説明

相関曲線作成方法、削孔速度修正方法、地山区分評価テーブルの作成方法及び切羽前方予測方法

【課題】フィード圧の変動を削孔速度に反映させることが可能な相関曲線作成方法、それを用いた削孔速度修正方法、それを用いた地山区分評価テーブルの作成方法及び修正削孔速度及び地山区分評価テーブルを用いて切羽前方の地山を精度良く予測することが可能な切羽前方予測方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る相関曲線作成方法においては、まず、第1の削孔現場において、削孔手段、例えば油圧ジャンボで地山を削孔するとともに、削孔時のフィード圧Fと削孔速度Vとを計測する(ステップ101)。次に、計測されたデータを用いてフィード圧Fの変動量ΔFと該変動量に対応する削孔速度Vの変動量ΔVとを、例えば異なる7地点で算出する(ステップ102)。次に、原点を含めた計8組のΔF1,i(i=0,1,2,3・・・7)及びΔV1,i(i=0,1,2,3・・・7)を回帰分析し、相関曲線を作成する(ステップ103)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として山岳トンネルの地山を掘削する際に採用される相関曲線作成方法、削孔速度修正方法、地山区分評価テーブルの作成方法及び切羽前方予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルを掘削するにあたり、切羽前方に拡がる地山の性状を適切かつ高い精度で把握することは、支保工及び補助工を含めた掘削工事全体を効率よくかつ安全に進めていく上で非常に重要であり、かかるトンネル切羽前方探査を行う技術として、ノンコア削孔による穿孔探査が広く知られている。
【0003】
穿孔探査は、トンネル切羽前方を削孔する際、穿孔データとして穿孔速度、打撃圧、回転圧、フィード圧、ダンピング圧等を取得し、かかる穿孔データから穿孔エネルギーを、下記の式、すなわち、
穿孔エネルギー={打撃エネルギー×打撃回数/(穿孔速度×孔断面積)}
【0004】
×損失係数
で算出し、該穿孔エネルギーの大小で地山性状(岩盤等級)を評価する方法である。
【0005】
かかる方法において、穿孔速度は、フィード圧、すなわち削岩機のロッドを地山に押し付ける圧力に左右されるため、穿孔エネルギーから地山を客観的に評価するためには、フィード圧を一定にする必要がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3380795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、地山によっては、フィード圧を一定に維持することが困難であって、穿孔エネルギーから地山を客観的に評価することができないという問題を生じていた。
【0008】
かかる問題を解決すべく、フィード圧の変動によって穿孔エネルギーに与える影響をフィード圧補正という形で除去し、その上で地山を評価する手法も提案されているものの、未だ研究の域を出ない。
【0009】
いずれにしろ、ノンコア削孔による前方探査技術は、削岩機からの物理データを用いるものではあるが、データ処理で得られる結果については精度の面で信頼性に乏しく、経験的な判断を行う上での材料にとどまっているのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、フィード圧の変動を削孔速度に反映させることが可能な相関曲線作成方法、それを用いた削孔速度修正方法、それを用いた地山区分評価テーブルの作成方法及び修正削孔速度及び地山区分評価テーブルを用いて切羽前方の地山を精度良く予測することが可能な切羽前方予測方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る相関曲線作成方法は請求項1に記載したように、第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測し、前記フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する前記削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析して相関曲線を作成するものである。
【0012】
また、本発明に係る削孔速度修正方法は請求項2に記載したように、第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測し、
【0013】
前記フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2を請求項1記載の相関曲線に適用することにより、前記削孔速度V2の変動量ΔV2を算出し、
【0014】
前記変動量ΔV2を前記削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出するものである。
【0015】
また、本発明に係る地山区分評価テーブルの作成方法は請求項3に記載したように、請求項2記載の修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
【0016】
前記正規化削孔速度比VN及びそのばらつきを前記第2の削孔現場の地山区分に対応付けることで地山区分評価テーブルを作成するものである。
【0017】
また、本発明に係る切羽前方予測方法は請求項4に記載したように、第3の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測し、
【0018】
前記フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、
【0019】
前記差分ΔF3を、請求項1記載の相関曲線に適用することにより、前記削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、
【0020】
前記変動量ΔV3を前記削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
【0021】
