説明

皮膚外用剤

【課題】 水溶性高分子及び/又は多価アルコールを配合した皮膚外用剤において、これらの成分所期の効果が十分に得られる皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】 次の成分(A)及び(B);(A)羅漢果抽出物、(B)水溶性高分子及び/又は多価アルコールの一種又は二種以上、を含有する皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には羅漢果抽出物と水溶性高分子及び/又は多価アルコールとを配合することにより、保湿及び肌あれ改善効果等を有する化粧料及び外用医薬品等の皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、乳液、クリーム、化粧水、パック、洗浄料、軟膏、分散液等の皮膚外用剤には、これらに所定の薬効を付与することを目的として薬効成分が加えられている。肌荒れを改善するためには保湿効果のある製剤を使用することが効果的であり、様々な保湿剤が使用されてきた。又、アルギン酸等に代表されるような水溶性高分子や、グリセリン等に代表されるような多価アルコールも、保湿効果の高いものとして汎用されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの保湿剤を安全性や使用感の面から可能な範囲で配合しても、必ずしもその効果は十分でなく改善が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、皮膚外用剤の薬効成分の効果を向上させるべく鋭意検討を行った結果、羅漢果抽出物と水溶性高分子及び/又は多価アルコールとを組み合わせれば、十分な肌荒れ改善効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0005】すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B)
(A)羅漢果抽出物(B)水溶性高分子及び/又は多価アルコールの一種又は二種以上を含有する皮膚外用剤を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の(A)成分である羅漢果抽出物は、モモルディカ グロスベノリイ;Momordica grosnoverii Swingle の果実を乾燥したものから、抽出溶媒を用いて抽出する。その調製法は特に限定されないが、例えば種々の適当な溶媒を用いて低温もしくは室温〜加温下で抽出される。
【0007】抽出溶媒としては、例えば水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール等の1種または2種以上を用いることができる。好ましい抽出方法の例としては、含水濃度20〜80%(v/v)のエチルアルコールまたは1,3−ブチレングリコールを用い、室温にて1〜5日間抽出を行ったのち濾過し、得られた濾液をさらに1週間ほど放置して熟成させ、再び濾過を行う方法が挙げられる。
【0008】本発明組成物における羅漢果抽出物の含有量は、乾燥固形分として好ましくは0.0005〜10重量%(以下単に「%」で示す)の範囲であり、より好ましくは0.005〜5%の範囲である。この範囲であれば、水溶性高分子の効果を相乗的に高めることができる。抽出液を使用する場合は、溶質である乾燥固形分の含有量が上記範囲内であれば、その抽出液濃度は何ら限定されるものではない。
【0009】一方、本発明の(B)成分である水溶性高分子は、以下に示すものが挙げられる。
【0010】すなわち、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムチン、デルマタン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸などのムコ多糖類及びその塩、アルギン酸及びその塩、アラビアゴム、寒天、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、キチン、加水分解キチン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、セルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボシキシメチルセルロース及その塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタアクリル酸アルキル共重合体等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0011】上記の(B)成分である水溶性高分子の配合量は、好ましくは0.1〜30%であり、より好ましくは0.1〜10%である。この範囲であれば、優れた保湿効果と肌あれ改善効果が得られる。なお、これらの水溶性高分子は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】(B)成分の水溶性高分子は、水や多価アルコール等にあらかじめ分散した処理物を用いると、製剤化がより効率的となる。
【0013】一方、本発明のもう一つの(B)成分である多価アルコールは、以下に示すものが挙げられる。
【0014】すなわち、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、キシロース、トレハロース、イノシトール、グルコース、ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】上記の(B)成分である多価アルコールの配合量は、好ましくは0.1〜30%であり、より好ましくは0.1〜10%である。この範囲であれば、優れた保湿効果と肌あれ改善効果が得られる。なお、これらの多価アルコールは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】本発明の皮膚外用剤は、常法に従い、羅漢果抽出物と水溶性高分子及び/又は多価アルコールとを通常の皮膚外用剤として知られる種々の形態の基剤に配合して調製することができる。
