説明

発泡体の製造方法

【課題】製造された発泡体を圧力室から取り出し易く、気泡サイズが細かく均一な発泡体を製造することができる発泡体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法は、成形用樹脂を収容した圧力室内において、成形用樹脂を超臨界流体に接触させた後、圧力室内を減圧させることにより成形用樹脂の発泡体を得る方法である。本発明の製造方法は、圧力室内を減圧させる工程が、第1減圧工程及び第2減圧工程を有し、第2減圧工程の減圧スピードが、第1減圧工程の減圧スピードよりも遅いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体を用いた発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素や窒素等の物質を臨界点以上の温度及び圧力にすると超臨界流体となる。超臨界流体は、液体と気体の性質を併せ持つ流体であり、液体のように物を溶かす性質と気体のような高い拡散性を併せ持つことが知られている。超臨界流体の具体的な応用例としては、コーヒー豆からのカフェイン抽出、半導体製造工程での洗浄、クリーニング溶媒、樹脂発泡等が挙げられる。
超臨界流体を樹脂中に拡散浸透させた後、常圧まで減圧させると樹脂中の超臨界流体が気化膨張することにより発泡体が得られることが知られている。この方法により得られた発泡体は、従来の化学発泡及び物理発泡により得られた発泡体に比べて気泡サイズを小さくすることが可能となり、発泡体形成時の強度低下の少ないことが期待される。また、超臨界流体として二酸化炭素や窒素用いることによって、環境と人体により安全な成形品が可能となる。
【0003】
超臨界流体を用いた発泡体の製造方法として、例えば、特許文献1には、圧力室内に熱可塑性ポリマーを収容し、圧力室内を所定圧力、所定温度及び所定時間の条件下で超臨界流体により飽和させた後に、急速に圧力室内の圧力を減少させることにより、熱可塑性ポリマーの発泡体を製造する方法が記載されている。また、特許文献2には、圧力室内の熱可塑性ポリマーに超臨界流体を含浸させ、所定温度の条件下、所定の減圧スピードで急速に圧力室内を減圧させることにより、熱可塑性ポリマーの発泡体を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3544556号公報
【特許文献2】特開2000−226465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、圧力室内の圧力を急速に減少させるため、超臨界流体が気体に変わる時に断熱膨張し圧力室内の温度が低下する。このような圧力室内の温度の低下は、超臨界流体として二酸化炭素を用いて100℃未満の低い温度で処理した場合に、又は圧力室の容量が大きく超臨界流体の使用量が多くなった場合に、特に顕著に現れる。圧力室内の温度が急激に低下すれば、常圧まで減圧させた時に圧力室の内部表面にドライアイスが付着した状態となり、発泡体を圧力室から素早く取り出せなくなることがある。また、このような状態では、発泡体の表面、または発泡体の内部にドライアイスが付着し、発泡体の表面に凹凸ができたり、大きな気泡が生成される場合がある。そして、得られた発泡体は気泡サイズが不均一となり好ましくない。
【0006】
ドライアイスの発生を抑えるために、処理温度を高くすることが考えられるが、この場合、減圧後のドライアイス発生を抑えることは可能かもしれないが、得られた発泡体の気泡サイズが大きくなったり、減圧時の樹脂粘度が低くなり未発泡部分が発生する不完全な発泡体となり好ましくない。
【0007】
圧力室内の温度低下を小さくし、ドライアイスの発生を抑えるために、減圧スピードを低速にすることが考えられるが、この場合、特許文献2の比較例に見られるように、発泡体の気泡サイズが大きくなるので好ましくない。また、気泡サイズが大きくなると薄肉の発泡体は得られなくなる。
【0008】
従って、本発明の課題は、気泡サイズが細かく均一な発泡体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、成形用樹脂を収容する圧力室内において、成形用樹脂を超臨界流体に接触させる工程と、その後に圧力室内を減圧させる工程とを備える成形用樹脂の発泡体を得る製造方法であって、圧力室内を減圧させる工程が、第1減圧工程及び第1減圧工程より後の第2減圧工程を有し、第2減圧工程の減圧スピードが、第1減圧工程の減圧スピードよりも遅い発泡体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、気泡サイズが細かく均一な発泡体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の製造方法を実施する好適な装置を示す概略図である。
【図2】図2(a)は、本発明の製造方法で得られる発泡体を備える歯間ブラシの要部拡大斜視図であり、図2(b)は、本発明の製造方法で得られる発泡体を備える舌ブラシの要部拡大斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す圧力室の内部にセットする金属製容器の概略図である。
