皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システム
【課題】皮膚の柔軟感を包括的かつ確実に測定する皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムを提供する。
【解決手段】触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施して各皮膚触感モデルの触感評価を示す触感データを生成するステップ(S1)と、皮膚触感モデルの夫々に対して接触子を接触させてモデル圧最大値を測定すると共に規定接触圧時におけるモデル振動周波数変化値を測定しモデル測定データを生成するステップ(S2)と、皮膚に接触子を接触させて皮膚圧最大値を測定すると共に皮膚振動周波数変化値を測定し皮膚測定データを生成するステップ(S3)と、皮膚測定データと同一或いは近似するモデル測定データを選定すると共に選定されたモデル測定データに対応する皮膚触感モデルを抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価するステップ(S4)とを有する。
【解決手段】触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施して各皮膚触感モデルの触感評価を示す触感データを生成するステップ(S1)と、皮膚触感モデルの夫々に対して接触子を接触させてモデル圧最大値を測定すると共に規定接触圧時におけるモデル振動周波数変化値を測定しモデル測定データを生成するステップ(S2)と、皮膚に接触子を接触させて皮膚圧最大値を測定すると共に皮膚振動周波数変化値を測定し皮膚測定データを生成するステップ(S3)と、皮膚測定データと同一或いは近似するモデル測定データを選定すると共に選定されたモデル測定データに対応する皮膚触感モデルを抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価するステップ(S4)とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムに係り、特に皮膚の柔軟感を定量的に評価する皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、皮膚の粗さ,硬さ,柔軟感等の皮膚性状評価に関する研究が進められている。従来における皮膚の柔軟感を評価する方法としては、皮膚表面の測定部分に圧縮ガスを噴射すると共に、噴射により被測定部位の表面変位を変位計等で測定し、噴射からの時間と表面変位との関係から皮膚表面の柔軟性を測定する方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、この方法に加え、ガスの噴射により皮膚表面に発生した凹部の深さを測定することにより、皮膚の表面硬さと内部固さを評価する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108794号公報
【特許文献2】特開2008−029578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、産業応用の観点より皮膚の柔軟感の研究は、特に化粧品業界から注目が集まっている。例えば、化粧品を塗布することによって得られる皮膚の柔軟感は、化粧品の使用感を差別化するための1つの要素である。
【0006】
しかしながら、学術的に研究されている「やわらかさ感」という性状評価以外にも、皮膚の柔軟感については経験的に用いられている「はり感」や「ふっくら感」という性状評価がある。このような「はり感」や「ふっくら感」については、従来の皮膚の柔軟感評価方法では評価されておらず、よって従来の柔軟感評価方法では柔軟感に対する包括的な評価を行うことができないという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、皮膚の柔軟感を包括的かつ確実に測定しうる皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、第1の観点からは、
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施し、該皮膚触感モデルの夫々の触感評価を求め触感データを生成するステップと、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して接触子を接触させて接触圧の最大値であるモデル圧最大値を測定すると共に、前記皮膚触感モデルに印加した振動の規定接触圧時におけるモデル振動周波数変化値を測定し、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データを生成するステップと、
被測定部位の皮膚に接触子を接触させて接触圧の最大値である皮膚圧最大値を測定すると共に、前記皮膚に印加した振動の振動数と規定接触圧の印加時における皮膚の振動数の差である皮膚振動周波数変化値を測定し、前記皮膚圧最大値と前記皮膚振動周波数変化値とを含む皮膚測定データを生成するステップと、
前記皮膚測定データと同一或いは近似する前記モデル測定データを選定すると共に、選定された該モデル測定データに対応する皮膚触感モデルを抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価するステップとを有する皮膚触感評価方法により解決することができる。
【0009】
また上記の課題は、第2の観点からは、
被測定部位の皮膚に接触させる接触子と、該接触子を前記皮膚に接触させた時の接触圧を測定する接触圧測定部と、前記皮膚に対して振動を印加する振動印加部と、前記皮膚からの振動を測定する振動測定部とを有する皮膚性状検出センサと、
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施することにより得られた、皮膚触感モデルの夫々の触感評価を示す触感データが格納された触感データ記憶手段と、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して前記皮膚性状検出センサを用いて予め測定された、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データが格納されたモデル測定データ記憶手段と、
被測定部位となる皮膚を前記皮膚性状検出センサを用い、当該皮膚の接触圧の最大値である皮膚圧最大値を求めると共に規定接触圧時における皮膚振動周波数変化値を求め、該皮膚圧最大値及び前記皮膚振動周波数変化値の値と同一或いは近似するモデル測定データを前記触感データ記憶手段から選定する選定手段と、
該選定手段で選定されたモデル測定データの触感評価を前記触感データ記憶手段から抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価する評価手段とを有することを特徴とする皮膚触感評価システムにより解決することができる。
【発明の効果】
【0010】
開示の発明によれば、皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施する際、例えば「やわらかさ感」ばかりでなく、「はり感」や「ふっくら感」に対しても官能評価を行っておくことにより、皮膚の触感評価を幅広く包括的に行うことが可能となる。また、皮膚の測定事項は、接触子を皮膚に押圧し振動印加した際の接触圧と振動周波数変化のみであり、また被験者に負荷を与えることなく皮膚の触感評価を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である皮膚触感評価方法の工程図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である皮膚触感評価システムの構成図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である皮膚触感評価方法で用いる皮膚触感モデルを示す図である。
【図4】図4は、65種類の皮膚触感モデルを示す図である。
【図5】図5は、官能評価試験の方法を説明するための図である。
【図6】図6は、官能評価試験により求められた触感データ(やわらかさ感)の一例を示す図である。
【図7】図7は、官能評価試験により求められた触感データ(はり感)の一例を示す図である。
【図8】図8は、官能評価試験により求められた触感データ(ふっくら感)の一例を示す図である。
【図9】図9は、図6〜図8に示す触感データを一つにまとめた図である。
【図10】図10は、皮膚性状検出センサにより皮膚触感モデルを測定している状態を示す図である。
【図11】図11は、振動周波数変化を測定する方法を説明するための図である。
【図12】図12は、皮膚触感モデルを振動測定素子により測定した結果の一例を示す図である。
【図13】図13は、皮膚触感モデルをロードセルにより測定した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態である皮膚触感評価方法の工程図であり、図2は本発明の一実施形態である皮膚触感評価システムの構成図である。本実施形態に係る皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムは、種々ある皮膚の触感の内、特に皮膚の柔軟感の客観的な感性評価を目指したものである。
【0014】
また、皮膚の柔軟感の指標としては、「やわらかさ感」,「ふっくら感」,「はり感」を挙げ、この各指標について測定及び評価を行うことにより、皮膚の客観的な柔軟感を求めることを試みた。更に、本実施形態では、皮膚の柔軟感を評価するにあたり、個々に異なる種々の柔軟感を有する複数の皮膚触感モデル20(図3及び図4参照)を作製し、これを用いて柔軟感の評価を行うことを試みた。
【0015】
本実施形態に係る皮膚触感評価方法は、図1に示すように、触感データの作成を行うステップ1(図では、ステップをSと略称する)、モデル測定データの作成を行うステップ2、皮膚の測定及び皮膚測定データを作成するステップS3、及び評価処理を行うステップ4とを有している。また、皮膚触感評価システム1は、大略すると皮膚性状検出センサ2、接触圧演算部9,振動周波数変化演算部10,選定部11,モデル測定データ記憶部12,評価部13,触感データ記憶部14,及び出力部15等により構成されている。
【0016】
図1に示す触感データの作成を行うステップ1では、柔軟感の異なる複数種の皮膚触感モデル20の夫々に対して官能評価試験(図5参照)を実施し、皮膚触感モデル20の夫々の触感評価を示すデータである触感データ(図6〜図8参照)の作成を行う。この触感データは、後述するように皮膚触感評価システム1の触感データ記憶部14に格納される。
【0017】
