説明

発電所排水路の泡発生防止用水路構造

【課題】本発明は発電所に用いられる海水冷却水を外海に排出する排水路における泡発生を防止するための発電所排水路の泡発生防止用水路構造に関するものである。落差による跳水発生領域における空気の混入で大量の泡が発生するが、本発明は落差区間にサイフォン水路構造を適用することによって空気の混入を防止して泡が発生しないようにすることを特徴とする。
【解決手段】そのために、本発明は、既存の排水路出口部の落下区間にサイフォン水路構造を適用して落差区間前/後に水中流出入できるようにし、サイフォン水路流入時の空気流入を防止するための上流貯留槽、最初通水時の円滑な排出のためのプライミングポンプ、放流量変動に対応するための流量調節水門を有する構造になっている。また、既存の排水路区間に直接設置することが困難である場合のために水路分岐式迂回サイフォン水路構造を適用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所に用いられる海水冷却水を外海に排出する排水路における泡発生を防止した水路構造に関し、特に、落差による跳水発生領域における空気の混入を防止して泡が発生しないようにした発電所排水路の泡発生防止用水路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在稼動中である発電所の排水路で発生した泡は各種有機/無機物質およびプランクトンなどを含有しており、泡が消滅するまでにかかる時間が長く、視覚的公害を誘発する要因として指摘されるため、泡を減らすための方策が求められている。
【0003】
それにより、従来には発電所に用いられる冷却水を排水するときに発生する泡を低減するために、消泡剤を注入したり泡防止膜を利用したりして一定時間貯留後自然消滅を誘導したが、大規模な火力発電所のように膨大な量の冷却水を使用する場合、冷却水の排水時に発生した泡の一部が周辺の養殖場や沿岸海岸に流出して近隣住民の苦情要因として提起されてきた。
【0004】
最近、新規発電所の場合には温排水の熱影響の低減および泡発生を防止するために深層取排水構造が適用されているが、稼動中である発電所の場合には適用し難く、その他にダムを用いる水位上昇方策、泡の集水井(collector well)などを伴う放水ピット(Pit)構造などの泡発生防止構造に関する研究事例があるものの、それも稼動中の発電所に適用難いということや莫大な工事費用がかかるために適用されたことが殆どなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、前記のような従来の問題点を解決するために発明されたものであり、既存の冷却水排水路の落差部にサイフォン水路を適用することにより、跳水発生と水中空気の混入を遮断して泡の発生を根本的に防止した発電所排水路の泡発生防止用水路構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような目的を達成するための本発明は、海水冷却水を外海に放出するために排水路底部を有した排水路と該排水路の出口開放末端に位置しつつ、傾斜落差誘導底部を介して連結された跳水発生領域を有した下流水槽とを備えた発電所排水路の水路構造において、前記排水路の出口開放末端には上流貯留槽の底部を形成させ、該上流貯留槽の底部から離隔設置されたサイフォン水路管が下流水槽の跳水発生領域まで傾斜落差誘導底部に沿って連通して設置されている。
【発明の効果】
【0007】
前記のような本発明に係る発電所排水路の泡発生防止用水路構造は、発電所の冷却水を排出するときに落差区間で発生する大量の泡発生を防止するための排水路の構造変更に関し、外海の遠距離に流出拡散して視覚的公害を誘発し、近隣住民の苦情をもたらして問題になっている発電所排水路における泡発生を防止することができる。
【0008】
今までには施工性と経済性などの問題で稼動中の発電所排水路の泡発生の解決事例はなく、環境に影響を及ぼす消泡剤の使用、効果が微弱で構造的に脆弱な泡防止膜などに依存してきたため、泡の発生を根本的に遮断できる安定した構造物である本発明を適用することにより、消泡剤使用費用の節減、泡防止膜維持補修費用の節減、排水路環境の改善を通じた親環境イメージの向上などの経済的、社会的な利益が期待できる。
【0009】
また、従来には泡発生を防止するために水中放流構造が必要であり、そのためには大規模な掘削工事および海上工事が行われなければならなかった。しかし、本発明に係るサイフォン水路放流構造は、水路流出入区間だけが水中に位置するために、小規模の貯留槽工事の他には掘削工事がなく、陸上工事でなされる。したがって、深層排水路またはダム式水位上昇方策などの泡発生を低減するための既存の排水路変更方式を適用するときにもたらされる大規模な掘削と海岸構造物の撤去、海上ダムの設置などの大規模で長期間にわたる土木工事を行うことなく、比較的に簡単に設置することができるため、工事費用と工期を飛躍的に節減できるので現場適用性が非常に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付した例示図面に基づいてより詳細に説明する。
【0011】
本発明は、発電所に用いられる海水冷却水を外海に放出するとき、排水路の出口を通して放出される冷却水の跳水発生領域で発生する泡を防止する水路構造であって、図1は本発明に係る水路構造を備えた発電所排水路の断面図であり、図2は図1の3次元形状図である。
【0012】
本発明は、海水冷却水を外海に放出するために排水路底部(1)を有した排水路(102,2)と該排水路(102,2)の出口開放末端(2a)に位置しつつ、傾斜落差誘導底部(3)を介して連結された跳水発生領域(4)を有した下流水槽(5)とを備えた発電所排水路の水路構造において、前記排水路(102,2)の出口開放末端(2a)には上流貯留槽(6)の底部(7)を形成させ、該上流貯留槽(6)の底部(7)から離隔設置されたサイフォン水路管(8)が下流水槽(5)の跳水発生領域(4)まで傾斜落差誘導底部(3)に沿って連通して設置されている。
【0013】
したがって、前記サイフォン水路管(8)は上流貯留槽(6)の底部(7)と傾斜落差誘導底部(3)および下流水槽(5)の跳水発生領域(4)まで延長設置され、前記上流貯留槽(6)の底部(7)と傾斜落差誘導底部(3)との間に突出形成されたサイフォン水路管(8)によって排水路(2)の出口開放末端(2a)には上流貯留槽(6)が形成されている。
【0014】
また、前記排水路(2)の出口開放末端(2a)から突出形成されたサイフォン水路管(8)にはプライミングポンプ(9)と流量調節水門(10)を各々設置する。
【0015】
これにより、本発明は、図4に示された既存の排水路(102)出口部から排水路底部(102a)と傾斜落差誘導底部(103)に沿って放出される冷却水の、落差高さによって下流水槽(105)の跳水発生領域(104)において空気が流入して泡(111)が発生する問題点を解決したものである。
【0016】
すなわち、本発明は、サイフォン水路管(8)に冷却水が流入されるとき、水面から空気が流入しないように上流貯留槽(6)の底部(7)に離隔設置されて水深が確保され、該サイフォン水路管(8)が、排出口が常に水中に浸されるように下流水槽(5)の低潮位(L.L.W.L)より低い水深に位置するように設置する。
【0017】
既存の発電所の排水路は、低潮位(L.L.W.L)時、上下流の落差が大きくなるほど泡の発生が多く、高潮位(H.H.W.L)になるほど水位差が小さくなって泡の発生が減る傾向があるが、本発明は、サイフォン水路管(8)の上流貯留槽(6)の水深が下流水槽(5)の水深より高い場合に該サイフォン水路管(8)を通して冷却水が排出されて泡の発生を防止し、高潮位(H.H.W.L)時に水位差が小さくなれば落差が小さくなるために泡が発生しない。
【0018】
低潮位時に泡の発生を防止するためにはサイフォン水路管(8)を通して排出される流量が全体冷却水放流量と同一でなければならない。したがって、サイフォン水路管(8)の通水断面積は冷却水最大放流量に合わせ、放流量が小さくなる場合にも上流水位および満管流れを維持できるように流量調節水門(10)を設置する。冷却水の放流量は随時に変動するものではなく、循環水ポンプ運転が計画下で運営されて変動の様子を予測できるため、流量調節水門の操作は循環水ポンプの運転に連係すれば良い。また、最初の通水時にはサイフォン水路管が空いている状態であるためにサイフォン排出が発生しないこともあり得るので、円滑な排出のためにプライミング操作が必要である。したがって、プライミングポンプ(9)のような装置を設置する。しかし、一旦、放流が始まればプライミング操作が必要な場合は殆どない。
【0019】
発電所排水路の場合、普通、号機別に排水路がいくつかの列に分岐している。したがって、稼動中の発電所に適用するためには、各号機別に整備日程に合わせて放流が起こらない出口に各々順次施工する。
【0020】
一方、図3に示すように、既存の排水路(102)の構造が複雑であるために貯留槽およびサイフォン水路の設置が難しい場合、排水路(102)の側面に迂回水路(11)、迂回貯留槽(12)、迂回サイフォン水路管(13)を設置することもできる。既存の排水路を分岐して迂回水路を適用する場合、既存の排水路構造に拘らずに水路および貯留槽を自由に配置できる長所がある。
【0021】
本発明では、サイフォンが適切な機能を発揮するために、貯留槽の模様、大きさ、位置、サイフォン水路管の配置方法などの機能設計が必要であり、これは模型実験や数学的解釈によって達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用された発電所排水路の断面図である。
【図2】本発明が適用された発電所排水路の3次元形状図である。
【図3】本発明を既存の発電所排水路に迂回設置した状態を示す図である。
【図4】既存の発電所排水路の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 排水路底部
2 排水路
3 傾斜落差誘導底部
4 跳水発生領域
5 下流水槽
6 上流貯留槽
7 底部
8 サイフォン水路管
9 プライミングポンプ
10 流量調節水門

