説明

発泡成形体

【課題】繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供する。
【解決手段】基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、熱膨張後の前記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、前記基材樹脂との平均密着性指数が7以上である発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用部材、又は、自動車、鉄道、線路、橋梁、建物等に用いられる部材として、従来から、ゴム、熱可塑性エラストマー等の基材樹脂を板状等に成形した、クッション性、制振性等の性能に優れた成形体が用いられている。また、クッション性、制振性等の性能を更に向上させるために、基材樹脂を発泡成形することが検討されている。
【0003】
基材樹脂を発泡成形する方法として、例えば、基材樹脂に、加熱すると分解してガスが発生するアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を加えて発泡成形する方法、炭酸ガス等のガスの溶解性を高めて基材樹脂に溶解させ、その後にガスの溶解性を下げることでガスを発生させる方法等が挙げられる。これらの方法によれば、例えば、直径が500μmを超えるような比較的大きな気泡を有する発泡成形体が得られる。
しかしながら、これらの方法で得られる発泡成形体には、クッション性は良好であるが繰り返し圧縮に対する耐疲労性が充分に得られないという問題があり、また、成形体としての強度が低く、使用時に成形体表面が膨れたり、引き裂かれたり、剥がれたりすることもある。
【0004】
このような問題に対し、基材樹脂に、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルを加えて発泡成形する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ゴム質材料(A)からなるマトリックス中に、平均直径が200μm以下のミクロの大きさの球殻状の膨張中空微小球(B)が三次元的に均一に分散配置した複合構造の成形物からなり、かつゴム質材料(A)100重量部に対する膨張中空微小球(B)の割合が0.3〜5重量部である防振材が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の防振材であっても、依然として繰り返し圧縮に対する耐疲労性は充分には得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−303524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、熱膨張後の前記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、前記基材樹脂との平均密着性指数が7以上である発泡成形体である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
熱膨張性マイクロカプセルを用いた場合、得られる発泡成形体には熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散することとなり、このような気泡は、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルにより形成されている。そのため、加熱すると分解してガスが発生する化学発泡剤を用いた場合等と比べて、熱膨張性マイクロカプセルを用いた場合には繰り返し圧縮に対する耐疲労性が改善される。しかしながら、本発明者は、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、基材樹脂との密着性が低い場合には、化学発泡剤を用いた場合等と同様に繰り返し圧縮に対する耐疲労性が充分には得られないことを見出した。
本発明者は、基材樹脂中に、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体において、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、基材樹脂との密着性を高めることにより、シェルが補強材として充分に機能し、繰り返し圧縮に対する耐疲労性を大きく向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の発泡成形体は、基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体である。本明細書中、気泡とは、基材樹脂中に分散した空孔部分を意味する。
上記基材樹脂は、発泡成形に通常用いられる基材樹脂であれば特に限定されないが、ゴム又は熱可塑性エラストマーが好ましい。
本明細書中、ゴムとは、室温において弾性を示す高分子物質を意味する。上記ゴムは特に限定されず、天然ゴム(NR)であってもよく、合成ゴムであってもよい。上記合成ゴムとして、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンアクリロゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、多硫化ゴム(T)等が挙げられる。これらのなかでは、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンアクリロゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が好ましい。
【0010】
本明細書中、熱可塑性エラストマーとは、常温ではエラストマー、即ち、加硫ゴムの性質を示し、高温では熱可塑性を示す物質を意味する。上記熱可塑性エラストマーは特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、エステル系エラストマー(TPEE)、ウレタン系エラストマー(TPU)、アミド系エラストマー(TPAE)、塩ビ系エラストマー(TPVC)等が挙げられる。これらのなかでは、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、エステル系エラストマー(TPEE)が好ましい。
【0011】
上記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものである。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、加熱により、上記シェルが可塑化するとともに上記コア剤が気化して蒸気圧が高くなり、膨張する。そのため、上記基材樹脂に上記熱膨張性マイクロカプセルを加えて発泡成形することにより、得られる発泡成形体には、上記熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することによって形成された気泡が分散することとなる。このような気泡は熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルにより形成されており、これにより、本発明の発泡成形体は、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れる。
【0012】
