説明

発電所用ボイラーの炉

【課題】炉の水管部において加熱される水の温度を高めてボイラーの底部における熱吸収効率を増大させた発電所用ボイラーの炉を提供する。
【解決手段】底部から供給される水を上方に移動させつつ、加熱する外水管210部と、気水分離器260において分離された蒸気を上方に移動させつつ、過熱蒸気に加熱する内水管部220と、を備え、外水管部は、底部から中央部位Mに向かって徐々に拡径した形状もしくは実質的に同径の形状を呈し、中央部位から頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈し、内水管部は、底部から中央部位に向かって徐々に縮径してから拡径した形状を呈し、中央部位から頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈し、外水管部と内水管部との間に形成される燃焼空間は、底部から中央部位に向かって徐々に拡径してから縮径した形状を呈し、中央部位から頂部に向かって蛇行状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外水管部と内水管部により形成される燃焼空間を炎の自然形状に最も似た形状に形成して炎との接触面積を増大させ、外水管部において加熱された水と蒸気を内水管部に供給して炉の水管部において加熱される水の温度を高めて熱効率を増大させた発電所用ボイラーの炉に関する。
【0002】
また、本発明は、炉に供給される水が外水管部を経た後に内水管部に再供給されるようにすることにより、給水ポンプの負荷を大幅に減少させて全体系統の効率を増大させつつ内水管壁が火球の形成を防止し、且つ、過熱器の役割を果たして炎の熱を大量吸入して高温の火球によるサーマルNOxの生成を防止し、燃え残った灰が高温の火球によって溶融されて鎔滓化することを防止することのできる発電所用ボイラーの炉に関する。
【0003】
さらに、本発明は、炉に供給される水を外水管部において高温の水と蒸気に一次的に加熱し、これをそれぞれ分離して蒸気のみを内水管部において二次的に加熱することにより、水と蒸気を加熱する場合よりも高速にて過熱蒸気を生産することのできる発電所用ボイラーの炉に関する。
【背景技術】
【0004】
一般に、火力発電所において多用されるボイラーは、石炭用ボイラーと、石油用ボイラーと、ガス用ボイラーとに大別され、中でも、発電量の多数を占めるのが石炭発電ボイラーである。なお、石炭発電所はさらに微粉炭ボイラーと流動層ボイラーとに大別される。
【0005】
前記微粉炭ボイラーは微粉炭を燃焼させることから燃焼効率が高い代わりに、高温燃焼に起因して大気環境に有害な窒素酸化物が生成されるため、窒素酸化物を処理可能な大型集塵設備が設置可能な大型発電所において採択している。前記流動層ボイラーは太粒の石炭を燃焼させるため燃焼温度が低くて窒素酸化物の生成が抑えられる代わりに、燃焼温度が低いため、炎から水管への伝熱効果を高めるために砂を炉の底部から上方に吹き上げて砂を加熱し、このようにして加熱された砂が炉の外縁部に配設された水管壁に乗って流下するようにすることにより熱効率を高めている。
【0006】
この理由から、燃焼効率の高い微粉炭ボイラーにおいては窒素酸化物の生成を抑制する研究が進んでいるのに対し、流動層ボイラーにおいては規模を拡大させて熱効率を高めることが試みられている。
【0007】
本発明においては、石炭火力発電のほとんどを占める微粉炭ボイラーを例にとって説明する。
【0008】
既存の微粉炭ボイラーにおいては、炉の頂部に7kmに達する水管を上下左右に千鳥状に配列して上に昇りながら抜け出る炎から最大限に熱を吸収している。
【0009】
炎からの熱吸収効率を高目の位置に稠密に配列した水管によって高める方法を採択しているため、蒸気の自然流れの方向を強制的に逆行させつつ高抵抗の細長い水管を流れるようにするために、水を循環させる給水ポンプの負荷が非正常的に高まっている。
【0010】
発電所の所内電力の30〜40%をこの給水ポンプを作動させるモータが消耗してしまっている。加えて、窒素酸化物を大量排出し、灰をべたべたした鎔滓化させて多量のクリンカーを生成し、ろ過装置を汚染させて安価な低級炭を使用し得ないという弱点も有している。
【0011】
