説明

直線駆動機構

【課題】長大なストロークを有しながらも、動作方向の筐体長さが小さい直線駆動機構の提供。
【解決手段】駆動部材の突出端部が3次元形状ディスプレイの表示物体の表面に位置するように前記駆動部材の直線部分を該直線部分の伸長方向に往復移動可能に構成された直線駆動機構において、回転駆動手段に連結された少なくとも一対のローラ、前記駆動部材は前記突出端部とは逆側に位置する端部が渦巻き形状に巻き取られた巻き取り部からなり、前記駆動部材が駆動回転手段に連結された少なくとも一対のローラに挟まれて往復移動可能に構成された直線駆動機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状ディスプレイに利用される直線駆動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Virtual Reality技術は、近年急速な発展を遂げている分野の一つである。その中でも、実物体をVR空間内で表現する手法に関する研究として数多くのものが挙げられる。レンジファインダに代表される非接触型3次元形状計測装置を用いて実物体をデジタルデータに変換し、情報空間内で提示する、もしくは、遠隔地にその情報を伝達するといった試みがこれまでになされている。
【0003】
これらの手法で取得した3次元情報の提示手法としては、形状をCGモデルとして表現し、モニタ画面もしくはプロジェクタ等でスクリーンや対象物体に提示する方法が主流であったが、近年、図5に示すように、物理的に凹凸を制御する3次元形状ディスプレイによって3次元情報を提示する試みも数多くなされており、岩田等によるFEELEXに代表される数多くのディスプレイが発明されている。
【0004】
これまでに発明されている3次元形状ディスプレイは、ボールネジや流体圧アクチュエータ、形状記憶合金などをディスプレイ表面にあたる物体形状提示部に連結した直線駆動機構4によって、ディスプレイ表面の凹凸を変化させることで立体形状の提示を行うものであった。これら従来の直線駆動機構4は、図6、図7、図8に示すように、駆動部材をそのままの形状で筐体内外へ出し入れするというものであった。
【0005】
ここで、長大なストロークを持つ直線駆動機構によって大きな凹凸の提示を行うことを考えた場合、従来の3次元形状ディスプレイは、物体形状提示部をそのままの形状で筐体の内外に出し入れするため、筐体の厚み、すなわち直線駆動機構の動作方向の筐体長さが、必然的に直線駆動機構のストローク長以上となり、装置が大型にならざるを得ないという問題があった。
【0006】
これまでの3次元形状ディスプレイは、このような筐体の厚みの問題から、2次元平面上に直線駆動機構を配置して高さ情報のみの提示を行うものであったが、より複雑な形状の表現を行うには直線駆動機構を3次元曲面上に配置することが有効な手段であり、これを実現するためには、長大なストロークが得られる直線駆動機構の薄型化が重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2001/097202号
【特許文献2】特開2005−338382号公報
【特許文献3】特開平11−10561号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Iwat,H.、Yano,H.、Nakaizumi,F.、Kawaura,R.、Project FEELEX:Adding Haptic Surface to Graphics、Proceeding of SIGGRAPH 2001、アメリカ合衆国、ACM、2001年、p.469−475.
【非特許文献2】Shinohara,M.、Shimizu,Y.、Mochizuki,A.、Three−Dimensional Tactile Display for the Blind、IEEE Transactionson Rehabilitation Engineering、アメリカ合衆国、IEEE、1998年、vol。6,No.3、p.249−256
【非特許文献3】大口、筧、高橋、苗村、Photonastic Surface:光で制御する3次元形状ディスプレイ、電子情報通信学会技術研究報告.MVE,マルチメディア・仮想環境基礎、日本、社団法人電子情報通信学会、2009年3月17日、p.5−30
【非特許文献4】仲谷、梶本、Vlack,K.、関口、川上、舘、コイル状形状記憶合金を用いた3次元形状ディスプレイの研究、映像情報メディア学会誌、日本、社団法人映像情報メディア学会、2006年2月1日、Vol.60、No.2、p.67−69
【非特許文献5】Poupyrev,I.、Nashida,T.、Okabe,M.、Actuation and Tangible User Interfaces the Vaucanson Duck,Robots,and Shape Displays.Proceedings of TEI ‘07、アメリカ合衆国、ACM、2007年、P.205−212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、長大なストロークを有しながらも、動作方向の筐体長さが小さい直線駆動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような課題を解決するために創案されたものであって、
(1)駆動部材の突出端部が3次元形状ディスプレイの表示物体の表面に位置するように前記駆動部材の直線部分を該直線部分の伸長方向に往復移動可能に構成された直線駆動機構において、回転駆動手段に連結された少なくとも一対のローラ、前記駆動部材は前記突出端部とは逆側に位置する端部が渦巻き形状に巻き取られた巻き取り部からなり、前記駆動部材が駆動回転手段に連結された少なくとも一対のローラに挟まれて往復移動可能に構成されている直線駆動機構、(2)複数本の前記直線部分が接触して往復移動可能に構成されている(1)記載の直線駆動機構、(3)前記駆動部材は同駆動部材伸長方向と直行する断面が円弧上に湾曲した長尺プレートで形成されている(1)または(2)のいずれか記載の直線駆動機構、(4)前記駆動部材は長尺プレートで形成され、前記直線部の前記ローラより先端側の途中をUターンさせて突出端部を形成した(1)記載の直線駆動機構、(5)前記駆動部材を複数備えて複数の突出端部を形成し、同複数に突出端部を互いにクロスさせた(4)記載の直線駆動機構を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長大なストロークを有しながらも、動作方向の筐体長さが小さい直線駆動機構を用いた3次元形状ディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例の斜視図を示す。