上記ポリマーは特に限定されないが、例えば、ニトリル系モノマーに由来する成分を有することが好ましい。上記ポリマーが上記ニトリル系モノマーに由来する成分を含有することにより、上記シェルは、高い耐熱性とガスバリア性とを有する。
上記ニトリル系モノマーは特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル、又は、これらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが特に好ましい。
【0013】
上記ポリマーは、カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有することが好ましい。
上記カルボキシル基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸が挙げられる。これらのなかでは、アクリル酸、及び、ガラス転移温度の高いポリマーを得ることのできるメタクリル酸が好ましい。
【0014】
なかでも、上記ポリマーは、アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有するか、又は、メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有することが好ましい。
これらの場合、成形時の加熱によってアクリロニトリル又はメタクリロニトリルに含まれるニトリル基と、アクリル酸又はメタクリル酸に含まれるカルボキシル基との環化反応が進行し、ポリアクリルイミド構造又はポリメタクリルイミド構造が形成されるため、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
また、これらの場合には、ニトリル基を有する成分とカルボキシル基を有する成分との他の組み合わせの場合と比べて、上記ポリマーを得る際の共重合反応の反応性、及び、環化反応の反応性が高く、ポリアクリルイミド構造又はポリメタクリルイミド構造が形成されやすいと推測される。
【0015】
上記ポリマー中の上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分の含有量は特に限定されないが、上記ポリマーを得る際、上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量の好ましい下限が5重量部、好ましい上限が100重量部である。上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量が5重量部未満であると、上記カルボキシル基を有するモノマーを配合する効果を充分に得ることができず、上記シェルの耐熱性、耐久性等が低下することがある。上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量が100重量部を超えると、上記シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0016】
また、上記ポリマーは、上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有する場合、更に、カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有することが好ましい。
この場合、成形時の加熱によってカルボキシル基と、カルボキシル基と反応可能な官能基との反応が進行し、上記シェルが高度に架橋されるため、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
【0017】
上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、マグネシウムモノアクリレート、ジンクモノアクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、グリシジル(メタ)アクリレート、ジンクモノアクリレートが好ましい。なお、本明細書中、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとの両方を意味する。
【0018】
上記ポリマー中の上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分の含有量は特に限定されないが、上記ポリマーを得る際、上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量の好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が30重量部である。上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量が0.01重量部未満であると、成形時の上記シェルの架橋度が低下することがある。上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量が30重量部を超えると、上記シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0019】
また、上記ポリマーは、上記ニトリル系モノマー、上記カルボキシル基を有するモノマー、上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマー等と共重合することのできる他のモノマーに由来する成分を有していてもよい。
上記他のモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記他のモノマーとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等も挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記ポリマー中の上記他のモノマーに由来する成分の含有量は特に限定されないが、上記ポリマーを得る際、上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記他のモノマーの配合量の好ましい上限が40重量部である。上記他のモノマーの配合量が40重量部を超えると、上記シェルの耐熱性、耐久性、ガスバリア性等が低下することがある。
上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記他のモノマーの配合量のより好ましい上限は30重量部である。
【0021】
上記シェルは、例えば上記ポリマーの構成成分を調整すること等により、成形時に高度に架橋されたり、高い弾性率、ガスバリア性、耐久性等を有していたりすることが好ましい。これにより、上記熱膨張性マイクロカプセルは潰れにくくなり、即ち、成形時の熱及び剪断を受けても収縮しにくく、かつ、成形後には繰り返し圧縮を受けても破壊しにくくなり、発泡成形体の繰り返し圧縮に対する耐疲労性が向上する。
上記シェルは、上記ポリマーが上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有する場合には、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
この場合、成形時の加熱によってカルボキシル基と、熱硬化性樹脂との反応が進行し、上記シェルが高度に架橋されるため、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
【0022】
