説明

目的物質の検出方法、及び目的物質を検出するためのクロマトグラフィー用試験キット

【課題】
本発明は、酵素化学発光を利用したクロマトグラフィーにおいて、試料中に含まれる目的物質を高感度に検出する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、試料中に含まれる目的物質を検出する方法であって、試料と、目的物質に結合する酵素標識物質とを混合する混合工程;混合工程で得られた混合液をクロマトグラフィー用試験具で検査し、検出領域の捕捉物質で目的物質を捕捉する捕捉工程;捕捉工程の後、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具の検出領域に添加する添加工程;発光基質と、検出領域の捕捉物質に目的物質を介して結合している酵素標識物質の酵素とを反応させる反応工程;及び反応工程により検出領域から生じる発光を検出することにより、試料中に含まれる目的物質を検出する検出工程;を含む目的物質の検出方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的物質の検出方法、及び目的物質を検出するためのクロマトグラフィー用試験キットに関する。
【背景技術】
【0002】
生体から採取された、血液,血清,咽頭拭い液,鼻腔拭い液,鼻汁,尿などの検体を試料とし、試料中に含まれる目的物質を検出する方法として、クロマトグラフィーを用いる方法がある。この方法では、まず、クロマトグラフィー用試験具の検出領域に、試料中の目的物質に結合可能な捕捉物質を固定する。このクロマトグラフィー用試験具を用いて、目的物質に結合する標識物質と試料とを混合した混合液を展開する。これにより、標識物質で標識された目的物質が、検出領域に捕捉される。このとき、検出領域において、標識物質−目的物質−捕捉物質のサンドイッチ状の複合体が形成している。標識物質の標識成分として有色のラテックス粒子やコロイド状金属粒子等を用いた場合、標識物質が検出領域に捕捉されると検出領域が発色する。クロマトグラフィーにおいては、この検出領域の発色を観察することにより、試料中の目的物質を検出することができる。
【0003】
しかしながら、上記の着色ラテックス粒子等を用いたクロマトグラフィーでは検出感度が低く、試料中に含まれる目的物質が微量である場合、目的物質を検出することが困難であった。
【0004】
そこで近年、クロマトグラフィーにおいて、目的物質を高感度に検出するために、着色ラテックス粒子の代わりに、蛍光物質や化学発光物質を標識成分として用いる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、標識成分として蛍光物質を用いた免疫クロマトグラフ法が記載されている。また、特許文献2には、標識成分として化学発光物質であるアクリニジウムを用いた抗体検出法が記載されている。
しかしながら、上記の方法では市場が求めている検出感度まで到達できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−267671号公報
【特許文献2】特開平8−5637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、酵素化学発光を利用したクロマトグラフィーにおいて、試料中に含まれる目的物質を高感度に検出する方法を提供するものである。
また、本発明は、試料中に含まれる目的物質を高感度に検出できる、酵素化学発光を利用したクロマトグラフィー用試験キットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酵素化学発光を利用したクロマトグラフィーにおいて、目的物質と酵素標識物質との混合液を展開した後に、アニオン性界面活性剤を含む試薬を検出領域に添加する事によって、発光基質の発光強度が高まることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)目的物質に結合する捕捉物質が固定化された検出領域を有するクロマトグラフィー用試験具を用いて、試料中に含まれる目的物質を検出する方法であって、試料と、目的物質に結合する酵素標識物質とを混合する混合工程;混合工程で得られた混合液をクロマトグラフィー用試験具で検査し、検出領域の捕捉物質で目的物質を捕捉する捕捉工程;
捕捉工程の後、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具の検出領域に添加する添加工程;発光基質と、検出領域の捕捉物質に目的物質を介して結合している酵素標識物質の酵素とを反応させる反応工程;及び反応工程により検出領域から生じる発光を検出することにより、試料中に含まれる目的物質を検出する検出工程;を含む目的物質の検出方法;
(2)アニオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n−デシル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、p−オクチルベンゼンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムオクタン-1-イル、及びPOE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムから選択される、(1)に記載の方法;
