説明

発光装飾具

【課題】 これまでなかった美感を奏する発光装飾具を提供する。
【解決手段】蓄光剤、吸水ポリマー及び水を含有する組成物を含む装飾具であって、該組成物が、吸水ポリマーが水を吸水して形成されたゲル状物の中に蓄光剤を含んでなる形態を有する、発光装飾具である。蓄光剤が酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含むものであってもよく、吸水ポリマーがアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装飾具に関し、より詳細には、これまでなかった美感を奏する発光装飾具に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の目を引いたり、人々に美しいとか神秘的といった独特の感情を抱かせるため等に装飾具が数多く用いられる(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、「冠婚葬祭、お別れ会、個人を偲ぶ会、人生の節目の祝事、会社の創立記念日、国や地方公共団体、各種団体棟が開催する式典や各種イベントといった催事や行事において、招待客、参列者といった多くの人々が生花や造花を差したり、催事や行事に関係のあるミニチュア製品を盛りつけたりすると、最後には所望形状の装飾が作り上げられるようにした装飾具」(段落番号0001)が開示されており、該装飾具は具体的には「平面状又は立体状の基体1に装飾箇所3を設け、その装飾箇所3に多数の人が装飾品2を差し込んだり、置いたりすると所望形状の装飾が作り上げられるようにしたもの」(段落番号0005)である。
【0003】
【特許文献1】特開2001−301393号公報(例えば、発明の詳細な説明、段落番号0001〜0008等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された装飾具は、装飾箇所に多数の人が装飾品を差し込んだり、置いたりすると所望形状の装飾が作り上げられるものであり、装飾品を組み合わせて装飾ができあがるという意外性を奏するものの、従来から存する装飾品の美感を超えるものではない。
【0005】
そこで、本発明においては、これまでなかった美感を奏する発光装飾具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光装飾具(以下、「本装飾具」という。)は、蓄光剤、吸水ポリマー及び水を含有する組成物を含む装飾具であって、該組成物が、吸水ポリマーが水を吸水して形成されたゲル状物の中に蓄光剤を含んでなる形態を有する、発光装飾具である。
吸水ポリマーが水を吸水して形成されたゲル状物は、ある程度の透光性(光を通過させる性質)を有すると共に、複数個の蓄光剤(例えば、粒状、粉状、塊状等)を用いる場合は蓄光剤を分散した状態で保持することができるので、ゲル状物中に分散した蓄光剤から発せられる光の少なくとも一部が外部から目視にて看取され、光を発する蓄光剤とそれを取り囲むゲル状物とが独特の美しさを醸し出す。
【0007】
また、本装飾具には、以下(1)乃至(4)の態様が含まれる。
(1)蓄光剤が酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含むものである、上記発光装飾具。
(2)吸水ポリマーがアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物である、上記発光装飾具。
(3)吸水ポリマーの乾燥質量w2に対する水の質量w3の比(w3/w2)が、100以上200以下である、上記発光装飾具。
(4)蓄光剤からの発光によって視覚的に装飾効果を有するものである、上記発光装飾具。
【0008】
また、本発明の本装飾具の前調製物(以下、「本調製物」という。)は、蓄光剤と吸水ポリマーとが、一緒に混合された状態又は別個に包装された状態で含有する、本装飾具の前調製物である。
本調製物に含まれる吸水ポリマーに水を添加し、ゲル化させることでゲル状物を得ることができる。このゲル状物の中に蓄光剤を含めることで本装飾具が含む前記組成物を形成することができる。なお、蓄光剤と吸水ポリマーとが一緒に混合された状態の本調製物であれば、水を添加し、混合することで、前記組成物を形成することができる。また、蓄光剤と吸水ポリマーとが別個に包装された状態の本調製物であれば、蓄光剤と吸水ポリマーとを混合して混合物を調製した後に該混合物に水を添加し混合することで前記組成物を形成することもできるし、吸水ポリマーのみに水を添加し混合することでゲル状物を得た後に該ゲル化物と蓄光剤とを混合することで前記組成物を形成することもできる。なお、いずれの場合も、形成した前記組成物を用いて本装飾具を構成することができる。
