説明

登記情報ファイルの生成方法および生成装置

【課題】取得した不動産登記情報をもとに、現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを生成する方法および装置を提供する。
【解決手段】不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、表題部、甲区、および乙区の各部の情報を不動産ごとに記録している不動産情報ファイルから、各部の情報を取得する。少なくとも2つのフィールドから構成される登記情報ファイルを準備し、1つのフィールドには、不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、他のフィールドには、(イ)その項目名に対応する主登記情報、および(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込む。各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、かつ削除し、また(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を対応する(イ)の情報に上書きして糾合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、不動産担保に関する契約書、不動産登記申請書等の書類、これらの書類に添付される物件表等の不動産登記関係書類を作成し、または確認する際に好適に利用可能な登記情報ファイルを、コンピュータを用いて生成する方法および装置に関し、特に、抹消された登記事項や既に失効した所有権に関する登記事項が含まれる不動産登記簿情報の内、現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを生成する、登記情報ファイルの生成方法および生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不動産登記(以下、単に「登記」と呼ぶことがある)は、民法、不動産登記法等のもとでの運営が多岐にわたるがために難解とされ、この登記情報を扱う当事者としては、司法書士が専門職として一字一句間違うことなく登記事務の職責を全うすべく精進している。しかし、登記事務の発注者が作成する担保契約書等は、準専門家とされる金融機関の融資関係担当者においてさえ誤りが多く見受けられる。わが国の民法・不動産登記法に裏打ちされた登記理論は完成された制度であるが、一般国民にとっては難解とされ馴染みが薄く、登記申請の需要の大半は、官僚の嘱託登記を除けば金融機関関係においての需要が圧倒的に多い。
【0003】
ところで、金融機関の融資のうち担保権に頼る割合も多く、その大半は、抵当権と根抵当権によって運営されているともいえる。金融機関は、不動産登記法所定の登記事項が記載されている不動産登記簿を、正確にかつ漏れなく解釈したうえで、担保契約書はもとより、抵当権または根抵当権の新規設定登記、全部抹消登記、一部抹消登記、変更更正登記、追加設定登記のための申請書類および物件表(物件目録、不動産目録、不動産明細等と呼ばれることもある)を正確に誤りなく作成することが必要である。
【0004】
本発明者は、不動産登記情報をデジタル化して関係機関に有効活用してもらうことを長年企図し、紙媒体の不動産登記簿、およびインターネット等の通信回線を介して取得した不動産登記情報を、直接デジタルデータとして入力し、あるいはOCR(Optical
Character Recognition)処理等の処理によりテキスト変換(文字コード化)して、デジタルデータベースを構成する技術を提案している(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−143058号公報
【特許文献2】特開2007−4407号公報
【特許文献3】特開2007−148475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不動産登記情報は、民法、不動産登記法等に基づき登載される難解な記載の連続である。受付年月日、受付番号、登記の目的、登記の原因、権利者その他の事項の全ての登記事項に意味があり、法律の定めるところによってその効力が決定付けられる。よって、不動産登記情報をもれなく解釈して、現に効力を有する登記情報を正確に把握する作業を効率化することは、金融機関にとって極めて重要な課題である。しかしながら、必要な法的知識と実務経験を有する担当者でなければ、かかる作業を短時間で正確に完結することは困難であった。また、現に効力を有する登記情報を正確に解釈できたとしても、その結果を後の利用のために伝達する媒体が規格化等により整備されていないため、不動産登記に関連する同時発生的な複数の事務処理への活用が阻害されていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、取得した不動産登記情報をもとに、現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを生成する、登記情報ファイルの生成方法および生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る登記情報ファイルの生成方法は、現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを、コンピュータを用いて生成する方法であって、
不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、少なくとも(1)不動産の表示(「表題部」という)、(2)所有権に関する事項(「甲区」という)、および(3)所有権以外の権利(抵当権、根抵当権)に関する事項(「乙区」という)の各部の情報を、不動産ごとに記録している不動産情報ファイルが、記憶手段に格納されており、
(a)少なくとも一の不動産を指定する識別情報が入力されたとき、前記指定された不動産に対応している各部の情報を、前記不動産情報ファイルから取得するステップと、
(b)少なくとも2つのフィールドから構成される登記情報ファイルを準備し、1つのフィールドには、前記不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、他のフィールドには、(イ)その項目名に対応する主登記情報、および(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込むステップと、
(c)表題部、甲区、および乙区の各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、かつ削除するステップと、
(d)前記(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する前記(イ)の情報に上書きして糾合するステップと、