上記熱硬化性樹脂は、カルボキシル基と反応することができれば特に限定されないが、カルボキシル基と反応可能な官能基を分子中に2つ以上有することが好ましい。上記熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記フェノール樹脂は特に限定されず、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0024】
上記シェル中の上記熱硬化性樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は30重量%である。上記熱硬化性樹脂の含有量が0.01重量%未満であると、成形時に上記シェルに熱硬化特性が現れないことがある。上記熱硬化性樹脂の含有量が30重量%を超えると、上記シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記シェル中の上記熱硬化性樹脂の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0025】
なお、上記ポリマーが上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有する場合には、上記ポリマーが上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有することによっても、上記シェルが上記熱硬化性樹脂を含有することによっても、いずれの場合にも成形時に上記シェルが高度に架橋され、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
ただし、上記ポリマーを得る際にカルボキシル基と、カルボキシル基と反応可能な官能基との反応が進行してしまうことによってその後の熱膨張が阻害されることを避けるためには、上記ポリマーが上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有するよりも、上記シェルが上記熱硬化性樹脂を含有することがより好ましい。
【0026】
上記揮発性液体は特に限定されず、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−へキサン、ヘプタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素、CClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。これらのなかでは、イソブタン、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、石油エーテル、及び、これらの混合物が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱耐久性の好ましい下限が50℃である。熱耐久性が50℃未満であると、上記熱膨張性マイクロカプセルは、成形時の加熱によって膨張しても膨張状態を持続することができず、しぼみが発生し、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと上記基材樹脂との界面が剥がれ、密着性が低下することがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルの熱耐久性のより好ましい下限は55℃である。
【0028】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡変位の好ましい下限が500μmである。最大発泡変位が500μm未満であると、上記気泡の平均直径が小さくなり、発泡成形体のクッション性が低下することがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡変位のより好ましい下限は800μmである。
【0029】
本明細書中、熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡変位、及び、熱耐久性とは、TAinstruments社製「TMA2940」等の熱機械分析装置(TMA)を用いて得られる、最大発泡変位(Dmax)、及び、最大発泡変位(Dmax)の1/2の変位を得られる温度幅(ΔT1/2)を意味する。
【0030】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、上記基材樹脂との親和性が高いこと、即ち、上記基材樹脂と相溶しやすいこと(溶解度パラメータが近いこと)が好ましい。これにより、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との密着性を高めることができる。
例えば、上記基材樹脂としてエステル系エラストマーを用いる場合には、エステル系エラストマーとメタクリル酸とは溶解度パラメータが近く、親和性が高いことから、上記シェルに含まれるポリマーがメタクリル酸に由来する成分を有することが好ましい。
【0031】
更に、上記熱膨張性マイクロカプセルは、上記基材樹脂に対して化学反応性を有していることが好ましい。これにより、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との密着性を更に高めることができる。
例えば、上記基材樹脂として、カルボキシル基を有するエステル系エラストマー又はアミド基を有するアミド系エラストマーを用いる場合には、上記シェルに含まれるポリマーが、カルボキシル基又はアミド基と化学反応性を有する、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂、或いは、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する成分を含むことが好ましい。
【0032】
上記気泡は、平均直径の好ましい下限が50μm、好ましい上限が300μmである。上記気泡の平均直径が50μm未満であると、発泡成形体はクッション性が低下し、特に静剛度、即ち、静的なばね性が高くなって硬くなることがある。上記気泡の平均直径が300μmを超えると、発泡成形体は成形体としての強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れる、引き裂かれる、剥がれる等の問題が発生しやすくなることがある。
上記気泡の平均直径のより好ましい下限は70μm、より好ましい上限は200μmである。
【0033】
上記気泡は、直径のCV値の好ましい上限が50%である。上記気泡の直径のCV値が50%を超えると、発泡成形体はクッション性が低下し、特に動剛度、即ち、動的なばね性が高くなって素早い圧縮に対して硬くなることがある。
上記気泡の直径のCV値のより好ましい上限は40%である。
【0034】
本明細書中、気泡の平均直径、及び、気泡の直径のCV値とは、発泡成形体をカミソリ等の鋭利な刃物、マイクロトーム、集束イオンビーム等を用いて切断し、得られた断面を白金、金等でスパッタリングした後、電子顕微鏡にて150倍等の倍率で観察し、ノギスを用いて任意の50個(n=50)の気泡の直径diをそれぞれ計測したとき、下記式(1)及び(2)により算出される値を意味する。なお、気泡が球状ではない場合、気泡の直径とは、気泡の最長径を意味する。
平均直径=(Σdi)/n (1)
直径のCV値(%)=(直径の標準偏差/平均直径)×100 (2)
【0035】
