説明

発酵管理方法および乳酸酸度測定方法

【目的】 酵母や乳酸による微生物発酵の実際的な、且つ、オンライン組み込み可能な発酵制御方法の提供。
【構成】 発酵中の原料に周波数200MHz〜20GHzのマイクロ波を照射し、透過波の減衰を測定することにより原料の乳酸酸度を求め、発酵状態の変化を確認して発酵を管理する。
【効果】 同時オンライン測定の実施によって、発酵工程の管理が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ波を用いた微生物による発酵状態の管理方法に関する。さらに本発明は乳酸発酵における発酵液中の乳酸酸度の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】微生物を用いた発酵は、食品から医薬品、工業原料の生産など広く普及した技術である。通常、これらの発酵の管理は目的の物質の生産量をモニタリングしながら行われている。このモニタリングはインラインセンサーによる測定や、バッチ式サンプリングによる分析などによる。特に発酵食品の生産にあたっては、発酵により生産される主要産物である、有機酸やアルコールなどを指標として発酵状態を管理している。またこのような主要産物の測定に代えてpHや溶存酸素濃度、濁度などを測定する場合もある。発酵食品のなかでも、乳酸菌あるいは酵母を利用した発酵は、特に食品や飲料などの製造に古くから用いられている。例えば発酵乳、乳酸菌飲料などは乳酸菌を用いた発酵の代表的な製品例であり、ビール、ワイン、清酒などは酵母を用いた発酵の代表例である。これらの乳酸発酵食品、飲料の製造方法は一般的には以下に述べるようなものである。
【0003】乳を原料とした乳酸発酵食品にあっては牛乳、脱脂乳に脱脂粉乳あるいは濃縮乳を添加したりして副原料を調合混和する。これを常法に従い均質化、殺菌処理を行い、30〜50℃に冷却後、混合乳酸菌スターターあるいは単独スターターを2〜3%接種し、30〜40℃に保温し、乳酸発酵させて製造される。発酵の停止は、発酵基質(通常、乳あるいは、脱脂乳液または副原料を添加した調製液)を冷却、または加熱殺菌することによって行う。その発酵停止のタイミングの判定は、一般に乳酸発酵によって生成した乳酸を予めその濃度が測定されているアルカリ標準液(通常水酸化ナトリウム溶液)を用いた滴定方法による乳酸酸度の測定、あるいはpHを測定し、予めこの測定pHと酸度の相関を求めておき、この相関から決定する。しかし、これらの測定による判定は、測定者によるばらつきがあることや、インライン測定には不向きであることや、温度による影響が大きいなどの欠点を有する。特に、乳酸酸度測定による発酵停止を判定する方法の場合は、測定操作が煩雑なため測定時間に長時間を要し、その測定の間に発酵が進み、停止のタイミングを外れてしまい、過発酵となってしまうこともある。アルコール発酵は、その製品により種々の発酵形態がとられているが、通常は糖化した原料に酵母スターターを加えたもろみを発酵させ、通常、アルコール濃度5〜20%に達した時点で発酵を終了させ、もろみ分離を行う。この場合にはもろみを採取し、ろ過を行い、このろ液の分析を行うが、ろ過操作や分析に時間を要して適切な発酵管理を行なえないなどの問題点がある。
【0004】また、乳酸発酵では、インラインで発酵過程をモニターする方法として、pHセンサーをタンク内に設置してそのpH変化をモニターする方法などが試みられている。しかしpH電極の構造上から電極の内部液の発酵基質中への流出は避けられず、食品製造用のインライン測定法としては不適当である。このため、食品の発酵管理でpHセンサーを使用する例は殆どない。これらの問題を解決する手段として、特公平2−9780号公報では電磁誘導型の電気伝導率計を用いた発酵管理法を提示している。しかし、この方法では電気伝導率の温度による影響が大きく、電気伝導率の値が基質成分によって大きく異なり、従来の乳酸酸度との対応が一義的に決まらないなどの欠点がある。さらに、近赤外線の吸光度測定により乳酸発酵を管理する方法も提示されている(Giuseppe Vaccariら, "A Near-Infrared Spectroscopy Technique for theControl Fermentation Process: An Application to Lactic Fermentation", Biotechnology and Bioengineering, Vol. 43, pp.913-917, 1994)。しかし、この方法は基質成分が発酵毎に異なった場合には、再度吸光度と乳酸酸度などの管理値との回帰式を求めなければならないという欠点を有している。
