説明

直動発電機

【課題】磁束の漏れをなくすると共に発電量を多くできる直動発電機を提供する。
【解決手段】固定ヨーク2と移動ヨーク3とを備え、移動ヨーク3は、両端部で磁極を固定ヨーク2に臨ませた永久磁石4と中央部で隆起した中央部突起5とを有し、固定ヨーク2は、移動ヨーク3の運動方向に対して直角に巻かれた主コイル6及び第1、第2副コイル7,8と主コイル6の近い側を覆う主内側壁9と第1副コイル7の近い側を覆う第1副内側壁10と第2副コイル8の近い側を覆う第2副内側壁11と主コイル6及び第1、第2副コイル7,8の遠い側を覆う外側壁12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束の漏れをなくすると共に発電量を多くできる直動発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電の原動力には、火力、水力、原子力、熱、風力、潮力などがある。従来の発電機は、これらの原動力から作り出した直線運動を回転運動に変換する運動変換機構を備えている。従来の発電機は、運動変換機構を備えることで大きさが巨大化すると共に、直線運動を回転運動に変換する際の変換損失や機械的接触による摩擦損失のため発電効率が低下する。
【0003】
上記問題を解決するために直線運動のひとつである往復運動を電力に変換する直動発電機が提案されている。直動発電機は、運動変換機構を備えないので小型化が可能であると共に、運動変換の際の変換損失や摩擦損失がないため発電効率が向上する。従来の発電機では振動運動を回転運動に変換することが困難であることから、往復運動中にストローク変動が発生するフリーピストン型スターリングエンジンや、潮力、振動力を発電に利用する直動発電機は、高効率が期待される。
【0004】
図5に示されるように、従来の直動発電機51は、円柱状の内側ヨーク52とその内側ヨーク52と同軸に配置され内側ヨーク52の外側を覆う円筒状の外側ヨーク53とを備える。内側ヨーク52の外周には径方向外方に磁極を向けた永久磁石54が取り付けられており、一方、外側ヨーク53には周方向に巻かれたコイル55が設けられて、コイル55の内側は外側ヨーク53の内側壁56で覆われ、コイル55の外側は外側ヨーク53の外側壁57で覆われている。内側ヨーク52と外側ヨーク53は、相対的に軸方向に運動できる。図示したものは、内側ヨーク52が軸方向に往復運動するようになっている。
【0005】
発電原理は、内側ヨーク52と外側ヨーク53が相対的に軸方向に運動するとき、コイル55に交わる磁束の磁束密度が変化して起電力が発生するというものである。
【0006】
内側ヨーク52には、内側ヨーク52と外側ヨーク53との間にあるエアギャップを磁束が通過することによる磁束密度の低下を防ぐために、外側ヨーク53に向けて隆起した中央部突起58が形成されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−262234号公報
【特許文献2】特開2004−88884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の直動発電機51の動作を図6により説明する。
【0009】
図6(b)では、内側ヨーク52が内側ヨーク52の往復運動範囲の中間に位置している状態(中立位置と呼ぶ)を示している。このとき、内側ヨーク52の上部(又は下部)にある永久磁石54による磁路は、外側ヨーク53の内側壁56、内側ヨーク52の中央部突起58、内側ヨーク52を通る短い閉磁路を形成する。ただし、永久磁石54のN極が外側ヨーク53の内側壁56より上に位置しているため、外側ヨーク53の内側壁56に向かわずに、空間に出ていく図示しない磁束も存在する。
【0010】
内側ヨーク52が中立位置のとき、図示した4つの閉磁路は、いずれも図示した断面においてコイル55を取り囲んでいないため、コイル55に交わる磁束がない。すなわち、上記4つの閉磁路は発電に関与しない。
【0011】
図6(a)のように、内側ヨーク52が内側ヨーク52の往復運動範囲の上部に位置している状態(上位置と呼ぶ)では、内側ヨーク52の上部にある永久磁石54による磁路は、中立位置のときとあまり変わらない。一方、内側ヨーク52の下部にある永久磁石54による磁路は、外側ヨーク53の外側壁57、外側ヨーク53の内側壁56、内側ヨーク52の中央部突起58、内側ヨーク52を通る長い閉磁路を形成する。この長い閉磁路は図示した断面においてコイル55を取り囲んでいる。よって、コイル55に交わる磁束が発生する。
【0012】
図6(c)のように、内側ヨーク52が内側ヨーク52の往復運動範囲の下部に位置している状態(下位置と呼ぶ)では、内側ヨーク52の上部にある永久磁石54による磁路は、外側ヨーク53の外側壁57、外側ヨーク53の内側壁56、内側ヨーク52の中央部突起58、内側ヨーク52を通る長い閉磁路を形成する。このときもコイル55に交わる磁束が発生するが、磁束の方向が上位置と下位置とでは逆方向である。
【0013】
以上のように、内側ヨーク52が往復運動すると、コイル55に交わる磁束が交互に逆方向に発生するので、大きな磁束密度変動が発生して発電が行われる。
【0014】
ところが、上位置においては、内側ヨーク52の上部にある永久磁石54による短い閉磁路が発電に関与しない。下位置においては、内側ヨーク52の下部にある永久磁石54による短い閉磁路が発電に関与しない。中立位置においては、全ての閉磁路が発電に関与しない。そして、これら発電に関与しない閉磁路は、空間に磁束が出ていくことを許容するため外部(直動発電機51の外部)に磁束が漏れる。
