説明

直流発電設備の運転準備方法

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】本発明は、直流発電設備の運転準備方法に係り、特に、燃料電池、太陽電池等の直流発電装置群が複数台ずつ複数系統に分かれて並列回路を構成する直流発電設備の運転準備方法に関する。
【従来の技術】
【0002】発電プラントにおいては、主として化学反応によって直流電力を発生する電池として燃料電池を用いたものがある。この種の燃料電池から発生する出力を電力エネルギーとして利用するに際して、電池の特性を運転点での電池の出力を基に、理論的あるいは経験的に把握しようとすることが試みられている。
【0003】このような試みの一例としては、特開昭60−21176号公報に記載されているように、燃料電池の電解質保有量を電池の出力電圧によって把握しようとするものがある。
【0004】また、燃料電池を用いて大電力を発電する設備を構築するに際しては、多数の電池セルが積層された電池スタックを系統数に応じて配置するとともに各系統の電池スタックを互いに直列接続する方法が採用されている。この場合、各電池スタックに燃料等を供給するための配管も系統に応じて敷設される。電池スタックは移動が困難であるため、燃料等の配管および電池スタックの位置はあらかじめ決められている。
【0005】電池スタック群の配置に関する技術としては、電池スタックの設置面に各スタックが共有できるメインテナンススペースを設けたものとして特開昭62−229771号公報、電池スタッックを複数個多段に収納するようにしたものとして特開昭63−10475号公報、電池スタックを複数個設置可能な基礎ベースを用いるようにしたものとして特開昭62−37880号公報、基礎ベースを多段に設置するようにしたものとして特開昭63−304581号公報、特開平1−107461号公報が挙げられる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】上記従来技術においては、電池を用いて設備を運用するに際しては、主として個々の電池セルの特性を把握するようになっており、このような方法では、大規模な直流発電設備を考慮した場合適切な運用を図ることができない。すなわち、電池スタック群の特性は個々の電池セルの特性が関連したものであり、個々の電池セルの特性から電池スタックの特性を解析することは困難である。また、電池スタックの特性は長時間の運転による劣化により時々刻々と変化するので、時期に応じて電池の特性を把握する必要がある。このため、より簡便な電池特性の把握方法が必要である。
【0007】一方、電池スタック群を配置するに際して、従来技術においては、各電池スタックを同等に扱うようになっている。このような方法では、実際の運用を考えた場合、大規模な直流発電設備を適切に運用することができない。すなわち、各電池スタックはすべて同一の性能を持つように製造されるとは限らず、その特性にはばらつきが生じる。このばらつきは経年変化によって一層大きくなると考えられ、直流発電設備を運用していく過程で、電池スタック群の中のいくつかの電池スタックに無理な運用が強いられる可能性がある。
【0008】本発明の目的は、運転開始前に直流発電装置の運用負荷時の性能を推定し、この推定を基に各直流発電装置の性能に合った系統を構成することができる直流発電設備の運転準備方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】前記目的を達成するために、本発明は、電池による直流発電装置群を複数台ずつ複数系統に分けて配置し、各系統に配置された各直流発電装置の使用開始に伴って各直流発電装置の開路時電圧を順次測定し、各直流発電装置の運転を開始するに先立って、前回までに測定された各直流発電装置の開路時電圧を、使用開始時からの運転経過時間との関係でプロットしたものを各直流発電装置の電池特性の履歴とし、これらの開路時電圧値を基に、運用経過時間を考慮して今回の運転時における各直流発電装置の開路時電圧推定し、この推定結果と今回測定した各直流発電装置の開路時電圧との差が許容範囲内にあるときには今回の推定結果を妥当な値として、今回の推定結果と運用スケジュールに従って各直流発電装置の組み合わせを選択し、この選択に従って各直流発電装置が属すべき系統を設定し、この設定に従って各系統に属する直流発電装置群を系統毎にそれぞれ互いに直列接続することを特徴とする直流発電設備の運転準備方法を採用したものである。
【0010】前記運転準備方法を採用するに際して、各系統の直流発電装置配置位置に各系統の直流発電装置の電極と接続可能な主配線群を系統数に対応づけて予め布設し、各系統の主配線群の直流発電装置配置位置に各系統の主配線と交差する一対の補助配線を予め布設し、各主配線と各補助配線とが交差するところにそれぞれ開閉器を予め配設し各直流発電装置配置位置に配置された各直流発電装置を測定値従った各開閉器の開閉により指定の直流発電装置に接続することが望ましい。