【0005】ヨーグルト製造方法には、容器内で発酵させる方法とタンク内で発酵させた後攪拌して製品にする方法がある。前者の方法の場合、容器内の発酵状態をモニターする必要がある。例えば、特公平2−236141号公報には、発酵して固化する食品を容器に入れシールした後、容器ごと減衰自由振動させて減衰自由振動の周期、又は減衰自由振動数及び振幅を測定して発酵管理する方法が提示されている。この方法は発酵停止のタイミングを任意に設定することが不可能であるという欠点がある。また、アルコール発酵では、特開昭60─149374号公報に開示されたような、発酵に伴って生産される炭酸ガスおよびエチルアルコールガスを赤外線分析計により測定して、発酵もろみの発酵状態を管理する方法が提案されている。しかしこれはあくまで、ガス化した成分を測定しているのであって、もろみ中の成分を測定して、発酵状態を管理しているものではなく、発酵状態の正確な測定の面で満足のいくものではなかった。以上のように、これまでの発酵管理の方法には多くの問題点があり、発酵状態を精度良く管理する方法は提案されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、マイクロ波を用いた非破壊分析について検討を行い、その発酵管理への応用について検討を行っていたが、微生物による発酵過程、特に乳酸発酵において、マイクロ波の透過波の減衰量を測定することによって発酵状態の変化を正確に確認することが可能なことを初めて見い出すことができた。また、このマイクロ波の減衰変化は、発酵液中の乳酸酸度と強い相関関係を有することを見い出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、微生物による発酵過程の管理をマイクロ波を用いて行う方法を提供することを課題とする。また、このマイクロ波の減衰量を測定することによって発酵液中の乳酸の定量測定を行う方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】ヨーグルト等の乳酸発酵食品は、予め原料を混合したミックスに乳酸菌を接種したものを容器中に充填し、これを発酵させる方法が採用される。この発酵は発酵室と呼ばれる恒温室中で行われ、この発酵状態を非破壊的に検出することが必要となる。所望の発酵状態に達した製品、例えばヨーグルトなどは速やかに冷却して発酵を停止し、製品として出荷される。この非破壊分析にあたって、本発明においてはマイクロ波を用いることが大きな特徴である。マイクロ波等の電磁波を被測定物又は試料に照射し、その透過波あるいは反射波から得られる測定情報として、減衰、位相差、反射インピ−ダンスあるいは伝送速度等がある。本発明者らは、発酵中の食品に電磁波を照射し、その透過波又は反射波の照射波に対する減衰を測定し、その測定値から測定対象物の乳酸含量を求めることができることを見出した。電磁波を物質に照射した時の、透過波の減衰aは、照射物の物理量である比誘電率εr と誘電正接tanδが公知である場合、以下の関係式数1から求めることができる(岡田文明著、マイクロ波工学、学献社刊、1993年)。
【0008】
【数1】
α=ω(ε0 εr )1/2 ((1− tanδ)/2)1/2 (1+tan2δ)1/2−1)1/2 (1) 式a=−8.686 αL (2) 式εr =ε/ε0 (3) 式但し、αは減衰定数(1/m)、ωは角速度(rad/s)、εは測定誘電率、ε0 は真空の誘電率( 8.854 ×10-12 F/m)、εr は比誘電率、tanδは誘電正接、Lは試料厚み(m)、aは減衰(dB)。
【0009】ここで求められる比誘電率εr と誘電正接tanδは、物質固有の物理量である。また、誘電正接tanδは、測定物質の電気伝導度の変数でも表すことができ、この場合、下記の(4)式で示すことができる。
【0010】
【数2】
tanδ=σ/(ωε0 εr ) (4) 式但し、σは測定物質の電気伝導度である。
【0011】電気伝導度は、乳酸発酵が進ことによって変化し増加することが知られている。発酵食品の場合ω、ε0 、εr は測定対象によって固有の値であることが経験的に知られており、従って発酵状態の変化は誘電正接の変化であると言える。従って誘電正接を測定することで発酵状態の変化を知ることが可能である。さらに(4) 式と(1) 式、(2) 式より、マイクロ波の減衰aを誘電率σを変数とする式で表すことができる。