【図4】図4(a)は、実施例1で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像であり、図4(b)は、実施例2で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像であり、図4(c)は、実施例3で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像である。
【図5】図5(a)は、比較例1で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像であり、図5(b)は、比較例2で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造方法は、成形用樹脂を圧力室内に収容した後に、成形用樹脂を超臨界流体に接触させる工程と、その後に圧力室内を減圧させる工程とを備える。成形用樹脂を超臨界流体に接触させるまでの工程は以下のとおりである。固形の成形用樹脂を圧力室内にセットした後に、超臨界流体用原料をコンプレッサーやプランジャーポンプ等の加圧器を用いて圧力室内に供給し、圧力室内の超臨界流体用原料の圧力を臨界圧力以上にするとともに、圧力室内の温度が臨界温度以上となるように電気ヒーターやオイルヒーター等により加熱し、超臨界流体用原料を超臨界流体の状態とする。そして、成形用樹脂を超臨界流体に接触させる。その後の圧力室内を減圧させる工程は、圧力室内の圧力を減圧バルブの操作により減圧させる第1減圧工程と、それより後の第2減圧工程とをへて、最終的には常圧まで減圧させることにより成形用樹脂を発泡させる。
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。発泡体の製造に用いられる装置は、減圧バルブを備えた圧力室と、圧力室に超臨界流体用原料又はこの超臨界流体用原料の超臨界流体を供給する超臨界流体供給部とを備えている。このような装置を用いた発泡体の製造方法について説明する。
【0013】
成形用樹脂としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ポリメタクリル酸等のポリアクリル酸又はポリメタクリル酸系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ナイロンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂も用いることができる。
【0014】
成形用樹脂は、ペレット、シート、又はその他の所定形状に加工された固形状のものを用いる。加工された成形用樹脂は、圧力室内に、直接にセットされる。または、加工された成形用樹脂は、予め金型等の金属製容器に収容され、その金属製容器を、圧力室内にセットする。
【0015】
ペレット、シート、又はその他の所定形状に加工した成形用樹脂を圧力室内に、直接にセットする。または、加工された成形用樹脂を、予め金属製容器に収容し、その金属製容器を、圧力室内にセットする。
【0016】
圧力室は、好ましくは0.5リットル〜100リットルの内容積のものであり、更に好ましくは1リットル〜30リットルの内容積のものを用いる。
【0017】
成形用樹脂を直接セット、又は成形用樹脂を収容した金属製容器をセットした圧力室を、圧力室の外周に設けられたヒーター等によって加熱しながら、圧力室の内部に、超臨界流体用原料又はその超臨界流体を流体供給部から供給する。以下、供給する超臨界流体原料について詳述する。
【0018】
超臨界流体用原料としては、例えば窒素、酸素、二酸化炭素、アンモニア、空気、ネオン、アルゴン、エタン、プロパン、ブタン、エチレンなどの常温(20℃)常圧で気体の原料、エタノールや水等の常温で液体の原料が挙げられる。これらの中で、成形用樹脂への溶解性に優れ、臨界温度Tc(Tc=31.1℃)及び臨界圧力Pc(Pc=7.43MPa)が常温常圧に近く、加圧工程が簡単であり、超臨界流体を得ることが容易であるため、二酸化炭素を用いることが好ましい。また樹脂の分解が無く、不燃性であり、樹脂中に残存した場合でも人体に対して安全であるという観点からも二酸化炭素が好ましい。
【0019】
二酸化炭素や窒素のように常温(20℃)常圧で気体の超臨界流体用原料はボンベに収容されており、ボンベの供給バルブを開いて、加圧器に供給される。二酸化炭素のように臨界温度が常温付近の超臨界流体用原料の場合、冷却器に通して液化した二酸化炭素を加圧器に供給することが好ましい。この場合の加圧器としては、プランジャーポンプが好ましい。窒素のように臨界温度が低い超臨界流体用原料の場合、冷却器を通さずに加圧器に供給することが好ましい。この場合の加圧器としてはコンプレッサーが好ましい。水やエタノールのように常温(20℃)常圧で液体の超臨界流体用原料はタンクに収容されており、タンクの供給バルブを開いて、加圧器に供給される。この場合の加圧器としては、プランジャーポンプが好ましい。加圧器で加圧されながら超臨界流体用原料は、圧力室に供給される。
