説明

発熱体アレイ

【構成】 絶縁性基体11上に、ブロック状発熱体13を複数個設け、さらにこのコモン電極31および各ブロック電極21を設けた、画像記録装置の定着装置として好適な発熱体アレイ。コモン電極31を大面積で、あるいはブロック状発熱体13の下面に設けることにより、発熱体および/または蓄熱体として利用できる。
【効果】 簡単な構成で発熱体をブロック制御でき、小型化、省エネ化が容易であり、定着装置の発熱体として有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、定着装置などで用いられる、発熱体を所定数のブロック体に分割して構成した発熱体アレイに関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式を利用した画像形成装置の定着装置においては、装置起動後の待機時(非定着時)に、所定温度に定着加熱ヘッドを維持し、定着時には、トナーの溶融や記録紙により奪われた熱を補なって、常に所定温度に定着加熱ヘッドを維持することが必要となる。
【0003】この種の加熱装置においては、加熱ヘッドの温度を検知してコントロールするダイナミック制御が好ましく、応答性が良好で、しかも、スイッチングによる外部へのノイズの発生や内部に対する熱衝撃の弊害が少なく、省電力化が可能な発熱体アレイが望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、比較的簡単な構成でダイナミック制御でき、しかも、ブロック制御により高い応答性と省電力化が可能な発熱体を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の発熱体アレイは、絶縁性基体上に、ブロック状発熱体と、ブロック状発熱体のコモン電極と、各ブロック状発熱体の各ブロック電極とを形成したことを特徴とする。
【0006】
【実施例】図1(A)は本発明の発熱体アレイの実施例を示す平面図、図1(B)はその正面図、図1(C)はその側面図である。セラミックス等からなる絶縁性基体11には、所定数のブロック状発熱体13が形成され、各ブロック状発熱体13にはブロック電極21が形成され、絶縁性基体11上にブロック引出し電極23が形成されている。また、ブロック状発熱体13にはコモン電極31(共通電極)が設けられ、絶縁性基体11上にコモン引出し電極33が形成されている。所定のブロック引出し電極23を選択してコモン引出し電極33との間に電流を流すことにより、選択したブロック状発熱体13を適宜発熱せしめることができ、ブロック制御が可能となる。
【0007】電子写真法における定着装置においては、ブロック状発熱体13の前面に適当な熱伝導体を設けてこれを加熱し、ブロック状発熱体13の配列方向と直交する方向に記録紙を搬送し、上記熱伝導体により直接あるいは離型部材等の適当な部材を介してトナーを加熱し、定着処理することができる。このとき、定着温度をセンサーで測定し、ブロック状発熱体13の通電パルス幅を設定することにより、定着温度をダイナミック制御でき、高い応答性が得られ、省電力化に寄与する。また、発熱体アレイが簡単な構成なので、装置の小型化が可能となる。
【0008】図2は、本発明の発熱体アレイで用いられる温度制御回路の一例を示すブロック図である。
【0009】待機時と定着時に応じて基準電源を切換え、サーミスタにより検出した発熱体アレイの温度とを比較し、差動アンプで増幅して必要な通電パルスを設定し、温度制御信号として発熱体アレイに供給する。連続的に定着処理を行なう場合は、発熱のパルス幅を順次小さくしていくなど、発熱体アレイの異常な高温側へのシフトを防止することも簡単にできる。
【0010】図3は発熱体アレイのブロック制御の一例を示すブロック図であり、図4はそのタイムチャートである。サーミスタからの信号を受けて温度制御回路(図2R>2参照)のブロック切替信号によりSSR(ソリッドステートリレー)を駆動し、各ブロック状発熱体を時分割して駆動する。待機時と定着時とでtwの長さを変化させることにより(例えば、待機時tw=T、定着時tw=0)、発熱体アレイによる定着温度を制御できる。
【0011】本発明の発熱体アレイでは、電極の引出し構造、安全機能部品等のスイッチング素子の搭載、コモン電極の発熱体・蓄熱体としての利用、蓄熱体等の機能層の積層など種々の変形が可能であり、以下これらの代表例を示すが、それらを適宜組み合わせてより多機能な発熱体アレイとして利用することもできる。
【0012】図5は、本発明の発熱体アレイの他の実施例(電極の引出し構造)を示す図であり、(A)が平面図、(B)が正面図、(C)が側面図を示す。絶縁性基体11上には、ブロック状発熱体13が形成され、コモン電極31および各々のブロック電極21が設けられている。ブロック電極21およびコモン電極31は、一度、絶縁性基体11中に埋設されたのち、絶縁性基体11の両側壁から引き出されて、それぞれブロック引出し電極23およびコモン引出し電極33を形成している。このような引出し電極23,33は、セラミックマルチレイヤー基板を絶縁性基体11として用いることにより容易に形成できる。引出し電極23,33を絶縁性基体11中を経て引出すことにより、引出し電極23,33が強度的に優れたものとなり、安価な接続端子を利用できる。また、引出し電極23,33によりブロック状発熱体13の左右からの位置決めが容易となり、ブロック状発熱体13の固定用補助手段としても利用できる。
【0013】図6は本発明の発熱体アレイの他の実施例(スイッチング素子および/または機能素子用の引出し電極の搭載を示す平面図であり、■コモン引出し電極33が、絶縁性基体11上に形成されたスイッチング素子37および補助電極35を介してコモン電極31に接続されている事、および■機能素子用引出し電極15が設けられている以外は、図1と同じである。これら両者は、必要により、いずれか一方のみを用いることができる。スイッチング素子37として、温度ヒューズ、バイメタル、形状記憶合金を利用したサーモスイッチなどの感温スイッチング素子を用いることにより、異常により所定温度以上に発熱体アレイが昇温した場合は通電を遮断できる。また、機能素子引出し電極15,15を利用して感温素子を絶縁性基体11上またはブロック状発熱体13の近傍などに配設することにより、低電流で検知回路を構成できる。このように安全機能を装備することは好ましく、特に発熱体の近傍で直接検知・制御できるので応答性が良好である。また、スイッチング素子37として光導電体を用いれば、発光素子などを用いて光スイッチングが可能となる。