【0012】
【数3】
減衰a= −8.686 ω( ε0 εr ) 1/2(1/2 (1−σ/ ωε0 εr ))1/2((1+( σ/ ωε0 εr )2)1/2−1)1/2 L (5) 式
【0013】上記(5) 式は、マイクロ波の減衰は、試料の電気伝導度を変数とする式と解することができる。従って、試料に照射したマイクロ波の減衰を知ることで、試料電気伝導度の変化を知ることができ、これは発酵状態の変化を知ることになる。この理論に基づいて、種々の試料について検討を行ったところ、実施例に示すように、乳酸発酵においては、乳酸量の変化と照射したマイクロ波の減衰はさらに試料温度変化又は試料の周辺の温度変化を変数とする回帰式で表すことが確認できた。
【0014】なお、公知の測定装置であるベクトルネットワークアナライザーを用いることにより、直接目的とする物理量である誘電正接tanδと比誘電率εr を求めることができ( なおベクトルネットワークアナライザーはTransaction on Instrumentation and Measurement. Vol.37,No.3,June,1989 等の文献に詳細が開示されており、その用途や機能は広く知られている) 、さらに減衰を求めることができる。さらにまた、電磁波を被検物質に照射し、透過波の減衰を検出するための方法としては、公知のマイクロ波発生装置と、マイクロ波検出装置を用い装置を構成することができる。またこのような装置は市販の装置を用いることもできる。例えば特開昭59─102146号公報や特開平2─19750号公報に開示されたマイクロ波による水分測定装置など、水分測定を目的とした装置であって、透過波の位相変化と減衰を測定できる装置であれば使用可能である。通常は、マイクロ波の発信用のアンテナと受信用のアンテナを装置の構成に含んでいるものであれば使用可能である。またこのような、透過マイクロ波を検出測定する市販の装置としては、ベルトホルド社(ドイツ)から「マイクロモイスト」の商品名で販売されているマイクロ波利用の水分計が知られており、本発明をオンラインで使用する時の仕様に適している。さらにまた、上記に示したベクトルネットワークアナライザーとホーンアンテナを組み合わせた構成とした装置によってもマイクロ波の減衰を測定することもできる。
【0015】このようにして得られた被測定物にマイクロ波を照射した時の減衰と公知の温度測定装置を用いて、試料の温度又は試料の周辺温度を得て、乳酸含量を求める回帰式を得ることができる。回帰式を得るためには、測定しようとする乳酸含量の異なった試料を5〜30サンプル程度を予め準備し、従来の測定方法で乳酸含量を求めておき、マイクロ波の減衰と乳酸含量の関係を重回帰分析を行って重回帰式を求める。この重回帰式は、乳酸含量(乳酸酸度%)をy、被測定物に照射したマイクロ波の減衰をx1 、試料の温度または周辺温度をx2 とした時、それぞれ次の(6)式の重回帰式で表される。
【0016】
【数3】
乳酸酸度%(y)=A+Bx1 +Cx2 (6) 式ただし、A 、B 、Cは、重回帰分析を行って得た回帰係数を表す。
【0017】このような重回帰分析によって得られた回帰式(6)式に、説明変数である、マイクロ波の減衰(dB)の値x1 、測定対象物の温度又は周辺温度値x2 を代入して目的とする乳酸酸度%を求めることができる。乳酸酸度がこのような関係式を得て、この関係式に被測定物によるマイクロ波の減衰x1 、被測定物の試料又は周辺温度の値x2 を代入して求めることができることは、本発明者らが初めて見い出したものである。
【0018】電磁波を被検物質に照射、被検物質での吸収や減衰を確認する場合、上記のように透過波を検出するか、反射波を検出するかいずれかの方法を選択することができる。透過波を検出する場合には、単純な1回通過による減衰や位相変化を見るため、装置的には簡単な構成でよい。一方、反射波を検出する場合は、電磁波照射部での反射を取り除いて、減衰、位相差を測定しなければならず、装置構成上複雑になりやすい。また上記のベクトルネットワークアナライザーを用いることにより複雑な装置構成とする必要がなく、簡便に比誘電率及び誘電正接を求めることができる。本発明においては、反射波、透過波いずれの場合であっても採用できるが透過波が特に好ましい。