【0009】
そして、本発明は、本装飾具と、本装飾具中の蓄光剤を発光させるための発光手段を有する光発生装置と、を備えてなる、光発生装置付き発光装飾具(以下、「本光発生装置付き発光装飾具」という。)を提供する。
本光発生装置付き発光装飾具においては、発光手段が、本装飾具中の蓄光剤に向けて光(本装飾具中の蓄光剤を励起させ発光させることが可能な光)を発するので、蓄光剤が励起され、その後蓄光剤が発光する。このため本装飾具中の蓄光剤をうまく発光させることができるので、本光発生装置付き発光装飾具は装飾用等として便利に用いることができる。
【0010】
さらに、本発明は、本装飾具を、その中に含まれる蓄光剤の少なくとも一部が視認可能に発光する状態で配置することを含む、装飾方法(以下、「本装飾方法」という。)を提供する。
本装飾方法は、本装飾具中に含まれる蓄光剤の少なくとも一部が視認可能に発光する状態で本装飾具を配置するので、光を発する蓄光剤とそれを取り囲むゲル状物とが独特の美しさをうまく醸し出し、効果的な装飾方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本装飾具)
本装飾具は、蓄光剤、吸水ポリマー及び水を含有する組成物を含む装飾具であって、該組成物が、吸水ポリマーが水を吸水して形成されたゲル状物の中に蓄光剤を含んでなる形態を有する、発光装飾具である。
蓄光剤とは、太陽光や紫外線などの光エネルギーの刺激を受け、その光エネルギーの刺激を遮断した後に、光(可視光)を放出(発光)する材料であり、特に暗所で長時間光を放つ(りん光)性質を有するものをいう。また、吸水ポリマーが吸水によりゲル化したゲル状物中において複数の蓄光剤がある程度分散して存在する方が、蓄光剤とそれを取り囲むゲル状物とが独特の美しさをうまく醸し出すことができるので好ましく、かかる点からは蓄光剤として粒状、粉状、塊状等のものを用いてもよい。このような蓄光剤としては様々なものが知られているが、例えば、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含んでなるものが知られており、このような成分を含む蓄光剤としては、例えば、イージーブライト株式会社販売の製品名EZC(G、B、P)を市販品として例示することができる。なお、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含んでなる蓄光剤を用いることで、蛍光に似た極めて神秘的な光を発することができるので、独特の美しさをうまく醸し出すことができる。なお、蓄光剤としては、根本特殊化学株式会社の商品名「N夜光」等を使用してもよい。
【0012】
また、吸水ポリマーとは、水を吸収してゲル化しゲル状物を生じるものであり、例えば、従来から使い捨ておむつの液体吸収剤等として多用されている。このような吸水ポリマーとしては、様々なものが知られておりそれらのものを特に制限なく用いることができるが、例えば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含むものを例示することができ、この成分を含む吸水ポリマーとしては、例えば、三洋化成工業株式会社販売の製品名「サンフレッシュ STー500D」を市販品として例示することができる。このようなアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含む吸水ポリマーを用いることで、水を吸収してゲル化したゲル状物が透明に近い薄い乳白色を呈するので、蓄光剤が発する光を拡散や反射することで、ゲル状物全体が薄く輝くと共に複数個の蓄光剤を用いる場合はゲル状物に含まれる蓄光剤が点々と光る極めて神秘的で美しい外観を呈することができる。
そして、本装飾具の前記組成物に含有される水は、水であれば特に制限なく使用することができ、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水等の別を問わず、さらに水の中に着色料や香料等を含むものであってもよい。