また、モデル測定データの作成を行うステップS2では、後述する皮膚触感評価システム1を用いて、皮膚触感モデルの夫々に対して接触子3を接触させて接触圧の最大値であるモデル圧最大値を測定する。また、接触子3に予め所定の振動を印加しておき、接触子3を規定接触圧で押圧した時における振動の変化の値(モデル振動周波数変化値)を測定する。そして、求められたモデル圧最大値とモデル振動周波数変化値とを対応付けすることによりモデル測定データを生成する。このモデル測定データは、後述するように皮膚触感評価システム1のモデル測定データ記憶部12に格納される。
【0018】
また、皮膚の測定及び皮膚測定データを作成するステップ3では、実際に皮膚の柔軟感を評価しようとする被験者の皮膚Aに皮膚触感評価システム1の接触子3を接触させて接触圧の最大値である皮膚圧最大値を測定すると共に、皮膚Aに印加した振動の振動数と規定接触圧の印加時における振動数の差である皮膚振動周波数変化値を測定する。そして、このようにして求められた皮膚圧最大値と皮膚振動周波数変化値とを対応付けすることにより皮膚測定データを生成する。
【0019】
また、評価処理を行うステップ4では、ステップ3で求められた皮膚測定データとステップ2で求められたモデル測定データを比較し、ステップ3で作成された皮膚測定データと同一或いは近似するモデル測定データを選定する。次に、選定されたモデル測定データに基づき、これに対応する皮膚触感モデル20を抽出する。ステップ1において官能評価試験を行うことにより、個々の皮膚触感モデル20の柔軟感は得られている。従って、被験者の皮膚Aの柔軟感は、ステップ4で選定された皮膚触感モデル20の柔軟感と評価することができる。
【実施例】
【0020】
次に、上記した皮膚触感評価方法の具体的な実施例について説明する。
【0021】
先ず、ステップ1の触感データを作成する具体的な方法について説明する。触感データを作成するには、皮膚触感モデル20を作製する。この皮膚触感モデル20の作製するに際し、本発明者は「人間が体験する皮膚柔軟感は、皮膚表層の柔軟性と、ベース部と表層を合わせた全体の柔軟性の2つに影響される」という作業仮説を立てた。この仮説を検証するために、図3に示されるように表層部21とベース部22とにより構成される柔軟性の異なる2層構造を持つ単純化した皮膚触感モデル20を作製し、各皮膚触感モデル20が与える触感について官能評価試験を行った。
【0022】
表層部21及びベース部22は、いずれもウレタン樹脂により形成した。表層部21のウレタン基剤の柔軟性は一定とし、その厚さを5段階に変化させることにより表層部21の柔軟感を変化させた。本実施形態では、7μm、15μm、30μm、45μm、60 μmの各厚さの表層部21を作製した。
【0023】
また、ベース部22のウレタン樹脂は、ウレタン基剤の架橋重合度(以下、重合度と呼ぶ)を変化させることにより柔軟感を変化させた。本実施形態では、重合度を19〜25の間で0.5刻みで変化させることにより、13種類の柔軟感を有するベース部22を作製した。よって、表層部21とベース部22の組み合わせとしては、(膜厚5種類)×(重合度13種類)で、合計で65種類の異なる柔軟感を有する皮膚触感モデル20(図4参照)を作製し、これを以下で述べる評価実験に使用した。
【0024】
次に、上記のように作製した65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対して官能評価試験を実施する。本実施形態では、パネラ(実験参加者)として男女各20名ずつ、合計計40名に参加してもらった。そして、図5に示すように各パネルに上述の各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)に触れてもらい、各々に対して「やわらかさ感」,「はり感」「ふっくら感」の3感性に「あてはまるサンプル」,「あてはまらないサンプル」を抽出してもらった。
【0025】
具他的な官能評価試験手順は次の通りである。
(1)各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)を、温冷庫を利用して人間の皮膚温(32度)相当に温める。
(2)パネルの前に、65種類の各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)を並べる。
(3)次の3項目のいずれかについて3分間以内で、該当するサンプルをできるだけ早く正確に選び出させる。ただし、判断しかねるものについては、その場に残しておくこととする。
【0026】
また、評価項目は下記の3種類とした。
【0027】
(a)やわらかさ感がある、やわらかさ感がない
(b)はり感がある、はり感がない
(c)ふっくら感がある、ふっくら感がない
上記のように実施した官能評価試験の結果を、上記の表層部21の厚さ毎(7μm、15μm、30μm、45μm、60 μm毎)に図6〜図8に示す。
【0028】
図6〜図8において、横軸は皮膚触感モデル20のベース部22の柔軟性の指標である重合度を示している。横軸の数字が小さいほうが柔軟性が高く(やわらかい)、大きいほうが柔軟性が低い(硬い)サンプルである。また縦軸は、上記した(a)〜(c)の項目に対する回答の頻度を示している。即ち、図6を例に挙げると、縦軸はやわらかさ感があると回答された頻度を示している。
【0029】
先ず、図6の「やわらかさ感」の評価に注目する。「やわらかさ感」の評価では、ベース部22の重合度が20以下で「やわらかさ感」があると回答された。また、表層部21の膜厚を増やした場合、即ち表層部21の柔軟性を下げた場合においても、重合度が20以下で「やわらかさ感」があると回答される傾向は変わらなかった。
【0030】
次に、図7の「はり感」の評価に注目する。「はり感」の評価では、表層部21の膜厚が7μmであり、重合度が22である時に「はり感がある」との回答が高頻度で得られた。また表層部21の膜厚を変化させても、重合度が中程度(重合度22前後)である場合に「はり感がある」との回答が高頻度で得られた。この傾向は表層部21の膜厚が30μm以上に増えても共通に見られたが、最も「はり感」がある皮膚触感モデル20は膜厚が7μmで重合度が22の場合であった。
【0031】
次に、図7の「ふっくら感」の評価に注目する。「ふっくら感」の評価では、重合度が20付近で「ふっくら感」が高い頻度で体感されやすいことがわかった。また、表層部21の膜厚を7μmから徐々に上げてゆくと、30μmの時に75%を超える高い回答率が得られた。更に、膜厚を45μm以上に増加すると、「ふっくら感」を感じるという回答率は下がった。
【0032】
上記の官能評価試験の結果、65種類の各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の中から、「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」を高頻度で与える皮膚触感モデルを見つけることができた。図9は、図6〜図8に示した結果を1つのグラフにまとめたものである。図9において、横軸は皮膚触感モデル20を構成するベース部22のウレタン重合度を示し、縦軸は表層部21の膜厚を示している。太線で囲ったエリアは、各官能評価試験項目「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」があると75%以上の確率で選ばれたサンプルの位置を示す。
【0033】
同図から明らかなように、重合度が小さい場合には「やわらかさ感」が高く、重合度が22 付近に「はり感」が感じられる領域があることがわかった。また、重合度が20で膜厚が30μm付近に「ふっくら感」が体感される領域があることがわかった。これは、前記した「人間が体験する皮膚柔軟感は、皮膚表層と全体の柔軟性の2つに影響される」という仮説が検証されたことを意味する。
【0034】
上記した官能評価試験により、65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対し、「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」の評価を得ることができる。本実施形態では、このようにして求められた個々の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)に対する官能評価の結果を触感データという。この官能評価の結果を示す触感データは、図2に示す皮膚触感評価システム1の触感データ記憶部14に格納される。
【0035】
次に、図1に示すステップ2のモデル測定データを作成する具体的な方法について説明する。
【0036】
上記したステップ1では、65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対して官能評価試験を行うことにより、個々の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)に対して「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」を示す触感データを作成した。ステップ2では、65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対し、図1に示す皮膚性状検出センサ2を用いて測定対象の有する客観的な物性値の測定を行った。
【0037】
ところで、前記したステップ1の結果は、人が体感する皮膚柔軟感を定量化するためには皮膚全体の柔軟性だけでなく、皮膚の表層の柔軟性も同時に計測することが必要であることを示唆している。そこで本実施形態に係る皮膚性状検出センサ2は、測定対象(ステップ2では、皮膚触感モデル20が測定対象となる)の表層及び全体の両方の柔軟性が計測できるよう構成したことを特徴としている。
【0038】
以下、皮膚性状検出センサ2の構成について説明する。皮膚性状検出センサ2は、図2及び図10に示されるように、接触子3、ロードセル4、ピエゾ振動子5、及び振動測定素子6等を有した構成とされている。
【0039】
接触子3はピン状とされており、その直径が1.0mm以上2.0mm以下に設定されている。この接触子3は、測定時において先端部(図中下端部)が測定対象に接触(押圧)される。ロードセル4は、接触子3の測定対象に接触される端部と反対側の端部に配設される。このロードセル4は例えば歪みゲージであり、接触子3を測定対象に接触させ押圧した時の接触圧を測定する。また本実施形態のロードセル4は、0〜5000mNの測定が可能なものを選定している。
【0040】
ピエゾ振動子5は、接触子3に対して振動印加可能な構成で取り付けられている。このピエゾ振動子5は、図示しない振動制御回路(位相シフト回路)に接続されている。そして、振動制御回路によりピエゾ振動子5の発生する振動は、接触子3を共振振動させる周波数に制御される。
【0041】
振動測定素子6は、ピエゾ振動子5と共に接触子3に取り付けられている。このピエゾ振動子5は、接触子3の振動を測定可能な構成で取り付けられている。このピエゾ振動子5及び振動測定素子6は、いずれも機械−電気変換機能を有する圧電素子を用いることができる。
【0042】
ロードセル4で検出された接触圧の測定信号(接触圧信号という)は、図2に示すように、バンドパスフィルタ(BPF)7により帯域制限された後に接触圧演算部9に送られる。接触圧演算部9では、ロードセル4から送られた接触圧信号から接触圧を演算する。
