説明

発泡成形用ゴム組成物

【構成】ゴムまたはゴム状弾性物質100重量部に、殻壁材がポリアミド、ポリブタジエン、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルおよび塩化ビニリデン樹脂の群から選ばれる1種以上の熱可塑性物質からなり、かつ該殻壁材中に熱により該殻壁材を膨張させる特性を有する芯物質を内包するマイクロカプセルを1ないし30重量部配合してなる、発泡成形用ゴム組成物。
【効果】加熱発泡成形により得られる成形品は、いずれも極微細な均一の中空セル構造を有しており、ゴム状弾性が良好なラバーシート状のものとなり、また本成形品は防振性、断熱性等に関しても優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発泡成形用ゴム組成物に関し、詳しくはゴム状弾性、防振性、断熱性等の性質を有する極微細発泡ゴム状弾性体を得るための発泡成形用ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来、用途、目的に応じたゴム状弾性体により種々の成形材料が製造されているが、これらの成形材料は、充分なゴム状弾性を有しているものとは言えず、また得られる成形材料に防振性、断熱性等の性質を兼ね備えさせることは困難であった。
【0003】また、ゴム組成物中に必要に応じてニトロソ化合物系、アゾビス化合物系またはヒドラジド化合物系の発泡剤を配合した発泡成形用組成物も提案されているが、この場合も発泡剤が組成物中に相溶性よく配合されにくく、さらに発泡剤の発泡倍率をコントロールしにくいという問題を有しており、そのため得られた成形材料中に見られる気泡は比較的大きなものとなり、いわゆるスポンジ状の発泡成形材料となってしまい、所望の硬度をもつゴム弾性を生かしたラバーシート状のものが得にくいという欠点を有している。
【0004】さらに、天然ゴムラテックスや各種エマルジョンタイプのフォーミングしにくい成形材料も使用されているが、いずれにしても各種用途、目的に応じた所望のゴム状弾性、防振性、断熱性を持つ成形材料を得ることは困難なものであった。
【0005】本発明者は、ゴム状弾性、防振性、断熱性を併せ持つラバーシート状成形材料を得るべく種々の検討を加え、その結果従来の発泡成形用組成物とは全く異なる、新規な発泡構造による微細発泡ゴム状弾性材料を得ることができる発泡成形用組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の発泡成形用ゴム組成物は、ゴムまたはゴム状弾性物質100重量部に、殻壁材がポリアミド、ポリブタジエン、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルおよび塩化ビニリデン樹脂の群から選ばれる1種以上の熱可塑性物質からなり、かつ該殻壁材中に熱により該殻壁材を膨張させる特性を有する芯物質を内包するマイクロカプセルを、1ないし30重量部配合したことを特徴とするものである。
【0007】上記の組成物は、加熱成形によってマイクロカプセルが一定の膨張を行い、かつ芯物質はガス化するため成形材料には微細な中空セル構造が残り、マイクロカプセルの殻壁材がゴムまたはゴム状弾性物質と一体的になる。
【0008】本発明に使用できるゴムまたはゴム状弾性物質としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキシドゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル類およびポリオレフィン類等が例示され、これらの中から成形品が必要とする特性に応じて1種類または2種類以上の混合物を使用することができる。
【0009】上記のゴムあるいはゴム状弾性物質には、必要に応じて充填剤、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、架橋剤等の各種添加剤を添加することもできる。このときの添加剤の種類は、上記のゴムあるいはゴム状弾性物質に通常添加されるものであればいずれでも使用でき、配合量も通常の範囲でよい。
【0010】本発明に使用されるマイクロカプセルは、殻壁材がポリアミド、ポリブタジエン、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルおよび塩化ビニリデン樹脂の群から選ばれる熱可塑性物質、またはこれらを混合した熱可塑性物質からなるものであって、該殻壁材中に熱により該殻壁材を膨張させる特性を有する芯物質を内包するものである。殻壁材が上記以外の熱可塑性物質や熱硬化性物質からなるものであると、加熱成形によって生成する中空セル構造の殻壁材が硬いため、外部からの衝撃に対し中空セルが変形し難く、充分なゴム状弾性を示さないという問題や、加熱処理により得られた成形品が破断する等の問題を生じ、好ましい成形品が得られない。
【0011】また、上記の芯物質として具体的には、石油系のガス体、液体、芳香族炭化水素系化合物、その他の有機溶剤や、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アジト化合物、ヒドラジド化合物等の炭酸ガス、窒素ガス等の分解ガスを発生する有機物質、無機物質が挙げられる。このような芯物質を内包しかつ上記の熱可塑性物質を殻壁材とするマイクロカプセルの具体例としては、エクスパンセル(日本フェライト社製)、マイクロスフェアーF50、マイクロスフェアーF60(松本油脂社製)が例示される。
【0012】上記のマイクロカプセルの配合量としては、ゴムまたはゴム状弾性物質100重量部に対し、1ないし30重量部である。マイクロカプセルの配合量が1重量部未満であると成形品において所要のゴム状弾性、防振性、断熱性が得られず、マイクロカプセルの配合量が30重量部を超えて多い場合は、成形品中に中空セルが数多く存在することとなり、外部からの衝撃に対して中空セル同士が互いに擦れ合うように移動して衝撃力を吸収してしまうためゴム状弾性が充分でなくなるばかりでなく、紙状の比較的脆い性質を示し、適度な硬度を有するラバーシート状の特性を得ることができなくなる。尚、マイクロカプセルの配合量は、最終成形品の用途、特性等によって適宜選定される。
【0013】以上の本発明の発泡成形用組成物の製造方法として具体的には、ゴムまたはゴム状弾性物質と、必要により添加される充填剤、軟化剤、老化防止剤等とをバンバリーミキサー等により混練りし、バッチ化してからマイクロカプセルおよび加硫剤を混合する方法や、オープンロールにより、ゴムまたはゴム状弾性物質とマイクロカプセルおよび加硫剤、および必要により添加される充填剤、軟化剤、老化防止剤等を混練りする方法などが挙げられる。
【0014】上記のようにして得られた発泡成形用組成物は、射出成形機、押出成形機等の手段により成形する方法、カレンダーロール等のロール類を用いてシートとする方法などの種々の成形加工方法によって成形した後、モールド加熱、熱空気加熱等により加熱加硫、または加熱架橋することにより、極微細発泡ゴム状弾性体に成形される。このときの加熱処理の方式、条件等はいずれもゴムまたはゴム状弾性物質の特性や、加硫剤、架橋剤等の添加剤の性質、並びに成形品に付与すべき特性等に応じて適宜選定される。
【0015】
【作用】本発明の発泡成形用ゴム組成物は、加熱による発泡成形により、ゴム状弾性、防振性、断熱性等に関して大変優れた性質を有するラバーシート状成形品が得られる。また、本発明の発泡成形用ゴム組成物は、マイクロカプセルの配合量を適宜変化させることにより、種々の特性をもつ成形品が得られるという利点も有する。
【0016】
【実施例】以下、具体的な実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0017】〔実施例1〜5〕ロールにて天然ゴムを薄通し素練り後、スチレンブタジエンゴムを混練りし、更に亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、パラフィンワックス、白艶華cc、促進剤を順次混入し、ゴム配合物のマスターバッチを作成した。次いでこのマスターバッチを所望の量に分け、再びロールに巻付け、これに、殻壁材がアクリロニトリルとメタクリル酸メチルの混合物からなり芯物質がイソブタンであるマイクロカプセル(以下マイクロカプセルAという。)または殻壁材が塩化ビニリデンとアクリロニトリルとメタクリル酸メチルの混合物からなり芯物質がイソブタンであるマイクロカプセル(以下マイクロカプセルBという。)、および硫黄を混入分散させ、発泡成形用ゴム組成物を得た。尚、発泡成形用ゴム組成物の配合比を表1に示す。また、比較例1として、マイクロカプセルを配合しない組成物を同様にして得た。
【0018】上記の組成物を80℃のロールにて0.3mm厚さのシートとしたものを、ライナー布70dで210本糸使いのナイロンタフタ布に圧延した後、140℃に調整したギヤーオーブン中にて10分間熱空気による加熱処理を行って成形品を得た。得られた成形品について見掛比重および硬度を測定した結果を表1に示す。
【0019】
【表1】


