説明

発電装置、および電子機器

【課題】従来の発電装置では、圧電体に打撃を加えた一方側でのみ、更に打撃を加えた瞬間しか発電することが出来ない。このため、効率的に連続的な発電ができないという課題があった。
【解決手段】発電装置300は、第1電極としての第1発電電極105を有する第1基板としての固定基板101と、第2電極としての第2発電電極211を有する第2基板としての可動基板201と、移動可能な可動基板201の可動方向の両端に設けられた弾性変形する第1支持部としての板ばね212および第2支持部としての板ばね213と、板ばね212,213の弾性変形に伴って変形する圧電素子212b,213bと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置、および当該発電装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電体と、圧電体に対して相対的に振動可能に構成され、圧電体に打撃を加える打撃部とを備えた発電装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
打撃部が振動することにより、圧電体に打撃が加えられるとともに、圧電体が変形し、圧電効果により発電が行われる。
【0003】
また、可変容量の電極に電荷を与え、その電荷により対向電極間にクーロン引力を働かせ、このクーロン力に抗して振動部が振動することにより発生した振動エネルギーを電気エネルギーに変換することによって発電を行う静電誘導型発電装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
上記静電誘導型発電装置は、複数の電荷を保持しているエレクトレット材料電極を備えた第2の基板と、複数の導電性表面電極を備えた第1の基板とが互いに所定の間隔を隔てて配置されており、第2の基板は、固定構造であり、第1の基板は、第2の基板にばねを介して連結されている。
第1の基板が振動することにより、エレクトレット電極と導電性表面電極との重なり面積の増減が生じ、導電性表面電極に電荷の変化が生じ、その電荷の変化を電気エネルギーとして取り出すことにより発電を行なうと開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−183015号公報
【特許文献2】特表2005−529574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発電装置では、圧電体に打撃を加えた一方側でのみ、更に打撃を加えた瞬間しか発電することが出来ない。このため、従来の発電装置における構成では、効率的に連続的な発電ができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適応例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る発電装置は、第1電極を備えた第1基板と前記第1電極に対向するように配置された第2電極を備えた第2基板と、を有し、前記第1電極と前記第2電極のいずれか一方は、電荷を保持する膜を含み、前記第1基板と前記第2基板の少なくとも一方は、一平面上において第1の方向に移動可能であって、前記第1基板と前記第2基板のうち、前記第1の方向に移動可能な基板に対して、前記第1の方向において、当該基板をはさんで両端に設けられた弾性変形する第1支持部と、前記第1支持部の弾性変形に伴って変形する第1圧電素子と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、移動可能な基板が第1の方向に移動することにより、前記基板に設けられている支持部の一方が圧縮弾性変形し、その圧縮弾性変形に伴って圧電素子がたわみを生じ電気エネルギーとして取り出すことが可能であると共に、前記支持部の他方が膨張弾性変形し、その膨張弾性変形に伴って圧電素子がたわみを生じ電気エネルギーとして取り出すことが可能である。
また、いずれか一方に電荷を保持する膜を含む、第1電極と第2電極とを備え、前記第1電極を備える第1基板と前記第2電極を備える第2基板の少なくとも一方が、移動することにより、電荷を保持する膜と前記電荷を保持する膜に対向する電極との重なり面積に増減が生じ、前記電荷を保持する膜に対向する電極に電荷の変化が生じ、その電荷の変化を電気エネルギーとして取り出すことが可能である。その結果、従来より大きな発電量を得ることができる。
従って、高い発電効率を有する発電装置を提供することが出来る。
【0009】
[適用例2]上記適用例に記載の発電装置において、前記第1基板と前記第2基板の少なくとも一方は、一平面上において前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動可能であって、前記第1基板と前記第2基板のうち、前記第2の方向に移動可能な基板に対して、前記第2の方向において、当該基板をはさんで両端に設けられた弾性変形する第2支持部と、前記第2支持部の弾性変形に伴って変形する第2圧電素子と、を備えていることが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、第1の方向とは異なる第2の方向に移動することが可能であり、基板の移動方向が第2の方向においても、圧電素子のたわみが生じ電気エネルギーとして取り出すことが可能である。その結果、従来より大きな発電量を得ることができる。