【0011】各系統の直流発電装置配置位置にプラス電極用配線とマイナス電極用配線及び複数の共通配線を予め配設し、各系統の直流発電装置配置位置に沿って各直流発電装置配置位置間を結ぶ移動路を予め布設し、各移動路上を移動可能な搬送手段を各直流発電装置配置位置に配置し、各直流発電装置をそれぞれ搬送手段上に載置し、測定値に従った搬送手段の移動により各直流発電装置の位置を設定し、位置の設定された直流発電装置の各電極を指定の配線に接続することが望ましい
【0012】またメンテナンス時期を設定するに際しは、各直流発電装置に関する測定値を判別し、測定値の近いもの同志を同一の系統に分類し、この分類に従って各直流発電装置の系統を設定すると共に分類に従って各系統のメンテナンス時期の順番を設定することができるとともに、各直流発電装置に関する測定値を判別し、測定値の離れたもの同志を同一の系統に分類し、この分類に従って各直流発電装置の系統を設定すると共に分類に従って各系統のメンテナンス時期を合わせることができる
【0013】また、4台の直流発電装置を2系統に分けて2直列2並列で配置するに際しては、各直流発電装置の組合せとして3通りのパターンを設定し、主配線群として4本の線路を布設することが望ましい。
【作用】
【0014】前記した手段によれば、直流発電装置群が複数台ずつ複数系統に分かれて配置されたときに、各系統に配置された各直流発電装置の使用開始に伴って各直流発電装置の開路時電圧が順次測定され、各直流発電装置の運転を開始するに先立って、今回運転する前に測定された各直流発電装置の開路時電圧を、使用開始時からの運転経過時間との関係でプロットしたものを各直流発電装置の電池特性の履歴とし、これらの開路時電圧値を基に、運用経過時間を考慮して今回の運転時における各直流発電装置の開路時電圧推定され、この推定結果と今回測定された各直流発電装置の開路時電圧との差が許容範囲内にあるときには、今回の推定結果を妥当な値として、今回の推定結果と運用スケジュールに従って各直流発電装置の組み合わせが選択され、この選択に従って各直流発電装置が属すべき系統が設定される。すなわち、各直流発電装置の性能のばらつきを考慮して系統を設定する。例えば、あらかじめ配置された系統とは異なる系統に属することが適切なときには指定の系統を設定する。そしてこの設定に従って各系統に属する直流発電装置群を系統ごとにそれぞれ互いに直列接続する。この場合、各直流発電装置があらかじめ配置された系統に全て属するときには、各直流発電装置が配置された位置で系統ごとに各直流発電装置が互いに直列接続されることになる。一方、あらかじめ配置された系統とは異なる系統に属することが望ましいと判定された直流発電装置に対しては、配線の変更によって属すべき系統の変更が行われる。このため、各直流発電装置の性能のばらつきに応じて各直流発電装置の負荷分担比を変えることができ、使用者の目的に応じた設備の適正な運用を実現することができる。
【実施例】
【0015】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】図1は、燃料電池、太陽電池等の直流発電装置を4台2並列・2直列に接続して構成された直流発電設備に本発明を適用したときの実施例を示す構成図である。 図1において、直流発電設備は、4台の燃料電池スタックA〜Dが2台ずつ2系統に分かれてスタック配置位置a〜dに配置されている。各燃料電池スタックA〜Dが設置された系統は仮に設定された系統であり、各燃料電池スタックA〜Dは後述する方法によって属すべき系統が設定され、この設定に従って配線が行われるようになっている。そして各燃料電池スタックA〜Dのプラス電極とマイナス電極がそれぞれ導線10を介して互いに直列または並列接続され、全体として2並列・2直列の直流発電設備が構成されるようになっている。そして各燃料電池スタックA〜Dの出力がインバータ12に供給され、インバータ12で直流電力が交流電力に変換されて負荷に供給されるようになっている。
【0017】また各スタック配置位置a〜dには燃料配管14と空気配管16が配設されている。燃料配管14の管の途中には燃料流量調節弁18が設けられており、空気配管16の管の途中には空気流量調節弁20が設けられている。そして各燃料電池スタックA〜Dには燃料配管14からの燃料が供給されるとともに空気配管16からの空気が供給され、燃料および空気の供給量に応じて各燃料電池スタックA〜Dから化学反応に伴う電力が発生するようになっている。このとき未反応の燃料ガスおよび反応生成物は燃料電池配管(図示省略)から排出されるようになっている。なお、各燃料電池スタックA〜Dに各種の配管を設ける際に、冷却水配管等を設けてもよく、燃料電池以外の電池を配置する場合には、この電池の陽極・陰極に供給される媒質等の配管を設けてもよい。
