説明

直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒及びその製造方法

【課題】 直接メタノール型燃料電池の酸素極触媒として、酸素還元反応には活性で、メタノール酸化反応には不活性であり、カーボン基体に担持された粒径が3nm以下のAu微粒子触媒を提供する。
【解決手段】 カーボン基体上に、AuとSを含む粒子が担持されたことを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用触媒に関する。更に詳細には、本発明は直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒に好適なAuS触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギーの大部分は、火力発電、水力発電又は原子力発電などにより供給されてきた。しかし、火力発電は石油や石炭などの化石燃料を燃焼させるため大規模な環境汚染をもたらすばかりか、石油などの資源枯渇が問題視されるようになってきた。また、水力発電は大規模なダム建設を必要とし、それによる自然破壊が懸念されるばかりか、建設適地も限られている。原子力発電は事故の際の放射能汚染が致命的であるばかりか、寿命を迎えた原子炉の廃炉問題などもあり、世界的には建設が抑制される方向に動いている。
【0003】
大規模な施設を必要とせず、環境汚染も起こさない発電方法として風力発電や太陽光発電が世界各国で利用されるようになり、我が国でも一部の地域で実際に風力発電や太陽光発電が実用化されている。しかし、風力発電は風が吹かなければ発電できず、また太陽光発電は日光照射がなければ発電できないなど、自然現象に左右され、安定的な電力供給ができないという欠点がある。また、風力発電では、風の強さにより、発電した電力の周波数が変動し、電気機器の故障原因となっていた。
【0004】
そこで、最近は、水素エネルギーから電気エネルギーを取り出すことができる発電装置例えば、水素燃料電池などの開発研究が活発になってきた。水素は水を分解することにより得られ、地球上に無尽蔵に存在するばかりか、物質量当たりに含まれる化学エネルギー量が大きく、しかも、エネルギー源として利用するときに有害物質や地球温暖化ガスを発生しないという利点を有する。
【0005】
水素ガスの代わりに、メタノールを使用する燃料電池の研究も活発に行われている。液体燃料であるメタノールを直接使用する直接メタノール型燃料電池は、燃料の取り扱い易さに加え、安価な燃料ということで家庭用や産業用の比較的小出力規模の電源として期待されている。メタノール・酸素燃料電池の理論出力電圧は、水素燃料のものとほぼ同じ1.2V(25℃)であり、原理的には同様の特性が期待できる。
【0006】
直接メタノール型燃料電池ではアノードでメタノールを酸化させると同時に、カソードでは酸素を還元して電気エネルギーを取り出している。これらの酸化還元反応は常温では進み難いため、直接メタノール型燃料電池には触媒が使用されている。初期の燃料電池では、白金(Pt)を炭素基体上に析出担持させ触媒として使用してきた。Ptはメタノール酸化反応及び酸素還元反応に対して触媒活性を有している。直接メタノール型燃料電池では、メタノール極触媒と酸素極触媒との間に高分子固体電解質膜(例えば、デュポン社のナフィオン膜など)が存在している。この高分子固体電解質膜は本来プロトンをメタノール極から酸素極に運ぶ役割を持っているが、同時にメタノールも透過してしまう。この現象は“メタノールクロスオーバー”と呼ばれている。メタノールクロスオーバーにより酸素極に到達したメタノールは酸素極Pt触媒上で酸化されて逆電流が流れる。このため、電池電圧が低下する大きな原因となっている。このメタノールクロスオーバーを低減させるため、高分子固体電解質膜を従来のナフィオン(全フッ素化アルキルスルフォン酸)から、炭化水素系スルフォン酸に置き換える検討がなされている。しかし、高分子固体電解質膜を炭化水素系スルフォン酸に置き換えると、メタノールクロスオーバーは減少するが、プロトン導電性が低下するというトレイド・オフの関係があり、これまでにメタノールクロスオーバーを抑止し、プロトン導電性をナフィオン並に保った高分子固体電解質膜は未だ開発されていない。
【0007】
そこで、特許文献1では、酸素極触媒として、酸素の還元反応には活性であり、メタノールの酸化には不活性なAuあるいはAgを使用することが提案されている。メタノールの酸化に対して不活性であれば、メタノールクロスオーバーで酸素極に到達したメタノールの酸化反応は起こらず、電池電圧の低下を抑えることが出来る。また、一般的に、触媒は、その粒径が減少するに従って表面積が増加し、触媒活性が向上する。しかし、特許文献1では、Au触媒の粒径及び合成方法が全く開示されていない。
【0008】
また、特許文献2には、粒径1〜200nmのAu微粒子を酸素還元用触媒として用いることが提案されている。この手法は、Au微粒子をAu導電性基体上に電気メッキにより生成させる方法である。直接メタノール型燃料電池用触媒の担体として一般的なカーボンブラック上の析出については全く開示されていない。また、特許文献2によれば、酸素還元反応に対して有効に働いた電析Auの粒径は5〜200nmであった。
【0009】
【特許文献1】特開平11−7964号公報
【特許文献2】特開2003−249230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、直接メタノール型燃料電池の酸素極触媒として、酸素還元反応には活性で、メタノール酸化反応には不活性であり、カーボン基体に担持された粒径が3nm以下のAu微粒子触媒及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための請求項1の手段は、カーボン基体上に、AuとSを含む粒子が担持されていることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒である。
【0012】