【0043】
また、振動測定素子6で検出された共振振動数の変化を示す測定信号(振動周波数変化信号という)は、BPF8により帯域制限された後に振動周波数変化演算部10に送られる。振動周波数変化演算部10では、振動測定素子6から送られた振動周波数変化信号から振動数の変化値を演算する。この演算された各値は、出力部15から出力することが可能である。尚、選定部11及び評価部13の動作については、説明の便宜上後述するものとする。
【0044】
上記構成とされた皮膚性状検出センサ2において、接触子3が測定対象に接していない状態でピエゾ振動子5を駆動すると、接触子3は共振状態となる(共振周波数をf0とする)。次に、この共振状態にある接触子3の先端部を測定対象に接触させると、測定対象の音響インピーダンスに依存して接触子3の振動数が変化する。
【0045】
即ち、接触子3が測定対象に接触することにより対象物体を伴った共振系が形成され、よって共振周波数が変化する(変化後の共振周波数をf1とする)。このf0からf1への共振周波数の変化は、振動測定素子6により測定することができる。
【0046】
ピエゾ振動子5で測定対象に印加された振動は、主に測定対象の表面を伝搬する。また、測定対象を伝搬する振動は、測定対象の物性である柔軟性に影響を受ける。よって、振動測定素子6で測定される振動周波数変化は、測定対象の主に表面性状(即ち、表面の柔軟性)に起因した変化である。このため、振動測定素子6を用いて接触子3が測定対象に接触した際の振動の周波数の変化を測定することにより、測定対象の表面の柔軟性を測定することができる。
【0047】
これに対し、接触子3を測定対象に接触させ押圧した際、測定対象はその表面ばかりでなく、それよりも深層をも変位させる(図10に示す例を参照)。またロードセル4により測定される接触圧は接触子3を測定対象に押圧した際の反力であり、その値は測定対象の柔軟性に影響を受ける。よって、ロードセル4で測定される接触圧は、測定対象の表面ばかりでなく、その深層をも含めた全体的な柔軟性を示した測定値となる。
【0048】
よって、皮膚性状検出センサ2を用いて測定対象を測定した場合、ロードセル4により測定対象の全体の柔軟感を測定することができ、また振動測定素子6により測定対象の表面の柔軟感を測定することができる。
【0049】
ステップ2では、上記構成及び特性を有する皮膚性状検出センサ2(皮膚触感評価システム1)を用いると共に、各皮膚触感モデル20を測定対象として測定を行う。またモデル測定データとは、本ステップにおいて皮膚性状検出センサ2を用いて皮膚触感モデル20を測定することにより得られたデータをいうものとする。
【0050】
皮膚性状検出センサ2を用いた皮膚触感モデル20の柔軟性の測定は、次のようにして行う。本実施形態では、先ずステップ1で使用した65個の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の内、異なる膜厚5種類と、異なる重合度7種類を組み合わせることにより35種類の皮膚触感モデル20を適宜選定した。そして、選定された皮膚触感モデル20n(n=1〜35)に対し、皮膚性状検出センサ2を用いてそれぞれ30回ずつ測定処理を実施した。具体的な測定処理手順を以下説明する。
【0051】
35種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の内、測定を行う一つの皮膚触感モデル20を皮膚性状検出センサ2の下に置き、接触子3を皮膚触感モデル20に接触させると共に2mm接触子3を進入させることにより、皮膚触感モデル20に余圧を印加する。この時にロードセル4から得られる接触圧の変化、及び振動測定素子6から振動周波数変化を測定する。この測定処理は、1個の皮膚触感モデル20に対して10回ずつ実施した。以上の計測を、35個の各皮膚触感モデル20n(n=1〜35)のサンプルに対し3日間連続して実施し、よって合成で1050回(35個×10回×3日)の測定を行った。
【0052】
次に、上記のようにして皮膚性状検出センサ2(ロードセル4及び振動測定素子6)から出力された各測定信号の処理について説明する。前記のように、ロードセル4から出力された接触圧信号及び振動測定素子6から出力された振動周波数変化信号は、BPF7,8でフィルタ処理が実施される。BPF7,8は、いずれもカットオフ周波数が1Hzのフィルタである。このフィルタ処理を行うことにより、外乱の除去を図ることができ測定精度の向上が図られている。
【0053】
図11は、皮膚性状検出センサ2により皮膚触感モデル20を測定した結果の一例を示している。図11(A)はロードセル4から出力された接触圧信号から得られた接触圧を示している。また、図11(B)は振動測定素子6から出力された振動周波数変化信号から得られた振動周波数変化を示している。尚、各図において横軸は時間を取っている。
【0054】
測定時において、接触子3は下方(図2に矢印で示す方向)移動することにより、皮膚触感モデル20の表層部21に接触する。そして更に下方に移動することにより、図10に示すように接触子3は表層部21及びベース部22の双方を押圧して変形させた状態となる。その後、接触子3は上方に移動を開始し、やがて皮膚触感モデル20から離間した状態となる。図11は、この接触子3の一回の上下移動を行う間に、ロードセル4及び振動測定素子6から出力される信号の変化を時間の経過と共に示している。
【0055】
先ず、図11(A)に示す接触圧に注目する。接触力は、接触子3が皮膚触感モデル20と接触し押圧することにより上昇し、約2000ms経過した時点でピークとなる(図11(A)に矢印Aで示す)。その後、接触子3の皮膚触感モデル20からの離脱方向への移動に伴い、接触力は漸次減少する。
【0056】
本実施形態に係る測定方法では、接触子3を皮膚触感モデル20に押し込んだ際、ロードセル4の出力から得られる最大測定値を接触圧とする。よって図11に示す例では、矢印Aで示す接触値である130mNが、当該皮膚触感モデル20の接触圧となる。
【0057】
前記したようにロードセル4で測定される接触圧は、皮膚触感モデル20の表層部21及びベース部22の双方の柔軟性を反映した値である。よって、接触子3を最も深く押し込んだ状態である矢印Aで示すピーク値が、最も表層部21及びベース部22の性状を反映した接触力となる。
【0058】
次に、図11(B)に示す振動周波数変化に注目する。前記したように、振動測定素子6は皮膚触感モデル20の表層部21の柔軟性を測定するものである。従って、接触圧のように矢印Aで示す押し込みのピークの状態で測定処理を行うと、その測定精度が低下することが考えられる。よって、どのタイミングで振動周波数変化を測定するかが問題となる。
【0059】
振動周波数変化を測定するタイミングとして、例えば図11(B)に示す時間経過に伴う振動周波数変化の値の変化において、線形性の高い領域を選定して測定を行うことが考えられる。しかしながら、35個の皮膚触感モデル20において線形性の高い領域は一定ではなく、また測定を行う測定者の人的誤差が混入する可能性もある。
【0060】
そこで本実施形態に係る測定方法では、客観的な測定タイミングを担保するため、接触子3を皮膚触感モデル20に押し込んだ際、ロードセル4の測定値が30mNであった瞬間の、振動測定素子6から出力される振動周波数の変化量を振動周波数変化値とすることとした。具体的には、図11に示す例では、接触力が30mNである時間は700msである(図11(A)参照)。また図11(B)において、時間が700msの時の振動周波数変化の値は−1300Hzである。よって、図11に示す例では、−1300Hzを振動周波数変化値とする。
【0061】
上記の測定方法を採用することにより、35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)のそれぞれに対して共通した一定の条件化で振動周波数変化値を求めることが可能となり測定精度の向上を図ることができる。また、実験条件が異なる場合に必要となる補正処理も不要となり、測定処理の簡単化も図ることができる。
【0062】
図12及び図13は、上記のようにして測定された測定結果を皮膚触感モデル20の表層部21の膜厚毎に示したものである。図12は振動測定素子6からの出力信号から求められた振動周波数変化(絶対値)を示しており、図13はロードセル4からの信号から求められた接触圧を示している。また、各図において横軸は皮膚触感モデル全体の柔軟性の指標である重合度を示している。
【0063】
図12に示す測定結果より、重合度が低い時において、表層部21の膜厚の違いにより振動周波数変化が分離されていることがわかった。これは、各膜厚の振動周波数変化を示す折れ線は重なっている部分が少なく、よって各膜厚の振動周波数変化の値が特定しやすいことを意味している。
【0064】
また、図12において重合度が高い領域(硬い領域)では、各膜厚の振動周波数変化を示す折れ線の重なりが多くなり、表層部21の膜厚の違いが判別し難くなる傾向が見られる。この理由は、ベース部22の硬さが上昇することで、これが表層部21の硬さにも影響を与えるからであると考えられる。
【0065】
一方、図13に注目すると、重合度が上昇するに従い全ての膜厚において接触圧は略線形に増大すると特性を示す。このロードセル4の出力から求められる接触圧に対して分散分析(two-way (膜厚×重合度) repeated ANOVA)を行った結果、重合度の主効果は有意(F(6,174)=12480.32, p<.001)であった。多重比較(Bonferroniの調整下)の結果、各重合度間で有意差が見られた(p<.001)。このことは即ち、ロードセル4の出力から得られる接触圧の測定値によって、任意の皮膚触感モデル20の重合度(即ち、柔軟性)を判別することが可能であることを示している。
【0066】
次に、振動測定素子6の出力から求められる振動周波数変化に対して分散分析(two-way (膜厚×重合度) repeated ANOVA)を行った結果、膜厚の主効果は有意(F(4,116)=7490.87,p<.001)であった。また、膜厚×重合度の交互作用も有意であった(F(24, 116)= 7490.87, p<.001)。多重比較(Bonferroniの調整下)の結果、重合度の有意差が既知である時、振動測定素子6の測定結果において膜厚間に有意差が見られた(p<.01)。
【0067】
以上の結果は、ロードセル4と振動測定素子6から得られる2つの測定値(接触圧及び振動周波数変化)を利用することで、本実施形態で測定した35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)を統計的有意に区別できることを示している。即ち、皮膚性状検出センサ2を用いることにより、その測定結果より、35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)を仕分けることが可能となる。
【0068】
