説明

発熱容器冷却装置

【課題】発熱容器に対する冷却能力を人為的に管理することの可能な発熱容器冷却装置を提供する。
【解決手段】囲繞構造物Wによって少なくとも底部Ca及び側部Cbが囲まれた発熱容器Cを冷却する発熱容器冷却装置であって、前記囲繞構造物Wと前記発熱容器Cとの間の空間において、少なくとも前記発熱容器Cの側部Cbの一部を囲うように且つ下端が前記囲繞構造物Wと接触しないように設置された仕切り板1と、前記囲繞構造物Wと前記仕切り板1との間の空間に対し、上方から下方に向けて圧縮空気を噴射するノズル2と、前記ノズル2に前記圧縮空気を供給する圧縮空気供給源3とを具備する、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱容器冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、一般廃棄物や産業廃棄物に含まれる可燃性廃棄物を粉砕、乾燥、選別及び成形して得られる廃棄物固形燃料(RDF:Refuse Derived Fuel)を、発電システム用の燃料として再利用することが一般的である。このRDFは、製造プラントにおいてRDF貯蔵サイロに一旦貯蔵されるが、微生物発酵や酸化反応が促進されると異常発熱を引き起こし、発火に至る虞がある。
【0003】
このような問題に対し、例えば下記特許文献1には、RDF貯蔵サイロの内部に円錐形状のガス噴射塔を設置し、このガス噴射塔の周面に設けられた複数のノズルから冷却用ガスを噴射することでRDF貯蔵サイロの内部を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−187083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したRDF貯蔵サイロのように、発熱体を内包して自身もその発熱体から発せられる熱によって発熱する発熱容器は様々な技術分野において存在する。これらの発熱容器の冷却に上記特許文献1の技術を適用する場合、発熱容器内に大規模なガス噴射塔を設ける必要があり、発熱体の収容スペースが少なくなるという問題がある。また、発熱容器の内部構造及び発熱体の種類などによっては、ガス噴射塔自体を設置することが困難な場合もあり得る。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、発熱容器内における発熱体の収容スペースを確保可能であると共に、設置が容易な発熱容器冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、発熱容器冷却装置に係る第1の解決手段として、囲繞構造物によって少なくとも底部及び側部が囲まれた発熱容器を冷却する発熱容器冷却装置であって、前記囲繞構造物と前記発熱容器との間の空間において、少なくとも前記発熱容器の側部の一部を囲うように且つ下端が前記囲繞構造物と接触しないように設置された仕切り板と、前記囲繞構造物と前記仕切り板との間の空間に対し、上方から下方に向けて圧縮空気を噴射するノズルと、前記ノズルに前記圧縮空気を供給する圧縮空気供給源とを具備する、という手段を採用する。
【0008】
また、本発明では、発熱容器冷却装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記ノズルは、前記仕切り板に沿って環状に一定間隔で複数設置されている、という手段を採用する。
【0009】
また、本発明では、発熱容器冷却装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記圧縮空気供給源は、前記囲繞構造物の外側、或いは前記囲繞構造物を収容する建屋の外側に設置されている、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、囲繞構造物と仕切り板との間の空間に対し、ノズルから圧縮空気を強制的に送り込むことで、発熱容器と仕切り板との間の空間に生じる上昇気流(冷却空気流)の流量を増大させて発熱容器の冷却を行う構成を採用している。すなわち、本発明によれば、発熱容器内に冷却に必要な設備(仕切り板、ノズル及び圧縮空気供給源)を設ける必要がないため、発熱容器内における発熱体の収容スペースを確保可能であると共に、これら冷却に必要な設備を発熱容器の外部に設置するため、発熱容器の内部構造及び発熱体の種類などに関係なく、その設置が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における発熱容器冷却装置の横断面図及び斜視断面図である。