(e)前記(c)の識別・削除ステップおよび(d)の糾合ステップにより編集された登記情報ファイルを出力するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本明細書における「現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイル」における「実質的に登載する」の用語は、登記情報ファイルには「現に効力を有する登記情報」以外の如何なる情報も含まれないことを意味するものではなく、現に効力を有する登記情報の識別に影響しない予備的情報(例えば、抹消登記として削除されるべき文字列を取消線で修飾した文字列、付記登記に従い糾合されるべき文字列を識別するための記号等)を含んでも良いことを意味する。また、本発明に従い生成される登記情報ファイルは、コンピュータに接続された表示装置またはプリンタに出力されても良く、コンピュータに接続された外部記憶装置に格納しても良く、あるいはコンピュータから外部システムに向けて転送されても良い。
【0010】
なお、本発明において、記憶手段に格納されている不動産情報ファイルは、以下のようにして準備することができる。例えば、財団法人民事法務協会の「インターネット登記情報提供サービス」サイト(http://www1.touki.or.jp/gateway.html)から、あらかじめオンラインで不動産登記情報(例えば、不動産登記法所定の登記の全部事項)を取得し、取得した不動産登記情報のうち少なくとも「表題部」、「甲区」、および「乙区」の各部の情報を読み取り、テキストデータ等の文字列データ(文字列に抹消事項を示す下線修飾が付されている場合、その下線修飾情報を含む。)に変換して、不動産ごとに記録することができる。なお、建物の登記の末尾に設けられた別の「表題部」に附属建物の表示があるときは、その附属建物の表示に関する情報も記録対象に含める。附属建物、敷地権について、登記情報ファイルへの記載漏れを防ぐためである。
【0011】
本発明の登記情報ファイルの生成方法の一つの実施形態において、前記(b)の書き込みステップが、前記(ウ)の情報を書き込むフィールドに、その項目に対応して登記情報ファイルに登載されている法的コメント情報を書き込むステップをさらに含んで良い。
【0012】
また、本発明の登記情報ファイルの生成方法の一つの実施形態において、前記(c)の識別・削除ステップが、
(f)甲区の情報を検索し、各種権利の保存登記、所有権移転、共有者全員持分全部移転、換地処分、および合併による所有権登記(「所有権移転登記等」という)に係る情報を識別する第1の識別ステップと、
(g)乙区の情報を検索し、最高順位番号の登記事項に係る情報を識別する第2の識別ステップと、
(h)第2の識別ステップにより識別された、乙区の最高順位番号の登記事項の登記受付日および受付番号をもとに、第1の識別ステップにより識別された甲区の所有権移転登記等のうちどれが直近最高位の登記(「基準所有権移転登記」という)かを決定するステップと、
(i)基準所有権移転登記より前の所有権移転登記等に係る情報を削除するステップと、
を含んで良い。
【0013】
また、本発明の登記情報ファイルの生成方法の一つの実施形態において、
(j)前記(c)の識別・削除ステップにおいて削除されるべき情報が前記フィールドから削除される前の中間ファイル、および/または前記(d)の糾合ステップにより糾合されるべき情報が上書きされる前の中間ファイルを出力するステップをさらに含んで良い。
【0014】
また、本発明の登記情報ファイルの生成方法の一つの実施形態において、
(k)不動産を指定する識別情報が入力されると、通信回線を介して登記情報提供者の情報処理装置に転送し、前記登記情報提供者の情報処理装置から、前記不動産についての公的な不動産登記情報を取得して、前記不動産情報ファイルを更新するステップをさらに含んで良い。
【0015】
上記したとおり、不動産登記情報(共同担保目録を含めて、不動産登記法所定の登記の全部事項)は、財団法人民事法務協会の「インターネット登記情報提供サービス」サイトから、オンラインで提供を受けることができる。同サイトには、登記所で保管する不動産登記情報が、アップデートされて蓄積されているため、インターネット等の通信回線を介して、同サイトに、不動産の特定に必要な識別情報(具体的には、土地であれば不動産番号、または所在および地番、建物であれば、不動産番号、または所在および家屋番号、さらに管轄登記所の情報)を転送して、最新の不動産登記情報を、リアルタイムで取得することが可能である。したがって、このように取得した不動産登記情報から、少なくとも「表題部」、「甲区」、および「乙区」の各部の情報を読み取り、テキストデータ等の文字列データ(上記の通り、文字列に抹消事項を示す下線修飾が付されている場合、その下線修飾情報を含む。)に変換して、不動産情報ファイルに追加または上書き記録することにより、不動産ファイルを更新することが可能である。
【0016】
他方、本発明の登記情報ファイルの生成装置は、現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを、コンピュータを用いて生成する装置であって、
不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、少なくとも(1)不動産の表示(「表題部」という)、(2)所有権に関する事項(「甲区」という)、および(3)所有権以外の権利(抵当権、根抵当権)に関する事項(「乙区」という)の各部の情報を、不動産ごとに記録している不動産情報ファイルが格納されている記憶手段と、
前記不動産情報ファイルから、指定された不動産に対応している各部の情報を取得する取得手段と、
少なくとも2つのフィールドから構成される登記情報ファイルを準備し、1つのフィールドには、前記不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、他のフィールドには、(イ)その項目名に対応する主登記情報、および(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込み、かつ各フィールドに書き込んだ情報を編集する編集手段と、
前記編集手段により編集された登記情報ファイルを出力する出力手段と、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記取得手段が、少なくとも一の不動産を指定する識別情報が入力されたとき、前記指定された不動産に対応している各部の情報を、前記不動産情報ファイルから取得し、
前記編集手段が、表題部、甲区、および乙区の各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、かつ削除し、および前記(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する前記(イ)の情報に上書きして糾合するように、前記取得手段および前記編集手段を制御すること
を特徴とする。
【0017】
さらに、登記情報ファイルの生成プログラムは、現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを生成する処理を、不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、少なくとも(1)不動産の表示(「表題部」という)、(2)所有権に関する事項(「甲区」という)、および(3)所有権以外の権利(抵当権、根抵当権)に関する事項(「乙区」という)の各部の情報を、不動産ごとに記録している不動産情報ファイルにアクセス可能なコンピュータに行わせるためのプログラムであって、