特に、上記の分散分析の結果を鑑みると、皮膚性状検出センサ2で任意の皮膚触感モデル20を測定することで、その皮膚触感モデル20の表層部21及びベース部22の性状、具体的にはベース部22のウレタン基剤の重合度と、表層部21の膜厚を推定することが99%以上の精度(多重比較の結果より算出)で可能であることがわかる。
【0069】
尚、この皮膚性状検出センサ2により測定された各皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の測定結果(接触圧及び振動周波数変化)は、モデル測定データとして図2に示すモデル測定データ記憶部12に格納される。このモデル測定データ記憶部12は、測定値をアドレスとして特定の皮膚触感モデル20を抽出することができると共に、皮膚触感モデル20を特定することにより、当該皮膚触感モデル20の測定値を抽出できる構成とされている。
【0070】
次に、図1にステップ3で示す皮膚測定及び皮膚測定データの作成方法について説明する。
【0071】
前記したステップ2では測定対象を皮膚触感モデル20としたが、ステップ3では測定対象を実際に皮膚の柔軟感を評価しようとする被験者の皮膚Aとし、被験者の皮膚Aに対して皮膚触感評価システム1(皮膚性状検出センサ2)を用いてステップ2で行ったと同様の測定を実施する。即ち、被験者の皮膚Aに対して接触子3を接触させると共に押圧し、この時の接触圧及び振動周波数変化を測定する。尚、この処理は、図2に示す皮膚触感評価システム1のロードセル4、振動測定素子6、BPF7,8、接触圧演算部9、及び振動周波数変化演算部10において実施される。
【0072】
ステップ3では、先ず図2に示すように被験者の皮膚Aの測定を行おうとする部位を皮膚性状検出センサ2の下に置く。そして、接触子3を下動させて皮膚Aに接触させると共に押圧することにより、皮膚触感モデル20に2mm接触子3を進入させる。この時にロードセル4から得られる接触圧の変化、及び振動測定素子6から振動数変化を測定する。この測定処理は、例えば皮膚Aの測定箇所に対し所定の間隔を置いて10回実施する。そして、この10回の測定結果を平均化することにより、平均接触圧データと平均振動周波数変化データを求める。
【0073】
このようにして求められた被験者の皮膚Aの平均接触圧データは、図11(A)に示したと同様に横軸に時間を取ると共に縦軸に平均接触圧を取った二次元データとして示すことができる。同様に、被験者の皮膚Aの平均振動周波数変化データは、図11(B)に示したと同様に横軸に時間を取ると共に縦軸に平均振動周波数変化値を取った二次元データとして示すことができる。
【0074】
そして、ステップ2で実施したのと同様の手法で被験者の皮膚Aの接触圧及び振動周波数変化値を求めた。即ち、平均接触圧データのピークとなる値を被験者の皮膚Aの接触圧とすると共に、接触子3を皮膚Aに押し込んだ際にロードセル4の測定値が30mNになった瞬間の、振動測定素子6から出力される平均振動周波数値を被験者の皮膚Aの振動周波数変化値とした。皮膚測定データとは、このようにして皮膚性状検出センサ2を用いて測定された被験者の皮膚Aの接触圧の値及び振動周波数変化の値をいうものとする。
【0075】
上記のようにしてステップ3で求められた被験者の皮膚Aの皮膚測定データは、ステップ2において求められた皮膚触感モデル20のモデル測定データと同一の方法を用いて測定を行うことにより得られたものである。よって、特に補正等を行うことなく、被験者の皮膚Aの皮膚測定データと皮膚触感モデル20のモデル測定データとを比較することができる。
【0076】
次に、図1にステップ4で示す評価処理の方法について説明する
評価処理を行うステップ4では、先ずステップ3で求められた皮膚測定データとステップ2で求められたモデル測定データを比較し、皮膚測定データと同一或いは近似するモデル測定データを選定する処理を行う。この処理は、図2に示す皮膚触感評価システム1の選定部11が実施する。
【0077】
ステップ3の処理により、皮膚触感評価システム1の選定部11には、ロードセル4,BPF7,及び接触圧演算部9を介して被験者の皮膚Aの接触圧が送られると共に、振動測定素子6,BPF8,及び振動周波数変化演算部10を介して被験者の皮膚Aの振動周波数変化値が送られる。選定部11は送られた皮膚測定データ(接触圧,振動周波数変化)に基づき、評価部13に格納されている35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の各モデル測定データと皮膚測定データとを比較する。
【0078】
そして、35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の内、皮膚測定データと同一或いは最も近似した皮膚触感モデル20を選定する。このようにして選定された皮膚触感モデル20は、最も被験者の皮膚Aの柔軟性に近似した柔軟性を有したものである。
【0079】
選定部11で被験者の皮膚Aの柔軟性と同一或いは最も近似した皮膚触感モデル20が選定されると、この情報は評価部13に送られる。評価部13では、ステップ11で特定された皮膚触感モデル20の触感データを触感データ記憶部14から抽出する処理を行う。即ち、前記のしたように触感データ記憶部14には、ステップ1で作成された65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々についての触感データ(即ち、「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」のデータ)が格納されている。よって評価部13は、この触感データ記憶部14から選定部11で選定された皮膚触感モデル20の触感データを抽出する。
【0080】
前記したように、選定部11で選定された皮膚触感モデル20は、最も被験者の皮膚Aの柔軟性に近似した柔軟性を有したものである。よって、被験者の皮膚Aの柔軟性は、選定部11で選定された皮膚触感モデル20の触感データの内容と同様であるということができる。従って、被験者の皮膚Aの柔軟性は、選定された皮膚触感モデル20の触感データに示される柔軟感と評価することができる。
【0081】
この評価に際し、本実施形態ではステップ1において皮膚触感モデル20に対して官能評価試験を実施する際、「やわらかさ感」ばかりでなく、「はり感」や「ふっくら感」に対しても官能評価を行っているため、被験者の皮膚Aの触感的な評価を幅広く包括的に行うことが可能となる。また被験者の皮膚Aに対する測定事項は、接触子3を皮膚Aに押圧するのみであるため、容易にまた被験者に負荷を与えることなく皮膚の触感評価を行うことができる。
【0082】
尚、上記のようにして評価された被験者の皮膚Aの柔軟性評価の結果は、出力部15において出力処理がされる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0084】
例えば、本実施形態ではステップ2でモデル測定データを作成する際、65個の皮膚触感モデル20の全てに対してモデル測定データを作成するのではなく、その内の35個の皮膚触感モデル20に対してのみモデル測定データを作成することとした。しかしながら、65個の全ての皮膚触感モデル20に対してモデル測定データを作成することとしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では皮膚表面(表層部21)の性状を測定するのに圧電素子等からなる振動測定素子6を用い、皮膚全体(表層部21+ベース部22)性状を測定するのにロードセル4を用いた。しかしながら、皮膚表面及び皮膚全体の性状を測定する手段は本実施形態の手段に限定されるものではなく、例えば光,磁界,電波,電流等の他の手段を用いることも可能である。
【0086】
また本実施形態では、皮膚の「やわらかさ感」,「はり感」,及び「ふっくら感」等の皮膚の柔軟性に対する評価を行う例について説明した。しかしながら、本発明は皮膚の他の性状や感触についての評価に対しても適用する可能性がある。
【符号の説明】
【0087】
1 皮膚触感評価システム
2 皮膚性状検出センサ
3 接触子
4 ロードセル
5 ピエゾ振動子
6 振動測定素子
9 接触圧演算部
10 振動数変化演算部
11 選定部
12 モデル測定データ記憶部
13 評価部
14 触感データ記憶部
15 出力部
20 皮膚触感モデル
21 表層部
22 ベース部
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムに係り、特に皮膚の柔軟感を定量的に評価する皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、皮膚の粗さ,硬さ,柔軟感等の皮膚性状評価に関する研究が進められている。従来における皮膚の柔軟感を評価する方法としては、皮膚表面の測定部分に圧縮ガスを噴射すると共に、噴射により被測定部位の表面変位を変位計等で測定し、噴射からの時間と表面変位との関係から皮膚表面の柔軟性を測定する方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、この方法に加え、ガスの噴射により皮膚表面に発生した凹部の深さを測定することにより、皮膚の表面硬さと内部固さを評価する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108794号公報
【特許文献2】特開2008−029578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、産業応用の観点より皮膚の柔軟感の研究は、特に化粧品業界から注目が集まっている。例えば、化粧品を塗布することによって得られる皮膚の柔軟感は、化粧品の使用感を差別化するための1つの要素である。
【0006】
しかしながら、学術的に研究されている「やわらかさ感」という性状評価以外にも、皮膚の柔軟感については経験的に用いられている「はり感」や「ふっくら感」という性状評価がある。このような「はり感」や「ふっくら感」については、従来の皮膚の柔軟感評価方法では評価されておらず、よって従来の柔軟感評価方法では柔軟感に対する包括的な評価を行うことができないという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、皮膚の柔軟感を包括的かつ確実に測定しうる皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、第1の観点からは、
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施し、該皮膚触感モデルの夫々の触感評価を求め触感データを生成するステップと、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して接触子を接触させて接触圧の最大値であるモデル圧最大値を測定すると共に、前記皮膚触感モデルに印加した振動の規定接触圧時におけるモデル振動周波数変化値を測定し、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データを生成するステップと、