【図2】発熱容器冷却装置におけるノズル2の配置状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1(a)は、本実施形態における発熱容器冷却装置の横断面図であり、図1(b)は、本実施形態における発熱容器冷却装置の斜視断面図である。これら図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態における発熱容器冷却装置は、囲繞構造物Wによって少なくとも底部Ca及び側部Cbを囲まれた発熱容器Cを冷却するものであり、仕切り板1と、ノズル2と、圧縮空気供給源3とから構成されている。
【0013】
なお、本実施形態において、冷却対象物である発熱容器Cとは、発熱体を内包して自身もその発熱体から発せられる熱によって発熱する容器を指し、例えばRDFを貯蔵するRDF貯蔵サイロや、化学プラントにおいて発熱性原料を貯蔵するための原料タンク、原子力発電プラントにおいて原子炉を格納する格納容器などがこれに該当する。
【0014】
また、囲繞構造物Wは、少なくとも発熱容器Cの底部Ca及び側部Cbを囲い、発熱容器Cとの間に環状の空間Sを形成するような構造物であれば、どのような構造のものであっても良い。但し、後述するように、発熱容器Cと仕切り板1との間に形成される環状の空間Saに上昇気流を発生させることで発熱容器Cの冷却を行うため、発熱容器Cの頂部Ccの上方を吹き抜け構造とすることが望ましい。
【0015】
さて、本実施形態の発熱容器冷却装置において、仕切り板1は、上記のように囲繞構造物Wと発熱容器Cとの間に形成された環状の空間S(以下、環状空気流路と称す)において、少なくとも発熱容器Cの側部Cbの一部を囲うように、且つ下端が囲繞構造物Wと接触しないように設置された板状部材である。このような仕切り板1を環状空気流路Sに設置することにより、発熱容器Cと仕切り板1との間に環状の空間Sa(以下、環状上昇流路と称す)が形成されると共に、囲繞構造物Wと仕切り板1との間に環状の空間Sb(以下、環状下降流路と称す)が形成される。なお、環状上昇流路Saと環状下降流路Sbは、仕切り板1の下端において連通している。
【0016】
ノズル2は、囲繞構造物Wと仕切り板1との間に形成された環状下降流路Sbに対し、上方から下方に向けて圧縮空気を噴射するものであり、仕切り板1に沿って環状に一定間隔で複数設置されている。各ノズル2は、共通の環状配管P1から内側(環状配管P1の中心)に向かって延出するように設けられ、且つ噴射口が環状下降流路Sbを向くよう下方に屈曲した形状となっている(図2参照)。上記の環状配管P1には空気導入配管P2が連結されており、この空気導入配管P2を介して圧縮空気が環状配管P1へ導入されることで、各ノズル2から環状下降流路Sbの上方から下方に向けて圧縮空気が噴射される構成となっている。
【0017】
圧縮空気供給源3は、圧縮空気を生成或いは貯蔵し、任意のタイミング(例えば、作業者による圧縮空気遮断弁の開放操作時)で空気導入配管P2を介して圧縮空気を各ノズル2に供給するものである。この圧縮空気供給源3は、囲繞構造物Wの外側、或いは囲繞構造物Wを収容する建屋の外側に設置されていることが望ましい。その理由は、仮に圧縮空気供給源3を囲繞構造物Wの内部に設置した場合、発熱容器Cが異常発熱すると圧縮空気供給源3へのアクセスが困難となるが、囲繞構造物Wの外側、或いは囲繞構造物Wを収容する建屋の外側に設置することにより、圧縮空気供給源3へのアクセスが容易となるからである。
【0018】
以上が本実施形態における発熱容器冷却装置の構成に関する説明であり、以下ではこの発熱容器冷却装置の使用によって発熱容器Cが冷却される仕組みについて詳細に説明する。
【0019】
まず、通常時、つまり発熱容器Cの発熱状態が許容範囲内である場合を想定する。この場合、圧縮空気供給源3による圧縮空気の供給は停止する。この時、発熱容器Cと仕切り板1との間に形成された空間、つまり環状上昇流路Saに存在する空気は発熱容器Cによって加熱される一方、囲繞構造物Wと仕切り板1との間に形成された空間、つまり環状下降流路Sbに存在する空気の温度は環状上昇流路Saのそれより低くなる。
【0020】
このように、環状上昇流路Saに存在する空気と環状下降流路Sbに存在する空気との温度差が生じることにより、煙突効果による自然空気循環(温度の低い空気が温度の高い空気の下に流入して温度の高い空気を押し上げる)が発生し、その結果、環状上昇流路Sa、つまり発熱容器Cの表面に上昇気流(冷却空気流)が発生する。これにより、発熱容器Cの表面温度は許容範囲内に保持される。