前記課題を解決するための請求項2の手段は、請求項1に記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒において、AuとSを含む粒子の粒径が3nm以下であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒である。
【0013】
前記課題を解決するための請求項3の手段は、(1)一種類以上のアルコールからなる有機溶剤中に、Auの塩又は錯体と、S含有化合物を溶解させるステップと、(2)前記(1)で得られた溶液にカーボン基体を加えるステップと、(3)前記(2)で得られた混合溶液を、不活性ガス雰囲気中で、アルコールの沸点近傍で加熱還流するステップと、(4)生成した、カーボン基体上に担持されたAuS触媒を濾別、洗浄及び乾燥するステップとからなる直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法である。
【0014】
前記課題を解決するための請求項4の手段は、請求項3に記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法において、前記ステップ(1)において、前記S含有化合物はAuの塩又は錯体のモル数に対して、5モル%〜50モル%であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法である。
【0015】
前記課題を解決するための請求項5の手段は、請求項3に記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法において、前記ステップ(1)において、前記S含有化合物は+5価未満の原子価のSを含有する化合物であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法である。
【0016】
前記課題を解決するための請求項6の手段は、請求項5に記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法において、前記S含有化合物は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、過硫酸塩、ピロ硫酸塩及びピロ亜硫酸塩からなる群から選択される少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法である。
【0017】
前記課題を解決するための請求項7の手段は、請求項6に記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法において、前記S含有化合物は、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルコール還元法によりカーボン基体上にAu触媒粒子を析出させる際、Au触媒微粒子にSを添加し、AuS二元系とすることにより、触媒粒子の粒径を従来のAu単独触媒の場合に比べて、3nm以下にまで微粒子化できる。その結果、反応面積が増大し、燃料電池における酸化還元反応の触媒活性を高めることができる。また、AuS二元系とすることにより、酸化還元反応には活性で、メタノール酸化反応には不活性となるので、メタノールクロスオーバーによる電圧降下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らが鋭意実験と研究を行った結果、Au粒子をカーボン基体上に還元析出させる際、反応溶液中にSの供給源を存在させることにより、カーボン基体上に担持され、粒径が3nm以下のAuS触媒を合成できることを見出した。その理由は定かではないが、Au析出中に、例えば、S供給源として硫黄含有化合物が存在すると、Auの粒子成長が抑制されるためと推測される。
【0020】
本発明のAuS触媒微粒子の製造方法は基本的に、(1)一種類以上のアルコールからなる有機溶剤中に、Auの塩又は錯体と、S含有化合物を溶解させるステップと、(2)前記(1)で得られた溶液にカーボン基体を加えるステップと、(3)前記(2)で得られた混合溶液を、不活性ガス雰囲気中で、アルコールの沸点近傍で加熱還流するステップと、(4)生成した、カーボン基体上に担持されたAuS触媒を濾別、洗浄及び乾燥するステップとからなる。
【0021】
本発明のAuS触媒微粒子を生成するために使用されるAuの塩又は錯体は、例えば、塩化金カリウム(KAuCl)、塩化金(III)ナトリウム・二水和物(NaAuCl・2HO)及びテトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl・4HO)などである。
【0022】
本発明のAuS触媒微粒子を生成するために使用されるS含有化合物は、+5価未満の原子価のS含有化合物であることが好ましい。+5価の原子価を有するSは、Neと同じ電子配置であるため、オクテット則により化学的に安定となるので本発明の目的には適さない。従って、+5価のSを有する硫酸(HSO)は本発明では使用できない。本発明で使用できるSの塩は、例えば、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、過硫酸塩、ピロ硫酸塩又はピロ亜硫酸塩などである。塩としては、アルカリ金属塩などが好ましい。例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムなどが好適である。
【0023】
本発明のAuS触媒微粒子を生成する際のS含有化合物の添加量は、Auのモル数に対して5〜50%の範囲内であることが好ましい。S含有化合物の添加量が5%未満ではAu触媒を微粒子化する効果が不十分となる。一方、S含有化合物の添加量が50%超では、その効果が飽和するばかりか、Auの存在量が低下し、起電力が低下する。
【0024】