【0015】
外部に漏れた磁束は、直動発電機51の近隣に配置されている他の機器(例えば、磁気センサ)に影響を与える。磁束の漏洩を防ぐには、直動発電機51を磁気シールドで囲む必要がある。
【0016】
また、発電に関与しない磁束が発生していると言うことは、永久磁石54が本来有するポテンシャル(発電能力)を無駄にしていることを意味する。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、磁束の漏れをなくすると共に発電量を多くできる直動発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、固定ヨークと、該固定ヨークから所定の間隙を隔てて該固定ヨークに沿って往復運動する移動ヨークとを備え、上記移動ヨークは、往復運動方向両端部に取り付けられ同極性の磁極を上記固定ヨークに臨ませた複数の永久磁石と、往復運動方向中央部に形成されて上記固定ヨークに向け隆起した中央部突起とを有し、上記固定ヨークは、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石から上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石までの範囲内で上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた主コイルと、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第1副コイルと、上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第2副コイルと、上記主コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記移動ヨークの往復運動方向中央部に切れ目が形成された主内側壁と、上記第1副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第1副内側壁と、上記第2副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第2副内側壁と、上記主コイルと上記第1、第2副コイルの上記移動ヨークから遠い側を覆う外側壁とを有するものである。
【0019】
また、本発明は、固定ヨークと、該固定ヨークから所定の間隙を隔てて該固定ヨークに沿って往復運動する移動ヨークとを備え、上記移動ヨークは、往復運動方向中央部に形成されて上記固定ヨークに向け隆起した中央部突起と、該中央部突起よりも往復運動一方向側と反対方向側にそれぞれ組み込まれ同極性の磁極を互いに反対の往復運動方向に臨ませた永久磁石と、往復運動方向両端部にそれぞれ形成されて上記固定ヨークに向け隆起した端部突起とを有し、上記固定ヨークは、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起から上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起までの範囲内で上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた主コイルと、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第1副コイルと、上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第2副コイルと、上記主コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記移動ヨークの往復運動方向中央部に切れ目が形成された主内側壁と、上記第1副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第1副内側壁と、上記第2副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第2副内側壁と、上記主コイルと上記第1、第2副コイルの上記移動ヨークから遠い側を覆う外側壁とを有するものである。
【0020】
上記移動ヨークは、円柱状であり、上記固定ヨークは、上記移動ヨークと同軸に配置され上記移動ヨークの外径より内径が大きい円筒状であり、上記主コイルと上記第1、第2副コイルは、それぞれ上記固定ヨークと同軸に巻かれていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0022】
(1)磁束の漏れをなくすることができる。
【0023】
(2)発電量を多くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1に示されるように、本発明に係る直動発電機1は、固定ヨーク2と、固定ヨーク2から所定の距離を隔てて固定ヨーク2に沿って往復運動する移動ヨーク3とを備えたものである。移動ヨーク3は、往復運動方向両端部に取り付けられ同極性の磁極を固定ヨーク2に臨ませた複数の永久磁石4と、往復運動方向中央部に形成されて固定ヨーク2に向け隆起した中央部突起5とを有する。
【0026】
固定ヨーク2は、主コイル6と第1副コイル7と第2副コイル8と主内側壁9と第1副内側壁10と第2副内側壁11と外側壁12とを有する。
【0027】