(3)添加工程が、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具を用いて展開することにより、アニオン性界面活性剤をクロマトグラフィー用試験具の検出領域に添加する工程である、(1)又は(2)に記載の方法;
(4)アニオン性界面活性剤を含む試薬は、緩衝剤をさらに含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法;
(5)試薬に含まれるアニオン性界面活性剤の濃度が0.0001〜0.1重量%である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法;
(6)発光基質がジオキセタン類である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法;
(7)酵素標識物質の酵素がアルカリホスファターゼである、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法;
(8)捕捉物質が抗体であり、酵素標識物質が酵素標識抗体である(1)〜(7)のいずれかに記載の方法;
(9)検出工程は、検出領域から生じる発光の発光強度を測定することにより、試料中に含まれる目的物質を定量する工程である(1)〜(8)のいずれかに記載の方法;
(10)クロマトグラフィー用試験具は、ラテラルフロー式クロマトグラフィー用試験具、又はフロースルー式クロマトグラフィー用試験具である(1)〜(9)のいずれかに記載の方法;
(11)目的物質に結合する酵素標識物質と、目的物質に結合可能な捕捉物質が固定化された検出領域を有するクロマトグラフィー用試験具と、アニオン性界面活性剤を含む洗浄液と、酵素標識物質と作用することによって発光反応する、該酵素標識物質に対する発光基質とを備える、試料中に含まれる目的物質を検出するためのクロマトグラフィー用試験キット;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酵素化学発光を利用したクロマトグラフィーにおいて、目的物質を高感度に検出する方法を提供することができる。また、本発明によれば、目的物質を高感度に検出できる、酵素化学発光を利用したクロマトグラフィー用試験キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るクロマトグラフィー用試験具の(a)平面図、(b)側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るクロマトグラフィー用試験具を収容した収容具10の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るクロマトグラフィー用試験具の(a)平面図、(b)X−X矢視断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る試薬容器の概略構成図である。
【図5】実施例1の発光を検出した結果を示す写真である。
【図6】比較例1の発光を検出した結果を示す写真である。
【図7】実施例2の発光を検出した結果を示す写真である。
【図8】実施例3の発光を検出した結果を示す写真である。
【図9】実施例4の発光を検出した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態における目的物質の検出方法は、目的物質に結合する捕捉物質が固定化された検出領域を有するクロマトグラフィー用試験具を用いて、試料中に含まれる目的物質を検出する方法であって、試料と、目的物質に結合する酵素標識物質とを混合する混合工程;混合工程で得られた混合液をクロマトグラフィー用試験具で検査し、検出領域の捕捉物質で目的物質を捕捉する捕捉工程;捕捉工程の後、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具の検出領域に添加する添加工程;発光基質と、検出領域の捕捉物質に目的物質を介して結合している酵素標識物質の酵素とを反応させる反応工程;及び反応工程により検出領域から生じる発光を検出することにより、試料中に含まれる目的物質を検出する検出工程;を含む。なお、本明細書において、「目的物質を検出する」とは、試料中の目的物質の有無を判定するだけでなく、定量することも含む。
【0012】
混合工程では、試料と目的物質に結合する酵素標識物質とを混合し、混合液を作製する。
試料中に目的物質が含まれている場合、目的物質は酵素標識物質と複合体を形成する。
【0013】
本実施形態で用いられる試料としては、目的物質を含む疑いのある液体試料であれば特に限定されない。また、本実施形態で用いられる試料は、生体試料が好ましく、具体的には、血液、血清、血漿、胆汁、胃腸分泌液、リンパ液、骨髄液、唾液、鼻汁、尿、組織抽出液、組織ホモジネート、細胞抽出液、細胞ホモジネートなどが挙げられる。
【0014】
試料中に含まれる目的物質としては特に限定されず、抗原、抗体、ホルモン、ホルモンレセプター、レクチン、レクチン結合性糖質、薬物若しくはその代謝物、薬物レセプター、核酸及びこれらの断片等が例示される。具体的には、細菌、原生生物や真菌などの細胞、ウイルス、タンパク質、多糖類等が挙げられる。例えば、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、マイコプラズマニューモニエ、ロタウイルス、カルシウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルスなどのウイルス;大腸菌、スタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスニューモニエ、ストレプトコッカスピヨゲネス、マイコプラズマニューモニエ、マラリア原虫などの細胞;消化器系疾患、中枢神経系疾患、出血熱等の様々な疾患の病原体、病原体の代謝産物;癌胎児性抗原やシフラなどの腫瘍マーカー;ホルモンなどが例示される。