少なくとも一の不動産を指定する識別情報が入力されたとき、前記指定された不動産に対応している各部の情報を、前記不動産情報ファイルから取得し、
少なくとも2つのフィールドから構成される登記情報ファイルを準備し、1つのフィールドには、前記不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、他のフィールドには、(イ)その項目名に対応する主登記情報、および(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込み、
表題部、甲区、および乙区の各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、かつ削除し、
前記(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する前記(イ)の情報に上書きして糾合し、および
前記識別・削除および糾合により編集された登記情報ファイルを出力する処理を、コンピュータに行わせるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により自動生成される登記情報ファイルは、不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している表題部、甲区、および乙区の各部の情報について、項目名を登載するフィールドと、その項目名に対応する主登記情報のうち現に効力を有する情報のみを登載するフィールドとが区分された、簡潔かつ明確なフォーマットで構成されている。したがって、登記情報ファイルを用いて、表示装置等に表示させて閲覧することや、プリンタを介して紙媒体に印刷することにより、ユーザに対して、現に効力を有する登記情報をわかりやすく提示することができる。また、規格化し易いフォーマットを媒体として、現に効力を有する登記情報を外部システムに転送することができる。したがって、デジタル不動産情報を利用した事務処理の効率化、および同時発生的な複数の事務処理への活用が促進され、円滑な法務行政、司法手続、安定した国民の経済活動に資するものである。
【0019】
上記した本発明の目的および利点並びに他の目的および利点は、以下の実施の形態の説明を通じてより明確に理解される。もっとも、以下に記述する実施の形態は例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一つの実施の形態における登記情報ファイル生成装置の機能ブロック図である。
【図2】本実施形態に係るオンライン登記情報システム20のシステム構成図である。
【図3】不動産台帳処理、および登記情報ファイル(説明の便宜上「入力補助ファイル」と呼ぶことがある。)生成処理の全体フローを示すフローチャートである。
【図4】入力補助ファイル生成処理を開始するための画面例を示す図である。
【図5A】甲区の所有権移転登記等から基準所有権移転を決定し、他の登記の削除を判断する処理内容を説明する一例を示す図である。
【図5B】甲区の所有権移転登記等から基準所有権移転を決定し、他の登記の削除を判断する処理内容を説明する他の例を示す図である。
【図6A】オンライン登記情報の一例を示す図である。
【図6B】図6Aのオンライン登記情報を格納した不動産情報ファイルから取得した、項目名、その項目名に対応する主登記情報、その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、登記情報ファイルの3つのフィールドに、項目ごとに書き込み、表題部を編集後、削除されるべき情報がフィールドから削除される前の中間ファイルの内容を表す図である。
【図6C】図6Bのつづきである。
【図6D】甲区および乙区について、法律行為たる抹消登記により抹消された登記事項を識別して削除処理をした後、乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を、主登記に上書きして糾合する前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図6E】乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を主登記に上書きして糾合した後、甲区について、基準所有権移転登記を決定して削除処理をする前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図6F】編集済み登記情報ファイルの内容を表す図である。
【図7A】オンライン登記情報の別の例を示す図である。
【図7B】図7Aのオンライン登記情報を格納した不動産情報ファイルから取得した、項目名、その項目名に対応する主登記情報、その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、登記情報ファイルの3つのフィールドに、項目ごとに書き込み、表題部を編集後、削除されるべき情報がフィールドから削除される前の中間ファイルの内容を表す図である。
【図7C】図7Bのつづきである。
【図7D】甲区および乙区について、法律行為たる抹消登記により抹消された登記事項を識別して削除処理をした後、乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を、主登記に上書きして糾合する前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図7E】乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を主登記に上書きして糾合した後、甲区について、基準所有権移転登記を決定して削除処理をする前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図7F】編集済み登記情報ファイルの内容を表す図である。
【図8A】オンライン登記情報のさらに別の例を示す図である。
【図8B】図8Aのオンライン登記情報を格納した不動産情報ファイルから取得した、項目名、その項目名に対応する主登記情報、その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、登記情報ファイルの3つのフィールドに、項目ごとに書き込み、表題部を編集後、削除されるべき情報がフィールドから削除される前の中間ファイルの内容を表す図である。
【図8C】図8Bのつづきである。
【図8D】甲区および乙区について、法律行為たる抹消登記により抹消された登記事項を識別して削除処理をした後、乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を、主登記に上書きして糾合する前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図8E】図8Dのつづきである。
【図8F】乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を主登記に上書きして糾合した後、甲区について、基準所有権移転登記を決定して削除処理をする前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図8G】編集済み登記情報ファイルの内容を表す図である。