主コイル6は、移動ヨーク3が一方向(例えば、図示の上方向とする)に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側(この例では、下となる)に位置する永久磁石4から移動ヨーク3が反対方向(この例では、下方向となる)に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側(この例では、上となる)に位置する永久磁石4までの範囲内で移動ヨーク3の運動方向に対して直角(この例では、水平面に沿う)に巻かれている。
【0028】
第1副コイル7は、移動ヨーク3が一方向(この例では、上となる)に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側(この例では、下となる)に位置する永久磁石4よりも運動方向の反対方向側(この例では、下方向側となる)に位置して移動ヨーク3の運動方向に対して直角(この例では、水平面に沿う)に巻かれている。
【0029】
第2副コイル8は、移動ヨーク3が反対方向(この例では、下方向となる)に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側(この例では、上となる)に位置する永久磁石4よりも運動方向の反対方向側(この例では、上方向側となる)に位置して移動ヨーク3の運動方向に対して直角(この例では、水平面に沿う)に巻かれている。
【0030】
主内側壁9は、主コイル6の移動ヨーク3に近い側を覆い移動ヨーク3の往復運動方向中央部に切れ目13が形成されたものである。主内側壁9に切れ目13があることにより、固定ヨーク2の断面においては、主内側壁9の上部と外側壁12と主内側壁9の下部によって主コイル6がC字状に囲まれる。切れ目13の上下幅は、移動ヨーク3の中央部突起5の上下幅より短い。
【0031】
第1副内側壁10は、第1副コイル7の移動ヨーク3に近い側を覆い、主内側壁9からは切れ目13と同幅程度離間している。固定ヨーク2の断面においては、第1副内側壁10と外側壁12と主内側壁9の上端によって第1副コイル7がC字状に囲まれる。
【0032】
第2副内側壁11は、第2副コイル8の移動ヨーク3に近い側を覆い、主内側壁9からは切れ目13と同幅程度離間している。固定ヨーク2の断面においては、第2副内側壁11と外側壁12と主内側壁9の下端によって第2副コイル8がC字状に囲まれる。
【0033】
外側壁12は、主コイル6と第1副コイル7と第2副コイル8の移動ヨーク3から遠い側を覆う。外側壁12と第1副内側壁10は固定ヨーク2の最上部で一体的に繋がっており、外側壁12と第2副内側壁11は固定ヨーク2の最下部で一体的に繋がっており、外側壁12と主内側壁9は主内側壁9の最上部と最下部でそれぞれ一体的に繋がっている。固定ヨーク2は、外側壁12が固定構造物に固定されている。
【0034】
図示した実施形態は、直動発電機1が往復運動の軸である上下軸を中心にして回転対称に形成されたものである。すなわち、移動ヨーク3は、上下軸を中心とする円柱状に形成されており、以下、内側ヨーク3と呼ぶ。固定ヨーク2は、移動ヨーク3と同軸に配置され移動ヨーク3の外径より内径が大きい円筒状に形成されており、以下、外側ヨーク2と呼ぶ。主コイル6と第1副コイル7と第2副コイル8は、それぞれ固定ヨーク2と同軸に巻かれている。永久磁石4は、内側ヨーク3の外径とほぼ同じ内径を有し、内周面にS極が形成され、外周面にN極が形成された環状のものである。
【0035】
図1に示した本発明の直動発電機1は、図5に示した従来の直動発電機51に第1、第2副コイル7,8と第1、第2副内側壁10,11を付加して構成される。これは、破線で囲んだ副発電機14が付加されたことに相当する。
【0036】
次に、直動発電機1の動作を説明する。
【0037】
図2(b)に示されるように、内側ヨーク3が内側ヨーク3の往復運動範囲の中間に位置している状態(中立位置)のとき、内側ヨーク3の上部の永久磁石4は、外側ヨーク2の主内側壁9の上端と第1副内側壁10との隙間にかかって位置し、内側ヨーク3の下部の永久磁石4は、外側ヨーク2の主内側壁9の下端と第2副内側壁11との隙間にかかって位置している。これにより、上下の永久磁石4の一部は、外側ヨーク2の主内側壁9の上端又は下端に近接して臨んでいる。一方、内側ヨーク3の中央部突起5は、切れ目2cの上下において外側ヨーク2の主内側壁9に近接して臨んでいる。
【0038】
このとき、内側ヨーク3の上部の永久磁石4による磁路は、外側ヨーク2の主内側壁9上部、内側ヨーク3の中央部突起5、内側ヨーク3を通る閉磁路を形成し、下部の永久磁石4による磁路は、外側ヨーク2の主内側壁9下部、内側ヨーク3の中央部突起5、内側ヨーク3を通る閉磁路を形成する。
【0039】
図2(a)のように、内側ヨーク3が内側ヨーク3の往復運動範囲の上部に位置している状態(上位置)になると、内側ヨーク3の上部においては、内側ヨーク3の上部の永久磁石4が外側ヨーク2の第1副内側壁10に近接して臨み、内側ヨーク3の中央部においては、中央部突起5が切れ目13の上においてのみ外側ヨーク2の主内側壁9に対し近接して臨み、さらに内側ヨーク3の下部においては、内側ヨーク3の下部の永久磁石4が外側ヨーク2の主内側壁9に対し近接して臨む。
【0040】