【0015】
試料中に含まれる目的物質と複合体を形成する酵素標識物質は、上記目的物質と特異的に結合可能で、且つ酵素で標識された物質であれば良い。目的物質と特異的に結合可能な物質としては、例えば、目的物質が抗原又は抗体である場合に、その抗原又は抗体と抗原抗体反応により結合可能な抗原又は抗体を使用することができる。その他、例えばリガンド−レセプター結合のような生物学的親和性に基づいて目的物質と結合可能な物質を使用することもできる。酵素標識物質としては、酵素で標識された抗体(酵素標識抗体)が好ましい。
【0016】
酵素標識物質の酵素は、当該技術分野において一般的に使用される公知の酵素であれば特に制限されない。具体的な酵素としては、例えば、αガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ若しくはペルオキシダーゼなどが挙げられ、好ましくは、アルカリホスファターゼである。
【0017】
酵素で標識する方法としては、公知の方法を利用することができる。例えばアルカリホスファターゼで標識する方法としては、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸架橋法、マレイミド架橋法、カルボジイミド法、活性化エステル法などが挙げられる。
【0018】
捕捉工程では、混合工程で得られた混合液をクロマトグラフィー用試験具で検査し、検出領域の捕捉物質で目的物質を捕捉する。ここで用いられるクロマトグラフィー用試験具には、検出領域が備えられており、検出領域には、試料中に含まれる目的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されている。そのため、上述の混合液に含まれる目的物質と酵素標識物質との複合体は、検出領域の捕捉物質に捕捉される。
【0019】
クロマトグラフィー用試験具としては、例えば、ラテラルフロー式クロマトグラフィー用試験具やフロースルー式クロマトグラフィー用試験具を挙げることができる。
ここで、ラテラルフロー式クロマトグラフィーとは、捕捉物質が固定化された検出領域を含むメンブレンに試料を滴下し、試料をメンブレンに対して平行に展開させることで、検出領域に捕捉された目的物質を検出する方法である。一方、フロースルー式クロマトグラフィーとは、目的物質を捕捉するための捕捉物質を表面に固定化させたメンブレンに、目的物質を含む試料を滴下し、試料をメンブレンに対して垂直に通過させることで膜表面に捕捉された目的物質を検出する方法である。いずれの方法においても、捕捉された目的物質は酵素標識物質によって標識されている。この酵素標識物質の酵素と後述する発光基質との反応により生じる発光により、目的物質を検出することができる。
【0020】
検出領域に固定化されている捕捉物質は、試料中に含まれる目的物質と特異的に結合可能なものであればよい。この目的物質と捕捉物質との特異的な結合としては、例えば、抗原抗体反応による結合やリガンド−レセプター結合等の生物学的親和性に基づく結合が挙げられる。ここで、目的物質が抗原である場合、抗原に対する抗体を酵素標識物質や捕捉物質として使用することが好ましい。特に、酵素標識物質として使用する抗体と捕捉物質として使用する抗体は、それぞれ抗原の異なる部位(エピトープ)を認識することが好ましい。また、目的物質が抗体である場合、抗体に対する抗原を捕捉物質として使用することができ、抗体に特異的に結合可能な物質(抗体)を酵素標識物質として使用することができる。
【0021】
添加工程では、混合液をクロマトグラフィー用試験具に展開した後に、アニオン性界面活性剤を含む試薬をクロマトグラフィー用試験具の検出領域に添加する。アニオン性界面活性剤を含む試薬を検出領域に存在させることにより、後述する発光基質の発光強度を高めることができる。この添加工程は、試料中に含まれる目的物質を検出領域に固定化された捕捉物質で捕捉させる捕捉工程の後に行うことが好ましい。目的物質を捕捉した後にアニオン性界面活性剤を含む試薬を添加することにより、アニオン性界面活性剤が検出領域から流出することなく、検出領域にアニオン性界面活性剤を含む試薬を存在させることができる。
【0022】
アニオン性界面活性剤を含む試薬を添加する方法としては、特に制限されない。例えば、
アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具で展開することにより、試薬を検出領域に添加することができる。また、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具の検出領域に滴下することで、試薬を検出領域に添加することもできる。さらに、混合液を展開した後のクロマトグラフィー用試験具を、アニオン性界面活性剤を含む試薬に浸すことにより、試薬を検出領域に添加することもできる。これらの中で、アニオン性界面活性剤を含む試薬を添加する方法としては、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具で展開する方法が好ましい。特に、アニオン性界面活性剤を含む試薬が緩衝剤をさらに含む場合、標識物質-目的物質-捕捉物質が発光する環境を整え、さらに後述するクロマトグラフィー用試験具の洗浄を同時に行うことができるため、より好ましい。
