラアリールジアミンは、アリレン基によって結合されている構造式(IV)で示されるような二つのジアリールアミノ基を含む。好ましいテトラアリールジアミンには、構造式(VI):
【0083】
【化6】
【0084】(上式中、Areはアリレン基であり、nは1〜4の整数であり、そしてAr、R7 、R8 、及びR9 は独立に特定のアリール基である)で示されるものが含まれる。
【0085】上記構造式(III )、(IV)、(V)、及び(VI)の各種アルキル、アルキレン、アリール、及びアリレン部分は各々順に置換されていてもよい。典型的な置換基には、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、並びにハロゲン例えばフッ化物、塩化物及び臭化物が含まれる。各種アルキル及びアルキレン部分は典型的には1〜5個の炭素原子を含有する。シクロアルキル部分は3〜10個の炭素原子を含有することができるが、典型的には、5、6、または7個の環炭素原子を含有する、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチル環構造である。アリール及びアリレン部分はフェニル及びフェニレン部分であることが好ましい。
【0086】有用な芳香族第三アミンの代表的なものが、Berwick らの米国特許出願第 4,175,960号及びVanSlykeらの同第 4,539,507号明細書に開示されている。Berwickらは有用な正孔輸送性化合物として、N−置換カルバゾールをさらに開示している。N−置換カルバゾールは、先に開示したジアリール及びトリアリールアミンの環架橋変体として見ることができる。
【0087】先に引用したVanSlykeらのカナダ国特許出願第 2,046,135号明細書の教示に従うと、上述の芳香族第三アミン中の第三級窒素原子に直接結合しているアリール基の1個以上を、少なくとも2個の縮合芳香環を含有する芳香族部分に換えることによって、短期及び長期両方の動作期間においてより高い有機EL素子安定性を達成することが可能である。芳香族第三アミンが、(1)少なくとも二つの第三アミン部分を含んで成り且つ(2)少なくとも2個の縮合芳香環を含有する芳香族部分を第三アミン部分に結合して含有しているものである場合に、短期間動作(0〜50時間)及び長期間動作(0〜300時間以上)両方の最良の組合せが達成される。第三アミンの縮合芳香環部分は、24個以上の炭素原子を含有し得るが、好ましくは10〜16個の環炭素原子を含有する。不飽和五及び七員環を六員芳香環(すなわち、ベンゼン環)に縮合させて有用な縮合芳香環部分を形成することは可能であるが、一般に、縮合芳香環部分が少なくとも2個の縮合ベンゼン環を含むことが好ましい。2個の縮合ベンゼン環を含有する縮合芳香環部分の最も簡単な形態はナフタレンである。それゆえ、好ましい芳香環部分はナフタレン部分である。ナフタレン部分とは、ナフタレン環構造を含有するすべての化合物を包含するものと理解される。一価形では、ナフタレン部分はナフチル部分であり、そして二価形では、ナフタレン部分はナフチレン部分である。
【0088】有用な芳香族第三アミンの例を以下に記載する:ATA−1;1,1-ビス(4-ジ-p- トリルアミノフェニル)シクロヘキサンATA−2;1,1-ビス(4-ジ-p- トリルアミノフェニル)フェニルシクロヘキサンATA−3;4,4'''- ビス(ジフェニルアミノ)クァテルフェニルATA−4;ビス(4-ジメチルアミノ-2- メチルフェニル)フェニルメタンATA−5;N,N,N-トリ(p-トリル)アミンATA−6;4-(ジ-p- トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p- トリルアミノ)スチリル]スチルベンATA−7;N,N,N',N'-テトラ-p- トリル-4,4'-ジアミノビフェニルATA−8;N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニルATA−9;N-フェニルカルバゾールATA−10;ポリ(N-ビニルカルバゾール)
ATA−11;4,4'- ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−12;4,4"- ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]-p- ターフェニルATA−13;4,4'- ビス[N-(2-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−14;4,4'- ビス[N-(3-アセナフテニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−15;1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ナフタレンATA−16;4,4'- ビス[N-(9-アントリル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−17;4,4"- ビス[N-(1-アントリル)-N- フェニルアミノ]-p- ターフェニルATA−18;4,4'- ビス[N-(2-フェナントリル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−19;4,4'- ビス[N-(8-フルオランテニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−20;4,4'- ビス[N-(2-ピレニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−21;4,4'- ビス[N-(2-ナフタセニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−22;4,4'- ビス[N-(2-ペリレニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−23;4,4'- ビス[N-(1-コロネニル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルATA−24;2,6-ビス(ジ-p- トリルアミノ)ナフタレンATA−25;2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレンATA−26;2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N- (2-ナフチル)アミノ]ナフタレンATA−27;4,4"- ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]ターフェニルATA−28;4,4'- ビス{N-フェニル-N- [4-(1-ナフチル)フェニル]アミノ}ビフェニルATA−29;4,4'- ビス[N-フェニル-N- (2-ピレニル)アミノ]ビフェニルATA−30;2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレンATA−31;4,4"- ビス(N,N-ジ-p- トリルアミノ)ターフェニルATA−32;ビス(N-1-ナフチル)(N-2-ナフチル)アミン。