【図2】本発明の第2の実施例の斜視図を示す。
【図3】本発明の第3の実施例の斜視図を示す。
【図4】本発明の第4の実施例の斜視図を示す。
【図5】一般的な直線駆動機構を用いた3次元形状ディスプレイの斜視図を示す。
【図6】3次元形状ディスプレイに利用される従来技術、ボールねじ駆動機構の断面図を示す。
【図7】3次元形状ディスプレイに利用される従来技術、流体圧アクチュエータの断面図を示す。
【図8】3次元形状ディスプレイに利用される従来技術、形状記憶合金駆動機構の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に基づき第1の実施例を説明する。駆動部材は長尺プレート1で構成され、この長尺プレート1の途中には図示省略の駆動手段の回転軸に軸2−1が連結されたローラ2とローラ3が配置されている。長尺プレート1はローラ2とローラ3との間に挟み込まれ、長尺プレート1を繰り出して直線部分1−1を形成し、長尺プレート1を繰り込んで端部から渦巻き状に巻き取られた巻き取り部1−2を形成している。長尺プレート1は、直線部分1−1が直線運動をするのに充分な剛性を獲得するよう、湾曲状態に形成され、巻き取り部1−2の巻かれている平らな状態から元の湾曲状態に引戻そうとする弾性を有するものである。
【0014】
モータ等の駆動手段と軸2−1が連結されているので、駆動手段を正逆駆動させることにより、ローラ2とローラ3により長尺プレート1を出し入れさせることができる。ローラ2の回転角度、回転数をコントロールすることにより、長尺部材1の直線部分1−2の長さが調整でき、3次元形状ディスプレイの表示物体の表面の高さが調整できる。また、ローラ2で長尺プレート1を繰り入れて巻き取り部1−2に巻き取ることにより、長尺プレート1の保管部分のスペースを小さくすることができる。
なお、ローラ2と長尺プレート1の接する面は、長尺プレート1をすべりなく繰り出し及び繰り込みするのに充分な摩擦力を有するシリコンゴム等の素材で構成してもよい。
【0015】
図2の第2の実施例を説明する。第2の実施例の直線駆動機構は、第1の実施例の直線駆動機構3台を図2に示すように、各々の長尺プレート1がその動作方向に対して三角形様の断面形状を形成するように組み合わせる、即ち長尺プレート1の端辺どうしを接触させるよう組み合わせることで、長尺プレート1の剛性を高めた直線駆動機構が提供される。この際、長尺プレート1どうしが接する面には面ファスナー等の素材を付与して、各々の長尺プレート1を結束する。
【0016】
図3に示すように、第3の実施例は、第1の発明における直線駆動機構の長尺プレート1の直線部分1−1の先端を筐体等の非動作部に固定し、長尺プレート1の中程を所定半径をもってUターンさせて突出端部1−3を形成し、突出端部1−3、あるいは突出端部1−3に敷設した素材を3次元形状ディスプレイの表面とすることによって、長尺プレート1の剛性を高めた直線駆動機構が提供される。
【0017】
図4の第4の実施例は、第3の実施例の直線駆動機構2台を直交させ、長尺プレート1の動作方向に対して四角形様の断面形状を形成するように組み合わせることで、さらに長尺プレート1の剛性を高めた直線駆動機構が提供される。
【符号の説明】
【0017】
1 長尺プレート
1−1 直線部分
1−2 巻き取り部分
1−3 突出端部
2、3 ローラ
2−1 軸
4 3次元形状ディスプレイの直線駆動機構
4−1 従来のボールねじ機構を用いた3次元形状ディスプレイの直線駆動機構
4−2 従来の流体圧アクチュエータを用いた3次元形状ディスプレイの直線駆動機構
4−3 従来の形状記憶合金駆動機構を用いた3次元形状ディスプレイの直線駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材の突出端部が3次元形状ディスプレイの表示物体の表面に位置するように前記駆動部材の直線部分を該直線部分の伸長方向に往復移動可能に構成された直線駆動機構において、回転駆動手段に連結された少なくとも一対のローラ、前記駆動部材は前記突出端部とは逆側に位置する端部が渦巻き形状に巻き取られた巻き取り部からなり、前記駆動部材が駆動回転手段に連結された少なくとも一対のローラに挟まれて往復移動可能に構成されていることを特徴とする直線駆動機構。
【請求項2】
複数本の前記直線部分が接触して往復移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の直線駆動機構。
【請求項3】
前記駆動部材は同駆動部材伸長方向と直行する断面が円弧上に湾曲した長尺プレートで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか記載の直線駆動機構。
【請求項4】
前記駆動部材は長尺プレートで形成され、前記直線部の前記ローラより先端側の途中をUターンさせて突出端部を形成したことを特徴とする請求項1記載の直線駆動機構。
【請求項5】
前記駆動部材を複数備えて複数の突出端部を形成し、同複数に突出端部を互いにクロスさせたことを特徴とする請求項4記載の直線駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−118486(P2012−118486A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282332(P2010−282332)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:日本バーチャルリアリティ学会、刊行物名:第15回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集、発行年月日:平成22年9月15日
【出願人】(510333276)
【Fターム(参考)】