【0017】皮膚外用剤の形態の例としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、洗浄料、口紅・ファンデーションなどのメーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品等の化粧料、軟膏、分散液等の外用医薬品などとすることができ、また、これら皮膚外用剤の形態に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、精製水、低級アルコール、多価アルコール、油脂、粉体、界面活性剤、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、美容成分、防腐剤、香料等を用いることができる。
【0018】
【実施例】次に参考例及び実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制約されるものではない。
【0019】参考例1 羅漢果抽出物の製造モモルディカ グロスノベリイ;Momordica grosnoverii Swingle の果実を乾燥したものに、含水濃度50%(v/v)エチルアルコールを加え、室温にて3日間抽出を行った後濾過して羅漢果抽出物を得た。
【0020】実施例1表1に示す組成及び下記製法で乳液(本発明品1〜4、及び比較品1〜3)を調製し、その肌荒れ改善効果を調べた。この結果も併せて表1に示す。
【0021】(組成及び結果)
【表1】


【0022】(製法)
A.(6)、(7)、(10)及び(14)の各成分を加熱混合し、70℃に保つ。
B.(1)〜(5)、(11)及び(12)の各成分を加熱混合し、70℃に保つ。
C.上記Bを先のAに加えて混合し、成分(8)、(9)及び(13)を加えて均一に乳化し、30℃まで冷却して乳液を得た。
【0023】(試験方法)25〜50歳の健常人20名をパネルにして、実験的な荒れ肌を惹起する前の肌状態をマイクロスコープカメラで撮影し、下記基準によりそのスコアを求めた。実験的な荒れ肌は、上腕屈折部をエーテル、アセトン(1:1)混液で処理することにより惹起した。さらにその後は、7日間にわたって毎日、朝と夜の2回被験乳液を塗布し、荒れ肌惹起の1、3、5及び7日後に前記と同様肌状態のスコアを求めた。
【0024】
肌状態スコア: [スコア] [状態]
1 肌の皮構が不鮮明であり、角質のはがれが認められる。
2 肌の皮構がやや不鮮明であるかまたは一方向性が強い。
3 肌の皮構は認められるが、浅いかまたは一方向性が強い。
4 肌の皮構は認められるかまたはやや網目状である。
5 肌の皮構がはっきり認められるかまたはきれいな網目状であ る。
【0025】表1の結果に示されるように、本発明品に代表される羅漢果抽出物と水溶性高分子及び/又は多価アルコールを組み合わせた乳液は、これらを皮膚に適用することにより、肌の荒れに改善効果を示すことが明らかになった。
【0026】実施例2化粧水:次に示す下記処方及び製法で化粧水を調製した。
(処方) (%)
(1)グリセリン 6.0(2)1,3−ブチレングリコール 5.5(3)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン モノラウレート 1.5(4)エチルアルコール 9.0(5)羅漢果抽出物*1 5.0(6)ヒアルロン酸ナトリウム*2 0.5(7)エリスリトール*3 0.2(8)カルボキシメチルセルロース 0.1(9)防腐剤 適量(10)香料 適量(11)精製水 残量*1 参考例1で製造したもの*2 キューピー社製*3 日研化学社製
【0027】(製法)
A.成分(3)、(4)及び(6)〜(10)を混合溶解する。
B.成分(1)、(2)、(5)及び(11)を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、化粧水を得た。
【0028】実施例3乳液:次に示す下記処方及び製法で乳液を調製した。
(処方) (%)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタン モノステアレート 1.0(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビタン テトラオレエート 0.5(3)グリセリルモノステアレート 1.0(4)ステアリン酸 0.5(5)ベヘニルアルコール 0.5(6)スクワラン 8.0(7)羅漢果抽出物*1 3.0(8)キサンタンガム 0.3(9)防腐剤 0.1(10)ローカストビーンガム 0.1(11)水酸化ナトリウム 0.05(12)エチルアルコール 5.0(13)精製水 残量(14)香料 適量*1 参考例1で製造したもの
【0029】(製法)
A.成分(10)〜(13)を加熱混合し、70℃に保つ。
B.成分(1)〜(6)を加熱混合し、70℃に保つ。
C.BにAを加えて混合し、均一に乳化する。
D.Cを冷却後、成分(7)〜(9)、(14)を加え、均一に混合して乳液を得た。
【0030】実施例4クリーム:次に示す下記処方及び製法でクリームを調製した。
(処方) (%)
(1)マイクロクリスタリンワックス 4.0(2)セタノール 3.0(3)ワセリン 3.0(4)スクワラン 15.0(5)マカデミアナッツ油 10.0(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 1.5(7)ポリオキシエチレンソルビタン モノオレイン酸エステル(20E.O.) 1.0(8)グリセリン 5.0(9)1,3−ブチレングリコール 10.0(10)カラギーナン 0.1(11)羅漢果抽出物*1 1.0(12)コラーゲン*2 1.0(13)ムチン*3 1.0(14)防腐剤 0.2(15)香料 0.05(16)精製水 残量*1 参考例1で製造したもの*2 高研社製*3 一丸ファルコス社製