【0089】正孔輸送層の上には装置の発光層が重ねられている。各画素において、異なる発光層が各二次画素内の正孔輸送層と接触している。所望の発光の各々の色相には、異なる発光層を選ぶことが必要である。
【0090】少なくとも一つの発光層が、以下の式を満たす金属オキシノイド系電荷受容性化合物を使用することが好ましい。
【0091】
【化7】
【0092】上式中、Meは金属を表し、nは1〜3の整数であり、そしてZはオキシン環を完成するのに必要な原子を表す。
【0093】有用なキレート化オキシノイド化合物の例として、以下が挙げられる:CO−1;アルミニウムトリスオキシンCO−2;マグネシウムビスオキシンCO−3;ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラート]亜鉛CO−4;アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)
CO−5;インジウムトリスオキシンCO−6;リチウムオキシンCO−7;ガリウムトリス(5−クロロオキシン)
CO−8;カルシウムビス(5−クロロオキシン)
CO−9;ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]
CO−10;ジリチウムエピンドリジオンCO−11;アルミニウムトリス(4−メチルオキシン)
CO−12;アルミニウムトリス(6−トリフルオロメチルオキシン)。
【0094】各種の金属オキシノイドのうち最も好ましいものはアルミニウムのトリスキレートである。これらのキレートは、3個の8−ヒドロキシ−キノリンと1個のアルミニウム原子とを反応させることによって生成する。これらのキレートには、特に好ましい緑色発光体であるアルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノール)アルミニウム]及びアルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム]が含まれる。
【0095】スペクトルの青色部分で発光する発光層を構築するためには、共通に譲渡されたVanSlykeらの米国特許出願第 738,777号(1991年 1月 8日出願、発明の名称「IMPROVED BLUE EMITTING INTERNAL JUNCTION ORGANIC ELECTROLUMINESCENT DEVICE (III)」)に開示されているタイプの混合配位子アルミニウムキレートを使用することが好ましい。特に好ましい態様では、該特許に開示されている混合配位子アルミニウムキレートは、ビス(RS −8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム(III )キレートを含む。ここで、RS は、アルミニウム原子に対して2個を超える8−キノリノラート配位子の結合をブロックするように選ばれた8−キノリノラート環の環置換基である。これらの化合物は、以下の式:
【0096】
【化8】
【0097】(上式中、Qは各場合において、置換8−キノリノラート配位子を表し、RS は、アルミニウム原子に対する2個を超える置換8−キノリノラート配位子の結合を立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を表し、O−Lはフェノラート配位子であり、そしてLは、フェニル部分を含んで成る炭素原子数6〜24個の炭化水素である)によって表すことができる。
【0098】2個の置換8−キノリノラート配位子及び1個のフェノラート配位子を含むアルミニウムキレートを使用する利点は、有機EL装置の好ましい緑色発光団であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III )キレートの望ましい物理特性のすべてが、発光がスペクトルの青色領域に移動しても保持されるという点にある。
【0099】フェノラート配位子の存在が、発光をスペクトルの青色部分へ移動させる原因である。本明細書で用いられる語句「フェノラート配位子」は、フェノールの脱プロトン化したヒドロキシル基によってアルミニウムに結合した配位子を意味する、当該技術分野で認識されている用語法で使用されている。
【0100】最も簡単な態様では、フェノラート配位子はヒドロキシベンゼンの脱プロトン化によって提供され得る。有機EL素子性能は、500 nmよりも短波長における極大発光、及び許容できる素子安定性(初期発光強度の少なくとも半分を50時間を超えて保持すること)が実現され得ることを例示した。
【0101】性能改善のための努力において、続いて置換フェノールが検討された。メトキシ及びジメトキシ置換フェノラート配位子が比較的弱い発光強度を示すことが観測された。メトキシ置換基は電子供与性なので、電子吸引性の強い置換基、例えばハロ、シアノ、及びα−ハロアルキル置換基をもつフェノールについても検討した。アルミニウムはこれらの配位子とキレートを形成するが、発光団の気相転換がうまくいかなかった。
【0102】式VIIIのアルミニウムキレートに好ましいフェノラート配位子が、HO−Lフェノール(ここで、Lはフェニル部分を含んで成る炭素原子数6〜24個の炭化水素である)から誘導されることが決められた。これはヒドロキシベンゼンのみならず、各種の炭化水素置換ヒドロキシベンゼン、ヒドロキシナフタレン、及び他の縮合環炭化水素も含む。フェニル部分のモノメチル置換は発光波長を短くするので、フェノラート配位子が少なくとも7個の炭素原子を含有することが好ましい。一般に、非常に多数の炭素原子を有するフェノラート配位子を使用して得られる利点はほとんどない。しかしながら、18個の芳香環炭素原子を有するフェノラート配位子の検討は、高いレベルの安定性を示した。こうして、フェノラート配位子が総数7〜18個の炭素原子を含有することが好ましい。
【0103】フェノラート配位子のフェニル部分の脂肪族置換基は、それぞれ1〜12個の炭素原子を含有することを意図される。炭素原子数1〜3個のアルキルフェニル部分置換基が特に好ましく、メチル置換基を用いると最良の全体特性が生じることが観測された。
【0104】フェニル部分の芳香族炭化水素置換基は、フェニルまたはナフチル環であることが好ましい。フェニル部分のフェニル、ジフェニル、及びトリフェニル置換基はすべて非常に望ましい有機EL素子特性を生み出すことが観測された。
【0105】αまたはβナフトール由来のフェノラート配位子は、安定性の非常に高いアルミニウムキレートを生じることが観測された。ヒドロキシベンゼン由来のフェノラート配位子により示されたものと同様に、より短波長への発光移動の程度が限定されることも認められた。以下に記述するように、青色発光性の蛍光色素と組み合わせてナフトラート配位子含有アルミニウムキレートを使用することによって、非常に望ましい素子の構築が可能である。
【0106】各種フェノラート配位子のオルト、メタ、及びパラ置換類似体を比較したところ、炭化水素置換基が占めるフェニル部分の環の位置が寄与する性能の差は、あったとしてもほとんどないことがわかった。
【0107】好ましい態様では、アルミニウムキレートは、以下の式、