被測定部位の皮膚に接触子を接触させて接触圧の最大値である皮膚圧最大値を測定すると共に、前記皮膚に印加した振動の振動数と規定接触圧の印加時における皮膚の振動数の差である皮膚振動周波数変化値を測定し、前記皮膚圧最大値と前記皮膚振動周波数変化値とを含む皮膚測定データを生成するステップと、
前記皮膚測定データと同一或いは近似する前記モデル測定データを選定すると共に、選定された該モデル測定データに対応する皮膚触感モデルを抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価するステップとを有する皮膚触感評価方法により解決することができる。
【0009】
また上記の課題は、第2の観点からは、
被測定部位の皮膚に接触させる接触子と、該接触子を前記皮膚に接触させた時の接触圧を測定する接触圧測定部と、前記皮膚に対して振動を印加する振動印加部と、前記皮膚からの振動を測定する振動測定部とを有する皮膚性状検出センサと、
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施することにより得られた、皮膚触感モデルの夫々の触感評価を示す触感データが格納された触感データ記憶手段と、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して前記皮膚性状検出センサを用いて予め測定された、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データが格納されたモデル測定データ記憶手段と、
被測定部位となる皮膚を前記皮膚性状検出センサを用い、当該皮膚の接触圧の最大値である皮膚圧最大値を求めると共に規定接触圧時における皮膚振動周波数変化値を求め、該皮膚圧最大値及び前記皮膚振動周波数変化値の値と同一或いは近似するモデル測定データを前記触感データ記憶手段から選定する選定手段と、
該選定手段で選定されたモデル測定データの触感評価を前記触感データ記憶手段から抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価する評価手段とを有することを特徴とする皮膚触感評価システムにより解決することができる。
【発明の効果】
【0010】
開示の発明によれば、皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施する際、例えば「やわらかさ感」ばかりでなく、「はり感」や「ふっくら感」に対しても官能評価を行っておくことにより、皮膚の触感評価を幅広く包括的に行うことが可能となる。また、皮膚の測定事項は、接触子を皮膚に押圧し振動印加した際の接触圧と振動周波数変化のみであり、また被験者に負荷を与えることなく皮膚の触感評価を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である皮膚触感評価方法の工程図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である皮膚触感評価システムの構成図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である皮膚触感評価方法で用いる皮膚触感モデルを示す図である。
【図4】図4は、65種類の皮膚触感モデルを示す図である。
【図5】図5は、官能評価試験の方法を説明するための図である。
【図6】図6は、官能評価試験により求められた触感データ(やわらかさ感)の一例を示す図である。
【図7】図7は、官能評価試験により求められた触感データ(はり感)の一例を示す図である。
【図8】図8は、官能評価試験により求められた触感データ(ふっくら感)の一例を示す図である。
【図9】図9は、図6〜図8に示す触感データを一つにまとめた図である。
【図10】図10は、皮膚性状検出センサにより皮膚触感モデルを測定している状態を示す図である。
【図11】図11は、振動周波数変化を測定する方法を説明するための図である。
【図12】図12は、皮膚触感モデルを振動測定素子により測定した結果の一例を示す図である。
【図13】図13は、皮膚触感モデルをロードセルにより測定した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態である皮膚触感評価方法の工程図であり、図2は本発明の一実施形態である皮膚触感評価システムの構成図である。本実施形態に係る皮膚触感評価方法及び皮膚触感評価システムは、種々ある皮膚の触感の内、特に皮膚の柔軟感の客観的な感性評価を目指したものである。
【0014】
また、皮膚の柔軟感の指標としては、「やわらかさ感」,「ふっくら感」,「はり感」を挙げ、この各指標について測定及び評価を行うことにより、皮膚の客観的な柔軟感を求めることを試みた。更に、本実施形態では、皮膚の柔軟感を評価するにあたり、個々に異なる種々の柔軟感を有する複数の皮膚触感モデル20(図3及び図4参照)を作製し、これを用いて柔軟感の評価を行うことを試みた。
【0015】
本実施形態に係る皮膚触感評価方法は、図1に示すように、触感データの作成を行うステップ1(図では、ステップをSと略称する)、モデル測定データの作成を行うステップ2、皮膚の測定及び皮膚測定データを作成するステップS3、及び評価処理を行うステップ4とを有している。また、皮膚触感評価システム1は、大略すると皮膚性状検出センサ2、接触圧演算部9,振動周波数変化演算部10,選定部11,モデル測定データ記憶部12,評価部13,触感データ記憶部14,及び出力部15等により構成されている。
【0016】
図1に示す触感データの作成を行うステップ1では、柔軟感の異なる複数種の皮膚触感モデル20の夫々に対して官能評価試験(図5参照)を実施し、皮膚触感モデル20の夫々の触感評価を示すデータである触感データ(図6〜図8参照)の作成を行う。この触感データは、後述するように皮膚触感評価システム1の触感データ記憶部14に格納される。
【0017】
また、モデル測定データの作成を行うステップS2では、後述する皮膚触感評価システム1を用いて、皮膚触感モデルの夫々に対して接触子3を接触させて接触圧の最大値であるモデル圧最大値を測定する。また、接触子3に予め所定の振動を印加しておき、接触子3を規定接触圧で押圧した時における振動の変化の値(モデル振動周波数変化値)を測定する。そして、求められたモデル圧最大値とモデル振動周波数変化値とを対応付けすることによりモデル測定データを生成する。このモデル測定データは、後述するように皮膚触感評価システム1のモデル測定データ記憶部12に格納される。
【0018】
また、皮膚の測定及び皮膚測定データを作成するステップ3では、実際に皮膚の柔軟感を評価しようとする被験者の皮膚Aに皮膚触感評価システム1の接触子3を接触させて接触圧の最大値である皮膚圧最大値を測定すると共に、皮膚Aに印加した振動の振動数と規定接触圧の印加時における振動数の差である皮膚振動周波数変化値を測定する。そして、このようにして求められた皮膚圧最大値と皮膚振動周波数変化値とを対応付けすることにより皮膚測定データを生成する。
【0019】
また、評価処理を行うステップ4では、ステップ3で求められた皮膚測定データとステップ2で求められたモデル測定データを比較し、ステップ3で作成された皮膚測定データと同一或いは近似するモデル測定データを選定する。次に、選定されたモデル測定データに基づき、これに対応する皮膚触感モデル20を抽出する。ステップ1において官能評価試験を行うことにより、個々の皮膚触感モデル20の柔軟感は得られている。従って、被験者の皮膚Aの柔軟感は、ステップ4で選定された皮膚触感モデル20の柔軟感と評価することができる。
【実施例】
【0020】
次に、上記した皮膚触感評価方法の具体的な実施例について説明する。
【0021】
先ず、ステップ1の触感データを作成する具体的な方法について説明する。触感データを作成するには、皮膚触感モデル20を作製する。この皮膚触感モデル20の作製するに際し、本発明者は「人間が体験する皮膚柔軟感は、皮膚表層の柔軟性と、ベース部と表層を合わせた全体の柔軟性の2つに影響される」という作業仮説を立てた。この仮説を検証するために、図3に示されるように表層部21とベース部22とにより構成される柔軟性の異なる2層構造を持つ単純化した皮膚触感モデル20を作製し、各皮膚触感モデル20が与える触感について官能評価試験を行った。
【0022】
表層部21及びベース部22は、いずれもウレタン樹脂により形成した。表層部21のウレタン基剤の柔軟性は一定とし、その厚さを5段階に変化させることにより表層部21の柔軟感を変化させた。本実施形態では、7μm、15μm、30μm、45μm、60 μmの各厚さの表層部21を作製した。
【0023】
また、ベース部22のウレタン樹脂は、ウレタン基剤の架橋重合度(以下、重合度と呼ぶ)を変化させることにより柔軟感を変化させた。本実施形態では、重合度を19〜25の間で0.5刻みで変化させることにより、13種類の柔軟感を有するベース部22を作製した。よって、表層部21とベース部22の組み合わせとしては、(膜厚5種類)×(重合度13種類)で、合計で65種類の異なる柔軟感を有する皮膚触感モデル20(図4参照)を作製し、これを以下で述べる評価実験に使用した。
【0024】
次に、上記のように作製した65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対して官能評価試験を実施する。本実施形態では、パネラ(実験参加者)として男女各20名ずつ、合計計40名に参加してもらった。そして、図5に示すように各パネルに上述の各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)に触れてもらい、各々に対して「やわらかさ感」,「はり感」「ふっくら感」の3感性に「あてはまるサンプル」,「あてはまらないサンプル」を抽出してもらった。
【0025】
具他的な官能評価試験手順は次の通りである。
(1)各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)を、温冷庫を利用して人間の皮膚温(32度)相当に温める。
(2)パネルの前に、65種類の各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)を並べる。
(3)次の3項目のいずれかについて3分間以内で、該当するサンプルをできるだけ早く正確に選び出させる。ただし、判断しかねるものについては、その場に残しておくこととする。
【0026】
また、評価項目は下記の3種類とした。
【0027】
(a)やわらかさ感がある、やわらかさ感がない
(b)はり感がある、はり感がない
(c)ふっくら感がある、ふっくら感がない
上記のように実施した官能評価試験の結果を、上記の表層部21の厚さ毎(7μm、15μm、30μm、45μm、60 μm毎)に図6〜図8に示す。
【0028】