【0031】(製法)
A.成分(1)〜(7)、(14)及び(15)を混合し、加熱して70℃に保つ。
B.成分(8)、(9)、(11)及び(16)を混合し、加熱して70℃に保つ。
C.AにBを加え、混合した後、冷却して成分(12)、(13)を加えて、均一に混合して、クリームを得た。
【0032】実施例5ゲル軟膏:次に示す処方及び下記製法でゲル軟膏を調製した。
(処方) (%)
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(2)トリエタノールアミン 1.0(3)1,3−ブチレングリコール 10.0(4)羅漢果抽出物*1 0.1(5)ヘパリン*2 0.1(6)キシリトール*3 0.1(7)精製水 残量*1 参考例1で製造したもの*2 生化学工業社製*3 日研化学社製
【0033】(製法)
A.成分(1)及び(3)〜(7)を混合溶解する。
B.Aに成分(2)を加え均一にし、ゲル軟膏を得た。
【0034】実施例2の化粧水、実施例3の乳液、実施例4のクリーム及び実施例5のゲル軟膏は、いずれも経時安定性に優れ、これらを皮膚に適用することにより、皮膚のキメを整え、皮膚水分量が適度に保たれ、肌の「くすみ」等の防止、改善することができることができるとともに、肌のはり、つやが改善され、美しい肌とするものであった。
【0035】実施例6パック:次に示す処方及び下記製法でパックを調製した。
(処方) (%)
(1)ポリビニルアルコール 20.0(2)エチルアルコール 20.0(3)グリセリン 5.0(4)カオリン 6.0(5)羅漢果抽出物*1 0.2(6)マルチトール*2 0.2(7)防腐剤 適量(8)香料 適量(9)精製水 残量*1 参考例1で製造したもの*2 林原生物化学研究所社製
【0036】(製法)
A.成分(1)、(3)〜(6)及び(9)を混合し、70℃に加熱し、攪拌する。
B.成分(2)、(7)及び(8)を混合する。
C.上記Bを先のAに加え、混合した後、冷却してパックを得た。
【0037】実施例6のパックは、経時安定性に優れ、これを皮膚にすることにより、皮膚のキメを整え、皮膚水分量が適度に保たれ、肌の「くすみ」等の防止、改善することができるとともに、肌のはり、つやが改善され、美しい肌とするものであった。
【0038】実施例7シャンプー:次に示す処方及び下記製法でシャンプーを調製した。
(処方) (%)
(1)N−ヤシ油脂肪酸グルタミン酸トリエタノールアミン 25.0(2)ラウリン酸ジエタノールアミド 5.0(3)ミリスチン酸カリウム 5.0(4)ジステアリン酸エチレングリコール 2.0(5)ポリエチレングリコール400 15.0(6)ジメチルポリシロキサン 1.0(7)羅漢果抽出物*1 0.5(8)アルギン酸*2 0.02(9)加水分解キチン*3 0.02(9)防腐剤 適量(10)香料 適量(11)色素 適量(12)精製水 残量*1 製造例1で製造したもの*2 シグマ社製*3 一丸ファルコス社製
【0039】(製法)
A.成分(1)〜(5)及び(12)を加熱混合し、均一に溶解する。
B.Aを冷却し、成分(6)〜(11)を添加して均一に混合してシャンプーを得た。
【0040】実施例7のシャンプーは、経時安定性に優れ、また洗い流した後のツッパリ感がなく、保湿性に優れるもので、使用後のコンディショニング効果も良好であった。
【0041】
【発明の効果】以上記述したように、羅漢果抽出物と水溶性高分子及び/又は多価アルコールを組み合わせることにより、肌あれ防止効果を十分に発揮させることができ、また非常に高い保湿効果を得ることができる。従って、本発明の皮膚外用剤は美容や医療において極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の成分(A)及び(B)
(A)羅漢果抽出物(B)水溶性高分子及び/又は多価アルコールの一種又は二種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】 水溶性高分子がコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムチン、デルマタン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸から選ばれるムコ多糖類及びその塩、アルギン酸及びその塩、アラビアゴム、寒天、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、キチン、加水分解キチン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、セルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボシキシメチルセルロース及その塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタアクリル酸アルキル共重合体より選ばれた請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】 多価アルコールがグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、キシロース、トレハロース、イノシトール、グルコース、ポリエチレングリコールから選ばれた請求項1記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開平10−182408
【公開日】平成10年(1998)7月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−355682
【出願日】平成8年(1996)12月24日
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)