【図9A】オンライン登記情報のさらに別の例を示す図である。
【図9B】図9Aのオンライン登記情報を格納した不動産情報ファイルから取得した、項目名、その項目名に対応する主登記情報、その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、登記情報ファイルの3つのフィールドに、項目ごとに書き込み、表題部を編集後、削除されるべき情報がフィールドから削除される前の中間ファイルの内容を表す図である。
【図9C】図9Bのつづきである。
【図9D】甲区および乙区について、法律行為たる抹消登記により抹消された登記事項を識別して削除処理をした後、乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を、主登記に上書きして糾合する前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図9E】図9Dのつづきである。
【図9F】乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を主登記に上書きして糾合した後、甲区について、基準所有権移転登記を決定して削除処理をする前の、中間ファイルの内容を表す図である。
【図9G】編集済み登記情報ファイルの内容を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
以下の説明において、主に、本発明の実施の形態における登記情報ファイル生成装置を、ユーザ装置が通信回線を介して接続されるWebシステムとして構成した例、すなわち、ユーザが、Webシステムに通信回線を介して接続されているユーザ装置を操作して、Webシステムに、後述する不動産台帳処理および入力補助ファイル生成処理を実行させ、Webシステムが生成した入力補助ファイルをユーザ端末において受信し、ユーザ装置が備える表示装置に表示させて閲覧するシステムについて述べるが、これは一例であってそれに限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態における登記情報ファイル生成装置の機能ブロック図である。図1に示すように、登記情報ファイル生成装置1は、記憶部2、入力部4、制御部5、取得部6、編集部7、および出力部8から構成されている。
【0023】
記憶部2には、不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、(1)不動産の表示(「表題部」)、(2)所有権に関する事項(「甲区」)、および(3)所有権以外の権利(抵当権、根抵当権)に関する事項(「乙区」)の各部の情報を、不動産ごとに記録している不動産情報ファイルが、格納されている。
【0024】
入力部4は、制御部5に、後述する不動産台帳処理および入力補助ファイル作成処理を実行させるために、各種のデータおよび要求コマンドを制御部5に入力する。制御部5は、入力部4よりの入力に従い、記憶部2、取得部6、および編集部7を制御する。
【0025】
取得部6は、少なくとも一の不動産を指定する識別情報が入力部4から入力されたとき、制御部5の命令により、指定された不動産に対応している表題部、甲区、および乙区の各部の情報を、記憶部2に格納された不動産情報ファイルから取得する。
【0026】
編集部7は、少なくとも2つのフィールドから構成される入力補助ファイルを準備する。本実施の形態において、入力補助ファイルは、3つのフィールドから構成されている。編集部7は、制御部5の命令により、1つ目のフィールド(タイトル部のフィールド)に、不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、2つ目のフィールド(現行データ部のフィールド)に、(イ)その項目名に対応する主登記情報を書き込み、さらに、3つ目のフィールド(コメント部のフィールド)に、(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込む。また、編集部7は、制御部5の命令により、表題部、甲区、および乙区の各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、これらの削除を実行する。加えて、編集部7は、制御部5の命令により、(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する(イ)の情報に上書きして糾合する処理を実行する。
【0027】
出力部8は、制御部5の命令により、編集部7によって編集済みの入力補助ファイルを出力する。加えて出力部8は、制御部5の命令により、削除されるべき情報が上記の各フィールドから削除される前の中間ファイル、および/または糾合されるべき情報が上書きされる前の中間ファイルを出力する。
【0028】
他方、編集部7は、制御部5の命令により、書き込まれた甲区の情報を検索し、各種権利の保存登記、所有権移転、共有者全員持分全部移転、換地処分、および合併による所有権登記(「所有権移転登記等」)に係る情報を識別し、また、書き込まれた乙区の情報を検索し、最高順位番号の登記事項に係る情報を識別する。編集部7は、制御部5の命令により、識別された乙区の最高順位番号の登記事項の登記受付日および受付番号をもとに、識別された甲区の所有権移転登記等のうちどれが直近最高位の登記(「基準所有権移転登記」)かを決定する。そして、編集部7は、制御部5の命令により、基準所有権移転登記より前の所有権移転登記等に係る情報を削除する処理を実行する。
【0029】
図2は、本実施形態に係るオンライン登記情報システム20のシステム構成図である。ここで、オンライン登記情報システム20は、ユーザ装置10が通信回線30を介して接続されるWebシステムとして構成されている。なお、40は、オンラインで不動産登記情報を外部に提供している、財団法人民事法務協会の「インターネット登記情報提供サービス」サイトの情報処理装置である。
【0030】
ユーザ装置10は、ユーザが操作する情報処理端末装置であり、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)により構成することが出来る。すなわち、ユーザ装置10は、図示しないCPU、RAM、所定のプログラムおよびデータを格納したROM、ハードディスク等の記憶装置、表示装置、プリンタ、入力装置、および通信装置を有している。
【0031】
ユーザ装置10が備える、図示しないCPUは、記憶装置に格納されたプログラムを読み出し、RAMが有するワークエリアに展開して実行し、RAM、表示装置、プリンタ、入力装置、記憶装置、および通信装置の各部を制御する。
【0032】