このような問題を解決するために、本出願人による大韓民国登録特許第10−0764903号公報においては、図1に示すように、炉の周縁に沿って配設された外水管壁6の中心に多数の水管束からなる内水管壁8を設けて、前記内外水管壁8、6の間において外水管壁6に設けられた燃料噴射ノズルから噴射される燃料を内水管壁8の周りに沿って回転しつつ管状炎を形成しながら燃焼させることにより、炎が一ヶ所に集中して超高温に上昇するといった現象が発生することを防ぐとともに、前記内水管壁8に穿設された空気噴射孔を介して炎よりも低温の空気を内外水管壁8、6の間の燃焼空間S中に流入させることにより、炎Fの温度が超高温に上昇し過ぎることを防止することができるので、高温の炎により空気中の窒素が燃焼して窒素酸化物が発生することを低減している。しかしながら、上記の大韓民国登録特許第10−0764903号公報は、炉中において発生した対流ガスの多くの熱が炉の隣にある水管部に伝達・吸収できずに上昇して過熱器と再加熱器とを通過しつつ残った熱を吸収させるため上層部が極めて高くなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、外水管部と内水管部により形成される燃焼空間を炎の自然形状に最も似た形状に形成して炎との接触面積を増大させて、炉の水管部において加熱される水の温度を高めてボイラーの底部における熱吸収効率を増大させた発電所用ボイラーの炉を提供するところにある。
【0013】
本発明の他の目的は、炎の上方において形成されて対流熱を持った対流ガスが通過できるように蛇行部を形成して対流ガスの対流熱も炉の水管部において積極的に吸収してボイラーの底部における熱吸収効率を一層高めた発電所用ボイラーの炉を提供するところにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、炉に供給される水が外水管部を経た後に内水管部に再供給されるようにすることにより、低い位置にある内水管壁が過熱器の役割を果たして水管全体の高さ及びボイラーの高さを低めて建設費を削減し、水管の長さを大幅に短縮して給水ポンプの負荷を大幅に減少させて全体系統の効率を高めた発電所用ボイラーの炉を提供するところにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、内水管壁が火球の形成を防止し、過熱器の役割を果たして炎の熱を大量吸入して高温の火球によるサーマルNOxの生成を防止し、燃え残った灰が高温の火球により溶融されて鎔滓化することを防止した発電所用ボイラーの炉を提供するところにある。
本発明のさらに他の目的は、炉に供給される水を外水管部において高温の水と蒸気に一次的に加熱し、これをそれぞれ分離して蒸気のみを内水管部において二次的に加熱して、水と蒸気を加熱する場合よりも高速にて過熱蒸気を生産可能な発電所用ボイラーの炉を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉は、外部から水を供給されて上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する外水管部と、前記外水管部の内部に位置し、外部から水を供給されて上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する内水管部と、を備え、前記外水管部は、底部から中央部位(M)に向かって徐々に拡径した形状もしくは実質的に同径の形状を呈し、中央部位(M)から頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈し、前記内水管部は、底部から中央部位に向かって徐々に縮径してから拡径した形状を呈し、中央部位(M)から頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈し、外内水管部の間に形成される燃焼空間は、底部から中央部位(M)に向かって徐々に拡径してから縮径した形状を呈し、中央部位(M)から頂部に向かって蛇行状に形成されている。
【0017】