このとき、内側ヨーク3の上部の永久磁石4による磁路は、外側ヨーク2の第1副内側壁10、外側壁12、主内側壁9上部、中央部突起5、内側ヨーク3を通る短い閉磁路を形成する。一方、内側ヨーク3の下部の永久磁石4による磁路は、外側ヨーク2の主内側壁9下端、外側壁12、主内側壁9上部、内側ヨーク3の中央部突起5、内側ヨーク3を通る長い閉磁路を形成する。
【0041】
下部の永久磁石4による長い閉磁路が図示した断面においてコイル6を取り囲んで、コイル6に交わる磁束が発生することは、従来の直動発電機51と同じである。しかし、上部の永久磁石4による閉磁路が従来の直動発電機51と大きく異なる。すなわち、上部の永久磁石4による閉磁路は図示した断面において第1副コイル7を取り囲んでいるため、第1副コイル7に交わる磁束が発生する。
【0042】
図2(c)のように、内側ヨーク3が内側ヨーク3の往復運動範囲の下部に位置している状態(下位置)になると、内側ヨーク3の上部にある永久磁石4による磁路は、外側ヨーク2の主内側壁9上端、外側壁12、主内側壁9下部、内側ヨーク3の中央部突起5、内側ヨーク3を通る長い閉磁路を形成する。このときも、従来の直動発電機51とは異なり、内側ヨーク3の下部の永久磁石4による磁路は、外側ヨーク2の第2副内側壁11、外側壁12、主内側壁9下部、中央部突起5、内側ヨーク3を通る短い閉磁路を形成する。このため、第2副コイル8に交わる磁束が発生する。
【0043】
既に述べたように、従来の直動発電機51では、磁束が外部に漏れることがあったが、本発明の直動発電機1は、磁束の漏れが従来の直動発電機51よりも少なくなり、他の機器(例えば、磁気センサ)への磁気的影響が少なくなる。
【0044】
また、本発明の直動発電機1は、主コイル6に交わる磁束に加えて、第1副コイル7、第2副コイル8に交わる磁束が発生する。このため、従来に比べて、発電量が増加し、効率的な発電が可能となる。
【0045】
本発明の直動発電機1は、従来の直動発電機51と同じ大きさ、同じ発電量であるならば、永久磁石4の量を減らすことができる。
【0046】
図1中、寸法aと寸法cは同程度が好ましい。また、寸法bは永久磁石4の往復運動方向長さ以上であることが好ましい。
【0047】
なお、上記実施形態では、永久磁石4のN極を径方向外方に向けS極を径方向内方に向けたが、永久磁石4のN極を径方向内方に向けS極を径方向外方に向けてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、内側ヨーク3の往復運動方向を上下方向としたが、往復運動方向が他の方向であっても、本発明は適用できる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0050】
図3に示されるように、本発明に係る直動発電機31は、固定ヨーク32と、固定ヨーク32から所定の距離を隔てて固定ヨーク32に沿って往復運動する移動ヨーク33とを備えたものである。ここでも、図1の直動発電機1と同様に、直動発電機31が往復運動の軸である上下軸を中心にして回転対称に形成されている。よって、移動ヨーク33は内側ヨーク33と呼ぶ。固定ヨーク32は外側ヨーク32と呼ぶ。
【0051】
内側ヨーク33は、往復運動方向中央部に形成されて外側ヨーク32に向け隆起した中央部突起34と、中央部突起34よりも往復運動一方向側と反対方向側にそれぞれ組み込まれ同極性の磁極を互いに反対の往復運動方向に臨ませた永久磁石35と、往復運動方向両端部にそれぞれ形成されて外側ヨーク32に向け隆起した端部突起36とを有する。
【0052】
内側ヨーク33は、中央部突起34と一体的に形成され中央部突起34の上下に延びて中央部突起34よりも外径が小さい円柱状の内側ヨーク本体33aと、内側ヨーク本体33aと外径が同じ円盤状の2つの永久磁石35と、内側ヨーク本体33aと外径が同じ部分と中央部突起34と外径が同じ部分とを有するほぼ円柱状の2つの突起用フランジ33bとを軸方向に重ね合わせたものである。内側ヨーク本体33aの上に配置された永久磁石35はN極を上に向け、内側ヨーク本体3aの下に配置された永久磁石35はN極を下に向けている。突起用フランジ33bは、内側ヨーク33の上端と下端に端部突起36を形成する。
【0053】
端部突起36は、図1の直動発電機1における永久磁石35と同形状で同じ位置を占める。中央部突起34は、直動発電機1における中央部突起5と同形状で同じ位置を占める。
【0054】
外側ヨーク32は、主コイル37と第1副コイル38と第2副コイル39と主内側壁40と第1副内側壁41と第2副内側壁42と外側壁43とを有する。これら外側ヨーク32の各部構成は、図1の直動発電機1の外側ヨーク2と同じであるので、説明は省略する。
【0055】
図4(a)〜図4(c)は直動発電機31の動作を説明する図である。
【0056】
直動発電機31は、永久磁石35の形状、配置箇所、磁極の向きが直動発電機1の永久磁石4とは異なるが、内側ヨーク33と内側ヨーク3とが磁気的にほぼ等価となる。外側ヨーク32は外側ヨーク2と同一である。このため、内側ヨーク33が往復運動したときの磁束の変化の様子は、直動発電機1について示した図2(a)〜図2(c)と同じになる。
【0057】
したがって、直動発電機31においても、磁束が外部に漏れない効果、及び発電量が増加する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態を示す直動発電機の断面図である。
【図2】(a)は図1の直動発電機の上位置における断面図、(b)は図1の直動発電機の中立位置における断面図、(c)は図1の直動発電機の下位置における断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す直動発電機の断面図である。