ユーザ装置10が備える、図示しない記憶装置には、Webブラウザのプログラムおよびデータが格納されている。このWebブラウザは、オンライン登記情報システム20が提供する不動産台帳処理サービス12、および入力補助ファイル生成処理サービス14を利用可能に構成されている。すなわち、このWebブラウザは、オンライン登記情報システム20に不動産台帳処理のメイン・プログラムを実行させたときに、オンライン登記情報システム20から受信する後述する画面(図4)を、図示しない表示装置に表示させ、所望の入力補助ファイル生成処理のサブ・プログラムを実行させて、入力補助ファイルおよび中間ファイルを出力させるほか、ユーザ装置10から、オンライン登記情報システム20に対し、各種のデータおよび要求コマンドを送信する機能を提供する。具体的には、後述する図6B〜図6F、図7B〜図7F、図8B〜図8G、図9B〜図9Gに示すファイル内容を表示装置に表示させ、またはプリンタにより印刷させることができる。また、画面(図4)において、情報項目の入力または選択データ、各種処理の要求コマンドを、オンライン登記情報システム20に送信することができる。
【0033】
オンライン登記情報システム20は、不動産情報ファイルを格納する記憶装置22、CPU24、RAM25、および通信装置28を備える。本実施形態において、CPU24は、図示しないROMやハードディスクに格納されたプログラムを読み出して、RAM25のワークエリアに展開して実行する。本実施形態においては、特にCPU24は、不動産台帳処理のメイン・プログラム26および入力補助ファイル生成処理のサブ・プログラム27をRAM25のワークエリアに展開して実行することにより、オンライン登記情報システム20が、ユーザ装置10に対して、不動産台帳処理のサービス12と、入力補助ファイル生成処理のサービス14を提供する。
【0034】
通信回線30は、専用線、公衆電話回線、衛星通信回線等の各種通信回線や図示しない各種サーバ等を含んで構成され、その具体的様態は特に限定されない。また、ユーザ装置10、オンライン登記情報システム20、情報処理装置40と通信回線30との間には、ISP(Internet Service Provider)やNSP(Network Service Provider)、携帯電話事業者等が提供するサーバやファイアーウォール、ゲートウェイ装置等の各種機器が介在する構成としても良いが、ここでは図示しない。通信回線30の典型的な例としては、インターネットが挙げられるが、LAN(Local Area Network)であっても良いし、その他のネットワークであっても良い。
【0035】
記憶装置22に格納された不動産情報ファイルに記録される不動産情報は、好ましくは、財団法人民事法務協会の「インターネット登記情報提供サービス」サイトの情報処理装置40から取得した登記簿情報をテキスト変換処理等して記録するが、図2に示すように、スキャナ29により紙媒体の登記簿から情報を読み取り、これをOCR処理等によりテキスト変換して、記録するようにしても良い。
【0036】
図3は、不動産台帳処理および入力補助ファイル生成処理の全体フローを示すフローチャートである。図3、および図4を参照して、手順を説明する。まず、オンライン登記情報システムのメインメニュー(図示せず)から不動産台帳処理を選択して不動産台帳処理メイン・プログラム26を開始させ、不動産台帳処理画面(図示せず)を表示させる。
【0037】
ステップS301において、不動産台帳処理メイン・プログラム26は、不動産台帳処理画面(図示せず)における新規物件登録ボタン(図示せず)の押下に対応して、関与物件の簡単登録機能、簡単入力機能を提供する。特に、不動産台帳処理メイン・プログラム26は、登録情報一括請求機能ボタン(図示せず)の押下に対応して、不動産情報ファイルに記録されていない新規物件の不動産登記情報を、財団法人民事法務協会の「インターネット登記情報提供サービス」サイトからオンラインで取得する追加機能も提供する。この場合において特に、本発明者が先に特許文献1により提案した、登記事項のデジタル化における自動訂正機能を実行し、不動産情報ファイルに記録すると、過誤を殆んど無くすることができる。
ここで、オンラインで取得した不動産登記情報には、抹消事項を示す登記事項に下線修飾が付されている。本実施形態では、この下線修飾の情報を保持したままの各部の情報を不動産情報ファイルに記録し、記憶装置22に格納することができる。また、不動産台帳処理メイン・プログラム26は、一括PDF印刷ボタン(図示せず)の押下に対応して、不動産情報ファイルに登録されている既存物件を検索し、図4に示すとおり一覧表示する機能を提供する。
【0038】
図4を参照して、図4は、不動産台帳処理画面(図示せず)における一括PDF印刷ボタン(図示せず)の押下により表示させた、入力補助ファイル生成処理を開始するための画面100の一例である。画面100には、不動産情報ファイルに既に格納されている不動産物件が一覧表示される。画面100において、選択欄に一つまたは複数のチェックを入れることにより、特定の不動産物件を指定して、その不動産物件の入力補助ファイルを生成することができる。画面100の入力補助ファイル生成チェックボックス111をチェックして、実行ボタン112を押下することにより、入力補助ファイル生成サブ・プログラムを開始させる。
【0039】
図3のフローチャートに戻って、ステップS302において、入力補助ファイル生成処理サブ・プログラム27は、記憶装置22に格納された不動産情報ファイルから、指定された不動産物件に対応する表題部、甲区、乙区の各部の情報を取得する機能を提供する。
【0040】
次に、ステップS303において、物件表作成処理サブ・プログラム27は、表題部、甲区、乙区のすべてについての項目名を、タイトル部のフィールドに書き込み、その項目名に対応する主登記情報を現行データ部のフィールドに書き込み、さらに、付記登記された変更もしくは追加の情報をコメント部のフィールドに書き込む機能を提供する。かかる機能に基づく詳しい処理内容は、図面(図6B)を参照して後述する。
【0041】
ステップS304において、入力補助ファイル作成処理サブ・プログラム27は、下線修飾が付されている情報を削除する等により表題部を編集する機能を提供する。すなわち、フィールドに書き込まれる表題部の情報のうち下線修飾が付された文字列が識別され、これらがフィールドから削除されることにより、物件の表示に必要十分な表題部の項目名とその項目名に対応する登記情報のみが、入力補助ファイルに登載される。なお、表題部の項目としては、土地の場合は所在、地番、家屋番号、地目、地積の項目を、建物の場合は所在、家屋番号、種類、構造、床面積の項目を、また、附属建物があるときは、符号、種類、構造、床面積の項目を、さらに不動産番号があるときは不動産番号の項目も含めることができる。
【0042】
次いで、ステップ305において、入力補助ファイル作成処理サブ・プログラム27は、甲区の順位番号に下線修飾が付されている主登記、および、乙区の付記登記番号に下線修飾が付されている付記登記を、フィールドから削除する機能を提供する。この場合、甲区および乙区における抹消事項は、通常、設定等の登記と抹消登記とが対をなしている。したがって、フィールドに書き込まれる甲区および乙区の登記事項のうち、下線修飾が付された番号の主登記および付記登記を識別し、これらを削除する際に、対をなしている抹消登記を一括してフィールドから削除することができる。
【0043】
次に、ステップS306において、入力補助ファイル作成処理サブ・プログラム27は、乙区の現在効力のない付記登記を識別し、削除する機能を提供する。たとえば、登記が存在していても、期日の経過により期間満了になった買戻権は現在効力がない。そこで、乙区を検索し、期日の経過等により現在効力のない付記登記があるかどうかを識別し、そのような登記があったときは、コメント部に書き出してユーザの注意を促す。また、入力補助ファイル作成処理サブ・プログラム27は、ユーザによる確認指示の入力を経て、または当該確認指示を経ずに自動的に、当該付記登記を削除することができる。