【0108】
【化9】
【0109】(上式中、Q及びRS はさきに定義したとおりであり、そしてL1 、L2 、L3 、L4 、及びL5 は、集合的に12個以下の炭素原子を含有し、しかも各々は独立して、水素または炭素原子数1〜12個の炭化水素基を表し、但し、L1 とL2 は一緒に、あるいはL2 とL3 は一緒に縮合ベンゾ環を形成することができる)を満たす。
【0110】8−キノリノラート環の一方または両方が立体妨害置換基以外の置換基を含有することはできるが、環のさらなる置換は必要ではない。環一個当たり一個を超える置換基が立体妨害に寄与し得ることがさらに認識されている。各種の立体妨害置換基となり得るものは、以下の式:
【0111】
【化10】
【0112】(上式中、Lは上述のいずれの態様でもとることができ、そしてR2 〜R7 は8−キノリノラート環の2〜7の各位置における置換可能性を表す)を参照することによって最も容易に想見される。環の4、5、及び6位における置換基は、1個のアルミニウム原子に3個の8−キノリノラート環が結合するのを立体的に妨害するには好ましくない配置である。環の3位または7位における大きな置換基は十分な立体障害を提供できることが期待されるが、かさ高い置換基の導入は、分子の性能を高めることなく分子量を実質的に増加させるので、全体の性能を低下させる。しかるに、環の2位は立体障害を提供するのに適しており、そしてこれらの環の位置の一つにおける非常に小さな置換基(例えば、メチル基)でさえも効果的な立体妨害置換基を提供する。合成上の都合からは、立体妨害置換基が環の2位に配置されていることが特に好ましい。本明細書で用いる語句「立体妨害」は、RS −Q配位子がアルミニウム原子の第三の配位子としての包含に対しては競争できないことを示すのに用いられる。
【0113】青色発光の獲得を主に担うのはフェノラート配位子であるが、8−キノリノラート環に対する置換基も、有用な色相移動作用をなし得ることが観測された。キノリン環は、縮合されたベンゾ環及びピリド環から成る。キノリン環のピリド環成分が1個以上の電子供与性置換基で置換されると、発光の色相がスペクトルの緑色領域からより主要な青色発光へとシフトする。ピリド環のオルト位及びパラ位(すなわち、キノリン環の2位及び4位)における電子供与性置換基は発光の色相に特に影響を与えるが、一方、ピリド環のメタ位(キノリン環の3位)が発光の色相に与える影響は比較的小さい。実際に、所望であれば、青色発光特性を保持させながら環の3位に電子受容性置換基を配置できることが認められている。立体障害は電子供与性または電子受容性とはまったく無関係であって、R2 は理論上電子供与性基または電子受容性基のいずれの態様でもとり得るが、R2 を電子供与性基の中から選択することが好ましい。第二の電子供与性基R4 を付加することによって、スペクトルの緑色部分から色相をさらにシフトすることが達成される。R3 を存在させる場合には、合成上便利ないずれの態様でもとり得るが、これもまた電子供与性であることが好ましい。
【0114】特定の置換基が電子供与性か電子受容性かを決めることは当業者にとって周知である。共通の部類の置換基をすべて反映する、数百の最も普通の置換基の電子供与性または電子受容性が測定され、定量され、そして文献に記載されている。電子供与性及び受容性の最も普通の定量化法はハメットσ値に関するものである。負のハメットσ値を示す置換基は電子供与性であり、逆に正のハメットσ値を示す置換基は電子受容性である。水素のハメットσ値は0であり、他の置換基はそれらの電子受容性または供与性に直接関連して正方向または負方向に増加するハメットσ値を示す。Lange のHandbook of Chemistry, 12th Ed., McGraw Hill, 1979, Table 3-12, pp.3-134〜3-138 が、数多くの通常の置換基に対するハメットσ値を記載している。ハメットσ値はフェニル環置換を基準として割り付けられているが、それらはキノリン環について電子供与性置換基及び電子受容性置換基を定性的に選択するのに利用可能な案内を提供する。
【0115】すべての因子、すなわち立体妨害性、合成上の利便性、及び電子供与性または受容性をまとめて考慮すると、R2 はアミノ、オキシ、または炭化水素置換基であることが好ましい。R2 がメチル基であり且つ唯一の8−キノリノラート環置換基である(すなわち、R3 、R4 、R5 、R6 、及びR7 は各々水素である)場合でも、十分な立体障害が提供される。こうして、いずれかのアミノ基、オキシ基、または少なくとも1個の炭素原子を有する炭化水素基が、好ましい置換基に含まれる。いずれの一炭化水素部分においても、存在する炭素原子数が10個を超えないことが好ましく、そしてそれが6個を超えないことが最適である。こうして、R2 は、−R' 、−OR' 、または−N(R" )R' (式中、R' は炭素原子数1〜10個の炭化水素であり、そしてR" はR' または水素である)の態様をとることが好ましい。好ましくは、R2 は10個以下の炭素原子を、そして最適には6個以下の炭素原子を含有する。
【0116】R3 及びR4 は、上述の理由によって、R2 よりも広い範囲の態様をとり得るが、R2 と同じ好ましい置換基群の中から選択することを特に意図する。環の3位及び4位の置換は必要ではないので、R3 及びR4 はさらに水素であってもよい。
【0117】環の5、6、または7位の置換は必要ではないので、R5 、R6 、及びR7 は水素を表すことができる。好ましい態様では、R5 、R6 、及びR7 は、合成上都合のよい電子受容性置換基、例えばシアノ、ハロゲン、並びに10個以下の、最も好ましくは6個以下の炭素原子を含有するα−ハロアルキル、α−ハロアルコキシ、アミド、スルホニル、カルボニル、カルボニルオキシ、及びオキシカルボニル置換基、から選択することができる。
【0118】以下は、本発明の要件を満たす好ましい混合配位子アルミニウムキレートの特別な例を構成するものである:PC−1;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム(III )
【0119】
【化11】
【0120】PC−2;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(オルト−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0121】
【化12】
【0122】PC−3;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(メタ−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0123】
【化13】
【0124】PC−4;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0125】
【化14】
【0126】PC−5;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(オルト−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0127】