【0020】
超臨界流体用原料を冷却器によって冷却する場合の設定温度としては、超臨界流体用原料が液化する臨界温度以下にすることが好ましい。加熱器を用いる場合の設定温度としては、成形用樹脂に超臨界流体を拡散浸透する際の圧力室内と同じ温度にすることが好ましい。
【0021】
成形用樹脂及び超臨界流体用原料が供給された圧力室の内部を、ヒーター等によって加熱しながら、加圧器によって超臨界流体用原料を圧力室内に供給し続けることによって圧力室内の圧力を上げ、圧力室の内部を超臨界流体の臨界温度Tc以上とし、さらに超臨界流体の臨界圧力Pc以上とする。
【0022】
圧力室の内部温度としては、超臨界流体の臨界温度Tc以上であって、さらに、上記成形用樹脂の中で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、等の結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂の融点付近の温度が好ましく、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ポリメタクリル酸等の非結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂のガラス転移温度以上の温度が好ましい。また、EVAのように結晶性樹脂の部分(ポリエチレンの部分)と非結晶性樹脂の部分(ポリ酢酸ビニルの部分)とを持つ共重合体を使用する場合には、非結晶性樹脂のガラス転移温度から結晶性樹脂の融点付近までの温度範囲が好ましい。このように内部温度を設定することにより、未発泡の樹脂部分が発生し難く、発泡体が硬くなり難い。
【0023】
圧力室の内部圧力(超臨界流体に接触する際の圧力)としては、超臨界流体の臨界圧力Pc以上であって、さらに、気泡サイズの適正化の観点から、臨界圧力より8MPa以上が好ましく、臨界圧力より13MPa以上がさらに好ましい。内部圧力の上限は、製造設備の容易さの観点から、50MPa以下であることが好ましい。
【0024】
圧力室内の圧力が臨界圧力Pcを超えて十分に上昇したら、超臨界流体供給部の供給バルブを閉めて、加圧器からの超臨界流体用原料又はその超臨界流体の供給を停止し、圧力室内を一定の圧力と温度に保つことにより、成形用樹脂を超臨界流体に接触させて、超臨界流体が成形用樹脂に拡散浸透(含浸)していく。
【0025】
成形用樹脂を超臨界流体に接触させる時間としては、発泡に必要な量の超臨界流体が成形用樹脂に溶解し十分に含浸する時間であれば良く、0.5時間(hr)〜3時間(hr)であることが好ましい。超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合には、液体に近い密度を持ち、また気体のように大きな拡散度及び低い粘度を示す。このような性質によって、圧力室内においては、超臨界流体が成形用樹脂に拡散浸透し、成形用樹脂内部に均一に分散する。
【0026】
超臨界流体を十分に樹脂に拡散浸透させた後、圧力室に設けられた減圧バルブを開いて減圧する。本発明の発泡体を得る製造方法は、第1減圧工程と、この第1減圧工程の後に減圧する第2減圧工程とを有しており、第2減圧工程の減圧スピードは、第1減圧工程の減圧スピードよりも遅くする。
【0027】
先ず、第1減圧工程について詳述する。
第1減圧工程の減圧スピードは、50〜1000MPa/分であることが好ましく、100〜700MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが50MPa/分より速ければ、発泡体の気泡サイズが小さく、セル密度が大きくなるので好ましく、減圧スピードが1000MPa/分より遅ければ、他の吸引装置が必要とならず、圧力室の減圧バルブを開放するだけで対応できるので、設備費が低く抑えられるので好ましい。
【0028】
第1減圧工程は、超臨界流体の臨界点以上の圧力及び温度の領域にあることが好ましい。即ち、第1減圧工程は、セル密度を大きくする観点から、第1減圧工程の終了時も、圧力室内の圧力が超臨界流体の臨界圧力Pc以上であって、圧力室内の温度が超臨界流体の臨界温度Tc以上であることが好ましい。
【0029】
第1減圧工程の終了時の圧力室の内部の圧力は、発泡体内部に大きな気泡のかたまりの発生を抑制し、セル密度を高くする観点から、臨界圧力Pcより12MPa〜3MPa高い圧力であることが好ましく、臨界圧力Pcより11MPa〜4MPa高い圧力であることがさらに好ましい。また、発泡体のセル密度を高くする観点から第1減圧工程は、圧力室内部の圧力を当初の圧力から5〜15MPa減圧することが好ましい。
【0030】
第1減圧工程による圧力室の減圧後、第2減圧工程により圧力室内部の圧力をさらに減圧する。第1減圧工程の終了時から、第2減圧工程の開始時までの時間(減圧工程の中断時間)は、大きな気泡たまりを抑制する観点から中断時間がないか、又は中断時間が0秒(sec)より長く2秒(sec)以下であることが好ましい。
【0031】
次に、第2減圧工程について詳述する。