前記修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
【0022】
前記正規化削孔速度比VN及びそのばらつきを、請求項3記載の地山区分評価テーブルに適用することで、前記第3の削孔現場における地山区分を推測するものである。
【0023】
ノンコア削孔で得られる物理データを用いて前方探査を行うにあたり、本出願人は、フィード圧Fの変動量ΔFと削孔速度Vの変動量ΔVとの間には相関関係があり、かつ、この相関関係は、フィード圧Fや削孔速度Vの大きさに依存しないというあらたな知見を得るとともに、この相関関係に基づいて新たな前方探査手法を確立できないだろうかという点に着目し研究開発を行ったところ、上述した相関関係から回帰分析を行って相関曲線を作成するとともに、該相関曲線にフィード圧の変動量ΔFを適用して削孔速度Vの変動量ΔVを算出することにより、フィード圧の変動を考慮した形で削孔速度を修正することに成功したものである。
【0024】
すなわち、請求項1に係る相関曲線作成方法においては、まず、第1の削孔現場において地山を削岩機等の削孔手段で削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測する。
【0025】
削孔手段は、例えば油圧ジャンボの名称で広く使用されている削岩機を用いることが可能であり、かかる場合においては、油圧ジャンボに搭載されているドリフターの計測システムを利用して計測すればよい。
【0026】
次に、計測されたデータを用いてフィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを算出する。
【0027】
フィード圧F1の変動量ΔF1は例えば、互いに異なる2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均フィード圧を求め、それらの差分をとってΔFi(i=1,2,3・・・n)とすればよい。
【0028】
一方、削孔速度V1の変動量ΔV1は、上述した2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均削孔速度を求め、それらの差分をとってΔVi(i=1,2,3・・・n)とすればよい。
【0029】
次に、ΔFi(i=1,2,3・・・n)及びΔVi(i=1,2,3・・・n)に対して回帰分析を行い、相関曲線を作成する。
【0030】
なお、設定フィード圧とは、削孔手段を駆動する際のフィード圧の目安として設定するものであって、実際に計測されるフィード圧とは異なるものである。
【0031】
本出願人が膨大のデータ検証を行った結果、フィード圧の大きさが異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになるというあらたな知見を得た。
【0032】
加えて、フィード圧の変動は主として地山の岩盤性状の違いに起因するため、上述した知見は、削孔する地山が異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになると言い換えることができる。
【0033】
上述した相関曲線を用いて削孔速度を修正するには、まず、第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測する。
【0034】
次に、フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2を上述した相関曲線に適用することにより、削孔速度V2の変動量ΔV2を算出する。
【0035】
次に、変動量ΔV2を削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する。
【0036】
以上の手順を実行することにより、フィード圧の変動を考慮した形で削孔速度を修正することが可能となり、かかる削孔速度を従来の削孔理論に用いることで、より適切な地山評価を行うことが可能となる。
【0037】
このように、修正削孔速度VRを従来の削孔理論に適用することで地山の評価を行ってもかまわないが、従来の削孔理論では、評価が難しい損失係数等のパラメータを必要とするため、削孔エネルギーを的確かつ精度よく評価することは必ずしも容易ではない。
【0038】
本出願人は、かかる状況下、あらたな観点で地山を評価する方法の検討を重ねた結果、上述した修正削孔速度VRを用いることにより、従来の削孔理論によることなく、切羽前方の地山をより高い精度で予測することに成功したものである。
【0039】
すなわち、請求項3に係る地山区分評価テーブルの作成方法においては、まず、上述した削孔速度修正方法で得られた修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。
【0040】
次に、正規化削孔速度比VN及びそのばらつきを、第2の削孔現場の地山区分に対応付けることで、地山区分評価テーブルを作成する。
【0041】
このように地山区分評価テーブルを作成しておけば、以下の手順によって第3の削孔現場で地山区分を適切に予測することが可能となる。すなわち、まず、第3の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測する。
【0042】
次に、フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出する。
【0043】
次に、差分ΔF3を、請求項1記載の削孔速度修正方法で得られた相関曲線に適用することにより、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出する。
【0044】
次に、変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する。
【0045】
次に、修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。
【0046】