図6〜図8において、横軸は皮膚触感モデル20のベース部22の柔軟性の指標である重合度を示している。横軸の数字が小さいほうが柔軟性が高く(やわらかい)、大きいほうが柔軟性が低い(硬い)サンプルである。また縦軸は、上記した(a)〜(c)の項目に対する回答の頻度を示している。即ち、図6を例に挙げると、縦軸はやわらかさ感があると回答された頻度を示している。
【0029】
先ず、図6の「やわらかさ感」の評価に注目する。「やわらかさ感」の評価では、ベース部22の重合度が20以下で「やわらかさ感」があると回答された。また、表層部21の膜厚を増やした場合、即ち表層部21の柔軟性を下げた場合においても、重合度が20以下で「やわらかさ感」があると回答される傾向は変わらなかった。
【0030】
次に、図7の「はり感」の評価に注目する。「はり感」の評価では、表層部21の膜厚が7μmであり、重合度が22である時に「はり感がある」との回答が高頻度で得られた。また表層部21の膜厚を変化させても、重合度が中程度(重合度22前後)である場合に「はり感がある」との回答が高頻度で得られた。この傾向は表層部21の膜厚が30μm以上に増えても共通に見られたが、最も「はり感」がある皮膚触感モデル20は膜厚が7μmで重合度が22の場合であった。
【0031】
次に、図7の「ふっくら感」の評価に注目する。「ふっくら感」の評価では、重合度が20付近で「ふっくら感」が高い頻度で体感されやすいことがわかった。また、表層部21の膜厚を7μmから徐々に上げてゆくと、30μmの時に75%を超える高い回答率が得られた。更に、膜厚を45μm以上に増加すると、「ふっくら感」を感じるという回答率は下がった。
【0032】
上記の官能評価試験の結果、65種類の各皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の中から、「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」を高頻度で与える皮膚触感モデルを見つけることができた。図9は、図6〜図8に示した結果を1つのグラフにまとめたものである。図9において、横軸は皮膚触感モデル20を構成するベース部22のウレタン重合度を示し、縦軸は表層部21の膜厚を示している。太線で囲ったエリアは、各官能評価試験項目「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」があると75%以上の確率で選ばれたサンプルの位置を示す。
【0033】
同図から明らかなように、重合度が小さい場合には「やわらかさ感」が高く、重合度が22 付近に「はり感」が感じられる領域があることがわかった。また、重合度が20で膜厚が30μm付近に「ふっくら感」が体感される領域があることがわかった。これは、前記した「人間が体験する皮膚柔軟感は、皮膚表層と全体の柔軟性の2つに影響される」という仮説が検証されたことを意味する。
【0034】
上記した官能評価試験により、65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対し、「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」の評価を得ることができる。本実施形態では、このようにして求められた個々の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)に対する官能評価の結果を触感データという。この官能評価の結果を示す触感データは、図2に示す皮膚触感評価システム1の触感データ記憶部14に格納される。
【0035】
次に、図1に示すステップ2のモデル測定データを作成する具体的な方法について説明する。
【0036】
上記したステップ1では、65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対して官能評価試験を行うことにより、個々の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)に対して「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」を示す触感データを作成した。ステップ2では、65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々に対し、図1に示す皮膚性状検出センサ2を用いて測定対象の有する客観的な物性値の測定を行った。
【0037】
ところで、前記したステップ1の結果は、人が体感する皮膚柔軟感を定量化するためには皮膚全体の柔軟性だけでなく、皮膚の表層の柔軟性も同時に計測することが必要であることを示唆している。そこで本実施形態に係る皮膚性状検出センサ2は、測定対象(ステップ2では、皮膚触感モデル20が測定対象となる)の表層及び全体の両方の柔軟性が計測できるよう構成したことを特徴としている。
【0038】
以下、皮膚性状検出センサ2の構成について説明する。皮膚性状検出センサ2は、図2及び図10に示されるように、接触子3、ロードセル4、ピエゾ振動子5、及び振動測定素子6等を有した構成とされている。
【0039】
接触子3はピン状とされており、その直径が1.0mm以上2.0mm以下に設定されている。この接触子3は、測定時において先端部(図中下端部)が測定対象に接触(押圧)される。ロードセル4は、接触子3の測定対象に接触される端部と反対側の端部に配設される。このロードセル4は例えば歪みゲージであり、接触子3を測定対象に接触させ押圧した時の接触圧を測定する。また本実施形態のロードセル4は、0〜5000mNの測定が可能なものを選定している。
【0040】
ピエゾ振動子5は、接触子3に対して振動印加可能な構成で取り付けられている。このピエゾ振動子5は、図示しない振動制御回路(位相シフト回路)に接続されている。そして、振動制御回路によりピエゾ振動子5の発生する振動は、接触子3を共振振動させる周波数に制御される。
【0041】
振動測定素子6は、ピエゾ振動子5と共に接触子3に取り付けられている。このピエゾ振動子5は、接触子3の振動を測定可能な構成で取り付けられている。このピエゾ振動子5及び振動測定素子6は、いずれも機械−電気変換機能を有する圧電素子を用いることができる。
【0042】
ロードセル4で検出された接触圧の測定信号(接触圧信号という)は、図2に示すように、バンドパスフィルタ(BPF)7により帯域制限された後に接触圧演算部9に送られる。接触圧演算部9では、ロードセル4から送られた接触圧信号から接触圧を演算する。
【0043】
また、振動測定素子6で検出された共振振動数の変化を示す測定信号(振動周波数変化信号という)は、BPF8により帯域制限された後に振動周波数変化演算部10に送られる。振動周波数変化演算部10では、振動測定素子6から送られた振動周波数変化信号から振動数の変化値を演算する。この演算された各値は、出力部15から出力することが可能である。尚、選定部11及び評価部13の動作については、説明の便宜上後述するものとする。
【0044】
上記構成とされた皮膚性状検出センサ2において、接触子3が測定対象に接していない状態でピエゾ振動子5を駆動すると、接触子3は共振状態となる(共振周波数をf0とする)。次に、この共振状態にある接触子3の先端部を測定対象に接触させると、測定対象の音響インピーダンスに依存して接触子3の振動数が変化する。
【0045】
即ち、接触子3が測定対象に接触することにより対象物体を伴った共振系が形成され、よって共振周波数が変化する(変化後の共振周波数をf1とする)。このf0からf1への共振周波数の変化は、振動測定素子6により測定することができる。
【0046】
ピエゾ振動子5で測定対象に印加された振動は、主に測定対象の表面を伝搬する。また、測定対象を伝搬する振動は、測定対象の物性である柔軟性に影響を受ける。よって、振動測定素子6で測定される振動周波数変化は、測定対象の主に表面性状(即ち、表面の柔軟性)に起因した変化である。このため、振動測定素子6を用いて接触子3が測定対象に接触した際の振動の周波数の変化を測定することにより、測定対象の表面の柔軟性を測定することができる。
【0047】
これに対し、接触子3を測定対象に接触させ押圧した際、測定対象はその表面ばかりでなく、それよりも深層をも変位させる(図10に示す例を参照)。またロードセル4により測定される接触圧は接触子3を測定対象に押圧した際の反力であり、その値は測定対象の柔軟性に影響を受ける。よって、ロードセル4で測定される接触圧は、測定対象の表面ばかりでなく、その深層をも含めた全体的な柔軟性を示した測定値となる。
【0048】
よって、皮膚性状検出センサ2を用いて測定対象を測定した場合、ロードセル4により測定対象の全体の柔軟感を測定することができ、また振動測定素子6により測定対象の表面の柔軟感を測定することができる。
【0049】
ステップ2では、上記構成及び特性を有する皮膚性状検出センサ2(皮膚触感評価システム1)を用いると共に、各皮膚触感モデル20を測定対象として測定を行う。またモデル測定データとは、本ステップにおいて皮膚性状検出センサ2を用いて皮膚触感モデル20を測定することにより得られたデータをいうものとする。
【0050】
皮膚性状検出センサ2を用いた皮膚触感モデル20の柔軟性の測定は、次のようにして行う。本実施形態では、先ずステップ1で使用した65個の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の内、異なる膜厚5種類と、異なる重合度7種類を組み合わせることにより35種類の皮膚触感モデル20を適宜選定した。そして、選定された皮膚触感モデル20n(n=1〜35)に対し、皮膚性状検出センサ2を用いてそれぞれ30回ずつ測定処理を実施した。具体的な測定処理手順を以下説明する。
【0051】
35種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の内、測定を行う一つの皮膚触感モデル20を皮膚性状検出センサ2の下に置き、接触子3を皮膚触感モデル20に接触させると共に2mm接触子3を進入させることにより、皮膚触感モデル20に余圧を印加する。この時にロードセル4から得られる接触圧の変化、及び振動測定素子6から振動周波数変化を測定する。この測定処理は、1個の皮膚触感モデル20に対して10回ずつ実施した。以上の計測を、35個の各皮膚触感モデル20n(n=1〜35)のサンプルに対し3日間連続して実施し、よって合成で1050回(35個×10回×3日)の測定を行った。
【0052】
次に、上記のようにして皮膚性状検出センサ2(ロードセル4及び振動測定素子6)から出力された各測定信号の処理について説明する。前記のように、ロードセル4から出力された接触圧信号及び振動測定素子6から出力された振動周波数変化信号は、BPF7,8でフィルタ処理が実施される。BPF7,8は、いずれもカットオフ周波数が1Hzのフィルタである。このフィルタ処理を行うことにより、外乱の除去を図ることができ測定精度の向上が図られている。
【0053】
図11は、皮膚性状検出センサ2により皮膚触感モデル20を測定した結果の一例を示している。図11(A)はロードセル4から出力された接触圧信号から得られた接触圧を示している。また、図11(B)は振動測定素子6から出力された振動周波数変化信号から得られた振動周波数変化を示している。尚、各図において横軸は時間を取っている。