【化15】
【0128】PC−6;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(メタ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0129】
【化16】
【0130】PC−7;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0131】
【化17】
【0132】PC−8;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0133】
【化18】
【0134】PC−9;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0135】
【化19】
【0136】PC−10;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0137】
【化20】
【0138】PC−11;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0139】
【化21】
【0140】PC−12;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0141】
【化22】
【0142】PC−13;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0143】
【化23】
【0144】PC−14;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0145】
【化24】
【0146】PC−15;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0147】
【化25】
【0148】PC−16;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0149】
【化26】
【0150】PC−17;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III )
【0151】
【化27】
【0152】PC−18;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム(III )
【0153】
【化28】
【0154】PC−19;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(オルト−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0155】
【化29】
【0156】PC−20;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0157】
【化30】
【0158】PC−21;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(メタ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0159】
【化31】
【0160】PC−22;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0161】
【化32】
【0162】PC−23;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム(III )
【0163】
【化33】
【0164】PC−24;ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)(パラ−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0165】
【化34】
【0166】PC−25;ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III )
【0167】
【化35】
【0168】PC−26;ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)(オルト−クレゾラート)アルミニウム(III )
【0169】
【化36】
【0170】PC−27;ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム(III )
【0171】
【化37】
【0172】上述のように青色発光のためにビス(Rs −8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム(III )キレートを使用する代わりに、青色発光性の発光層として青色発光性のビス(Rs −8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(Rs −8−キノリノラート)アルミニウム(III )化合物を使用することが意図される。これらの化合物を有機EL装置に使用することが、VanSlykeの共通に譲渡された米国特許出願第 738,776号(1991年、 1月 8日出願、発明の名称「IMPROVED BLUE EMITTING INTERNAL JUNCTION ORGANIC ELECTROLUMINESCENT DEVICE (I)」)に教示されている。これらの化合物は、広くは以下の式を満たし:
【0173】
【化38】
【0174】そして、特別に好ましい態様は以下の式を満たす:
【0175】
【化39】
【0176】上式中、Q、Rs 及びR2 〜R7 は、先に式VIII及びXに関連して記載したものと同じである。
【0177】以下の化合物は、式XI及びXII を満たす好ましい化合物の特別例である:
【0178】BA−1;ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0179】
【化40】
【0180】BA−2;ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0181】
【化41】
【0182】BA−3;ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0183】
【化42】
【0184】BA−4;ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラート)アルミニウム(III )
【0185】
【化43】
【0186】BA−5;ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0187】
【化44】
【0188】BA−6;ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム(III )
【0189】
【化45】
【0190】1組の二次画素内の発光層は、式VIII〜XII の青色発光性化合物のうちのいずれか一つまたはいずれかの組合せから成ることもできる。発光層内に青色発光性化合物を単独で使用する代わりに、先に引用したTangらの米国特許出願第 4,769,292号明細書の教示に従い、青色発光性蛍光色素用のホストとして使用することができる。1種以上の蛍光色素と式VIII〜XII のうちのいずれかを満たす1種以上の化合物との任意の青色発光性混合物を使用することができる。