さらに、本装飾具が含む前記組成物を収容する容器としては、蓄光剤からの発光による視覚的な装飾効果をうまく奏させることからは、容器を通して蓄光剤からの発光が看取されるように透明な部分を有するものであることが好ましい。容器全体が透明であってもよく、さらに容器外部から観察した際に蓄光剤からの発光により模様や文字等が浮かび上がるように部分的な透明部分が形成されたものであってもよい。
【0013】
なお、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含んでなる蓄光剤と、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含む吸水ポリマーと、を用いることで、ゲル状物全体が蛍光に似た光に包まれると共にその内部の存する蓄光剤がぼんやりとした蛍光に似た光を放つ極めて神秘的で美しい様子を醸し出すことができる。そして、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含んでなる蓄光剤は、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含む吸水ポリマーが吸水して生じたゲル状物中に極めて安定に保持されることができ好ましい。
【0014】
本装飾具が含む前記組成物中の吸水ポリマーの乾燥質量w2に対する水の質量w3の比(w3/w2)が大きくなると前記組成物が柔らかく(流動しやすく)なると共に前記組成物の透光性が高まり、逆に、該比(w3/w2)が小さくなると前記組成物がかたく(流動しにくく)なると共に前記組成物の透光性が低下する。このため本装飾具の用途、使用方法、蓄光剤の種類及び粒径等に応じて該比(w3/w2)は適宜定められればよいが、通常、下限としては、50以上であり、好ましくは100以上であり、より好ましくは120以上であり、最も好ましくは130以上であり、上限としては、250以下であり、好ましくは200以下であり、より好ましくは180以下であり、最も好ましくは170以下である(従って、通常、50以上250以下であり、好ましくは100以上200以下であり、より好ましくは120以上180以下であり、最も好ましくは130以上170以下である。なお、150が最もよい。)。
一方、前記組成物のゲル状物中の水分の質量w3が前記組成物の吸水ポリマーの最大吸水量(質量)Wwに対する割合Rw(=w3/Ww)も大きくなると前記組成物が柔らかく(流動しやすく)なると共に前記組成物の透光性が高まり、逆に、該割合Rw(=w3/Ww)が小さくなると前記組成物がかたく(流動しにくく)なると共に前記組成物の透光性が低下する。このため本装飾具の用途、使用方法、蓄光剤の種類及び粒径等に応じて該割合Rw(=w3/Ww)は適宜定められればよいが、通常、下限としては、0.5以上であり、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.8以上であり、最も好ましくは0.9以上であり、上限としては、1.5以下であり、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.2以下であり、最も好ましくは1.1以下である(従って、通常、0.5以上1.5以下であり、好ましくは0.7以上1.3以下であり、より好ましくは0.8以上1.2以下であり、最も好ましくは0.9以上1.1以下である。なお、1.0が最もよい。)。
そして、複数個の蓄光剤(例えば、粒状、粉状、塊状等)を用いる場合は(静置された)前記組成物中に分散した蓄光剤が重力や浮力によって沈降(鉛直下方に向いた速度成分)又は浮上(鉛直上方に向いた速度成分)する速度は、前記組成物が安定した状態で存在することからは小さい方がよく、1〜2時間(例えば、結婚式の装飾目的に本装飾具が用いられる場合、結婚式はこの程度の時間であることが多い。)程度の間に経時変化をあまり感じさせないことからは、通常、時速2cm以下であり、好ましくは時速1.5cm以下であり、より好ましくは時速1cm以下であり、最も好ましくは時速0.5cm以下である(無論、最も良いのは時速0cmである。)。
【0015】