【0019】なお、乳酸酸度の測定方法は、アルカリ滴定法が一般的であるが、電量滴定法等の方法を試料の状態や濃度範囲、試料の量、試料の数によって適宜選択することができる。
【0020】このようにして予め得た、乳酸酸度を測定した試料と同一または同質の試料を、上記のマイクロ波照射装置またはベクトルネットワークアナライザーで、一定の条件下に照射し、その透過波を検出し、減衰を測定する。測定にあたっては、測定に使用する装置の仕様にしたがって装置及び、試料を調製する。本発明において、マイクロ波の周波数は本発明の効果に大きな影響を及ぼすため、200MHz−20GHzに調整するが、それ以外の発信エネルギーや、検出感度は、使用する装置に従って行ってよい。透過波を検出する方法では、発信マイクロ波が200MHz以下の場合ホーンアンテナを大きくしなければならず、実用困難になるなどの影響が出現する。また、20GHz以上の場合には、被検体への電磁波の吸収が大きく、透過波の電圧が小さくなり、検出できなくなる。また位相変化に対する被検体の厚みの影響が大きくなるなどの影響が出現する。ベクトルネットワークアナライザーを用いて測定する場合には測定用プローブを被測定物中に設置し、直接比誘電率εr の値、誘電正接tanδの値を求める。この時、被測定物に照射するマイクロ波は200MHz〜20GHzの範囲の特定の周波数を設定し、この周波数で測定する。周波数は任意に選択できる。
【0021】試料は必要に応じて容器中に入ったままの状態で測定することができるし、またライン中に上記のベクトルネットワークアナライザーのプローブを設置して、この部分に試料が流動もしくは移動するようにして連続的に測定することもできる。このようにして5〜15検体以上の試料の透過波の減衰と、さらに適当な測定方法で試料の温度または試料周辺の温度を説明変数として、先に測定した従来の方法で測定した乳酸酸度を基に、重回帰分析を行い、重回帰式(6)を求める。この数式を得た後は、被検物質に重回帰式を求めたと同様の条件で電磁波を照射し、透過波を検出し、この透過波の減衰と試料の温度を測定し、これを式(6)に代入し、目的とする試料の乳酸酸度を得て、これを発酵状態の管理指標値として用いて、発酵を管理する。なお、この重回帰式の算出と、測定試料による透過波の減衰と温度を予めコンピュータにプログラムしておき、測定と同時に乳酸酸度を表示することもできる。このため、本発明方法によって得られた測定結果を製造工程にフィードバックすることによりリアルタイムで製造条件を制御することが可能となる。なお、以下の例はベクトルネットワークアナライザーにホーンアンテナを設置した装置を用いて、容器内のヨーグルトの発酵状態を測定したものであるが、この測定に限定されるものでないことは言うまでもない。以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
【実施例1】本実施例においては、ラクトバチラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus) とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の混合スターターを用いた乳酸発酵による発酵乳の生産管理に本発明方法が使用可能なことを示す。
(発酵乳ミックスの調製)12重量%となるように脱脂粉乳を水に溶解し、95℃で20分間殺菌し、40℃まで冷却させた。この殺菌乳に予め調製したスターターを3重量%になるように添加混合し、500ml容量の合成樹脂製容器(ポリエチレン製)に充填し、アルミ箔でシールした。
(測定)この容器を図1に示すような構成装置を用いて、ホーンアンテナ間に置き、この装置全体を40℃に制御した空気恒温槽内に設置した。なお、装置は再現性を向上させるために、設置位置および高さを厳密に設定した。即ち、ホーンアンテナの開口部の大きさは107×138mmのものを使用し、これらのホーンアンテナの間隔は200mmに設定した。透過マイクロ波の発信、受信はネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製HP8720C)を用いて操作し、アンテナとネットワークアナライザーは同軸導波管変換器(ICER R32)を介して、フレキシブル同軸ケーブルで接続した。マイクロ波は、3GHzで測定するように装置を調整した。なお、装置のキャリブレーションは装置の使用操作方法の説明に従い、レスポンス校正のスルーモードで行った。また温度変化は、容器の周囲に抵抗式温度センサーを設置して自動的に測定を行った。