【0023】
ここで、添加工程を行う前に、捕捉工程後のクロマトグラフィー用試験具を洗浄する洗浄工程をさらに含むこともできる。検出領域を洗浄することにより、後の発光を検出する際のバックグラウンドを低減することができ、試料中に含まれる目的物質をより高感度に検出することができる。洗浄方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、Phosphate buffered saline(PBS)、N-Tris(hydroxymethyl)methyl-3-aminopropanesulfonic acid (TAPS)等の緩衝剤を含む緩衝液を、クロマトグラフィー用試験具で展開することにより、検出領域を洗浄することができる。また、クロマトグラフィー用試験具を、上記緩衝剤を含む緩衝液に浸すことにより、検出領域を洗浄することもできる。
【0024】
また、上述のように、添加工程において、アニオン性界面活性剤と緩衝剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具で展開することにより、洗浄工程と添加工程を同時に行うこともできる。
【0025】
なお、アニオン性界面活性剤は、当該技術分野において一般的に使用される公知のアニオン性界面活性剤であれば、特に制限されない。具体的なアニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n−デシル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、p−オクチルベンゼンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムオクタン-1-イル、及びPOE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0026】
上記試薬に含まれるアニオン性界面活性剤の濃度は、アニオン性界面活性剤の種類や、後述する発光反応の条件などに応じ適宜調整すればよく、特に制限されないが、0.0001〜0.1重量%であることが好ましい。試薬中のアニオン性界面活性剤の濃度が0.0001重量%以上であれば、発光基質の発光強度は高めることができる。また、0.1重量%以下のアニオン性界面活性剤の濃度で、十分に発光基質の発光強度を高めることができる。
【0027】
反応工程では、発光基質と、検出領域に目的物質を介して捕捉された酵素標識物質の酵素とを反応させる。これにより、上述の試料に目的物質が含まれている場合、検出領域から発光が生じる。酵素と発光基質とを反応させる方法としては、酵素と発光基質とを接触させることで行うことができる。例えば、検出領域にピペット等で発光基質を添加することで反応工程を行うことができる。
【0028】
発光基質としては、酵素標識物質の酵素との反応によって発光反応するものを適宜使用することができる。例えば、ルミノール、ジオキセタン系物質等が挙げられ、好ましくは、ジオキセタン系物質である。ジオキセタン系物質としては、例えばAMPPD(登録商標)、CSPD(登録商標)、CDP−Star(登録商標)等が挙げられる。
【0029】
検出工程では、上記反応工程により検出領域で生じた発光を検出することにより、試料中に含まれる目的物質を検出する。発光を検出する方法としては、CCDカメラや蛍光スキャナー等、公知の装置を利用して行うことができる。
ここで、発光が検出された場合、目的物質が検出されたと判定することができる。また、検出された発光の発光強度を測定することにより、試料中に含まれる目的物質を定量することもできる。目的物質の定量に際しては、検量線を用いることが好ましい。発光強度を測定する方法としては、公知の装置を利用して測定することができる。具体的な装置としては、Typhoon(GEヘルスケア・ジャパン社製、LAS4000(FUJIFILM社製)等が挙げられる。
【0030】
以上、本発明の目的物質の検出方法について述べた。以下に、本実施形態によるクロマトグラフィー用試験キットについて図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、第一の実施形態のラテラルフロー式クロマトグラフ法で用いられる、クロマトグラフィー用試験具1(以下、試験具1と呼称する)の(a)平面図、(b)側面図である。
試験具1は、図1に示すように、表面に粘着層を有するプラスチック板からなる基材2上に、レーヨンの不織布からなる試料添加部材3と、ニトロセルロースの多孔体からなるクロマト用膜担体4と、セルロースの不織布からなる吸収部材5とを備える。
【0032】
基材2は、試料添加部材3、クロマト用膜担体4、及び吸収部材5を適切に配置するためのものであり、プラスチック以外にも紙、ガラス等の材質のものを用いることができる。
試料添加部材3には試料が添加される。試料としては、上述の試料を用いることができる。試料添加部材3としては、レーヨンの不織布以外にも、例えば、コットン、グラスファイバー、セルロースファイバーなどの材質のものを用いてもよい。
【0033】
クロマト用膜担体4は試料添加部材3と接触するように配置され、検出部4Aを有する。検出部4Aには、目的物質に対して特異的に結合可能な捕捉物質がライン状に固定されている。
吸収部材5は、クロマト用膜担体4と接触するように配置されており、過剰試料を吸収するためのものである。吸収部材5は、液体を速やかに吸収し、保持できる材質のものであればよく、コットン、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる不織布を使用することができる。