【0044】
次に、ステップS307において、入力補助ファイル作成処理サブ・プログラム27は、甲区および乙区の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する主登記の情報に上書きして糾合する機能を提供する。後述するように、中間ファイルにおいて、付記登記された変更もしくは追加の情報は、コメント部のフィールドに書き込まれており、この情報を、現行データ部に書き込まれている、その付記番号の属する順位番号の主登記の情報に上書きして糾合する。
【0045】
また、ステップS308において、入力補助ファイル作成処理サブ・プログラム27は、甲区の基準所有権移転登記を決定し、基準所有権移転登記より前の所有権移転登記等に係る情報を削除する機能を提供する(「基準所有権移転登記」決定の処理の詳細とその意義については後述する)。登記が変遷するとき、乙区は、上記の通り登記と抹消登記が対をなしている等の理由から、削除対象を特定して削除処理を実行することは、比較的容易である。これに対して、甲区は、法的には既に全部の所有権が移転されているが法務局によって抹消の記録がされない事項が含まれている場合等があり、削除対象の特定が困難であるといえる。そこで、本発明の実施形態においては、以下のようにして甲区の削除対象を特定し、削除処理を実行する。
【0046】
まず、後述する中間ファイルにおいて、甲区の情報を検索し、各種権利の保存登記、所有権移転、共有者全員持分全部移転、換地処分、および合併による所有権登記(「所有権移転登記等」)に係る情報をすべて識別する。次に、同じ中間ファイルにおいて、乙区の情報を検索し、最高順位番号の登記事項に係る情報を識別する。続いて、識別された乙区の最高順位番号の登記事項の登記受付日および受付番号をもとに、識別された甲区の所有権移転登記等のうちどれが直近最高位の登記(「基準所有権移転登記」)かを決定する。そして、基準所有権移転登記より前の所有権移転登記等に係る情報を削除する。
【0047】
図5Aは、甲区の所有権移転登記等から基準所有権移転を決定し、他の登記の削除を判断する処理内容を説明する一例を示す図である。この例において、甲区の情報を検索し、「所有権移転登記等」として、順位番号1、2、6の所有権移転登記が識別された。他方、乙区の情報を検索して、順位番号1の根抵当権設定の登記が識別された。この根抵当権設定の登記受付日(H16.6.30)と受付番号(23799)をもとにして、甲区の所有権移転登記の直近最高位の登記が、順位番号6の所有権移転登記(登記受付日:H13.1.10、受付番号:313)であることが決定された。この登記を基準所有権移転登記として、その登記より前の、順位番号1および順位番号2の所有権移転登記は、削除して差し支えないことがわかる。「所有権移転登記等」の時点で残存持分はなく、登記の終了をもって100%の所有権が登記権利者にもたらされているからである。
【0048】
図5Bは、甲区の所有権移転登記等から基準所有権移転を決定し、他の登記の削除を判断する処理内容を説明する他の例を示す図である。この例において、甲区の情報を検索し、「所有権移転登記等」として、順位番号1の所有権移転の登記が識別された。順位番号2の所有権一部移転の登記、順位番号2の持分一部移転の登記は全部移転ではないので検索されない。他方、乙区の情報を検索して、順位番号1の根抵当権設定の登記が識別された。この根抵当権設定の登記受付日(S62.8.12)と受付番号(1616)をもとにして、甲区の所有権移転登記の直近最高位の登記が、順位番号1の所有権移転登記(登記受付日:S59.3.27、受付番号:5879)であることが決定された。この登記を基準所有権移転登記として、その登記より前の所有権移転登記は存在していないので、削除可能な登記がないことがわかる。以上のようにして、甲区において、基準所有権移転登記より前の所有権移転登記等に係る情報を特定してフィールドから削除する処理を実行することで、甲区の所有権登記のうち、真に重要な、現に効力を有する登記事項のみを、入力補助ファイルに登載することができる。
【0049】
ステップS308に続くステップS309において、入力補助ファイル作成処理サブ・プログラム27は、編集済み登記情報ファイルを、表示装置に表示し、プリンタを介して印刷し、または外部システムに転送する機能を提供する。
【0050】
次に、図6A以下を参照して、いくつかのオンライン登記情報の具体例をもとに、本発明の実施形態に従い、中間ファイル、そして登記情報ファイル(上記にならい「入力補助ファイル」と呼ぶこととする)が生成する過程を詳しく説明する。
【0051】
図6A、図7A、図8A、図9Aは、それぞれ、財団法人民事法務協会の「インターネット登記情報提供サービス」サイトから取得されるオンライン登記情報の具体例であり、特定の不動産物件に関する表題部、甲区、乙区の各部の情報を含む。既に述べた通り、Webシステム20では、かかる情報を不動産物件ごとに記録した不動産情報ファイルが、記憶装置22に格納されている。
【0052】
図6Bおよび図6C、図7Bおよび図7C、図8Bおよび図8C、並びに図9Bおよび図9Cは、それぞれ、図6A、図7A、図8A、図9Aのオンライン登記情報を格納した不動産情報ファイルから取得した、項目名、その項目名に対応する主登記情報、その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、入力補助ファイルの3つのフィールド(「タイトル部」、「現行データ部」、「コメント部」)に、項目ごとに書き込み、表題部を編集後、削除されるべき情報がフィールドから削除される前の中間ファイルの内容を表す図である。
【0053】
これら中間ファイルにおいて、タイトル部には、表題部の不動産物件の表示に係る項目名、甲区の所有権に係る登記事項の項目名、乙区の所有権以外の権利に係る登記事項の項目名が、項目ごとに書き込まれている。なお、タイトル部に書き込まれる情報には、各部の見出し(「表題部」、「甲区」、「乙区」の見出し)と、甲区および乙区における登記事項に割り当てられた順位番号の見出しも含む。
現行データ部には、タイトル部に書き込まれた項目名に対応する本登記の情報が、項目ごとに書き込まれている。なお、付記登記の情報うち、追加もしくは変更の情報以外の、登記の目的、登記受付日・受付番号、原因が、現行データ部に書き込まれている。
コメント部には、オンライン登記情報(図6A、図7A、図8A、図9A)のうち、権利者その他の事項の欄に記載されている法務局作成のコメント(例えば、「昭和63年法務省令第37号附則第2条第2項の規定により移記 平成3年10月24日」等の記載)が取得されて、関係する登記事項の近傍にそのまま書き込まれている。本実施形態において特に特徴的な部分は、コメント部に、付記登記された変更もしくは追加の情報が、対応する項目名の行に書き込まれている点である。例えば、図6Bにおいて、甲区の順位番号6、付記1号の付記登記は、「6番登記名義人表示変更」であり、コメント部には、変更後の住所表示が、タイトル部の「住所」の項目名の行に対応するように書き込まれている。