第2減圧工程の減圧スピードは、0.1〜10MPa/分であることが好ましく、3〜7MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが0.1MPa/分より速ければ、生産性が低下することがなく、10MPa/分より遅ければ、圧力室の内部表面にドライアイスが発生し難いので好ましい。
【0032】
第2減圧工程は、臨界圧力Pcより12MPa〜3MPa高い圧力から臨界圧力Pcより低い圧力まで減圧することが好ましい。即ち、第2減圧工程の終了時の圧力室内の圧力は、超臨界流体の臨界圧力Pcより低いことが好ましい。気泡成長は臨界圧力Pcより低い圧力において行われるため、気泡成長における減圧速度を遅くすることによって気泡サイズが小さくなりすぎることを防止し、適度な大きさの柔らかな発泡体となる観点から、第2減圧工程の終了時に、圧力室内の圧力が、臨界圧力Pcより低いことが好ましい。
【0033】
第2減圧工程終了時の圧力室の内部の温度は、超臨界流体の臨界温度Tc以上であることが好ましく、さらに、気泡成長を促進するという観点から、超臨界流体を成形用樹脂に含浸させる温度より30℃以内の範囲で低いことが好ましい。
【0034】
第2減圧工程による減圧後に、圧力室内の圧力を常圧とした後、圧力室から発泡体を取り出す。また、金属製容器を用いた場合には、圧力室から金属製容器を取り出し、さらに金属製容器内から発泡体を取り出す。本発明によれば、圧力室の内部表面にドライアイスが発生し難く、発泡体を金属製容器から取り出し易い。また、本発明によれば、金属製容器を用いた場合、圧力室の内部表面にドライアイスが発生し難く、金属製容器の外表面及び内表面(発泡体の表面)及び発泡体の内部にも、ドライアイスが発生し難いため、金属製容器から発泡体を取り出し易いだけでなく、発泡体の表面にドライアイスによる凹凸が形成されることを防止し、気泡サイズが細かく均一な超臨界発泡体を得ることができる。
【0035】
次に、本発明を、超臨界流体用原料として最も好ましい二酸化炭素を用いた場合の好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1は、発泡体の製造に用いられている装置の一例の概略図を示す。装置は、減圧バルブを備えた圧力室1と、圧力室1に超臨界流体用原料である二酸化炭素を供給する、又はこの二酸化炭素の超臨界流体である超臨界二酸化炭素を供給する超臨界流体供給部2とを備えている。以下、図1に示す装置を用いた発泡体の製造方法について具体的に説明する。
【0036】
成形用樹脂としては、上述した樹脂を用いることができる。ペレット、シート、又はその他の所定形状に加工した成形用樹脂を図1に示す圧力室1内に、直接セットする。または、加工された成形用樹脂を、予め図3に示す金属製容器3に収容し、その金属製容器3を、圧力室1内にセットする。
【0037】
成形用樹脂を収容する金属製容器3は、図3に示すように、矩形状の2枚の金属板31,32からなり、金属板32における金属板31との対向面には、成形用樹脂を収容する凹部33が形成されている。また、金属板32には、凹部33に接続されたガス抜き溝34が形成されている。凹部33の形状は、図2(a)に示すような歯間ブラシのブラシ部4若しくは図2(b)に示すような舌ブラシのブラシ部5等の製品の形状に応じて形成される。凹部33に成形用樹脂を収容した後、金属板31及び金属板32の四隅をボルトとナットによりボルト締めすることにより一体化する。この金属製容器3を、圧力室1の内部にセットする。
【0038】
成形用樹脂を直接セット、又は成形用樹脂を収容した金属製容器3をセットした圧力室1を、図1に示すように、圧力室1の外周に設けられたヒーター11によって加熱しながら、圧力室1の内部に、二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を流体供給部2から供給する。
【0039】
超臨界流体用原料である二酸化炭素は、図1に示すように、ボンベ21に収容されており、ボンベ21の供給バルブを開いて、冷却器22に供給される。冷却器22により冷却され液化した二酸化炭素を、図1に示すように、プランジャーポンプ23を用いて圧力室1内に供給する。液化された二酸化炭素は、圧力室1内に供給される前に、図1に示す加熱器24により加熱されながら圧力室1内に供給される。
【0040】
超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合の冷却器22の冷却温度としては、−10℃〜30℃であることが好ましく、−5℃〜5℃であることが更に好ましい。
【0041】
二酸化炭素を冷却器22によって冷却する場合は、プランジャーポンプ23と圧力室1との間に加熱器24を設けることが好ましい。超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合の加熱器24の加熱温度としては、臨界温度以上であることが好ましく、成形用樹脂が結晶性の場合には、融点近傍がさらに好ましく(例えば融点±20℃、好ましくは±10℃)、非晶性の場合には、ガラス転移温度以上であることがさらに好ましい。
【0042】