また、本装飾具が含む前記組成物における蓄光剤の質量w1と吸水ポリマーの乾燥質量w2との比(w1/w2)は、あまり大きいと蓄光剤を取り囲むゲル状物が少なすぎて独特の美しさをうまく醸し出すことができず、あまり小さいと蓄光剤が少なすぎてやはり独特の美しさをうまく醸し出すことができない。このためこれら本装飾具の用途、使用方法、蓄光剤の種類及び粒径等に応じて該比(w1/w2)は適宜定められればよいが、通常、下限としては、3以上であり、好ましくは5以上であり、より好ましくは7以上であり、最も好ましくは8以上であり、上限としては、20以下であり、好ましくは16以下であり、より好ましくは13以下であり、最も好ましくは12以下である(従って、通常、3以上20以下であり、好ましくは5以上16以下であり、より好ましくは7以上13以下であり、最も好ましくは8以上12以下である。10が最もよい。)。
【0016】
(本調製物)
本調製物は、蓄光剤と吸水ポリマーとが、一緒に混合された状態又は別個に包装された状態で含有する、本装飾具の前調製物である。
ここに本調製物の蓄光剤及び吸水ポリマーについての説明は、上記した本装飾具についての説明と同様であるのでここでは省略する。なお、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含んでなる蓄光剤と、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含む吸水ポリマーと、を用いることによる効果も前記と同様である。そして、本調製物が含む蓄光剤の質量w1と吸水ポリマーの乾燥質量w2との比(w1/w2)についても、上記した本装飾具についての説明と同様であるのでここでは省略する。
本調製物は、蓄光剤と吸水ポリマーとが一緒に混合された状態の混合物として含有されるものと、蓄光剤と吸水ポリマーとが別個に包装された状態で含有されるものとのいずれであってもよい。蓄光剤と吸水ポリマーとが一緒に混合された状態の本調製物であれば、該混合物に水を添加し混合することで、本装飾具が含む前記組成物を形成することができる。また、蓄光剤と吸水ポリマーとが別個に包装された状態の本調製物であれば、蓄光剤と吸水ポリマーとを混合して混合物を調製した後に該混合物に水を添加し混合することで前記組成物を形成することもできるし、吸水ポリマーのみに水を添加し混合することでゲル状物を得た後に該ゲル化物と蓄光剤とを混合することで前記組成物を形成することもできる。なお、蓄光剤と吸水ポリマーとが混合された混合物に水を添加し混合することで、本装飾具が含む前記組成物を形成すれば、複数個の蓄光剤(例えば、粒状、粉状、塊状等)を用いる場合は、ゲル化していない吸水ポリマー(ゲル化した後に比して体積が小さく蓄光剤を混合しやすい)に蓄光剤を容易に混合分散させた後、吸水ポリマーをゲル化させるので、蓄光剤がうまくゲル状物中に分散した前記組成物を容易に製造することができる。
【0017】
(本光発生装置付き発光装飾具)
本光発生装置付き発光装飾具は、本装飾具と、本装飾具中の蓄光剤を発光させるための発光手段を有する光発生装置と、を備えてなる、光発生装置付き発光装飾具である。
光発生装置が有する発光手段は、本装飾具中の蓄光剤に向けて光(本装飾具中の蓄光剤を励起させ発光させることができる光)を発するものであればいかなるものであってもよく何ら制限なく使用することができるが、例えば、本装飾具中の蓄光剤を発光させるように励起させる光を発生させる発光ダイオード、放電管、蛍光灯、白熱電球等を例示することができるが、とりわけ発光ダイオードを用いれば消費電力や放熱が小さく、本光発生装置付き発光装飾具の小形化にも資する。
なお、発光手段が発する光は、本装飾具中の蓄光剤を発光させるように励起させることができるものであればいかなるものであってもよく何ら限定されるものではないが、発光手段から蓄光剤までの距離、蓄光剤の量及び種類、本装飾具が含む前記組成物の該光に対する透明性等を考慮して、該光の波長や強度を決めればよい。
【0018】
(本装飾方法)
本装飾方法は、本装飾具を、その中に含まれる蓄光剤の少なくとも一部が視認可能に発光する状態で配置することを含む、装飾方法である。
このとき本装飾具中の蓄光剤が発する光のできるだけ多くが視認可能になるように本装飾具を配置する方が、蓄光剤からの発光による装飾効果を効果的に奏することができ、蓄光剤とそれを取り囲むゲル状物とが独特の美しさをさらにうまく醸し出すことができる。