本発明の第2の実施の形態による発電所用ボイラーの炉は、底部に水を供給されて上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する外水管部と、前記外水管部の内部に位置し、高温の水(蒸気を含む)を底部に供給されて上方に移動させつつ蒸気に加熱する内水管部と、前記外水管部の上方に移動された高温の水(蒸気を含む)を内水管部の底部に供給する降水管と、前記内水管部に沿って上方に移動された加熱蒸気を供給される蒸気収集室と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の実施の形態による発電所用ボイラーの炉は、底部に水を供給されて上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する外水管部と、前記外水管部から高温の水(蒸気を含む)を供給されてそれぞれ水と蒸気とに分離する気水分離器と、前記気水分離器において分離された蒸気を底部に供給されて上方に移動させつつ過熱蒸気に加熱する内水管部と、前記内水管部に沿って上方に移動された加熱蒸気を供給される蒸気収集室と、を備え、前記気水分離器において分離された水は前記外水管部の底部に再供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉は、外水管部と内水管部により形成されて炎が形成される燃焼空間が炎の形状に最も似た形状を有するため、各水管部の炎との接触面積が増大され、炎と水管壁との間の距離が近くなるため炉の水管部において加熱される水の温度を高めて熱効率を高めることができるというメリットがある。また、炎が高温の火球ではなく、高温の管状に形成されるため、広い面積への輻射熱及び対流熱の放出により炎の温度が下がる結果、高温の火球によるサーマルNOxの生成を防止し、燃え残った灰が高温の火球により溶融されて鉱滓化することを防ぐことができるというメリットがある。
【0020】
本発明の第2の実施の形態による発電所用ボイラーの炉は、水が外水管部を経た後に内水管部に再供給されるため、内水管壁が過熱器の役割を果たして、通常的に設けられる頂部の過熱器を代替または縮小してボイラーの炉の低背化を図ることができ、上水管の長さを大幅に短縮して給水ポンプの負荷を大幅に減少して全体系統の効率を増大させることができるというメリットがある。
【0021】
本発明の第3の実施の形態による発電所用ボイラーの炉は、炉に供給される水が外水管部において高温の水と蒸気に一次的に加熱され、さらに分離された蒸気のみを内水管部において二次的に加熱することにより、超高圧の過熱蒸気を容易に生産することができるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の発電所用ボイラーの炉の部分切欠斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の部分切欠斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の燃焼室に配設された内外水管部のレイアウト状態を示す平断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の燃焼室に配設される内水管部に穿設される空気噴射孔の垂直断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の部分切欠斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の燃焼室に配設される内水管壁の斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の部分切欠斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施の形態による発電所用ボイラーの炉を詳述する。このとき、気水分離器などの各種の装置は既存のボイラと同様であるため別途の説明は省く。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の部分切欠斜視図であり、図3は、本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の断面図であり、図4は、本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の燃焼室に配設された内外水管部のレイアウト状態を示す平断面図であり、そして図5は、本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の燃焼室に配設される内水管部に穿設される空気噴射孔の垂直断面図である。
【0025】
図2から図5に示すように、本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉1は、内縁部に位置し、炉壁2に沿って多数の水管が連結されてなる外水管部10と、前記外水管部10の内側に位置し、外水管部10と同様に多数の水管が連結されてなる内水管部20と、を備える。