本発明の発泡成形体においては、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との平均密着性指数が7以上である。
平均密着性指数が7以上であると、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との密着性が高く、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルが補強材として充分に機能できることから、本発明の発泡成形体は、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れる。
【0036】
熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との平均密着性指数が7未満であると、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルが補強材として充分に機能することができず、化学発泡剤を用いた場合等と同様に、発泡成形体の繰り返し圧縮に対する耐疲労性が不充分となる。
熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との平均密着性指数は8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。
なお、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との平均密着性指数の上限は特に限定されず、最大値である10に近いほど好ましい。
【0037】
本明細書中、平均密着性指数とは、発泡成形体をカミソリ等の鋭利な刃物、マイクロトーム、集束イオンビーム等を用いて切断し、得られた断面を白金、金等でスパッタリングした後、電子顕微鏡にて150倍等の倍率で観察し、任意の複数個の気泡において、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルのうち基材樹脂に密着している部分の長さA、及び、その熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルが配置しているセルの円周方向の長さBをそれぞれ計測したとき、下記式(3)により算出される各気泡の密着性指数の平均値を意味する。なお、セルとは、発泡成形体中の、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルが配置しているスペースを意味する。
各気泡の密着性指数=(A/B)×10 (3)
なお、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルのうち基材樹脂に密着している部分の長さA、及び、その熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルが配置しているセルの円周方向の長さBは、例えば、紙に印刷出力した気泡の断面観察画像において自在曲線定規を計測箇所に沿わせることにより計測することができる。
【0038】
本明細書における平均密着性指数について、図1〜10を参照して説明する。図1〜10の(a)は、それぞれ、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例である。図1〜10の(b)は、それぞれ、(a)の電子顕微鏡写真に対して、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルが配置しているセルの円周方向の長さBを実線で、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルの円周方向の長さCを点線でなぞった写真である。
例えば、図5(b)おいては長さB(実線)とC(点線)とは半分程度重なっており、一方、図10(b)においては長さB(実線)とC(点線)とはほぼ全体が重なっている。即ち、図5に示す気泡よりも図10に示す気泡のほうが、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、基材樹脂との密着性が高い。
本明細書における平均密着性指数とは、このような熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、基材樹脂との密着性を示す指標である。なお、図1〜10の(b)に示された気泡に記載された数字は、その気泡の密着性指数を示している。
【0039】
本発明の発泡成形体は、直径20mmの圧子で、下限設定165N、上限設定661Nのサイクル加重を300万サイクルかけたときの耐疲労性の好ましい上限が10%である。300万サイクルでの耐疲労性が10%を超えると、発泡成形体の繰り返し圧縮に対する耐疲労性が不充分となることがある。
本発明の発泡成形体の、直径20mmの圧子で、下限設定165N、上限設定661Nのサイクル加重を300万サイクルかけたときの耐疲労性のより好ましい上限は8%である。
【0040】
本明細書中、耐疲労性とは、下記式(4)から算出される、所定の疲労性試験を行う前の静的なばね性(静剛度)に対する、疲労性試験を行った後の静的なばね性(疲労後静剛度)の変化率を意味する。
耐疲労性(%)=(疲労後静剛度−静剛度)/静剛度×100 (4)
【0041】
本発明の発泡成形体は、静剛度、即ち、静的なばね性の好ましい上限が35N/mmである。静剛度が35N/mmを超えると、発泡成形体は硬くなり、クッション性が低下することがある。
本発明の発泡成形体の静剛度のより好ましい上限は30N/mmである。
【0042】
本発明の発泡成形体は、動剛度、即ち、動的なばね性の好ましい上限が45N/mmである。動剛度が45N/mmを超えると、発泡成形体は素早い圧縮に対して硬くなり、クッション性が低下することがある。
本発明の発泡成形体の動剛度のより好ましい上限は40N/mmである。
【0043】
本発明の発泡成形体を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記基材樹脂に上記熱膨張性マイクロカプセルを加えて混合し、成形機等に投入して発泡成形する方法、上記熱膨張性マイクロカプセルをポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のマスターバッチ用基材樹脂と熱混練してペレット状のマスターバッチを作製した後、上記基材樹脂にマスターバッチを加えて混合し、成形機等に投入して発泡成形する方法等が挙げられる。特に、熱膨張後の上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、上記基材樹脂との密着性を高め、平均密着性指数を上記範囲とするためには、上記熱膨張性マイクロカプセルと上記基材樹脂とを、これらの親和性が高くなるように、又は、これらが化学反応性を有するように選択することが好ましい。
発泡成形する際の成形方法は特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形等が挙げられる。また、発泡成形する際のスクリューの形状及び回転数は特に限定されず、スクリューの回転による剪断力と滞留時間とを考慮して適宜設計すればよい。
【0044】
また、発泡成形する際には、上記熱膨張性マイクロカプセルが潰れないように、低負荷で発泡成形を行うことが好ましく、より具体的には、押出成形時又は射出成形時の上記基材樹脂の溶融粘度は低いことが好ましいため、低粘度の基材樹脂を用いるか、成形温度を上げて上記基材樹脂の粘度を下げることが好ましい。