【0191】本発明の一つの好ましい態様では、有機EL媒体の青色発光性部分が、ホストとしての式VIII〜XII の化合物と、ペリレンまたはベンゾピレン発色単位を含有する少なくとも1種の青色発光性蛍光色素とを含有する。これらの発色単位は、少なくとも5個の縮合炭素環式芳香環と該芳香環中に20個の炭素原子を必要とする。青色発光性を減少させることのない別の縮合環を発色単位内に含有させることはできる。一般には、20〜40個の環炭素原子を含有する発色単位を使用することが好ましい。
【0192】以下の化合物は、ペリレンまたはベンゾピレン系発色単位を含有する青色蛍光色素としての使用を意図される例示的な化合物を示す:
【0193】
【化46】
【0194】
【化47】
【0195】
【化48】
【0196】
【化49】
【0197】
【化50】
【0198】
【化51】
【0199】これらの芳香族環化合物は、有機媒体の他の成分と同様に、真空蒸着によって付着させることができるという利点を有する。上記芳香族化合物はそれら自身で発色団を示すので、他の環置換基を存在させる必要がない。しかしながら、発色団として芳香族環を含有する多くの色素が慣例であり、元来、溶液化学において使用するために製造されているので、溶解度や、場合によっては色相を改良するための置換基を有する。先に引用したTangらの米国特許出願第 4,762,292号明細書に開示されているタイプの各種の芳香族環置換基が意図される。
【0200】青色発光性の発光層を製作する際に、上記青色発光性アルミニウムキレートの1種を使用する場合、青色発光性の発光層とその上の第二電極との間に式VII のオキシノイド化合物の1種を挿入させることによって、より高いレベルの効率が実現される。青色発光層が、装置100及び200における有機EL媒体の第一部分に、または装置300及び400における有機EL媒体の第一もしくは第二部分に対応する場合に、この配置が好ましい。別の配置では、青色発光性アルミニウムキレートが直接その上の第二電極と接触しないように、別の新たな層を付着することができる。
【0201】上述の層は、全色画像形成にとって必要な青色及び緑色発光を供給することができる。全色画像形成にとって必要な、1組の二次画素からの新たな赤色発光を達成するためには、上述の好ましい緑色及び青色発光体のいずれか一方または両方を、従来の赤色発光性蛍光色素と組み合わせることができる。このタイプの好ましい構成は、先に引用したTangらの米国特許出願第 4,769,292号明細書に開示されている。
【0202】有機ホスト材料、好ましくは上記緑色または青色発光性材料の一つは、赤色発光性蛍光色素と組み合わされる。数多くの赤色発光性蛍光色素がTangらによって有用であると開示されているが、蛍光性の4−ジシアノメチレン−4H−ピラン及び4−ジシアノメチレン−4H−チオピラン(以降、これらを蛍光性ジシアノメチレンピラン及びチオピラン色素と呼ぶ)の中から赤色発光性蛍光色素を選ぶことが特に好ましい。この種の好ましい蛍光色素は以下の式を満たす:
【0203】
【化52】
【0204】上式中、Xは酸素または硫黄を表し、R10は2−(4−アミノスチリル)基を表し、そしてR11は第二のR10基、アルキル基またはアリール基を表す。
【0205】Xが酸素または硫黄を表すことが最も便利ではあるが、原子番号のより大きなカルコゲンが、深色移動ではあるが、同様の応答を提供することは認識されている。アミノ基は、第一、第二または第三アミノ基であることができる。一つの特に好ましい態様では、アミノ基は、スチリルフェニル環との少なくとも一つの別の縮合環を形成することができる。例えば、スチリルフェニル環とアミノ基は、スチリルフェニル環と縮合した5員または6員環を形成することができる。アルキル基R11は好ましくはフェニル基である。R10とR11の両方が2−(4−アミノスチリル)基を形成する場合、その基は同じであっても別のものであってもよいが、対称化合物の方が便利に合成される。
【0206】以下は、例示的な蛍光性ジシアノメチレンピラン及びチオピラン色素である:FD−12;4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランFD−13;4−(ジシアノメチレン)−2−フェニル−6−[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−ピランFD−14;4−(ジシアノメチレン)−2,6−ジ[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−ピランFD−15;4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−ピランFD−16;4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−[2−(9−ユロリジル)エテニル]−4H−チオピラン
【0207】上記の青色発光層の場合には、赤色発光層をその上の第二電極との直接接触から分離すると、より高い効率の性能が実現される。
【0208】先に引用したTangらの教示によると、蛍光色素をホスト化合物と組合せて使用する場合には、蛍光色素が、ホストのバンドギャップよりも大きくないバンドギャップと、ホストの還元電位よりもその負の値の幅がより小さな還元電位とを示すように選定される。さらに、ホスト化合物と蛍光色素の組合せは、それらが分光的に結合するように、すなわち、ホスト化合物が、単独で用いられたときに蛍光色素の吸収波長に対応する波長で発光するように選定される。最適な結合にとっては、ホスト化合物のピーク発光波長が蛍光色素のピーク吸収波長の±100 nm以内、最適には±25 nm 以内に対応することが好ましい。
【0209】蛍光色素は、色相移動に都合のよい任意の量で含有させることができる。先に引用したTangらは、ホストと色素の合計量を基準として10-3〜10モル%の濃度範囲を示唆しているが、より低濃度で用いる方が好ましい。好ましい蛍光色素濃度は、蛍光色素とホストのモル数を基準として0.05〜5(最適には 0.2〜3)モル%の範囲にある。
【0210】第二電極は、より低い(<4.0 eV)仕事関数を示すいずれかの(アルカリ金属以外の)金属を、単独でまたはより高い(>4.0 eV)仕事関数を示す1種以上の金属との組合せで、用いて製作することができる。しかしながら、第二電極は、Tangらの米国特許出願第 4,885,432号明細書の教示に従い構築することが好ましい。特に好ましい構成では、第二電極は、その有機EL媒体との界面において、少なくとも50%のマグネシウムと、少なくとも 0.1%(最適には少なくとも1%)の、仕事関数が4.0 eVよりも大きな金属、例えば銀またはアルミニウム、とを含有する。上述したように、有機EL媒体との界面を形成する金属を付着させた後、便利な任意の金属を付着させることによって、第二電極を厚くして、電子注入効率を低下させることなく電導度を増大させることができる。この目的で高い(>4.0 eV)金属を使用すると、第二電極の安定性もまた増大する。