【0054】
測定時において、接触子3は下方(図2に矢印で示す方向)移動することにより、皮膚触感モデル20の表層部21に接触する。そして更に下方に移動することにより、図10に示すように接触子3は表層部21及びベース部22の双方を押圧して変形させた状態となる。その後、接触子3は上方に移動を開始し、やがて皮膚触感モデル20から離間した状態となる。図11は、この接触子3の一回の上下移動を行う間に、ロードセル4及び振動測定素子6から出力される信号の変化を時間の経過と共に示している。
【0055】
先ず、図11(A)に示す接触圧に注目する。接触力は、接触子3が皮膚触感モデル20と接触し押圧することにより上昇し、約2000ms経過した時点でピークとなる(図11(A)に矢印Aで示す)。その後、接触子3の皮膚触感モデル20からの離脱方向への移動に伴い、接触力は漸次減少する。
【0056】
本実施形態に係る測定方法では、接触子3を皮膚触感モデル20に押し込んだ際、ロードセル4の出力から得られる最大測定値を接触圧とする。よって図11に示す例では、矢印Aで示す接触値である130mNが、当該皮膚触感モデル20の接触圧となる。
【0057】
前記したようにロードセル4で測定される接触圧は、皮膚触感モデル20の表層部21及びベース部22の双方の柔軟性を反映した値である。よって、接触子3を最も深く押し込んだ状態である矢印Aで示すピーク値が、最も表層部21及びベース部22の性状を反映した接触力となる。
【0058】
次に、図11(B)に示す振動周波数変化に注目する。前記したように、振動測定素子6は皮膚触感モデル20の表層部21の柔軟性を測定するものである。従って、接触圧のように矢印Aで示す押し込みのピークの状態で測定処理を行うと、その測定精度が低下することが考えられる。よって、どのタイミングで振動周波数変化を測定するかが問題となる。
【0059】
振動周波数変化を測定するタイミングとして、例えば図11(B)に示す時間経過に伴う振動周波数変化の値の変化において、線形性の高い領域を選定して測定を行うことが考えられる。しかしながら、35個の皮膚触感モデル20において線形性の高い領域は一定ではなく、また測定を行う測定者の人的誤差が混入する可能性もある。
【0060】
そこで本実施形態に係る測定方法では、客観的な測定タイミングを担保するため、接触子3を皮膚触感モデル20に押し込んだ際、ロードセル4の測定値が30mNであった瞬間の、振動測定素子6から出力される振動周波数の変化量を振動周波数変化値とすることとした。具体的には、図11に示す例では、接触力が30mNである時間は700msである(図11(A)参照)。また図11(B)において、時間が700msの時の振動周波数変化の値は−1300Hzである。よって、図11に示す例では、−1300Hzを振動周波数変化値とする。
【0061】
上記の測定方法を採用することにより、35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)のそれぞれに対して共通した一定の条件化で振動周波数変化値を求めることが可能となり測定精度の向上を図ることができる。また、実験条件が異なる場合に必要となる補正処理も不要となり、測定処理の簡単化も図ることができる。
【0062】
図12及び図13は、上記のようにして測定された測定結果を皮膚触感モデル20の表層部21の膜厚毎に示したものである。図12は振動測定素子6からの出力信号から求められた振動周波数変化(絶対値)を示しており、図13はロードセル4からの信号から求められた接触圧を示している。また、各図において横軸は皮膚触感モデル全体の柔軟性の指標である重合度を示している。
【0063】
図12に示す測定結果より、重合度が低い時において、表層部21の膜厚の違いにより振動周波数変化が分離されていることがわかった。これは、各膜厚の振動周波数変化を示す折れ線は重なっている部分が少なく、よって各膜厚の振動周波数変化の値が特定しやすいことを意味している。
【0064】
また、図12において重合度が高い領域(硬い領域)では、各膜厚の振動周波数変化を示す折れ線の重なりが多くなり、表層部21の膜厚の違いが判別し難くなる傾向が見られる。この理由は、ベース部22の硬さが上昇することで、これが表層部21の硬さにも影響を与えるからであると考えられる。
【0065】
一方、図13に注目すると、重合度が上昇するに従い全ての膜厚において接触圧は略線形に増大すると特性を示す。このロードセル4の出力から求められる接触圧に対して分散分析(two-way (膜厚×重合度) repeated ANOVA)を行った結果、重合度の主効果は有意(F(6,174)=12480.32, p<.001)であった。多重比較(Bonferroniの調整下)の結果、各重合度間で有意差が見られた(p<.001)。このことは即ち、ロードセル4の出力から得られる接触圧の測定値によって、任意の皮膚触感モデル20の重合度(即ち、柔軟性)を判別することが可能であることを示している。
【0066】
次に、振動測定素子6の出力から求められる振動周波数変化に対して分散分析(two-way (膜厚×重合度) repeated ANOVA)を行った結果、膜厚の主効果は有意(F(4,116)=7490.87,p<.001)であった。また、膜厚×重合度の交互作用も有意であった(F(24, 116)= 7490.87, p<.001)。多重比較(Bonferroniの調整下)の結果、重合度の有意差が既知である時、振動測定素子6の測定結果において膜厚間に有意差が見られた(p<.01)。
【0067】
以上の結果は、ロードセル4と振動測定素子6から得られる2つの測定値(接触圧及び振動周波数変化)を利用することで、本実施形態で測定した35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)を統計的有意に区別できることを示している。即ち、皮膚性状検出センサ2を用いることにより、その測定結果より、35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)を仕分けることが可能となる。
【0068】
特に、上記の分散分析の結果を鑑みると、皮膚性状検出センサ2で任意の皮膚触感モデル20を測定することで、その皮膚触感モデル20の表層部21及びベース部22の性状、具体的にはベース部22のウレタン基剤の重合度と、表層部21の膜厚を推定することが99%以上の精度(多重比較の結果より算出)で可能であることがわかる。
【0069】
尚、この皮膚性状検出センサ2により測定された各皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の測定結果(接触圧及び振動周波数変化)は、モデル測定データとして図2に示すモデル測定データ記憶部12に格納される。このモデル測定データ記憶部12は、測定値をアドレスとして特定の皮膚触感モデル20を抽出することができると共に、皮膚触感モデル20を特定することにより、当該皮膚触感モデル20の測定値を抽出できる構成とされている。
【0070】
次に、図1にステップ3で示す皮膚測定及び皮膚測定データの作成方法について説明する。
【0071】
前記したステップ2では測定対象を皮膚触感モデル20としたが、ステップ3では測定対象を実際に皮膚の柔軟感を評価しようとする被験者の皮膚Aとし、被験者の皮膚Aに対して皮膚触感評価システム1(皮膚性状検出センサ2)を用いてステップ2で行ったと同様の測定を実施する。即ち、被験者の皮膚Aに対して接触子3を接触させると共に押圧し、この時の接触圧及び振動周波数変化を測定する。尚、この処理は、図2に示す皮膚触感評価システム1のロードセル4、振動測定素子6、BPF7,8、接触圧演算部9、及び振動周波数変化演算部10において実施される。
【0072】
ステップ3では、先ず図2に示すように被験者の皮膚Aの測定を行おうとする部位を皮膚性状検出センサ2の下に置く。そして、接触子3を下動させて皮膚Aに接触させると共に押圧することにより、皮膚触感モデル20に2mm接触子3を進入させる。この時にロードセル4から得られる接触圧の変化、及び振動測定素子6から振動数変化を測定する。この測定処理は、例えば皮膚Aの測定箇所に対し所定の間隔を置いて10回実施する。そして、この10回の測定結果を平均化することにより、平均接触圧データと平均振動周波数変化データを求める。
【0073】
このようにして求められた被験者の皮膚Aの平均接触圧データは、図11(A)に示したと同様に横軸に時間を取ると共に縦軸に平均接触圧を取った二次元データとして示すことができる。同様に、被験者の皮膚Aの平均振動周波数変化データは、図11(B)に示したと同様に横軸に時間を取ると共に縦軸に平均振動周波数変化値を取った二次元データとして示すことができる。
【0074】
そして、ステップ2で実施したのと同様の手法で被験者の皮膚Aの接触圧及び振動周波数変化値を求めた。即ち、平均接触圧データのピークとなる値を被験者の皮膚Aの接触圧とすると共に、接触子3を皮膚Aに押し込んだ際にロードセル4の測定値が30mNになった瞬間の、振動測定素子6から出力される平均振動周波数値を被験者の皮膚Aの振動周波数変化値とした。皮膚測定データとは、このようにして皮膚性状検出センサ2を用いて測定された被験者の皮膚Aの接触圧の値及び振動周波数変化の値をいうものとする。
【0075】
上記のようにしてステップ3で求められた被験者の皮膚Aの皮膚測定データは、ステップ2において求められた皮膚触感モデル20のモデル測定データと同一の方法を用いて測定を行うことにより得られたものである。よって、特に補正等を行うことなく、被験者の皮膚Aの皮膚測定データと皮膚触感モデル20のモデル測定データとを比較することができる。
【0076】
次に、図1にステップ4で示す評価処理の方法について説明する
評価処理を行うステップ4では、先ずステップ3で求められた皮膚測定データとステップ2で求められたモデル測定データを比較し、皮膚測定データと同一或いは近似するモデル測定データを選定する処理を行う。この処理は、図2に示す皮膚触感評価システム1の選定部11が実施する。
【0077】
ステップ3の処理により、皮膚触感評価システム1の選定部11には、ロードセル4,BPF7,及び接触圧演算部9を介して被験者の皮膚Aの接触圧が送られると共に、振動測定素子6,BPF8,及び振動周波数変化演算部10を介して被験者の皮膚Aの振動周波数変化値が送られる。選定部11は送られた皮膚測定データ(接触圧,振動周波数変化)に基づき、評価部13に格納されている35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の各モデル測定データと皮膚測定データとを比較する。
【0078】
そして、35個の皮膚触感モデル20n(n=1〜35)の内、皮膚測定データと同一或いは最も近似した皮膚触感モデル20を選定する。このようにして選定された皮膚触感モデル20は、最も被験者の皮膚Aの柔軟性に近似した柔軟性を有したものである。