【0018】上記構成による直流発電設備を運転するに際しては、まず、スタック配置位置a〜dに配置された燃料電池スタックA〜Dに電圧計V1〜V4を配置し、各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を測定し、この測定値から各燃料電池スタックA〜Dの運用負荷時の性能を推定し、この推定値を基に各燃料電池スタックA〜Dが属すべき系統を設定し、この設定に従って各系統に属する燃料電池スタックA〜Dを系統ごとにそれぞれ互いに直列接続して2並列・2直列の直流発電設備を構成することとしている。
【0019】4台の燃料電池スタックA〜Dによって2並列・2直列回路を構成する場合、次の表1に示すように、スタック配置位置a〜dにそれぞれ燃料電池スタックA〜Dを配置する組み合わせ位置の他に、組み合わせ2あるいは組み合わせ3による方法が考えられる。
【0020】
【表1】


【0021】そこで、本実施例においては、組み合わせ1〜3のうち運用に適した組み合わせを選択するために、各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を電圧計V1〜V4で測定することとしている。そして各燃料電池スタックA〜Dに、ある組成分圧の燃料ガス、空気を供給した状態で各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を測定したときに、各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧が図2に示すような値として測定された場合、図2に示すV−I特性に従って、各燃料電池スタックA〜Dの運用負荷時の性能を推定することとしている。
【0022】燃料電池スタックA〜DのV−I特性は各種の要因により実際には複雑な特性となるが、運用負荷時の性能を推定するに際しては、実際の運用では制御性等の観点から電池が定電圧源として振る舞う領域で運転されるものとし、この領域では電池特性に影響するのは電流Iに比例する内部抵抗的な要因であることを考慮してある。このような領域は電池の出力電流Iが比較的小さい部分に見られるので、この領域での特性は開路時電圧Va〜Vdの測定値によって推定することができる。すなわち、各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧が図2R>2に示すようにVa>Vb>Vc>Vdであるときには、運転時における燃料電池スタックA〜Dの電圧vA〜vDは、vA>vB>vC>vDとなることが推定できる。ただし、実際の運転中は、図1に示す燃料流量調節弁18、空気流量調節弁20の操作により供給ガス組成を変化させて各燃料電池スタックA〜Dの出力電圧を制御することが行われるが、ここでは、代表的なガス組成(効率の高い適当なガス組成)のもとで運転されるものとする。
【0023】次に、図2に示すV−I特性を基に各燃料電池スタックA〜Dを表1に従って3通りのパターンで組み合わせたときの特性について考察する。
【0024】まず、組み合わせ1に従って各燃料電池スタックA〜Dを組み合わせると、図3に示すように、燃料電池スタックAとBとを合成した特性A+B、燃料電池スタックAとCを組み合わせた特性C+Dが得られる。組み合わせ2に従って燃料電池スタックA〜Dを組み合わせると、図4に示すように、燃料電池スタックAとCを組み合わせたことによる特性A+Cが得られ、BとDを組み合わせたことにより得られる特性B+Dが得られる。また、組み合わせ3に従って燃料電池スタックA〜Dを組み合わされると、図5に示すように、燃料電池スタックAとDによる特性A+Dが得られ、BとCによる特性B+Cが得られる。
【0025】ここで、各組み合わせにおいて、電圧V1〜V3における運転時の電流の差(Ia+b)−(Ic+d)、(Ia+c)−(Ib+d)、(Ia+d)−(Ib+c)を求めると、これらの値は組み合わせ1、2、3の順に小さくなっている。
【0026】即ち、組み合わせ3の場合には、各燃料電池スタックA〜Dの運用負荷時における性能がほぼ同等になっている。このため組み合わせ3に従って回路を構成した場合には、各燃料電池スタックA〜Dの消耗の度合いはほぼ等しくなる。これに対して組み合わせ1の場合には、電池にかかる負荷は燃料電池スタックA、D側が大きくなり、燃料電池スタックA、Bの消耗の方がB、Cよりも早くなる。 また組み合わせ2の場合には、燃料電池スタックA、Cの方の消耗が早くなるが、両者の消耗の差は組み合わせ1のときよりも小さくなる。