成形用樹脂及び二酸化炭素、又は成形用樹脂及び超臨界二酸化炭素が供給された圧力室1の内部を、ヒータ11によって加熱しながら、プランジャーポンプ23によって、二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を圧力室1内に供給し続け、圧力室1内の圧力を上げ、圧力室1の内部を超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上とし、さらに超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上とする。
【0043】
圧力室1の内部温度としては、超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上であって、さらに、上記成形用樹脂の中で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、等の結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂の融点近傍の温度が好ましく、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ポリメタクリル酸等の非結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂のガラス転移温度以上の温度が好ましい。また、EVAのように結晶性樹脂の部分(ポリエチレンの部分)と非結晶性樹脂の部分(ポリ酢酸ビニルの部分)とを持つ共重合体を使用する場合には、非結晶性樹脂のガラス転移温度から結晶性樹脂の融点付近までの温度範囲が好ましい。このように圧力室1の内部温度を設定することにより、未発泡の樹脂部分が発生し難く、発泡体が硬くなり難い。
【0044】
圧力室1の内部圧力としては、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であって、さらに、気泡サイズの適正化の観点から、12MPaより高圧が好ましく、19MPaより高圧がさらに好ましく、20MPa以上が特に好ましい。内部圧力の上限は、設備製造の容易さの観点から、50MPa以下であることが好ましい。
【0045】
圧力室1内の圧力が臨界圧力Pcを超えて十分に上昇したら、流体供給部2の供給バルブを閉めて、プランジャーポンプ23からの二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素の供給を停止し、圧力室1内を一定の圧力と温度に保つことにより、成形用樹脂を超臨界二酸化炭素に接触させて、超臨界流体が成形用樹脂に拡散浸透(含浸)していく。
【0046】
超臨界二酸化炭素を含浸させる時間としては、発泡に必要な量の超臨界二酸化炭素が成形用樹脂に溶解する時間であれば良く、0.5時間(hr)〜3時間(hr)であることが好ましい。超臨界二酸化炭素は、気体のような高い拡散浸透性と低い粘度を有し、特に、液体に近い密度を持つ。このような性質によって、圧力室1内においては、超臨界二酸化炭素が成形用樹脂に拡散浸透し、成形用樹脂内部に均一に分散する。
【0047】
超臨界二酸化炭素を十分に樹脂に拡散浸透させた後、圧力室1に設けられた減圧バルブ12を開いて減圧する。本発明の発泡体を得る製造方法は、第1減圧工程と、該第1減圧工程の後に減圧する第2減圧工程とを有しており、前記第2減圧工程の減圧スピードが、前記第1減圧工程の減圧スピードよりも遅いことを特徴とする。
【0048】
先ず、第1減圧工程について詳述する。
第1減圧工程の減圧スピードは、50〜1000MPa/分であることが好ましく、1000〜800MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが50MPa/分より速ければ、発泡体の気泡サイズが小さく、セル密度が大きくなるので好ましく、減圧スピードが1000MPa/分より遅ければ、他の吸引装置が必要とならず、圧力室1の減圧バルブ12を開放するだけで対応できるので、設備費が低く抑えられるので好ましい。
【0049】
第1減圧工程は、超臨界二酸化炭素の臨界点以上の圧力及び温度の領域にあることが好ましい。即ち、第1減圧工程は、セル密度を大きくするという観点から、第1減圧工程終了時も、圧力室1内の圧力が超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であって、圧力室1内の温度が超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上であることが好ましい。
【0050】
第1減圧工程終了時の圧力室1の内部の圧力は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であることが好ましく、さらに、発泡体内部に大きな気泡のかたまりが発生し難く、セル密度が高くなりやすい大きくなり難いとの観点から、19MPa〜11MPaであることが好ましく、18MPa〜12MPaであることがさらに好ましい。また、第1減圧工程による減圧は、5〜15MPaであることが好ましい。
【0051】