次に、正規化削孔速度比VN及びそのばらつきを、請求項2記載の地山区分評価テーブルの作成方法で得られた地山区分評価テーブルに適用することで、第3の削孔現場における地山区分を推測する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明に係る相関曲線作成方法、削孔速度修正方法、地山区分評価テーブルの作成方法及び切羽前方予測方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
(第1実施形態)
【0049】
図1は、本実施形態に係る相関曲線作成方法を示したフローチャートである。同図でわかるように、本実施形態に係る相関曲線作成方法においては、まず、第1の削孔現場において、削孔手段、例えば油圧ジャンボで地山を削孔するとともに、削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測する(ステップ101)。
【0050】
ここで、第1の削孔現場は、例えば実際のトンネル掘削現場を利用することができるが、第1の削孔現場における目的は、フィード圧の変動量と削孔速度の変動量とを回帰分析して両者の相関曲線を作成するためであって、そのために必要な基礎データを取得することであるため、地山の前方予測は、後述する第3の削孔現場で可能となる。
【0051】
削孔の際には、例えば油圧ジャンボに搭載されたドリフターの設定フィード圧がその都度異なる値となるように、設定フィード圧を調整する。例えば、4.90MPa、3.92MPa、2.94MPaに設定することが考えられる。
【0052】
次に、計測されたデータを用いてフィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを算出する(ステップ102)。
【0053】
フィード圧F1の変動量ΔF1は、互いに異なる2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均フィード圧を求め、それらの差分をとってΔF1,i(i=1,2,3・・・n)とする。
【0054】
一方、削孔速度V1の変動量ΔV1は、上述した2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均削孔速度を求め、それらの差分をとってΔV1,i(i=1,2,3・・・n)とする。なお、以下、ΔF1の数値群をΔF1,i(i=1,2,3・・・n)と表し、ΔV1の数値群をΔV1,i(i=1,2,3・・・n)と表す。
【0055】
図2は、ある削孔現場において、平均フィード圧が4.90MPa、3.92MPa、2.94MPaである場合の削孔速度とその平均値を描いたグラフであり、同図から、4.90MPaに対応する削孔速度が230cm/min、3.92MPaに対応する削孔速度が180cm/min、2.94MPaに対応する削孔速度が130cm/minであることがわかる。
【0056】
これらのうち、4.90MPaと3.92MPaとの差分をとって、
ΔF1,1=0.98MPa
3.92MPaと2.94MPaとの差を
ΔF1,2=0.98MPa
とする。このとき、対応する削孔速度の変動量は、
ΔV1,1=50cm/min
ΔV1,2=50cm/min
となる。
【0057】
図3〜図5は、別の削孔現場におけるフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフであり、フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量を併せて記載してある。
【0058】
これらのうち、距離程が900m〜930mの区間におけるフィード圧の変動量は、
ΔF1,3=0.245MPa
となる。また。これに対応する削孔速度の変動量は、
ΔV1,3=15cm/min
となる。
【0059】
同様に、距離程が1300m〜1320mの区間におけるフィード圧の変動量と、これに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,4=0.49MPa
ΔV1,4=40cm/min
となり、距離程が1340m前後の区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,5=1.715MPa
ΔV1,5=80cm/min
となり、距離程が2020m〜2030mの区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,6=0.49MPa
ΔV1,6=30cm/min
となり、距離程が2040m前後の区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,7=0.49MPa
ΔV1,7=50cm/min
となる。
【0060】
次に、原点、すなわち、
ΔF1,0≒0
ΔV1,0≒0
も含めた計8組のΔF1,i(i=0,1,2,3・・・7)及びΔV1,i(i=0,1,2,3・・・7)を回帰分析し、相関曲線を作成する(ステップ103)。ここで、ΔF1,0及びΔV1,0は、回帰分析の都合上、それぞれ0.1としてある。
【0061】
上述した8組の値は、以下の3次多項式、すなわち、
ΔV=c1×(ΔF)3
+c2×(ΔF)2
+c3×(ΔF)1
で近似することが可能であり、この3次多項式を相関曲線として図6に示す。
【0062】
図2及び図6でもわかるように、ΔV1、ΔV2は、フィード圧の大きさが異なるものの、ΔF1、ΔF2は、いずれも50cm/minである。
【0063】
これ以外でも、本出願人が膨大のデータ検証を行った結果、同様な性状を示す例は数多く見られ、このことから、フィード圧の大きさが異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになるというあらたな知見を得た。なお、フィード圧の差分が0.49MPaのとき、削孔速度の差分として、30cm/min、40cm/min、50cm/minの3ケースを載せたが、これは、削孔データを回帰分析する際にばらつきが生じることを示したものである。
【0064】
加えて、フィード圧の変動は主として地山の岩盤性状の違いに起因するため、上述した知見は、削孔する地山が異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになると言い換えることができる。