【0027】そこで、図3ないし図5の特性を考慮し、使用者の運用スケジュールに合わせて組み合わせを選択する。例えば各燃料電池スタックA〜Dを同一の時期にメンテナンスする場合には、組み合わせ3のように、図2R>2に示す開路時電圧の遠いもの同士から順番に直列に組み合わせて運用する。一方、各燃料電池スタックA〜Dのメンテナンス時期を系統ごとにずらしたいときには、組み合わせ1、2のように、図2に示す開路時電圧の近いもの同士を直列に組み合わせて運用する。
【0028】各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を測定するに際しては、運転休止時に、導線10を開いて、各燃料電池スタックA〜Dに燃料、空気を供給した状態で各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を電圧計V1〜V4によって測定することができるが、この測定は、十分な休止時間があるときに行うのが望ましい。この測定結果の一例を図6に示す。
【0029】図6は電池特性の履歴として、縦軸に開路時電圧、横軸に運転経過時間を採ったときの特性を示している。図6において、電圧V11〜V13は前回までに測定した開路時電圧をプロットしたものである。これらの電圧値を基に今回の電圧を推定するに際しては、運用結線状態は使用開始時から今回の測定まで変更がないとしたときには、今回の測定によって得られる開路時電圧は、運用経過時間を考慮に入れると電圧V14かこの値に近いものと推定することができる。このため、実際の測定値が電圧V14、V15として得られたときには、この測定値と運用負荷時の性能の推定は妥当なものであると見做すことができる。
【0030】ここで、開路時電圧の推定値は過去の履歴を全て考慮に入れなくても、前回の測定値からの変化が許容値の範囲内にあるという程度のものであってもよい。いずれにしても今回の測定値が前回の測定値から許容値の範囲を超えて電圧V16として得られたときには、電池本体になんらかの異常が生じたものと考えられる。この場合には、電池に熱サイクルや圧力スイングや加振等のなんらかのショックを与える操作を行うか、あるいは停止状態のまま一定時間経過したあと再度各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を測定してもよい。電池にショックが与えられることにより、測定値がV14かV15として得られたときには、この開路時電圧の測定値とこの測定値を基に推定された運用負荷時の性能の推定は妥当なものであるとみなすことができる。
【0031】また各燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を測定する代わりに、各燃料電池スタックA〜Dの閉路時電圧を測定し、この測定値から各燃料電池スタックA〜Dの運用負荷時の性能を推定することもできる。さらに、各燃料電池スタックA〜Dに負荷が接続されたときに相当する電流を流し、このときの電圧を各燃料電池スタックA〜Dごとに測定し、この測定値から各燃料電池スタックA〜Dの運用負荷時の性能を推定することもできる。
【0032】燃料電池スタックA〜Dの開路時電圧を測定し、この測定値から各燃料電池スタックA〜Dの運用負荷時の性能を推定し、この推定値を基に各燃料電池スタックA〜Dが属すべき系統を設定し、この設定に従って2並列・2直列の回路を構成するに際しては、組み合わせ1〜3の内いずれかひとつの組み合わせに従った結線状態を選択することによって、使用者の目的に合った運用を実現することができる。この場合、組み合わせパターンに従った結線状態の変更は使用者の運用目的に従って行うことが望ましく、また電池の経年変化等を考慮して特性の変化に応じて行うことが望ましい。また導線10はあらかじめ敷設されているため、結線状態の変更は容易な方法によって行う必要がある。
【0033】以下、結線状態の変更を容易に行う方法について説明する。
【0034】まず、第1の方法としては、図7に示すように、スタック配置位置a〜dに沿って、各燃料電池スタックA〜Dの陰極22、陽極24と接続可能な主配線群として、4本の導線26、28、30、32を同心円状に予め布設する。そして内側の導線26の一部をマイナス用外部端子34に接続し、外側の導線32の一部をプラス外部端子36に接続する。さらにスタック配置位置a〜bに、各導線26〜32と交差する補助配線として陰極用導線38、陽極用導線40を予め敷設する。そして各導線26〜32と導線38、40が互いに交差するところに、図8に示すように、遮断器(または電流開閉器)42を4台挿入し、各遮断器42を介して導線を接続する。各導線26〜32と導線38、40は遮断器42を閉じることによって接続され、遮断器42が開かれているときには各導線は遮断されている。