【0034】
次に、第一の実施形態によるクロマトグラフィー用試験具1を用いた目的物質を検出する方法について説明する。
【0035】
まず、試料と酵素標識物質とを混合し、混合液を作製する。このとき、試料中に目的物質が含まれている場合、目的物質と酵素標識物質は結合し複合体を形成する。
作製した混合液を試験具1の試料添加部材3に添加すると、混合液は、試料添加部材3からクロマト用膜担体4に展開される。試料中に目的物質が含まれていると、検出部4Aに固定された捕捉物質は、目的物質と酵素標識物質との複合体を捕捉する。
混合液を添加して1分ほど静置した後、試料添加部材3にアニオン性界面活性剤を含む洗浄液を添加する。添加された洗浄液は、クロマト用膜担体4に展開され、検出部4Aと接触する。
洗浄液を添加して1分ほど静置した後、発光基質を検出部4Aに添加する。このとき、検出部4Aの捕捉物質が複合体を捕捉している場合、発光基質と、複合体中の酵素標識物質の酵素とが反応することにより、発光を生じる。
発光基質を添加後、発光検出装置(Typhoon(GEヘルスケア・ジャパン社製))にて発光を検出する。この発光を検出することにより、目的物質を検出することができる。また、検出した発光の発光強度を測定し、検量線を用いることにより目的物質の定量を行うことができる。
【0036】
なお、上記実施形態においては、試料を添加するための試料添加部材3を備える構成を例示したが、このような構成に限らず、試料添加部材3を備えない構成であってもよい。この場合には、クロマト用膜担体4に試料を直接添加して、試料を展開することができる。
また、上記実施形態では発光基質を検出部4Aに添加したが、試料添加部材3に発光基質を添加して展開させてもよいし、クロマト用膜担体4に発光基質を直接添加して展開してもよい。
【0037】
また、上記実施形態において、アニオン性界面活性剤を含む洗浄液としては、上述のアニオン性界面活性剤と緩衝剤とを含む試薬を洗浄液として用いることができる。
【0038】
なお、クロマト用膜担体4は、検出部を1つだけでなく、2つ以上備えることも可能である。また、クロマト膜担体4は、対照部を備えていてもよい。例えば、試料中にALP標識抗HBs抗体を添加し、クロマト用膜担体4の対照部に、ALP標識抗HBs抗体と結合する抗マウスIgG抗体を固定したものを対照部として用いることができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、試験具1を、試料添加用部材3、クロマト用膜担体4、及び吸収部材5に対応する位置に開口を有するケース10に収容した構成とすることもできる。このような構成を示す試験具1の一例を図2に示す。
図2に示すように、試験具1をケース10に収容することにより、試験具1の各部材から試料が漏れ出ることを防止でき、衛生的に試料中に含まれる目的物質の検出を行うことができる。加えて、ケース10に設けられた複数の開口によって、試料に含まれる液体成分が蒸発し易くなり、試料の展開が促進される。
【0040】
なお、図2に示した構成において、ケース10の試料添加用部材3に対応する位置に設けられた開口部11は、内側に向かって開口面積が小さくなるように形成されている。このような構成により、試料添加用部材3に添加された試料は、開口部11に一定量貯留されるため、過剰に試料を添加したとしても、試料が試験具1上を順次展開していくため、少量の試料を定期的に添加することなく行うことができる。
【0041】
以上においては、ラテラルフロー式クロマトグラフィー用試験具1について説明したが、本実施形態におけるクロマトグラフィー用試験キットは、フロースルー式クロマトグラフィー用試験具に適用することも可能である。
以下、図を参照しながら、フロースルー式クロマトグラフィー用試験具について説明する。
【0042】
図3は、第2の実施形態に係るフロースルー式クロマトグラフィー法に用いられるクロマトグラフィー用試験具31(以下、試験具31と呼称する)の(a)平面図、(b)X−X矢視断面図である。
【0043】
試験具31は、下層から順に吸収部材35と、クロマト用膜担体34と、カバー部材32とを備え、これらが積層されて構成されている。カバー部材32は、開口33を有し、この開口33を介して、下層に配置されたクロマト用膜担体34の検出部34Aが露出されるように構成されている。
【0044】
吸収部材35は、クロマト用膜担体34と接触するように配置されており、過剰試料を吸収するためのものである。吸収部材35は、液体を速やかに吸収し、保持できる材質のものであればよく、コットン、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる不織布を使用することができる。
クロマト用膜担体34はカバー部材32と接触するように配置され、検出部34Aを有する。検出部34Aには、目的物質に対して特異的に結合可能な捕捉物質がライン状に固定されている。
【0045】
次に第二の実施形態におけるフロースルー式クロマトグラフィー用試験具31を用いた目的物質を検出する方法について説明する。