【図4】(a)は図3の直動発電機の上位置における断面図、(b)は図3の直動発電機の中立位置における断面図、(c)は図3の直動発電機の下位置における断面図である。
【図5】従来の直動発電機の断面図である。
【図6】(a)は図5の直動発電機の上位置における断面図、(b)は図5の直動発電機の中立位置における断面図、(c)は図5の直動発電機の下位置における断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 直動発電機
2 固定ヨーク(外側ヨーク)
3 移動ヨーク(内側ヨーク)
4 永久磁石
5 中央部突起
6 主コイル
7 第1副コイル
8 第2副コイル
9 主内側壁
10 第1副内側壁
11 第2副内側壁
12 外側壁
13 切れ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ヨークと、該固定ヨークから所定の間隙を隔てて該固定ヨークに沿って往復運動する移動ヨークとを備え、
上記移動ヨークは、往復運動方向両端部に取り付けられ同極性の磁極を上記固定ヨークに臨ませた複数の永久磁石と、往復運動方向中央部に形成されて上記固定ヨークに向け隆起した中央部突起とを有し、
上記固定ヨークは、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石から上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石までの範囲内で上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた主コイルと、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第1副コイルと、上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記永久磁石よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第2副コイルと、上記主コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記移動ヨークの往復運動方向中央部に切れ目が形成された主内側壁と、上記第1副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第1副内側壁と、上記第2副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第2副内側壁と、上記主コイルと上記第1、第2副コイルの上記移動ヨークから遠い側を覆う外側壁とを有することを特徴とする直動発電機。
【請求項2】
固定ヨークと、該固定ヨークから所定の間隙を隔てて該固定ヨークに沿って往復運動する移動ヨークとを備え、
上記移動ヨークは、往復運動方向中央部に形成されて上記固定ヨークに向け隆起した中央部突起と、該中央部突起よりも往復運動一方向側と反対方向側にそれぞれ組み込まれ同極性の磁極を互いに反対の往復運動方向に臨ませた永久磁石と、往復運動方向両端部にそれぞれ形成されて上記固定ヨークに向け隆起した端部突起とを有し、
上記固定ヨークは、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起から上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起までの範囲内で上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた主コイルと、上記移動ヨークが一方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第1副コイルと、上記移動ヨークが反対方向に最も大きく運動したときのその運動方向と反対側に位置する上記端部突起よりも運動方向の反対方向側に位置して上記移動ヨークの運動方向に対して直角に巻かれた第2副コイルと、上記主コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記移動ヨークの往復運動方向中央部に切れ目が形成された主内側壁と、上記第1副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第1副内側壁と、上記第2副コイルの上記移動ヨークに近い側を覆い上記主内側壁から離間した第2副内側壁と、上記主コイルと上記第1、第2副コイルの上記移動ヨークから遠い側を覆う外側壁とを有することを特徴とする直動発電機。
【請求項3】
上記移動ヨークは、円柱状であり、
上記固定ヨークは、上記移動ヨークと同軸に配置され上記移動ヨークの外径より内径が大きい円筒状であり、
上記主コイルと上記第1、第2副コイルは、それぞれ上記固定ヨークと同軸に巻かれていることを特徴とする請求項1又は2記載の直動発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−110039(P2010−110039A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276862(P2008−276862)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)