本発明の加熱還流処理で使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n-アミルアルコール、sec-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n-プロピルアルコール、2-エトキシアルコール及び1,2-ヘキサデカンジオールが挙げられる。これらアルコールは1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。また水酸基を有するカルボン酸類としてクエン酸ナトリウム、クエン酸、タンニン酸を使用することもできる。還流の際、微粒子の酸化を防止するため、反応系内を窒素或いはアルゴン等の不活性ガスで置換しながら還流を行うことが好ましい。
【0025】
アルコール加熱還流処理における加熱温度及び還流時間は使用するアルコールの種類に応じて変化する。しかし、一般的に、加熱温度は60〜200℃程度であり、還流時間は30分間〜6時間の範囲内である。
【0026】
本発明のアルコール還元法において使用される担持用炭素粉末は、例えば、比表面積が60〜300m/gの導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチユーブなどが好適である。
【実施例1】
【0027】
テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl・4HO)2.54ミリモルとチオ硫酸ナトリウム0.254ミリモルをエタノール/水溶液(50vol%/50vol%)に溶解させ、炭素基体(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させたエタノール/水溶液(50vol%/50vol%)を加えた。水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応系内のpHを11に調整した。その後、窒素ガス雰囲気下、95℃でこの溶液を撹絆しながら1時間還流し、AuS触媒微粒子を炭素基体上に析出担持させた。反応終了後、濾過洗浄して乾燥させ触媒を得た。還元析出された触媒微粒子を蛍光X線で分析した結果、Au及びSの存在が確認された。
【実施例2】
【0028】
煮沸により溶存酸素を除去したイオン交換水にクエン酸とタンニン酸を溶解させ、その後、炭素基体(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを添加した。次にテトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl・4HO)2.54ミリモルとチオ硫酸ナトリウム0.254ミリモルを添加した。その後、窒素ガス雰囲気下、100℃で1時間還流してAuS触媒微粒子を炭素基体上に析出担持させた。反応終了後、濾過洗浄して乾燥させ触媒を得た。還元析出された触媒微粒子を蛍光X線で分析した結果、Au及びSの存在が確認された。
【比較例1】
【0029】
テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl・4HO)2.54ミリモルをエタノール/水溶液(50vol%/50vol%)に溶解させ、炭素基体(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させたエタノール/水溶液(50vol%/50vol%)を加えた。水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応系内のpHを11に調整した。その後、窒素ガス雰囲気下、95℃でこの溶液を撹絆しながら1時間還流し、Au触媒微粒子を炭素基体上に析出担持させた。反応終了後、濾過洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【比較例2】
【0030】
煮沸により溶存酸素を除去したイオン交換水にクエン酸とタンニン酸を溶解させた。その後、炭素基体(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを添加した。次にテトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl・4HO)2.54ミリモルを添加した。その後、窒素ガス雰囲気下、100℃で1時間還流してAu触媒微粒子を炭素基体上に析出担持させた。反応終了後、濾過洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【0031】
実施例1,2及び比較例1,2で得られた触媒の粒径を電子顕微鏡で調べた。その結果を下記の表1に示す。実施例1,2では触媒の粒径は〜3nmとなっているのに対し、比較例1では〜25nm、比較例2ではAu触媒の粒径が〜5nmと大きい。この結果からS添加によるAu触媒の微粒子化が確認できた。
【0032】
【表1】

【実施例3】
【0033】
実施例1で得られたバルカンXC−72Rに担持したAuS触媒に純水とナフィオンのアルコール溶液を加えて撹絆した後、その粘度を調整して酸素極触媒用インクとした。これをテフロンシート上にAuS触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。塗膜を乾燥させた後、テフロンシートを剥がした。また、バルカンXC−72Rに担持されたPtRu触媒に純水とナフィオンのアルコール溶液を加えて撹絆した後、その粘度を調整してメタノール極触媒用インクとした。これをテフロンシート上にPtRu触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。塗膜を乾燥させた後、テフロンシートを剥がした。その後、AuS酸素極触媒とPtRuメタノール極触媒をホットプレスにより、高分子固体電解質膜(デュポン社製ナフィオン)の両側に接着させた。燃料としてメタノールを用い、図1に示す直接メタノール型燃料電池を作製した。
図1において、符号10は直接メタノール型燃料電池を示す。また、符号12は酸素極側集電体、14は酸素極側拡散層、16は固体高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン)、18はメタノール極側拡散層、20はメタノール極側集電体、22はメタノール燃料タンク、24は空気導入孔、26は酸素極(AuS)触媒層、28はメタノール極(PtRu)触媒層、30はメタノール燃料導入孔をそれぞれ示す。
