説明

監視機能付きダイバシティ無線通信装置

【課題】 従来のアンテナ選択ダイバシティー無線機の送信波の監視は送信部の途中で信号を一部分岐して行っていたのでアンテナ等の監視出来ない部分が残されていた。
【解決手段】 本発明は上述の課題を解決するもので、自局アンテナからの送信波を直接受信検波して送信波の監視と制御を行うと共に、受信部の自己診断も行えるので自局全体の監視及び制御が可能であり、自局障害時には閉局あるいは送信禁止の処置をとりシステムに対する妨害を防止する手段を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は監視機能付きダイバシティ無線通信装置に関し、更に詳しくは、自局の送信波を監視して自局の送信波の監視及び制御を行うダイバシティ無線通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、移動体通信移動局等の無線機において、送信部に自局が基地局からの指示に従った正常な送信波を出力しているかどうかを監視する機能を具備したものが出現し、これによって自局の送信電力やチャンネル周波数等を常に最適なものにするよう制御している。一方、無線機全体としては、常に安定した受信が出来る様に複数のアンテナを空間的に離し、アンテナを切替えることによってフエージングの影響を軽減させるダイバシティー方式を用いたものも存する。図3は、従来の監視機能付きダイバシティ無線通信装置の全体構成の一例を示すブロック図である。この図3の監視機能付きダイバシティ無線通信装置は、例えば、時分割多重方式で一つの周波数で送信と受信が行える無線通信装置である。送受信用メインアンテナ1は、送信と受信の双方に用いられるアンテナであり、送信時は、この送受信用メインアンテナ1だけが用いられるが、受信時は後述する受信専用サブアンテナとこの送受信用メインアンテナ1のうちで受信条件の良い方のアンテナが用いられる。受信専用サブアンテナ2は、上記の送受信用メインアンテナ1とは空間的に離して設置され、受信専用で送信は行わず、前記送受信用メインアンテナ1とのどちらか受信条件の良い方の受信信号が用いられるアンテナである。送受信共用器3は、1本のアンテナを送受両用に用いるための装置である。
【0003】アンテナ切替スイッチ4は、送受信用メインアンテナ1と受信専用サブアンテナ2の双方の受信信号から受信状態の良いいずれか一方のアンテナに切替えて後述する受信部6に受信信号を入力させるためのスイッチである。送信部5は、後述する送信回路10、パワーアンプ9,分配器8及びアイソレータ7の直列回路から成り、音声や制御信号等の無線信号を送出するためのものである。受信部6は、上記アンテナ切替えスイッチ4で選択されたアンテナからの無線の受信信号を音声信号や制御信号としてこの監視機能付きダイバシティ無線通信装置で処理可能な信号に復調するためのものである。送信回路10は、図示されないマイクロホンからの音声信号や後述する制御部14で生成された制御信号等の信号を変調して無線信号として送出するためのものである。パワーアンプ9は、送信回路10から出力された無線信号を送信に必要なレベルまで増幅するためのものである。分配器8は、無線信号の一部を主系統とは別に分配させるためのものである。
【0004】アイソレータ7は、送信する無線信号は通過させるが、逆方向のアンテナ側からの無線信号は通過させないようにするためのものである。検波器11は、分配器8で分配された無線信号を検波して、その周波数や増幅度を監視するためのものである。制御部14は、受信においては、受信出力が安定するように各アンテナの受信状態の監視とアンテナの切替等を行い、送信では、検波器11の出力から出力周波数や増幅度の制御等を行うためのものである。その動作、制御を詳細に説明すると、送信部5から出力する送信波は送受信共用器3を通って送受信用メインアンテナ1から送信される。この時、送信部5では、アイソレータ7とパワーアンプ9の間に挿入した分配器8を介してパワーアンプ9からの送信波の一部を分岐し、検波部11にて検波した後、検波信号が制御部14に送られ、制御部14ではこの検波出力に基づいて、送出する無線信号が指定された送信電力及びスペクトルとなっているかどうかの監視を行う。もし、指定された送信電力及びスペクトルが出力されていない場合は、指定された送信電力及びスペクトルになる様に送信回路10による変調並びにパワーアンプ9出カレベルの制御を行う。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら以上説明したような従来の監視機能付きダイバシティ無線通信装置における送信波の監視手段では以下に示す問題点があった。
(1)送信波の監視をパワーアンプ9とアイソレータ7の間から分岐した送信波を検波することにより行っている為、制御部14からパワーアンプ9までの送信異常の監視は可能であるものの、それ以降のアイソレータ7、送受信共用器3、送受信用メインアンテナ1における送信系全体、或いは、更に受信系までを含めた装置全体の監視が不可能である。
(2)従って、アイソレータ7、送受信共用器3、送受信用メインアンテナ1での送信異常を監視する為には、基地局を含めたシステム全体において監視する必要がありシステムが複雑となる。