従って、より高い発電効率を実現できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に記載の発電装置において、前記第1の方向に移動可能な基板と、前記第1圧電素子との間に前記第1支持部が設けられていることが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、第1圧電素子が第1の方向に移動可能な基板に接触しない為、前記圧電素子が外的な損傷を受けることが少なく、前記圧電素子の電気特性が変化する可能性を低くすることが出来る。
従って、高い信頼性を有する発電装置を提供することが出来る。
【0013】
[適用例4]上記適用例に記載の発電装置において、前記第2の方向に移動可能な基板と、前記第2圧電素子との間に前記第2支持部が設けられていることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、第2圧電素子が第2の方向に移動可能な基板に接触しない為、前記圧電素子が外的な損傷を受けることが少なく、前記圧電素子の電気特性が変化する可能性を低くすることが出来る。
従って、高い信頼性を有する発電装置を提供することが出来る。
【0015】
[適用例5]上記適用例に記載の発電装置において、前記第1支持部または前記第2支持部が、板状の弾性体であることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、板状の弾性体を用いることにより、棒状の弾性体を用いた場合に比べて、表面積の大きな圧電素子を備えることが可能である。
従って、より大きな発電量を得ることができ、高い発電効率を実現できる。
【0017】
[適用例6]本適用例の電子機器は、上記適用例に記載の発電装置を備えたことを特徴とする。
これによれば、高い発電効率が実現された発電装置を備え、例えばどこにでも携帯可能な情報端末機器などの電子機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、第1実施形態の発電装置の平面図、(b)は、(a)のA−A’線で切った断面図、(c)は、(a)のB−B’線で切った断面図。
【図2】(a)〜(f)は、圧電素子を用いた発電を行う状態、及び振動機構を示す模式図。
【図3】(a)〜(e)は、電極を用いた発電を行う状態を示す断面図。
【図4】(a)は、第2実施形態の発電装置の平面図、(b)は、(a)のA−A’線断面図、(c)は、(a)のB−B’線断面図。
【図5】電子機器としてのRFタグを示す模式図。
【図6】支持部、弾性体の変形例を示す平面図。
【図7】支持部、弾性体の他の変形例を示す平面図。
【図8】変形例2の発電装置の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0020】
(第1実施形態)
以下、図1〜図3を参照して、第1実施形態の発電装置について説明する。第1実施形態の発電装置は、1軸方向の振動を利用して発電を行う発電装置である。
図1(a)は、発電装置の平面図、(b)は、(a)のA−A’線で切った断面図、(c)は、(a)のB−B’線で切った断面図である。本実施形態の発電装置300は、後述する櫛歯状の電極と交差(直交)する第1の方向(X方向)に可動性を備え、X方向の振動エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。
図1(a)〜(c)に示すように、発電装置300は、第1基板としての固定基板101と、第2基板としての可動基板201とが間隔を置いて向かい合って配置されている。
なお、「上」とは、固定基板101から可動基板201へ向かう方向と定義する。
【0021】
固定基板101は、固定基板本体101aと、固定基板本体101aの第1面側に設けられた第1電極としての第1発電電極105と、を備える。第1発電電極105は、後述する第2発電電極211と協働して発電を行う発電用の電極である。
【0022】
可動基板201は、可動基板本体201aと、可動基板本体201aの固定基板101の上記、第1面と間隔を置いて向き合った第2面側に設けられた集電電極210と、第2発電電極211と、を備えている。また、可動方向(X方向)の基板端部には、弾性変形する第1支持部としての板状の弾性体である、板ばね212,213を備えている。第2発電電極211は、第1発電電極105と協働して発電を行う発電用の電極である。
【0023】
板ばね212,213は、共に円弧形状を備え、可動基板201に円弧頂点部、外枠100に円弧両端部が接合されてなり、可動基板201を固定基板101とある間隔を保つ機能、可動基板201を静止位置に近づける機能を備えている。
【0024】
板ばね212は、第1上電極212a、第1圧電素子212b、第1下電極212cを備え、板ばね213は、第2上電極213a、第2圧電素子213b、第2下電極213cを備えている。そして、板ばね212、213それぞれの変形により発電が行われる。