【0065】
すなわち、図6に示した相関曲線は、回帰分析に用いるプロット数が適切であれば、あらゆる地盤に適用し得る汎用性の高いものであると言える。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る相関曲線作成方法によれば、フィード圧の大きさが異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになるというあらたな知見を前提とし、任意の地山に対し、計測されたフィード圧及び削孔速度から修正削孔速度を算出可能な相関曲線を作成することができる。
【0067】
(第2実施形態)
【0068】
次に、本実施形態に係る削孔速度修正方法を説明する。
【0069】
図7は、本実施形態に係る削孔速度修正方法の手順を示したフローチャートである。同図に示すように、本実施形態に係る削孔速度修正方法においては、まず、第2の削孔現場において削孔時のフィード圧F2及び削孔速度V2を計測しながら、予め設定された基準フィード圧F0、例えば4.9MPaからのフィード圧F2の差分ΔF2を算出する(ステップ111)。すなわち、
ΔF2=F2−F0
【0070】
次に、差分ΔF2(絶対値)を第1実施形態で述べた相関曲線に適用することにより、削孔速度V2の変動量ΔV2を算出する(ステップ112)。
【0071】
次に、変動量ΔV2を削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する(ステップ113)。
ここで、計測されたフィード圧F2が基準フィード圧F0よりも大きい場合、削孔速度V2は、基準フィード圧F0の下では減少すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR=削孔速度V2−ΔV2
を演算することで修正削孔速度VRを求める。
【0072】
一方、計測されたフィード圧F2が基準フィード圧F0よりも小さい場合、削孔速度V2は、基準フィード圧F0の下では増加すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR=削孔速度V2+ΔV2
を演算することで修正削孔速度VRを求める。
【0073】
図8は、上述した計測値に対する修正削孔速度VRを示したものである。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る削孔速度修正方法によれば、修正削孔速度VRは、フィード圧が基準フィード圧であった場合の予測値として修正されたものであって、フィード圧の変動が適切に考慮されたものである。
【0075】
そのため、かかる修正削孔速度VRを従来の削孔理論に適用すれば、フィード圧を考慮した削孔速度で削孔エネルギーが算出されることとなり、かくして、従来の削孔理論を用いつつ、精度の高い切羽の前方予測を行うことが可能となる。
【0076】
(第3実施形態)
【0077】
次に、第3実施形態に係る地山区分評価テーブルの作成方法について説明する。図9は、本実施形態に係る地山区分評価テーブルの作成方法の手順を示したフローチャートである。同図に示すように、本実施形態に係る地山区分評価テーブルの作成方法においては、まず、上述した削孔速度修正方法で得られた修正削孔速度VRから最大値及び最小値を抽出し、これらの値を参考に上限閾値および下限閾値を設定する(ステップ121)。
【0078】
次に、設定した閾値の範囲内に収まっている修正削孔速度VRを対象とし、以下に定義される正規化削孔速度比VNを求める(ステップ122)。
N=(修正削孔速度VR―下限閾値)/(上限閾値―下限閾値)
例えば、上限閾値を2,000cm/min、下限閾値を−1,000cm/minとすれば、
N=(修正削孔速度VR+1000)/3000
となる。
【0079】
ちなみに、上述した手順で正規化を行えば、正規化削孔速度比VNは、各値が0から1の範囲に入ることとなる。
【0080】
図10は、上述した削孔データに対して算出された正規化削孔速度比VNである。
【0081】
次に、正規化削孔速度比VN及びそのばらつき(ノイズの大小。ばらつきが少ない場合には岩盤の性状が比較的均質であり、ばらつきが多い場合には比較的不均質である)を、第2の削孔現場の地山区分に対応付けることで、地山区分評価テーブルを作成する(ステップ123)。
【0082】
正規化削孔速度比VNのばらつきは、例えば所定区間ごとの値が0.05の変動幅に収まっている場合には小さく(Noiseless)、収まっていない場合には大きい(Noisey)と判断することができる。
【表1】

【0083】
作成された地山区分評価テーブルを表1に示す。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る地山区分評価テーブルの作成方法によれば、任意の削孔現場で計測されたフィード圧及び削孔速度から上述した手順で正規化削孔速度比VNを算出するとともにそのノイズの大小を評価し、それを地山区分評価テーブルに照合することで、任意の削孔現場における地山区分を推定することが可能となる。
【0085】
(第4実施形態)
【0086】
次に、第4実施形態に係る切羽前方予測方法について説明する。
【0087】
図11は、本実施形態に係る切羽前方予測方法の手順を示したフローチャートである。同図に示すように、本実施形態に係る切羽前方予測方法においては、まず、第3の削孔現場において、削孔時のフィード圧F3及び削孔速度V3を計測しながら、予め設定された基準フィード圧F0、例えば4.9MPaからのフィード圧F3の差分ΔF3を算出する(ステップ131)。すなわち、
ΔF3=F3−F0
【0088】
次に、差分ΔF3(絶対値)を第1実施形態で説明した相関曲線に適用することにより、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出する(ステップ132)。
【0089】
次に、変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VR3を算出する(ステップ133)。