【0021】
次に、異常発生時、つまり発熱体が異常発熱し発熱容器Cの発熱状態が許容範囲を越えて危険域に達した場合を想定する。この場合、作業者は圧縮空気供給源3へアクセスし、圧縮空気遮断弁の開放操作などを行うことで、圧縮空気供給源3による圧縮空気の供給を開始する。この時、圧縮空気供給源3は囲繞構造物Wの外側、或いは囲繞構造物Wを収容する建屋の外側に設置されているため、圧縮空気供給源3へのアクセスは容易である。
【0022】
上記のように、圧縮空気供給源3による圧縮空気の供給が開始されると、各ノズル2から一斉に圧縮空気が環状下降流路Sbへ向けて噴射される。このように、環状下降流路Sbの上方から下方へ向けて強制的に圧縮空気が送り込まれると、煙突効果が促進されて、環状上昇流路Sa、つまり発熱容器Cの表面に生じる上昇気流(冷却空気流)の流量が通常時と比べてはるかに増大することになる。これにより、発熱容器Cに対する冷却効果は高まり、発熱容器Cの表面温度は許容範囲まで抑制される。
【0023】
以上説明したように、本実施形態における発熱容器冷却装置は、環状下降流路Sbに対し、各ノズル2から任意のタイミングで圧縮空気を強制的に送り込み、環状上昇流路Saに生じる上昇気流(冷却空気流)の流量を増大させて発熱容器Cに対する冷却能力を高める構成を採用している。すなわち、本実施形態における発熱容器冷却装置によれば、発熱容器C内に冷却に必要な設備(仕切り板1、ノズル2及び圧縮空気供給源3)を設ける必要がないため、発熱容器C内における発熱体の収容スペースを確保可能であると共に、これら冷却に必要な設備を発熱容器Cの外部に設置するため、発熱容器Cの内部構造及び発熱体の種類などに関係なく、その設置が容易となる。
【0024】
なお、上記実施形態では、圧縮空気供給源3による圧縮空気の供給を開始する際、作業者が圧縮空気供給源3に直接アクセスする場合を例示して説明したが、これに限らず、例えば遠隔操作によって圧縮空気遮断弁の開放を行うことで、圧縮空気供給源3による圧縮空気の供給を開始するような構成を採用しても良い。
【0025】
また、上述した発熱容器冷却装置は、RDFを貯蔵するRDF貯蔵サイロや、化学プラントにおいて発熱性原料を貯蔵するための原料タンク、原子力発電プラントにおいて原子炉を格納する格納容器などの冷却に好適ではあるが、本発明はこれに限定されず、発熱体を内包して自身もその発熱体から発せられる熱によって発熱する発熱容器の冷却に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…仕切り板、2…ノズル、3…圧縮空気供給源、C…発熱容器、W…囲繞構造物、S…環状空気流路、Sa…環状上昇流路、Sb…環状下降流路、P1…環状配管、P2…空気導入配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
囲繞構造物によって少なくとも底部及び側部が囲まれた発熱容器を冷却する発熱容器冷却装置であって、
前記囲繞構造物と前記発熱容器との間の空間において、少なくとも前記発熱容器の側部の一部を囲うように且つ下端が前記囲繞構造物と接触しないように設置された仕切り板と、
前記囲繞構造物と前記仕切り板との間の空間に対し、上方から下方に向けて圧縮空気を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と
を具備することを特徴とする発熱容器冷却装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記仕切り板に沿って環状に一定間隔で複数設置されていることを特徴とする請求項1に記載の発熱容器冷却装置。
【請求項3】
前記圧縮空気供給源は、前記囲繞構造物の外側、或いは前記囲繞構造物を収容する建屋の外側に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発熱容器冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−255988(P2011−255988A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130354(P2010−130354)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)