ここでは、第1下電極212cは、板ばね212の円弧の内側に、第1圧電素子212bは、第1下電極212cの円弧の内側、第1上電極212aは第1圧電素子212bの円弧の内側に、それぞれ備えられている。同様に、第2下電極213cは、板ばね213の円弧の内側に、第2圧電素子213bは、第2下電極213cの円弧の内側、第2上電極213aは第2圧電素子213bの円弧の内側にそれぞれ備えられている。
【0025】
第2発電電極211の構成材料としては、フッ素樹脂やフロロカーボン樹脂等の弗素系の高分子材料や、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の無機材料、シリコン酸化物及びシリコン窒化物等の無機材料を用いることができる。
そして、荷電法としては、コロナ放電によって発生した正あるいは負イオンを上記した非導電性材に注入する方法や、直流高電圧を針状電極にかけて大気中でイオンを発生させて、このイオンを上記した非導電性材に注入する方法を用いることができる。
また、コロナ放電を間欠的に発生させる方法や、直流高電圧をパルス状に印加する方法等、断続的に荷電する方法を用いても良い。
上記した荷電方法を用いて、第2発電電極211は、どちらの極性の電荷を荷電されていても良い。
【0026】
可動基板201は、固定基板101に対してX方向に動けるよう板ばね212,213を介して外枠100に固定されている。そして、第1発電電極105を含む第1発電部115と、可動基板201側にある集電電極210、第2発電電極211を含む第2発電部215により発電が行われる。第1発電電極105と、集電電極210、第2発電電極211は共に櫛歯状の電極構造を供えており、可動基板201は、櫛歯と交差する方向(X方向)に振動する。ここでは、櫛歯と垂直方向をX方向とした場合について説明を続ける。
板ばね212,213は、弾性変形による反力により、可動基板201を静止位置に引き戻す力を発生させる。
なお、「静止位置」とは、第1発電電極105と第2発電電極211の櫛歯が平面視で、平面的に重なっている状態を指すものとする。
【0027】
固定基板本体101aは、構成部材として例えばガラスやプラスティックが用いられている。そして、可動基板201が動いた場合に衝突せぬよう、固定基板本体101aの可動基板201側の面は平坦な形状を備えている。
【0028】
可動基板本体201aは、固定基板本体101aと同様に、構成部材として例えばガラスやプラスティックが用いられている。そして、可動基板201が動いた場合に固定基板101と衝突せぬよう、可動基板本体201aの固定基板101側の面は平坦化されている。そして、板ばね212,213は、可動基板201が可動する方向を規定している。
【0029】
(発電機構1)
以下に、上記した発電装置300を発電可能な状態に保持するための振動機構、板ばね212、213の振動変形における発電機構について説明する。図2(a)〜(e)は、可動基板をずらした場合に板ばねの変形と、その変形による圧電素子の変形による発電機構、振動機構を示す模式図である。
図1(a)に示すように、発電装置300が備える可動基板201は、円弧形状で、弾性変形する板ばね212、213を備え、その円弧内面に上下を電極に挟まれた圧電素子212b、213bを備えている。板ばね212、213は、可動基板201の可動方向において対称的な動作を行うため、以下には、板ばね212のみで発電機構、振動機構を示す。
【0030】
ステップS1として、図2(a)に示すように、可動基板201が静止位置にある場合には、板ばね212は均衡が保たれており、圧電素子212bは時間的(図2(f)の横軸としてtで示す)に変形しないため、形状変化によって発生する電圧は生じないため図2(f)のS1に示すように発電は為されない。
【0031】
次に、ステップS2として、図2(b)に示すように、可動基板201を−X方向に移動させると、板ばね212が変形し、圧電素子212bが変形する。形状変形に伴い、電圧が生じ、抵抗Rを介し、図2(f)のS2に示すように電流iが流れる。そして、−X方向に移動させた板ばね212の反力により静止すると、電圧の発生が終了し、電流iが止まる。
【0032】
次に、ステップS3として、図2(c)に示すように、S2での変形の反力により、静止位置に戻ろうとすると、板ばね212がS2とは反対の変形をし、圧電素子212bも反対の変形をする。その変形に伴い図2(b)の場合と反対向きの電圧が発生し、即ち、図2(f)のS3に示すように電流(−i)が流れる。そして、静止位置に達した後、可動基板201の慣性力により、静止位置を通過して今度は+X方向に進んでいく。
【0033】
次に、ステップS4として、図2(d)に示すように、可動基板201を+X方向に移動すると、板ばね212の反力が生じ始めるが、板ばね212はS3と同方向への更に変形し、圧電素子212bも更に変形する。その変形に伴い、電圧が生じ、抵抗Rを介し、図2(f)のS4に示すように電流(−i)が流れる。そして、板ばね212の反力により静止すると、電圧の発生が終了し、電流iが止まる。
【0034】