【0035】ここで、組み合わせ1を選択した場合には、図9に示すように、スタック配置位置aに配置された導線30と導線40とが交差する部位、導線26と導線38とが交差する部位にそれぞれ配置された遮断器42を閉じるとともに、スタック配置位置bの導線32と導線40とが交差する部位、導線30と38とが交差する部位にそれぞれ配置された遮断器42を閉じる。さらにスタック配置位置cにおける導線26と導線38とが交差する部位と、導線28と導線40とが交差する部位の遮断器42を閉じるとともに、スタック配置位置dにおける導線28と導線38とが交差する部位、導線32と導線40とが交差する部位にそれぞれ配置された遮断器42を閉じることによって、(b)に示すように、燃料電池スタックAとBが直列接続され、CとDが直列接続された回路を構成することができる。
【0036】また同様にして組み合わせ2を選択したときには、図10に示すように、指定の遮断器42を閉じることにより、燃料電池スタックAとCが直列に接続され、BとDが直列に接続された回路を構成することができる。さらに組み合わせ3を選択したときには、図11に示すように、各スタック配置位置a〜dに配置された指定の遮断器42を閉じることにより、燃料電池スタックAとDが直列に接続され、BとCが直列に接続された回路を構成することができる。
【0037】次に、第2の方法を図12に従って説明する。
【0038】まず、スタック配置位置a〜dに一対の移動路として固定レール44、46を同心円状に敷設する。また、固定レール44、46の一部に各レールから分岐した退避レール48、50を敷設し、レール48、50の端部に退避部52を設ける。さらに固定レール44、46に沿って、プラス電極用配線として導線54を敷設するとともにマイナス電極用配線として導線56を敷設する。さらに共通配線として導線58、60を敷設する。各固定レール44、46上には燃料電池スタックA〜Dを移動するための搬送手段としての貨車(図示省略)を4台配置する。各貨車の上に燃料電池スタックA〜Dをそれぞれ配置する。そして貨車の移動により、スタック配置位置a〜dにそれぞれ燃料電池スタックA〜Dを配置する。この状態で、燃料電池スタックAの陰極22を導線56に、陽極24を導線46に接続し、Bの陰極を導線46に、陽極24を導線54に接続し、Cの陽極24を導線54に接続し、陰極22を導線60に接続する。さらに、Dの陽極24を導線60に接続し、陰極22を導線56に接続すると、(b)に示すように、燃料電池スタックAとBとが直列接続され、CとDとが直列接続された回路が構成される。すなわち組み合わせ1による回路が構成される。
【0039】一方、図12に示す状態から各貨車を時計回りか反時計回りに相隣接するスタック位置まで移動させると、組み合わせ3による回路を構成することができる。
【0040】また、図12に示す状態から組み合わせ2の回路を構成する場合には、移動の障害となる貨車を退避部52に退避することにより組み合わせ2に相当する回路を構成することができる。ただし、この場合には、貨車を退避部52に移動させるときに、配線や配管を一旦切り離す必要がある。このため、配管には、燃料の供給が容易となり、また電池の切離しが容易となるフランジを設け、このフランジの前後に燃料を遮断する弁を設けておくことが望ましい。また導線54、56、58、60と各燃料電池スタックA〜Dの電極との接続部分にはコネクタを設けて置くことが望ましい。
【0041】次に、第3の方法を図13ないし図16に従って説明する。
【0042】まず、スタック配置位置a〜dに沿って、導線26〜32を同心円状に敷設し、導線26をマイナス外部端子34に接続し、導線32をプラス外部端子36に接続する。そして各スタック配置位置a〜dに各燃料電池スタックA〜Dを配置するに先立って、各燃料電池スタックA〜Dを圧力容器62内に収納する。この圧力容器62は筒状に形成されて頂部が閉塞され、底部側には一対の可動出力端子延長部64、66が開閉自在に配設されている。可動出力端子延長部64は、陰極22を支点として移動可能に陰極22に接続されており、可動出力端子延長部66は、陽極24を支点として移動可能に陽極24に接続されている。そして各可動出力端子延長部64、66は移動に応じて導線26〜32のいずれかの導線と接続可能になっている。
【0043】上記構成において、組み合わせ1を選択したときには、図13に示すように、各可動出力端子延長部64、66を指定の導線に接続することによって燃料電池スタックAとBとが直列に接続され、CとDとが直列に接続された回路を構成することができる。同様にして、組み合わせ2を選択したときには、図14に示すように、燃料電池スタックAとCとが直列に接続され、BとDとが直列に接続された回路を構成することができる。