【0026】
外水管部10は、下部に位置し、外部から水を供給される第1の下ヘッド11と、前記第1の下ヘッド11に流入した水を供給されて多数の水管に沿って上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する外水管壁12と、外水管壁12の上部に位置し、外水管壁12に沿って上方に移動されつつ加熱された水と蒸気を集める第1の上ヘッド13と、を備える。
【0027】
内水管部20は、下部に位置し、外部から水を供給される第2の下ヘッド21と、第2の下ヘッド21に流入した水を供給されて多数の水管に沿って上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する内水管壁22と、内水管壁22の上部に位置し、内水管壁22に沿って上方に移動されつつ加熱された水と蒸気を集める第2の上ヘッド23と、を備える。
【0028】
外炉壁と外水管部10との間の空間には断熱材3を詰め込み、外水管壁12と内水管壁22は繋ぎ棒状の薄板であるメンブレイン14を水管の間ごとに並置して水管とメンブレインが並列溶接により連結されて壁状に形成されて支持される。
【0029】
そして、第1の上ヘッド13及び第2の上ヘッド23は、炉1の頂部に配設された過熱器(図示せず)と連結されている。
【0030】
一方、外水管壁12は、底部から中央部位に向かって徐々に拡径した形状もしくは実質的に同径の形状を呈し、中央部位Mから頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈する。そして、内水管壁22は、外水管壁12の内側に位置し、底部から中央部位に向かって徐々に縮径してから拡径した形状を呈し、中央部位Mから頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈する。このとき、中央部位Mから頂部に向かって外内水管壁10、20の形状は千鳥状に繰り返されてもよい。
【0031】
これにより、外内水管壁10、20の間に形成される燃焼空間Sは、底部から中央部位Mに向かって徐々に拡径してから縮径した形状を呈し、中央部位Mから頂部までは実質的に同じ幅をもって蛇行状に形成される。すなわち、下部はまるで坩堝のように外部に膨らみ、上部は縮径しつつ蛇行して外内水管壁の間において発生した燭火状の炎が上部に抜け出る。このとき、全方向に放射される炎の輻射熱は上下に囲まれた広い表面積を暖め、炎に載っている対流熱は中央部位と燃焼空間Sの蛇行部を通過しつつ一層多量の水管と接触する結果、水管への伝熱効果を高めることができる。
【0032】
そして、外水管壁12には円周方向及び長手方向に沿って所定の間隔をあけて多数の燃料噴射ノズル15が配置される。燃料噴射ノズル15から噴射された燃料は外水管壁12と内部噴射壁22との間に形成される燃焼空間S中に噴射されて巨大な一つの曲線状の管状炎Fを形成して外内水管壁10、20の内部に流れる水を加熱する。そして、外水管壁12と内水管壁22の外面には、高温浸食と熱損傷を防ぐために、耐侵食コーティングおよび耐高温腐食コーティングを施すことが好ましい。
【0033】
図5に示すように、内水管壁22のメンブレインには多数の空気噴射孔24が穿設される。空気噴射孔24は内水管壁22の内部空間と連結された空気ポンプから供給された空気を内水管壁22と外水管壁12との間に吹き込んで、燃料が燃焼しつつ生成される炎Fの温度を下げて超高温に加熱されることを防ぐ機能をする。
【0034】
以下、このような構造を有する本発明の第1の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の作動状態を説明する。
【0035】
まず、すべての水管に水を詰め、オイルバーナーなどにより炎を噴射して炉1の内部を加熱した後、オイルバーナーの炎中に、外水管壁12に配設される多数の燃料噴射ノズル14を介して、燃料とともに空気を噴射したり、底部から微粉炭を噴射すると、前記炉1がオイルバーナーの炎によって暖められた状態であるため、オイルバーナーの炎によって微粉炭が着火されるが、このようにして微粉炭が燃焼され始めると、オイルバーナーを切る。
【0036】
外水管部10と内水管部20は外部から下部に位置する第1の下ヘッド11と第2の下ヘッド21に水を供給された後にそれぞれ外水管壁12と内水管壁22に沿って上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱され、加熱された水と蒸気を集める第1の上ヘッド13及び第2の上ヘッド23に供給される。