次に、ステップS5として、図2(e)に示すように、S4での変形の反力により、静止位置に戻ろうと−X方向に移動すると、板ばね212がS4とは反対の変形をし、圧電素子212bも反対の変形をする。その変形に伴い図2(d)の場合とは反対向きの電圧が発生し、即ち、図2(f)のS5に示すように電流iが流れる。そして、静止位置に達した後、可動基板201の慣性力により、静止位置を通過して今度は−X方向に進んでいく。この動作を繰り返すことで、圧電素子212bを用いて可動基板201の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する、すなわち発電が行われる。
【0035】
本実施形態における発電装置300は、上述した発電機構1に加え、発電機構2の効果を備えている為、更に効率の高い発電装置300を提供することができる。
【0036】
(発電機構2)
以下、第1発電電極105を含む第1発電部115と、集電電極210、第2発電電極211と、を含む第2発電部215に振動を与えることで発電を行う機構について説明する。図3(a)〜(e)は、発電を行う領域内の状態を示す断面図である。
【0037】
ステップS1として、図3(a)に示すように、第2発電部215が振動していない場合には、電気力線(矢印で示す)は時間的(図3(e)の横軸としてtで示す)に変動しないため、電気力線の状態の変化によって発生する電力は生じないため図3(e)のS1に示すように発電は為されない。
【0038】
次に、ステップS2として、図3(b)に示すように、可動基板201を−X方向に移動させると、可動基板201と固定基板101とがずれ、第2発電電極211と第1発電電極105とを含むコンデンサーの容量が減る。容量減少に伴い、抵抗Rを介して電荷が移動する。即ち、図3(e)のS2に示すように電流iが流れる。そして、−X方向に移動させて静止させると、電荷の移動が終了し、電荷の移動、即ち電流iが止まる。
【0039】
次に、ステップS3として、図3(c)に示すように、静止位置に戻すと、今度は第2発電電極211と第1発電電極105とを含むコンデンサーの容量が増えることとなる。容量増加に伴い、抵抗Rを介して電荷が移動し、図3(b)の場合と反対向きの電流、即ち、図3(e)のS3に示すように電流(−i)が流れる。そして、静止位置に戻し静止させると、電荷の移動が終了し、電荷の移動、即ち電流iが止まる。
【0040】
次に、ステップS4として、図3(d)に示すように、可動基板201を+X方向に移動させると、可動基板201と固定基板101とがずれ、第2発電電極211と第1発電電極105とを含むコンデンサーの容量が減る。容量減少に伴い、抵抗Rを介して電荷が移動する。即ち、図3(e)のS4に示すように電流iが流れる。そして、+X方向に移動させて静止させると、電荷の移動が終了し、電荷の移動、即ち電流iが止まる。
【0041】
この動作を繰り返すことで、可動基板201の振動エネルギーを元に発電を行うこととなる。なお、可動基板201の移動量は、容量変化を大きくするが望ましいために、櫛歯状の発電電極幅以上が望ましい。振動の種類などにより、複数個の電極を跨ぐ移動量でも良く、この場合においても容量変化を大きくすることができ、発電量を大きくすることができる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、図4を参照して、第2実施形態について説明を行う。第1実施形態との主な差異は、固定基板101と可動基板201は、ベアリング350を介して重ね合わされていること、可動基板201の基板端部に備えている板ばね212,213が外枠100、又は可動基板201のどちらか一方に接合さていないことであり、ここでは外枠100に接合されてない場合とする。
図4(a)は、第2実施形態の発電装置の平面図、(b)は、(a)のA−A’線で切った断面図、(c)は、(a)のB−B’線で切った断面図である。第1実施形態で説明した構成要素と同じものについては、同じ符号を与えている。そして、機能が概ね同様な場合については重複を避けるため、説明を省略する。第2実施形態の発電装置は、櫛歯電極と交差する第1の方向(X方向)に可動性を備え、X方向の振動エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。
【0043】
図4(a)〜(c)に示すように、発電装置400は、固定基板101と、可動基板201を備える。
【0044】
固定基板101は、固定基板本体101a、X方向に延在するガイド103、第1発電電極105と、を備える。
【0045】
可動基板201は、可動基板本体201a、X方向に延在するガイド203、集電電極210、第2発電電極211と、を備えると共に、可動基板201のX方向における基板端部には、板ばね212,213を備えている。
第2発電電極211は、第1発電電極105と協働して発電を行う発電用の電極である。
【0046】
板ばね212,213は、共に一対の板ばねをラグビーボール形状に撓ませて両端部を接合させたものである。また、可動基板201とラグビーボール形状の一方の円弧頂点部で接合さており、可動基板201を静止位置に近づける機能を備えている。
【0047】
板ばね212は、左円弧部分に第1上電極212a、第1圧電素子212b、第1下電極212cを備え、右円弧部分に第2上電極212d、第2圧電素子212e、第2下電極212fを備える。同じく板ばね213は、左円弧部分に第3上電極213a、第3圧電素子213b、第3下電極213cを備え、右円弧部分に第4上電極213d、第4圧電素子213e、第4下電極213fを備えている。