*1 4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)
*2 脂肪酸で処理した炭酸カルシウム(白石カルシウム社製)
*3 ジベンゾチアゾールジサルファイト*4 メルカプトベンゾチアゾール*5 ジ−o−トリルグアニジン*6 マイクロスフェアーF50(松本油脂製薬社製)
*7 マイクロスフェアーF60(松本油脂製薬社製)
【0020】〔実施例6〜9〕ゴムとしてクロロプレンゴムを用い、ロールに薄通し素練り後、さらに酸化マグネシウム、ステアリン酸、デキシークレー、SRFカーボン、プロセスオイル、老化防止剤RD、促進剤、亜鉛華を順次混入し、ゴム配合物のマスターバッチを作成した。次いでこのマスターバッチを所望量に分け、再度ロール上にてマイクロカプセルAまたはBを混入し、分散させ発泡成形用ゴム組成物を得た。比較のため、マイクロカプセルを配合しない組成物およびマイクロカプセルの代わりにアゾビス系発泡剤を配合した組成物も製造した。尚、これらの組成物の配合比を表2に示す。
【0021】以上のようにして得られた組成物を用い、空気加硫およびプレス加硫による成形による成形品を得た。このときの空気加硫の条件は実施例1〜5と同様である。また、プレス加硫は60℃のロールにて2.10mmのシートにそれぞれ分出した組成物を150×120mmの成形シートとし、これを深さ2mm、経150mm、緯150mmの内容量のモールドに充填し、150℃の熱プレスにて5分間処理することにより行なった。得られた成形品について見掛比重および硬度を測定した結果を表2に示す。
【0022】
【表2】


*8 ネオプレンW*9 1,2−ジハイドロ−2,2,4−トリメチルキノリン*10 2−メルカプトイミダゾリン*11 アゾジカルボンアミド、ユニフォームAZ−M2(大塚化学社製)
*12 アゾジカルボンアミド、ユニフォームAZ−M3(大塚化学社製)
【0023】
【発明の効果】上記の結果より明らかな如く、本発明の発泡成形用ゴム組成物を用いて成形した成形品は、マイクロカプセルの配合量の増量とともに見掛比重が小さくなっており、好ましく発泡していることが認められる。それに対し、従来使用されている発泡剤を配合した比較例3、4については、空気加硫において見掛比重に変化がなく所望の発泡をしていないものである。また、本発明の組成物を用いて得た成形品は、いずれも極微細な均一の中空セル構造を有しており、ゴム状弾性も良好なラバーシート状のものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴムまたはゴム状弾性物質100重量部に、殻壁材がポリアミド、ポリブタジエン、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルおよび塩化ビニリデン樹脂の群から選ばれる1種以上の熱可塑性物質からなり、かつ該殻壁材中に熱により該殻壁材を膨張させる特性を有する芯物質を内包するマイクロカプセルを、1ないし30重量部配合したことを特徴とする発泡成形用ゴム組成物。
【請求項2】 ゴムまたはゴム状弾性物質が、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキシドゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル類およびポリオレフィン類の群から選ばれる1種以上である請求項1記載の発泡成形用ゴム組成物。