【0037】
微粉炭炎Fが成長して激しく揺動すると、中央の内水管壁22の空気噴射孔24から補助空気が噴射されて内水管壁22と外水管壁12との間に形成される燃焼空間S中に注入される。
【0038】
一方、外水管壁12に配設されている燃料噴射ノズル15は、内水管壁22の外接線方向に配設されて、燃料噴射ノズル15から噴射される燃料が燃焼するときに発生する炎Fが内水管壁20にぶつかった後に反射されていて、さらに外水管壁にぶつかって閉じ込められることにより管状炎を形成する。
【0039】
このため、前記炎Fは外内水管壁10、20の間の燃焼空間S中において内水管壁22の接線方向に沿って回転するため、それぞれの燃料噴射ノズル15から噴射される炎が一ヶ所に集中する現象が発生しない結果、炎Fの温度が、窒素が酸化される程度の温度まで加熱されなくなるだけではなく、必要に応じて、内水管壁22の空気噴射孔24から外部の冷たい空気が注入されて炎Fの温度を低めるため、前記燃焼空間Sにおいて燃焼される炎Fが1300℃の超高温に上がらなくなる。
【0040】
一方、外内水管壁10、20の間に形成される燃焼空間Sは底部から中央部位Mに向かって徐々に拡径してから縮径した形状を呈し、中央部位Mから頂部に向かって実質的に同じ幅をもって蛇行状に形成される。これにより、外内水管部により上下左右に囲まれる全方向の自然炎状の空間は炎から放射される輻射熱を最大限に吸収できるようにし、炎から放射された対流熱を持った対流ガスも中央部位と燃焼空間Sの蛇行部を通過しつつ水管と一層広く接触させて熱吸収効率を高めることができる。
【0041】
このため、本発明による発電所用ボイラーの炉は、内外水管壁の燃焼空間を炎の形状に最も似た形状に形成して伝熱面積が極大化され、炎と外内水管壁との距離が短縮されて伝熱効果が上がる。この代わりに、炎は水管により多量の熱を奪われて温度が下がるため、炎の内部及び炎の周りの窒素が酸化できなくなる結果、窒素酸化物が発生するという問題が引き起こされない。
【0042】
図6は、本発明の第2の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の部分切欠斜視図であり、図7は、本発明の第2の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の燃焼室に配設される内水管壁の斜視図である。
【0043】
図6及び図7に示すように、本発明の第2の実施の形態による微粉炭ボイラーの炉1は、内縁部に位置し、炉壁2に沿って多数の水管が連結されてなる外水管部10と、前記外水管部10の内側に位置し、多数の水管が連結されてなる内水管部20と、を備える。そして、本発明の微粉炭ボイラーの炉1は、外水管部の上方に移動された高温の水(蒸気を含む)を内水管部の底部に供給する降水管150と、前記内水管部に沿って上方に移動された加熱蒸気を供給される蒸気収集室170と、を備える。また、本発明の微粉炭ボイラーの炉1は、外部から水を供給されて外水管部110に供給する第1の下集水室130と、前記外水管部110の上方に移動された高温の水(蒸気を含む)を集水して内水管部120の底部に供給する第2の下集水室160と、を備える。このとき、降水管150は内水管部120の内部に位置する。
【0044】
外水管部110は、第1の下集水室130から多数の水管に沿って水を供給される第1の下ヘッド111と、前記第1の下ヘッド111に流入した水を供給されて多数の水管に沿って上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する外水管部壁112と、外水管壁112の上方に移動された水を集水し、多数の水管に沿って上集水室140に供給する第1の上ヘッド113と、を備える。
【0045】
内水管部120は、第2の下集水室160から多数の水管に沿って水を供給される第2の下ヘッド121と、第2の下ヘッド121に流入した高温の水(蒸気を含む)を供給されて多数の水管に沿って上方に移動させつつ蒸気に加熱する内水管壁122と、内水管壁122に沿って上方に移動された蒸気を集め、多数の水管に沿って蒸気集水室170に供給する第2の上ヘッド123と、を備える。そして、蒸気集水室170には、蒸気集水室170において集められた蒸気をタービンに供給する蒸気供給管171が搭載される。このとき、蒸気供給管171は、必要に応じて、曲線状に延出して炎排出路を回り込みながら一層多量の熱を吸収して一層高温及び高圧の蒸気を生成するように構成してもよい。