【0044】また組み合わせ3を選択したときには図15R>5に示すように、燃料電池スタックAとDとが互いに直列に接続され、BとCが直列に接続された回路を構成することができる。
【0045】前記実施例において、各可動出力端子延長部64、66を各導線26〜32に接続する部分には両者をつなぐためのコネクタを設けておくことが望ましい。また各可動出力端子延長部64、66の動作範囲を考えると、図16(b)に示す領域68には各可動出力端子延長部64、66が入らないため、この領域68に、燃料配管、空気配管を配設すれば、これらの配管に影響を与えることなく各燃料電池スタックA〜Dの結線状態の変更を行うことができる。
【0046】次に、第4の方法を図17に従って説明する。
【0047】まず、スタック配置位置a〜dに沿って、導電性移動路として一対の固定レール70、72を同心円状に敷設する。各固定レール70、72の途中に絶縁手段として絶縁体74、76、78、80を挿入し、各固定レール70、72を2分割して固定レール70A、70B、72A、72Bを形成する。そして各固定レール70A、70B、72A、72B上に絶縁性の車輪を介して4台の貨車をスタック配置位置a〜dにそれぞれ配置する。そして各貨車の内部には、開閉器または遮断器を配置し、開閉器または遮断器と各燃料電池スタックA〜Dの陰極22と陽極24とを接続する。そして開閉器または遮断器の操作により、燃料電池スタックAの陰極22を固定レール70Bに接続し、陽極24を固定レール72Aに接続する。同様にしてBの陰極22を固定レール72Aに接続し、陽極24を固定レール70Aに接続する。またCの陰極22を固定レール72Bに接続し、陽極24を固定レール70Aに接続する。さらに、Dの陰極22を固定レール70Bに接続し、陽極24を固定レール72Bに接続する。これらの操作を行うと、組み合わせ1の結線状態が実現される。
【0048】一方、図17に示される状態から各貨車を相隣接するスタック配置位置に時計回りに移動させるとともに、BとDの車輪と電極との接続状態を切り替えることによって組み合わせ3の結線状態を実現することができる。
【0049】また、固定レール70、72に、図12と同様に各固定レール70、72から分岐した退避用レールを設け、この退避用レールの端部に退避部を設ければ、組み合わせ2の結線状態を実現することができる。
【発明の効果】
【0050】以上説明したように、本発明によれば目的に合わせて設備を運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された直流発電設備の全体構成図である。
【図2】燃料電池スタック群のV−I特性図である。
【図3】組み合わせ1の場合のV−I特性図である。
【図4】組み合わせ2の場合のV−I特性図である。
【図5】組み合わせ3の場合のV−I特性図出在る。
【図6】燃料電池スタックの開路時電圧の履歴と積算運転時間との相関図である。
【図7】燃料電池スタックの結線方法を説明するための図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【図9】組み合わせ1の場合の結線状態を示す図である。
【図10】組み合わせ2の場合の結線状態を示す図である。
【図11】組み合わせ3の場合の結線状態を示す図である。
【図12】固定レールを用いたときの結線状態を示す図である。
【図13】燃料電池スタックに可動出力端子延長部を設けたときの結線方法として組み合わせ1を用いたときの結線状態を示す図である。
【図14】燃料電池スタックに可動出力端子延長部を設けたときの結線方法として組み合わせ2を用いたときの結線状態を示す図である。
【図15】燃料電池スタックに可動出力端子延長部を設けたときの結線方法として組み合わせ3を用いたときの結線状態を示す図である。
【図16】(a)は燃料電池スタックが圧力容器内に収納された状態を示す正面図、(b)は(a)の底面図である。
【図17】導電性レールを用いたときの結線状態を示す図である。
【符号の説明】
10 導線
12 インバータ
14 燃料配管
16 空気配管
18 燃料流量調節弁
20 空気流量調節弁
A、B、C、D 燃料電池スタック
V1、V2、V3、V4 電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電池による直流発電装置群を複数台ずつ複数系統に分けて配置し、各系統に配置された各直流発電装置の使用開始に伴って各直流発電装置の開路時電圧を順次測定し、各直流発電装置の運転を開始するに先立って、前回までに測定された各直流発電装置の開路時電圧を、使用開始時からの運転経過時間との関係でプロットしたものを各直流発電装置の電池特性の履歴とし、これらの開路時電圧値を基に、運用経過時間を考慮して今回の運転時における各直流発電装置の開路時電圧推定し、この推定結果と今回測定した各直流発電装置の開路時電圧との差が許容範囲内にあるときには今回の推定結果を妥当な値として、今回の推定結果と運用スケジュールに従って各直流発電装置の組み合わせを選択し、この選択に従って各直流発電装置が属すべき系統を設定し、この設定に従って各系統に属する直流発電装置群を系統毎にそれぞれ互いに直列接続することを特徴とする直流発電設備の運転準備方法。