酸素極側集電体12は、空気導入孔24を介して空気(酸素)を取り込む構造体としての機能を有すると共に、集電機能も有している。固体高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン膜)16は、メタノール極で発生したプロトンを酸素極側に輸送する機能と、更に、メタノール極と酸素極の短絡を防止するセパレータとしての機能を備えている。このように構成される直接メタノール型燃料電池10において、メタノール極側集電体20から供給されるメタノール液体燃料はメタノール極側拡散層18を介してメタノール極触媒層28に導かれて酸化され、COと電子とプロトンに変換され、このプロトンは固体高分子電解質膜16を介して酸素極側に移動する。酸素極では酸素極側集電体12から取り込まれた酸素がメタノール極で生成した電子により還元され、これと上記のプロトンとが反応して水を生成する。図1に示される直接メタノール型燃料電池10では、このようなメタノールの酸化反応及び酸素の還元反応により発電が起こる。
【実施例4】
【0034】
実施例3において酸素極触媒として、実施例2で合成したAuSを用いた事以外は実施例3と同様にメタノール燃料電池を作製した。
【比較例3】
【0035】
実施例3において酸素極触媒として、比較例1のAuを用いた事以外は実施例3と同様にメタノール燃料電池を作製した。
【比較例4】
【0036】
実施例3において酸素極触媒として、比較例2のAuを用いた事以外は実施例3と同様にメタノール燃料電池を作製した。
【比較例5】
【0037】
実施例3において酸素極触媒は粒径約4nmのPtを用いた事以外は実施例3と同様にメタノール燃料電池を作製した。
【0038】
表2に電流密度が150mA/cm時の実施例3,4及び比較例3〜5の直接メタノール型燃料電池の電池電圧を示す。実施例3及び4では酸素極触媒としてメタノール酸化に不活性であり、かつ粒径が〜3nmのAuSを用いているため高い電圧が得られている。酸素極触媒としてPtを用いた比較例5ではメタノールクロスオーバーにより酸素極でもメタノールの酸化反応が起こり、電池電圧は実施例よりも低い値となっている。比較例3及び4では、メタノール酸化に不活性であるAuを用いているが、粒径が大きいため、実施例よりも低い電池電圧を示す。以上の結果から、直接メタノール型燃料電池の酸素極触媒として、粒径が3nm以下でメタノール酸化に対して不活性なAuS触媒を用いる事で酸素極でのメタノール酸化反応が無くなり、高い電池電圧を得る事が出来る。
【0039】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】直接メタノール型燃料電池の一例の部分概要構成図である。
【符号の説明】
【0041】
10 直接メタノール型燃料電池
12 酸素極側集電体
14 酸素極側拡散層
16 固体高分子電解質膜
18 メタノール極側拡散層
20 メタノール極側集電体
22 メタノール燃料タンク
24 空気導入孔
26 酸素極(AuS)触媒層
28 メタノール極(PtRu)触媒層
30 メタノール燃料導入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン基体上に、AuとSを含む粒子が担持されていることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒。
【請求項2】
前記AuとSを含む粒子の粒径が3nm以下であることを特徴とする請求項1記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒。
【請求項3】
(1)一種類以上のアルコールからなる有機溶剤中に、Auの塩又は錯体と、S含有化合物を溶解させるステップと、
(2)前記(1)で得られた溶液にカーボン基体を加えるステップと、
(3)前記(2)で得られた混合溶液を、不活性ガス雰囲気中で、アルコールの沸点近傍で加熱還流するステップと、
(4)生成した、カーボン基体上に担持されたAuS触媒を濾別、洗浄及び乾燥するステップとからなることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(1)において、前記S含有化合物はAuの塩又は錯体のモル数に対して、5モル%〜50モル%であることを特徴とする請求項3記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(1)において、前記S含有化合物は+5価未満の原子価のSを含有する化合物であることを特徴とする請求項3記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法。
【請求項6】
前記S含有化合物は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、過硫酸塩、ピロ硫酸塩及びピロ亜硫酸塩からなる群から選択される少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする請求項5記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法。
【請求項7】
前記S含有化合物は、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする請求項6記載の直接メタノール型燃料電池用酸素極触媒の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−66306(P2006−66306A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249518(P2004−249518)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】