【0045】
本発明の発泡成形体を製造する際、上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は特に限定されないが、上記基材樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が1重量部未満であると、上記気泡の数が減少し、発泡成形体のクッション性が低下して硬くなることがある。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が10重量部を超えると、上記気泡の数が増加し、発泡成形体は成形体としての強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れる、引き裂かれる、剥がれる等の問題が発生しやすくなることがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は、上記基材樹脂100重量部に対するより好ましい下限が1.5重量部、より好ましい上限が8重量部である。
【0046】
本発明の発泡成形体を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記熱膨張性マイクロカプセルに加えて、加熱すると分解してガスが発生するアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を配合してもよい。
上記化学発泡剤の配合量は、発泡成形体の繰り返し圧縮に対する耐疲労性を損なわないためには、上記熱膨張性マイクロカプセル100重量部に対する好ましい上限が50重量部である。
【0047】
本発明の発泡成形体は繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れるため、例えば、医療用部材、又は、自動車、鉄道、線路、橋梁、建物等に用いられる部材として有用である。より具体的には、本発明の発泡成形体は、医療用チューブ、自動車のインパネ表示、グリップ、グラスランチャネル、ブーツ、ホース及びタイヤ、鉄道、線路及び橋梁の鉄道制振板及びレールパッド、建物の制振材、靴底、電線ケーブル等に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図2】図2(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図3】図3(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図4】図4(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図5】図5(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図6】図6(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図7】図7(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図8】図8(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図9】図9(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図10】図10(a)及び(b)は、基材樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体における、気泡の断面の電子顕微鏡写真の一例を示す。
【図11】図11(a)及び(b)は、実施例1で得られた発泡成形体の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【図12】図11(a)及び(b)は、実施例2で得られた発泡成形体の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【図13】図11(a)及び(b)は、比較例3で得られた発泡成形体の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0051】
(製造例1)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)30重量部、メタクリロニトリル(MAN)50重量部及びメタクリル酸(MAA)20重量部と、熱硬化性樹脂としてN,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン0.2重量部及び4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとの重縮合物1重量部と、水酸化亜鉛0.3重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルAを得た。
【0052】
(製造例2)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)50重量部、メタクリロニトリル(MAN)30重量部及びアクリル酸(AA)20重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルBを得た。
【0053】
(製造例3)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)60重量部及びメタクリロニトリル(MAN)40重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルCを得た。
【0054】
(製造例4)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)20重量部、メタクリロニトリル(MAN)30重量部、メタクリル酸メチル(MMA)40重量部及びメタクリル酸(MAA)10重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルDを得た。
【0055】
<熱膨張性マイクロカプセルの評価>
製造例で得られた熱膨張性マイクロカプセルについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0056】
(1)熱耐久性
熱機械分析装置(TMA)(TAinstruments社製「TMA2940」)を用いて、熱膨張性マイクロカプセルの熱耐久性(最大発泡変位(Dmax)の1/2の変位を得られる温度幅、ΔT1/2)を測定した。
具体的には、熱膨張性マイクロカプセル25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/分の昇温速度で80℃から300℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定した。変位が上がりはじめ、最大発泡変位の1/2に到達する温度をT1/2、その後、最大発泡変位(Dmax)をむかえ、変位が下がりはじめ、再び最大発泡変位の1/2に到達する温度をT1/2*とする。このとき、下記式(5)により、熱耐久性(最大発泡変位(Dmax)の1/2の変位を得られる温度幅、ΔT1/2)を算出した。
ΔT1/2=T1/2*−T1/2 (5)
【0057】
(実施例1〜7及び比較例1〜4)