(3)パワーアンプ9とアイソレータ7の間の送信経路上に、分配器8を挿入している為、ここでの損失や制御部14、検波器11の動作不良による雑音等の発生で、送信波の品質劣化等の悪影響を与え易い。
本発明は、上述したような従来の監視機能付きダイバシティ無線通信装置に係わる諸問題点を解決するためになされたものであって、送信波に悪影響を与えず、システム構成を複雑化することなく無線機全体を通して所望の送信波を生ずるよう送信系の監視と制御が可能であり、又、送受信周波数が同一周波数の無線機の場合は、更に受信系についても監視が可能とする監視機能付きダイバシティ無線通信装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する為に、本発明においては、無線信号の受信状態に応じて複数のアンテナをアンテナスイッチ手段で切り替えて受信するダイバシティ受信方式の受信部と、無線信号の送信が可能な送信部と、少なくとも受信時の前記複数アンテナの切り替え制御と送受信の制御が可能な制御部を備えたダイバシティ無線通信装置において、前記複数のアンテナの中で無線送信時に使用されないアンテナと前記制御部の間に接続された検波手段を備え、前記制御部では、無線送信時に、前記検波手段の出力を監視することを特徴とする。本発明では、ダイバシティ受信方式の複数アンテナのであることを利用し、無線送信時に使用されないアンテナによって送信出力を直接に受信して検波する事で、送信波に悪影響を与えず、システム構成を複雑化することなく無線機全体を通して所望の送信波を生ずるよう送信系の監視と制御を行う。また、無線機の送受信周波数が同一周波数である場合には、無線機の送信モードに対応して自局の送受信用メインアンテナからの送信波を直接受信部により受信し受信部の監視も可能とする。
【0007】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施形態の全体構成を示すブロック図である。従来技術の図3の例と同一かほぼ同様な機能のブロックについては、同一の番号として示してあり、ここでは特に説明を行わない。この第1の実施形態の構成が従来技術の図3の例と違っている点としては、送信部5のパワーアンプ9とアイソレータ7間に配置していた分配器8、検波器11を取外し、代わりに受信専用サブアンテナ2とアンテナ切替えスイッチ4間に新たに送受信切替えスイッチ12を追加し、さらに送受信切替えスイッチ12の送信側(T)に、自局の送受信用メインアンテナ1からの送信波を受信専用サブアンテナ2で直接に受信して検波する為の検波器13を備え、これによって送信波の監視を行っていることである。以下、図示した実施例についてその動作を詳細に説明する。図1において、無線機が基地局の指示に従って送信を開始すると、送受信切替えスイッチ12は、送信と同時に送信側(T)に切替わり、送信波は受信専用サブアンテナ2によって受信されて、送受信切替えスイッチ12を通して送信波を検波器13へ伝えられる。検波器13では、受信した送信波の検波を行い、送信波の出力と周波数を制御部14で処理可能な信号として出力する。制御部14では、検波器13からの信号により送信波の出力と周波数を分析し、基地局から指示された出力と周波数で送信出力が行われているかどうかを判断する。もし、検波された信号が基地局の指示と異なる場合は、送信部5の送信回路10で周波数の調整を行い、パワーアンプ9で出力の調整を行うように制御する指示を与える。もし、ここで制御不可能な状態、又は、検波出来ない等の異常が発生すれば、システムヘの妨害の可能性があると判断して基地局に報告すると共に無線機の電源遮断等により自局を閉局するか、若しくは、無線機の送信を禁止するよう制御する。この実施形態に示すように、従来は不可能であった自局の送信波の監視がアイソレータ7、送受信共用器3、送受信用メインアンテナ1を含めた送信機全体に亙り可能となるので、これらの送信系の整合がとれているか否かの監視、及び、送信系全体での出力と周波数の制御を自局内で行うことが出来る。さらに、送受信が同一周波数の無線機の場合には、送信時にアンテナ切替えスイッチ4を受信専用サブアンテナ側(S)にし、送受信切り替えスイッチ12を受信側(R)に切替えることにより、送信波を直接に受信部6で受けて、受信専用サブアンテナ2の監視及び受信部6の動作の監視が可能となる。
【0008】図2は本発明の第2の実施形態の全体構成を示すブロック図である。この図2においても図1と同様に、従来技術の図3の例と同一かほぼ同様な機能のブロックについては、同一の番号として示してあり、ここでは特に説明を行わない。図2の第2の実施形態の構成が従来技術の図3と違っている点は、送信部5のパワーアンプ9とアイソレータ7間に配置していた分配器8、検波器11を取外し、代わりにアンテナ切替えスイッチ4と受信部6間に分配器又はフィルターリングによる分離器15(以下、HYB15と言う)を直列に挿入し、該分岐出力に検波部13を接続し、無線機の送信モードに対応してアンテナ切替えスイッチ4により受信専用サブアンテナ2に切替えて自局の送受信用メインアンテナ1からの送信波を直接受信検波して制御部14により該送信波の監視と制御を可能とする構成である。この第2の実施形態は、無線部の送信モードに対応して、自局の送受信用メインアンテナ1からの送信波を受信専用サブアンテナ2で直接受信した信号を制御部14で監視することにより受信部6の自己診断も同時に可能とする構成を持つ監視機能付きダイバシティ無線通信装置である。