【0211】本発明は、好ましい実施態様に関して記述されている。すなわち、有機EL媒体と第二電極の両方がそれらの所望のパターン化された形態で形成されるので、その後のパターニングのためのエッチングや材料除去工程をまったく必要としない。好ましい態様ではないが、第二電極を形成する材料を有機EL媒体の上に均一に付着させた後に、従来のマスキング及びエッチング技法によってパターン化できることは認識される。この方法を採用する場合、壁105、205、305及び405は、第二電極をパターン化することがこれらの壁の唯一の機能であるため、省略することができる。壁205または405を省略した場合、壁203または403a及び403bは、同じ行内のすべての画素及び二次画素を接合する連続壁であることができる。装置200及び400のすべての壁は、好ましくは単一加工で形成され、またこのように好ましくは同じ高さのものであるが、壁205対壁203の、または壁405対壁403a及び403bの高さの関係が、壁105対壁103の高さの関係と同じであってもよいことが認識される。
【0212】画素は、装置100では壁103の間に、装置200では壁203の間に、装置300では壁303aの間に、そして装置400では壁403aの間に、横方向に広がっているように記述されているが、画素の境界は記載の便宜上で選定されていることが認識される。その代わりに、各画素を、一つの二次画素によって各列内で横方向にシフトされているものと見てもよい。画素境界をそのように見る場合、壁103、203、303a及び403aは二次画素境界になおも配置されているが、画素境界にはない。しかしながら、装置の構造に実際の変化が起こることはない。
【0213】
【発明の効果】画像表示性能をもたない類似の有機エレクトロルミネセント装置に匹敵する動作特性を示す画像表示性能と、多色画像表示を示す性能とがある、という点が、本発明の少なくとも一つの実施態様の有利な特徴である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図2】本発明の第一の実施態様の二つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図3】本発明の第一の実施態様の二つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図4】本発明の第一の実施態様の二つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図5】本発明の第二の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図6】本発明の第二の実施態様の画素を示す平面図である。
【図7】図6の線7−7に沿った断面図である。
【図8】図6の線8−8に沿った断面図である。
【図9】本発明の第三の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図10】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図11】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図12】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図13】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図14】本発明の第三の実施態様の一つの画素の加工工程を示す略断面図である。
【図15】本発明の第四の実施態様を示す、一部を切り取った平面図である。
【図16】本発明の第四の実施態様の画素を示す平面図である。
【図17】図16の線17−17に沿った断面図である。
【図18】図16の線18−18に沿った断面図である。
【符号の説明】
100,200,300,400…有機EL装置
101…絶縁性基板
103,105,203,205,303,305,403,405…壁
207…絶縁性パッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成る発光装置において;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されており;各画素中の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる色相の光を発することができる少なくとも二つの二次画素領域を形成し;各画素には、二つの二次画素領域を分離している境界に沿って配置された壁が設けられ;該壁は、該有機エレクトロルミネセント媒体の厚さを上回る高さを有し、且つ隣接した二次画素領域に陰を与えることができ;そして特定の組の画素の各ファイルにおいて、前記第一電極手段及び前記第二電極手段の一方は、各々が同じファイル内のエレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している少なくとも二つの横方向に間隔をあけて配置された素子へ分割されている、多色画像表示が可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成る発光装置において;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されており;各画素中の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる主要色相の光を発することができる三つの二次画素領域を形成し;各画素の向かい合う二つの境界に沿って壁が配置されており、各画素内の中間壁が、二次画素領域の一つを残りの二つの二次画素領域から分離させており、該壁は各々、該有機エレクトロルミネセント媒体の厚さを上回る高さを有し、且つ隣接した二次画素領域に陰を与えることができ;そして一方の組の平行ファイルの各電極手段は、各々が同じファイル内のエレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している三つの横方向に間隔をあけて配置された素子へ分割されている、全色画像表示が可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成り;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;そして、残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている発光装置の製造方法において;第一電極手段が横方向に間隔をあけて表面に配置されている基板を提供する工程;該基板表面に有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる工程;該有機エレクトロルミネセント媒体の表面に第二電極手段を形成する工程;基板上の、横方向に間隔をあけて配置されている第一電極手段の上に、有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる前に、1組の平行な壁を形成する