【0046】
一方、外水管壁112は、下部と上部とが実質的に同じ断面形状を有し、内水管壁122が上広下狭の形状を有する。これにより、内外水管壁112、122の間に形成される燃焼空間Sが上広下狭の形状を有して、燃料が炉の内部の下部において十分に燃焼され、このときに発生した輻射熱が内外水管壁だけではなく、炉の真上部の内水管部にも伝わって過熱器の下部に位置する燃焼空間の輻射熱の吸収面積を広げ、これと同時に、対流熱を持った対流ガスが上部を通過しつつ水管と一層広く接触するようにして熱効率を高めることができる。
【0047】
そして、第1の実施の形態のように、外水管壁112には円周方向及び長手方向に沿って所定の間隔をあけて多数の燃料噴射ノズル15が配置され、内水管壁122には多数の空気噴射孔24が穿設される。
【0048】
以下、このような構造を有する本発明の第2の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の作動状態を説明する。
【0049】
まず、第1の下集水室130に水を供給した状態でオイルバーナーなどにより炎を噴射して炉1の内部を加熱して予熱した後、微粉炭を噴射して着火・維持させたり、予熱することなく直ちに微粉炭を噴射しつつプラズマバーナーにより着火して炎を維持して内外水管壁を加熱する。
【0050】
第1の下集水室130に供給された水は外水管部の第1の下ヘッド111に供給され、外水管壁112に沿って移動しつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱されて第1の上ヘッド113を経て上集水室140に供給される。
【0051】
上集水室140に供給された高温の水(蒸気を含む)は内水管部の内側に位置する降水管150に沿って第2の下集水室160に供給される。第2の下集水室160の高温の水(蒸気を含む)は内水管部の第2の下ヘッド121に供給され、内水管壁122に沿って移動しつつ超臨界圧の過熱蒸気の状態に加熱され、第2の上ヘッド123を経て蒸気収集室170に供給される。これにより、内水管部120を通過する蒸気は内水管部に流入する水と蒸気が既に高温であるため容易に超臨界圧の過熱蒸気の状態に加熱可能である。
【0052】
そして、蒸気収集室170の超臨界圧の過熱蒸気が供給管を介してタービンに伝達されてタービンの効率が向上する。また、内水管部が過熱蒸気を作り出す過熱器の役割を果たすことができるだけではなく、過熱器を別設を不要にしたり大幅に縮小させてボイラー全体の低背化を図ることで建設費を節減し、上水管の長さを大幅に短縮して給水ポンプの負荷を大幅に減少させて全体系統の効果を高めることができる。
【0053】
このような本発明の第2の実施の形態によれば、外水管壁からの加熱水をタービンに送り込むことなく内水管部を循環させつつ加熱するため、高温の状態で内水管部に供給された水は内水管壁を通過したときにいずれも超臨界圧の蒸気に変換されてタービンに伝達されてタービンの効率が向上する。
【0054】
図8は、本発明の第3の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の部分切欠斜視図である。同図に示すように、本発明の第3の実施の形態による微粉炭ボイラーの炉1は、内縁部に位置し、炉壁2に沿って多数の水管が連結されてなり、底部に水を供給されて上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する外水管部210と、外水管部210から高温の水(蒸気を含む)を供給されてそれぞれ水と蒸気に分離する気水分離器260と、気水分離器260において分離された蒸気を底部に供給されて上方に移動させつつ過熱蒸気に加熱する内水管部220及び内水管部220に沿って上方に移動された加熱蒸気を供給される蒸気収集室270を備える。そして、本発明の微粉炭ボイラーの炉1は、外部から水を供給されて外水管部210に供給する第1の下集水室230と、外水管部の上方に移動された高温の水(蒸気を含む)を供給されて前記気水分離器260に供給する上集水室240と、を備える。このとき、気水分離器260は内水管部220の内部に位置し、気水分離器260において分離された水は前記外水管部210の底部に供給される。
【0055】