【0014】図7(A)は本発明の他の実施例を示す平面図、図7(B)は側面図であり、ブロック状発熱体13の形成方向のほぼ全長にわたってコモン電極21を、絶縁性基体11上に大面積で設けた以外は、図1の場合と同じである。この実施例では、コモン電極31を蓄熱体として利用して発熱体アレイ全体の熱容量を大きくすることにより、外乱により急激な温度変動が生じることを防止している。コモン電極31の一部を引出し電極として利用し、外部端子を利用すればよい。コモン電極21として、適当な蓄熱性と電導性を有する素材を用いればよく、その体積により要求される熱容量をもたすようにする。また、ある程度電気抵抗を高めて発熱体として利用することもできる。
【0015】図8は、本発明の他の実施例を示す図であり、(A)が平面図、(B)が正面図、(C)が層構成を示す断面図である。絶縁性基体11上にコモン電極31が形成され、その上にブロック状発熱体13が形成されている。コモン電極31にはコモン引出し電極33が設けられ、一方、ブロック状発熱体13には、コモン電極31との間に絶縁体25を介してブロック引出し電極23が設けられている。コモン電極31は発熱体としても働き、発熱量を疎制御し、ブロック状発熱体13への通電パルスにより発熱体を微制御することにより、発熱体としての早期立上げが可能となり、温度リップルを小さくできる。また、コモン電極31が蓄熱体としても働くことにより、適度の熱容量をもち、急激な温度変化に対応して発熱体の発熱量を平滑化でき、環境条件の変化や記録紙の種類にも対応できる。
【0016】図9は層構成を示す縦断面図であり、図8に示した実施例において、ブロック状発熱体13上にさらに蓄熱層41を設けた実施例を示す断面図であり、蓄熱層41を設けた以外は図9と同じである。蓄熱層41とし、適度な蓄熱性と熱伝導性を有し、かつ非導電性の層、例えば発泡セラミックス層を設けることにより、早期立上り、温度リップルの減少、環境条件や紙の種類などにより急激な熱変動に対する対応性などが改善される。
【0017】図10は、本発明の発熱体アレイの他の実施例を示す側面図であり、ブロック状発熱体13の下に蓄熱体43を設け、この蓄熱体43を囲包するようにしてコモン電極31を設けた以外は、図8と同じである。蓄熱体43としては、前述の蓄熱層41と同様に適度の蓄熱性、熱伝導性を有し非導電性の材料が用いられる。
【0018】なお、以上の説明では、ブロック状発熱体13を微少ギャップを設けて配列した場合を示したが、このギャップには電気絶縁体を充填することが好ましく、また、ギャップを設けずにブロック状発熱体13を配列することもできる。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、簡単な構成で発熱体アレイをブロック制御でき、省エネルギー化、装置の小型化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の発熱体アレイの実施例を示す平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図2】本発明に用いる温度制御回路の実施例を示すブロック図である。
【図3】ブロック状発熱体の制御部の一例を示すブロック図である。
【図4】ブロック状発熱体の温度制御方法の一例を示すタイムチャートである。
【図5】(A)は本発明の発熱体アレイの実施例を示す平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図6】本発明の発熱体アレイの実施例を示す平面図である。
【図7】本発明の発熱体アレイの実施例を示す平面図である。
【図8】(A)は本発明の発熱体アレイの実施例を示す平面図、(B)は正面図、(C)は層構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明の発熱体アレイの層構成を示す縦断面図である。
【図10】本発明の発熱体アレイの実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
11 絶縁性基体
13 ブロック状発熱体
15 機能素子引出し電極
21 ブロック電極
23 ブロック引出し電極
25 絶縁体
31 コモン電極
33 コモン引出し電極
35 補助電極
37 スイッチング素子
41 蓄熱層
43 蓄熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁性基体上に、ブロック状発熱体と、ブロック状発熱体のコモン電極と、各ブロック状発熱体の各ブロック電極とを形成したことを特徴とする発熱体アレイ。
【請求項2】 コモン電極として、蓄熱性導電体を用いた請求項1記載の発熱体アレイ。
【請求項3】 コモン電極を、絶縁体基体とブロック状発熱体との間に層状に設け、疎発熱体として用いた請求項1に記載の発熱体アレイ。
【請求項4】 コモン電極によって、上下面が囲包されるように、コモン電極内に蓄熱性絶縁体を配設した請求項3に記載の発熱体アレイ。
【請求項5】 ブロック状発熱体上に、熱伝導性絶縁体を設けた請求項1〜4のいずれか一項に記載の発熱体アレイ。
【請求項6】 コモン電極および各ブロック電極が絶縁性基体内を経て引き出されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の発熱体アレイ。
【請求項7】 コモン電極が、スイッチング素子を介して引き出されている請求項1〜6のいずれ一項に記載の発熱体アレイ。
【請求項8】 機能素子用の引き出し電極が絶縁性基体上に形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の発熱体アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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