まず、試料と酵素標識物質とを混合し、混合液を作製する。このとき、試料中に目的物質が含まれている場合、目的物質と酵素標識物質は結合し複合体を形成する。作製した混合液を試験具31の開口部33に添加し、この状態で、20分程度放置する。このとき混合液が膜担体34を通過し、その下層に配置された吸収部材35によって吸収される。試料中に目的物質が含まれていると、膜担体34の検出部34Aに固定された捕捉物質が、目的物質と酵素標識物質との複合体を捕捉する。次にアニオン性界面活性剤を含む洗浄液を開口部33に添加する。添加された洗浄液は、検出部34Aと接触する。洗浄液を添加後、発光基質を検出部34Aに添加する。このとき検出部34Aの捕捉物質が複合体を捕捉している場合、発光基質と、複合体中の酵素標識物質の酵素とが反応し、発光を生じる。
発光基質を添加後、発光検出装置(Typhoon(GEヘルスケア・ジャパン社製))にて発光を検出する。この発光を検出することにより、目的物質を検出することができる。また、検出した発光の発光強度を測定し、検量線を用いることにより目的物質の定量を行うことができる。
【0046】
なお、本発明の試薬キットは、図4の酵素標識物質を収容した第1試薬容器41、アニオン性界面活性剤を含む試薬を収容した第2試薬容器42、及び発光基質を収容した第3試薬容器43と、図1、図2又は図3の試験具とを備える試薬キットとすることができる。
【0047】
第一試薬容器41に収容されている酵素標識物質は、緩衝液中に溶解した液体の形態であってもよいし、又は用時に水などの液体を加えて用いるための、凍結乾燥することなどにより得られる固体の形態であってもよい。試薬キットの使用操作の簡便性の観点から、酵素標識物質は緩衝液中に溶解した液体の形態であることが好ましい。
また、第一試薬容器41には、前処理用試薬をさらに含むこともできる。このように構成することにより、前処理が必要である試料であっても、検体の前処理と酵素標識を同時に行うことができる。前処理用試薬としては、上記試料から目的物質を抽出できるものであればよく、例えば、界面活性剤を含有する緩衝液が用いられる。
【0048】
第2試薬容器42に収容されているアニオン性界面活性剤を含む試薬は、上述の検出方法で述べたアニオン性界面活性剤を含む試薬を用いることができる。
第3試薬容器43に収容されている発光基質は、基質が温度や光により失活するおそれがある。よって保存の形態としては、遮光容器で冷蔵保存(2〜8℃)することが好ましい。
【0049】
なお、上記試薬キットは、所望により、別の試薬を別の試薬容器に収容したものを備えても良い。さらに、試薬キットは、所望により、試薬の1つ又は複数を希釈するための1種または、複数の緩衝液、使用説明書、反応に用い得る容器などを備えてもよい。
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1:試料展開後にアニオン性界面活性剤を添加したときの検出感度
試料を展開した後にアニオン性界面活性剤を添加したときの発光の検出感度について調べた。
(1)試験具の作製
HBs抗体を用いて、図1に示されるようなラテラルフロー式クロマトグラフィー用試験具を作製した。
まず、ニトロセルロースメンブレンからなるクロマト用膜担体の検出部に、リン酸緩衝液(pH7.0)で2mg/mLの濃度になるように希釈したHBs抗体を含むHBs抗体液を、抗体塗布機(BioDot社製)を用いて1.0mm幅で塗布し、50度で30分間乾燥させた。乾燥後のクロマト用膜担体を、BSAを含有するリン酸緩衝液(pH7.0)に浸漬し、クロマト用膜担体上の検出部にHBs抗体を固定した。その後、リン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、40℃120分間乾燥させ、HBs抗体が固着されたクロマト用膜担体を得た。
(2)アルカリホスファターゼ標識抗HBs抗体液の作製
ALP標識抗HBs抗体液を20μL調製した。組成は以下の通りである。
「ALP標識抗HBs抗体液」
MES 4.25g/L(pH6.5)
MgCl・6HO 0.04g/L
塩化ナトリウム 1.75g/L
BSA 0.20g/L
カゼインナトリウム 1g/L
ALP標識抗体混合液 3mL/L

上記のALP標識抗体混合液の調製は、上記のHBs抗体を、EMCS(同仁化学研究所製)を用いてALP標識した。得られたALP標識化抗HBs抗体を0.3U/mLになるように、MES緩衝液(pH6.5)に溶解し、これをALP標識抗体混合液とした。
(3)試料の展開
目的物質として、HBs抗原(濃度0.1IU/mL)を用いた。
上記で調製したALP標識抗HBs抗体液20μLとHBs抗原70μL(0.1IU/mL)とを混合し、HBs抗原とALPとの複合体を含む混合液を作製した。
そして、作製した混合液をクロマトグラフィー用試験具に展開させた。
(4) アニオン性界面活性剤を含む洗浄液の調製
アニオン性界面活性剤を含む洗浄液を下記組成にて調製した。
<洗浄液の組成>
50mM TAPS(pH8.5)
3mM MgCl・6H
アニオン性界面活性剤(0.005%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS))
この洗浄液50μLをクロマトグラフィー用試験具に対して2回展開させて洗浄した。
(5)発光の検出
洗浄液を展開後、クロマト用膜担体の検出部に発光基質50μLを添加した。発光基質として、CDP−star(登録商標)(Applied Biosystems社製)を用いた。
添加後、Typhoon(GEヘルスケア・ジャパン社製)を用いて発光を検出した。検出方法については、Typhoonの取扱説明書に沿って行った。
なお、(3)の工程において、HBs抗原の濃度を、0IU/mL、0.0031IU/mL、0.0063IU/mL、0.0125IU/mL、0.025IU/mL、0.05IU/mL、0.5IU/mL、1IU/mL、10IU/mLに変えた場合の発光についても上記と同様にして検出した。