表2又は3に示す粉体状又はペレット状のマスターバッチ用基材樹脂100重量部と、滑剤としてステアリン酸10重量部とをコニカル二軸押出機(永田製作所製「OSC−30」)で混練し、約100℃になったところで表2又は3に示す発泡剤100重量部を添加し、更に30秒間混練した後、押し出すと同時にペレット化し、マスターバッチペレットを得た。
なお、表2又は3において、PEとは低密度ポリエチレン樹脂(旭化成社製「サンファインPAK00720」)を意味し、EMMAとはエチレン−メタクリル酸メチル共重合体を意味し、EVAとはエチレン−酢酸ビニル共重合体を意味する。
【0058】
ペレット状のエステル系エラストマー(東レデュポン社製「ハイトレル#3078」)100重量部と、表2又は3に示す配合量のマスターバッチと、顔料マスターバッチ(東京インキ製「カラーMB」)3重量部とを成形機(ユニオンプラスチックス社製「USV30−20 EXTORUDER」)で混合し、表2又は3に示す成形温度、滞留時間1分、スクリュー回転数30rpmの条件で押出成形を行い、厚み10〜12mmの発泡成形体を得た。
【0059】
得られた発泡成形体を片刃カミソリ(フェザー社製)を用いて切断し、得られた断面を金でスパッタリングした後、電子顕微鏡にて150倍で観察し、任意の5個の気泡において、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルのうち基材樹脂に密着している部分の長さA、及び、その熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルが配置しているセルの円周方向の長さBをそれぞれ計測し、上述した式(3)により算出される各気泡の密着性指数の5個の気泡の平均値を算出することにより、平均密着性指数を算出した。
熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルのうち基材樹脂に密着している部分の長さA、及び、その熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルが配置しているセルの円周方向の長さBは、紙に印刷出力した気泡の断面観察画像において自在曲線定規を計測箇所に沿わせることにより計測した。
【0060】
<発泡成形体の評価>
実施例及び比較例で得られた発泡成形体について以下の評価を行った。結果を表2又は3に示した。
なお、図11、12及び13の(a)に、それぞれ、実施例1、2及び比較例3で得られた発泡成形体の断面の電子顕微鏡写真を、(b)に、(a)の電子顕微鏡写真に対して、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルが配置しているセルの円周方向の長さBを実線で、熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルのシェルの円周方向の長さCを点線でなぞった写真を示した。図11、12及び13の(b)に示された気泡に記載された数字は、その気泡の密着性指数を示している。
【0061】
(1)クッション性
以下のように発泡成形体の静剛度及び動剛度を求めることにより、クッション性を評価した。
(1−1)静剛度の測定
発泡成形体の表面に圧子(ステンレス製、Φ15mm×10mmの円柱状)を置き、このときの圧子の高さを0とした。静的材料試験機(「EZGraph」、島津製作所社製)を用いて、圧子に91.5Nの加重を60秒与えたときの圧子の変位(S1)を測定し、その後、圧子に320Nの加重を60秒与えたときの変位(S2)を測定し、下記式(6)から静剛度を算出した。
静剛度(N/mm)=(320−91.5)/(S2−S1) (6)
【0062】
(1−2)動剛度の測定
発泡成形体の表面に圧子(ステンレス製、Φ15mm×10mmの円柱状)を置き、このときの圧子の高さを0とした。テンシロン万能材料試験(「UTA−500」、エーアンドディー社製)を用いて、圧子に下限設定91.5N、上限設定320Nのサイクル加重を1000サイクルかけ、900サイクルから1000サイクルまでの上限加重での平均加重(FU)と圧子の平均変位(SU)、及び、下限加重での平均加重(FD)と圧子の平均変位(SD)を測定し、下記式(7)から動剛度を算出した。
動剛度(N/mm)=(FU−FD)/(SU−SD) (7)
【0063】
(2)繰り返し圧縮に対する耐疲労性
発泡成形体の表面に圧子(Φ20mm)を置き、繰り返し疲労性試験機(島津製作所社製)を用いて、圧子に下限設定165N、上限設定661Nのサイクル加重を300万サイクルかけた。その後、300万サイクル後の成形体の静剛度を測定し、上記式(4)から耐疲労性を算出した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、
前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、
熱膨張後の前記熱膨張性マイクロカプセルのシェルと、前記基材樹脂との平均密着性指数が7以上である
ことを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
直径20mmの圧子で、下限設定165N、上限設定661Nのサイクル加重を300万サイクルかけたときの耐疲労性が10%以下であることを特徴とする請求項1記載の発泡成形体。
【請求項3】
静剛度が35N/mm以下、動剛度が45N/mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡成形体。
【請求項4】
熱膨張性マイクロカプセルは、熱耐久性が50℃以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の発泡成形体。
【請求項5】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、アクリル酸に由来する成分又はメタクリル酸に由来する成分を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発泡成形体。
【請求項6】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項7】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項8】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、更に、カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項9】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルが熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項10】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項9記載の発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−149173(P2012−149173A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8951(P2011−8951)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】