(酸度変化の測定)酸度変化の測定は、0.1 Nの標準水酸化ナトリウム水溶液を用いた容量滴定法によって行った。
【0023】(測定結果)図2に、本装置で測定したヨーグルトの発酵過程における、マイクロ波の減衰の経時変化を示す。発酵の進行に伴ってマイクロ波の減衰が生じていることが明らかである。しかし発酵初期の段階ではマイクロ波の減衰ではなく、増幅が観察された。これは温度変化を因子として補正することができた。即ち、図3に示すような温度変化が発酵中に生じており、この変化を上記に述べたように、変数として処理することができた。以上の、各乳酸酸度測定時のマイクロ波の減衰と周辺温度の測定結果を表1に示す。
【0024】
【表1】


【0025】上記の測定値を使用して、乳酸酸度とマイクロ波の減衰、周辺温度それぞれの関係を求めるために重回帰分析し、マイクロ波の減衰をx1 、試料の温度または周辺温度を説明変数とする(7)式を得た。
【0026】
【数4】
乳酸酸度%=−4.316 −1.172 x1 +0.127 x2 (7)式
【0027】上記(7)式に基づいて、マイクロ波の減衰を測定して得られた乳酸酸度と、同時に32ポイントで滴定法により乳酸酸度を測定した結果をプロットした結果を図4に示した。両者の相関関係は、相関係数0.984とほぼ完全に一致した。なお、図4中の点線は、±0.05%の誤差範囲を示している。
【0028】
【実施例2】本実施例においては、実施例1と同様に調製し、ラクトバチラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus) とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の混合スター ターを用いた乳酸発酵において、発酵温度を39℃に調整した発酵室で、実施例1と同様にして、経時的に乳酸酸度を測定し、発酵時間との関係を観察した。なお、マイクロ波の減衰と温度測定は実施例1と同様に行い、(7)の回帰式を用いた。図5に示すように、乳酸酸度は滴定法による測定と一致し、また発酵状態も確認できることが明らかとなった。従ってマイクロ波の減衰を測定することで、乳酸酸度を知ることができ、この結果から発酵状態を知ることができた。また本発明は、非破壊的に測定できるため、密閉容器中での発酵状態を知ることができ、ヨーグルトなど発酵管理に特に適することが明らかとなった。
【0029】
【発明の効果】本発明の実施により、微生物による発酵過程の管理をマイクロ波を用いて行う方法が提供される。また、このマイクロ波の減衰を測定することによって発酵液中の乳酸の定量測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる測定装置の構成を示した図である。
【図2】乳酸発酵時の透過マイクロ波の減衰経時変化を示す。
【図3】乳酸発酵時の容器周辺温度の変化を示す。
【図4】本発明方法による測定結果と、滴定法による乳酸酸度の測定結果の相関関係を求めた結果を示す。
【図5】経時的にヨーグルトの発酵状態を本発明方法による測定した結果と、滴定法による乳酸酸度の測定結果を示す。
【符号の説明】
○:滴定法による乳酸酸度測定値
●:本発明方法による乳酸酸度測定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発酵食品の生産にあたり、発酵中の基質にマイクロ波を照射し、透過波の減衰を測定することにより基質の乳酸酸度を求め、発酵状態の変化を確認することを特徴とする発酵管理方法。
【請求項2】 照射するマイクロ波の周波数領域が200MHz以上、20GHz以下である請求項1記載の発酵管理方法。
【請求項3】 乳酸発酵基質にマイクロ波を照射し、透過波の減衰を測定し、予め測定したマイクロ波の減衰量と乳酸酸度の関係式に基づいて乳酸酸度を測定する方法。
【請求項4】 マイクロ波の減衰量と乳酸酸度の関係式が、マイクロ波の減衰と、乳酸発酵基質の温度又は雰囲気温度を変数とする重回帰分析で得られる回帰式である請求項3記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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