【0048】
ここでは、第1下電極212cは板ばね212の左円弧の内側に、第1圧電素子212bは、第1下電極212cの円弧の内側に、第1上電極212aは第1圧電素子212bの円弧の内側に、それぞれ備えられている。また、第2下電極212fは板ばね212の右円弧の内側に、第2圧電素子212eは、第2下電極212fの円弧の内側、第2上電極212dは第2圧電素子213eの円弧の内側にそれぞれ備えられている。
第3下電極213cは板ばね213の左円弧の内側に、第3圧電素子213bは、第3下電極213cの円弧の内側に、第3上電極213aは第3圧電素子213bの円弧の内側に、それぞれ備えられている。また、第4下電極213fは板ばね213の右円弧の内側に、第2圧電素子213eは、第2下電極213fの円弧の内側に、第2上電極213dは第2圧電素子213eの円弧の内側にそれぞれ備えられている。
【0049】
ガイド103は、ベアリング350が回転する方向を規定している。本実施形態では、第1の方向(X方向)に自由度を持つ発電装置400を扱っている。そのため、この方向以外への移動を防止するためのガイド103を備えている。ガイド103は、固定基板本体101a上に樹脂を塗布(例えばディスペンサーを用いる)する方法や、感光性樹脂層を形成した後、フォトリソグラフ工程を用いて形成しても良い。また、ガイド103を積む構成に代えて、ベアリング350が一方向に回転するよう固定基板本体101aや可動基板本体201aに溝(図示せず)を形成しても良い。
【0050】
ガイド203は、ガイド103と共にベアリング350が回転する方向を規定している。
【0051】
以上述べたように、本実施形態に係る発電装置400によれば、第1実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0052】
板ばね212,213の可動範囲よりも大きな移動距離を得ることが出来ることにより、振動数が少なく、振幅が大きい振動に対しても、発電電極により安定的な発電を行うことが出来る。
【0053】
大きな変形を得ることにより、板ばねの変形、圧電素子の変形、個数をより多くすることが出来る為、圧電素子212b,212c,213b,213cによる発電においても、大きな発電量を得ることが出来る。
【0054】
(電子機器)
以下、図面を参照して、上記実施形態にかかる発電装置300(または発電装置400)を搭載した電子機器について説明を行う。図5は、電子機器としてのRFタグを示す模式図である。RFタグ500は、発電装置300(または発電装置400)、ダイオードブリッジ510、電気二重層キャパシター520、RF出力部530と、を備える。
【0055】
発電装置300(400)で発電された2種類の交流電力は、ダイオードブリッジ510を通すことで整流され電気二重層キャパシター520(他の構造を持つキャパシターや二次電池等を用いても良い)に蓄えられ、直流として蓄積、出力される。静電誘導型発電を用いた発電装置300(400)は、構造により発電電圧が異なるが、尖頭値で概ね10〜30V程度の出力電圧で発電する。ダイオードブリッジ510に通常のシリコンダイオードを用いた場合、1.2V程度の順方向電圧の降下が発生するが、出力電圧が高いことから電力のロスを抑えて整流することが可能である。そして電気二重層キャパシター520に蓄えられた電力を元に、RF出力部530から電波の形で信号が出力される。
【0056】
この電子機器は、上述した実施形態の発電装置の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0057】
発電電極のみの発電装置を用いた場合と比べ、異なる発電電源を持つことにより、信頼性の高い電子機器としてのRFタグ500を実現できる。そのため、例えば交換が困難な場所にRFタグ500を埋め込む用途にも対応することが可能となる。また、1つの発電機構に不具合が生じた場合でも、その状態を信号として発信することができ、交換や修理内容を事前に知ることが可能となる。
【0058】
上記実施形態の発電装置300(400)を適用可能な電子機器は、RFタグ500に限定されない。例えば、腕時計、ペースメーカー、携帯型のゲーム機やタイヤ空気圧センサーなどの発電部として適用可能である。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0060】
(変形例1)
上記したように、可動基板201に反力を与える、圧電素子212b,213bによる発電機構1を有する板ばね212,213の形状は、図1、図4に示すような配置形態に限定されない。図6及び図7は、板ばね212,213の配置形態の変形例を示す模式平面図である。
例えば、図6に示すようにU字形状の板ばねを配置する形態であり、可動基板201と外枠100とにU字形状の両直線端部で接合されてなり、前記U字形状の曲線部内側に上下電極を備えた圧電素子が配置されていてもよい。これによれば、第1実施形態に比べて圧電素子の変形量を大きくして発電を行うことが可能である。