ここで、計測されたフィード圧F3が基準フィード圧F0よりも大きい場合、削孔速度V3は、基準フィード圧F0の下では減少すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR3=削孔速度V3−ΔV3
を演算することで修正削孔速度VR3を求める。
【0090】
一方、計測されたフィード圧F3が基準フィード圧F0よりも小さい場合、削孔速度V3は、基準フィード圧F0の下では増加すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR3=削孔速度V3+ΔV3
を演算することで修正削孔速度VR3を求める。
【0091】
次に、修正削孔速度VR3から最大値及び最小値を抽出し、これらの値を参考に上限閾値および下限閾値を設定する(ステップ134)。
【0092】
次に、設定した閾値の範囲内に収まっている修正削孔速度VR3を対象とし、以下に定義される正規化削孔速度比VN3を求める(ステップ135)。
N3=(修正削孔速度VR3―下限閾値)/(上限閾値―下限閾値)
例えば、上限閾値を2,000cm/min、下限閾値を−1,000cm/minとすれば、
N3=(修正削孔速度VR3+1000)/3000
【0093】
となる。ちなみに、上述した手順で正規化を行えば、正規化削孔速度比VN3は、各値が0から1の範囲に入ることとなる。
【0094】
次に、正規化削孔速度比VN3のばらつきが小さいか(Noiseless)、大きいか(Noisey)を第3実施形態と同様に判別する(ステップ136)。
【0095】
次に、得られた正規化削孔速度比VN3のばらつきを、第3実施形態の手順で作成された地山区分評価テーブルに照合し、第3の削孔現場における地山区分を評価する(ステップ137)。
【0096】
以上説明したように、本実施形態に係る切羽前方予測方法によれば、予め作成された相関曲線及び地山区分評価テーブルを用いることにより、切羽前方を予測しようとしている現場、本実施形態では第3の現場において、切羽の前方に拡がる地山の岩盤性状を予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態に係る相関曲線作成方法の手順を示したフローチャート。
【図2】相関曲線を作成する際に用いた平均フィード圧に対する削孔速度を示すグラフ。
【図3】フィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフであり、フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量を併記したもの。
【図4】同じくフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフ。
【図5】同じくフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフ。
【図6】フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量との相関関係を示したグラフ。
【図7】第2実施形態に係る削孔速度修正方法の手順を示したフローチャート。
【図8】修正削孔速度VRを示したグラフ。
【図9】第3実施形態に係る地山区分評価テーブルの作成方法の手順を示したフローチャート。
【図10】正規化削孔速度比VNを示したグラフ。
【図11】第4実施形態に係る切羽前方予測方法の手順を示したフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測し、前記フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する前記削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析して相関曲線を作成することを特徴とする相関曲線作成方法。
【請求項2】
第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測し、
前記フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2を請求項1記載の相関曲線に適用することにより、前記削孔速度V2の変動量ΔV2を算出し、
前記変動量ΔV2を前記削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出することを特徴とする削孔速度修正方法。
【請求項3】
請求項2記載の修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記正規化削孔速度比VN及びそのばらつきを前記第2の削孔現場の地山区分に対応付けることで地山区分評価テーブルを作成することを特徴とする地山区分評価テーブルの作成方法。
【請求項4】
第3の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測し、
前記フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、
前記差分ΔF3を、請求項1記載の相関曲線に適用することにより、前記削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、
前記変動量ΔV3を前記削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
前記修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記正規化削孔速度比VN及びそのばらつきを、請求項3記載の地山区分評価テーブルに適用することで、前記第3の削孔現場における地山区分を推測することを特徴とする切羽前方予測方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−156824(P2008−156824A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343604(P2006−343604)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)