外水管部210は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、第1の下集水室230から多数の水管に沿って水を供給される第1の下ヘッド211と、前記第1の下ヘッド211に流入した水を供給されて多数の水管に沿って上方に移動させつつ高温の水(蒸気を含む)に加熱する外水管壁212と、外水管壁212の上方に移動された高温の水(蒸気を含む)を集水し、多数の水管に沿って上集水室240に供給する第1の上ヘッド213と、を備える。
【0056】
内水管部220も、外水管部210と同様に、気水分離器260から多数の水管に沿って蒸気を供給される第2の下ヘッド221と、第2の下ヘッド221に流入した蒸気を供給されて多数の水管に沿って上方に移動させつつ過熱蒸気に加熱する内水管壁222と、内水管壁222に沿って上方に移動された蒸気を集め、多数の水管に沿って蒸気収集室270に供給する第2の上ヘッド223と、を備える。そして、蒸気収集室270には、蒸気収集室270において集められた蒸気をタービンに供給する蒸気供給管271が搭載される。
【0057】
このとき、外水管壁212は、底部から中央部位に向かって徐々に拡径した形状もしくは実質的に同径の形状を呈し、中央部位Mから頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈する。そして、内水管部222は、外水管壁212の内側に位置し、底部から中央部位に向かって徐々に縮径してから拡径した形状を呈し、中央部位Mから頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈する。
【0058】
これにより、内外水管壁212、222の間に形成される燃焼空間Sは、底部から中央部位Mに向かって徐々に拡径してから縮径した形状を呈し、中央部位Mから頂部に向かって実質的に同じ幅をもって形成される。すなわち、下部はまるで坩堝のように外部に膨らみ、上部は縮径しつつ蛇行して外内水管壁212、222の間において発生した燭火状の炎Fが上部に抜け出る。このとき、全方向に放射される炎の輻射熱は上下に囲まれた広い表面積を暖め、炎に載っている対流熱は中央部位と燃焼空間Sの蛇行部を通過しつつ一層多量の水管と接触する結果、水管への伝熱効果を高めることができる。
【0059】
気水分離器260は上集水室240と第2の下ヘッド221との間に位置し、上集水室240から供給された高温の水(蒸気を含む)を降水管250を介して供給されてそれぞれ高温の水(蒸気を含む)に含まれている蒸気を分離し、分離された蒸気は多数の水管を介して第2の下ヘッド221に供給し、加熱された水は補助水管261を介して第1の下集水室230に供給する。また、気水分離器260は、第1の上ヘッド213と上集水室240との間に設けられて、第1の上ヘッド213から加熱水を供給されて水と蒸気にそれぞれ分離し、分離された蒸気は上集水室240に供給し、分離された高温の水は第1の下集水室230に供給するようにしてもよい。この気水分離器により蒸気のみが内水管壁222に移動して加熱されるため、蒸気の加熱効果を高められる結果、内水管壁を通過した蒸気は過熱蒸気(超臨界圧)となり、この過熱蒸気をタービンに供給してタービンの効率を高めることができる。
【0060】
そして、第1の実施の形態及び第2の実施の形態のように、外水管壁212には円周方向および長手方向に沿って所定の間隔をあけて多数の燃料噴射ノズル15が配置され、内水管壁222には多数の空気噴射孔24が穿設される。外水管壁及び内水管壁には高温腐食及び高温浸食から水管を保護するために高温耐腐食コーティング及び高温耐侵食コーティングを施す。
【0061】
以下、このような構造を有する本発明の第3の実施の形態による発電所用ボイラーの炉の作動状態を説明する。
【0062】
まず、第1の下集水室230に水を供給した状態でオイルバーナーなどにより炎を噴射して炉1の内部を加熱して予熱した後、微粉炭を噴射して着火・維持させるか、あるいは、予熱することなく直ちに微粉炭を噴射しつつプラズマバーナーにより着火して炎を維持して内外水管部210、220を加熱する。
【0063】
これにより、第1の下集水室230に供給された水は多数の水管を介して外水管部の第1の下ヘッド211に供給され、第1の下ヘッド211に供給された水は外水管壁212に沿って移動しつつ加熱されて高温の水の状態(蒸気と水が混合された状態)で第1の上ヘッド213を経て上集水室240に供給される。
【0064】