このため蓄光剤が発する光のできるだけ多くが視認可能になるように本装飾具を配置するには、本装飾具を所定位置(例えば、本装飾具の表面から垂直方向に50cm離れた位置)から観察した際に本装飾具に含まれる複数の蓄光剤のうち発する光が観察される蓄光剤の割合(本装飾具に含まれる蓄光剤全部の個数をn個とし、それらのうち発する光が観察される蓄光剤の個数をm個とするとm/n)が、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上であり、最も好ましくは0.8以上である(無論、1以下である。)。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(本調製物の調製)
粒状の蓄光剤50gと、粉状の吸水ポリマー5gと、を混合し、充分攪拌する。これにより粉状の吸水ポリマー中に粒状の蓄光剤が分散した本調製物(蓄光剤と吸水ポリマーとが一緒に混合された状態で含有される本装飾具の前調製物)が得られる。
ここでは蓄光剤としては、イージーブライト株式会社販売の製品名EZC(G、B、P)(以下、「使用蓄光剤」という。)を用いた。この使用蓄光剤は、酸化アルミニウム(含有量60〜70%)と酸化ストロンチウム(含有量20〜30%)と酸化ユウロピウム(0より大きく1%未満)との混合物であり、波長395nmの紫外線を照射されることで、照射後、蛍光様の可視光をしばらく放出(発光)することができる。
また、ここでは吸水ポリマーとしては、三洋化成工業株式会社販売の製品名「サンフレッシュ STー500D」(以下、「使用吸水ポリマー」という。)を用いた。この使用吸水ポリマーは、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含むものであり、5gの使用吸水ポリマーは約750gの水分(吸水ポリマーの最大吸水量(質量)Ww=750g)を吸収することができる。
【0020】
(本装飾具が含む前記組成物の調製)
次いで、上記のようにして調製された本調製物55g(蓄光剤50g、吸水ポリマー5g)を全体が透明な樹脂製の容器(円筒形、有底無蓋)に装入し、さらに該容器中に水750gを注入する。水と本調製物とがうまく混合されるように、該容器の内容物をガラス棒にてしばらく攪拌した。これにより本調製物中の吸水ポリマーが水分を完全に吸収しゲル化し、本装飾具が含む前記組成物(吸水ポリマーが水を吸水して形成されたゲル状物の中に蓄光剤を含んでなる形態を有する組成物)を得た。なお、この本装飾具が含む前記組成物は、上述のように、蓄光剤と吸水ポリマーとが一緒に混合された状態で含有される本装飾具の前調製物に、水を添加し混合することで製造された。
得られた本装飾具が含む前記組成物は、吸水ポリマーが水分を含んでゲル化したゲル状物の中に、多数の粒状の蓄光剤が分散された構造を有しており、1時間程度放置しても粒状の蓄光剤は実質的にゲル状物中を移動することはなかった。また、ゲル状物は、透明に近い薄い乳白色をしており、ガラス棒等により攪拌(かき混ぜる)することで含有する細かい気泡が増加した。
【0021】
本装飾具が含む前記組成物中の蓄光剤は、蛍光灯の光や自然光によって励起され、これら光を照射された後、周囲を暗くすると、ゲル状物中に分散された蓄光剤それぞれが蛍光に似た光を放った。このとき個々の蓄光剤が放った光は、ゲル状物自身が有する薄い色やゲル状物に含まれる多くの細かい気泡によって拡散や反射されることで、前記組成物全体がぼんやりと光ると共に、それに含まれる蓄光剤が点々と光る極めて神秘的で美しい外観を呈した。
また、個々の粒状の蓄光剤は、透明に近い薄い乳白色のゲル状物中にうまく分散されているので、前記組成物に光が当たると(該光も、ゲル状物自身が有する薄い色やゲル状物に含まれる多くの細かい気泡によって拡散や反射されることによって)個々の粒状の蓄光剤に様々な方向から光が当たり、蓄光剤の表面の広い範囲が励起され(蓄光剤のみに光を照射すると、蓄光剤同士の重なりや光の照射方向等により光が当たらない面が多く生じ、非常に限られた一部の表面のみしか励起されない。)、その後、放光するので、前記組成物は多くの光を放ち(高輝度)高い装飾効果を奏した。
このようにここでは本装飾具は、前記組成物と、前記組成物を収容する前記容器(全体が透明な円筒形で有底無蓋の樹脂製の容器)と、を有して構成されている。
【0022】
(第1の本光発生装置付き発光装飾具)
図1は、第1の本光発生装置付き発光装飾具91を示す概略図である。図1を参照して、第1の本光発生装置付き発光装飾具91について説明する。
第1の本光発生装置付き発光装飾具91は、本装飾具35と光発生装置11とを備えている。