工程;有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分の蒸着のための第一源を、基板表面に対して、前記源と基板表面の隣接部分との間に各壁を差し挟む角度で配向させ、その際、該有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分は、第一色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;基板表面の、前記源と基板表面との間に壁が差し挟まれている領域以外の領域に、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を選択的に付着させる工程;基板表面の、エレクトロルミネセント媒体の第一部分が存在しない基板表面領域に、エレクトロルミネセント媒体の第二部分を付着させ、その際、該エレクトロルミネセント媒体の第二部分は、第一色相の各々とは異なる第二色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;並びに少なくとも第一及び第二の横方向に間隔をあけて配置された電極素子として、1組のファイルを接合する電極手段の各々を形成し、その際、各ファイル内の第一電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有する同じファイル内の画素領域を接合し、そして各ファイル内の第二電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有しない画素領域を接合する工程によって多色表示性能をもつ画像表示配列を製作することを特徴とする製造方法。
【請求項4】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成り;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;そして、残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている発光装置の製造方法において;第一電極手段が横方向に間隔をあけて表面に配置されている基板を提供する工程;該基板表面に有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる工程;該有機エレクトロルミネセント媒体の表面に第二電極手段を形成する工程;基板上の、横方向に間隔をあけて配置されている第一電極手段の上に、有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる前に、1組のファイル内の画素の向かい合う縁を画定する1組の平行な壁を形成する工程;1組のファイルの各々における画素内に平行な中間壁を同時に形成させ、その際、各中間壁を、画素の縁における二つの隣合う壁のうちの一方にその他方よりも近付けて配置する工程;有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分の蒸着のための第一源を、基板表面に対して、前記源と基板表面の隣接部分との間に各壁を差し挟む角度で配向させ、その際、該有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分は、第一の主要色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;基板表面の、前記源と基板表面との間に壁が差し挟まれている領域以外の領域に、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を選択的に付着させる工程;有機エレクトロルミネセント媒体の第二部分の蒸着のための第二源を、基板表面に対して、画素内の中間壁に最も近い画素の縁において、該源と、基板表面の隣接部分における壁とその最も近い中間壁との間とに各壁を差し挟む角度で配向させ、その際、該有機エレクトロルミネセント媒体の第二部分は、第一の主要色相とは違う第二の主要色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;基板表面の、各中間壁とそれに最も近い隣合う壁とを分離している領域に、エレクトロルミネセント媒体の第三部分を付着させ、その際、該エレクトロルミネセント媒体の第三部分は、第一及び第二の主要色相の各々とは異なる第三の主要色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;並びに横方向に間隔をあけて配置された三つ1組の電極素子として、1組のファイルを接合する電極手段の各々を形成し、その際、各組の第一、第二及び第三の電極素子は、エレクトロルミネセント媒体のそれぞれ第一、第二及び第三部分が残りの二つの部分のいずれよりも基板表面に近く配置されている画素領域を同じファイル内で接合する工程によって全色表示性能をもつ画像表示配列を製作することを特徴とする製造方法。
【請求項1】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成る発光装置において;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されており;各画素中の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる色相の光を発することができる少なくとも二つの二次画素領域を形成し;各画素には、二つの二次画素領域を分離している境界に沿って配置された壁が設けられ;該壁は、該有機エレクトロルミネセント媒体の厚さを上回る高さを有し、且つ隣接した二次画素領域に陰を与えることができ;そして特定の組の画素の各ファイルにおいて、前記第一電極手段及び前記第二電極手段の一方は、各々が同じファイル内のエレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している少なくとも二つの横方向に間隔をあけて配置された素子へ分割されている、多色画像表示が可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成る発光装置において;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されており;各画素中の有機エレクトロルミネセント媒体は、各々が異なる主要色相の光を発することができる三つの二次画素領域を形成し;各画素の向かい合う二つの境界に沿って壁が配置されており、各画素内の中間壁が、二次画素領域の一つを残りの二つの二次画素領域から分離させており、該壁は各々、該有機エレクトロルミネセント媒体の厚さを上回る高さを有し、且つ隣接した二次画素領域に陰を与えることができ;そして一方の組の平行ファイルの各電極手段は、各々が同じファイル内のエレクトロルミネセント媒体の二次画素部分を接合している三つの横方向に間隔をあけて配置された素子へ分割されている、全色画像表示が可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成り;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