【0009】この第2の実施形態が、図1の第1の実施例の構成と異なるのは、図1の送受信切替えスイッチ12を省略する替わりに、図2ではHYB15に置換えた構成としたことである。従って、機能は第1の実施例と同様であるが構成上の相違から、第1の実施例では送信部5の監視及び制御と受信部6の自己診断を切替えて個別に行う必要があるが、この第2の実施例では両方の機能が同時に可能となることである。上記構成により、ダイバシティ受信方式の複数アンテナであることを利用し、無線送信時に使用されないアンテナによって送信出力を直接に受信して検波するにより、送信波に悪影響を与えず、システム構成を複雑化することなく無線機全体を通して所望の送信波を生ずるよう送信系の監視と制御を行うことができる。また、無線機の送受信周波数が同一周波数である場合には、無線機の送信モードに対応して自局の送受信用メインアンテナからの送信波を直接受信部により受信し受信部の監視も可能となる。
【0010】
【発明の効果】本発明の監視機能付きダイバシティ無線通信装置は、自局の送信波を直接受信監視する様に構成したので、従来の監視方法では不可能であったアイソレータ及び送受信共用器の監視に加えて送受信用メインアンテナの整合監視と制御が可能となる。さらに受信専用サブアンテナ及び受信部の監視も可能となるので、自局の無線機全体の制御と障害監視が可能となる。従って、送信波異常等によるシステム妨害があると判断すれば基地局に報告すると共に、その妨害を回避する為に自局の閉局若しくは送信の禁止を行うことも出来るので、他局に対する妨害を排除する上でその効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる監視機能付きダイバシティ無線通信装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】 本発明に係わる監視機能付きダイバシティ無線通信装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図3】 従来の監視機能付きダイバシティ無線通信装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 送受信用メインアンテナ、
2 受信専用サブアンテナ、
3 送受信共用器、
4 アンテナ切替えスイッチ,
5 送信部、
6 受信部、
7 アイソレータ、
8 分配器、
9 パワーアンプ、
10 送信回路、
11、13 検波部、
12 送受信切替えスイッチ、
14 制御部、
15 分配器又はフィルターリングによる分離器(HYB)

【特許請求の範囲】
【請求項1】無線信号の受信状態に応じて複数のアンテナをアンテナスイッチ手段で切り替えて受信するダイバシティ受信方式の受信部と、無線信号の送信が可能な送信部と、少なくとも受信時の前記複数アンテナの切り替え制御と送受信の制御が可能な制御部を備えたダイバシティ無線通信装置において、前記複数のアンテナの中で無線送信時に使用されないアンテナと前記制御部との間に接続された検波手段を備え、前記制御部では、無線送信時に、前記検波手段の出力を監視することを特徴とする監視機能付きダイバシティ無線通信装置。
【請求項2】 前記検波手段は、前記無線送信時に使用されないアンテナの受信信号経路上に追加された受信信号の経路を前記検波手段に切替ることの可能な受信信号切替手段により切替られた受信信号を検波することを特徴とする請求項1に記載の監視機能付きダイバシティ無線通信装置。
【請求項3】 前記検波手段は、前記無線送信時に使用されないアンテナの受信信号経路上に追加された少なくとも一部の受信信号を分岐させて出力することの可能な受信信号分岐手段により分岐した受信信号を検波することを特徴とする請求項1に記載の監視機能付きダイバシティ無線通信装置。
【請求項4】 前記複数アンテナの中で送信するアンテナが特定される場合には、前記複数アンテナのうちの受信専用アンテナの受信信号の経路上に前記受信信号切替手段又は前記受信信号分岐手段と前記検波手段が接続されることを特徴とする請求項2又は3に記載の監視機能付きダイバシティ無線通信装置。
【請求項5】 前記監視機能付きダイバシティ無線通信装置の送受信周波数が同一周波数であり、前記受信専用アンテナからの受信信号と前記送信アンテナからの受信信号を切り替えて前記受信部で受信するダイバシティ無線通信装置である場合には、前記監視機能付きダイバシティ無線通信装置が送信状態になるタイミングに合わせて前記受信専用アンテナからの受信信号を前記受信部で受信して監視が可能なことを特徴とする請求項4に記載の監視機能付きダイバシティ無線通信装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平11−74824
【公開日】平成11年(1999)3月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−249804
【出願日】平成9年(1997)8月29日
【出願人】(000003104)東洋通信機株式会社 (1,528)