この後、上集水室240に供給された高温の水(蒸気を含む)は降水管250を介して気水分離器260に供給され、気水分離器260においてそれぞれ加熱された水と蒸気に分離される。なお、このようにして分離された水は第1の下集水室230に供給されて外水管部210に沿って加熱される。
【0065】
一方、気水分離器260において分離された蒸気は内水管部220の下部に位置する第2の下ヘッド221に移動され、内水管壁222に沿って移動しつつ炉により加熱されて第2の上ヘッド223に供給される。これにより、内水管部を通過する蒸気は超臨界圧の過熱蒸気の状態で蒸気収集室270に供給され、この超臨界圧の過熱蒸気がタービンに供給されることによりタービンの効率が上がる。
【0066】
本発明は、微粉炭ボイラーだけではなく、他のボイラーにも適用可能であるということはこの分野における通常の知識を持った者であれば容易に理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部から供給される水を上方に移動させつつ、加熱する外水管部と、
前記外水管部からの加熱された水をそれぞれ水と蒸気とに分離する気水分離器と、
前記気水分離器において分離された蒸気を上方に移動させつつ、過熱蒸気に加熱する内水管部と、
前記内水管部からの過熱蒸気を収集する蒸気収集室と、
を備え、
前記気水分離器において分離された水は前記外水管部の底部に再供給され、
前記外水管部は、底部から中央部位に向かって徐々に拡径した形状もしくは実質的に同径の形状を呈し、中央部位から頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈し、
前記内水管部は、底部から中央部位に向かって徐々に縮径してから拡径した形状を呈し、中央部位から頂部に向かって縮径してから拡径し、さらに縮径した形状を呈し、
前記外水管部と前記内水管部との間に形成される燃焼空間は、底部から中央部位に向かって徐々に拡径してから縮径した形状を呈し、中央部位から頂部に向かって蛇行状に形成されていることを特徴とする発電所用ボイラーの炉。
【請求項2】
外部から供給される水を前記外水管部に供給する下集水室と、
前記外水管部の上方に移動された水が供給され、それを前記気水分離器に供給する上集水室と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の発電所用ボイラーの炉。
【請求項3】
前記外水管部は、前記下集水室と前記気水分離器から水が供給される第1の下ヘッドと、多数の水管から形成され、前記第1の下ヘッドから供給された水を前記多数の水管に沿って上方に移動させつつ、加熱する外水管壁と、前記外水管壁の上方に移動された水を集水して前記上集水室に供給する第1の上ヘッドと、を備え、
前記内水管部は、前記気水分離器からの蒸気が供給される第2の下ヘッドと、多数の水管から形成され、前記第2の下ヘッドから供給された蒸気を上方に移動させつつ、加熱する内水管壁と、前記内水管壁に沿って上方に移動された蒸気を集めて蒸気収集室に供給する第2の上ヘッドと、を備えることを特徴とする請求項2に記載の発電所用ボイラーの炉。
【請求項4】
前記外水管壁と前記内水管壁はメンブレインにより連結されて壁状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の発電所用ボイラーの炉。
【請求項5】
前記外水管壁には円周方向及び長手方向に沿って所定の間隔をあけて多数の燃料噴射ノズルが配設され、前記内水管壁には多数の空気噴射孔が穿設されていることを特徴とする請求項3に記載の発電所用ボイラーの炉。
【請求項6】
前記外水管壁と内水管壁の外面には、耐高温侵食コーティング及び耐高温腐食コーティングが施されていることを特徴とする請求項3に記載の発電所用ボイラーの炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−64595(P2013−64595A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233110(P2012−233110)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2011−514507(P2011−514507)の分割
【原出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【出願人】(503416087)