;そして、残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている発光装置の製造方法において;第一電極手段が横方向に間隔をあけて表面に配置されている基板を提供する工程;該基板表面に有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる工程;該有機エレクトロルミネセント媒体の表面に第二電極手段を形成する工程;基板上の、横方向に間隔をあけて配置されている第一電極手段の上に、有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる前に、1組の平行な壁を形成する工程;有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分の蒸着のための第一源を、基板表面に対して、前記源と基板表面の隣接部分との間に各壁を差し挟む角度で配向させ、その際、該有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分は、第一色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;基板表面の、前記源と基板表面との間に壁が差し挟まれている領域以外の領域に、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を選択的に付着させる工程;基板表面の、エレクトロルミネセント媒体の第一部分が存在しない基板表面領域に、エレクトロルミネセント媒体の第二部分を付着させ、その際、該エレクトロルミネセント媒体の第二部分は、第一色相の各々とは異なる第二色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;並びに少なくとも第一及び第二の横方向に間隔をあけて配置された電極素子として、1組のファイルを接合する電極手段の各々を形成し、その際、各ファイル内の第一電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有する同じファイル内の画素領域を接合し、そして各ファイル内の第二電極素子は、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を含有しない画素領域を接合する工程によって多色表示性能をもつ画像表示配列を製作することを特徴とする製造方法。
【請求項4】 交差している2組の平行ファイル内に配置された複数の発光画素から成る画像表示配列を含んで成り;第一組の平行ファイル内の画素が行を形成し、また第二組の平行ファイル内の画素が列を形成しており;各々の画素は、共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されており;一方の組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、基板上に配置された共通の光透過性第一電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;一方の組の隣接ファイル内の第一電極手段は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されており;有機エレクトロルミネセント媒体は該第一電極手段の上に重ねられており;残りの組の平行ファイルの同じファイル内の各画素は、該有機エレクトロルミネセント媒体上に配置された共通の第二電極手段を含有し、且つ該手段によって接合されており;そして、残りの組の隣接ファイル内の第二電極手段は、該有機エレクトロルミネセント媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている発光装置の製造方法において;第一電極手段が横方向に間隔をあけて表面に配置されている基板を提供する工程;該基板表面に有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる工程;該有機エレクトロルミネセント媒体の表面に第二電極手段を形成する工程;基板上の、横方向に間隔をあけて配置されている第一電極手段の上に、有機エレクトロルミネセント媒体を付着させる前に、1組のファイル内の画素の向かい合う縁を画定する1組の平行な壁を形成する工程;1組のファイルの各々における画素内に平行な中間壁を同時に形成させ、その際、各中間壁を、画素の縁における二つの隣合う壁のうちの一方にその他方よりも近付けて配置する工程;有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分の蒸着のための第一源を、基板表面に対して、前記源と基板表面の隣接部分との間に各壁を差し挟む角度で配向させ、その際、該有機エレクトロルミネセント媒体の第一部分は、第一の主要色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;基板表面の、前記源と基板表面との間に壁が差し挟まれている領域以外の領域に、エレクトロルミネセント媒体の第一部分を選択的に付着させる工程;有機エレクトロルミネセント媒体の第二部分の蒸着のための第二源を、基板表面に対して、画素内の中間壁に最も近い画素の縁において、該源と、基板表面の隣接部分における壁とその最も近い中間壁との間とに各壁を差し挟む角度で配向させ、その際、該有機エレクトロルミネセント媒体の第二部分は、第一の主要色相とは違う第二の主要色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;基板表面の、各中間壁とそれに最も近い隣合う壁とを分離している領域に、エレクトロルミネセント媒体の第三部分を付着させ、その際、該エレクトロルミネセント媒体の第三部分は、第一及び第二の主要色相の各々とは異なる第三の主要色相のエレクトロルミネセンスを付与するように選定する工程;並びに横方向に間隔をあけて配置された三つ1組の電極素子として、1組のファイルを接合する電極手段の各々を形成し、その際、各組の第一、第二及び第三の電極素子は、エレクトロルミネセント媒体のそれぞれ第一、第二及び第三部分が残りの二つの部分のいずれよりも基板表面に近く配置されている画素領域を同じファイル内で接合する工程によって全色表示性能をもつ画像表示配列を製作することを特徴とする製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図16】
【公開番号】特開平5−258859
【公開日】平成5年(1993)10月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−347927
【出願日】平成4年(1992)12月28日
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【公開日】平成5年(1993)10月8日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)12月28日
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
[ Back to top ]