【0054】
なお、中間ファイルにおけるすべての付記登記の情報は、後述するように、対応する本登記に糾合されることによって消滅する性質の情報であり、付記登記によって、本登記のどの記載事項に対していかなる変更もしくは追加がされるのかについての、ユーザの注意を喚起する等の目的のために、現行データ部では、被追加対象もしくは被変更対象の文字列を菱形「◆」記号で囲むように書き込んでおり、コメント部では、連続する複数の黒丸「●」記号を、各付記登記の見出しの行に対応して付加するように書き込んでいる。
また、本実施形態において、中間ファイルには、オンライン登記情報(図6A、図7A、図8A、図9A)のうち、抹消事項とされている事項をすべて転写するよう書き込み、ただし、抹消事項の文字列には取消線修飾を付している。これは、ユーザがこの中間ファイルを見て、元のオンライン登記情報で抹消事項とされていた登記がどれであったかを確認する便宜を考慮したものである。なお、コメント部に書き込まれている上述の法務局のコメントは、法的に不要な情報であり削除して良い性質のものであるから、取消線修飾を付した文字列の形態で記述している。
【0055】
次に、図6D、図7D、図8Dおよび図8E、並びに図9Dおよび図9Eは、甲区および乙区について、法律行為たる抹消登記により抹消された登記事項を識別して削除処理をした後、乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を、主登記に上書きして糾合する前の、中間ファイルの内容を表す図である。図6Bおよび図6C、図7Bおよび図7C、図8Bおよび図8C、並びに図9Bおよび図9Cに示した、前段階の中間ファイルにおいて取消線修飾を付された文字列で記述されていた情報が、順位番号の見出しとともにすべて削除されている。この中間ファイルを示す図中に、矢印の記号とともに囲み説明文を追加したのは、要するに、コメント欄に書き込まれている、付記登記された変更もしくは追加の情報(コメント部に付された連続する黒丸記号によりそれを容易に判別可能である)を、本登記の特定の記載(これも、現行データ部において菱形記号により囲まれた文字列として容易に判別可能である)に上書きして糾合する処理が、本中間ファイルに対して実行されることを説明するためである。なお、図8Eでは、乙区の順位番号1、付記2号の付記登記が、3番根抵当権についての共同担保の追加であるため、順位番号3の本登記のタイトル部の項目名に「共同担保」を追加上書きし、現行データ部に、追加情報たる共担目録の記号番号を追加上書きする処理が実行されるものである。
【0056】
次に、図6E、図7E、図8F、および図9Gは、乙区について、付記登記された変更もしくは追加の情報を主登記に上書きして糾合した後、甲区について、基準所有権移転登記を決定して削除処理をする前の、中間ファイルの内容を表す図であり、図6F、図7F、図8G、および図9Gは、基準所有権移転登記を決定して削除処理を実行して編集済みの、入力補助ファイルの内容を表す図である。コメント部に書き込まれていた変更もしくは追加の情報は本登記に上書きされることによって、図6E、図7E、図8F、および図9Gのコメント部から消滅している。また、図6F、図8Gでは、その前段階の中間ファイル(図6E、図8F)において甲区に3つ存在した所有権の登記事項が、1つに削減されており、真に重要な、現に効力を有する所有権情報のみが、編集済みの入力補助ファイルに登載されていることがわかる。
【0057】
本実施形態では、中間ファイルを参照して、本発明に係る不動産情報ファイルの生成過程を具体的に説明したが、本発明において、これら中間ファイルを出力して表示装置に表示させ、あるいはプリンタに印刷させることは任意であり、一切表示も印刷もさせないで、最終結果たる編集済みの入力補助ファイル(例えば、図6F、図7F、図8G、および図9Gのようなフォーマットのもの)を直接出力させるようにしても良い。
また、図示した中間ファイルおよび編集済みの入力補助ファイルは、いずれも説明のための例示にすぎないものであり、ファイルの外観、形式を含めて、本発明における不動産情報ファイルをこれらに限定するものではない。
【0058】
本実施形態によると、以下のような利点がある。
(1)多くの登記事項が1筆の中に記載されている場合であっても、抹消等により不要となった登記が自動削除された、平易な登記情報の表示がなされるので、金融機関の担当者や専門家(例えば、司法書士、弁護士、土地家屋調査士等)による解釈作業の負担を大幅に軽減することができる。
(2)Webシステムにより、最新の不動産登記情報をリアルタイムで取得したうえで、現に有効な登記情報のみを迅速に表示させ、閲覧することができる。
(3)生成した登記情報ファイルを、担保管理システム、請求システム等の外部システムにエキスポートして利用させることにより、担保情報その他の登記情報を入力しおよび更新する手間を、大幅に軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば、不動産担保に関する契約書、不動産登記申請書等の書類、これらの書類に添付される物件表等の不動産登記関係書類を作成し、または確認する際に好適に利用される。
【符号の説明】
【0060】
1 登記情報ファイル生成装置
10 ユーザ装置
20 オンライン登記情報システム
22 記憶装置
24 CPU
25 RAM
28 通信装置
30 通信回線
40 登記情報提供者の情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを、コンピュータを用いて生成する方法であって、
不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、少なくとも(1)不動産の表示(「表題部」という)、(2)所有権に関する事項(「甲区」という)、および(3)所有権以外の権利(抵当権、根抵当権)に関する事項(「乙区」という)の各部の情報を、不動産ごとに記録している不動産情報ファイルが、記憶手段に格納されており、
(a)少なくとも一の不動産を指定する識別情報が入力されたとき、前記指定された不動産に対応している各部の情報を、前記不動産情報ファイルから取得するステップと、
(b)少なくとも2つのフィールドから構成される登記情報ファイルを準備し、1つのフィールドには、前記不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、他のフィールドには、(イ)その項目名に対応する主登記情報、および(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込むステップと、
(c)表題部、甲区、および乙区の各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、かつ削除するステップと、
(d)前記(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する前記(イ)の情報に上書きして糾合するステップと、
(e)前記(c)の識別・削除ステップおよび(d)の糾合ステップにより編集された登記情報ファイルを出力するステップと、
を含むことを特徴とする、登記情報ファイルの生成方法。
【請求項2】