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水冷却水を外海に放出するために排水路底部を有した排水路と該排水路の出口開放末端に位置しつつ、傾斜落差誘導底部を介して連結された跳水発生領域を有した下流水槽とを備えた発電所排水路の水路構造において、
前記排水路の出口開放末端には上流貯留槽の底部を形成させ、該上流貯留槽の底部から離隔設置されたサイフォン水路管が下流水槽の跳水発生領域まで傾斜落差誘導底部に沿って連通して設置されていることを特徴とする発電所排水路の泡発生防止用水路構造。
【請求項2】
前記上流貯留槽の底部と傾斜落差誘導底部との間に突出形成されたサイフォン水路管によって排水路の出口開放末端には上流貯留槽が形成されていることを特徴とする、請求項1の記載の発電所排水路の泡発生防止用水路構造。
【請求項3】
前記排水路の出口開放末端から突出形成されたサイフォン水路管にはプライミングポンプと流量調節水門を設置することを特徴とする、請求項1の記載の発電所排水路の泡発生防止用水路構造。
【請求項4】
前記排水路の側面に迂回水路、迂回貯留槽、および迂回サイフォン水路管を設置することを特徴とする、請求項1の記載の発電所排水路の泡発生防止用水路構造。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−101149(P2010−101149A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324637(P2008−324637)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(507270285)コリア エレクトリック パワー コーポレイション (7)