また、図7に示すように、第2実施形態と同様なラグビーボール形状(図4参照)を備え、可動基板201の可動方向に複数個を積層した配置であって、可動基板201と外枠100とに、ラグビーボール形状の円弧頂点部とが接合されてなり、前記ラグビーボール形状の円弧部内側の両面に上下電極を備えた圧電素子が配置されていてもよい。これによれば、第2実施形態よりも多くの圧電素子が配置されているので、発電効率をさらに高めることができる。
【0061】
(変形例2)
上記したように、可動基板201は、固定基板101に対して、1軸方向に移動することに限定されない。図8は、変形例2の発電装置の構成を示す平面図である。図8に示すように、変形例2の発電装置500は、固定基板101と、可動基板201を備える。
固定基板101は、固定基板本体101a、平面視でリング状のガイド103、第1発電電極105、を備える。
可動基板201は、可動基板本体201a、ガイド103の内側に位置するガイド203、集電電極210、第2発電電極211、を備えている。
可動基板201のガイド203は、固定基板101に設けられたガイド103と協働して、可動基板201を一平面内において第1の方向(X方向)と第1の方向と異なる第2の方向(Y方向)とに自在に移動させることができる構成となっている。例えば、可動基板201における第1の方向(X方向)と第2の方向(Y方向)のそれぞれの両端側に第2実施形態と同様なラグビーボール形状の板ばね212,213,214,215とこれに装着された圧電素子212b,212e,213b,213e,214b,214e,215b,215eとを配置する構成を採用できる。なお、圧電素子を挟んで配置される上下電極は図示省略した。
また、第1発電電極105と、これに対向配置される第2発電電極211は、いずれか一方に電荷を保持する膜を含み、可動基板201の移動に伴って、第1の方向と第2の方向とにおいて重なり合う面積が可変するように、平面視でジグザクに(蛇行して)配置されている。
すなわち、発電装置500は、平面方向(2軸)に稼動する可動基板201を有し、2軸方向の振動エネルギーを電気エネルギーに変化して発電する発電装置である。その為、可動基板201が1軸方向に稼動する場合に比べて、発電効率を上げることができる。
【符号の説明】
【0062】
100…外枠、101…固定基板、101a…固定基板本体、103…ガイド、105…第1発電電極、115…第1発電部、201…可動基板、201a…可動基板本体、203…ガイド、201…可動基板、210…集電電極、211…第2発電電極、215…第2発電部、212,213…支持部としての板ばね、212a,212d,213a,213d…上電極、212c,212f,213c,213f…下電極、212b,213d,213b,213d…圧電素子、300,400…発電装置、500…電子機器としてのRFタグ、510…ダイオードブリッジ、520…電気二重層キャパシター、530…RF出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極を備えた第1基板と
前記第1電極に対向するように配置された第2電極を備えた第2基板と、を有し、
前記第1電極と前記第2電極のいずれか一方は、電荷を保持する膜を含み、
前記第1基板と前記第2基板の少なくとも一方は、一平面上において第1の方向に移動可能であって、
前記第1基板と前記第2基板のうち、前記第1の方向に移動可能な基板に対して、前記第1の方向において、当該基板をはさんで両端に設けられた弾性変形する第1支持部と、
前記第1支持部の弾性変形に伴って変形する第1圧電素子と、を備えていることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記第1基板と前記第2基板の少なくとも一方は、一平面上において前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動可能であって、
前記第1基板と前記第2基板のうち、前記第2の方向に移動可能な基板に対して、前記第2の方向において、当該基板をはさんで両端に設けられた弾性変形する第2支持部と、
前記第2支持部の弾性変形に伴って変形する第2圧電素子と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記第1の方向に移動可能な基板と、前記第1圧電素子との間に前記第1支持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
前記第2の方向に移動可能な基板と、前記第2圧電素子との間に前記第2支持部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の発電装置。
【請求項5】
前記第1支持部または前記第2支持部が、板状の弾性体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発電装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191812(P2012−191812A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55173(P2011−55173)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)