前記(b)の書き込みステップが、前記(ウ)の情報を書き込むフィールドに、その項目に対応して登記情報ファイルに登載されている法的コメント情報を書き込むステップをさらに含むこと
を特徴とする、請求項1記載の登記情報ファイルの生成方法。
【請求項3】
前記(c)の識別・削除ステップが、
(f)甲区の情報を検索し、各種権利の保存登記、所有権移転、共有者全員持分全部移転、換地処分、および合併による所有権登記(「所有権移転登記等」という)に係る情報を識別する第1の識別ステップと、
(g)乙区の情報を検索し、最高順位番号の登記事項に係る情報を識別する第2の識別ステップと、
(h)第2の識別ステップにより識別された、乙区の最高順位番号の登記事項の登記受付日および受付番号をもとに、第1の識別ステップにより識別された甲区の所有権移転登記等のうちどれが直近最高位の登記(「基準所有権移転登記」という)かを決定するステップと、
(i)基準所有権移転登記より前の所有権移転登記等に係る情報を削除するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1記載の登記情報ファイルの生成方法。
【請求項4】
(j)前記(c)の識別・削除ステップにおいて削除されるべき情報が前記フィールドから削除される前の中間ファイル、および/または前記(d)の糾合ステップにより糾合されるべき情報が上書きされる前の中間ファイルを生成するステップ
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の登記情報ファイルの生成方法。
【請求項5】
(k)不動産を指定する識別情報が入力されると、通信回線を介して登記情報提供者の情報処理装置に転送し、前記登記情報提供者の情報処理装置から、前記不動産についての公的な不動産登記情報を取得して、前記不動産情報ファイルを更新するステップ、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の登記情報ファイルの生成方法。
【請求項6】
現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを、コンピュータを用いて生成する装置であって、
不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、少なくとも(1)不動産の表示(「表題部」という)、(2)所有権に関する事項(「甲区」という)、および(3)所有権以外の権利(抵当権、根抵当権)に関する事項(「乙区」という)の各部の情報を、不動産ごとに記録している不動産情報ファイルが格納されている記憶手段と、
前記不動産情報ファイルから、指定された不動産に対応している各部の情報を取得する取得手段と、
少なくとも2つのフィールドから構成される登記情報ファイルを準備し、1つのフィールドには、前記不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、他のフィールドには、(イ)その項目名に対応する主登記情報、および(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込み、かつ各フィールドに書き込んだ情報を編集する編集手段と、
前記編集手段により編集された登記情報ファイルを出力する出力手段と、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記取得手段が、少なくとも一の不動産を指定する識別情報が入力されたとき、前記指定された不動産に対応している各部の情報を、前記不動産情報ファイルから取得し、
前記編集手段が、表題部、甲区、および乙区の各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、かつ削除し、および前記(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する前記(イ)の情報に上書きして糾合するように、前記取得手段および前記編集手段を制御すること
を特徴とする、登記情報ファイルの生成装置。
【請求項7】
前記編集手段が、さらに、前記(ウ)の情報を書き込むフィールドに、その項目に対応して登記情報ファイルに登載されている法的コメント情報を書き込むこと
を特徴とする、請求項6記載の登記情報ファイルの生成装置。
【請求項8】
前記編集手段が、さらに、
甲区の情報を検索し、各種権利の保存登記、所有権移転、共有者全員持分全部移転、換地処分、および合併による所有権登記(「所有権移転登記等」という)に係る情報を識別し、
乙区の情報を検索し、最高順位番号の登記事項に係る情報を識別し、
識別された乙区の最高順位番号の登記事項の登記受付日および受付番号をもとに、識別された甲区の所有権移転登記等のうちどれが直近最高位の登記(「基準所有権移転登記」という)かを決定し、かつ
基準所有権移転登記より前の所有権移転登記等に係る情報を削除する処理を実行すること
を特徴とする、請求項6記載の登記情報ファイルの生成装置。
【請求項9】
前記出力手段が、さらに、
前記編集手段により削除されるべき情報が前記フィールドから削除される前の中間ファイル、および/または前記編集手段により糾合されるべき情報が上書きされる前の中間ファイルを生成する処理を実行すること
を特徴とする、請求項6から8のいずれかに記載の登記情報ファイルの生成装置。
【請求項10】
現に効力を有する登記情報のみを実質的に登載する登記情報ファイルを生成する処理を、不動産登記法所定の登記事項にそれぞれ対応している、少なくとも(1)不動産の表示(「表題部」という)、(2)所有権に関する事項(「甲区」という)、および(3)所有権以外の権利(抵当権、根抵当権)に関する事項(「乙区」という)の各部の情報を、不動産ごとに記録している不動産情報ファイルにアクセス可能なコンピュータに行わせるためのプログラムであって、
少なくとも一の不動産を指定する識別情報が入力されたとき、前記指定された不動産に対応している各部の情報を、前記不動産情報ファイルから取得し、
少なくとも2つのフィールドから構成される登記情報ファイルを準備し、1つのフィールドには、前記不動産情報ファイルから取得した(ア)項目名を書き込み、他のフィールドには、(イ)その項目名に対応する主登記情報、および(ウ)その項目名に対応して付記登記された変更もしくは追加の情報を、項目ごとに書き込み、
表題部、甲区、および乙区の各部について、抹消された登記事項に係る情報および/または効力を失った登記事項に係る情報を識別し、かつ削除し、
前記(ウ)の付記登記された変更もしくは追加の情報を、対応する前記(イ)の情報に上書きして糾合し、および
前記識別・削除および糾合により編集された登記情報ファイルを出力する処理を、コンピュータに行わせるための登記情報ファイルの生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【公開番号】特開2011−186787(P2011−186787A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51452(P2010−51452)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(599037632)有限会社コンチェルト (16)