第1減圧工程による圧力室1の減圧後、第2減圧工程により圧力室1の内部の圧力をさらに減圧する。第1減圧工程終了時から、減圧開始までの時間は、0秒(sec)〜2秒(sec)であることが好ましい。中断を2秒以内とすることにより大きな気泡たまりがなくなるので好ましい。
【0052】
次に、第2減圧工程について詳述する。
第2減圧工程の減圧スピードは、0.1〜10MPa/分であることが好ましく、3〜7MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが0.1MPa/分より速ければ、生産性が低下することがなく、10MPa/分より遅ければ、圧力室1の内部表面にドライアイスが発生し難いので好ましい。
【0053】
第2減圧工程は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pcより低い圧力まで減圧することが好ましい。即ち、気泡成長は臨界圧力より低い圧力において行われる。この時の減圧速度を遅くすることにより気泡サイズが小さくなりすぎることなく柔らかな発泡体となるという観点から、第2減圧工程終了時に、圧力室1内の圧力が、臨界圧力Pcより低いであることが好ましい。
【0054】
第2減圧工程終了時の圧力室1の内部の圧力は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc(7.13MPa)より低いことが好ましく、超臨界二酸化炭素では7MPa以下であることが好ましく、さらに、製造工程の簡素化の観点から、常圧であることが好ましい。圧力室1内の圧力が3MPa以下であれば第2減圧工程の後に10MPa/分より早い速度で減圧を行っても良い。
【0055】
第2減圧工程終了時の圧力室1の内部の温度は、超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc(32℃)以上であることが好ましく、さらに、気泡成長を促進するという観点から、超臨界二酸化炭素を成形用樹脂に含浸させる温度より30℃以内の範囲で低いことであることが好ましい。
【0056】
第2減圧工程による減圧後に、圧力室1内の圧力を常圧とした後、圧力室1から発泡体を取り出す。また、金属製容器3を用いた場合には、圧力室1から金属製容器3を取り出し、ボルトとナットをゆるめて、金属板32の凹部33から発泡体を取り出す。本発明によれば、圧力室1の内部表面にドライアイスが発生し難く、発泡体を取り出し易い。また、本発明によれば、金属製容器3を用いた場合、圧力室1の内部表面にドライアイスが発生し難く、金属製容器3の外表面及び内表面(発泡体の表面)、発泡体の内部にも、ドライアイスが発生し難いため、金属製容器3から発泡体を取り出し易い。本発明により得られる発泡体は、気泡サイズが細かく、均一な超臨界発泡体である。
【0057】
本発明により得られた超臨界発泡体とは、気泡サイズが細かく且つ均一な発泡セル領域と、発泡セル領域の全周面を覆うスキン層とから形成される発泡体のことをいう。発泡セルは各々のセルがセル壁で隔離された独立発泡セル及びセル壁が連通した連続発泡セルが含まれる。本発明により得られる発泡体の発泡セル領域における気泡のセル面積は、200〜32000μm2であり、好ましくは300〜5000μm2であり、セル同士の間の間隔(セル壁の厚み)は、0.1μm〜5μmであることが好ましい。ここで、スキン層とは、気泡を含まない部分及びセル面積が200μm2より小さい気泡を含む部分のことをいい、その厚みは、0μm〜70μmである。尚、セル面積、セル壁の厚み、スキン層の厚みは、以下の方法により測定する。
【0058】
<セル面積等の測定法>
セル面積の測定は、走査型電子顕微鏡(リアルサーフェイス顕微鏡 商品名VE7800;(株)キーエンス製)を用いて測定できる。得られた超臨界発泡体を、その中心を通るようにカッターで半分に切断する。走査型電子顕微鏡を用いて、超臨界発泡体の切断面の拡大写真を撮影する。そして、この拡大写真から、10個の気泡(セル)を選択し、画像処理ソフト(商品名ウィンルーフ バージョン5.6.2 三谷商事製)を用いて、それぞれの気泡における面積を測定する。それらの結果から各気泡の平均面積を算出し、セル面積とする。尚、セル壁の厚みは、同様に、走査型電子顕微鏡を用いて、超臨界発泡体の切断面の拡大写真を撮影し、この拡大写真から、気泡同士の間の間隔を10箇所測定し、測定値の平均をセル壁の厚みとする。尚、気泡同士の間隔が20μm以上である場合は、未発泡部分とする。スキン層の厚みも同様に走査型電子顕微鏡を用いて、超臨界発泡体の切断面の拡大写真を撮影し、この拡大写真から、スキン層の厚みを10箇所測定し、測定値の平均をスキン層の厚みとする。
【0059】
本発明により得られる発泡体の発泡セル領域における気泡の均一性は、セル面積、セル壁の厚み及びセル密度により判断する。気泡が均一であるとは、セル面積が200μm2〜32000μm2の範囲にあり、セル壁の厚みが5μm以下であり且つセル密度が2500個/cm2〜250000個/cm2の範囲にあり発泡体切断面の気泡同士の間隔が20μm以上の未発泡部分が無い均一なセルで形成されていることをいう。尚、セル密度は、以下の方法により測定する。