本装飾具35は、円筒形有底無蓋の透明な樹脂製容器31と、樹脂製容器31の内部に収容された組成物21と、を有してなる。組成物21は、上述の「本装飾具が含む前記組成物の調製」にて得られた組成物であり、多数の粒状の蓄光剤25がゲル状物23中に分散されて形成されている。
光発生装置11は、略水平平面を形成する上面13を有しており、上面13上に樹脂製容器31が載置されている。一方、光発生装置11内部には、波長395nmの紫外線(図1中、矢印Aにて示す。蓄光剤25を励起し発光させることができる光)を放射する発光ダイオード(図示せず。なお、本発明にいう発光手段を構成する。)が複数内蔵されており(電源は商用電源を使用)、この発光ダイオードから放射された紫外線は、樹脂製容器31の底面側から組成物21に向けて照射される。これにより組成物21の蓄光剤25に波長395nmの紫外線が照射され、蓄光剤25が効率よく励起される。なお、ここで用いた樹脂製容器31は、波長395nmの紫外線をほとんど減衰させることなく通過させる材質により形成されている。
このような光発生装置11を用いて蓄光剤25を励起することで、蛍光灯の光や自然光によって励起するよりも、より強く蓄光剤25を励起することができるので、励起後により強い光を蓄光剤25は放つ(発光する)ことができる。
以上説明したように、図1に示した第1の本光発生装置付き発光装飾具91は、組成物21を含む本装飾具35と、本装飾具35中の蓄光剤25を発光させるための発光手段たる発光ダイオード(波長395nmの紫外線を生じる)を有する光発生装置11と、を備えてなる、光発生装置付き発光装飾具である。
【0023】
(第2の本光発生装置付き発光装飾具)
図2は、第2の本光発生装置付き発光装飾具95を示す概略図である。図2を参照して、第2の本光発生装置付き発光装飾具95について説明する。
第2の本光発生装置付き発光装飾具95は、本装飾具35と光発生装置51とを備えている。
本装飾具35は、図1と同様、円筒形有底無蓋の透明な樹脂製容器31と、樹脂製容器31の内部に収容された組成物21と、を有してなる。組成物21は、上述の「本装飾具が含む前記組成物の調製」にて得られた組成物であり、多数の粒状の蓄光剤25がゲル状物23中に分散されて形成されている。
光発生装置51は、本体部55が図示しない手により把持されており、先端に発光ダイオード53(発光手段)が配設されていると共に、本体部55内部には発光ダイオード53の電源たる電池(図示せず)が内蔵されている。発光ダイオード53は波長395nmの紫外線(図2中、矢印Bにて示す。蓄光剤25を励起させ発光させることが可能な光)を照射可能なものであり、光発生装置51の位置及び方向を変更することで、組成物21の任意の位置に任意の方向から波長395nmの紫外線を照射することができる。即ち、光発生装置51を用いることで組成物21の任意の位置に存する蓄光剤25を励起し放光(発光)させることができるので、光発生装置51の保持者の意思に応じた放光(発光)を得ることができる。
以上説明したように、図2に示した第2の本光発生装置付き発光装飾具95は、組成物21を含む本装飾具35と、本装飾具35中の蓄光剤25を発光させるための発光手段たる発光ダイオード53(波長395nmの紫外線を生じる)を有する光発生装置51と、を備えてなる、光発生装置付き発光装飾具である。
【0024】
以上のように、本装飾具35は、蓄光剤25、吸水ポリマー及び水を含有する組成物21を含む装飾具であって、該組成物21が、吸水ポリマーが水を吸水して形成されたゲル状物23の中に蓄光剤25を含んでなる形態を有する、発光装飾具である。なお、本装飾具35は、本調製物に含まれる蓄光剤と吸水ポリマーに、水を添加し混合する工程を有する製造方法により製造された。
そして、本装飾具35は、蓄光剤25からの発光によって視覚的に装飾効果を有するものであり、それに含まれる蓄光剤25の発光が外部から視認される装飾用(例えば、結婚式の披露宴において、テーブル上面に載置されることでテーブル上面を装飾する。)に用いられる。
また、本装飾具35においては、吸水ポリマーの乾燥質量w2(ここでは約5g)に対する水分の質量w3(ここでは約750g)の比(w3/w2=750/5)が約150である。
【0025】
本装飾具35の組成物21においては、ゲル状物中の水分の質量w3(ここでは約750g)が組成物21の吸水ポリマーの最大吸水量(質量)Ww(=750g)に対する割合Rw(=w3/Ww=750/750)は約1.0である。