【0052】
比較のために、上記の(4)の工程において、アニオン性界面活性剤を添加しない洗浄液を用いた場合の発光についても上記と同様に検出した。
【0053】
比較例1:検体試料にアニオン性界面活性剤を添加した時の検出感度
実施例1(4)の洗浄液において、アニオン性界面活性剤を添加せず、実施例1(3)の混合液にアニオン性界面活性剤を添加したときの発光の検出感度を調べた。
(1)試験具の作製
実施例1の(1)と同様
(2)アルカリホスファターゼ標識抗HBs抗体液の作製
実施例1の(2)と同様
(3)目的物質の展開
目的物質として、HBs抗原(濃度0.1IU/mL)を用いた。(2)で調製したALP標識抗HBs抗体液20μLとHBs抗原70μLとを混合し、HBs抗原とALPとの複合体を含む混合液を作製した。
この混合液にアニオン性界面活性剤であるDBSを濃度が0.005%となるように添加した。そして、DBSを添加した混合液をクロマトグラフィー用試験具に展開させた。
(4)洗浄液の調製
DBSを添加した混合液を展開させた後に、クロマトグラフィー用試験具を洗浄するための洗浄液を下記組成にて調整した。
<洗浄液の組成>
50mM TAPS(pH8.5)
3mM MgCl・6H
この洗浄液50μLをクロマトグラフィー用試験具に対して2回展開させた。
(5)発光の検出
実施例1の(5)と同様の操作を行った。
なお、(3)で添加したDBSの濃度を0%、0.01%、0.025%、0.05%に変更した場合の検出感度、及びHBs抗原の濃度を0.5IU/mLに変更した場合の検出感度についても上記と同様にして調べた。
【0054】
〔結果〕
図5は、実施例1の発光を検出した結果を示す写真である。図5より、DBSを添加した系では、目的物質(HBs抗原)の濃度が0.0063IU/mLまで、目的物質を検出可能であった。それに対して、DBSを添加しない系では、目的物質の濃度が、0.025IU/mLまでしか検出できなかった。よって、試料を展開した後にアニオン性界面活性剤を添加した液で洗浄すると、発光強度が高まり、目的物質の検出感度が高まることが示唆された。
図6は、比較例1の発光を検出した結果を示す写真である。図6より、混合液中にDBSを添加したサンプルNo1〜4、7〜10においては、DBSを添加していないサンプルNo.5あるいはNo.11と検出感度に差が見られなかった。このことから、展開させる試料中にアニオン性界面活性剤を添加しても、発光強度に差はみられず、検出感度は変わらないことが示唆された。
以上より、目的物質と酵素標識物質との複合体を含む試料を展開した後に、アニオン性界面活性剤を添加した液で洗浄することによって、発光強度が高まり、目的物質の検出感度が高まることが示唆された。
【0055】
実施例2:様々な界面活性剤における検出感度
様々な種類の界面活性剤を用いた場合の検出感度について検討した。
使用した界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ニッコールBL−25:日光ケミカルズ製)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(NP−40:ナカライテスク製)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(ニッコールHS−240:日光ケミカルズ製)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ユニルーブ70DP−950:日油製)、及びドデシルマルトシド(DM:同仁化学製)、カチオン性界面活性剤として、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロマイド(MTAB:和光純薬製)、アニオン性界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:ナカライテスク製)、両性界面活性剤としてコール酸誘導体(CHAPS:同仁化学製)を用いた。
方法としては、実施例1(4)の洗浄液を調製する工程で、上記の界面活性剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により測定した。
【0056】
〔結果〕
図7は、種々のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界活性剤を用いた場合の発光を検出した結果を示す写真である。
図7より、アニオン性界面活性剤であるSDSを添加したもののみ、発光強度が高まることが確認できた。
このことから、アニオン性界面活性剤を添加したときのみ、発光強度が高まり、試料中に含まれる目的物質の検出感度が高まることが示唆された。
【0057】
実施例3:様々なアニオン性界面活性剤における検出感度
様々なアニオン性界面活性剤を用いた場合の検出感度について検討した。
方法としては、実施例1(4)の洗浄液を調製する工程で、下記に示すアニオン性界面活性剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により測定した。
<使用したアニオン性界面活性剤>
1.ラウリルスルホ酢酸ナトリウム( LSA-F) 0.01%、
2.1-ドデカンスルホン酸ナトリウム0.01%、
3.p-オクチルベンゼンスルホン酸0.01%、
4.1-オクタンスルホン酸0.01%、
5.1-デカンスルホン酸0.01%、