【0060】
<セル密度の測定法>
超臨界発泡体の切断面1cm2当たりに気泡が何個含まれているのかを表すセル密度も走査型電子顕微鏡を用いて測定する。
【0061】
本発明により得られる発泡体は、気泡サイズが細かいため、発泡体形成時の強度低下が発生し難いと共に衝撃吸収性等の効果が優れており、また、気泡同士の間隔が20μm以上の未発泡部分のない均一な気泡であるため、滑らかで良好な感触を発現する。そして、このような発泡体を、肉厚が0.1〜30mm、好ましくは0.5〜10mmの薄肉発泡体や、表面に突部や窪みを備える成形品であっても得ることができる。
【0062】
そのため、圧力室1に成形用樹脂を直接セットすることにより得られた発泡体は、図2(a)に示すような歯間ブラシのブラシ部4、図2(b)に示すような舌ブラシのブラシ部5、メイクアップ化粧パフ、デンタルフロス等の薄肉製品として使用することができる。これら薄肉製品を得るために成形用樹脂をそれぞれの製品形状となる金型内にセットした後、圧力室1内に収容し、超臨界流体にて発泡処理を行うことが好ましい。尚、図2(a)に示すような歯間ブラシのブラシ部4は、その長さが、5mm〜20mmであり、その幅が0.8mm〜5mmのものである。図2(b)に示すような舌ブラシのブラシ部5は、その長さが、10mm〜30mmであり、その幅が5mm〜20mmのものである。
【0063】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、第2減圧工程の減圧スピードが、前記第1減圧工程の減圧スピードよりも遅ければ、前述の説明に制限されない。また、第1減圧工程と第2減圧工程以外の減圧スピードからなる減圧工程を有するものであっても良い。
【0064】
また、前記実施形態においては、圧力室1の内部に、成形用樹脂及び超臨界流体用原料(二酸化炭素)のみ、又は成形用樹脂及び超臨界流体(超臨界二酸化炭素)のみが供給されているが、それらに加え、成形用樹脂の可塑剤や改質剤等を圧力室1の内部に供給してもよい。
【0065】
また、超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合の前記実施形態においては、金属製容器3は、図3に示すように、金属板32に、歯間ブラシのブラシ部4若しくは舌ブラシのブラシ部5等の製品の形状に応じて形成された凹部33を1個有しているが、複数個の凹部33を有していてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0067】
〔発泡体の成形用樹脂シートの作製〕
成形用樹脂としては、東ソー株式会社製の商品名ウルトラセン710(エチレン酢酸ビニル共重合体:酢酸ビニル含量26重量%)を用い、それを加熱プレスし、厚み0.6mmのシートとしたものを、30mm×30mmにカットし成形用樹脂シートを作製した。ウルトラセン710は、結晶性樹脂の部分と非結晶性の部分とを併せ持つ共重合体の樹脂であり、結晶性樹脂の部分の融点が72℃であり非結晶性の部分のガラス転移温度が31℃であった。融点及びガラス転移温度の測定には、示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツルメント社製、商品名EXTRA6000)を用いた。
【0068】
〔実施例1〕
発泡処理装置としては、図1に示す装置を用いた。圧力室1は内容積1リットルのものを用いた。成形用樹脂シートを収容する金属製容器3としては、図3に示すアルミ製容器を用いた。
金属板32の凹部33に成形用樹脂シートを収容した金属製容器3を、ヒーター11の処理温度を70℃に設定した圧力室1の内部にセットした。次に、ボンベ21から超臨界二酸化炭素を冷却器22、プランジャーポンプ23、加熱器24を通して密閉状態の圧力室1に供給する。冷却器22の設定温度は、0℃とし、ガス状の二酸化炭素を一旦液化させたものをプランジャーポンプ23で送り、設定温度70℃で加熱された加熱器24を通して二酸化炭素を圧力室1に供給し続け、圧力室1内の圧力が25MPaになるまで圧力を上げた。圧力室内の温度70℃、圧力25MPaになった後、超臨界流体供給部2の供給バルブを閉めて、その温度及び圧力の状態を1時間保持し、超臨界二酸化炭素を成形用樹脂に含浸溶解させた。続いて、圧力室1の減圧バルブ12を開いて減圧スピード600MPa/分にて減圧し、圧力室1内の圧力を25MPaから18MPaに減圧した(第1減圧工程)。次に、再度、圧力室1の減圧バルブ12を開いて減圧スピード4MPa/分にて減圧し、圧力室1内の圧力を18MPaから常圧まで減圧(第2減圧工程)し、成形用樹脂を発泡させた。尚、第1減圧工程の終了時と第2減圧工程の開始時との間の時間は、0.5秒であった。
【0069】
〔実施例2〕
実施例1において、第1減圧工程の減圧スピードを800MPa/分とし、第1減圧工程により圧力室1内の圧力を25MPaから12MPaに減圧する以外は実施例1と同様にして成形用樹脂を発泡させた。
【0070】
〔実施例3〕
実施例1において、プランジャーポンプ23により圧力室1内の圧力を20MPaになるまで圧力を上げ、第1減圧工程の減圧スピードを500MPa/分とし、第1減圧工程により圧力室1内の圧力を20MPaから12MPaに減圧する以外は実施例1と同様にして成形用樹脂を発泡させた。