また、(静置された)組成物21中に分散した蓄光剤25が重力や浮力によって沈降(鉛直下方に向いた速度成分)又は浮上(鉛直上方に向いた速度成分)する速度は、ここでは実質的に時速0cmであった。
そして、本調製物及び本装飾具における蓄光剤の質量w1(50g)と吸水ポリマーの乾燥質量w2(5g)との比(w1/w2=50/5)は、約10であった。
さらに、本調製物及び本装飾具においては、蓄光剤として酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含むものを用い、そして吸水ポリマーとしてアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含むものを用いた。
【0026】
図1及び図2に示した本装飾具35においては、本装飾具35中に含まれる蓄光剤25の少なくとも一部が視認可能に発光する状態で本装飾具35を配置しており、本装飾方法を構成している。
これら図1及び図2に示した本装飾具35を所定位置(本装飾具35の表面から垂直方向に50cm離れた位置)から観察した際、本装飾具35に含まれる複数の蓄光剤25のうち、発する光が観察される蓄光剤25の割合(本装飾具35に含まれる蓄光剤全部の個数をn個とし、それらのうち発する光が観察される蓄光剤の個数をm個とするとm/n)が、ここでは0.8以上1以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の本装置を示す概要図である。
【図2】第2の本装置を示す概要図である。
【符号の説明】
【0028】
11 光発生装置
13 上面
21 組成物
23 ゲル状物
25 蓄光剤
31 樹脂製容器
35 本装飾具
51 光発生装置
53 発光ダイオード
55 本体部
91 第1の本光発生装置付き発光装飾具
95 第2の本光発生装置付き発光装飾具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光剤、吸水ポリマー及び水を含有する組成物を含む装飾具であって、
該組成物が、吸水ポリマーが水を吸水して形成されたゲル状物の中に蓄光剤を含んでなる形態を有する、発光装飾具。
【請求項2】
蓄光剤が酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム及び酸化ユウロピウムを含むものである、請求項1に記載の発光装飾具。
【請求項3】
吸水ポリマーがアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物である、請求項1又は2に記載の発光装飾具。
【請求項4】
吸水ポリマーの乾燥質量w2に対する水の質量w3の比(w3/w2)が、100以上200以下である、請求項1乃至3のいずれか1に記載の発光装飾具。
【請求項5】
蓄光剤からの発光によって視覚的に装飾効果を有するものである、請求項1乃至4のいずれか1に記載の発光装飾具。
【請求項6】
蓄光剤と吸水ポリマーとが、一緒に混合された状態又は別個に包装された状態で含有する、請求項1乃至5のいずれか1に記載の発光装飾具の前調製物。
【請求項7】
請求項6に記載の前調製物に含まれる蓄光剤と吸水ポリマーに、水を添加し、混合する工程を有する、請求項1乃至5のいずれか1に記載の発光装飾具の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の発光装飾具と、
該発光装飾具中の蓄光剤を発光させるための発光手段を有する光発生装置と、を備えてなる、光発生装置付き発光装飾具。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の発光装飾具を、その中に含まれる蓄光剤の少なくとも一部が視認可能に発光する状態で配置することを含む、装飾方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−184494(P2006−184494A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377224(P2004−377224)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(505001937)
【Fターム(参考)】