【請求項2】 電池による直流発電装置群を複数台ずつ複数系統に分けて配置し、各系統に配置された各直流発電装置の使用開始に伴って各直流発電装置の開路時電圧を順次測定し、各直流発電装置の運転を開始するに先立って、各直流発電装置が使用される毎に測定された各直流発電装置の開路時電圧を、使用開始時からの運転経過時間との関係でプロットしたものを各直流発電装置の電池特性の履歴とし、これらの開路時電圧値を基に、運用経過時間を考慮して今回の運転時における各直流発電装置の開路時電圧推定し、この推定結果と今回測定した各直流発電装置の開路時電圧との差が許容範囲内にあるときには今回の推定結果を妥当な値として、運用スケジュールに従って各直流発電装置の組み合わせを選択し、この選択に従って各直流発電装置が属すべき系統を設定し、この設定に従って各系統に属する直流発電装置群を系統毎にそれぞれ互いに直列接続することを特徴とする直流発電設備の運転準備方法。
【請求項3】 各系統の直流発電装置配置位置に各系統の直流発電装置の電極と接続可能な主配線群を系統数に対応づけて予め布設し、各系統の主配線群の直流発電装置配置位置に各系統の主配線と交差する一対の補助配線を予め布設し、各主配線と各補助配線とが交差するところにそれぞれ開閉器を予め配設し、各直流発電装置配置位置に配置された各直流発電装置を測定値に従った各開閉器の開閉により指定の直流発電装置に接続することを特徴とする請求項1または2に記載の直流発電装置の運転準備方法。
【請求項4】 各系統の直流発電装置配置位置にプラス電極用配線とマイナス電極用配線及び複数の共通配線を予め配設し、各系統の直流発電装置配置位置に沿って各直流発電装置配置位置間を結ぶ移動路を予め布設し、各移動路上を移動可能な搬送手段を各直流発電装置配置位置に配置し、各直流発電装置をそれぞれ搬送手段上に載置し、測定値に従った搬送手段の移動により各直流発電装置の位置を設定し、位置の設定された直流発電装置の各電極を指定の配線に接続することを特徴とする請求項1または2に記載の直流発電装置の運転準備方法。
【請求項5】 各直流発電装置に関する測定値を判別し、測定値の近いもの同志を同一の系統に分類し、この分類に従って各直流発電装置の系統を設定すると共に分類に従って各系統のメンテナンス時期の順番を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の直流発電装置の運転準備方法。
【請求項6】 各直流発電装置に関する測定値を判別し、測定値の離れたもの同志を同一の系統に分類し、この分類に従って各直流発電装置の系統を設定すると共に分類に従って各系統のメンテナンス時期を合わせることを特徴とする請求項1または2に記載の直流発電装置の運転準備方法。
【請求項7】 4台の直流発電装置を2系統に分けて2直列2並列で配置するに際して、各直流発電装置の組合せとして3通りのパターンを設定し、主配線群として4本の線路を布設することを特徴とする請求項に記載の直流発電装置の運転準備方法。

【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図5】
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【図1】
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【図16】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図13】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【特許番号】特許第3491168号(P3491168)
【登録日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【発行日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−338390
【出願日】平成5年12月28日(1993.12.28)
【公開番号】特開平7−201354
【公開日】平成7年8月4日(1995.8.4)
【審査請求日】平成11年8月24日(1999.8.24)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【参考文献】
【文献】特開 昭57−204927(JP,A)