6.オクチル硫酸ナトリウム0.01%、
7.ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホン酸ナトリウム( SBL-2N-27) 0.01%、
8.n-デシル硫酸ナトリウム0.01%、
9.ドデシル硫酸ナトリウム 0.01%、
10.ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01%
【0058】
〔結果〕
図8は、上記に示したアニオン性界面活性剤を添加した場合の発光を検出した結果を示す写真である。図8より、どのアニオン性界面活性剤を用いても、発光強度が高まることが確認できた。このことから、アニオン性界面活性剤を用いることによって、発光強度が高まり、試料中に含まれる目的物質の検出感度が高まることが示唆された。
【0059】
実施例4:アニオン性界面活性剤の濃度別における検出感度
様々な濃度のアニオン性界面活性剤を用いた場合の検出感度について調べた。方法としては、実施例1(4)の工程において、アニオン性界面活性剤の濃度を0.001%、0.005%、0.01%、及び0.05%とした以外は、実施例1と同様の方法により検出した。
【0060】
〔結果〕
図9は、様々な濃度のアニオン性界面活性剤を用いた場合の発光を検出した結果を示す写真である。図9より、アニオン性界面活性剤の濃度は0.001%から0.01%へ高まるにつれて発光強度が高まり、0.01%と0.05%とを比較すると、0.01%の方が蛍光強度が高くなった。このことから、0.01%アニオン性界面活性剤を添加することにより、十分に発光強度を高めることができ、試料中に含まれる目的物質の検出感度を高めることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的物質に結合する捕捉物質が固定化された検出領域を有するクロマトグラフィー用試験具を用いて、試料中に含まれる目的物質を検出する方法であって、
試料と、目的物質に結合する酵素標識物質とを混合する混合工程;
混合工程で得られた混合液をクロマトグラフィー用試験具に添加し、検出領域の捕捉物質で、酵素標識物質と結合している目的物質を捕捉する捕捉工程;
捕捉工程の後、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具の検出領域に添加する添加工程;
発光基質と、検出領域の捕捉物質に目的物質を介して結合している酵素標識物質の酵素とを反応させる反応工程;及び
反応工程により検出領域から生じる発光を検出することにより、試料中に含まれる目的物質を検出する検出工程;
を含む目的物質の検出方法。
【請求項2】
アニオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n−デシル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、p−オクチルベンゼンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムオクタン-1-イル、及びPOE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
添加工程が、アニオン性界面活性剤を含む試薬を、クロマトグラフィー用試験具を用いて展開することにより、アニオン性界面活性剤をクロマトグラフィー用試験具の検出領域に添加する工程である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アニオン性界面活性剤を含む試薬は、緩衝剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
試薬に含まれるアニオン性界面活性剤の濃度が0.0001〜0.1重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
発光基質がジオキセタン類である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
酵素標識物質の酵素がアルカリホスファターゼである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
捕捉物質が抗体であり、酵素標識物質が酵素標識抗体である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
検出工程は、検出領域から生じる発光の発光強度を測定することにより、試料中に含まれる目的物質を定量する工程である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
クロマトグラフィー用試験具は、ラテラルフロー式クロマトグラフィー用試験具、又はフロースルー式クロマトグラフィー用試験具である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
目的物質に結合する酵素標識物質と、
目的物質に結合可能な捕捉物質が固定化された検出領域を有するクロマトグラフィー用試験具と、
アニオン性界面活性剤を含む試薬と、
酵素標識物質と作用することによって発光反応する、該酵素標識物質に対する発光基質とを備える、
試料中に含まれる目的物質を検出するためのクロマトグラフィー用試験キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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