【0079】
選定部11で被験者の皮膚Aの柔軟性と同一或いは最も近似した皮膚触感モデル20が選定されると、この情報は評価部13に送られる。評価部13では、ステップ11で特定された皮膚触感モデル20の触感データを触感データ記憶部14から抽出する処理を行う。即ち、前記のしたように触感データ記憶部14には、ステップ1で作成された65種類の皮膚触感モデル20n(n=1〜65)の夫々についての触感データ(即ち、「やわらかさ感」,「はり感」,「ふっくら感」のデータ)が格納されている。よって評価部13は、この触感データ記憶部14から選定部11で選定された皮膚触感モデル20の触感データを抽出する。
【0080】
前記したように、選定部11で選定された皮膚触感モデル20は、最も被験者の皮膚Aの柔軟性に近似した柔軟性を有したものである。よって、被験者の皮膚Aの柔軟性は、選定部11で選定された皮膚触感モデル20の触感データの内容と同様であるということができる。従って、被験者の皮膚Aの柔軟性は、選定された皮膚触感モデル20の触感データに示される柔軟感と評価することができる。
【0081】
この評価に際し、本実施形態ではステップ1において皮膚触感モデル20に対して官能評価試験を実施する際、「やわらかさ感」ばかりでなく、「はり感」や「ふっくら感」に対しても官能評価を行っているため、被験者の皮膚Aの触感的な評価を幅広く包括的に行うことが可能となる。また被験者の皮膚Aに対する測定事項は、接触子3を皮膚Aに押圧するのみであるため、容易にまた被験者に負荷を与えることなく皮膚の触感評価を行うことができる。
【0082】
尚、上記のようにして評価された被験者の皮膚Aの柔軟性評価の結果は、出力部15において出力処理がされる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0084】
例えば、本実施形態ではステップ2でモデル測定データを作成する際、65個の皮膚触感モデル20の全てに対してモデル測定データを作成するのではなく、その内の35個の皮膚触感モデル20に対してのみモデル測定データを作成することとした。しかしながら、65個の全ての皮膚触感モデル20に対してモデル測定データを作成することとしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では皮膚表面(表層部21)の性状を測定するのに圧電素子等からなる振動測定素子6を用い、皮膚全体(表層部21+ベース部22)性状を測定するのにロードセル4を用いた。しかしながら、皮膚表面及び皮膚全体の性状を測定する手段は本実施形態の手段に限定されるものではなく、例えば光,磁界,電波,電流等の他の手段を用いることも可能である。
【0086】
また本実施形態では、皮膚の「やわらかさ感」,「はり感」,及び「ふっくら感」等の皮膚の柔軟性に対する評価を行う例について説明した。しかしながら、本発明は皮膚の他の性状や感触についての評価に対しても適用する可能性がある。
【符号の説明】
【0087】
1 皮膚触感評価システム
2 皮膚性状検出センサ
3 接触子
4 ロードセル
5 ピエゾ振動子
6 振動測定素子
9 接触圧演算部
10 振動数変化演算部
11 選定部
12 モデル測定データ記憶部
13 評価部
14 触感データ記憶部
15 出力部
20 皮膚触感モデル
21 表層部
22 ベース部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施し、該皮膚触感モデルの夫々の触感評価を求め触感データを生成するステップと、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して接触子を接触させて接触圧の最大値であるモデル圧最大値を測定すると共に、前記皮膚触感モデルに印加した振動の規定接触圧時におけるモデル振動周波数変化値を測定し、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データを生成するステップと、
被測定部位の皮膚に接触子を接触させて接触圧の最大値である皮膚圧最大値を測定すると共に、前記皮膚に印加した振動の振動数と規定接触圧の印加時における皮膚の振動数の差である皮膚振動周波数変化値を測定し、前記皮膚圧最大値と前記皮膚振動周波数変化値とを含む皮膚測定データを生成するステップと、
前記皮膚測定データと同一或いは近似する前記モデル測定データを選定すると共に、選定された該モデル測定データに対応する皮膚触感モデルを抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価するステップと、
を有する皮膚触感評価方法。
【請求項2】
前記触感評価は、やわらかさ感、はり感、及びふっくら感の3感性について実施したことを特徴とする請求項1記載の皮膚触感評価方法。
【請求項3】
前記皮膚触感モデルは、表層と深層とにより構成されており、前記表層及び深層の性状を異ならせることにより異なる触感を有するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚触感評価方法。
【請求項4】
被測定部位の皮膚に接触させる接触子と、該接触子を前記皮膚に接触させた時の接触圧を測定する接触圧測定部と、前記皮膚に対して振動を印加する振動印加部と、前記皮膚からの振動を測定する振動測定部とを有する皮膚性状検出センサと、
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施することにより得られた、皮膚触感モデルの夫々の触感評価を示す触感データが格納された触感データ記憶手段と、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して前記皮膚性状検出センサを用いて予め測定された、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データが格納されたモデル測定データ記憶手段と、
被測定部位となる皮膚を前記皮膚性状検出センサを用い、当該皮膚の接触圧の最大値である皮膚圧最大値を求めると共に規定接触圧時における皮膚振動周波数変化値を求め、該皮膚圧最大値及び前記皮膚振動周波数変化値の値と同一或いは近似するモデル測定データを前記触感データ記憶手段から選定する選定手段と、
該選定手段で選定されたモデル測定データの触感評価を前記触感データ記憶手段から抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価する評価手段と、
を有することを特徴とする皮膚触感評価システム。
【請求項5】
前記触感評価は、やわらかさ感、はり感、及びふっくら感の3感性について実施したことを特徴とする請求項4記載の皮膚触感評価システム。
【請求項6】
前記接触圧測定部をロードセルにより構成し、
前記振動印加部及び前記振動測定部を圧電素子により構成し、
前記接触圧測定部と前記前記振動測定部を直列に配置したことを特徴とする請求項4乃至5のいずれか一項に記載の皮膚触感評価システム。
【請求項1】
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施し、該皮膚触感モデルの夫々の触感評価を求め触感データを生成するステップと、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して接触子を接触させて接触圧の最大値であるモデル圧最大値を測定すると共に、前記皮膚触感モデルに印加した振動の規定接触圧時におけるモデル振動周波数変化値を測定し、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データを生成するステップと、
被測定部位の皮膚に接触子を接触させて接触圧の最大値である皮膚圧最大値を測定すると共に、前記皮膚に印加した振動の振動数と規定接触圧の印加時における皮膚の振動数の差である皮膚振動周波数変化値を測定し、前記皮膚圧最大値と前記皮膚振動周波数変化値とを含む皮膚測定データを生成するステップと、
前記皮膚測定データと同一或いは近似する前記モデル測定データを選定すると共に、選定された該モデル測定データに対応する皮膚触感モデルを抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価するステップと、
を有する皮膚触感評価方法。
【請求項2】
前記触感評価は、やわらかさ感、はり感、及びふっくら感の3感性について実施したことを特徴とする請求項1記載の皮膚触感評価方法。
【請求項3】
前記皮膚触感モデルは、表層と深層とにより構成されており、前記表層及び深層の性状を異ならせることにより異なる触感を有するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚触感評価方法。
【請求項4】
被測定部位の皮膚に接触させる接触子と、該接触子を前記皮膚に接触させた時の接触圧を測定する接触圧測定部と、前記皮膚に対して振動を印加する振動印加部と、前記皮膚からの振動を測定する振動測定部とを有する皮膚性状検出センサと、
触感の異なる複数種の皮膚触感モデルの夫々に対して官能評価試験を実施することにより得られた、皮膚触感モデルの夫々の触感評価を示す触感データが格納された触感データ記憶手段と、
前記皮膚触感モデルの夫々に対して前記皮膚性状検出センサを用いて予め測定された、前記モデル圧最大値と前記モデル振動周波数変化値とを含むモデル測定データが格納されたモデル測定データ記憶手段と、
被測定部位となる皮膚を前記皮膚性状検出センサを用い、当該皮膚の接触圧の最大値である皮膚圧最大値を求めると共に規定接触圧時における皮膚振動周波数変化値を求め、該皮膚圧最大値及び前記皮膚振動周波数変化値の値と同一或いは近似するモデル測定データを前記触感データ記憶手段から選定する選定手段と、
該選定手段で選定されたモデル測定データの触感評価を前記触感データ記憶手段から抽出し、抽出された当該皮膚触感モデルの触感を前記被測定部位の皮膚の触感と評価する評価手段と、
を有することを特徴とする皮膚触感評価システム。
【請求項5】
前記触感評価は、やわらかさ感、はり感、及びふっくら感の3感性について実施したことを特徴とする請求項4記載の皮膚触感評価システム。
【請求項6】
前記接触圧測定部をロードセルにより構成し、
前記振動印加部及び前記振動測定部を圧電素子により構成し、
前記接触圧測定部と前記前記振動測定部を直列に配置したことを特徴とする請求項4乃至5のいずれか一項に記載の皮膚触感評価システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−130580(P2012−130580A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286579(P2010−286579)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
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