【0071】
〔比較例1〕
実施例1において、プランジャーポンプ23により圧力室1内の圧力を20MPaになるまで圧力を上げ、第1減圧工程及び第2減圧工程を設けず、圧力室1の減圧バルブ12を開いて減圧スピード100MPa/分にて減圧し、圧力室1内の圧力を20MPaから常圧まで一気に減圧する以外は実施例1と同様にして成形用樹脂を発泡させた。
【0072】
〔比較例2〕
実施例1において、第1減圧工程及び第2減圧工程を設けず、圧力室1の減圧バルブ12を開いて減圧スピード4MPa/分にてゆっくりと減圧し、圧力室1内の圧力を25MPaから常圧まで一気に減圧する以外は実施例1と同様にして成形用樹脂を発泡させた。
【0073】
〔ドライアイスの発生状態の観察〕
実施例1、2及び3並びに比較例1及び2で用いた金属製容器3を圧力室1から取り出す際の圧力室1の内部表面及び金属製容器3の外表面にドライアイスが発生しているか否かを目視にて観察した。その結果を、表1に示す。
【0074】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2及び3で用いた圧力室1の内部表面及び金属製容器3の外表面にはドライアイスが発生しておらず、金属製容器3から発泡体を取り出し易かった。一方、比較例1及び2で用いた圧力室1の内部表面及び金属製容器3の外表面にはドライアイスが発生しており、金属製容器3から発泡体を取り出し難いだけでなく、比較例1及び2の発泡体の表面には金型により成形される突部や窪みとは異なる僅かな凹凸が部分的にみられた。
【0075】
〔発泡体の気泡状態の評価〕
実施例1、2及び3並びに比較例1及び2で得られた発泡体を、二等分にカットし、そのカット断面について、前述した走査型電子顕微鏡(リアルサーフェイス顕微鏡 商品名VE7800;(株)キーエンス製)リアルサーフェイス顕微鏡(商品名VE7800;(株)キーエンス製)による拡大観察を行った。その結果を図4(実施例1,2及び3)及び図5(比較例1及び2)に示す。また、実施例1、2及び3並びに比較例1及び2で得られた発泡体のセル壁の厚み、スキン層の厚み、セル面積及びセル密度を、上述した方法により測定した。その結果を、表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2及び3で得られた発泡体は、気泡サイズが細かく、気泡が均一な超臨界発泡体であった。一方、比較例1及び2で得られた発泡体は、実施例1、2及び3で得られた発泡体に比べて、比較例1は発泡体断面において気泡同士の間に40〜70μmの未発泡部分が存在し、セル密度が低いとともにセル壁の厚みが厚く、気泡が不均一であった。特に、比較例2で得られた発泡体は、気泡サイズが大きく、気泡同士の間に100〜120μmの大きな未発泡部分が存在するとともにスキン層が厚く、気泡が不均一であった。
【符号の説明】
【0078】
1 圧力室
11 ヒーター
12 減圧バルブ
2 超臨界流体供給部
21 ボンベ
22 冷却器
23 プランジャーポンプ
24 加熱器
3 金属製容器
31 金属板
32 金属板
33 凹部
34 ガス抜き溝
4 歯間ブラシのブラシ部
5 舌ブラシのブラシ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用樹脂を収容した圧力室内において、成形用樹脂を超臨界流体に接触させる工程と、その後に圧力室内を減圧させる工程とを備える成形用樹脂の発泡体を得る製造方法であって、
圧力室内を減圧させる工程が、第1減圧工程及び第1減圧工程より後の第2減圧工程を有し、
第2減圧工程の減圧スピードが、第1減圧工程の減圧スピードよりも遅い発泡体の製造方法。
【請求項2】
第1減圧工程の減圧スピードが50〜1000MPa/分であり、第2減圧工程の減圧スピードが0.1〜10MPa/分である請求項1に記載の発泡体の製造方法。
【請求項3】
第1減圧工程が前記超臨界流体の臨界点以上の圧力及び温度の領域で減圧され、第2減圧工程が前記超臨界流体の臨界圧力より低い圧力まで減圧される請求項1又は2に記載の発泡体の製造方法。
【請求項4】
第1減圧工程において、超臨界流体に接触させる際の圧力から、超臨界流体の臨界圧力よりも3〜12MPa高い圧力まで減圧させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡体の製造方法。
【請求項5】
第2減圧工程において、超臨界流体の臨界圧力より3〜12MPa高い圧力から臨界圧力より低い圧力まで減圧させる請求項1〜3の何れか1項に記載の発泡体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−248337(P2010−248337A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98067(P2009−98067)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】